「青い春の1ページ」「15Good」
良質:3票トリック:2票物語:4票納得感:6票
高校生のカメオは、同じクラスのカメコのことが大好きなのだが、猛烈にアタックした結果、カメコから嫌われてしまった。
「もう君の顔なんて見たくないし、名前も呼ばない。 二度と私に近づかないで」
その言葉通り、カメコは明らかにカメオを避けはじめ、事務連絡があるときですら「おい」としか呼ばなくなった。
それでも必死にカメコに対し、優しくしたりプレゼントをしたりとカメコへの想いを募らせていったカメオ。
そんなある日、カメコから「カメオ君」と呼ばれて喜んだカメオは、カメコのことを{本気で好きじゃ無い}のかもしれないと思い始めた。
一体なぜ?
「もう君の顔なんて見たくないし、名前も呼ばない。 二度と私に近づかないで」
その言葉通り、カメコは明らかにカメオを避けはじめ、事務連絡があるときですら「おい」としか呼ばなくなった。
それでも必死にカメコに対し、優しくしたりプレゼントをしたりとカメコへの想いを募らせていったカメオ。
そんなある日、カメコから「カメオ君」と呼ばれて喜んだカメオは、カメコのことを{本気で好きじゃ無い}のかもしれないと思い始めた。
一体なぜ?
22年01月08日 21:25
【ウミガメのスープ】 [ベルン]
【ウミガメのスープ】 [ベルン]
解説を見る
カメコが交通事故に遭って記憶喪失という知らせがカメオの耳に届いた。
急いで病院に向かうと、カメコがベッドで横たわっていた。
「カメコちゃん! 俺だよ、カメオだよ」
「…カメオ君? 私のお友達?」
(本当に記憶喪失なのか… でも今俺、名前で呼ばれた!!! このままだとまたカメコと一緒になれるチャンスが…)
「…ごめんね、私記憶喪失になっちゃったみたいで何も思い出せないの。」
そこまで考えたところで、最愛であるはずのカメコが記憶喪失という大きな病気を抱えていることを嘆くより先に、自分のことしか考えていないことに気づいたカメオは、カメコのことが本気で好きじゃ無いのかもしれないと思った。
(カメコへの愛は、しょせん自己満足なのか… 俺なんて…)
急いで病院に向かうと、カメコがベッドで横たわっていた。
「カメコちゃん! 俺だよ、カメオだよ」
「…カメオ君? 私のお友達?」
(本当に記憶喪失なのか… でも今俺、名前で呼ばれた!!! このままだとまたカメコと一緒になれるチャンスが…)
「…ごめんね、私記憶喪失になっちゃったみたいで何も思い出せないの。」
そこまで考えたところで、最愛であるはずのカメコが記憶喪失という大きな病気を抱えていることを嘆くより先に、自分のことしか考えていないことに気づいたカメオは、カメコのことが本気で好きじゃ無いのかもしれないと思った。
(カメコへの愛は、しょせん自己満足なのか… 俺なんて…)
「後悔役に立たず」「15Good」
良質:6票トリック:1票物語:1票納得感:7票
田中邸に導入されたセキュリティシステム「ポコーン2.0」には致命的な脆弱性があることが判明した。
「ポコーン3.0」を導入すればその脆弱性はなくなり、セキュリティはより強くなるのだが、田中は導入することなく、「ポコーン2.0」を外してしまった。
何故だろう?
(スペシャルサンクス:きっとくりすさん 異邦人さん 春雨さん マクガフィンさん だだだだ3号機さん 霜ばしらさん ルーシーさん)
「ポコーン3.0」を導入すればその脆弱性はなくなり、セキュリティはより強くなるのだが、田中は導入することなく、「ポコーン2.0」を外してしまった。
何故だろう?
(スペシャルサンクス:きっとくりすさん 異邦人さん 春雨さん マクガフィンさん だだだだ3号機さん 霜ばしらさん ルーシーさん)
22年04月20日 19:28
【ウミガメのスープ】 [松神]
【ウミガメのスープ】 [松神]
解説を見る
ポコーン2.0が導入された目的は屋敷に泥棒が入らないようにするためであり、さらに言えば田中邸で保管してあるとある名画を怪盗マガツミの手から守り抜くためである。しかし田中とポコーン2.0の努力も虚しくセキュリティは突破され名画はマガツミによって盗み出されてしまった。
致命的な脆弱性というのはその後、ポコーン2.0開発チームが総出で怪盗の足跡を辿りようやく見つけ出したものである。
その発見を基にポコーン2.0は改良を重ねられ、ポコーン3.0へと進化したのだが、田中にとってはそんなものはもう意味は無い。ポコーン2.0はとうに田中邸から姿を消し、開発チーム自体も田中から無能と蔑まれポコーン3.0は導入されることは無かった。
致命的な脆弱性というのはその後、ポコーン2.0開発チームが総出で怪盗の足跡を辿りようやく見つけ出したものである。
その発見を基にポコーン2.0は改良を重ねられ、ポコーン3.0へと進化したのだが、田中にとってはそんなものはもう意味は無い。ポコーン2.0はとうに田中邸から姿を消し、開発チーム自体も田中から無能と蔑まれポコーン3.0は導入されることは無かった。
「邪道プロポーズ」「15Good」
良質:6票物語:1票納得感:8票
◆◆◆
新作映画『Ankward Love』。
生真面目だがお人好しの主人公と、内気で恥ずかしがり屋な病弱ヒロインの恋愛模様を描く映画で、その感動的なストーリーと、ラストシーンにおけるヒロインの詩的で遠回しな逆プロポーズが様々な解釈を呼び、話題を集めているラブロマンスである。
◆◆◆
ある日のこと。
映画への拘りが強く、血も涙も無い辛口レビューで有名な百戦錬磨の映画批評YouTuberカメオ。
彼による、
「{最後のプロポーズのシーンは全く理解できなかった}」
という内容のレビューを見た人々が、
「{この映画は名作だ}」
と思ったのはいったいなぜ?
新作映画『Ankward Love』。
生真面目だがお人好しの主人公と、内気で恥ずかしがり屋な病弱ヒロインの恋愛模様を描く映画で、その感動的なストーリーと、ラストシーンにおけるヒロインの詩的で遠回しな逆プロポーズが様々な解釈を呼び、話題を集めているラブロマンスである。
◆◆◆
ある日のこと。
映画への拘りが強く、血も涙も無い辛口レビューで有名な百戦錬磨の映画批評YouTuberカメオ。
彼による、
「{最後のプロポーズのシーンは全く理解できなかった}」
という内容のレビューを見た人々が、
「{この映画は名作だ}」
と思ったのはいったいなぜ?
22年06月12日 22:02
【ウミガメのスープ】 [だだだだ3号機]
【ウミガメのスープ】 [だだだだ3号機]
解説を見る
【簡易解説】
あの血も涙も無いカメオですら{涙で字幕が見えなくなる}ほど感動できる映画だと判断されたから。
【冗長な解説】
『Ankward Love』は{洋画}である。難解で婉曲的なセリフ回しを好むダダスリー監督によるこの映画は、その感動的なストーリーと印象的なラストシーンが全米で大きな話題を呼び、つい先日日本でも劇場公開する運びとなった。
当然ながら全編英語であるのだが、カメオは百戦錬磨の映画批評YouTuber。日常会話程度なら字幕無しでも意味が取れる程度には洋画を観ている。(とはいえあくまで「ある程度」であるため字幕を付けるが。)こと洋画に関してはできるだけ原文そのままのニュアンスで楽しみたいカメオは、『Ankward Love』も吹替版ではなく、当然{字幕版}で観ることにした。
さて、カメオはかなりドライかつ辛口であり、よくあるお涙頂戴系の映画で感動を覚えることは殆どない。至って冷静に批評する男として巷では有名であった。
しかしこの『Ankward Love』、あまりにも見事な監督の手腕と役者の名演により、全米が秒で大泣きするレベルの大傑作であった。
それでも中盤までは泣くのを堪えていたカメオであったが、ラストシーン直前でとうとう号泣してしまう。
そして…
<「{な、涙で前が見えなぁぁぁいっ!!}」>
ラストシーンのプロポーズは{表現が婉曲的}であり、詩的な言い回しが多く含まれるため、ネイティブでもなければ{字幕無しで意図を汲み取ることが難しい}。
ただでさえ難解な表現、加えて内気なヒロインの一世一代の逆プロポーズ故に、割と声量もギリッギリである。
しかしあまりの感動で号泣しているカメオの視界は{涙で滲んで}おり、字幕をまともに視認することができない。鼻をすする音で元の台詞も聞き辛い。
感動のラストシーンにもかかわらず、{ヒロインの告白の台詞の意味が全くわからない!}
仕方ないので、今度は吹き替えで観ることにしたのであった。
以下はカメオのレビューである。
『もうラストシーンは涙でマトモに字幕が見えなくてね、主人公より顔ぐちゃぐちゃにしちゃったよ。いや別に洋画は沢山観てるから字幕無しでも何となくのニュアンスはわかるんだがね、あそこのプロポーズは表現が遠回しでネイティブでもなければ翻訳が無いと全く真意が掴めないし、何よりあの詩的な愛の言葉をどう日本語訳したかというのも一種の楽しみだろうから映画評論家としてそこを疎かにするのは良くな…あっ思い出したらまたちょっと泣けてきた…あそこのヒロインの情緒エグいよね。だって逆プロポーズだぜ当初は服屋で店員さんに話しかけられて地蔵になってたあのヒロインがだよヤバくな【(中略)】初は何を考えているかわからない上に物語自体がちょっと鬱々した感じだったんだけど、段々物語が進むにつれ彼女なりの芯の強さというか気品みたいなものが観ている側にも伝わってきて最高【(中略)】っぱりこう、初デートの時に初めてちょっと良い雰囲気になるんだけど、そのときの時間帯がちょうど日が沈みかけて夕焼けの時でさ、それまで全く意識してなかった主人公が夕日に照らされたヒロインの横顔を見て少【(中略)】難病を患ってることが判明してさ、その時の告白も初デートと同じ夕焼け空の下でやるわけよ。もうここの時点で泣きそうになったよね。そんで主人公も葛藤するわけよこのまま何もしなくていいのかとか彼女のためにできること【(中略)】人公の返しも良いよね。最高にクールだった。実は救われてたのは彼女だけじゃないんだよね主人公も主人公で色々【(中略)】いや~洋画は字幕で見る派なんだが、次は吹き替えで見ることにするかな!』
こんなレビューを見た人々は「{あのカメオが涙で前が見えなくなるほど感動できるなんて、本当に凄い名作なんだ!}」と思ったとさ。
あの血も涙も無いカメオですら{涙で字幕が見えなくなる}ほど感動できる映画だと判断されたから。
【冗長な解説】
『Ankward Love』は{洋画}である。難解で婉曲的なセリフ回しを好むダダスリー監督によるこの映画は、その感動的なストーリーと印象的なラストシーンが全米で大きな話題を呼び、つい先日日本でも劇場公開する運びとなった。
当然ながら全編英語であるのだが、カメオは百戦錬磨の映画批評YouTuber。日常会話程度なら字幕無しでも意味が取れる程度には洋画を観ている。(とはいえあくまで「ある程度」であるため字幕を付けるが。)こと洋画に関してはできるだけ原文そのままのニュアンスで楽しみたいカメオは、『Ankward Love』も吹替版ではなく、当然{字幕版}で観ることにした。
さて、カメオはかなりドライかつ辛口であり、よくあるお涙頂戴系の映画で感動を覚えることは殆どない。至って冷静に批評する男として巷では有名であった。
しかしこの『Ankward Love』、あまりにも見事な監督の手腕と役者の名演により、全米が秒で大泣きするレベルの大傑作であった。
それでも中盤までは泣くのを堪えていたカメオであったが、ラストシーン直前でとうとう号泣してしまう。
そして…
<「{な、涙で前が見えなぁぁぁいっ!!}」>
ラストシーンのプロポーズは{表現が婉曲的}であり、詩的な言い回しが多く含まれるため、ネイティブでもなければ{字幕無しで意図を汲み取ることが難しい}。
ただでさえ難解な表現、加えて内気なヒロインの一世一代の逆プロポーズ故に、割と声量もギリッギリである。
しかしあまりの感動で号泣しているカメオの視界は{涙で滲んで}おり、字幕をまともに視認することができない。鼻をすする音で元の台詞も聞き辛い。
感動のラストシーンにもかかわらず、{ヒロインの告白の台詞の意味が全くわからない!}
仕方ないので、今度は吹き替えで観ることにしたのであった。
以下はカメオのレビューである。
『もうラストシーンは涙でマトモに字幕が見えなくてね、主人公より顔ぐちゃぐちゃにしちゃったよ。いや別に洋画は沢山観てるから字幕無しでも何となくのニュアンスはわかるんだがね、あそこのプロポーズは表現が遠回しでネイティブでもなければ翻訳が無いと全く真意が掴めないし、何よりあの詩的な愛の言葉をどう日本語訳したかというのも一種の楽しみだろうから映画評論家としてそこを疎かにするのは良くな…あっ思い出したらまたちょっと泣けてきた…あそこのヒロインの情緒エグいよね。だって逆プロポーズだぜ当初は服屋で店員さんに話しかけられて地蔵になってたあのヒロインがだよヤバくな【(中略)】初は何を考えているかわからない上に物語自体がちょっと鬱々した感じだったんだけど、段々物語が進むにつれ彼女なりの芯の強さというか気品みたいなものが観ている側にも伝わってきて最高【(中略)】っぱりこう、初デートの時に初めてちょっと良い雰囲気になるんだけど、そのときの時間帯がちょうど日が沈みかけて夕焼けの時でさ、それまで全く意識してなかった主人公が夕日に照らされたヒロインの横顔を見て少【(中略)】難病を患ってることが判明してさ、その時の告白も初デートと同じ夕焼け空の下でやるわけよ。もうここの時点で泣きそうになったよね。そんで主人公も葛藤するわけよこのまま何もしなくていいのかとか彼女のためにできること【(中略)】人公の返しも良いよね。最高にクールだった。実は救われてたのは彼女だけじゃないんだよね主人公も主人公で色々【(中略)】いや~洋画は字幕で見る派なんだが、次は吹き替えで見ることにするかな!』
こんなレビューを見た人々は「{あのカメオが涙で前が見えなくなるほど感動できるなんて、本当に凄い名作なんだ!}」と思ったとさ。
「拝啓、6月のいちばん遠い場所から」「15Good」
良質:6票物語:8票納得感:1票
雨が降るたび机から双眼鏡を取り出して、窓の外を眺める純太郎。
噂では『【双眼鏡で女性の下着をウォッチングする変態クソヤロー】』とのことだが。
しかしレンズを一生懸命覗く姿を偶然見つけた時、
私は『これは【{生き別れた妹}】を探すため』という彼の言葉を信じることにした。
一体なぜ?
※SP:みづさん
※解説文の挿絵をくろださんに描いていただきました、お楽しみに!
※『創りだす38 ほうき星をナントヤラ』のオマージュです。
(https://late-late.jp/mondai/show/15053)
噂では『【双眼鏡で女性の下着をウォッチングする変態クソヤロー】』とのことだが。
しかしレンズを一生懸命覗く姿を偶然見つけた時、
私は『これは【{生き別れた妹}】を探すため』という彼の言葉を信じることにした。
一体なぜ?
※SP:みづさん
※解説文の挿絵をくろださんに描いていただきました、お楽しみに!
※『創りだす38 ほうき星をナントヤラ』のオマージュです。
(https://late-late.jp/mondai/show/15053)
22年06月26日 22:01
【ウミガメのスープ】 [弥七]
【ウミガメのスープ】 [弥七]
6月の雨には、物語スープを。
解説を見る
【簡易解答】
双眼鏡に押し当てた目から化粧が剥がれ、色の無い素肌が現れたことで、純太郎が透明人間であると知った。彼は雨の日に窓の外を観察することで、同じように剥がれて現れる『透明人間の家族』を探しているのだと気付いたから。
ここからいちばん遠いところは自分の背中である。
(寺山修司)
(J Kは 6月なんて 好きじゃない!)
放課後、予報はずれの雨を前に、心の一句。
毎日1時間かかるお化粧が、あっという間にぐずぐずになるのが私は嫌いだった。
そんな顔、女子高生なら誰だって見られたくないでしょう?
机に置き傘があったっけ、と教室へ戻ったとき
隣のクラスから微かな声が聞こえた。
「始めようか天体観測、ほうき星をナントヤラ〜♪…」
2分後に誰も来ないと思って、鼻歌なんか歌っている。
扉の隙間から覗くと、彼がちょうど机から『あれ』を取り出すところだった。
ああ、学校の七不思議とは言わずとも。
噂の現場を、目撃した。
ジュンタロー先輩の奇行が知れ渡ったのは、6月の梅雨入りからだった。
雨が降るたび、一生懸命双眼鏡で窓の外を観察している。
私の友達は、『双眼鏡で女性の透けた下着をウォッチングする変態クソヤロー』
だと言っていた。みんなも、たぶん、きっとそうだと。
女の敵じゃん、サイテーじゃん。
と非難轟々。でも本当にそうだろうか?
彼は意に介さないようだが、たった一度だけ「妹を探している」と弁明した。
無事に一蹴されてロリコンに昇格したけれども。
仮にそれが嘘だとして、
そんな虚言で上塗りする意味がどこにあるのか??
先輩の家族のことは、誰も知らない。
ただ母親が、小さい頃に消えてしまったのだと、聞いている。
文字通り、消えてしまったのだと。
その真実は、子供ながら「お星様になった」なんて詩的に表現する事柄なのかもしれない。
しかし机から双眼鏡を取り出す
彼の天体観測は誰の目にもロマンチックに映らなかった。
ただ、
そんなレンズを覗き込む顔に、気付いた人は他にいるのだろうか。
(なるほど、ね。)
私はみつけてしまった。
擦れて化粧が剥がれ、透明な素肌が現れた、あの目を。
「見えないものを見ようとして〜…」
彼の鼻歌は、まだ続く。
『透明人間』
がこの世に、いや目の前に存在するということ。
彼の思惑が理解されないように、
私がいま見た現実も、周囲にはわかってもらえないだろう。
そりゃあそうだ。
どちらもすべて理解してくれるのは、『同類』しかいないのだから。
…例えばそれは、彼の言う、生き別れた妹みたいな存在、とか。
私はそっと、教室の扉を開いた。
「見つかりましたか?妹さんは。」
彼が驚いたのは鼻歌を聞かれたからでも、突然背中から話しかけられたからでもない。
私の、擦れた顔のせいだ。
お互い顔を見合わせ、ひと呼吸おいて笑みが溢れる。
「ああ…しかし、どうやらいちばん遠いところにいたらしい。」
そして1番遠い場所は自分の背中なのだと兄は言った。
扉の隙間には、うっすら化粧の跡が残っている。
(おしまい)(この物語はフィクションです)
参考:『飛んだピエロ』(なかとかくみこ)
双眼鏡に押し当てた目から化粧が剥がれ、色の無い素肌が現れたことで、純太郎が透明人間であると知った。彼は雨の日に窓の外を観察することで、同じように剥がれて現れる『透明人間の家族』を探しているのだと気付いたから。
ここからいちばん遠いところは自分の背中である。
(寺山修司)
(J Kは 6月なんて 好きじゃない!)
放課後、予報はずれの雨を前に、心の一句。
毎日1時間かかるお化粧が、あっという間にぐずぐずになるのが私は嫌いだった。
そんな顔、女子高生なら誰だって見られたくないでしょう?
机に置き傘があったっけ、と教室へ戻ったとき
隣のクラスから微かな声が聞こえた。
「始めようか天体観測、ほうき星をナントヤラ〜♪…」
2分後に誰も来ないと思って、鼻歌なんか歌っている。
扉の隙間から覗くと、彼がちょうど机から『あれ』を取り出すところだった。
ああ、学校の七不思議とは言わずとも。
噂の現場を、目撃した。
ジュンタロー先輩の奇行が知れ渡ったのは、6月の梅雨入りからだった。
雨が降るたび、一生懸命双眼鏡で窓の外を観察している。
私の友達は、『双眼鏡で女性の透けた下着をウォッチングする変態クソヤロー』
だと言っていた。みんなも、たぶん、きっとそうだと。
女の敵じゃん、サイテーじゃん。
と非難轟々。でも本当にそうだろうか?
彼は意に介さないようだが、たった一度だけ「妹を探している」と弁明した。
無事に一蹴されてロリコンに昇格したけれども。
仮にそれが嘘だとして、
そんな虚言で上塗りする意味がどこにあるのか??
先輩の家族のことは、誰も知らない。
ただ母親が、小さい頃に消えてしまったのだと、聞いている。
文字通り、消えてしまったのだと。
その真実は、子供ながら「お星様になった」なんて詩的に表現する事柄なのかもしれない。
しかし机から双眼鏡を取り出す
彼の天体観測は誰の目にもロマンチックに映らなかった。
ただ、
そんなレンズを覗き込む顔に、気付いた人は他にいるのだろうか。
(なるほど、ね。)
私はみつけてしまった。
擦れて化粧が剥がれ、透明な素肌が現れた、あの目を。
「見えないものを見ようとして〜…」
彼の鼻歌は、まだ続く。
『透明人間』
がこの世に、いや目の前に存在するということ。
彼の思惑が理解されないように、
私がいま見た現実も、周囲にはわかってもらえないだろう。
そりゃあそうだ。
どちらもすべて理解してくれるのは、『同類』しかいないのだから。
…例えばそれは、彼の言う、生き別れた妹みたいな存在、とか。
私はそっと、教室の扉を開いた。
「見つかりましたか?妹さんは。」
彼が驚いたのは鼻歌を聞かれたからでも、突然背中から話しかけられたからでもない。
私の、擦れた顔のせいだ。
お互い顔を見合わせ、ひと呼吸おいて笑みが溢れる。
「ああ…しかし、どうやらいちばん遠いところにいたらしい。」
そして1番遠い場所は自分の背中なのだと兄は言った。
扉の隙間には、うっすら化粧の跡が残っている。
(おしまい)(この物語はフィクションです)
参考:『飛んだピエロ』(なかとかくみこ)
「僕らの知らない大岡裁き」「15Good」
良質:12票トリック:2票物語:1票
大岡越前守忠相の前に、一人の子どもと二人の女が連れてこられました。
二人の女は、どちらも「子どもの母親は自分だ」と主張して譲りません。
忠相は二人に「子どもの腕を一本ずつ持って引っ張り合い、勝った方を母親と認める」と言いました。
その言葉に従い二人の女は子どもを引っ張り合います。
ところが女のうちの片方が、子どもの腕が伸びるのを恐れて手を離してしまいました。
手を離した女は「敲(たたき)の刑」に処せられることとなりました。
状況を説明してください。
二人の女は、どちらも「子どもの母親は自分だ」と主張して譲りません。
忠相は二人に「子どもの腕を一本ずつ持って引っ張り合い、勝った方を母親と認める」と言いました。
その言葉に従い二人の女は子どもを引っ張り合います。
ところが女のうちの片方が、子どもの腕が伸びるのを恐れて手を離してしまいました。
手を離した女は「敲(たたき)の刑」に処せられることとなりました。
状況を説明してください。
22年07月12日 10:22
【ウミガメのスープ】 [ごらんしん]
【ウミガメのスープ】 [ごらんしん]
解説を見る
子どもの腕を両側から引っ張る二人の女。
どちらも譲る気はなさそうです。
「このままではまずい、子どもの腕が千切れてしまう」
忠相が二人を止めようとしたまさにその瞬間、子どもの腕がビヨ〜~~~ンと伸びたのでした。
突然のことに恐れをなした片方の女は、子どもの手を離すと、その場に腰を抜かしてしまいました。
「おのれ妖怪め!」忠相は刀を抜くと素早く子どもを斬り殺します。
そして、すぐにもう一方の女に向き合うと「伸びた腕に驚かない貴様も妖怪だな!」と言うやいなや、女を一刀両断に切り裂いてしまったのでした。
忠相は刀を収めると、腰を抜かしている女に近づき、キツい口調で咎めました。
「お前は自分が母親だと嘘を申したな。お白洲で嘘を申した罪、軽くはないぞ!」
数日後、女は「敲の刑」を受けることとなったのでした。
どちらも譲る気はなさそうです。
「このままではまずい、子どもの腕が千切れてしまう」
忠相が二人を止めようとしたまさにその瞬間、子どもの腕がビヨ〜~~~ンと伸びたのでした。
突然のことに恐れをなした片方の女は、子どもの手を離すと、その場に腰を抜かしてしまいました。
「おのれ妖怪め!」忠相は刀を抜くと素早く子どもを斬り殺します。
そして、すぐにもう一方の女に向き合うと「伸びた腕に驚かない貴様も妖怪だな!」と言うやいなや、女を一刀両断に切り裂いてしまったのでした。
忠相は刀を収めると、腰を抜かしている女に近づき、キツい口調で咎めました。
「お前は自分が母親だと嘘を申したな。お白洲で嘘を申した罪、軽くはないぞ!」
数日後、女は「敲の刑」を受けることとなったのでした。