「勝手に■すな」「7ブックマーク」
【『どっどっどっどっどっどっどっどっ……』】
外から特徴的な音が聞こえた気がして、私はハッと目を覚ました。
数年前に亡くなった祖父が愛用していた、トラックのエンジン音だ。
(祖母が家に訪ねてきたのだろうか?)
そう思ったが、
ベッドの横で眠っている愛犬のコロを見て、そうではないことを悟った。
コロはかなりの老犬だが、エンジン音を聞き分けているようだった。
祖父母が訪ねてきた時は必ず、ヨタヨタと玄関先まで迎えに行くのだ。
「おばあちゃんを迎えに行かないのかい?コロ?」
そう言いながらカーテンを開けてみたが、誰の姿も見えない…。
私は全てを察した。
{(…そうか…『逆』だったんだな…。)}
さて、
この時、なぜコロは玄関先に行かなかったのだろう?
22年10月11日 19:23
【ウミガメのスープ】 [るょ]
【ウミガメのスープ】 [るょ]

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寝てて気づかなかったけど、ばぁちゃん来てたんだね~。
ていうか、まだ生きてたんだねぇ。死んだと思ってたよ。
あまり良くない冗談だとは分かっているが、
リビングにいる母さんにそんな軽口を叩いてみる。
<『こらっ!勝手に殺すんじゃないよっ!!』>
母さんのスマホから、聞き覚えのある怒鳴り声。
ばぁちゃん、元気だな。
こりゃまだまだ死にそうにないや。
大好きなばぁちゃんが帰って死んだようにふて寝していたコロも、
いつも通りバクバクとエサを平らげている。
ははは、お前もまだまだ長生きしそうだな。
顔を上げたコロは、
なぜか私ではなく、とあるクイズ出題サイトを開いているPCの画面に向かって、
<『勝手に殺すな!』>
とでも言いたげに、ワン、と吠えた。
答え:
{この時、祖母は『訪ねて来た』のではなく、今まさに『帰った』ところだったから。}
へ?コロにお迎え?なんのこと?
…コロやおばあちゃんが死んでる前提で考えちゃったそこのアナタ!
<勝手に殺すな!>
※
こんな風に匂わせてくるってことはどうせ犬は死んでないんだろうな
…と先読みして、あえてその質問を躱した一部の方々、{お見事です。}
ていうか、まだ生きてたんだねぇ。死んだと思ってたよ。
あまり良くない冗談だとは分かっているが、
リビングにいる母さんにそんな軽口を叩いてみる。
<『こらっ!勝手に殺すんじゃないよっ!!』>
母さんのスマホから、聞き覚えのある怒鳴り声。
ばぁちゃん、元気だな。
こりゃまだまだ死にそうにないや。
大好きなばぁちゃんが帰って死んだようにふて寝していたコロも、
いつも通りバクバクとエサを平らげている。
ははは、お前もまだまだ長生きしそうだな。
顔を上げたコロは、
なぜか私ではなく、とあるクイズ出題サイトを開いているPCの画面に向かって、
<『勝手に殺すな!』>
とでも言いたげに、ワン、と吠えた。
答え:
{この時、祖母は『訪ねて来た』のではなく、今まさに『帰った』ところだったから。}
へ?コロにお迎え?なんのこと?
…コロやおばあちゃんが死んでる前提で考えちゃったそこのアナタ!
<勝手に殺すな!>
※
こんな風に匂わせてくるってことはどうせ犬は死んでないんだろうな
…と先読みして、あえてその質問を躱した一部の方々、{お見事です。}
「ジーニアスピカソ」「7ブックマーク」
漫画家志望のマシロは、最近ずっと絵を描いてばかりだ。
模写をしたり、オリジナルキャラクターをつくってみたり、時には漫画賞に応募してみたり。とにかく描いて、描いて、寝て、目が覚めたら、また描いてーー。
そんな生活を続けるマシロの机には、原稿用紙、鉛筆、シャーペン、消しゴム、練り消し、修正液、Gペン、丸ペン、スクリーントーン、、などなど様々な画材が広がっている。
さて、今日もいつものように作業の途中で机に突っ伏して眠ってしまったマシロだが、目が覚めたら増えていた画材とは何?
模写をしたり、オリジナルキャラクターをつくってみたり、時には漫画賞に応募してみたり。とにかく描いて、描いて、寝て、目が覚めたら、また描いてーー。
そんな生活を続けるマシロの机には、原稿用紙、鉛筆、シャーペン、消しゴム、練り消し、修正液、Gペン、丸ペン、スクリーントーン、、などなど様々な画材が広がっている。
さて、今日もいつものように作業の途中で机に突っ伏して眠ってしまったマシロだが、目が覚めたら増えていた画材とは何?
22年10月15日 21:22
【20の扉】 [tsumugu]
【20の扉】 [tsumugu]

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(、´・ω・)▄︻┻┳═一 -==. . (。゚ω゚) ハッ!
A.チョーク
Cindy版→https://www.cindythink.com/puzzle/6593
DEBONO版→https://de-bono.net/mondai/show/3042
A.チョーク
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DEBONO版→https://de-bono.net/mondai/show/3042
「#ツーショット #くすりと笑って」「7ブックマーク」
ヒロキとレイナは同級生の誰もが知るお似合いカップル。
しょっちゅう2人で自撮りした写真をSNSにアップしている。
以前は写真にこだわりのあるレイナの指示でヒロキが写真を取ることが多かったのだが、{ある写真}をアップしたのを境にレイナも写真を取ることが増えたという。
その写真に付けられた{タイトル}は?
理由も踏まえて答えてください。
しょっちゅう2人で自撮りした写真をSNSにアップしている。
以前は写真にこだわりのあるレイナの指示でヒロキが写真を取ることが多かったのだが、{ある写真}をアップしたのを境にレイナも写真を取ることが増えたという。
その写真に付けられた{タイトル}は?
理由も踏まえて答えてください。
22年10月18日 23:27
【20の扉】 [ほずみ]
【20の扉】 [ほずみ]

Special Thanks:「マクガフィン」さん! ページが開けない方はロビチャをご覧ください!
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《答え》
【{結婚報告}】
《簡易解説》
ヒロキは左利き。二人の{結婚指輪をはめた手を自撮りするために、}結婚報告のタイミングから右利きのレイナも自撮りを担当するようになった。
《ストーリー》
──ねぇ、ヒロキくんの方が腕長くていい角度で写真撮れそうだから、カメラお願いしていい?
それが、僕と彼女がまともに話した最初の会話だ。高校の体育祭中の休憩時間、クラスの女子数人が写真を撮り合っている。
クラスTシャツやらハチマキやら普段と違う姿を残したいのだろう。
正直写真は写るのも撮るのも好きじゃない僕は「いかにも青春してます!」という感じの彼女の提案に若干の気後れしながら、でもそんな彼女らのお願いを断る気の強さもなくてスマホを受け取る。
近くにいた女子が全員入りそうな位置を探してスマホを構えると不思議そうな彼女の声。
「何してんの?一緒に撮ろうよ!ヒロキくんはこの辺ね」
まさかの自撮り。生まれてこの方、自撮りなんてしたことがない僕はおたおたしてしまう。
「えっと、インカメにして、フィルターはこれで、」
そんな僕をよそ目に彼女はスマホの設定を次々といじっていく。
「できた!ヒロキくんは…そっか左利きか! じゃあこっちに腕を伸ばしてー」
訳も分からず言われた通りに腕を伸ばして突っ立っている僕の元に彼女が近づいてくる。
画面を覗くと、最初に頼んできた女子だけでなく調子のいい男子も数人入っていたが、そんなのどうでもいい。
僕はいかに隣の彼女がかわいく写るか、それだけを考えてシャッターを切った。
そのあとクラスLINEに上げられた写真の僕は人生最高に写真写りが悪いわ、女子に囲まれていることを他の男子にいじられるわ、散々な目に遭った。
自分の腕の長さをこれほど恨んだのは初めてだった。
……今ではめちゃくちゃ感謝してるけど。
それからというもの、ことあるごとに彼女は僕に写真を頼むようになった。
彼女曰く、「ヒロキくんの腕の長さだとみんな写るし、上から撮れるからいいんだよね」とのこと。
あまりに何度も僕に頼むので次第に彼女が好きな写真アプリの設定だとか、彼女がかわいく見える角度の研究だとか、彼女の期待に応えられるように色々勉強するようになった。
そのたびに彼女が喜ぶものだから、僕も嬉しかった。
何枚の写真を一緒に撮っただろう。撮った枚数に反比例して写っている人数は減って、彼女との関係もあのときから変化した。
大学に進学したのを機に彼女が始めたSNSには2人で撮った写真を載せている。僕のたっての希望で2人の顔こそ載せていないが、それでも彼女のかわいさは伝わるんじゃないかな。
フォローしてくれているのは主に高校や大学の同級生だけど、近況報告のつもりで(決してのろけのつもりではない!)2人で行った場所や食べたものと一緒に写真を上げている。
そして、彼女との関係がもう一度変わった今日。
「ね、写真撮ろ?」
いつものように彼女が言う。
僕もいつものようにスマホを構えて、そこでふと困ってしまう。
「これじゃ一緒に左手写せないな…」
「じゃあ今度から私が撮ればいいね!ほらヒロキこっち寄って!アンタ無駄に身長高いんだから寄らないと入んないでしょ!」
そうしていつも以上にドタバタしながら撮った写真には、揃いの指輪が2つ、光っていた。
〖ご報告〗
みなさまにご報告があります
この度かねてよりお付き合いをしていた方と入籍いたしました
これから二人仲良く 明るい家庭を作っていきたいと思います
これからも どうぞよろしくお願いいたします
#ツーショット
#くすりと笑って
#結婚報告
【{結婚報告}】
《簡易解説》
ヒロキは左利き。二人の{結婚指輪をはめた手を自撮りするために、}結婚報告のタイミングから右利きのレイナも自撮りを担当するようになった。
《ストーリー》
──ねぇ、ヒロキくんの方が腕長くていい角度で写真撮れそうだから、カメラお願いしていい?
それが、僕と彼女がまともに話した最初の会話だ。高校の体育祭中の休憩時間、クラスの女子数人が写真を撮り合っている。
クラスTシャツやらハチマキやら普段と違う姿を残したいのだろう。
正直写真は写るのも撮るのも好きじゃない僕は「いかにも青春してます!」という感じの彼女の提案に若干の気後れしながら、でもそんな彼女らのお願いを断る気の強さもなくてスマホを受け取る。
近くにいた女子が全員入りそうな位置を探してスマホを構えると不思議そうな彼女の声。
「何してんの?一緒に撮ろうよ!ヒロキくんはこの辺ね」
まさかの自撮り。生まれてこの方、自撮りなんてしたことがない僕はおたおたしてしまう。
「えっと、インカメにして、フィルターはこれで、」
そんな僕をよそ目に彼女はスマホの設定を次々といじっていく。
「できた!ヒロキくんは…そっか左利きか! じゃあこっちに腕を伸ばしてー」
訳も分からず言われた通りに腕を伸ばして突っ立っている僕の元に彼女が近づいてくる。
画面を覗くと、最初に頼んできた女子だけでなく調子のいい男子も数人入っていたが、そんなのどうでもいい。
僕はいかに隣の彼女がかわいく写るか、それだけを考えてシャッターを切った。
そのあとクラスLINEに上げられた写真の僕は人生最高に写真写りが悪いわ、女子に囲まれていることを他の男子にいじられるわ、散々な目に遭った。
自分の腕の長さをこれほど恨んだのは初めてだった。
……今ではめちゃくちゃ感謝してるけど。
それからというもの、ことあるごとに彼女は僕に写真を頼むようになった。
彼女曰く、「ヒロキくんの腕の長さだとみんな写るし、上から撮れるからいいんだよね」とのこと。
あまりに何度も僕に頼むので次第に彼女が好きな写真アプリの設定だとか、彼女がかわいく見える角度の研究だとか、彼女の期待に応えられるように色々勉強するようになった。
そのたびに彼女が喜ぶものだから、僕も嬉しかった。
何枚の写真を一緒に撮っただろう。撮った枚数に反比例して写っている人数は減って、彼女との関係もあのときから変化した。
大学に進学したのを機に彼女が始めたSNSには2人で撮った写真を載せている。僕のたっての希望で2人の顔こそ載せていないが、それでも彼女のかわいさは伝わるんじゃないかな。
フォローしてくれているのは主に高校や大学の同級生だけど、近況報告のつもりで(決してのろけのつもりではない!)2人で行った場所や食べたものと一緒に写真を上げている。
そして、彼女との関係がもう一度変わった今日。
「ね、写真撮ろ?」
いつものように彼女が言う。
僕もいつものようにスマホを構えて、そこでふと困ってしまう。
「これじゃ一緒に左手写せないな…」
「じゃあ今度から私が撮ればいいね!ほらヒロキこっち寄って!アンタ無駄に身長高いんだから寄らないと入んないでしょ!」
そうしていつも以上にドタバタしながら撮った写真には、揃いの指輪が2つ、光っていた。
〖ご報告〗
みなさまにご報告があります
この度かねてよりお付き合いをしていた方と入籍いたしました
これから二人仲良く 明るい家庭を作っていきたいと思います
これからも どうぞよろしくお願いいたします
#ツーショット
#くすりと笑って
#結婚報告
「美しのColor Girl」「7ブックマーク」
【「ごめん」 「良いよ。私もごめん」】
【「ごめん」 「良いよ。俺もごめん」】
ケンカの仲直りをする時は、どちらかが{一輪の真っ赤な薔薇}を贈ると共に謝り、相手もそれを受け取って謝る。 それが誠司と香奈の夫婦の決め事だ。
この夫婦、今朝も些細なことでケンカをした。
仕事を終えた誠司は、自宅の最寄駅の改札口を出て家路についていた。
近所の花屋の前を通り過ぎてしばらくすると{誠司は、香奈が薔薇を買っていなければ良いなと思った。}
いったい何故?
【「ごめん」 「良いよ。俺もごめん」】
ケンカの仲直りをする時は、どちらかが{一輪の真っ赤な薔薇}を贈ると共に謝り、相手もそれを受け取って謝る。 それが誠司と香奈の夫婦の決め事だ。
この夫婦、今朝も些細なことでケンカをした。
仕事を終えた誠司は、自宅の最寄駅の改札口を出て家路についていた。
近所の花屋の前を通り過ぎてしばらくすると{誠司は、香奈が薔薇を買っていなければ良いなと思った。}
いったい何故?
22年11月03日 00:47
【ウミガメのスープ】 [異邦人]
【ウミガメのスープ】 [異邦人]

SP:ほずみさん! スペシャルサンクス!
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【正解:花屋と自宅の間で遭遇した真新しい事故現場に、一輪の薔薇が落ちていたから。】
【物語:】
謝るというのは難しいことだ。 時には、どちらが正しいかを脇に置いてでも関係修復に努めねばならない。
夫婦関係を続けていくにあたって、誠司と香奈はいかにして仲直りをするかを話し合って決めた。
謝ろうと思っていても、いざ相手を目の前にするとなかなか言葉が出ない。
そこで、謝ろうと思ったのならまずは{一輪の真っ赤な薔薇}を買うことにした。 赤い薔薇なのは香奈の趣味である。
薔薇の花を買ってしまえば、後はもう渡すしか無い。 渡したのなら謝るしかない。 そこまでされたら、許すしか無い。
そしてリビングのテーブルに置かれた花瓶に薔薇を挿し、一緒に食事をする。 これでもうお互いに言いっこ無しとするのだ。
この、花屋でワンステップ挟んで後は自動的に・・・というやり方が誠司と香奈には合っていたらしく、なかなか素直に気持ちを伝えられない2人にしては比較的早く仲直りができていた。
・・・それでも、自分の方から謝るというのは難しいことに変わりは無く。
帰り道の途中にある花屋の前で一瞬足を止めた誠司だが、此度のケンカで自分の方から謝ることにはまだ納得がいかず、今日のところは薔薇を買うこと無く帰宅することにした。
花屋を出てから5分ほど。家までもあと5分と掛からないといったところだろうか。曲がり角の先にある大きな交差点で、車線の一部を警察が封鎖しているのが見えた。
その空間だけ時間が止まったかのような異様な雰囲気に妙な胸騒ぎを感じながらも近付くと、黒いアスファルトを更に黒く染めるように{ナニカが道路を濡らしていた。} ドクン、と心臓が不整脈を起こす。
日常にありながら非日常的な殺伐としたこの空気。間違いない、{交通事故だ。}
近くに停車させられた自動車が無い辺り、轢き逃げだろう。
サッサと立ち去るようにと警察に交通整備されながらもなお封鎖された現場を盗み見ると、沈み切ったこの空間において場違いな{真っ赤な一輪の薔薇が落ちていた。}
一瞬にして誠司の顔から血の気が引いた。
献花? いや、警察の様子からして事故が起きたのはつい先刻のことだ。もう花を用意して供えるなんて不謹慎だし、部外者が投げ込んだものを警察が放置するワケが無い。
{薔薇の花を買った人が事故に遭った。} ごくごく単純なその可能性を考えるしか無い。
誠司は気付けば自宅へと走り出していた。
(そんなワケが無い。そんなワケが無い。)
そう心の中で繰り返しながら、誠司はがむしゃらに走った。
自宅に辿り着くとひったくるようにドアノブを掴んでひねる。 開かない。鍵が掛かっている。誠司の真っ青な顔が真っ白になっていく。
(いや、香奈が1人で家にいる時に鍵を掛けていることはあることだ。大丈夫。)
そう自分に言い聞かせて鍵穴に鍵を差そうとするが、ブルブルと震える手は一向に鍵穴を捉えることができない。
両手で鍵を握り全身で手の震えを押さえ付けるようにしてどうにかこうにか差し込むと、急いで開錠して家に入る。
夕日が差し込む我が家はしんとしていた。 リビングのテーブルに鎮座する花瓶に、薔薇は活けられていなかった。
静まり返った自室にしばらく立ちすくむ間に、誠司は少し冷静さを取り戻した。 そうだ、電話だ。電話を掛けよう。
ケータイを取り出して香奈の電話番号を選び、一瞬躊躇った後にコールする。
プルルルルとコール音が1回鳴る。 誠司の息が詰まる。
コール音が2回鳴る。 ケータイを取り落としそうなほどに手汗が噴き出す。
コール音が3回鳴る。 コール音が聴こえなくなりそうなほどに心臓がバクバクと音を立てていた。
4回目のコール音が鳴る、その直前に電話が繋がった。
誠司はハーッと息を吐いて目を閉じた。
{『こちら救急隊員です! 香奈さんのお知り合いの方ですか!』}
誠司の手からケータイが滑り落ちた。
誠司は、毎日薔薇の花を買うようになった。
毎日毎日、誠司は花瓶に薔薇を挿す。 自宅から持ち出して、病院の一室で眠り続ける香奈の傍らに置かれた夫婦の花瓶に。
誠司は「色」を感じ取れなくなっていた。 世界はモノクロームに塗り潰された。
花屋で手に取っている薔薇の花が何色かも分からぬまま、毎日毎日病室の花瓶に薔薇を活けた。
モノクロームの世界を生きる誠司には当然、信号の色が分からなかった。
幾度となく車に轢かれそうになり、「死にたいのか!」と怒鳴られた。 その度に、死にたい、と思った。
この日もまた、モノクロームの病室で何色かも分からない一輪の薔薇を花瓶に挿す。
仲直りの証は、後悔と贖罪の印となっていた。
誠司は香奈の眠るベッドの隣に置かれた椅子に座ると、香奈の手を握った。
怖いほどに冷たい香奈の手を、今すぐにでも離してしまいたくなった。
だから、必死で握った。 香奈の体から命の火が抜け落ちないように。自らにも迫る死の気配から逃げすがるように。
だけど、もう限界だと思った。
香奈の手を握ったまま、誠司は深くうなだれた。
呻くように、「ごめん」と呟いた。
「良いよ」
誠司が顔を跳ね上げると、眩しそうに薄く目を開けた香奈が天井を見上げたまま、「私も、ごめん」と呟いた。
香奈の彷徨うような眼が誠司の顔を捉えるとやわらかな微笑みを浮かべる。
香奈の視線は次に、すぐ傍の花瓶に活けられた一輪の薔薇を見付けた。
「綺麗な薔薇だね」
誠司も釣られて薔薇を見る。 {真っ赤な真っ赤な薔薇}が、夕日を浴びて更に赤く輝いていた。
モノクロームの世界が息を吹き返したかのように薔薇色に染まっていった。
この世界の美しさに、誠司は涙を流し続けた。
【物語:】
謝るというのは難しいことだ。 時には、どちらが正しいかを脇に置いてでも関係修復に努めねばならない。
夫婦関係を続けていくにあたって、誠司と香奈はいかにして仲直りをするかを話し合って決めた。
謝ろうと思っていても、いざ相手を目の前にするとなかなか言葉が出ない。
そこで、謝ろうと思ったのならまずは{一輪の真っ赤な薔薇}を買うことにした。 赤い薔薇なのは香奈の趣味である。
薔薇の花を買ってしまえば、後はもう渡すしか無い。 渡したのなら謝るしかない。 そこまでされたら、許すしか無い。
そしてリビングのテーブルに置かれた花瓶に薔薇を挿し、一緒に食事をする。 これでもうお互いに言いっこ無しとするのだ。
この、花屋でワンステップ挟んで後は自動的に・・・というやり方が誠司と香奈には合っていたらしく、なかなか素直に気持ちを伝えられない2人にしては比較的早く仲直りができていた。
・・・それでも、自分の方から謝るというのは難しいことに変わりは無く。
帰り道の途中にある花屋の前で一瞬足を止めた誠司だが、此度のケンカで自分の方から謝ることにはまだ納得がいかず、今日のところは薔薇を買うこと無く帰宅することにした。
花屋を出てから5分ほど。家までもあと5分と掛からないといったところだろうか。曲がり角の先にある大きな交差点で、車線の一部を警察が封鎖しているのが見えた。
その空間だけ時間が止まったかのような異様な雰囲気に妙な胸騒ぎを感じながらも近付くと、黒いアスファルトを更に黒く染めるように{ナニカが道路を濡らしていた。} ドクン、と心臓が不整脈を起こす。
日常にありながら非日常的な殺伐としたこの空気。間違いない、{交通事故だ。}
近くに停車させられた自動車が無い辺り、轢き逃げだろう。
サッサと立ち去るようにと警察に交通整備されながらもなお封鎖された現場を盗み見ると、沈み切ったこの空間において場違いな{真っ赤な一輪の薔薇が落ちていた。}
一瞬にして誠司の顔から血の気が引いた。
献花? いや、警察の様子からして事故が起きたのはつい先刻のことだ。もう花を用意して供えるなんて不謹慎だし、部外者が投げ込んだものを警察が放置するワケが無い。
{薔薇の花を買った人が事故に遭った。} ごくごく単純なその可能性を考えるしか無い。
誠司は気付けば自宅へと走り出していた。
(そんなワケが無い。そんなワケが無い。)
そう心の中で繰り返しながら、誠司はがむしゃらに走った。
自宅に辿り着くとひったくるようにドアノブを掴んでひねる。 開かない。鍵が掛かっている。誠司の真っ青な顔が真っ白になっていく。
(いや、香奈が1人で家にいる時に鍵を掛けていることはあることだ。大丈夫。)
そう自分に言い聞かせて鍵穴に鍵を差そうとするが、ブルブルと震える手は一向に鍵穴を捉えることができない。
両手で鍵を握り全身で手の震えを押さえ付けるようにしてどうにかこうにか差し込むと、急いで開錠して家に入る。
夕日が差し込む我が家はしんとしていた。 リビングのテーブルに鎮座する花瓶に、薔薇は活けられていなかった。
静まり返った自室にしばらく立ちすくむ間に、誠司は少し冷静さを取り戻した。 そうだ、電話だ。電話を掛けよう。
ケータイを取り出して香奈の電話番号を選び、一瞬躊躇った後にコールする。
プルルルルとコール音が1回鳴る。 誠司の息が詰まる。
コール音が2回鳴る。 ケータイを取り落としそうなほどに手汗が噴き出す。
コール音が3回鳴る。 コール音が聴こえなくなりそうなほどに心臓がバクバクと音を立てていた。
4回目のコール音が鳴る、その直前に電話が繋がった。
誠司はハーッと息を吐いて目を閉じた。
{『こちら救急隊員です! 香奈さんのお知り合いの方ですか!』}
誠司の手からケータイが滑り落ちた。
誠司は、毎日薔薇の花を買うようになった。
毎日毎日、誠司は花瓶に薔薇を挿す。 自宅から持ち出して、病院の一室で眠り続ける香奈の傍らに置かれた夫婦の花瓶に。
誠司は「色」を感じ取れなくなっていた。 世界はモノクロームに塗り潰された。
花屋で手に取っている薔薇の花が何色かも分からぬまま、毎日毎日病室の花瓶に薔薇を活けた。
モノクロームの世界を生きる誠司には当然、信号の色が分からなかった。
幾度となく車に轢かれそうになり、「死にたいのか!」と怒鳴られた。 その度に、死にたい、と思った。
この日もまた、モノクロームの病室で何色かも分からない一輪の薔薇を花瓶に挿す。
仲直りの証は、後悔と贖罪の印となっていた。
誠司は香奈の眠るベッドの隣に置かれた椅子に座ると、香奈の手を握った。
怖いほどに冷たい香奈の手を、今すぐにでも離してしまいたくなった。
だから、必死で握った。 香奈の体から命の火が抜け落ちないように。自らにも迫る死の気配から逃げすがるように。
だけど、もう限界だと思った。
香奈の手を握ったまま、誠司は深くうなだれた。
呻くように、「ごめん」と呟いた。
「良いよ」
誠司が顔を跳ね上げると、眩しそうに薄く目を開けた香奈が天井を見上げたまま、「私も、ごめん」と呟いた。
香奈の彷徨うような眼が誠司の顔を捉えるとやわらかな微笑みを浮かべる。
香奈の視線は次に、すぐ傍の花瓶に活けられた一輪の薔薇を見付けた。
「綺麗な薔薇だね」
誠司も釣られて薔薇を見る。 {真っ赤な真っ赤な薔薇}が、夕日を浴びて更に赤く輝いていた。
モノクロームの世界が息を吹き返したかのように薔薇色に染まっていった。
この世界の美しさに、誠司は涙を流し続けた。
「【世界田中奇行】田中の4後硬直」「7ブックマーク」
休みの日は公園に出かけるのが田中の日課。
その公園で四ツ葉のクローバーを見つけると、田中はその場所からしばらく動かなくなる。
一体なぜ?
その公園で四ツ葉のクローバーを見つけると、田中はその場所からしばらく動かなくなる。
一体なぜ?
22年11月06日 18:33
【ウミガメのスープ】 [ダニー]
【ウミガメのスープ】 [ダニー]

早めに締め切ります。7日(月)23時まで
解説を見る
休みの日、公園で読書するのが田中の日課。
いつものベンチに座り、鞄から本を取り出す。
本に挟んである四ツ葉のクローバーを押し花にして作った栞を見つけた後、本に没頭して動かなくなるのである。
いつものベンチに座り、鞄から本を取り出す。
本に挟んである四ツ葉のクローバーを押し花にして作った栞を見つけた後、本に没頭して動かなくなるのである。












