「ウィークエンド・ラプソディー」「24Good」
良質:12票トリック:1票物語:7票納得感:4票
ーカメオの日記ー
○月×日(金)
最悪。
あさって、カメコをユニバーチャル・スタジオ・ジャポンに連れて行くことになった。
母さんの都合が急に悪くなったって。
あんたどうせ土日はゴロゴロしてるんだから、って。横暴だぜ、まったく。
せっかくの休みに中坊のお守りかよ。だりー。
テーマパークなんか俺、行ったことねえし、興味すらねえよ。
しかも、妹とふたりってか。マジユウウツ。
○月△日(日)
っぶねー。うっかりあの店入るとこだったよ。ギリギリでその危険性に気付いた俺、天才。間一髪。やべー。
まあ、杞憂ってやつかも知んないけど、万が一ってことがあるし。
男にはプライドってもんがあるのだ。
ーカメコの日記ー
○月△日(日)
今日は楽しかった!お兄ちゃんに感謝。
二人とも初めてのUSJだから、もっとうろうろしちゃうかと思ったけど、案外大丈夫だったな。
あ、でも、ひとつだけ変なことがあったぞ。
「昼めしはここにしよう」ってお兄ちゃんがお店決めたんだよね。
ガイドブックには『気さくで話好きなスタッフがおもてなし。ウミガメのスープも★★★!』って書いてあるお店。
なのにお兄ちゃん、そのレストランに入ろうとしてドアの前に立ったら、なんかちょっと考えてクルッと振り返って「やっぱりやめる」ってスタスタ行っちゃった。
追いかけて訳を聞いても「別に」「なんとなく」って。
あれ、なんだったんだろ?
…さて、カメコが不思議に思っているカメオの行動。なぜ一度は入ろうとしたレストランに入らなかったのか?その理由を推理してみてくださいませんか?
○月×日(金)
最悪。
あさって、カメコをユニバーチャル・スタジオ・ジャポンに連れて行くことになった。
母さんの都合が急に悪くなったって。
あんたどうせ土日はゴロゴロしてるんだから、って。横暴だぜ、まったく。
せっかくの休みに中坊のお守りかよ。だりー。
テーマパークなんか俺、行ったことねえし、興味すらねえよ。
しかも、妹とふたりってか。マジユウウツ。
○月△日(日)
っぶねー。うっかりあの店入るとこだったよ。ギリギリでその危険性に気付いた俺、天才。間一髪。やべー。
まあ、杞憂ってやつかも知んないけど、万が一ってことがあるし。
男にはプライドってもんがあるのだ。
ーカメコの日記ー
○月△日(日)
今日は楽しかった!お兄ちゃんに感謝。
二人とも初めてのUSJだから、もっとうろうろしちゃうかと思ったけど、案外大丈夫だったな。
あ、でも、ひとつだけ変なことがあったぞ。
「昼めしはここにしよう」ってお兄ちゃんがお店決めたんだよね。
ガイドブックには『気さくで話好きなスタッフがおもてなし。ウミガメのスープも★★★!』って書いてあるお店。
なのにお兄ちゃん、そのレストランに入ろうとしてドアの前に立ったら、なんかちょっと考えてクルッと振り返って「やっぱりやめる」ってスタスタ行っちゃった。
追いかけて訳を聞いても「別に」「なんとなく」って。
あれ、なんだったんだろ?
…さて、カメコが不思議に思っているカメオの行動。なぜ一度は入ろうとしたレストランに入らなかったのか?その理由を推理してみてくださいませんか?
20年06月25日 21:58
【ウミガメのスープ】 [きまぐれ夫人]
【ウミガメのスープ】 [きまぐれ夫人]
あー楽しかった~
解説を見る
日曜日のデート(?)がうまくいくように前日の土曜日に下見に来たことを、カメコに知られるのが照れ臭かったのです。
気さくで話し好きなスタッフが、悪気無くしゃべっちゃうかもしれませんものね。「イケメン君、昨日も来てくれたよね!」なんて。
実際はスタッフもいちいち客の顔なんて覚えてないでしょうけど、そこはほら、男子高校生といえば自意識過剰なお年頃ですから…
ー書かれなかったカメオの日記ー
○月□日(土)
ガイドブックとかネットの情報だけじゃ不安だからさ。
現地に視察に行って来ました("`д´)ゞ
やっぱ、大事だわ、現地行くの。
電車の乗り継ぎとか、アトラクションの場所とか待ち時間とか満足度とか、効率的な移動ルートとか、どの時間帯が混むかとかさ。
実際に歩いてみないとわかんねーもんだ。
実証的っていうの?フィールドワーク?なんでもいいけどw
とにかくカメコのヤツ、トロくせーからなあ。ちゃんと調べといてやんねーと、まごまごしてるうちに1日終わっちゃうよ、アイツ。
苦労するぜ、俺も。
それにしても、あのレストラン、美味かったなあ。
店員もみんな気さくで、いっぱい話し掛けてくれたし。
アットホームって感じ?
ま、俺がイケメンだからってのが大きいんですけどw 嘘w フツメンw それも嘘w ブサメンw そこまでいうW
カメコの好きなウミガメのスープもメニューに載ってたな。
うん、明日の昼めしはあそこに決定だ。
カメコ喜ぶかなあ。
別にどうでもいいけど。
さあ、明日に備えて早目に寝るべ。
気さくで話し好きなスタッフが、悪気無くしゃべっちゃうかもしれませんものね。「イケメン君、昨日も来てくれたよね!」なんて。
実際はスタッフもいちいち客の顔なんて覚えてないでしょうけど、そこはほら、男子高校生といえば自意識過剰なお年頃ですから…
ー書かれなかったカメオの日記ー
○月□日(土)
ガイドブックとかネットの情報だけじゃ不安だからさ。
現地に視察に行って来ました("`д´)ゞ
やっぱ、大事だわ、現地行くの。
電車の乗り継ぎとか、アトラクションの場所とか待ち時間とか満足度とか、効率的な移動ルートとか、どの時間帯が混むかとかさ。
実際に歩いてみないとわかんねーもんだ。
実証的っていうの?フィールドワーク?なんでもいいけどw
とにかくカメコのヤツ、トロくせーからなあ。ちゃんと調べといてやんねーと、まごまごしてるうちに1日終わっちゃうよ、アイツ。
苦労するぜ、俺も。
それにしても、あのレストラン、美味かったなあ。
店員もみんな気さくで、いっぱい話し掛けてくれたし。
アットホームって感じ?
ま、俺がイケメンだからってのが大きいんですけどw 嘘w フツメンw それも嘘w ブサメンw そこまでいうW
カメコの好きなウミガメのスープもメニューに載ってたな。
うん、明日の昼めしはあそこに決定だ。
カメコ喜ぶかなあ。
別にどうでもいいけど。
さあ、明日に備えて早目に寝るべ。
「母と娘のプリン戦争」「24Good」
良質:15票トリック:8票物語:1票
「ママー、冷蔵庫にあった私のプリン知らない?」
「・・・知らないよ? どこかに別の所に置いたんじゃないの?」
「だってどこにもないんだもん。・・・ママが食べたんじゃないの?」
「食べてません! 私は本当に知らないからあっち行って!」
娘は母親のことを疑っていたが、今の母親とのやりとりで確信した。
(きっとママがプリンを食べたのだろう)
確実な証拠がある訳ではないのに娘がそう思った根拠とは?
「・・・知らないよ? どこかに別の所に置いたんじゃないの?」
「だってどこにもないんだもん。・・・ママが食べたんじゃないの?」
「食べてません! 私は本当に知らないからあっち行って!」
娘は母親のことを疑っていたが、今の母親とのやりとりで確信した。
(きっとママがプリンを食べたのだろう)
確実な証拠がある訳ではないのに娘がそう思った根拠とは?
20年07月18日 22:20
【ウミガメのスープ】 [ダニー]
【ウミガメのスープ】 [ダニー]
解説を見る
自室に居るとママがドアを開けて入ってきた。
「ママー、冷蔵庫にあった私のプリン知らない?」
マ、ママ? え? 今、私のことママって言った?
確かに最近物忘れがひどくて娘の私の顔も忘れることさえあった。
認知症を疑っていたが、まさか幼児帰りするなんて・・・
「・・・知らないよ? どこかに別の所に置いたんじゃないの?」
「だってどこにもないんだもん。・・・ママが食べたんじゃないの?」
「食べてません! 私は本当に知らないからあっち行って!」
ママは訝しげな顔をして「プリン、プリンどこー」と言いながらまた台所に戻っていった。
・・・どうやらふざけてる訳じゃないみたい。
これは間違いなく認知症だな…
確かに冷蔵庫にプリンはあったけれど、きっとママが食べて忘れてるんだろうなあ。
「ママー、冷蔵庫にあった私のプリン知らない?」
マ、ママ? え? 今、私のことママって言った?
確かに最近物忘れがひどくて娘の私の顔も忘れることさえあった。
認知症を疑っていたが、まさか幼児帰りするなんて・・・
「・・・知らないよ? どこかに別の所に置いたんじゃないの?」
「だってどこにもないんだもん。・・・ママが食べたんじゃないの?」
「食べてません! 私は本当に知らないからあっち行って!」
ママは訝しげな顔をして「プリン、プリンどこー」と言いながらまた台所に戻っていった。
・・・どうやらふざけてる訳じゃないみたい。
これは間違いなく認知症だな…
確かに冷蔵庫にプリンはあったけれど、きっとママが食べて忘れてるんだろうなあ。
「旅は道連れ世は情け」「24Good」
良質:18票トリック:4票納得感:2票
「もうすぐ産まれそうなの」
仕事の休憩中に、妻からそう連絡を受け取った男は、いてもたってもいられなかった。
後で怒られる事は覚悟の上で、仕事を放棄して妻のもとへと向かうべく、タクシーにのりこんだ。
だがそんな時ほど問題が起きるわけで…
いざ発進しようとしていたタクシーに一人の女が乗り込んできて、男にこう言った。
「お願い!無茶な事を言ってるのはわかってるけど、急いでいるの!
どうしてもすぐに名古屋に向かわなくてはいけなくて…」
急いでいるのは男も同じである。
女に譲ってあげる義理などない男は、当然断ろうと思ったのだが
名古屋となれば話は別だ。
なんという偶然か、男の向かう先も名古屋だったのだから。
結果、二人は共に名古屋に向かうのであった。
男は幸運だった。
出産には立ち会えたし、懐が心配だったのだが、タクシー代も全額女がきっちり払ってくれた。
{職場の上司には褒められ、休暇まで頂けた}
いったいどういうことだろう?
仕事の休憩中に、妻からそう連絡を受け取った男は、いてもたってもいられなかった。
後で怒られる事は覚悟の上で、仕事を放棄して妻のもとへと向かうべく、タクシーにのりこんだ。
だがそんな時ほど問題が起きるわけで…
いざ発進しようとしていたタクシーに一人の女が乗り込んできて、男にこう言った。
「お願い!無茶な事を言ってるのはわかってるけど、急いでいるの!
どうしてもすぐに名古屋に向かわなくてはいけなくて…」
急いでいるのは男も同じである。
女に譲ってあげる義理などない男は、当然断ろうと思ったのだが
名古屋となれば話は別だ。
なんという偶然か、男の向かう先も名古屋だったのだから。
結果、二人は共に名古屋に向かうのであった。
男は幸運だった。
出産には立ち会えたし、懐が心配だったのだが、タクシー代も全額女がきっちり払ってくれた。
{職場の上司には褒められ、休暇まで頂けた}
いったいどういうことだろう?
20年10月17日 22:17
【ウミガメのスープ】 [琴水]
【ウミガメのスープ】 [琴水]
解説を見る
「もうすぐ産まれそうなの」
夜勤の休憩中に、出産のために実家の名古屋へ移っている妻から、そう連絡を受け取った{タクシー運転手}の男は、いてもたってもいられなかった。
後で怒られる事は覚悟の上で、仕事を放棄して妻のもとへと向かうべく、自らが運転するタクシーにのりこんだ。
だがそんな時ほど問題が起きるわけで…
いざ発進しようとしていたタクシーに一人の女が乗り込んできて、男にこう言った。
「お願い!無茶な事を言ってるのはわかってるけど、急いでいるの!
どうしてもすぐに{名古屋}に向かわなくてはいけなくて…」
ここは{東京}である。
夜を徹して名古屋に向かってほしいという女の頼みは、確かに無茶なものであるだろう。
男は自分の主張を譲るつもりなどなかったのだが、男の向かう先も名古屋だった為、仕事をさぼらずに名古屋まで行ける事は歓迎できることであった。
そうして男は、女を客として迎え、名古屋に向かうのであった。
男は幸運だった。
出産には立ち会えたし、10万を軽く超えるタクシー代に、女の懐具合が心配だったのだが、お金が足りないということもなく全額きっちり払ってくれた。
今日一番の稼ぎ頭だな!と上司には褒められ、戻るのにも時間がかかるし、仕事にならんだろうから今日は休んでいいぞと休暇まで頂けたのであった。
夜勤の休憩中に、出産のために実家の名古屋へ移っている妻から、そう連絡を受け取った{タクシー運転手}の男は、いてもたってもいられなかった。
後で怒られる事は覚悟の上で、仕事を放棄して妻のもとへと向かうべく、自らが運転するタクシーにのりこんだ。
だがそんな時ほど問題が起きるわけで…
いざ発進しようとしていたタクシーに一人の女が乗り込んできて、男にこう言った。
「お願い!無茶な事を言ってるのはわかってるけど、急いでいるの!
どうしてもすぐに{名古屋}に向かわなくてはいけなくて…」
ここは{東京}である。
夜を徹して名古屋に向かってほしいという女の頼みは、確かに無茶なものであるだろう。
男は自分の主張を譲るつもりなどなかったのだが、男の向かう先も名古屋だった為、仕事をさぼらずに名古屋まで行ける事は歓迎できることであった。
そうして男は、女を客として迎え、名古屋に向かうのであった。
男は幸運だった。
出産には立ち会えたし、10万を軽く超えるタクシー代に、女の懐具合が心配だったのだが、お金が足りないということもなく全額きっちり払ってくれた。
今日一番の稼ぎ頭だな!と上司には褒められ、戻るのにも時間がかかるし、仕事にならんだろうから今日は休んでいいぞと休暇まで頂けたのであった。
「覚悟の上」「24Good」
良質:12票トリック:7票納得感:5票
.
………………………………………………………………
【この業界の闇を○○○○○○に晒します!】
………………………………………………………………
(今月の21日か……)
動画配信者のお知らせの内容を勘違いしたアンダーソン。
○○○○○○に書いてあるのは何月何日?
………………………………………………………………
【この業界の闇を○○○○○○に晒します!】
………………………………………………………………
(今月の21日か……)
動画配信者のお知らせの内容を勘違いしたアンダーソン。
○○○○○○に書いてあるのは何月何日?
22年03月14日 00:11
【20の扉】 [霜ばしら]
【20の扉】 [霜ばしら]
Special Thanks:葛原さん、春雨さん / 晒しました
解説を見る
.
………………………………………………………………
【この業界の闇を{今月白日}の下に晒します!】
………………………………………………………………
3月21日に配信される動画のお知らせだったので、「白日の下(もと)」を「ホワイトデーの下(した)」と勘違いした。
https://youtu.be/7wYGFR838Ec
………………………………………………………………
【この業界の闇を{今月白日}の下に晒します!】
………………………………………………………………
3月21日に配信される動画のお知らせだったので、「白日の下(もと)」を「ホワイトデーの下(した)」と勘違いした。
https://youtu.be/7wYGFR838Ec
「しあわせなみらい」「24Good」
良質:9票トリック:5票物語:10票
死んでしまった彼女が自分に宛てた手紙を偶然見つけた田中。
手紙には
ちゃんと自分で料理しているのか?
嫌いだったトマトもちゃんと食べられるようになったのか?
部屋はちゃんと掃除しているのか?
あなたはズボラだから心配だ
そのような内容の最後に
どうかあなたが幸せに暮らしていますように
と彼女の可愛らしい字で書かれていた。
もし田中が彼女の死に目に会っていなかったら、田中はこの手紙を見つけることはなかったという。
Q.彼女が手紙をしまった場所はどこか?
理由とともにお答えください
※質問数の制限はなし!
手紙には
ちゃんと自分で料理しているのか?
嫌いだったトマトもちゃんと食べられるようになったのか?
部屋はちゃんと掃除しているのか?
あなたはズボラだから心配だ
そのような内容の最後に
どうかあなたが幸せに暮らしていますように
と彼女の可愛らしい字で書かれていた。
もし田中が彼女の死に目に会っていなかったら、田中はこの手紙を見つけることはなかったという。
Q.彼女が手紙をしまった場所はどこか?
理由とともにお答えください
※質問数の制限はなし!
22年03月23日 20:53
【20の扉】 [ダニー]
【20の扉】 [ダニー]
がふー
解説を見る
A.タイムカプセルの中
「簡易解説」
地元の小学校に教師として勤めている田中と幼馴染の彼女。
田中は彼女と些細なことで口論となり、校内で彼女を殺してしまう。
死体を隠す為校庭に穴を掘っている時、偶然過去に自分たちが埋めたタイムカプセルを掘り起こす。
タイムカプセルには彼女が20年後の自分(彼女自身)に宛てた手紙が入っていた。
以下、ながあい解説
彼女の長い髪を指で梳ることも、彼女の柔らかい頬に触れることも、抱きしめることも、キスをすることも。
いつからそれが当たり前になっていたのだろうか。
そしていつからその当たり前がつまらなく思ってしまうようになったのだろうか。
小さい時からずっとそばにいた。
小学校も中学校も高校も大学も。
そして就職先も。
僕は彼女以外の女性を知らず、このまま生涯を終えるのだろうか。
僕は漠然とした不満を抱えながら彼女と付き合っていた。
地元の小学校。
僕と彼女はそこの教師として働いている。
正直自分が教師に向いているとは思えない。
なぜ教師になったのか、自分でもよくわからない。
昨日友人から、今の会社を辞めて服飾デザイナーを目指して東京に行く、という話を聞かされてからずっとモヤモヤしてる。
このままでは僕はダメになる。
僕は彼女と別れることを決意した。
放課後。
夕日が教室の中を真っ赤に染めている。
しかし彼女の顔が赤く汚れているのは夕日のせいではない。
「どうして…こんなことに…」
僕はぼんやりする頭でついさっきの出来事を思い出す。
彼女は僕との別れ話に聞く耳を持たなかった。
当たり前だ。
特に明確な理由があるわけではないのだから。
漠然とした不満が不安となり、子供のような語彙足らずの言葉を彼女にぶつけただけなのだから。
言葉に詰まった僕はヒステリックに詰め寄る彼女を突き飛ばしてしまった。
彼女は体勢を崩し、床に頭を強打して動かなくなった。
床に広がっていく彼女の血液。
すぐに彼女に駆け寄り、声をかける。
しかし彼女は目覚めない。
彼女の血液の温かさ、ぬめり。
閉じたままの瞼。
彼女の、死。
ああ嘘だろ。
僕は当たり前を、普通を拒んだだけだ。
こんな非日常の結末が待っているとは知らずに。
深夜。
僕は穴を掘っている。
蝉の声。土の匂い。生温い風。
スコップで土を掘るという単純な作業が頭をクリアにさせ、僕を冷静にさせた。
取り戻す。
彼女を埋めて、また校舎に戻り、全ての痕跡を拭き取る。
まずは彼女を隠すんだ。
校庭の隅を掘り進めていくうちに、スコップに何か硬いものがぶつかった感触があった。
「タイム…カプセル…」
奇跡のような偶然。
出てきたそれは僕と彼女のクラスが小学校6年生の時に埋めたタイムカプセルだった。
「10年後の私へ 雛形澄」
彼女が彼女自身に宛てた手紙。
血と泥で汚れた手でその可愛らしい便箋を開く。
『10年後の私へ
元気ですか?
私は今お母さんに料理を教えてもらってるけど、ちゃんと自分で料理できるようになった?
嫌いだったトマト。食べれるようになった?
部屋は綺麗に掃除してる?
あなたはズボラだから心配だな(笑)
ちゃんとしてないとあいつに愛想尽かされるかもよ。
結婚はしてるのかな?
子供もいたりして。
色んなことがあるだろうけど、あいつがいたら安心って思ってる。
どうかあなたが
幸せに暮らしていますように』
子供の頃の可愛らしい彼女の字だ。
その字が涙で滲む。
なぜ僕は僕自身のことしか見えていなかったんだろうか。
当たり前が怖いのなら彼女に頼れば良かったんだ。
彼女と話して、彼女と共に解決する。
それだけで、良かったんだ。
当たり前を拒み手放したのに、その当たり前を取り戻す為に必死になって穴を掘っている自分が酷く滑稽だった。
そんな情け無い顔の僕を懐中電灯の灯りが照らした。
「なんか学校から変な音がするって通報があって来てみたらお前かあ。
何してんだ?そんな泥まみれで。
お? これあれか? タイムカプセル? 小6の時に埋めたやつじゃん。
・・・ってお前、ひでえ顔してるぞ」
地元の警察に勤めている友人だった。
「おれ、さ。澄を、殺したんだ…
おかしいよな? おれ、澄が大好きなのに。大好きなのにこんなところに、こんな暗いところに埋めてさ。んでバレないだろうとか都合のいいこと、考えてさ」
「・・・わかった。話は交番で聞く。とりあえず涙と鼻水拭け」
「ご、ごめんけんちゃん。ごめんなさい。ごめんなさい、こんな、こと、ごめ、ごめんなさい」
「うん。ほれタオル。んで澄ちゃん、どこだ?」
友人は泣き崩れて立ち上がれない僕を背中に背負い、亡き彼女の元へと向かった。
「・・・けんちゃん」
「ん?」
「来てくれてありがとう」
「ん」
夜が明けて。
再度現場を確認するために戻ってきた田中の友人。
「懐かしいな」
掘り起こされたタイムカプセルを目の前にしてそう独りごちる。
そこには田中が未来の自分に宛てた手紙も入っていた。
『10年後のお前は安定した公務員になって、安定した収入を得て、老後までに2000万円貯めるんだ!
澄をちゃんと幸せにしろよ!』
「簡易解説」
地元の小学校に教師として勤めている田中と幼馴染の彼女。
田中は彼女と些細なことで口論となり、校内で彼女を殺してしまう。
死体を隠す為校庭に穴を掘っている時、偶然過去に自分たちが埋めたタイムカプセルを掘り起こす。
タイムカプセルには彼女が20年後の自分(彼女自身)に宛てた手紙が入っていた。
以下、ながあい解説
彼女の長い髪を指で梳ることも、彼女の柔らかい頬に触れることも、抱きしめることも、キスをすることも。
いつからそれが当たり前になっていたのだろうか。
そしていつからその当たり前がつまらなく思ってしまうようになったのだろうか。
小さい時からずっとそばにいた。
小学校も中学校も高校も大学も。
そして就職先も。
僕は彼女以外の女性を知らず、このまま生涯を終えるのだろうか。
僕は漠然とした不満を抱えながら彼女と付き合っていた。
地元の小学校。
僕と彼女はそこの教師として働いている。
正直自分が教師に向いているとは思えない。
なぜ教師になったのか、自分でもよくわからない。
昨日友人から、今の会社を辞めて服飾デザイナーを目指して東京に行く、という話を聞かされてからずっとモヤモヤしてる。
このままでは僕はダメになる。
僕は彼女と別れることを決意した。
放課後。
夕日が教室の中を真っ赤に染めている。
しかし彼女の顔が赤く汚れているのは夕日のせいではない。
「どうして…こんなことに…」
僕はぼんやりする頭でついさっきの出来事を思い出す。
彼女は僕との別れ話に聞く耳を持たなかった。
当たり前だ。
特に明確な理由があるわけではないのだから。
漠然とした不満が不安となり、子供のような語彙足らずの言葉を彼女にぶつけただけなのだから。
言葉に詰まった僕はヒステリックに詰め寄る彼女を突き飛ばしてしまった。
彼女は体勢を崩し、床に頭を強打して動かなくなった。
床に広がっていく彼女の血液。
すぐに彼女に駆け寄り、声をかける。
しかし彼女は目覚めない。
彼女の血液の温かさ、ぬめり。
閉じたままの瞼。
彼女の、死。
ああ嘘だろ。
僕は当たり前を、普通を拒んだだけだ。
こんな非日常の結末が待っているとは知らずに。
深夜。
僕は穴を掘っている。
蝉の声。土の匂い。生温い風。
スコップで土を掘るという単純な作業が頭をクリアにさせ、僕を冷静にさせた。
取り戻す。
彼女を埋めて、また校舎に戻り、全ての痕跡を拭き取る。
まずは彼女を隠すんだ。
校庭の隅を掘り進めていくうちに、スコップに何か硬いものがぶつかった感触があった。
「タイム…カプセル…」
奇跡のような偶然。
出てきたそれは僕と彼女のクラスが小学校6年生の時に埋めたタイムカプセルだった。
「10年後の私へ 雛形澄」
彼女が彼女自身に宛てた手紙。
血と泥で汚れた手でその可愛らしい便箋を開く。
『10年後の私へ
元気ですか?
私は今お母さんに料理を教えてもらってるけど、ちゃんと自分で料理できるようになった?
嫌いだったトマト。食べれるようになった?
部屋は綺麗に掃除してる?
あなたはズボラだから心配だな(笑)
ちゃんとしてないとあいつに愛想尽かされるかもよ。
結婚はしてるのかな?
子供もいたりして。
色んなことがあるだろうけど、あいつがいたら安心って思ってる。
どうかあなたが
幸せに暮らしていますように』
子供の頃の可愛らしい彼女の字だ。
その字が涙で滲む。
なぜ僕は僕自身のことしか見えていなかったんだろうか。
当たり前が怖いのなら彼女に頼れば良かったんだ。
彼女と話して、彼女と共に解決する。
それだけで、良かったんだ。
当たり前を拒み手放したのに、その当たり前を取り戻す為に必死になって穴を掘っている自分が酷く滑稽だった。
そんな情け無い顔の僕を懐中電灯の灯りが照らした。
「なんか学校から変な音がするって通報があって来てみたらお前かあ。
何してんだ?そんな泥まみれで。
お? これあれか? タイムカプセル? 小6の時に埋めたやつじゃん。
・・・ってお前、ひでえ顔してるぞ」
地元の警察に勤めている友人だった。
「おれ、さ。澄を、殺したんだ…
おかしいよな? おれ、澄が大好きなのに。大好きなのにこんなところに、こんな暗いところに埋めてさ。んでバレないだろうとか都合のいいこと、考えてさ」
「・・・わかった。話は交番で聞く。とりあえず涙と鼻水拭け」
「ご、ごめんけんちゃん。ごめんなさい。ごめんなさい、こんな、こと、ごめ、ごめんなさい」
「うん。ほれタオル。んで澄ちゃん、どこだ?」
友人は泣き崩れて立ち上がれない僕を背中に背負い、亡き彼女の元へと向かった。
「・・・けんちゃん」
「ん?」
「来てくれてありがとう」
「ん」
夜が明けて。
再度現場を確認するために戻ってきた田中の友人。
「懐かしいな」
掘り起こされたタイムカプセルを目の前にしてそう独りごちる。
そこには田中が未来の自分に宛てた手紙も入っていた。
『10年後のお前は安定した公務員になって、安定した収入を得て、老後までに2000万円貯めるんだ!
澄をちゃんと幸せにしろよ!』