「明日、晴れたら。」「6ブックマーク」
雨の日も、晴れの日も、曇りであっても、その女は出かけるときは必ず傘を差す。
いったい何故?
いったい何故?
18年06月02日 01:38
【ウミガメのスープ】 [アルバート]
【ウミガメのスープ】 [アルバート]
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雨が続く、ある梅雨の日のこと。
女は幼い息子と二人、傘を差しながら道路を歩いていた。
――雨ばっかりで、遊びに行けなくてつまんない。
そう愚痴をこぼす息子に、女は笑って言った。
――じゃあ、明日晴れたら、動物園に行こうか。
顔を輝かせて頷く息子。
――約束だよ! じゃあてるてる坊主作らないと!
だが次の瞬間、居眠り運転のトラックが背後から二人に向かって突っ込んできた。
よける間もなく、身をかばう間もなく、二人はトラックに跳ね飛ばされた……
女が目を覚ますとそこは病室だった。
最初は何故そんなところにいるのかわからず、次に何が起きたのかを思い出し、まずは自分が生きていることに安堵して、
そして、女は息子の名を叫んだ。
息子は生きていた。
けれど、何度呼びかけても決して返事はなかった。
植物状態。意識が戻る可能性は低いと、医師は告げた。当分、病院のベッドから離れられないと。
女は泣いた。
それから一週間。
幸いにも軽傷だった女は、退院の日を迎えた。
病院の玄関を出て、ふと空を見上げる。空は綺麗に晴れ渡っていて、青く澄み切った空に一筋の飛行機雲が走っていた。
――じゃあ、明日晴れたら、動物園に行こうか。
今日は晴れた、晴れたのに。約束を果たすべき相手が、動物園に連れて行くべき息子が、隣にいない。もしかすると、あの約束はもう二度と……
――違う。
女は呟いた。
雨なんだ。今日もまだ。晴れていないから、約束はまだ果たせないんだ。視界が滲むのも、きっと雨のせい……
女は病院の売店で傘を買うと、それを差して帰宅した。
それからというもの、女は出かける際は必ず傘を差すようになった。晴れでも、雨でも、曇りでも。
晴れたら、動物園へ連れて行く。それができないのは、雨がやまないからだ。女は自らにそう言い聞かせた。
今日は雨。まだ雨。でもいつかきっと……雨がやんだら、明日、晴れたら……。
彼女の雨はいまだ降り続けている。
いつか晴れる日が来るのだろうか。
A,「晴れたら出かけよう」という約束をしていた子どもが事故に遭い、約束を果たせない状況になってしまった。その悲劇を受け入れられない女は、約束を果たせないのは雨がやまないからだと思い込もうとしている。
女は幼い息子と二人、傘を差しながら道路を歩いていた。
――雨ばっかりで、遊びに行けなくてつまんない。
そう愚痴をこぼす息子に、女は笑って言った。
――じゃあ、明日晴れたら、動物園に行こうか。
顔を輝かせて頷く息子。
――約束だよ! じゃあてるてる坊主作らないと!
だが次の瞬間、居眠り運転のトラックが背後から二人に向かって突っ込んできた。
よける間もなく、身をかばう間もなく、二人はトラックに跳ね飛ばされた……
女が目を覚ますとそこは病室だった。
最初は何故そんなところにいるのかわからず、次に何が起きたのかを思い出し、まずは自分が生きていることに安堵して、
そして、女は息子の名を叫んだ。
息子は生きていた。
けれど、何度呼びかけても決して返事はなかった。
植物状態。意識が戻る可能性は低いと、医師は告げた。当分、病院のベッドから離れられないと。
女は泣いた。
それから一週間。
幸いにも軽傷だった女は、退院の日を迎えた。
病院の玄関を出て、ふと空を見上げる。空は綺麗に晴れ渡っていて、青く澄み切った空に一筋の飛行機雲が走っていた。
――じゃあ、明日晴れたら、動物園に行こうか。
今日は晴れた、晴れたのに。約束を果たすべき相手が、動物園に連れて行くべき息子が、隣にいない。もしかすると、あの約束はもう二度と……
――違う。
女は呟いた。
雨なんだ。今日もまだ。晴れていないから、約束はまだ果たせないんだ。視界が滲むのも、きっと雨のせい……
女は病院の売店で傘を買うと、それを差して帰宅した。
それからというもの、女は出かける際は必ず傘を差すようになった。晴れでも、雨でも、曇りでも。
晴れたら、動物園へ連れて行く。それができないのは、雨がやまないからだ。女は自らにそう言い聞かせた。
今日は雨。まだ雨。でもいつかきっと……雨がやんだら、明日、晴れたら……。
彼女の雨はいまだ降り続けている。
いつか晴れる日が来るのだろうか。
A,「晴れたら出かけよう」という約束をしていた子どもが事故に遭い、約束を果たせない状況になってしまった。その悲劇を受け入れられない女は、約束を果たせないのは雨がやまないからだと思い込もうとしている。
「パンダ友好」「6ブックマーク」
遠足で動物園を訪れているラテラル小学校2年生。児童は班に分かれて園内を自由に見学し、先生たちは各所を巡回して彼らの様子を見守っていた。
さて、1組担任の亀田先生がパンダ舎へ見回りに立ち寄ると、そこでは彼の受け持つ児童のウミオが、他の班員から置き去りにされそうになっているところだった。
実は亀田は、以前からウミオがクラスメイトからいじめを受けている可能性を懸念していたのだが、この様子を見て「ウミオはいじめられているわけではなさそうだ」と安堵したという。
何故だろうか?
さて、1組担任の亀田先生がパンダ舎へ見回りに立ち寄ると、そこでは彼の受け持つ児童のウミオが、他の班員から置き去りにされそうになっているところだった。
実は亀田は、以前からウミオがクラスメイトからいじめを受けている可能性を懸念していたのだが、この様子を見て「ウミオはいじめられているわけではなさそうだ」と安堵したという。
何故だろうか?
18年05月20日 01:08
【ウミガメのスープ】 [アルバート]
【ウミガメのスープ】 [アルバート]

ありがとうございました。
解説を見る
心配性の亀田先生が、ウミオがいじめを受けているという疑いを抱いたきっかけは、図工の授業だった。「色鉛筆で好きな絵を描いてみよう」という課題を出すと、他の児童がカラフルな絵を描く中、ウミオはいつも白黒のパンダの絵を提出する。この課題を出すたび、必ずだ。
亀田先生は考えた。ひょっとして彼は、持ち物を隠されているのではないか。色鉛筆がないので、仕方なく鉛筆だけで描ける白黒のパンダを描いているのではないか。それしか描けないのではないか。
普段の様子からは特にいじめの気配を感じないものの、自分の目の届かないところでウミオが持ち物を盗られたり隠されたりしている可能性を、亀田先生はずっと気にしていた。
しかし。
「ウミオー、そろそろ次のところ行こうぜー」
「待って、もうちょっとだけ……」
「さっきからそればっかりじゃん。置いてっちゃうぞー」
「いいよー、僕はまだパンダ見てるから」
「お前本当にパンダ好きだな……。俺ら先にキリンのところ行ってるぞ!」
同級生の声に耳を貸さず、熱心にパンダを見続けているウミオ。
どうやら彼はただ、このヘンテコで妙に愛くるしい白黒の生き物が大好きなだけのようだ。
亀田先生は考えた。ひょっとして彼は、持ち物を隠されているのではないか。色鉛筆がないので、仕方なく鉛筆だけで描ける白黒のパンダを描いているのではないか。それしか描けないのではないか。
普段の様子からは特にいじめの気配を感じないものの、自分の目の届かないところでウミオが持ち物を盗られたり隠されたりしている可能性を、亀田先生はずっと気にしていた。
しかし。
「ウミオー、そろそろ次のところ行こうぜー」
「待って、もうちょっとだけ……」
「さっきからそればっかりじゃん。置いてっちゃうぞー」
「いいよー、僕はまだパンダ見てるから」
「お前本当にパンダ好きだな……。俺ら先にキリンのところ行ってるぞ!」
同級生の声に耳を貸さず、熱心にパンダを見続けているウミオ。
どうやら彼はただ、このヘンテコで妙に愛くるしい白黒の生き物が大好きなだけのようだ。
「お金が欲しい」「6ブックマーク」
カメオはお金がたくさん欲しかったので、いつも買うお茶より高いお茶を買った。なぜ?
18年07月15日 22:01
【ウミガメのスープ】 [CENSORED]
【ウミガメのスープ】 [CENSORED]

よろしくお願いします。否定的な批評もOKです。
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カメオは友達に連絡を取りたかったが、ケータイの充電が切れてしまっていた。公衆電話を使おうとしたが、財布には千円札しかなかった。そこで近くのコンビニでお札を崩すことにした。カメオは十円玉一枚では通話時間が足りないが、百円玉を使うのももったいないと思ったので十円玉(お金)をたくさん欲していた。そこで、いつも買う百円のお茶ではなく、百十円のお茶を買い、十円玉を四枚作った。
「スリの憂鬱」「6ブックマーク」
ある男が、財布を盗みました。
ですが男は中身をみて心底がっかりしました。
なぜ?
ですが男は中身をみて心底がっかりしました。
なぜ?
18年07月04日 11:21
【ウミガメのスープ】 [たこまるち]
【ウミガメのスープ】 [たこまるち]
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男には好きになった女性がいたが、内気な性格が災いして声がかけられず、ストーカー行為をしていた。
ある日、その女性の財布を盗んだ。
身元を知ろうとしたのだ。
だが身分証明書を見てみると、男が好きになった相手は、実は女ではなく、ニューハーフだった。
こんな事実知りたくなかったと、男は落ち込み、その後自首をした。
ある日、その女性の財布を盗んだ。
身元を知ろうとしたのだ。
だが身分証明書を見てみると、男が好きになった相手は、実は女ではなく、ニューハーフだった。
こんな事実知りたくなかったと、男は落ち込み、その後自首をした。
「Bar LATE-think「二つのレシピ」」「6ブックマーク」
いらっしゃいませ。
Bar LATE-thinkへようこそ。
当店では「酒」にまつわる謎を、カクテルの作り方などを交えつつ解いていただくという趣向の店にございます。
さて、本日はまずカクテルからお召し上がりください。
「ジン&ビターズ」
ドライ・ジン 60ml
アンゴスチュラビターズ 適量
リキュールグラスにビターズを振り入れ、グラスの内側に満遍なくいきわたらせたあとで、キンキンに冷やしたジンを優しく注ぐだけ、という非常に簡単なレシピです。
ジンの豊かな風味をビターズ独特の苦味や薬草の香りで深みを与えたカクテルでございます。
世界最古のカクテルと称されることもある、伝統的なカクテルです。
ーーーーーーー
さて、こちらのカクテルですが、実は同じお酒でもう一種類カクテルが作れます。
ピンク・ジンと言いまして、こちらは材料をシェイクすることとカクテル・グラスに注ぐことだけが異なります。
ジン&ビターズよりも新しいレシピとされています。
ーーーーーーーー
ある日、二人組のお客様で軽い口論…ディベートが白熱しておりました。
その内容を聞き、私はジン&ビターズとピンク・ジンのふたつを飲み比べていただきました。
その結果お二人は無事に和解されたのですが、さて、私がこのカクテルをお出しした意図をお答えください。
もちろん、お二人の口論の内容も重要でございます。
Bar LATE-thinkへようこそ。
当店では「酒」にまつわる謎を、カクテルの作り方などを交えつつ解いていただくという趣向の店にございます。
さて、本日はまずカクテルからお召し上がりください。
「ジン&ビターズ」
ドライ・ジン 60ml
アンゴスチュラビターズ 適量
リキュールグラスにビターズを振り入れ、グラスの内側に満遍なくいきわたらせたあとで、キンキンに冷やしたジンを優しく注ぐだけ、という非常に簡単なレシピです。
ジンの豊かな風味をビターズ独特の苦味や薬草の香りで深みを与えたカクテルでございます。
世界最古のカクテルと称されることもある、伝統的なカクテルです。
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さて、こちらのカクテルですが、実は同じお酒でもう一種類カクテルが作れます。
ピンク・ジンと言いまして、こちらは材料をシェイクすることとカクテル・グラスに注ぐことだけが異なります。
ジン&ビターズよりも新しいレシピとされています。
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ある日、二人組のお客様で軽い口論…ディベートが白熱しておりました。
その内容を聞き、私はジン&ビターズとピンク・ジンのふたつを飲み比べていただきました。
その結果お二人は無事に和解されたのですが、さて、私がこのカクテルをお出しした意図をお答えください。
もちろん、お二人の口論の内容も重要でございます。
18年06月20日 22:23
【ウミガメのスープ】 [ツォン]
【ウミガメのスープ】 [ツォン]

本家「ラテシン」より引っ越してまいりました。
解説を見る
お二人は「辞典」の編さんに携わっていらっしゃいました。
彼らが口論していたのは、いわゆる若者言葉や言葉の揺らぎについてでした。
ら抜き言葉や「とんでもございません」などですね。
「本来の意味からすると、〇〇という変化はありえない」
「ありえないと思う変化が事実起きてるんだし、これだけ広く知れ渡ってるんだから辞典に加わってしかるべき」
公私の切り替えがしにくいのでしょう。
仕事モードのまま議論は白熱してしまい、ともすれば怒鳴り声に近いほど大きな声になってらっしゃいました。
「お客様、よろしいでしょうか。」
私がそっと声をかけると、はっとした顔でお二人は声を抑えました。
「飲み物が空のようです。宜しければお二人にお飲みいただきたいカクテルがありまして。強めですが、お二人共ウイスキーをストレートで飲まれるので問題ないと思いますがいかがですか?」
お二人は素直に頷かれました。
私はジン&ビターズとピンク・ジンをお二人にお出ししました。
「マスター、どういうこと?」
「2つとも同じ材料じゃないか?」
「ええ。このカクテル、同じ材料ですが別のカクテルなんです。
一説にはジン&ビターズが出来て、時を経て変化した姿がピンク・ジンだと言われています。」
お二人は私のうんちくに耳を傾けてくださいました。
「不思議ですよね。中身が同じで名前が違うって。でも作り方も違うし別物と言えば別物。その証拠にほら、味わいが少し違いますでしょう?」
ピンク・ジンはシェイクする分少し口当たりがまろやかになります。
ジン&ビターズはストレートに近く、力強い味と香りが魅力です。
「…言葉ももしかしたらそうなのかも知れませんね。ジン&ビターズのように言葉も意味も変わらない言葉もある。また、時間を経て変化し、意味は変わらないものもある。逆に同じ言葉だけど意味が新しくなるものもある。奥深いものですから、お二人が白熱するのも分かります」
「…ううむ」
「確かに…」
「ですが。」
考え込むお二人に続けて申しました。
「これを考えるのは月曜日、会議室で宜しいのでは?折角ですから、もう少しお酒を楽しんで頂きたいですし。」
「…そうだなぁ、ここはバーだったな」
「確かに今日は花金の夜だ。酒を楽しむとしよう」
「是非に」
ーーーーーーー
まとめ
言葉の変化について口論していたので、二つのカクテルの歴史を話すことで「言葉にも変化は有り得るのではないか」と言う意見を伝えた。
あわよくば落ち着かせて追加注文をしてもらおうとした(笑)
彼らが口論していたのは、いわゆる若者言葉や言葉の揺らぎについてでした。
ら抜き言葉や「とんでもございません」などですね。
「本来の意味からすると、〇〇という変化はありえない」
「ありえないと思う変化が事実起きてるんだし、これだけ広く知れ渡ってるんだから辞典に加わってしかるべき」
公私の切り替えがしにくいのでしょう。
仕事モードのまま議論は白熱してしまい、ともすれば怒鳴り声に近いほど大きな声になってらっしゃいました。
「お客様、よろしいでしょうか。」
私がそっと声をかけると、はっとした顔でお二人は声を抑えました。
「飲み物が空のようです。宜しければお二人にお飲みいただきたいカクテルがありまして。強めですが、お二人共ウイスキーをストレートで飲まれるので問題ないと思いますがいかがですか?」
お二人は素直に頷かれました。
私はジン&ビターズとピンク・ジンをお二人にお出ししました。
「マスター、どういうこと?」
「2つとも同じ材料じゃないか?」
「ええ。このカクテル、同じ材料ですが別のカクテルなんです。
一説にはジン&ビターズが出来て、時を経て変化した姿がピンク・ジンだと言われています。」
お二人は私のうんちくに耳を傾けてくださいました。
「不思議ですよね。中身が同じで名前が違うって。でも作り方も違うし別物と言えば別物。その証拠にほら、味わいが少し違いますでしょう?」
ピンク・ジンはシェイクする分少し口当たりがまろやかになります。
ジン&ビターズはストレートに近く、力強い味と香りが魅力です。
「…言葉ももしかしたらそうなのかも知れませんね。ジン&ビターズのように言葉も意味も変わらない言葉もある。また、時間を経て変化し、意味は変わらないものもある。逆に同じ言葉だけど意味が新しくなるものもある。奥深いものですから、お二人が白熱するのも分かります」
「…ううむ」
「確かに…」
「ですが。」
考え込むお二人に続けて申しました。
「これを考えるのは月曜日、会議室で宜しいのでは?折角ですから、もう少しお酒を楽しんで頂きたいですし。」
「…そうだなぁ、ここはバーだったな」
「確かに今日は花金の夜だ。酒を楽しむとしよう」
「是非に」
ーーーーーーー
まとめ
言葉の変化について口論していたので、二つのカクテルの歴史を話すことで「言葉にも変化は有り得るのではないか」と言う意見を伝えた。
あわよくば落ち着かせて追加注文をしてもらおうとした(笑)