「それって今言うべきことなんですか?」「16Good」
良質:3票物語:12票納得感:1票
カメオは大学受験に失敗したことをきっかけに完全無欠の「ニート」となり、数年ほど親の脛をかじって生活し続けていた。カメオの両親も初めは仕方ないと思っていたが、何一つ自分の生活を変えようとせず毎日ゲームばかりし続けるカメオに、ついに堪忍袋の緒が切れた。ある日、両親はカメオにある程度のお金を渡した上で「もうこの家から出ていけ」と言い放ち、カメオを家から追い出してしまった。
それからカメオは独り暮らしを始めたが、それでも会社やアルバイトの面接に行くようなことはなく、自宅でゲームばかりしていた。もちろん、その間は両親との交流も一切なかった。
ところが、カメオが家を追い出されてからしばらく経ったある日、突然カメオの元に父から電話が掛かってきた。カメオがおそるおそる出てみると、
カメオ「……今さら何の用だよ。」
父「……お前に言っておきたいことがある。」
カメオ「なんだよ」
父「お前はいつも早口で何を言っているのか分かりにくいから、今後はもっとゆっくり喋るようにしなさい。」
これを聞いてカメオは泣き出してしまった。一体なぜ?
それからカメオは独り暮らしを始めたが、それでも会社やアルバイトの面接に行くようなことはなく、自宅でゲームばかりしていた。もちろん、その間は両親との交流も一切なかった。
ところが、カメオが家を追い出されてからしばらく経ったある日、突然カメオの元に父から電話が掛かってきた。カメオがおそるおそる出てみると、
カメオ「……今さら何の用だよ。」
父「……お前に言っておきたいことがある。」
カメオ「なんだよ」
父「お前はいつも早口で何を言っているのか分かりにくいから、今後はもっとゆっくり喋るようにしなさい。」
これを聞いてカメオは泣き出してしまった。一体なぜ?
20年05月26日 18:50
【ウミガメのスープ】 [ブラダマンテ]
【ウミガメのスープ】 [ブラダマンテ]

果たしてこのカメオは1年後の私の姿かもしれません()
解説を見る
家を追い出されたカメオは、初めこそ両親に憤りを感じていたものの、次第に「確かに両親には迷惑を掛けすぎた」と反省し、心を入れ替えて自立して生きていくことを決意した。とは言っても、今まで働いた経験もなく大した特技や取り柄もない自分が社会でやっていけるのか不安でもあった。今のカメオが得意なことなど、ゲームくらいしかなかった。
そこでカメオは、「YouTuberになり、ゲーム実況などで稼ぐ」ことを思い付いた。早速、両親から貰ったお金で機材を揃えゲーム実況を始めた。
ニート生活で培ったゲームの高い実力や元々の明るい性格に起因する喋りの上手さに加え、「無職だから職場等への身バレの心配がない」として顔出しで実況をすることでリアクションを楽しまれるなどして、カメオの動画は少しずつ視聴者を増やしていき、しばらくするとYouTuberとしての収益だけでそれなりの生活を送ることができるようになっていた。
そんな時に、父から電話が掛かってきた。
父「お前は早口で何を言っているのか分かりにくいから、今後はもっとゆっくり喋るようにしなさい。」
カメオ「……へ?」
父「せっかくゲームも喋りも上手いのに、肝心の実況がちゃんと聞き取れなければ意味がないだろう。コメントでもたまに早口で聞き取りにくいと書かれているぞ。今後は気を付けなさい。」
カメオ「……!?まさか、親父、俺の動画を……!?」
父「…最近話題になっている、ゆーちゅーばーと言ったか。世間では色々と意見はあるが、お笑い芸人みたいにこれも人を楽しませる立派な職業だと俺は思う。お前を家から追い出した俺達を、今さら許してほしいとは言わないが…それでも俺も母さんも、今のお前のことは応援している。…それだけ伝えたかったんだ。達者で暮らせ。」
カメオ「親父…ありがとう…」
一度は自分を見捨てた両親ではあったが、実際にはYouTuberとして再起した自分を応援し動画を観てくれていたことを知り、カメオは嬉しさから泣き出してしまった。
そこでカメオは、「YouTuberになり、ゲーム実況などで稼ぐ」ことを思い付いた。早速、両親から貰ったお金で機材を揃えゲーム実況を始めた。
ニート生活で培ったゲームの高い実力や元々の明るい性格に起因する喋りの上手さに加え、「無職だから職場等への身バレの心配がない」として顔出しで実況をすることでリアクションを楽しまれるなどして、カメオの動画は少しずつ視聴者を増やしていき、しばらくするとYouTuberとしての収益だけでそれなりの生活を送ることができるようになっていた。
そんな時に、父から電話が掛かってきた。
父「お前は早口で何を言っているのか分かりにくいから、今後はもっとゆっくり喋るようにしなさい。」
カメオ「……へ?」
父「せっかくゲームも喋りも上手いのに、肝心の実況がちゃんと聞き取れなければ意味がないだろう。コメントでもたまに早口で聞き取りにくいと書かれているぞ。今後は気を付けなさい。」
カメオ「……!?まさか、親父、俺の動画を……!?」
父「…最近話題になっている、ゆーちゅーばーと言ったか。世間では色々と意見はあるが、お笑い芸人みたいにこれも人を楽しませる立派な職業だと俺は思う。お前を家から追い出した俺達を、今さら許してほしいとは言わないが…それでも俺も母さんも、今のお前のことは応援している。…それだけ伝えたかったんだ。達者で暮らせ。」
カメオ「親父…ありがとう…」
一度は自分を見捨てた両親ではあったが、実際にはYouTuberとして再起した自分を応援し動画を観てくれていたことを知り、カメオは嬉しさから泣き出してしまった。
「【要知識】この世界の傾きに」「16Good」
良質:9票納得感:7票
あの日、ひび割れたアスファルトの辺りで美月お姉ちゃんが写真を撮っていたのは。
あの日、陽太お兄ちゃんがビー玉を取り出そうと悪戦苦闘していたのは。
あの日、僕の眼下に広がる赤がとても美しかったのは。
あの日、僕たちの住む白川郷が世界遺産になったのは。
全部ぜんぶ、いったい何が傾いているからだと思いますか?
地軸
春にアスファルトの隙間を縫ってタンポポが咲くのも、
夏にラムネが飲みたくなり、瓶の中のビー玉と格闘するのも、
秋にロープウェイから眺める紅葉が美しいのも、
冬の積雪に耐えるための建築様式に、文化的価値が認められたのも、
全部ぜんぶ、僕たちの国に四季があるからであり、
僕たちの国に四季があるのは、地軸が傾いているからである。
あの日、陽太お兄ちゃんがビー玉を取り出そうと悪戦苦闘していたのは。
あの日、僕の眼下に広がる赤がとても美しかったのは。
あの日、僕たちの住む白川郷が世界遺産になったのは。
全部ぜんぶ、いったい何が傾いているからだと思いますか?
20年06月02日 21:54
【20の扉】 [休み鶴]
【20の扉】 [休み鶴]

SP:イナーシャさん。ありがとうございました!
解説を見る
地軸
春にアスファルトの隙間を縫ってタンポポが咲くのも、
夏にラムネが飲みたくなり、瓶の中のビー玉と格闘するのも、
秋にロープウェイから眺める紅葉が美しいのも、
冬の積雪に耐えるための建築様式に、文化的価値が認められたのも、
全部ぜんぶ、僕たちの国に四季があるからであり、
僕たちの国に四季があるのは、地軸が傾いているからである。
「あなたがわたしにくれたもの」「16Good」
良質:3票トリック:11票物語:1票納得感:1票
「プ…プププ…プレゼントです!!」
勇気を出して、憧れのイケメン・ダテにプレゼントのネクタイを渡したジュンコ。
ダテはにっこり笑ってネクタイを受け取った。
その後、ダテは一度たりともジュンコが渡したネクタイを身に着けることはなかった。
しかし、ジュンコのダテに対する好感度は全く下がらなかった。
恋は盲目…というわけでないのなら、いったいなぜ?
勇気を出して、憧れのイケメン・ダテにプレゼントのネクタイを渡したジュンコ。
ダテはにっこり笑ってネクタイを受け取った。
その後、ダテは一度たりともジュンコが渡したネクタイを身に着けることはなかった。
しかし、ジュンコのダテに対する好感度は全く下がらなかった。
恋は盲目…というわけでないのなら、いったいなぜ?
20年07月29日 23:02
【ウミガメのスープ】 [ちくたく]
【ウミガメのスープ】 [ちくたく]

ネクタイの締め方を忘れそうになる
解説を見る
紳士服店のイケメン店員・ダテに憧れる女子高生のジュンコ。何がいいかというと、完全に顔がド・ストライクなのだ。
しかし自分には縁のない店なので、「カッコいいなぁ…」と遠くから眺めるくらいだった。
6月のことだった。ジュンコは母から、
「今度の父の日は、お父さんにネクタイ買ってあげようかねぇ。ジュンコ、あなたが買ってきてくれる?」
と言われた。
ジュンコは瞬時に閃いた。「あのイケメン店員のお店に行って買おう!」
店に行ってネクタイを選ぶジュンコ。
ジュンコ「どんなのがいいのだろう…わからない…。けどこれにしちゃおっと!」
ネクタイをレジまで持っていくジュンコ。
ダテ 「ありがとうございます。ご自宅用ですか?プレゼント用ですか?」
ジュンコ「プ…プププ…プレゼントです!!」
ジュンコは、『父へのプレゼント』のネクタイをダテに手渡した。
ダテはにっこりと笑って受け取り、「ではお包みしますね」と言った。
父へのプレゼントなので、当然ながらダテがそのネクタイを身に着けることはなかった。
しかし憧れのダテと話せて大満足のジュンコなのだった。
しかし自分には縁のない店なので、「カッコいいなぁ…」と遠くから眺めるくらいだった。
6月のことだった。ジュンコは母から、
「今度の父の日は、お父さんにネクタイ買ってあげようかねぇ。ジュンコ、あなたが買ってきてくれる?」
と言われた。
ジュンコは瞬時に閃いた。「あのイケメン店員のお店に行って買おう!」
店に行ってネクタイを選ぶジュンコ。
ジュンコ「どんなのがいいのだろう…わからない…。けどこれにしちゃおっと!」
ネクタイをレジまで持っていくジュンコ。
ダテ 「ありがとうございます。ご自宅用ですか?プレゼント用ですか?」
ジュンコ「プ…プププ…プレゼントです!!」
ジュンコは、『父へのプレゼント』のネクタイをダテに手渡した。
ダテはにっこりと笑って受け取り、「ではお包みしますね」と言った。
父へのプレゼントなので、当然ながらダテがそのネクタイを身に着けることはなかった。
しかし憧れのダテと話せて大満足のジュンコなのだった。
「”Where is Dad?”」「16Good」
トリック:6票物語:10票
まだ冬と呼ぶには少し早い11月20日。神奈川に今年初めての雪が降った。神奈川県で11月に降雪が観測されるのは実に18年ぶりのことであった。
そんな雪の日に、女子高生の雪子は生まれて初めて父の名前を口にした。 一体、彼女に何があったのだろうか?
(SP:アルバートさん! 感謝です!!)
そんな雪の日に、女子高生の雪子は生まれて初めて父の名前を口にした。 一体、彼女に何があったのだろうか?
(SP:アルバートさん! 感謝です!!)
20年09月06日 00:12
【ウミガメのスープ】 [異邦人]
【ウミガメのスープ】 [異邦人]

SP:アルバートさん! ありがとうございます!
解説を見る
解説:
私の名前は雪子。今年から県立水平高校に通っている、今をトキめく15歳!
・・・なんて言うほどのものでもなく。経済的に厳しい母子家庭で育ったので、オシャレしたり遊んだり部活をエンジョイしたりなんて華の高校生ライフは過ごしていない。
学校の成績は落とさないようにしつつも、今年からアルバイトを始めて・・・まあ、何だかんだ私なりに充実した日々を送っている。
おかげ様で、日々青春を謳歌している友達にもさして嫉妬心を抱かずにやっているけれど、一つだけ、友達の軽口を上手に受け流せないものがある。
「父親とかマジ最悪。雪子は良いよねー、家にあんなデリカシーの無いのがいなくて」
そう、父の話題だ。 私には、父親がいない。いないだけでなく、何も知らない。
写真も無く、物も無く。我が家の中で父の存在していた形跡を感じたことは一度も無い。
皆が言うように父という存在が最悪なものなのか知る由が無く、父がいないことは私にとって大きなコンプレックスなのだ。
幼稚園児の頃、何故お父さんがいないのかと母に聞いたことがある。
「おかあさん、どうしてわたしにはおとうさんがいないの? おとうさんはどこ? おとうさんにあいたい!」
「雪子、ゴメンね・・・」
幼稚園の友達の皆にはいるお父さんが私にだけいない寂しさと、私に謝る母の哀しそうな表情とで胸がいっぱいになってワンワンと泣いたっけ。
それ以来、父について聞くことはしなくなったし、家族の話や自分の生い立ちに関する話を避けるようになった。
小学生の時に、『自分の名前にはどんな意味があるのかお父さん・お母さんに聞いてみよう』という宿題が出された。
お腹に重いものを感じつつも家に帰って母に訊ねてみる、母は少し驚いたような顔をした後に、
「あなたが生まれた時にね、随分と早い初雪が降っていたの。神奈川で11月に雪なんて珍しいでしょ? だから『雪子』」
そう教えてくれた。 「こう育って欲しいから」とか「考えて考えてこういう名前を付けると決めていた」とかそういうのを予想していたのだけど、思い付きのような安直な由来で少しガッカリして、同時に、込み入った事情が無くてホッとする思いもあった。
でも、自分が生まれた日に珍しくも雪が降っていたなんて聞いたのは初めてで、なんだか自分が特別な存在になったような気もした。
そして、高校生活も半年が過ぎ、私は16歳の誕生日を迎える。
11月20日、朝。 神奈川に、雪が降った。
朝起きて窓の外を見た私は驚いた。私が覚えている限り11月に雪を見るのは初めてだし、何よりも、私『雪子』の誕生日に雪が降ったのだ。
あの時感じた特別な気持ちが戻ってきたようで、私は胸を高鳴らせる。忙しくも変わり映えしない私の毎日に今日だけは特別なことが起こりそうで、既に起きている母の待つリビングへ飛び込んだ。
「お母さん、雪が降ってる! 今日、私の誕生日! 雪子の誕生日に雪だよ!」
柄にもなくはしゃぐ私に母も嬉しそうにしていて、今年は奮発してお高いケーキを買って帰るねと言ってくれた。 ああ、もう特別なことが起きている!
どんなケーキかなとワクワクしつつ、窓の外の空から降る雪を満喫。空が私を祝福してくれているみたい、なんて我ながらバカな浮かれよう。
祝福の雪をひとしきり味わうと、今度は小さなテレビの電源を点けて、今日という日に湧いているであろうニュースを探した。
天気予報を流している局に切り替わると、神奈川の様子と共にテロップが映し出される。
『神奈川で11月に雪が観測されるのは実に18年ぶり』
「18年ぶり! ってことは私の誕生日以来の・・・・・・えっ?」
瞬間、テレビの音が外の雪に吸い込まれたかのように、私の耳には何も聞こえなくなった。
「え、だって、私の誕生日にも雪が降って・・・。ねえっ、お母さんっ、だって私、16年前の雪の日に生まれたから雪子だって・・・」
『18年ぶり』。ただそれだけの文字に、私の16年間の記憶が搔き消されていく錯覚に陥った。自分の輪郭が雪に埋もれていく感覚に囚われた。
私って、『雪子』って・・・一体、誰で、何なの・・・?
こんな特別な1日なんて望んでいない。悪い夢なら覚めてほしい。・・・いや、今までがずっと悪い夢だった?
頭の先から血の気が引いているのに目頭だけはカーッと熱くて、私の背後でテレビを見ていた母の方に振り返ると・・・
「うーん、そっか、バレちゃったか」
・・・随分とあっけらかんとしている母がそこにいて。
「・・・え、あ、ん? おどどどうお、えっ。 ど、ど、ど、どういうこと?」
「ホントはね、あなたが大人になった時に全部話そうと思っていたことなんだけど。『雪が降った日に生まれたから、雪子』。アレは嘘だったの」
「USO? うそ、ウソ・・・・・・あ、嘘! え、ウソ、嘘!? マジで!? マジで嘘!? ウッソ、マジで!? なんで!? えっ、なんで!?」
「急にアホの子にならないでよ、こっちがビックリするじゃない」
「ご、ごめん」
あービックリした。いやまだビックリしてるけれど。 どうにか気持ちを落ち着けて、母の話が聞ける精神状態を取り戻す。
「・・・ホントはね。あなたの『雪』の字は、お父さんから貰ったのよ」
「お、お父さん・・・? お母さんのお父さんのこと?」
ここ数年会っていない、母の実家の祖父を思い浮かべる。
「いいえ。あなたのお父さん・・・『雪夫(ゆきお)』さんから一文字貰って、『雪子』」
「雪夫・・・? それが、私のっ・・・私の、お父さんっ・・・の、名前?」
「そう。『あなたは雪夫さんの子供だから、雪子』」
「雪夫・・・雪夫・・・だから、雪子・・・」
私は、父に関する初めての情報を噛み締めるように何度も呟いた。 そして、今一度、自分の名前を口にしてみた。
雪夫。雪子。 一度失いかけた自分の輪郭が、以前よりも強さを増して戻って来たことを実感した。
「そっか。私のお父さんの名前、雪夫っていうんだ・・・」
「そう。たとえ雪夫さんと家族になれなくても、会うことができなくなっても、雪夫さんと私が過ごした時間も想いもホンモノだったんだ、って証明したくて。だから私、一人で産んで一人で育てるって決めたの。 そのことを知った雪夫さんのお家はものすごく怒ったんだけど、雪夫さんから手紙でね・・・
『自分の子供に何もしてあげられないことがツラい。だから、僕の字をあげてほしい。滅多に降らない雪の日に生まれた僕の、特別な1文字を』
・・・って、『雪』の字を子供に付けてほしいって頼まれたの。だから、『雪子』。どう納得したかしら、雪子?」
・・・・・・・・・・・・。
「・・・いや、えっとね、なんだろう・・・とりあえず、お父さんとお母さんは何者ですか?」
私はまた意識が遠のきかけた。今まで何も知らなかっただけに、新情報が多い。多過ぎる。
「うーん。いやーまー、学生同士だったしねぇ、相手方のお家がお家だったりでねぇ。どうにもならないことだったし、結局あの後、雪夫さんはイタリアの住まいに無理矢理連れていかれたって風の噂で・・・」
懐かしき激動の日々を思い出すかのように、目をつぶって困り顔をする母にこれ以上喋らせるのは危険だと私は判断した。
「あ、うん。ゴメン。多分、今その話をされても受け止め切れないことだけは分かった。 ・・・でも、どうして、私が小学生の時に嘘ついたの? まあ、お父さんの名前の由来を借りたって意味では全部が全部嘘では無かったのかもしれないけれど」
「雪子が幼稚園生の頃、『どうしてわたしにはおとうさんがいないの? おとうさんはどこ?』って泣いてたの覚えてる? その時の雪子のことを思い出して、ホントのことを言ったら、自分の名前を見たり聞いたりする度に寂しい思いをさせちゃうんじゃないかと思って・・・」
そうか。小学生の頃の私では、いない父から貰った名前だなんて上手く飲み込めなかっただろう。 母にはいつもいつも気を遣わせてしまっている。
「お母さんっ・・・・・・って、こんな長々と話してて大丈夫!? 大丈夫じゃないね!?」
「あらホント! お母さんもう出るから、戸締りよろしく! 雪子も遅刻しないようにね!」
「私まだパジャマですけど!?」
朝起きた時は「今日は特別な日になりそう」なんて思ってたけど、「今日から特別な日々になりそう・・・」なんて、覚めた頭で寝ぼけたことを思う私だった。
簡易解説:
母子家庭で育ち、今年で16歳になる11月生まれの雪子は、「あなたが生まれた時に雪が降っていたから『雪子』」だと母から聞かされていた。
しかし、「18年ぶりに、神奈川で11月に雪を観測」というニュースのせいで、自分が生まれた時に雪が降っていなかったことを知る。
真相を確かめようと母に尋ねた結果、「父親の『雪夫』から一文字貰って『雪子』」だと聞かされる。
それまで何も知らずにいた父親に関する初めての情報。 雪子は「私のお父さんの名前、雪夫っていうんだ・・・」と、噛みしめるように呟いたのだった。
私の名前は雪子。今年から県立水平高校に通っている、今をトキめく15歳!
・・・なんて言うほどのものでもなく。経済的に厳しい母子家庭で育ったので、オシャレしたり遊んだり部活をエンジョイしたりなんて華の高校生ライフは過ごしていない。
学校の成績は落とさないようにしつつも、今年からアルバイトを始めて・・・まあ、何だかんだ私なりに充実した日々を送っている。
おかげ様で、日々青春を謳歌している友達にもさして嫉妬心を抱かずにやっているけれど、一つだけ、友達の軽口を上手に受け流せないものがある。
「父親とかマジ最悪。雪子は良いよねー、家にあんなデリカシーの無いのがいなくて」
そう、父の話題だ。 私には、父親がいない。いないだけでなく、何も知らない。
写真も無く、物も無く。我が家の中で父の存在していた形跡を感じたことは一度も無い。
皆が言うように父という存在が最悪なものなのか知る由が無く、父がいないことは私にとって大きなコンプレックスなのだ。
幼稚園児の頃、何故お父さんがいないのかと母に聞いたことがある。
「おかあさん、どうしてわたしにはおとうさんがいないの? おとうさんはどこ? おとうさんにあいたい!」
「雪子、ゴメンね・・・」
幼稚園の友達の皆にはいるお父さんが私にだけいない寂しさと、私に謝る母の哀しそうな表情とで胸がいっぱいになってワンワンと泣いたっけ。
それ以来、父について聞くことはしなくなったし、家族の話や自分の生い立ちに関する話を避けるようになった。
小学生の時に、『自分の名前にはどんな意味があるのかお父さん・お母さんに聞いてみよう』という宿題が出された。
お腹に重いものを感じつつも家に帰って母に訊ねてみる、母は少し驚いたような顔をした後に、
「あなたが生まれた時にね、随分と早い初雪が降っていたの。神奈川で11月に雪なんて珍しいでしょ? だから『雪子』」
そう教えてくれた。 「こう育って欲しいから」とか「考えて考えてこういう名前を付けると決めていた」とかそういうのを予想していたのだけど、思い付きのような安直な由来で少しガッカリして、同時に、込み入った事情が無くてホッとする思いもあった。
でも、自分が生まれた日に珍しくも雪が降っていたなんて聞いたのは初めてで、なんだか自分が特別な存在になったような気もした。
そして、高校生活も半年が過ぎ、私は16歳の誕生日を迎える。
11月20日、朝。 神奈川に、雪が降った。
朝起きて窓の外を見た私は驚いた。私が覚えている限り11月に雪を見るのは初めてだし、何よりも、私『雪子』の誕生日に雪が降ったのだ。
あの時感じた特別な気持ちが戻ってきたようで、私は胸を高鳴らせる。忙しくも変わり映えしない私の毎日に今日だけは特別なことが起こりそうで、既に起きている母の待つリビングへ飛び込んだ。
「お母さん、雪が降ってる! 今日、私の誕生日! 雪子の誕生日に雪だよ!」
柄にもなくはしゃぐ私に母も嬉しそうにしていて、今年は奮発してお高いケーキを買って帰るねと言ってくれた。 ああ、もう特別なことが起きている!
どんなケーキかなとワクワクしつつ、窓の外の空から降る雪を満喫。空が私を祝福してくれているみたい、なんて我ながらバカな浮かれよう。
祝福の雪をひとしきり味わうと、今度は小さなテレビの電源を点けて、今日という日に湧いているであろうニュースを探した。
天気予報を流している局に切り替わると、神奈川の様子と共にテロップが映し出される。
『神奈川で11月に雪が観測されるのは実に18年ぶり』
「18年ぶり! ってことは私の誕生日以来の・・・・・・えっ?」
瞬間、テレビの音が外の雪に吸い込まれたかのように、私の耳には何も聞こえなくなった。
「え、だって、私の誕生日にも雪が降って・・・。ねえっ、お母さんっ、だって私、16年前の雪の日に生まれたから雪子だって・・・」
『18年ぶり』。ただそれだけの文字に、私の16年間の記憶が搔き消されていく錯覚に陥った。自分の輪郭が雪に埋もれていく感覚に囚われた。
私って、『雪子』って・・・一体、誰で、何なの・・・?
こんな特別な1日なんて望んでいない。悪い夢なら覚めてほしい。・・・いや、今までがずっと悪い夢だった?
頭の先から血の気が引いているのに目頭だけはカーッと熱くて、私の背後でテレビを見ていた母の方に振り返ると・・・
「うーん、そっか、バレちゃったか」
・・・随分とあっけらかんとしている母がそこにいて。
「・・・え、あ、ん? おどどどうお、えっ。 ど、ど、ど、どういうこと?」
「ホントはね、あなたが大人になった時に全部話そうと思っていたことなんだけど。『雪が降った日に生まれたから、雪子』。アレは嘘だったの」
「USO? うそ、ウソ・・・・・・あ、嘘! え、ウソ、嘘!? マジで!? マジで嘘!? ウッソ、マジで!? なんで!? えっ、なんで!?」
「急にアホの子にならないでよ、こっちがビックリするじゃない」
「ご、ごめん」
あービックリした。いやまだビックリしてるけれど。 どうにか気持ちを落ち着けて、母の話が聞ける精神状態を取り戻す。
「・・・ホントはね。あなたの『雪』の字は、お父さんから貰ったのよ」
「お、お父さん・・・? お母さんのお父さんのこと?」
ここ数年会っていない、母の実家の祖父を思い浮かべる。
「いいえ。あなたのお父さん・・・『雪夫(ゆきお)』さんから一文字貰って、『雪子』」
「雪夫・・・? それが、私のっ・・・私の、お父さんっ・・・の、名前?」
「そう。『あなたは雪夫さんの子供だから、雪子』」
「雪夫・・・雪夫・・・だから、雪子・・・」
私は、父に関する初めての情報を噛み締めるように何度も呟いた。 そして、今一度、自分の名前を口にしてみた。
雪夫。雪子。 一度失いかけた自分の輪郭が、以前よりも強さを増して戻って来たことを実感した。
「そっか。私のお父さんの名前、雪夫っていうんだ・・・」
「そう。たとえ雪夫さんと家族になれなくても、会うことができなくなっても、雪夫さんと私が過ごした時間も想いもホンモノだったんだ、って証明したくて。だから私、一人で産んで一人で育てるって決めたの。 そのことを知った雪夫さんのお家はものすごく怒ったんだけど、雪夫さんから手紙でね・・・
『自分の子供に何もしてあげられないことがツラい。だから、僕の字をあげてほしい。滅多に降らない雪の日に生まれた僕の、特別な1文字を』
・・・って、『雪』の字を子供に付けてほしいって頼まれたの。だから、『雪子』。どう納得したかしら、雪子?」
・・・・・・・・・・・・。
「・・・いや、えっとね、なんだろう・・・とりあえず、お父さんとお母さんは何者ですか?」
私はまた意識が遠のきかけた。今まで何も知らなかっただけに、新情報が多い。多過ぎる。
「うーん。いやーまー、学生同士だったしねぇ、相手方のお家がお家だったりでねぇ。どうにもならないことだったし、結局あの後、雪夫さんはイタリアの住まいに無理矢理連れていかれたって風の噂で・・・」
懐かしき激動の日々を思い出すかのように、目をつぶって困り顔をする母にこれ以上喋らせるのは危険だと私は判断した。
「あ、うん。ゴメン。多分、今その話をされても受け止め切れないことだけは分かった。 ・・・でも、どうして、私が小学生の時に嘘ついたの? まあ、お父さんの名前の由来を借りたって意味では全部が全部嘘では無かったのかもしれないけれど」
「雪子が幼稚園生の頃、『どうしてわたしにはおとうさんがいないの? おとうさんはどこ?』って泣いてたの覚えてる? その時の雪子のことを思い出して、ホントのことを言ったら、自分の名前を見たり聞いたりする度に寂しい思いをさせちゃうんじゃないかと思って・・・」
そうか。小学生の頃の私では、いない父から貰った名前だなんて上手く飲み込めなかっただろう。 母にはいつもいつも気を遣わせてしまっている。
「お母さんっ・・・・・・って、こんな長々と話してて大丈夫!? 大丈夫じゃないね!?」
「あらホント! お母さんもう出るから、戸締りよろしく! 雪子も遅刻しないようにね!」
「私まだパジャマですけど!?」
朝起きた時は「今日は特別な日になりそう」なんて思ってたけど、「今日から特別な日々になりそう・・・」なんて、覚めた頭で寝ぼけたことを思う私だった。
簡易解説:
母子家庭で育ち、今年で16歳になる11月生まれの雪子は、「あなたが生まれた時に雪が降っていたから『雪子』」だと母から聞かされていた。
しかし、「18年ぶりに、神奈川で11月に雪を観測」というニュースのせいで、自分が生まれた時に雪が降っていなかったことを知る。
真相を確かめようと母に尋ねた結果、「父親の『雪夫』から一文字貰って『雪子』」だと聞かされる。
それまで何も知らずにいた父親に関する初めての情報。 雪子は「私のお父さんの名前、雪夫っていうんだ・・・」と、噛みしめるように呟いたのだった。
「望まれない帰宅」「16Good」
トリック:12票納得感:4票
夜通し車を走らせていたカメオは、夜が明けてからようやく自宅に帰ってくる事ができた。
本来なら昨晩には帰ってきていたはずなのだが、半日遅れでの帰宅となった。
妻と息子はどうしているかなと、様子を見に行くカメオ。
まだそれなりに朝も早かったので、二人はまだベッドで寝ていた。
帰宅を知らせるために
「帰ってきたぞ~」
と二人を起こしたカメオ。
起こされた息子のウミオは
「え?パパ、もう家に帰ってきちゃったの?」
と言い悲しそうな顔をした。
ウミオは別にパパの事を嫌っている訳ではないのだが、いったい何故?
本来なら昨晩には帰ってきていたはずなのだが、半日遅れでの帰宅となった。
妻と息子はどうしているかなと、様子を見に行くカメオ。
まだそれなりに朝も早かったので、二人はまだベッドで寝ていた。
帰宅を知らせるために
「帰ってきたぞ~」
と二人を起こしたカメオ。
起こされた息子のウミオは
「え?パパ、もう家に帰ってきちゃったの?」
と言い悲しそうな顔をした。
ウミオは別にパパの事を嫌っている訳ではないのだが、いったい何故?
20年09月21日 03:36
【ウミガメのスープ】 [琴水]
【ウミガメのスープ】 [琴水]
解説を見る
大型のキャンピングカーを購入したカメオ一家は、この連休を使って早速二泊三日のキャンプにでかけた。
最終日、まだ帰りたくないと駄々をこねたウミオに負けて、ずるずると滞在時間をのばした結果
ウミオは疲れて寝てしまい、カメオ夜通し車を走らせての半日遅れの帰宅となってしまった。
妻と息子はどうしているかなと、様子を見に行くカメオ。
まだそれなりに朝も早かったので、二人はまだ車の最後尾に備え付けられたベッドで寝ていた。
帰宅を知らせるために
「帰ってきたぞ~」
と二人を起こしたカメオ。
起こされた息子のウミオは、寝ている間に楽しい旅行が終わってしまったことを告げられて
「え?パパ、もう家に帰ってきちゃったの?」
と言い悲しそうな顔をしたのであった。
最終日、まだ帰りたくないと駄々をこねたウミオに負けて、ずるずると滞在時間をのばした結果
ウミオは疲れて寝てしまい、カメオ夜通し車を走らせての半日遅れの帰宅となってしまった。
妻と息子はどうしているかなと、様子を見に行くカメオ。
まだそれなりに朝も早かったので、二人はまだ車の最後尾に備え付けられたベッドで寝ていた。
帰宅を知らせるために
「帰ってきたぞ~」
と二人を起こしたカメオ。
起こされた息子のウミオは、寝ている間に楽しい旅行が終わってしまったことを告げられて
「え?パパ、もう家に帰ってきちゃったの?」
と言い悲しそうな顔をしたのであった。












