「HAPPY DEATH DAY DEAR」「34Good」
良質:18票トリック:5票物語:10票納得感:1票
家族に心が病んでいるのではと心配されている田中は精神病院に通っている。
しかし田中本人は自分が病気だとは思っていない。
病気じゃないと思いながらも田中が病院に通う理由。
それは大好きな看護師さんに会う為である。
しかしある日突然彼女はあの世に行ってしまった。
彼女の死因は自殺。
院長の執拗なるハラスメントを苦にして自らの命を絶ったのだった。
もう二度と彼女とは会えなくなってしまった。
田中は涙を流して喜んだ。
一体なぜ?
しかし田中本人は自分が病気だとは思っていない。
病気じゃないと思いながらも田中が病院に通う理由。
それは大好きな看護師さんに会う為である。
しかしある日突然彼女はあの世に行ってしまった。
彼女の死因は自殺。
院長の執拗なるハラスメントを苦にして自らの命を絶ったのだった。
もう二度と彼女とは会えなくなってしまった。
田中は涙を流して喜んだ。
一体なぜ?
22年09月20日 23:51
【ウミガメのスープ】 [ダニー]
【ウミガメのスープ】 [ダニー]
解説を見る
短い解説
自殺して幽霊となった大好きな彼女に会うために廃病院に通っていた田中。
幾度の田中との逢瀬でこの世の未練が消え去り、成仏できた彼女。
田中の前でさよならを告げて突然あの世に行ってしまった。
田中は悲しみの涙を流しながらも、彼女が現世での苦しみから解放されたことを喜んだのであった。
長い解説
「田中、今までありがとう。そしてごめんなさい」
それ以降更新が止まってしまった沢渡からのLINEを見つめる田中。
沢渡若菜は自殺した。
勤め先の精神病院、その院長からの執拗なハラスメントに耐えられず、自らの命を絶った。
フリーのジャーナリストとして活動している田中が、沢渡からの相談を受けて、院長のハラスメントの実態を記事にし告発する準備をしている最中のことだった。
中学生の時に1年間だけ付き合っていた沢渡からLINEが届いたのは2年前。
「まだ電話番号変わってないんだね」
そんな突然のメッセージから二人のやりとりが始まり、割と頻繁に連絡を取り合っていた。
上京して活動している田中と地元に就職した沢渡。
距離を言い訳にして二人は2年間一度も会うことはなかった。
今の関係性がとても心地良い。
会ってしまえばそれが変わってしまうのではないか、と二人ともうっすらと感じており、それをなんとなくおそれていたのだった。
しかし沢渡自殺の報を受けて田中は彼女に会いに行かなかったことを激しく後悔した。
もし会って話していれば、もし自分と彼女の関係性が変わっていれば、彼女は死ぬことはなかったかもしれない、と。
「田中、今までありがとう。そしてごめんなさい」
一日一回は時の止まってしまったLINEを見つめる。
そのたび押し寄せる慚愧の念に押し潰されそうになるが、田中はその習慣をやめなかった。
そして田中は彼女のことを誰にも相談しなかった。
誰かに話してしまうと自分の罪が水に落としたインクのように薄くなってしまう気がしたからだ。
田中なりの不器用なやり方で彼女の死と向き合い続けて、さらに2年が経った頃、田中の耳にある噂が入る。
「地元にある閉院となった精神病院に幽霊がでる」
地元の友人との酒の席で聞いた話は田中の耳から離れなくなってしまった。
彼女が勤めていた精神病院は田中が告発するまでもなく、彼女の自殺を発端に院長へのバッシングが集まり、閉院にまで追い込まれた。
今は廃病院となってしまったそこに幽霊が出るというのだ。
居ても立っても居られなくなってしまった田中は久しぶりに帰郷することにした。
実家に戻り、両親には事情は一切説明せず、ある程度の準備を整えて田中は夜中にその病院に忍び込んだ。
当たり前だが門扉には鍵が掛かっており、侵入できる場所は一階の割れた窓からのみだった。
真夏の深夜、日が落ちても蒸し暑い気温でうっすらと汗をかくぐらいなのだが、病院の中はなぜか少し肌寒い。
田中はホラー系が苦手で、本来なら「幽霊が出る廃病院」など絶対に入ることなどできないのだが「沢渡に会える一縷の望み」のせいなのか、今の田中には全く恐怖心がなかった。
彼女はロッカールームで首を吊って自殺したという情報を得ていた田中は、そのロッカールームへと足を進めた。
そしてそのロッカールーム前。
中から女性の啜り泣く声が聞こえてくる。
田中は全く恐れもせずその扉を開いた。
いる。
全く光が差さない室内なのにそれだけはくっきりと視認することができる。
それは、紛れもなく、沢渡若菜だった。
さて会えるという希望を持ちながら、どこかでそれを信じていなかった田中は目の前の現実にどう対応してよいのか大層戸惑った。
そんな田中の存在に気づいた彼女。
「誰?」
沢渡の声だった。
以前に酔っ払って何度か電話をかけたことがある。
その時の声とまったく変わっていない。
その声で今までの戸惑いが消え、心がスッと落ち着いた。
「俺だ、田中だ。覚えているか?」
彼女の問いにそう応じた。
「誰? わからない」
「わからないわからないわからないワカラナイワカラナイ!」
突然彼女が叫び出した。
ロッカールームがガタガタと揺れ出す。
「落ち着け沢渡! 俺だ!同じ中学だった田中!」
「ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ!」
彼女の叫び声とシンクロするように揺れだしたロッカールーム。
その叫び声を聞きながら田中の意識は徐々に遠のいていき、そして気を失った。
目を覚ましたのは早朝。病院の前だった。
急いでロッカールームへと向かったが、あれほど揺れていたのにその形跡は全くなく、そして彼女もいなくなっていた。
その日から毎夜病院に忍び込むようになった田中。
彼女はいつもあの場所に居た。
しかし何度アプローチしても、最初の出会いと同じく、彼女に自分のことを認識してもらうことができず、毎回病院の前で朝を迎えることになった。
そんな田中を家族は訝しんだ。
弟に尾行され、深夜廃病院に忍び込む様子を目撃されてからは「心が病んでしまったのか?」と疑われる始末。
田中はそれでも家族に事情を話そうとはしなかった。
そんなある日。
田中は自室で懐かしいものを見つけた。
沢渡と付き合っていた中学3年の時。
インフルエンザになった田中を看病しに来てくれた彼女に、病気をうつしてはいけないと部屋に入ることを拒んだことがあった。
彼女は一旦自分の家に戻り、そして糸電話を作って持ってきたのだった。
それを見て、そこまでするかと笑ってしまった田中に彼女はむくれてしまう。
そんな彼女を宥めるのに糸電話を使って謝り倒すと、彼女もゲラゲラと笑い出した。
そして親に怒られるまで彼女とたわいもない会話をしたのだった。
紙コップで作られた簡素な糸電話。
自分はこれを大事にしまっていたんだな。
「よし!」
今度こそ沢渡にわかってもらえる気がする。
確信めいたものを感じ、田中は廃病院のロッカールームへと向かった。
「誰?」
最初の出会いと変わらない彼女の問い。
田中はそれには応じ返さず、そっと彼女の近くに糸電話の片割れを置いた。
そしてもう片方を持ち、ロッカールームから出て彼女が見えない位置にまできた田中は、その糸電話で彼女に語りかけた。
もちろん糸が垂れ下がった状態では声が届くわけはない。
それでも田中は、自分のことや中学の時の思い出などをひとり語りした。
そして気がついたら、いつのまにか垂れ下がっていた糸が彼女に向かってピンと伸びていた。
「田中?」
「ああ俺だ。田中。思い出したか?」
「インフルエンザ、辛くない?」
「いつの話をしてんだよ」
「田中」
「そう、田中だ」
「田中、ごめんね。ごめんなさい」
彼女の謝罪の言葉を聞いた田中はついに涙腺に溜まっていたものを堪えきれなくなってしまった。
「ご、ごめんって何に、だよ。あ、謝んのは俺だ。本当は、本当はずっと会いに行きたかった。で、でもなんか怖くて。盛り上がってんのは自分だけなんじゃないのかな、とか。なに会いにきてんだこいつって思われたりしないかな、とか、さ。本当は辛い目にあっている沢渡にあって直接話を聞きたかったんだ。い、いや、俺が沢渡を慰められるって自信があった訳じゃ、ないん、だけど」
「落ち着け田中」
「・・・はい」
「私もたぶん田中と同じ気持ちだった」
「同じ気持ちって・・・俺を好きだったってこと?」
「ち、違っ!・・・いや違わないか。なんか変にカッコつけて会わないようにしてた。うん。きっとそれは田中のことが好きだったから。会って失望されたり、それで今の関係が壊れたりするのが怖かった」
「一緒、だったのかあ」
「一緒だったのね」
「・・・」
「田中」
「ん?」
「こっちにきてよ。幽霊になっちゃったけど、私に会いにきてよ」
「うん」
今まで真っ暗だったロッカールーム。
今は眩しいくらいに月明かりが差し込んでいる。
その中に佇む彼女。
とても幻想的で、そしてとても美しかった。
その美しさに呆けている田中に彼女は話しだす。
「私、ずっと溺れていたの」
「溺れる?」
「実際に溺れていたわけじゃないんだけど、溺れて息ができない苦しみみたいなのがずっと続いていたの」
「・・・」
「今はとても気持ちがいい。これって田中のおかげなんだね」
「うん、恩着せがましいけど、たぶん俺のおかげ」
「田中」
「ん?」
「たぶんもうお別れだ」
「そ、か」
「会えてよかった」
「俺もだ」
「好きだよ田中」
「俺も・・・グスッ、だ」
「さよなら」
「ざよ、な"ら」
そして月の明かりの中で彼女の輪郭がどんどんと曖昧になり。
彼女は消えた。
やっと会えたのにもう二度と会えなくなってしまった。
でも。
彼女を救うことができた。
俺だからできたんだ。
田中は涙と鼻水まみれの顔で月を見上げて、ガッツポーズを取った。
「さよなら沢渡。また何十年か後に会おうな」
自殺して幽霊となった大好きな彼女に会うために廃病院に通っていた田中。
幾度の田中との逢瀬でこの世の未練が消え去り、成仏できた彼女。
田中の前でさよならを告げて突然あの世に行ってしまった。
田中は悲しみの涙を流しながらも、彼女が現世での苦しみから解放されたことを喜んだのであった。
長い解説
「田中、今までありがとう。そしてごめんなさい」
それ以降更新が止まってしまった沢渡からのLINEを見つめる田中。
沢渡若菜は自殺した。
勤め先の精神病院、その院長からの執拗なハラスメントに耐えられず、自らの命を絶った。
フリーのジャーナリストとして活動している田中が、沢渡からの相談を受けて、院長のハラスメントの実態を記事にし告発する準備をしている最中のことだった。
中学生の時に1年間だけ付き合っていた沢渡からLINEが届いたのは2年前。
「まだ電話番号変わってないんだね」
そんな突然のメッセージから二人のやりとりが始まり、割と頻繁に連絡を取り合っていた。
上京して活動している田中と地元に就職した沢渡。
距離を言い訳にして二人は2年間一度も会うことはなかった。
今の関係性がとても心地良い。
会ってしまえばそれが変わってしまうのではないか、と二人ともうっすらと感じており、それをなんとなくおそれていたのだった。
しかし沢渡自殺の報を受けて田中は彼女に会いに行かなかったことを激しく後悔した。
もし会って話していれば、もし自分と彼女の関係性が変わっていれば、彼女は死ぬことはなかったかもしれない、と。
「田中、今までありがとう。そしてごめんなさい」
一日一回は時の止まってしまったLINEを見つめる。
そのたび押し寄せる慚愧の念に押し潰されそうになるが、田中はその習慣をやめなかった。
そして田中は彼女のことを誰にも相談しなかった。
誰かに話してしまうと自分の罪が水に落としたインクのように薄くなってしまう気がしたからだ。
田中なりの不器用なやり方で彼女の死と向き合い続けて、さらに2年が経った頃、田中の耳にある噂が入る。
「地元にある閉院となった精神病院に幽霊がでる」
地元の友人との酒の席で聞いた話は田中の耳から離れなくなってしまった。
彼女が勤めていた精神病院は田中が告発するまでもなく、彼女の自殺を発端に院長へのバッシングが集まり、閉院にまで追い込まれた。
今は廃病院となってしまったそこに幽霊が出るというのだ。
居ても立っても居られなくなってしまった田中は久しぶりに帰郷することにした。
実家に戻り、両親には事情は一切説明せず、ある程度の準備を整えて田中は夜中にその病院に忍び込んだ。
当たり前だが門扉には鍵が掛かっており、侵入できる場所は一階の割れた窓からのみだった。
真夏の深夜、日が落ちても蒸し暑い気温でうっすらと汗をかくぐらいなのだが、病院の中はなぜか少し肌寒い。
田中はホラー系が苦手で、本来なら「幽霊が出る廃病院」など絶対に入ることなどできないのだが「沢渡に会える一縷の望み」のせいなのか、今の田中には全く恐怖心がなかった。
彼女はロッカールームで首を吊って自殺したという情報を得ていた田中は、そのロッカールームへと足を進めた。
そしてそのロッカールーム前。
中から女性の啜り泣く声が聞こえてくる。
田中は全く恐れもせずその扉を開いた。
いる。
全く光が差さない室内なのにそれだけはくっきりと視認することができる。
それは、紛れもなく、沢渡若菜だった。
さて会えるという希望を持ちながら、どこかでそれを信じていなかった田中は目の前の現実にどう対応してよいのか大層戸惑った。
そんな田中の存在に気づいた彼女。
「誰?」
沢渡の声だった。
以前に酔っ払って何度か電話をかけたことがある。
その時の声とまったく変わっていない。
その声で今までの戸惑いが消え、心がスッと落ち着いた。
「俺だ、田中だ。覚えているか?」
彼女の問いにそう応じた。
「誰? わからない」
「わからないわからないわからないワカラナイワカラナイ!」
突然彼女が叫び出した。
ロッカールームがガタガタと揺れ出す。
「落ち着け沢渡! 俺だ!同じ中学だった田中!」
「ワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイワカラナイ!」
彼女の叫び声とシンクロするように揺れだしたロッカールーム。
その叫び声を聞きながら田中の意識は徐々に遠のいていき、そして気を失った。
目を覚ましたのは早朝。病院の前だった。
急いでロッカールームへと向かったが、あれほど揺れていたのにその形跡は全くなく、そして彼女もいなくなっていた。
その日から毎夜病院に忍び込むようになった田中。
彼女はいつもあの場所に居た。
しかし何度アプローチしても、最初の出会いと同じく、彼女に自分のことを認識してもらうことができず、毎回病院の前で朝を迎えることになった。
そんな田中を家族は訝しんだ。
弟に尾行され、深夜廃病院に忍び込む様子を目撃されてからは「心が病んでしまったのか?」と疑われる始末。
田中はそれでも家族に事情を話そうとはしなかった。
そんなある日。
田中は自室で懐かしいものを見つけた。
沢渡と付き合っていた中学3年の時。
インフルエンザになった田中を看病しに来てくれた彼女に、病気をうつしてはいけないと部屋に入ることを拒んだことがあった。
彼女は一旦自分の家に戻り、そして糸電話を作って持ってきたのだった。
それを見て、そこまでするかと笑ってしまった田中に彼女はむくれてしまう。
そんな彼女を宥めるのに糸電話を使って謝り倒すと、彼女もゲラゲラと笑い出した。
そして親に怒られるまで彼女とたわいもない会話をしたのだった。
紙コップで作られた簡素な糸電話。
自分はこれを大事にしまっていたんだな。
「よし!」
今度こそ沢渡にわかってもらえる気がする。
確信めいたものを感じ、田中は廃病院のロッカールームへと向かった。
「誰?」
最初の出会いと変わらない彼女の問い。
田中はそれには応じ返さず、そっと彼女の近くに糸電話の片割れを置いた。
そしてもう片方を持ち、ロッカールームから出て彼女が見えない位置にまできた田中は、その糸電話で彼女に語りかけた。
もちろん糸が垂れ下がった状態では声が届くわけはない。
それでも田中は、自分のことや中学の時の思い出などをひとり語りした。
そして気がついたら、いつのまにか垂れ下がっていた糸が彼女に向かってピンと伸びていた。
「田中?」
「ああ俺だ。田中。思い出したか?」
「インフルエンザ、辛くない?」
「いつの話をしてんだよ」
「田中」
「そう、田中だ」
「田中、ごめんね。ごめんなさい」
彼女の謝罪の言葉を聞いた田中はついに涙腺に溜まっていたものを堪えきれなくなってしまった。
「ご、ごめんって何に、だよ。あ、謝んのは俺だ。本当は、本当はずっと会いに行きたかった。で、でもなんか怖くて。盛り上がってんのは自分だけなんじゃないのかな、とか。なに会いにきてんだこいつって思われたりしないかな、とか、さ。本当は辛い目にあっている沢渡にあって直接話を聞きたかったんだ。い、いや、俺が沢渡を慰められるって自信があった訳じゃ、ないん、だけど」
「落ち着け田中」
「・・・はい」
「私もたぶん田中と同じ気持ちだった」
「同じ気持ちって・・・俺を好きだったってこと?」
「ち、違っ!・・・いや違わないか。なんか変にカッコつけて会わないようにしてた。うん。きっとそれは田中のことが好きだったから。会って失望されたり、それで今の関係が壊れたりするのが怖かった」
「一緒、だったのかあ」
「一緒だったのね」
「・・・」
「田中」
「ん?」
「こっちにきてよ。幽霊になっちゃったけど、私に会いにきてよ」
「うん」
今まで真っ暗だったロッカールーム。
今は眩しいくらいに月明かりが差し込んでいる。
その中に佇む彼女。
とても幻想的で、そしてとても美しかった。
その美しさに呆けている田中に彼女は話しだす。
「私、ずっと溺れていたの」
「溺れる?」
「実際に溺れていたわけじゃないんだけど、溺れて息ができない苦しみみたいなのがずっと続いていたの」
「・・・」
「今はとても気持ちがいい。これって田中のおかげなんだね」
「うん、恩着せがましいけど、たぶん俺のおかげ」
「田中」
「ん?」
「たぶんもうお別れだ」
「そ、か」
「会えてよかった」
「俺もだ」
「好きだよ田中」
「俺も・・・グスッ、だ」
「さよなら」
「ざよ、な"ら」
そして月の明かりの中で彼女の輪郭がどんどんと曖昧になり。
彼女は消えた。
やっと会えたのにもう二度と会えなくなってしまった。
でも。
彼女を救うことができた。
俺だからできたんだ。
田中は涙と鼻水まみれの顔で月を見上げて、ガッツポーズを取った。
「さよなら沢渡。また何十年か後に会おうな」
「口は靴ほどに」「34Good」
良質:12票物語:14票納得感:8票
いつも信也は玄関先で靴を履いてから「いってきます」と言うようにしている。
{なぜ靴を履く前ではいけないのだろう?}
{なぜ靴を履く前ではいけないのだろう?}
22年11月18日 22:02
【ウミガメのスープ】 [だだだだ3号機]
【ウミガメのスープ】 [だだだだ3号機]
解説を見る
【簡易解説】
二人は身長差があるため、信也が玄関土間に降りてからでないと、妻の美優と「いってらっしゃいのキス」をしづらいから。
【ながいやつ】
新婚生活真っ只中の信也と美優。
平日は仕事で朝早くに家を出る信也のことを、美優はいつも玄関先までお見送りしに来てくれる。
そんな時にアッツアツの新婚夫婦がやることは一つである。
【「{いってらっしゃいのキス}」である。】
そう!二人は新婚カップル!
アッツアツである!
当然「いってらっしゃいのキス」はマストなのだ!!
…えー、コホン。
この二人も毎日「いってらっしゃいのキス」をするのだが、ここで一つ問題がある。実はこの二人、それなりに身長差があるのだ。
世間ではキスしやすい身長差は12cmだとか言われているが、二人の身長差は20cm以上。
以前、{玄関先で靴を履く前に「いってきます」と言った時}は、こんなことがあった。
◆◆◆
「じゃあ美優、いってきます。」
「いってらっしゃい。(セノビー)」
「…。」
「…ごめん、ちょっと屈んでもらえる?」
「(あっ…キスか。)うん…。」
◆◆◆
いたたまれない。
キスできないこともないが、毎日となると微妙に億劫だろう。
しかし、靴を履いた後ならどうだろうか。
玄関土間に降りて靴を履いてしまえば、二人の身長差は段差の分縮まる。靴を履いた分信也の身長は高くなってしまうが、段差に比べれば厚底でもない靴の分なんてたかが知れているというものだ。
そのあと「いってきます」「いってらっしゃい」と続ければ、お互い楽な姿勢で自然と唇を重ねられてしまう。
以来、{信也は美優と自然にキスしやすいように、玄関先では必ず靴に履き替えてから「いってきます」と言うようにしている}のだ。
信也の決めたルーティーン。
それは何より、二人の愛の証なのである。
末永くお幸せに。
(ちなみにおかえりはハグなので靴を脱ぐ前後どちらでも構いません。)
二人は身長差があるため、信也が玄関土間に降りてからでないと、妻の美優と「いってらっしゃいのキス」をしづらいから。
【ながいやつ】
新婚生活真っ只中の信也と美優。
平日は仕事で朝早くに家を出る信也のことを、美優はいつも玄関先までお見送りしに来てくれる。
そんな時にアッツアツの新婚夫婦がやることは一つである。
【「{いってらっしゃいのキス}」である。】
そう!二人は新婚カップル!
アッツアツである!
当然「いってらっしゃいのキス」はマストなのだ!!
…えー、コホン。
この二人も毎日「いってらっしゃいのキス」をするのだが、ここで一つ問題がある。実はこの二人、それなりに身長差があるのだ。
世間ではキスしやすい身長差は12cmだとか言われているが、二人の身長差は20cm以上。
以前、{玄関先で靴を履く前に「いってきます」と言った時}は、こんなことがあった。
◆◆◆
「じゃあ美優、いってきます。」
「いってらっしゃい。(セノビー)」
「…。」
「…ごめん、ちょっと屈んでもらえる?」
「(あっ…キスか。)うん…。」
◆◆◆
いたたまれない。
キスできないこともないが、毎日となると微妙に億劫だろう。
しかし、靴を履いた後ならどうだろうか。
玄関土間に降りて靴を履いてしまえば、二人の身長差は段差の分縮まる。靴を履いた分信也の身長は高くなってしまうが、段差に比べれば厚底でもない靴の分なんてたかが知れているというものだ。
そのあと「いってきます」「いってらっしゃい」と続ければ、お互い楽な姿勢で自然と唇を重ねられてしまう。
以来、{信也は美優と自然にキスしやすいように、玄関先では必ず靴に履き替えてから「いってきます」と言うようにしている}のだ。
信也の決めたルーティーン。
それは何より、二人の愛の証なのである。
末永くお幸せに。
(ちなみにおかえりはハグなので靴を脱ぐ前後どちらでも構いません。)
「ジンバブエのジンクス」「33Good」
良質:21票トリック:2票物語:2票納得感:8票
①僕がジンバブエの場所を知らなかったこと
②僕がその時ユウイチと一緒にいたこと
③そのとき、僕に【A】が無かったこと
これら3つが、
『ユウイチが死んでしまうかもしれないことに、僕が気づいた理由』
として適切になるように、
理由も含めて3文字の【A】を補完せよ。
①僕がジンバブエの場所を知らなかったこと
②僕がその時ユウイチと一緒にいたこと
③そのとき、僕に【A】が無かったこと
これら3つが、
『ユウイチが死んでしまうかもしれないことに、僕が気づいた理由』
として適切になるように、
理由も含めて3文字の【A】を補完せよ。
19年02月03日 15:55
【20の扉】 [ごがつあめ涼花]
【20の扉】 [ごがつあめ涼花]

質問数の制限はありません。基礎質含めて歓迎します
解説を見る
________________
「ユウイチ、ちょっとスマホ借りていい?忘れちゃってさ」
「えっ?あ、いいけど・・・なんか調べるの?」
「うん。ジンバブエってどこにあったかなー?って。ほら、地理の試験近いじゃん」
「ああ、なるほどね。いいよ。」
僕はユウイチからスマホを受け取ると、検索エンジンを開き、【ジンバブエ 位置】を調べようとした。
しかし、【じ】を打ち込んだところで、
『自殺 方法』
『自殺 苦しくない』
『自殺 遺書 書き方』
ユウイチのスマホの予測変換に現れたのは、そんな言葉の数々であった。
「え・・・?」
________________
【A】=スマホ
【要約】
ジンバブエの位置について知りたかったが、スマホが無く調べられなかった『僕』は、ユウイチにスマホを借りた。
しかし、【ジンバブエ】の『ジ』を打ち込んだところで、予測変換に『じ』から始まる【自殺】というワードが多く出てきたことから、ユウイチが自殺しようとしているかもしれないことに気づいた。
「ユウイチ、ちょっとスマホ借りていい?忘れちゃってさ」
「えっ?あ、いいけど・・・なんか調べるの?」
「うん。ジンバブエってどこにあったかなー?って。ほら、地理の試験近いじゃん」
「ああ、なるほどね。いいよ。」
僕はユウイチからスマホを受け取ると、検索エンジンを開き、【ジンバブエ 位置】を調べようとした。
しかし、【じ】を打ち込んだところで、
『自殺 方法』
『自殺 苦しくない』
『自殺 遺書 書き方』
ユウイチのスマホの予測変換に現れたのは、そんな言葉の数々であった。
「え・・・?」
________________
【A】=スマホ
【要約】
ジンバブエの位置について知りたかったが、スマホが無く調べられなかった『僕』は、ユウイチにスマホを借りた。
しかし、【ジンバブエ】の『ジ』を打ち込んだところで、予測変換に『じ』から始まる【自殺】というワードが多く出てきたことから、ユウイチが自殺しようとしているかもしれないことに気づいた。
「スタンプラリー」「32Good」
良質:9票トリック:14票物語:3票納得感:6票
その日、らてらて町では恒例のスタンプラリーイベントが催された。
全てのスタンプを集めると貰える豪華景品を目当てに、毎年多くの参加者が集まっており、ユキノブもその一人だった。
いつもは景品がなくなる前にいち早くまわり終える彼だったが、今年は一つ目のスタンプだけを押して満足そうに帰ってしまった。
一体なぜだろう?
全てのスタンプを集めると貰える豪華景品を目当てに、毎年多くの参加者が集まっており、ユキノブもその一人だった。
いつもは景品がなくなる前にいち早くまわり終える彼だったが、今年は一つ目のスタンプだけを押して満足そうに帰ってしまった。
一体なぜだろう?
20年04月20日 22:14
【ウミガメのスープ】 [元灯台暮らし]
【ウミガメのスープ】 [元灯台暮らし]
解説を見る
いつもは参加者としてイベントを楽しんでいたユキノブだったが、今年は友人に誘われボランティアスタッフとして手伝うことにした。
彼は一つ目のスタンプ地点を受け持ち、訪れた参加者のカードにスタンプを押していった。
例年とは逆の立場で笑顔の参加者達と接するのはなかなかに新鮮で、丸一日働いた疲れはありつつも、たまにはこういうのも悪くないなと、彼は満足げに帰路についた。
彼は一つ目のスタンプ地点を受け持ち、訪れた参加者のカードにスタンプを押していった。
例年とは逆の立場で笑顔の参加者達と接するのはなかなかに新鮮で、丸一日働いた疲れはありつつも、たまにはこういうのも悪くないなと、彼は満足げに帰路についた。
「出られない男」「32Good」
良質:18票トリック:1票物語:10票納得感:3票
男は車を静かに駐車場へと滑り込ませた。
後ろを確認しながら、慎重に車を停める。
手に取ったスマートフォンは白く光り、消えた。
男は体の力を抜き、所在無げにバックミラーを眺める。
それから数分。微かに聞こえている音は少しずつ大きくなる・・・
よし、と男はドアに手を掛けた。
その時、音がやんだ。
思わずドアから手を離す。
危ない危ない。もう失敗はご免だぞ。
男は深く座り直すと、そっと息をついた。
音は再び聞こえ始めている。
念には念を、だよな。
さて、男はいったい何をしようとしているのだろうか?
状況を推理してみて欲しい。
後ろを確認しながら、慎重に車を停める。
手に取ったスマートフォンは白く光り、消えた。
男は体の力を抜き、所在無げにバックミラーを眺める。
それから数分。微かに聞こえている音は少しずつ大きくなる・・・
よし、と男はドアに手を掛けた。
その時、音がやんだ。
思わずドアから手を離す。
危ない危ない。もう失敗はご免だぞ。
男は深く座り直すと、そっと息をついた。
音は再び聞こえ始めている。
念には念を、だよな。
さて、男はいったい何をしようとしているのだろうか?
状況を推理してみて欲しい。
20年05月26日 17:57
【ウミガメのスープ】 [きまぐれ夫人]
【ウミガメのスープ】 [きまぐれ夫人]

SP靴下さんに最大級の感謝を。
解説を見る
【簡易解説】
男は、後部座席の息子(子ども)が完全に寝入るのを待って自宅に連れて帰ろうとしている。
以前、眠りの浅いうちに抱き上げて起こしてしまい、その後寝かしつけるのに苦労したことがあるため、かなり慎重になっているのである。
寝息が一瞬途切れただけでビクつくほどに。
【解説】
マンションの駐車場に着いた、と夫からメールがきた。続けて、念のためもうちょっと車の中で待つよ、と。
私は思わず吹き出してしまった。
かなり慎重になってるみたい。まあ、無理もないか。
先日、下の娘の世話をする私を残して、夫は2歳の息子を連れ、車で小一時間のところにある私の実家までドライブ旅行に出かけた。
今日と同じように。
二人だけのお出かけは初めてとあって、夫は少し緊張した様子ながらも、「なんだか王子さまのお供で冒険に行くみたいな気分だなあ」と嬉しそう。
パパ大好きの息子も、いつもよりはしゃぎ気味で出発。
おじいちゃん、おばあちゃんと楽しい時間を過ごし、晩ご飯をごちそうになって、そして二人の冒険は無事ゴールを迎える・・・はずだったのだけれど。
マンションの駐車場まで帰りついた夫は、長旅に疲れて小さく寝息をたてている息子をチャイルドシートから降ろそうとしたのだが、どうやら眠りがまだ浅かったらしい。
寝入り端を起こされた息子はグズりだした。さらに、思いがけない展開にうろたえる夫の不安が伝染して、息子はたちまちギャン泣き。
そうなったら男の人はもう無力だ。
身をよじって泣く息子に顔をペチペチと叩かれながら、夫はショボンと帰ってきた。
それから一時間近くかけてなんとか寝かしつけたのだけど、その間、夫は私と息子に交互に謝っていた。
それがトラウマになったみたい。
今日も出掛けに「今日は楽しく終わりたいなあ」と情けない顔で言っていた。
大丈夫。泣いたって怒ったって、あなたの息子はパパとの冒険をきっと楽しんでいますよ。
よーし。寝床はできたし、お風呂も沸いた。パパのビールも冷えてます。下の娘は白河夜船。あとは二人を待つだけだ。もしも泣いて帰っても、私がなんとかしようじゃないか。
さてさて、今夜の首尾はどうかな?
チャイムが鳴った。
私は立ちあがり、玄関に向かう。
おかえりなさい、王子さま。
そして。
パパ、お疲れさまでした。
男は、後部座席の息子(子ども)が完全に寝入るのを待って自宅に連れて帰ろうとしている。
以前、眠りの浅いうちに抱き上げて起こしてしまい、その後寝かしつけるのに苦労したことがあるため、かなり慎重になっているのである。
寝息が一瞬途切れただけでビクつくほどに。
【解説】
マンションの駐車場に着いた、と夫からメールがきた。続けて、念のためもうちょっと車の中で待つよ、と。
私は思わず吹き出してしまった。
かなり慎重になってるみたい。まあ、無理もないか。
先日、下の娘の世話をする私を残して、夫は2歳の息子を連れ、車で小一時間のところにある私の実家までドライブ旅行に出かけた。
今日と同じように。
二人だけのお出かけは初めてとあって、夫は少し緊張した様子ながらも、「なんだか王子さまのお供で冒険に行くみたいな気分だなあ」と嬉しそう。
パパ大好きの息子も、いつもよりはしゃぎ気味で出発。
おじいちゃん、おばあちゃんと楽しい時間を過ごし、晩ご飯をごちそうになって、そして二人の冒険は無事ゴールを迎える・・・はずだったのだけれど。
マンションの駐車場まで帰りついた夫は、長旅に疲れて小さく寝息をたてている息子をチャイルドシートから降ろそうとしたのだが、どうやら眠りがまだ浅かったらしい。
寝入り端を起こされた息子はグズりだした。さらに、思いがけない展開にうろたえる夫の不安が伝染して、息子はたちまちギャン泣き。
そうなったら男の人はもう無力だ。
身をよじって泣く息子に顔をペチペチと叩かれながら、夫はショボンと帰ってきた。
それから一時間近くかけてなんとか寝かしつけたのだけど、その間、夫は私と息子に交互に謝っていた。
それがトラウマになったみたい。
今日も出掛けに「今日は楽しく終わりたいなあ」と情けない顔で言っていた。
大丈夫。泣いたって怒ったって、あなたの息子はパパとの冒険をきっと楽しんでいますよ。
よーし。寝床はできたし、お風呂も沸いた。パパのビールも冷えてます。下の娘は白河夜船。あとは二人を待つだけだ。もしも泣いて帰っても、私がなんとかしようじゃないか。
さてさて、今夜の首尾はどうかな?
チャイムが鳴った。
私は立ちあがり、玄関に向かう。
おかえりなさい、王子さま。
そして。
パパ、お疲れさまでした。