「【BS】万代不易のさだめ。」「32Good」
良質:18票トリック:1票物語:10票納得感:3票
『20代後半になってからの私といえば、人生に絶望してばかりだった。
借金、不安定、何より、孤独。こんな生活を続けていくなんてとても耐えられない。ついこの間まで輝かしい大学生活を送っていた日々すら、懐かしく思い起こしてしまう。
死んでもいい。死にたい。毒薬片手に物騒にも考えつつ、幾度も死にきれなかった。私は心が弱い。死の世界へ旅立つのは、辛い生活よりも怖いことだった。生きているだけ、まだマシに思えた。
そんな私に、やっと光が訪れた。
ここのところ、資力を尽くして探していたものがついに見つかったのである。ずっと欲しかったものを手に入れて幸甚に打ち震える私は、{今まで飲む気が起きなかった毒薬をついに飲んだのだった。}』
文中の「もの」の概要を特定しつつ、「私」が飲んだ毒薬が{遅効性}だった理由を当ててください。
——————
この問題は100問出題を記念したBS問題です。
出題後30分が経過・または正解が出た時点から、何でもOKな1時間の質問タイム「BSタイム」に移行します。
BSタイム終了後は、何事もなかったかのように問題を解決する作業に戻ってください。
れーっつ、スタート〜!!
借金、不安定、何より、孤独。こんな生活を続けていくなんてとても耐えられない。ついこの間まで輝かしい大学生活を送っていた日々すら、懐かしく思い起こしてしまう。
死んでもいい。死にたい。毒薬片手に物騒にも考えつつ、幾度も死にきれなかった。私は心が弱い。死の世界へ旅立つのは、辛い生活よりも怖いことだった。生きているだけ、まだマシに思えた。
そんな私に、やっと光が訪れた。
ここのところ、資力を尽くして探していたものがついに見つかったのである。ずっと欲しかったものを手に入れて幸甚に打ち震える私は、{今まで飲む気が起きなかった毒薬をついに飲んだのだった。}』
文中の「もの」の概要を特定しつつ、「私」が飲んだ毒薬が{遅効性}だった理由を当ててください。
——————
この問題は100問出題を記念したBS問題です。
出題後30分が経過・または正解が出た時点から、何でもOKな1時間の質問タイム「BSタイム」に移行します。
BSタイム終了後は、何事もなかったかのように問題を解決する作業に戻ってください。
れーっつ、スタート〜!!
23年11月03日 21:00
【ウミガメのスープ】 [さなめ。]
【ウミガメのスープ】 [さなめ。]
かけがえのない、第100問
解説を見る
要約:
「私」は本当は20歳の大学生・美里。あるとき、20代後半の女性・理沙子に{身体を入れ替えられてしまっていた}。
そこで元の身体に戻るため、理沙子に使われたのであろう{人と入れ替わることができるアイテム}をずっと探し求めていた。
それを見つけると、それを用いて{元に戻ったあとに理沙子が理沙子の体内の毒で死に至る}ことを望んで、あらかじめ理沙子の身体で{遅効性}の毒薬を飲んだのである。
遅効性だった理由は、時間差がないと即座に{自分が死んでしまう}から。
そもそも毒薬を飲んだ、即ち理沙子を死に追いやった理由は、身体を奪われた怨恨による復讐や、元に戻った自分に理沙子からの危難が再び及ぶことのないようにすることなど。
——————
{※}解説の前に、良ければ以下の二作を読んでいただけると嬉しいです(この問題の解説にそのネタバレがあります)。
『人と入れ替わることができる口紅(理沙子・美里)』
https://late-late.jp/mondai/show/18298
https://late-late.jp/mondai/show/18299
この問題の前日譚(あるいは、この問題が後日譚)。どちらもジシン作です。
(もちろん、お読み頂かなくても楽しめる問題になっています。)
(そして長いです。ご了承ください。)
解説:
薄明かりの中、ゆっくりと目を覚ます。今は一体何時だろう。すっかり昼夜は逆転して、夢と現との区別はつかなくなっていた。
霞んだ視界に、挙げた手を映す。失望によって程なく墜落した手は、そのまま枕にかかる髪に触れる。目覚めの勢いに、思わず呻くような声が出た。
爪の形。乱れた髪の硬さ。少し低めの声。何もかも、未だに「他人のもの」だと認識できる。それだけは少し、安心できた。
朝起きたら元に戻っているなんて都合の良い空想を抱いたのは、これで何度目か。今度は小さく、しかしはっきりと「私は、有坂 美里。」と呟いた。それは蓮見 理沙子の声だった。
『{蓮見 理沙子と身体が入れ替わり、}20代後半{の女性・理沙子}になってからの私といえば、人生に絶望してばかりだった。
{理沙子の作った}借金、{日を凌ぐために自分で探したアルバイトで生きる}不安定、何より、{誰も私のことを美里だと気づいてくれない}孤独。こんな生活を{バトンタッチして}続けていくなんてとても耐えられない。ついこの間{、そう、ほんの4ヶ月前}まで{正真正銘の美里として}輝かしい大学生活を送っていた日々すら、懐かしく思い起こしてしまう。
死んでもいい。死にたい。毒薬片手に物騒にも考えつつ、幾度も死にきれなかった。私は心が弱い。死の世界へ旅立つのは、辛い生活よりも怖いことだった。{自分の身体でなくても、自分の人生でなくても、理沙子として}生きているだけ、まだマシに思えた。』
——————
ある時、私の大学に変質者が現れた。自分のことを「私は有坂 美里だ」と言うおかしな女性。後から知ったことだが、「その人」は私のサークルの先輩らしい。
噂を聞いた私は、漠然とした恐怖に襲われながらも、友達の支えあって穏やかに日々を過ごした。変質者といっても、ストーカーじみた被害に遭った訳でもない。たまたま私の名前を知っただけなんだろう、と甘く考えていた。今では激しく、後悔している。
その女性こそ、理沙子だった。
私はそんな騒動から二週間。帰り道に理沙子に殴られて気絶した。それはあまりに突然のことで、私が「自分を失った」瞬間だった。
私は、その日から「蓮見 理沙子になって」しまった。
大学に行っても誰にも信じてもらえない。サークルの友達どころか、もっと仲の良い親友にも。果ては、私を産み育ててくれた親にだって。私が美里だってこと。
絶望的な孤独の中。何が起こったのか、極彩の内のようにわからなかった中。私は逮捕された。
私は、「美里を殴った」罪で連行された。
幸い、「相手」の怪我の程度が軽く、淡々と対応したこともあって、少し長めの勾留のみで放たれた。
しかしその勾留期間は、私の魂の奥底を憔悴させ、今の立場を体感するのには過剰で残酷な時の流れだった。
私は何度も、「蓮見」と呼ばれた。「有坂」という苗字は、出席番号が早くてすぐに名前を呼ばれていた。小学校の頃は、出席の返事を元気いっぱいにするのが大好きで、早くに呼ばれるその苗字が好きだった。中高の頃は、好きな漫画のキャラクター「アリス」に名前が似ているなんてくだらないことに、小さくも確かな喜びを感じていた。大学になったら、いつか訪れるこの苗字とのお別れの日を、寂しくも楽しみに空想した。
警察組織の人と話すときは、少し低めの声で呟くように話すようになった。小学校の頃、私は元気な声をよく先生に褒めてもらっていた。中学、そして高校でも入部した放送部では、先輩に綺麗な声だねって褒められたことはいつまで経っても忘れられなかった。大学では声変わりした男の子の低い声を羨むこともあったけど、自分の声は好きだった。
他にもたくさん。自分のものでない身体。謂れのない経歴・罪。これからのこと。こんなことになった原因。いくら心が大声で叫んでも、それに答える由縁はどこにもなかった。
やがて拘置所を出て、訳のわからぬままアルバイトを始めた。「美里」だった時もやっていた、カフェのバイト。「理沙子」の身分やお金の在処なんて知らないから、それも自分で探るしかなかった。そうして毎日毎日手探りで、自分でない人の人生を生きていく日々を過ごした。
SNSも、やる気力が起きなかった。当然ながら、私は理沙子の身体でも美里のアカウントにログインできる。入れ替わってすぐは、そんなところに孤独のしまいどころを見たりもした。私は確かに、有坂 美里なんだって。幻覚でも思い込みでも、二重人格でもないんだって。でも、もうそれもやめた。残酷な現実との乖離が苦しくなって、ログアウトで止まっている。インターネットの向こう側にしか見られない私のリアルな親友は、どんな関係性の人間よりも遠くに感じられた。
こんな空想もした。私の立場になった理沙子が何かおかしなことをして、大学のみんなが、家族が、それを疑う。それで最後の最後に私の親友が、あなたは美里じゃないって暴いてくれる。その瞬間、この悪夢が晴れやかな空のように綺麗にいなくなる、なんてハッピーエンド。
そのハッピーエンドの行方は知れない。私は拘置所で耳にした。怪我の程度が軽いといっても、降り積もった精神的なショックで「被害者の美里さんが記憶障害になった」というのは見過ごせない。私は錆び切った心で漠然と理解した。理沙子は記憶喪失のふりをして、私に成りすましている。身体が入れ替わったのは、理沙子の計画のうちだったんだ、と。
その日から、諦めにも似た全ての感情に一滴、怒りが混じっていった。私という人格は、彼女に奪われてしまった。私が私であるために一番大事な、いや、そんな言葉を使うまでもなく、尊厳の大前提にある唯一のものを、私は彼女に奪われたのである。それをどうにもすることができない悔しさが、泡沫のように現れては消え、現れては消えた。
消えた怒りは、たちまち途方に暮れる方へと私を誘う。私はこれから、どう生きれば良いんだろう。積み上げてきた積み木を崩され、粗悪な木片をもらったような。読んでいた本のページの先を破られ、適当な別作品をツギハギしたかのような。そんな状態で、私は何をすれば良いのか。ほとんど何もしないままの生活に湧いたのは、死への渇望だった。
私は毒薬を手に入れた。しかし、それを飲む勇気はなかった。誰にも知られず死ぬのが怖かった。手に入れた毒が遅効性であるというのも、情けないなけなしの絶望を彫って形にした虚仮だった。
そんな日々を続けながらも、一つだけ諦めなかったことがある。一縷よりも僅かな可能性で、それぞ至る希望には見出していなかったが、元に戻る方法についてだ。それだけは、何より必死に調べた。
理沙子があの日、私を殴った後。彼女は確かに、何か決定的な方法を用いて計画的に私と入れ替わったんだ。その前に私の名前を大学中で叫んでいたあの変質行為も、今思えばその準備だったんだと思う。そんな非現実的なアイテムがあるのか、幾度となく疑いの念に攫われたが、己という最も確かな証左を頼りに、砂を掴むような探究を行なっていた。
それがついに、実った。
巷に溢れていたらしい、『人と入れ替わることができる口紅』の都市伝説。
曰く、『人と入れ替わることができる口紅』は、使用者が自身の唇に付着させた上で任意の相手とキスをすると、その相手と身体を入れ替えられるというもの。
ついに私は、そんな口紅を手に入れたのだった。
——————
スマホのカメラを起動する。理沙子のスマホといえど指紋認証で起動できるという不可思議さは、今更気にかけることではなかった。録画モードのボタンを押すと、内カメに「私」が映った。
切れ長な瞳に収まる、私の心。少し大きめの口元も、なで気味の肩も、サラサラと流れない硬い髪も、全ては鏡に映る他人。今まで、よく耐えてきたと自分で思う。4ヶ月もの間、こんな光景を見続けてもなお心が音を立てて崩れることはなかった。小さい頃から持っていたなけなしのガッツは、母親譲りだった。
私はカメラに向けて、ラベルをまじまじと見せる。そして「今まで、ありがとう」と淡々と呟くと、毒薬を少し残して飲み干した。
これで、リミットはあと1時間足らず。
カメラを止めて少しして、インターホンが鳴り響く。彼女が来ていたことは。アパートの窓から見えていた。彼女にとっては「久々の帰宅」だろう。
私はゆっくりとドアを開けた。その先には、「私がいた」。
改めて近くで見ると、思わず息がむせ返るような、心臓が爆発するかのような、そんな感覚があった。久々に見た私の顔は、4ヶ月前と何ら変わっていなかった。
口紅を手に入れてから、私は「美里」の電話に連絡をした。自分の悲痛な現状を伝え、せめて一度だけでも会ってほしいと言った。これも一縷の望みに賭けていたことだが、理沙子は不用意にもこれに応じてくれた。
「…で、話って何ですか。『{理沙子さん}』。」
放送部の先輩に、カラオケに行った友達に、大好きな親友に、褒められてきた声が響いた。その不機嫌そうな発言を聞いて、私の迷いは消え去った。
私はそれまで少しだけ、迷っていた。本当に毒薬を飲んで良いのか。飲んで良かったのか。
私はこれから、毒を飲んだ身体を捨てて元に戻る。{私は自分を亡き者にするためではなく、理沙子を消滅させるために}毒薬を飲んだ。遅効性の毒を飲んだまま理沙子と入れ替わって、元に戻った理沙子はそのまま息を引き取るということだ。
毒薬を飲んだ理由はいくつかあった。もちろん、{理沙子への怨恨}がその一つ。私はどうしても許せなかった。私が私であることの根っこの部分を、万引きのような、強盗のような信念で奪った理沙子のこと。私の人格をこうも弄んだ理沙子のこと。「人を盗んだ」理沙子のことが、許せるはずがなかった。
それに、私は怖かった。元に戻れたとして、理沙子がもしこの口紅を未だどこかに隠し持っていたとしたら。その所有は「私に移る」ことにはなるが、再び終わらない危難が続くことを恐れ、理沙子の存在を消滅させておきたかった。{また身体が奪われるのが嫌}だった。
でも、大きな理由はきっと、そんなんじゃない。
私は、清算がしたかったんだと思う。この4ヶ月の気が狂いそうな生活の数々を、終わらせたかったんだと思う。
もし私がこのまま元の身体に戻れたとしても、今の「私」はずっと続いていく。私の絶望に満ちていた人生の一部の時が、私の預かり知らない、知りたくもないところでずっと続いていく。そんな「理沙子」という得体の知れない存在に、私は嫌悪感を覚えた。そんな現状を自分で変えることができるのなら、何をしてでも変えたかった。それは多分、自分が「死にたい」と思う感情と大して変わりはない。ただこの4ヶ月間だけの歪な「自分」に対して、死にたいと思ったというだけ。
それに、手に入れた口紅がうまく働く保証はどこにもない。こんなファンタジーのアイテムを試用もせず使うなんて、私はどこかおかしいと思う。
もし口紅が機能しなくて私が理沙子のまま死んでも、それで良い。私が過ごした4ヶ月がなくなるのなら、そしてもう元の自分に戻れないことが確かになった後に死ぬなら、それで良い。とにかく、まるでサブアカウントを消すみたいに「理沙子」を消せるなら、何でも良かったんだと思う。
目の前の、一番見慣れた外見、一番憎い魂。全てを元に戻す口付けを。
私は理沙子にかわされるより前に早く。
しかし、ゆっくりと。
交わしていく。
——————
電車に揺られる私が読んでいたのは、過去の授業のレジュメ。
この4ヶ月。あまり忙しくない2年生だから、何とか追いつけはしそうだと思う。「私が取ったノート」はないから、今度友達に見せてもらおう。
あれから、願う通りに私は元の私に戻れた。口付けを交わした途端に理沙子は、毒薬とは別に飲んでいた睡眠薬で眠ってしまい、おそらくそのまま、消えた。
もし、将来に口紅の存在が科学的に証明されたら、私は殺人の罪に問われるのだろうか。自殺はそれ自体が重い罪だと、刑法学の先生が言っていた気がする。
それでも確かに、私は「理沙子を」「私を」消したはずだった。それは私が今ここにいることに判る、確かなことだった。
少し四角い自分の爪。大学生になってから思い切って少しだけ明るい色に染めた、手入れもちゃんとしてある髪。レジュメを映すタブレットの電源を落とすと、自分の大きくて丸っこい瞳と小さめの口が反射する。
私は、元の私に戻った。戻ったはずなのに。
渦巻く心の霧は晴れなかった。それは毒薬を飲んだ罪悪感なんかでは、決して片付けられないこと。
4ヶ月の間に溜まったノート。これは、「理沙子」が書いたもの。字は、案外私と少し似ている。
スマホに残るLINEの履歴。親友の早苗との会話も記録が残っている。どうやら体調を心配されていたみたいだ。
財布の中には、つい一週間前のレシート。大学の学食で、私の好きなきのこ炒めを食べたらしい。
「私の」4ヶ月の時間は、無くなっていたわけでも、消せたわけでもなかった。
私の4ヶ月は、「私」が確かに動かしていた。過ごしていた。
だからこの4ヶ月は、私の中では孤独の記憶として一生残っていくことになるんだと思う。
例えば、友達から2ヶ月前の会話の内容を出されたら。「そういえば美里、この前〇〇って言ってなかった?」その責は、私ではない。
例えば、最近の日常を聞かれたら。「美里ちゃん、最近なんか面白いことあった?」あのとき絶望の渦にあったのは、「私」ではない。
その期間「私」が完全な他人の人格にあった事実は、もう変えようのないことなんだ。
魚を食べて刺さった小骨のような。清水に混じる一滴の泥水のような。言いようのない小さなズレ。
なのに、それを誰かに説明なんてできない。「その期間私は入れ替わっていた」なんて、言えるわけがない。誰にも共有できない孤独が、そこにはあった。
全てが戻って、完璧なハッピーエンドになんて、なることはない。
私が感じた極彩の絶望は、一滴を心に残したまま。
電車を降りると、改札外で後ろから肩を叩かれた。
「よ〜っ。美里。」
そこにいたのは、親友の早苗。高校も大学も同じの、気を許せる女の子。
「えっと、おはよう。」
久しぶり、という言葉を飲み込んで、私は自分の声で返事した。すると、彼女は二の句を告げた。
「なんか、今日は元気そうだね。良かった良かった。」
「え、元気、かなあ?」
「う〜ん、なんか{通常運転の美里}って感じ。」
「ふ〜ん。」
「…ねえ、早苗。」
「何?」
「今日さ、授業終わったらカフェ行かない?それか、カラオケでも本屋さんでも、サークルでも何でも。」
「良いよん。三ヶ谷にできたカフェとかどうよ。」
「うん、じゃあそうしよう。」
「え、ちょっとなになに!急にくっついてきて。」
「…。ごめん。ちょっと。」
私の大きくて丸っこい瞳から一滴だけ、流れた小さな雨。
それは、嬉しさの涙か。切なさの涙か。
いずれにしたって、今日くらいは、一秒でも多く、早苗を、親しい誰かを、近くに感じていたかった。
冗談めかして私を振り払おうとする彼女に、私はほんの少しだけぎこちなく、しかし晴れやかに笑いかけた。
[{B}itter end {S}tory] 万代不易のさだめ。
終わり。
——————
BSにご参加下さったみなさん、あるいは後から見てくださっているみなさん、本当にありがとうございました!
2019年に始めた当初は、100問なんて私みたいなちんちくりんには出せるはずがない、と10問でも記念とか喜んでいた記憶があります。あの頃の私がこのタイトルを見たら、マジかってびっくりすると思います。
それから4年と少しですが、こうして無事100問の出題に至ることができました。企画やリメイクを抜いても、100問は出していると思います。
ここまで来れたのも、解いてくださる皆さん・ご評価をくださる皆さん・すなわち私と関わってくださった皆さんのおかげです。
いつも本当にありがとうございます。
その感謝を少しでも示すように、これからも皆さんの心に刺さる一問を目指して、精進いたします。
これからもよろしくしていただければ幸いです。
それでは改めて、本日は本当にありがとうございました。
さなめ。(みさこ)
「私」は本当は20歳の大学生・美里。あるとき、20代後半の女性・理沙子に{身体を入れ替えられてしまっていた}。
そこで元の身体に戻るため、理沙子に使われたのであろう{人と入れ替わることができるアイテム}をずっと探し求めていた。
それを見つけると、それを用いて{元に戻ったあとに理沙子が理沙子の体内の毒で死に至る}ことを望んで、あらかじめ理沙子の身体で{遅効性}の毒薬を飲んだのである。
遅効性だった理由は、時間差がないと即座に{自分が死んでしまう}から。
そもそも毒薬を飲んだ、即ち理沙子を死に追いやった理由は、身体を奪われた怨恨による復讐や、元に戻った自分に理沙子からの危難が再び及ぶことのないようにすることなど。
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{※}解説の前に、良ければ以下の二作を読んでいただけると嬉しいです(この問題の解説にそのネタバレがあります)。
『人と入れ替わることができる口紅(理沙子・美里)』
https://late-late.jp/mondai/show/18298
https://late-late.jp/mondai/show/18299
この問題の前日譚(あるいは、この問題が後日譚)。どちらもジシン作です。
(もちろん、お読み頂かなくても楽しめる問題になっています。)
(そして長いです。ご了承ください。)
解説:
薄明かりの中、ゆっくりと目を覚ます。今は一体何時だろう。すっかり昼夜は逆転して、夢と現との区別はつかなくなっていた。
霞んだ視界に、挙げた手を映す。失望によって程なく墜落した手は、そのまま枕にかかる髪に触れる。目覚めの勢いに、思わず呻くような声が出た。
爪の形。乱れた髪の硬さ。少し低めの声。何もかも、未だに「他人のもの」だと認識できる。それだけは少し、安心できた。
朝起きたら元に戻っているなんて都合の良い空想を抱いたのは、これで何度目か。今度は小さく、しかしはっきりと「私は、有坂 美里。」と呟いた。それは蓮見 理沙子の声だった。
『{蓮見 理沙子と身体が入れ替わり、}20代後半{の女性・理沙子}になってからの私といえば、人生に絶望してばかりだった。
{理沙子の作った}借金、{日を凌ぐために自分で探したアルバイトで生きる}不安定、何より、{誰も私のことを美里だと気づいてくれない}孤独。こんな生活を{バトンタッチして}続けていくなんてとても耐えられない。ついこの間{、そう、ほんの4ヶ月前}まで{正真正銘の美里として}輝かしい大学生活を送っていた日々すら、懐かしく思い起こしてしまう。
死んでもいい。死にたい。毒薬片手に物騒にも考えつつ、幾度も死にきれなかった。私は心が弱い。死の世界へ旅立つのは、辛い生活よりも怖いことだった。{自分の身体でなくても、自分の人生でなくても、理沙子として}生きているだけ、まだマシに思えた。』
——————
ある時、私の大学に変質者が現れた。自分のことを「私は有坂 美里だ」と言うおかしな女性。後から知ったことだが、「その人」は私のサークルの先輩らしい。
噂を聞いた私は、漠然とした恐怖に襲われながらも、友達の支えあって穏やかに日々を過ごした。変質者といっても、ストーカーじみた被害に遭った訳でもない。たまたま私の名前を知っただけなんだろう、と甘く考えていた。今では激しく、後悔している。
その女性こそ、理沙子だった。
私はそんな騒動から二週間。帰り道に理沙子に殴られて気絶した。それはあまりに突然のことで、私が「自分を失った」瞬間だった。
私は、その日から「蓮見 理沙子になって」しまった。
大学に行っても誰にも信じてもらえない。サークルの友達どころか、もっと仲の良い親友にも。果ては、私を産み育ててくれた親にだって。私が美里だってこと。
絶望的な孤独の中。何が起こったのか、極彩の内のようにわからなかった中。私は逮捕された。
私は、「美里を殴った」罪で連行された。
幸い、「相手」の怪我の程度が軽く、淡々と対応したこともあって、少し長めの勾留のみで放たれた。
しかしその勾留期間は、私の魂の奥底を憔悴させ、今の立場を体感するのには過剰で残酷な時の流れだった。
私は何度も、「蓮見」と呼ばれた。「有坂」という苗字は、出席番号が早くてすぐに名前を呼ばれていた。小学校の頃は、出席の返事を元気いっぱいにするのが大好きで、早くに呼ばれるその苗字が好きだった。中高の頃は、好きな漫画のキャラクター「アリス」に名前が似ているなんてくだらないことに、小さくも確かな喜びを感じていた。大学になったら、いつか訪れるこの苗字とのお別れの日を、寂しくも楽しみに空想した。
警察組織の人と話すときは、少し低めの声で呟くように話すようになった。小学校の頃、私は元気な声をよく先生に褒めてもらっていた。中学、そして高校でも入部した放送部では、先輩に綺麗な声だねって褒められたことはいつまで経っても忘れられなかった。大学では声変わりした男の子の低い声を羨むこともあったけど、自分の声は好きだった。
他にもたくさん。自分のものでない身体。謂れのない経歴・罪。これからのこと。こんなことになった原因。いくら心が大声で叫んでも、それに答える由縁はどこにもなかった。
やがて拘置所を出て、訳のわからぬままアルバイトを始めた。「美里」だった時もやっていた、カフェのバイト。「理沙子」の身分やお金の在処なんて知らないから、それも自分で探るしかなかった。そうして毎日毎日手探りで、自分でない人の人生を生きていく日々を過ごした。
SNSも、やる気力が起きなかった。当然ながら、私は理沙子の身体でも美里のアカウントにログインできる。入れ替わってすぐは、そんなところに孤独のしまいどころを見たりもした。私は確かに、有坂 美里なんだって。幻覚でも思い込みでも、二重人格でもないんだって。でも、もうそれもやめた。残酷な現実との乖離が苦しくなって、ログアウトで止まっている。インターネットの向こう側にしか見られない私のリアルな親友は、どんな関係性の人間よりも遠くに感じられた。
こんな空想もした。私の立場になった理沙子が何かおかしなことをして、大学のみんなが、家族が、それを疑う。それで最後の最後に私の親友が、あなたは美里じゃないって暴いてくれる。その瞬間、この悪夢が晴れやかな空のように綺麗にいなくなる、なんてハッピーエンド。
そのハッピーエンドの行方は知れない。私は拘置所で耳にした。怪我の程度が軽いといっても、降り積もった精神的なショックで「被害者の美里さんが記憶障害になった」というのは見過ごせない。私は錆び切った心で漠然と理解した。理沙子は記憶喪失のふりをして、私に成りすましている。身体が入れ替わったのは、理沙子の計画のうちだったんだ、と。
その日から、諦めにも似た全ての感情に一滴、怒りが混じっていった。私という人格は、彼女に奪われてしまった。私が私であるために一番大事な、いや、そんな言葉を使うまでもなく、尊厳の大前提にある唯一のものを、私は彼女に奪われたのである。それをどうにもすることができない悔しさが、泡沫のように現れては消え、現れては消えた。
消えた怒りは、たちまち途方に暮れる方へと私を誘う。私はこれから、どう生きれば良いんだろう。積み上げてきた積み木を崩され、粗悪な木片をもらったような。読んでいた本のページの先を破られ、適当な別作品をツギハギしたかのような。そんな状態で、私は何をすれば良いのか。ほとんど何もしないままの生活に湧いたのは、死への渇望だった。
私は毒薬を手に入れた。しかし、それを飲む勇気はなかった。誰にも知られず死ぬのが怖かった。手に入れた毒が遅効性であるというのも、情けないなけなしの絶望を彫って形にした虚仮だった。
そんな日々を続けながらも、一つだけ諦めなかったことがある。一縷よりも僅かな可能性で、それぞ至る希望には見出していなかったが、元に戻る方法についてだ。それだけは、何より必死に調べた。
理沙子があの日、私を殴った後。彼女は確かに、何か決定的な方法を用いて計画的に私と入れ替わったんだ。その前に私の名前を大学中で叫んでいたあの変質行為も、今思えばその準備だったんだと思う。そんな非現実的なアイテムがあるのか、幾度となく疑いの念に攫われたが、己という最も確かな証左を頼りに、砂を掴むような探究を行なっていた。
それがついに、実った。
巷に溢れていたらしい、『人と入れ替わることができる口紅』の都市伝説。
曰く、『人と入れ替わることができる口紅』は、使用者が自身の唇に付着させた上で任意の相手とキスをすると、その相手と身体を入れ替えられるというもの。
ついに私は、そんな口紅を手に入れたのだった。
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スマホのカメラを起動する。理沙子のスマホといえど指紋認証で起動できるという不可思議さは、今更気にかけることではなかった。録画モードのボタンを押すと、内カメに「私」が映った。
切れ長な瞳に収まる、私の心。少し大きめの口元も、なで気味の肩も、サラサラと流れない硬い髪も、全ては鏡に映る他人。今まで、よく耐えてきたと自分で思う。4ヶ月もの間、こんな光景を見続けてもなお心が音を立てて崩れることはなかった。小さい頃から持っていたなけなしのガッツは、母親譲りだった。
私はカメラに向けて、ラベルをまじまじと見せる。そして「今まで、ありがとう」と淡々と呟くと、毒薬を少し残して飲み干した。
これで、リミットはあと1時間足らず。
カメラを止めて少しして、インターホンが鳴り響く。彼女が来ていたことは。アパートの窓から見えていた。彼女にとっては「久々の帰宅」だろう。
私はゆっくりとドアを開けた。その先には、「私がいた」。
改めて近くで見ると、思わず息がむせ返るような、心臓が爆発するかのような、そんな感覚があった。久々に見た私の顔は、4ヶ月前と何ら変わっていなかった。
口紅を手に入れてから、私は「美里」の電話に連絡をした。自分の悲痛な現状を伝え、せめて一度だけでも会ってほしいと言った。これも一縷の望みに賭けていたことだが、理沙子は不用意にもこれに応じてくれた。
「…で、話って何ですか。『{理沙子さん}』。」
放送部の先輩に、カラオケに行った友達に、大好きな親友に、褒められてきた声が響いた。その不機嫌そうな発言を聞いて、私の迷いは消え去った。
私はそれまで少しだけ、迷っていた。本当に毒薬を飲んで良いのか。飲んで良かったのか。
私はこれから、毒を飲んだ身体を捨てて元に戻る。{私は自分を亡き者にするためではなく、理沙子を消滅させるために}毒薬を飲んだ。遅効性の毒を飲んだまま理沙子と入れ替わって、元に戻った理沙子はそのまま息を引き取るということだ。
毒薬を飲んだ理由はいくつかあった。もちろん、{理沙子への怨恨}がその一つ。私はどうしても許せなかった。私が私であることの根っこの部分を、万引きのような、強盗のような信念で奪った理沙子のこと。私の人格をこうも弄んだ理沙子のこと。「人を盗んだ」理沙子のことが、許せるはずがなかった。
それに、私は怖かった。元に戻れたとして、理沙子がもしこの口紅を未だどこかに隠し持っていたとしたら。その所有は「私に移る」ことにはなるが、再び終わらない危難が続くことを恐れ、理沙子の存在を消滅させておきたかった。{また身体が奪われるのが嫌}だった。
でも、大きな理由はきっと、そんなんじゃない。
私は、清算がしたかったんだと思う。この4ヶ月の気が狂いそうな生活の数々を、終わらせたかったんだと思う。
もし私がこのまま元の身体に戻れたとしても、今の「私」はずっと続いていく。私の絶望に満ちていた人生の一部の時が、私の預かり知らない、知りたくもないところでずっと続いていく。そんな「理沙子」という得体の知れない存在に、私は嫌悪感を覚えた。そんな現状を自分で変えることができるのなら、何をしてでも変えたかった。それは多分、自分が「死にたい」と思う感情と大して変わりはない。ただこの4ヶ月間だけの歪な「自分」に対して、死にたいと思ったというだけ。
それに、手に入れた口紅がうまく働く保証はどこにもない。こんなファンタジーのアイテムを試用もせず使うなんて、私はどこかおかしいと思う。
もし口紅が機能しなくて私が理沙子のまま死んでも、それで良い。私が過ごした4ヶ月がなくなるのなら、そしてもう元の自分に戻れないことが確かになった後に死ぬなら、それで良い。とにかく、まるでサブアカウントを消すみたいに「理沙子」を消せるなら、何でも良かったんだと思う。
目の前の、一番見慣れた外見、一番憎い魂。全てを元に戻す口付けを。
私は理沙子にかわされるより前に早く。
しかし、ゆっくりと。
交わしていく。
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電車に揺られる私が読んでいたのは、過去の授業のレジュメ。
この4ヶ月。あまり忙しくない2年生だから、何とか追いつけはしそうだと思う。「私が取ったノート」はないから、今度友達に見せてもらおう。
あれから、願う通りに私は元の私に戻れた。口付けを交わした途端に理沙子は、毒薬とは別に飲んでいた睡眠薬で眠ってしまい、おそらくそのまま、消えた。
もし、将来に口紅の存在が科学的に証明されたら、私は殺人の罪に問われるのだろうか。自殺はそれ自体が重い罪だと、刑法学の先生が言っていた気がする。
それでも確かに、私は「理沙子を」「私を」消したはずだった。それは私が今ここにいることに判る、確かなことだった。
少し四角い自分の爪。大学生になってから思い切って少しだけ明るい色に染めた、手入れもちゃんとしてある髪。レジュメを映すタブレットの電源を落とすと、自分の大きくて丸っこい瞳と小さめの口が反射する。
私は、元の私に戻った。戻ったはずなのに。
渦巻く心の霧は晴れなかった。それは毒薬を飲んだ罪悪感なんかでは、決して片付けられないこと。
4ヶ月の間に溜まったノート。これは、「理沙子」が書いたもの。字は、案外私と少し似ている。
スマホに残るLINEの履歴。親友の早苗との会話も記録が残っている。どうやら体調を心配されていたみたいだ。
財布の中には、つい一週間前のレシート。大学の学食で、私の好きなきのこ炒めを食べたらしい。
「私の」4ヶ月の時間は、無くなっていたわけでも、消せたわけでもなかった。
私の4ヶ月は、「私」が確かに動かしていた。過ごしていた。
だからこの4ヶ月は、私の中では孤独の記憶として一生残っていくことになるんだと思う。
例えば、友達から2ヶ月前の会話の内容を出されたら。「そういえば美里、この前〇〇って言ってなかった?」その責は、私ではない。
例えば、最近の日常を聞かれたら。「美里ちゃん、最近なんか面白いことあった?」あのとき絶望の渦にあったのは、「私」ではない。
その期間「私」が完全な他人の人格にあった事実は、もう変えようのないことなんだ。
魚を食べて刺さった小骨のような。清水に混じる一滴の泥水のような。言いようのない小さなズレ。
なのに、それを誰かに説明なんてできない。「その期間私は入れ替わっていた」なんて、言えるわけがない。誰にも共有できない孤独が、そこにはあった。
全てが戻って、完璧なハッピーエンドになんて、なることはない。
私が感じた極彩の絶望は、一滴を心に残したまま。
電車を降りると、改札外で後ろから肩を叩かれた。
「よ〜っ。美里。」
そこにいたのは、親友の早苗。高校も大学も同じの、気を許せる女の子。
「えっと、おはよう。」
久しぶり、という言葉を飲み込んで、私は自分の声で返事した。すると、彼女は二の句を告げた。
「なんか、今日は元気そうだね。良かった良かった。」
「え、元気、かなあ?」
「う〜ん、なんか{通常運転の美里}って感じ。」
「ふ〜ん。」
「…ねえ、早苗。」
「何?」
「今日さ、授業終わったらカフェ行かない?それか、カラオケでも本屋さんでも、サークルでも何でも。」
「良いよん。三ヶ谷にできたカフェとかどうよ。」
「うん、じゃあそうしよう。」
「え、ちょっとなになに!急にくっついてきて。」
「…。ごめん。ちょっと。」
私の大きくて丸っこい瞳から一滴だけ、流れた小さな雨。
それは、嬉しさの涙か。切なさの涙か。
いずれにしたって、今日くらいは、一秒でも多く、早苗を、親しい誰かを、近くに感じていたかった。
冗談めかして私を振り払おうとする彼女に、私はほんの少しだけぎこちなく、しかし晴れやかに笑いかけた。
[{B}itter end {S}tory] 万代不易のさだめ。
終わり。
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BSにご参加下さったみなさん、あるいは後から見てくださっているみなさん、本当にありがとうございました!
2019年に始めた当初は、100問なんて私みたいなちんちくりんには出せるはずがない、と10問でも記念とか喜んでいた記憶があります。あの頃の私がこのタイトルを見たら、マジかってびっくりすると思います。
それから4年と少しですが、こうして無事100問の出題に至ることができました。企画やリメイクを抜いても、100問は出していると思います。
ここまで来れたのも、解いてくださる皆さん・ご評価をくださる皆さん・すなわち私と関わってくださった皆さんのおかげです。
いつも本当にありがとうございます。
その感謝を少しでも示すように、これからも皆さんの心に刺さる一問を目指して、精進いたします。
これからもよろしくしていただければ幸いです。
それでは改めて、本日は本当にありがとうございました。
さなめ。(みさこ)
「赤信号と露出狂」「32Good」
良質:24票トリック:3票納得感:5票
タクロウが昨日公衆の面前でパンツ一枚になったのは、半年前に信号無視をしたせいだという。
どういうことでしょう?
どういうことでしょう?
18年09月27日 20:22
【ウミガメのスープ】 [紺亭 唐靴蛙]
【ウミガメのスープ】 [紺亭 唐靴蛙]
よろしくお願いいたします
解説を見る
タクロウは、昨日出張の為に飛行機に乗ろうとしていた。
(ピンポーン)
空港の保安検査場にて、タクロウがゲートを通過すると金属探知機が反応した。
「すみませんお客様、何か金属のものをお持ちですか?」
「いや、時計もベルトも外したし、何もないと思いますけど…」
「念のため上着を脱いでもう一度ゲートを通過してもらえますか?」
(ピンポーン)
「念のためワイシャツも脱いで…」
(ピンポーン)
「念のためズボンも…」
そうこうしてる間にタクロウは公衆の面前でパンツ1枚の格好にさせられていた。
しかし金属探知機の反応はいまだに消えない。
その時タクロウはようやく思い出した。
タクロウは半年前、赤信号を無視して道路を横断し、車にはねられ大腿骨を骨折した。
その時の手術により、タロウの脚には補強のための金属のプレートが入っていたのだ。
金属探知機はそのプレートに反応していたようだ。
事情を説明し疑いが晴れ、タクロウはやっと衣服を身に着けることができた。
(ピンポーン)
空港の保安検査場にて、タクロウがゲートを通過すると金属探知機が反応した。
「すみませんお客様、何か金属のものをお持ちですか?」
「いや、時計もベルトも外したし、何もないと思いますけど…」
「念のため上着を脱いでもう一度ゲートを通過してもらえますか?」
(ピンポーン)
「念のためワイシャツも脱いで…」
(ピンポーン)
「念のためズボンも…」
そうこうしてる間にタクロウは公衆の面前でパンツ1枚の格好にさせられていた。
しかし金属探知機の反応はいまだに消えない。
その時タクロウはようやく思い出した。
タクロウは半年前、赤信号を無視して道路を横断し、車にはねられ大腿骨を骨折した。
その時の手術により、タロウの脚には補強のための金属のプレートが入っていたのだ。
金属探知機はそのプレートに反応していたようだ。
事情を説明し疑いが晴れ、タクロウはやっと衣服を身に着けることができた。
「新聞一面の大事件」「32Good」
良質:15票トリック:4票物語:10票納得感:3票
新聞を読んでいると娘のカメコと目が合ったので、カメオは{娘が殺されずに済むと思った}。
いったいなぜだろうか?
いったいなぜだろうか?
19年10月23日 23:32
【ウミガメのスープ】 [えいみん]
【ウミガメのスープ】 [えいみん]
解説を見る
カメオが朝起きると、枕元にこんな{脅迫状}が置かれていた。
【「娘を殺されたくなければ会社に行くな」】
カメオ「なんだこれ...」
カメオは不審に思いながらも、いつも通り朝食の席につき、新聞を読もうとした。
すると、娘と目が合った。
カメオ「あれ?{新聞に穴空いてるぞ}。」
カメオは、あの【新聞を切り抜いて作られた脅迫状】の送り主が{娘のカメコ}だと気付いた。
後で妻のウミコから聞いた話によると、子供が親に脅迫状を送り、お金を奪った事件をテレビで見て、それを真似て脅迫状を作ったようだ。
カメオ「今日は早く帰って遊んであげるか...」
【「娘を殺されたくなければ会社に行くな」】
カメオ「なんだこれ...」
カメオは不審に思いながらも、いつも通り朝食の席につき、新聞を読もうとした。
すると、娘と目が合った。
カメオ「あれ?{新聞に穴空いてるぞ}。」
カメオは、あの【新聞を切り抜いて作られた脅迫状】の送り主が{娘のカメコ}だと気付いた。
後で妻のウミコから聞いた話によると、子供が親に脅迫状を送り、お金を奪った事件をテレビで見て、それを真似て脅迫状を作ったようだ。
カメオ「今日は早く帰って遊んであげるか...」
「忘れ去られたプレゼント」「32Good」
良質:21票物語:9票納得感:2票
ダイスケは毎年誕生日になると兄のユウキからプレゼントをもらっていたのだが、18歳になった年だけ、兄からのプレゼントはなかった。
数年後にそのことを何気なく口にしたダイスケに対し、ユウキは軽く笑いながらダイスケのスマートフォンにぶら下がる東京タワーのストラップを指差した。
それはダイスケが彼女とお揃いで購入したものだ。
「あげたじゃん」
その言葉にダイスケははっとして硬直し、兄に謝った。
ダイスケは何に気づいたのだろうか?
数年後にそのことを何気なく口にしたダイスケに対し、ユウキは軽く笑いながらダイスケのスマートフォンにぶら下がる東京タワーのストラップを指差した。
それはダイスケが彼女とお揃いで購入したものだ。
「あげたじゃん」
その言葉にダイスケははっとして硬直し、兄に謝った。
ダイスケは何に気づいたのだろうか?
19年11月14日 04:11
【ウミガメのスープ】 [藤井]
【ウミガメのスープ】 [藤井]
相変わらずの深夜組。
解説を見る
【解答】
東京行きの切符代を兄の財布から盗んだことに、兄が気づいていたということ
【解説】
17歳の冬、ダイスケには彼女がいた。
SNSで知り合った彼女とは遠距離恋愛で、相手は東京に住んでいた。
冬休みに東京に行くことを彼女と約束したダイスケ。しかし、お金が足りない。なけなしのバイト代では東京までの片道分が精一杯だった。
その時、ふと魔が差した。
4つ上の兄のユウキは社会人で、日頃からダイスケにご飯を奢ってくれたりした。金銭的に困っている様子はない。
(ちょっと貸してくれ、兄貴……)
ユウキは今風呂に入っている。そっと部屋に入り、鞄の中の財布を探る。
そして中から万札を2枚抜き取った。
またバイトして返すから。その時は軽い気持ちだった。
東京で彼女との楽しい時間を過ごし、地元に帰って年が明ける。
ダイスケの誕生日は1月。今年は兄は仕事で忙しそうだった。
兄から誕生日プレゼントを貰わなかったのは、この年が初めてだった。
あれから特に何を言われるでもなく、そのまま年月は流れていった。
数年後、ダイスケも社会人になった。
仕事終わりに久々に兄と飲み交わす。この日はダイスケの誕生日だった。
「20歳、おめでとう」
「サンキュー兄貴」
グラスワインで乾杯をする。年を重ねても仲の良い兄がいることをダイスケは幸せに思った。
「そういえばさ、俺が18になった年だけ兄貴からプレゼントもらわなかったんだよな」
「え?」
ユウキは意外だというような笑みを浮かべた。そうだっけ?という言葉が続くのだとダイスケは思った。しかし、その口から放たれたのは全く予想外の言葉だった。
「あげたじゃん」
すっと持ち上げられた細い指が、ダイスケのスマートフォンを指し示す。
そこには東京タワーのストラップがぶら下がっていた。
17歳の冬、彼女とお揃いで買ったものだ。
ユウキの財布から盗んだお金で東京に行って、買ったものだ。
兄は、気づいていたのだ。
「……っ、兄貴……気づいて……」
「俺だって大富豪じゃねぇんだからそりゃ気づくって。お前、あの時金無いって嘆いてたし」
「ご、ごめん兄貴!!俺……」
「俺からの18歳の誕生日プレゼントってことにしといてやるよ。まぁ、こんな形じゃなくてダイスケの口から聞きたかったってのが本音だけど」
兄はため息混じりに笑った。
見慣れたはずの顔が、ずっと大人びて見えた。
東京行きの切符代を兄の財布から盗んだことに、兄が気づいていたということ
【解説】
17歳の冬、ダイスケには彼女がいた。
SNSで知り合った彼女とは遠距離恋愛で、相手は東京に住んでいた。
冬休みに東京に行くことを彼女と約束したダイスケ。しかし、お金が足りない。なけなしのバイト代では東京までの片道分が精一杯だった。
その時、ふと魔が差した。
4つ上の兄のユウキは社会人で、日頃からダイスケにご飯を奢ってくれたりした。金銭的に困っている様子はない。
(ちょっと貸してくれ、兄貴……)
ユウキは今風呂に入っている。そっと部屋に入り、鞄の中の財布を探る。
そして中から万札を2枚抜き取った。
またバイトして返すから。その時は軽い気持ちだった。
東京で彼女との楽しい時間を過ごし、地元に帰って年が明ける。
ダイスケの誕生日は1月。今年は兄は仕事で忙しそうだった。
兄から誕生日プレゼントを貰わなかったのは、この年が初めてだった。
あれから特に何を言われるでもなく、そのまま年月は流れていった。
数年後、ダイスケも社会人になった。
仕事終わりに久々に兄と飲み交わす。この日はダイスケの誕生日だった。
「20歳、おめでとう」
「サンキュー兄貴」
グラスワインで乾杯をする。年を重ねても仲の良い兄がいることをダイスケは幸せに思った。
「そういえばさ、俺が18になった年だけ兄貴からプレゼントもらわなかったんだよな」
「え?」
ユウキは意外だというような笑みを浮かべた。そうだっけ?という言葉が続くのだとダイスケは思った。しかし、その口から放たれたのは全く予想外の言葉だった。
「あげたじゃん」
すっと持ち上げられた細い指が、ダイスケのスマートフォンを指し示す。
そこには東京タワーのストラップがぶら下がっていた。
17歳の冬、彼女とお揃いで買ったものだ。
ユウキの財布から盗んだお金で東京に行って、買ったものだ。
兄は、気づいていたのだ。
「……っ、兄貴……気づいて……」
「俺だって大富豪じゃねぇんだからそりゃ気づくって。お前、あの時金無いって嘆いてたし」
「ご、ごめん兄貴!!俺……」
「俺からの18歳の誕生日プレゼントってことにしといてやるよ。まぁ、こんな形じゃなくてダイスケの口から聞きたかったってのが本音だけど」
兄はため息混じりに笑った。
見慣れたはずの顔が、ずっと大人びて見えた。
「アングリーテイスト」「32Good」
良質:21票トリック:7票納得感:4票
妻が怒っている時は、弁当のおかずがとても手の込んだ豪華なものになる。
一体何故だろうか?
一体何故だろうか?
20年02月25日 23:24
【ウミガメのスープ】 [ゴリリーマン]
【ウミガメのスープ】 [ゴリリーマン]
解説を見る
男は主夫で、毎日仕事に出かける奥さんの弁当を作っている。
男に非があり妻を怒らせてしまった翌日は、謝罪の意を込め、いつもより早起きして手の込んだお弁当を作る。
海苔でごはんに「ごめんね。愛してるよ。」とか書いたりすると、奥さんもニッコリ。
そんな夫婦。
男に非があり妻を怒らせてしまった翌日は、謝罪の意を込め、いつもより早起きして手の込んだお弁当を作る。
海苔でごはんに「ごめんね。愛してるよ。」とか書いたりすると、奥さんもニッコリ。
そんな夫婦。