「しらないほうがよいこともあるのかも」「7ブックマーク」
ときおり街にあらわれるようになった謎の怪物は、青い肌に緑色の血液、人間より大きな体をもち大きな口に鋭い牙が並ぶ恐ろしい見た目をしていた。
口からは物を溶かす液体をばらまき、少し動くだけで建物を破壊していく姿に人々はおそれをなしている。
対話を試みた者もいるが意思の疎通は取れず、多数の犠牲者がでることとなった。
そんな怪物の正体を知ってしまったせいで、カメオは命を狙われ殺されてしまった。しかし、カメオが死んでゆくようすをしっかり見ていたカメオの弟は、カメオがまだ生きているかもしれないと思っていた。
いったいなぜ?
口からは物を溶かす液体をばらまき、少し動くだけで建物を破壊していく姿に人々はおそれをなしている。
対話を試みた者もいるが意思の疎通は取れず、多数の犠牲者がでることとなった。
そんな怪物の正体を知ってしまったせいで、カメオは命を狙われ殺されてしまった。しかし、カメオが死んでゆくようすをしっかり見ていたカメオの弟は、カメオがまだ生きているかもしれないと思っていた。
いったいなぜ?
23年05月01日 21:28
【ウミガメのスープ】 [きっとくりす]
【ウミガメのスープ】 [きっとくりす]
ひさしぶりに問題つくりました。
解説を見る
答え
弟はカメオが怪物化してしまったことを知らなかったから。
解説
突然、浮遊感とめまいにおそわれたと思ったら、最近話題の怪物に変身していた。驚いて言葉を発したつもりだったが、口から出るのは謎の液体だけ。動けば家具や壁を破壊してしまい、どんどん部屋の中がめちゃくちゃになっていく。そんな物音を聞きつけて近所の人が通報したのか、サイレンの音や避難を呼びかける声が聞こえる。過去の、おそらく自分と同じく元人間であったのだろう怪物たちと同じように、討伐されてしまうのも時間の問題だろう。これが夢であればいいのにとそっと目を閉じた。
*****
兄が住んでいる辺りに怪物が現れたらしい。動画配信サイトでは怪物討伐の様子がライブ配信されていた。すぐそばに兄の住む場所も映っている。兄は無事かなと連絡をとってみるがなんとも反応がない。あわてて避難したせいで何も持たずに家を出たのかもしれないと兄からの連絡を待った。配信では無事、怪物の討伐に成功していた。
弟はカメオが怪物化してしまったことを知らなかったから。
解説
突然、浮遊感とめまいにおそわれたと思ったら、最近話題の怪物に変身していた。驚いて言葉を発したつもりだったが、口から出るのは謎の液体だけ。動けば家具や壁を破壊してしまい、どんどん部屋の中がめちゃくちゃになっていく。そんな物音を聞きつけて近所の人が通報したのか、サイレンの音や避難を呼びかける声が聞こえる。過去の、おそらく自分と同じく元人間であったのだろう怪物たちと同じように、討伐されてしまうのも時間の問題だろう。これが夢であればいいのにとそっと目を閉じた。
*****
兄が住んでいる辺りに怪物が現れたらしい。動画配信サイトでは怪物討伐の様子がライブ配信されていた。すぐそばに兄の住む場所も映っている。兄は無事かなと連絡をとってみるがなんとも反応がない。あわてて避難したせいで何も持たずに家を出たのかもしれないと兄からの連絡を待った。配信では無事、怪物の討伐に成功していた。
「怪奇!サイコキネシス兄妹」「7ブックマーク」
リンタとチズルの兄妹がキャッチボールをしている。
おや?しかし妙だぞ。
二人は並んで同じ方向を向いているではないか!
そして、リンタが前に投げたボールはUターンして戻り、チズルの掌中に収まった!
さらにはチズルの投げたボールも同じ軌道を描き、リンタがキャッチ!
なんたる怪異!
幼き二人に神が与え給うた超能力か?
はたまた伴天連の絡繰りか?
読者の見解や如何に?!
おや?しかし妙だぞ。
二人は並んで同じ方向を向いているではないか!
そして、リンタが前に投げたボールはUターンして戻り、チズルの掌中に収まった!
さらにはチズルの投げたボールも同じ軌道を描き、リンタがキャッチ!
なんたる怪異!
幼き二人に神が与え給うた超能力か?
はたまた伴天連の絡繰りか?
読者の見解や如何に?!
23年05月29日 05:48
【ウミガメのスープ】 [きまぐれ夫人]
【ウミガメのスープ】 [きまぐれ夫人]
あなたは超能力の存在を信じますか?
解説を見る
布団に仰向けで寝っ転がり、天井に向けてボールを投げあっているのであった!
「早く寝なさい。電気消すわよ」
「早く寝なさい。電気消すわよ」
「人と入れ替わることができる口紅(理沙子)」「7ブックマーク」
およそ残酷な形で恋人に捨てられ、借金で困窮し、また頼れる友達をも失ってしまった理沙子は、絶望の淵で怪しげな路頭商人から口紅をもらった。
曰く、『人と入れ替わることができる口紅』である。使用者が自身の唇に付着させた上で任意の相手とキスをすると、その相手と身体を入れ替えられるというもの。
理沙子は、自分の絶望に満ちた人生を捨てようと思い、それを用いることにした。
ターゲットは、大学の後輩である美里。その容姿と天衣無縫で活発な性格から皆に愛される存在だった。自分のような、陰気で卑屈な日陰者とは大違いだった。
理沙子は計画的に口紅を用いることにした。美里と入れ替わったあとに、美里の友達などに怪しまれてしまっては立つ瀬がない。非現実的とはいえ、仮にもこの口紅の存在や正体が露見することはあってはならない。自分が実は美里ではないと、疑われてはいけない。
入れ替わった後にも周りから怪しまれることがないように、理沙子は美里のことを徹底的に研究した。
彼女の身長、体重、誕生日、血液型、好きなアイドル、親の名前…。誰かに尋ねられそうな事象はひとまず頭に叩き込んだ。
彼女が大学に遅刻しそうな時の表情、友達の欠席を心配する悲しげな表情、仲間を責め立てる表情。彼女の振る舞いも研究した。陰気な自分を押し殺し、いわば美里をトレースするのだ。
理沙子は美里の狼狽する姿を想像した。普段から笑みを絶やさない美里が、自分のような逸れ者の立場を手に入れてしまったことを自覚し、焦りに飽和する姿。想像するだけで、理沙子は似合わない優越感が生まれるようで面白い。
——————
さて、実際に理沙子が口紅を使用した後、理沙子は記憶障害のふりをした。{無事成功して入れ替わったというのに、そこで美里のふりをすることは一切しなかったのだ。}
では、どうせ記憶障害ということにするのに、理沙子はなぜ美里のことを先のように徹底的に研究したのだろうか?
曰く、『人と入れ替わることができる口紅』である。使用者が自身の唇に付着させた上で任意の相手とキスをすると、その相手と身体を入れ替えられるというもの。
理沙子は、自分の絶望に満ちた人生を捨てようと思い、それを用いることにした。
ターゲットは、大学の後輩である美里。その容姿と天衣無縫で活発な性格から皆に愛される存在だった。自分のような、陰気で卑屈な日陰者とは大違いだった。
理沙子は計画的に口紅を用いることにした。美里と入れ替わったあとに、美里の友達などに怪しまれてしまっては立つ瀬がない。非現実的とはいえ、仮にもこの口紅の存在や正体が露見することはあってはならない。自分が実は美里ではないと、疑われてはいけない。
入れ替わった後にも周りから怪しまれることがないように、理沙子は美里のことを徹底的に研究した。
彼女の身長、体重、誕生日、血液型、好きなアイドル、親の名前…。誰かに尋ねられそうな事象はひとまず頭に叩き込んだ。
彼女が大学に遅刻しそうな時の表情、友達の欠席を心配する悲しげな表情、仲間を責め立てる表情。彼女の振る舞いも研究した。陰気な自分を押し殺し、いわば美里をトレースするのだ。
理沙子は美里の狼狽する姿を想像した。普段から笑みを絶やさない美里が、自分のような逸れ者の立場を手に入れてしまったことを自覚し、焦りに飽和する姿。想像するだけで、理沙子は似合わない優越感が生まれるようで面白い。
——————
さて、実際に理沙子が口紅を使用した後、理沙子は記憶障害のふりをした。{無事成功して入れ替わったというのに、そこで美里のふりをすることは一切しなかったのだ。}
では、どうせ記憶障害ということにするのに、理沙子はなぜ美里のことを先のように徹底的に研究したのだろうか?
23年06月21日 23:10
【ウミガメのスープ】 [みさこ]
【ウミガメのスープ】 [みさこ]
ご参加ありがとうございました!(๑>◡<๑)
解説を見る
【簡易解説】
実際に入れ替わる前から美里のふりをすることで理沙子自身が『身体が入れ替わってしまった美里だと思い込むおかしな人』を演じ、口紅を使用したタイミングを曖昧にするため。
(オオカミ少年を想像してもらえると展開がわかりやすい。)
【詳述】
全てを失った私は、その路頭で起死回生のアイテムをもらった。『路頭に迷う』とはよくいうものだが、それはひとえに悪いことにはないようである。
その口紅は、{最近の世間で都市伝説みたいに話題になっている}『人と入れ替わることができる口紅』その物だった。実現しているのか激しい議論が起こっていたが、まさか本当に実在していたなんて。
あの商人がなぜ私なんかにこれをくれたのかはわからないが、使うことに迷わなかった。
恋人には無碍に捨てられ、そのためにできた借金も残り、恋人といるために捨てた友達への信用も元に戻らない。あるいはこうした苦悩の果て、{ついには記憶障害に陥った。}そんな状況。
私の中には、楽しかった頃の記憶はない。今を取り巻く絶望だけが、私の全てだった。
『理沙子』という自分に未練などない。今すぐに、幸せな誰かと成り代わりたかった。
ターゲットは簡単に定められた。後輩の美里。私の記憶の中に残る少ない人物だった。
天衣無縫で活発可憐。それにおしゃれで容姿端麗な美里を嫌うものはいない。女子はもちろん、男子の思いも無意識に独り占めにする子だった。
それは私のかつての恋人も、例外ではなかった。だから私が捨てられたというのは、別にどうでもいいけれど。
陰気で卑屈な自分を捨てるには、美里と入れ替わるしかない。狭い視野のうちそう確信していたが、私には都合の悪いことが一つあった。
{この口紅のことが、都市伝説並みでも知れ渡っていることである。}
もちろん、多くの人は(現に今までの私だって)そんな非科学的なものを信じていない。私が今すぐに美里にキスしても、疑いの余地は残らないかもしれない。
しかし、多くの人の脳裏に口紅がよぎるのも事実なんだ。
私と美里がいきなり入れ替わったら、美里はひどく狼狽するだろう。そして私の身体で、自分は本当は美里なんだと連呼する。初めはみんな本気にしなくとも、やがて疑い始める人が現れるかもしれない。この口紅を頭に浮かべながら。
その疑いは非現実的かもしれないけど、数多くのうちの誰かは徹底的に調べるだろう。そして、君は本当に美里なのか、と{両人に}尋ねる。そこで私の姿の美里が次々に自分のプロフィールを言い当てていけば、その疑いは大きくなる。美里のふりをしなければならない私は、それを覆すほどうまく美里のふりができるだろうか?
どこかでボロを出してしまうに違いない。確信こそされなくても、「この子はもしかすると美里ではない」と疑い思われ続けて生きるのは苦痛だ。しかも、そのまま月日が経ってもし口紅の存在が都市伝説の域を出て明らかになれば、その疑いは確信に変わりうる。
それならば始めから美里のふりをしなければいいかとも思うが、諦めてただ単に記憶障害のふりをしても、疑いは生まれるもの。私の姿をした美里が必死に訴える不自然さには変わりがないのだから、むしろこちらが弁明できないことが不利になるかもしれない。
どうすれば入れ替わった後も怪しまれずにいられるか。美里の姿で美里のふりをすることを諦めた私は、ある計画を思いついた。
すなわち、今まさに問題になっている疑われ方を、そのまま利用するのだ。
-入れ替わった後にも周りから怪しまれることがないように、理沙子は美里のことを徹底的に研究した。
彼女の身長、体重、誕生日、血液型、好きなアイドル、親の名前…。誰かに尋ねられそうな事象はひとまず頭に叩き込んだ。
彼女が大学に遅刻しそうな時の表情、友達の欠席を心配する悲しげな表情、仲間を責め立てる表情。彼女の振る舞いも研究した。陰気な自分を押し殺し、いわば美里をトレースするのだ。-
しかし、そのトレースを実行するのは美里の姿でではない。{私の姿で}である。
「お願いみんな!信じてよ!
私は本当は有坂 美里なの!
誕生日は6/22、B型で、あとは、サークルのみんなの名前も知ってる!それに小学校の頃には…。」
私の姿のまま、『身体が入れ替わって狼狽する美里』を演じる。そうすれば先のように、初めは誰もが冗談としてしか相手にしないが、やがて口紅の都市伝説を挙げる者が現れる。完璧に美里のふりをするのは難しいかもしれないけど、『この人は実は本当に美里なのではないか』と疑わせるくらいなら私にもできそうだ。
そして、誰かが本物の美里に尋ねる。『君は本当に美里なのか?』それを返答するのは他でもない美里なのだから、いくら質問しても質問する人たちの持つ疑いが晴れていくだけ。
「ごめん、やっぱり美里は美里だよね。
あんな都市伝説、あるわけないか。」
「あの女の人がおかしいだけだったんだ。
変な噂で疑っちゃってごめんね、美里ちゃん。」
純粋な美里を疑ったことに、周囲は罪悪感すら持ち始める。そして友達の多い美里はどんどん信頼を獲得し、私『理沙子』はただの『自分が、身体が入れ替わってしまった美里だと思い込むおかしな人』と一蹴され始める。
「どうして…。どうしてみんな信じてくれないの!」
-理沙子は美里の狼狽する姿を想像した。普段から笑みを絶やさない美里が、自分のような逸れ者の立場を手に入れてしまったことを自覚し、焦りに飽和する姿。想像するだけで、理沙子は似合わない優越感が生まれるようで面白い。-
その想像を一つ一つ形にして演じる私。完全に周囲に軽蔑されゆくまで、私は自分の姿のまま、狼狽し焦り絶望する美里を演じ続けた。
そして、そうなってから件の口紅を使った。
夜、授業帰りに遅くなった美里の頭を背後から殴る。{この後この身体は記憶障害ということになる}こともあって、気絶させるには一石二鳥だ。
気絶した美里と無理やりキスをした後は、口紅は捨てた。なるべく口紅の存在が露見しないためだ。
そうして翌日、美里の姿となった私は、大学構内でまた一人の女性が奇妙なことを騒ぎ立てているということを耳にする。
{「お願いみんな!信じてよ!
私は本当は有坂 美里なの!
誕生日は6/22、B型で、あとは、サークルのみんなの名前も知ってる!それに小学校の頃には…。」}
本物の美里である。しかし、その『理沙子』を信じる者はもう一人もいない。この前までは私が演じていたということを弁明しようが、美里を信じる人はすでにいないのだ。
{「どうして…。どうしてみんな信じてくれないの!」}
そして私は、自分が『殴られた』傷の悪化によって記憶障害になったことにした。これで何を尋ねられることもないし、周囲は私をただ憐れむだけだろう。診断だって、私は口紅を使う前より元から現に記憶障害なのだから、そう下されるだけ。
いずれ、『私を殴った』犯人も『理沙子』だと特定され、彼女は捕まる。大方、『自分が美里だと思い込むあまり、錯乱して本物の美里を襲ったのだろう』と推測されるのではないか。
私は今、長い間大学で話題になっていた異常者に襲われ、記憶障害になった哀れな被害者なんだ。始め美里を本物の美里か疑った人たちも、前にあらぬ疑いをかけた罪悪感から同じ疑いを生むことはほとんど絶対にない。
やがて私の美里のふりが不完全で齟齬が生じても、記憶障害のせいにできるし、少しずつ記憶が回復するふりをすれば、周囲は私を優しく扱ってくれる。
{嘘をつき続けて本当を喰らうオオカミ少年。
私はそれを一人二役で行ったことで、ついに完全に美里と成り替わることができた。}
病室に一人、美里は微かに笑みを浮かべた。
実際に入れ替わる前から美里のふりをすることで理沙子自身が『身体が入れ替わってしまった美里だと思い込むおかしな人』を演じ、口紅を使用したタイミングを曖昧にするため。
(オオカミ少年を想像してもらえると展開がわかりやすい。)
【詳述】
全てを失った私は、その路頭で起死回生のアイテムをもらった。『路頭に迷う』とはよくいうものだが、それはひとえに悪いことにはないようである。
その口紅は、{最近の世間で都市伝説みたいに話題になっている}『人と入れ替わることができる口紅』その物だった。実現しているのか激しい議論が起こっていたが、まさか本当に実在していたなんて。
あの商人がなぜ私なんかにこれをくれたのかはわからないが、使うことに迷わなかった。
恋人には無碍に捨てられ、そのためにできた借金も残り、恋人といるために捨てた友達への信用も元に戻らない。あるいはこうした苦悩の果て、{ついには記憶障害に陥った。}そんな状況。
私の中には、楽しかった頃の記憶はない。今を取り巻く絶望だけが、私の全てだった。
『理沙子』という自分に未練などない。今すぐに、幸せな誰かと成り代わりたかった。
ターゲットは簡単に定められた。後輩の美里。私の記憶の中に残る少ない人物だった。
天衣無縫で活発可憐。それにおしゃれで容姿端麗な美里を嫌うものはいない。女子はもちろん、男子の思いも無意識に独り占めにする子だった。
それは私のかつての恋人も、例外ではなかった。だから私が捨てられたというのは、別にどうでもいいけれど。
陰気で卑屈な自分を捨てるには、美里と入れ替わるしかない。狭い視野のうちそう確信していたが、私には都合の悪いことが一つあった。
{この口紅のことが、都市伝説並みでも知れ渡っていることである。}
もちろん、多くの人は(現に今までの私だって)そんな非科学的なものを信じていない。私が今すぐに美里にキスしても、疑いの余地は残らないかもしれない。
しかし、多くの人の脳裏に口紅がよぎるのも事実なんだ。
私と美里がいきなり入れ替わったら、美里はひどく狼狽するだろう。そして私の身体で、自分は本当は美里なんだと連呼する。初めはみんな本気にしなくとも、やがて疑い始める人が現れるかもしれない。この口紅を頭に浮かべながら。
その疑いは非現実的かもしれないけど、数多くのうちの誰かは徹底的に調べるだろう。そして、君は本当に美里なのか、と{両人に}尋ねる。そこで私の姿の美里が次々に自分のプロフィールを言い当てていけば、その疑いは大きくなる。美里のふりをしなければならない私は、それを覆すほどうまく美里のふりができるだろうか?
どこかでボロを出してしまうに違いない。確信こそされなくても、「この子はもしかすると美里ではない」と疑い思われ続けて生きるのは苦痛だ。しかも、そのまま月日が経ってもし口紅の存在が都市伝説の域を出て明らかになれば、その疑いは確信に変わりうる。
それならば始めから美里のふりをしなければいいかとも思うが、諦めてただ単に記憶障害のふりをしても、疑いは生まれるもの。私の姿をした美里が必死に訴える不自然さには変わりがないのだから、むしろこちらが弁明できないことが不利になるかもしれない。
どうすれば入れ替わった後も怪しまれずにいられるか。美里の姿で美里のふりをすることを諦めた私は、ある計画を思いついた。
すなわち、今まさに問題になっている疑われ方を、そのまま利用するのだ。
-入れ替わった後にも周りから怪しまれることがないように、理沙子は美里のことを徹底的に研究した。
彼女の身長、体重、誕生日、血液型、好きなアイドル、親の名前…。誰かに尋ねられそうな事象はひとまず頭に叩き込んだ。
彼女が大学に遅刻しそうな時の表情、友達の欠席を心配する悲しげな表情、仲間を責め立てる表情。彼女の振る舞いも研究した。陰気な自分を押し殺し、いわば美里をトレースするのだ。-
しかし、そのトレースを実行するのは美里の姿でではない。{私の姿で}である。
「お願いみんな!信じてよ!
私は本当は有坂 美里なの!
誕生日は6/22、B型で、あとは、サークルのみんなの名前も知ってる!それに小学校の頃には…。」
私の姿のまま、『身体が入れ替わって狼狽する美里』を演じる。そうすれば先のように、初めは誰もが冗談としてしか相手にしないが、やがて口紅の都市伝説を挙げる者が現れる。完璧に美里のふりをするのは難しいかもしれないけど、『この人は実は本当に美里なのではないか』と疑わせるくらいなら私にもできそうだ。
そして、誰かが本物の美里に尋ねる。『君は本当に美里なのか?』それを返答するのは他でもない美里なのだから、いくら質問しても質問する人たちの持つ疑いが晴れていくだけ。
「ごめん、やっぱり美里は美里だよね。
あんな都市伝説、あるわけないか。」
「あの女の人がおかしいだけだったんだ。
変な噂で疑っちゃってごめんね、美里ちゃん。」
純粋な美里を疑ったことに、周囲は罪悪感すら持ち始める。そして友達の多い美里はどんどん信頼を獲得し、私『理沙子』はただの『自分が、身体が入れ替わってしまった美里だと思い込むおかしな人』と一蹴され始める。
「どうして…。どうしてみんな信じてくれないの!」
-理沙子は美里の狼狽する姿を想像した。普段から笑みを絶やさない美里が、自分のような逸れ者の立場を手に入れてしまったことを自覚し、焦りに飽和する姿。想像するだけで、理沙子は似合わない優越感が生まれるようで面白い。-
その想像を一つ一つ形にして演じる私。完全に周囲に軽蔑されゆくまで、私は自分の姿のまま、狼狽し焦り絶望する美里を演じ続けた。
そして、そうなってから件の口紅を使った。
夜、授業帰りに遅くなった美里の頭を背後から殴る。{この後この身体は記憶障害ということになる}こともあって、気絶させるには一石二鳥だ。
気絶した美里と無理やりキスをした後は、口紅は捨てた。なるべく口紅の存在が露見しないためだ。
そうして翌日、美里の姿となった私は、大学構内でまた一人の女性が奇妙なことを騒ぎ立てているということを耳にする。
{「お願いみんな!信じてよ!
私は本当は有坂 美里なの!
誕生日は6/22、B型で、あとは、サークルのみんなの名前も知ってる!それに小学校の頃には…。」}
本物の美里である。しかし、その『理沙子』を信じる者はもう一人もいない。この前までは私が演じていたということを弁明しようが、美里を信じる人はすでにいないのだ。
{「どうして…。どうしてみんな信じてくれないの!」}
そして私は、自分が『殴られた』傷の悪化によって記憶障害になったことにした。これで何を尋ねられることもないし、周囲は私をただ憐れむだけだろう。診断だって、私は口紅を使う前より元から現に記憶障害なのだから、そう下されるだけ。
いずれ、『私を殴った』犯人も『理沙子』だと特定され、彼女は捕まる。大方、『自分が美里だと思い込むあまり、錯乱して本物の美里を襲ったのだろう』と推測されるのではないか。
私は今、長い間大学で話題になっていた異常者に襲われ、記憶障害になった哀れな被害者なんだ。始め美里を本物の美里か疑った人たちも、前にあらぬ疑いをかけた罪悪感から同じ疑いを生むことはほとんど絶対にない。
やがて私の美里のふりが不完全で齟齬が生じても、記憶障害のせいにできるし、少しずつ記憶が回復するふりをすれば、周囲は私を優しく扱ってくれる。
{嘘をつき続けて本当を喰らうオオカミ少年。
私はそれを一人二役で行ったことで、ついに完全に美里と成り替わることができた。}
病室に一人、美里は微かに笑みを浮かべた。
「【BS】大好物にゃ質より量よ」「7ブックマーク」
ラテラ王国民、特に位の高い人々の間では、ダジャカルデと呼ばれる料理を食べるとき、少し残すことがマナーであり、全て平らげてしまうとマナー違反とされている。
しかしある日、ラテラ国の王子であるレオンが、ダジャカルデを一切残すこと無く平らげたところ、国民から賞賛された。
一体何故?
※この問題はBS問題です
出題後30分が経過するか正解が出ましたら一時間のBSタイムに突入いたします
BSタイム中は雑談でも質問でもネタ質でもマナーと良識の範囲であればなんでも受け付けます!
BSタイムが終わりましたら速やかに問題を解く作業にお戻り下さい!
☆スペシャルサンクス
「マクガフィン」さん 、ダジャカルデの使用許可ありがとうございました!
&BS問題投票してくださった皆様!
&いつも私の問題に参加してくださる皆様!!
&今このBSに参加して下さっているあなた!!!
しかしある日、ラテラ国の王子であるレオンが、ダジャカルデを一切残すこと無く平らげたところ、国民から賞賛された。
一体何故?
※この問題はBS問題です
出題後30分が経過するか正解が出ましたら一時間のBSタイムに突入いたします
BSタイム中は雑談でも質問でもネタ質でもマナーと良識の範囲であればなんでも受け付けます!
BSタイムが終わりましたら速やかに問題を解く作業にお戻り下さい!
☆スペシャルサンクス
「マクガフィン」さん 、ダジャカルデの使用許可ありがとうございました!
&BS問題投票してくださった皆様!
&いつも私の問題に参加してくださる皆様!!
&今このBSに参加して下さっているあなた!!!
23年07月07日 22:00
【ウミガメのスープ】 [ベルン]
【ウミガメのスープ】 [ベルン]
解説を見る
ラテラ国から遠く離れたボーノ国の王様との会談の時。
その王様はラテラ国のマナーに疎く、ダジャカルデを全て平らげてしまった。
もし自分だけダジャカルデを少し残すと、王様に恥をかかせると思ったレオン王子は、王様と同じようにダジャカルデを全て平らげた。
その様子がニュースになり、国民から、レオン王子はとても気の遣える人だと賞賛された。
その王様はラテラ国のマナーに疎く、ダジャカルデを全て平らげてしまった。
もし自分だけダジャカルデを少し残すと、王様に恥をかかせると思ったレオン王子は、王様と同じようにダジャカルデを全て平らげた。
その様子がニュースになり、国民から、レオン王子はとても気の遣える人だと賞賛された。
「Dyary 主導」「7ブックマーク」
革命派の東国ハイオンと守旧派の西国ウェルー。両国は冷戦と熱戦の狭間にあった。
そんな中で、東国の総帥が病気により危篤となる。死は一刻を争う状態で、精神的支柱を失いつつある東国は次第にまとまりを欠きつつあった。
こうした状況を目の当たりにしていた東国の幹部サグリ。サグリは東国の劣勢を憂い、起死回生の一手として、国に伝わる最終手段をついに用いることを決めた。
『Dyary』という日記帳状の道具で、これに日付・名前・状況を正確に記すことで表紙の紋様が点滅し、記した通りに任意の相手一人を自然な死に追いやることができる。ただし大きな制約として全体の回数制限があり、歴史の中で様々な人々に使われたために、今となってはあと一回しか使えない。
東国の総帥が危篤という今しか使用のタイミングはないだろうという結論に至り、サグリは西国の総帥の名前を綴った。
{2023.7.8 ダズ・ライン 病死}
さて、サグリがDyaryへの書き込みに際して、通常のペンではなく{極太の油性ペン}を用いた目的はなんだろうか?
{※}元ネタとして想起しうるあのノートについては、私がよく知らないくらいですので知識は不要です。
{※}当然ですが、回答に際して私の前問については閲覧不要です。
そんな中で、東国の総帥が病気により危篤となる。死は一刻を争う状態で、精神的支柱を失いつつある東国は次第にまとまりを欠きつつあった。
こうした状況を目の当たりにしていた東国の幹部サグリ。サグリは東国の劣勢を憂い、起死回生の一手として、国に伝わる最終手段をついに用いることを決めた。
『Dyary』という日記帳状の道具で、これに日付・名前・状況を正確に記すことで表紙の紋様が点滅し、記した通りに任意の相手一人を自然な死に追いやることができる。ただし大きな制約として全体の回数制限があり、歴史の中で様々な人々に使われたために、今となってはあと一回しか使えない。
東国の総帥が危篤という今しか使用のタイミングはないだろうという結論に至り、サグリは西国の総帥の名前を綴った。
{2023.7.8 ダズ・ライン 病死}
さて、サグリがDyaryへの書き込みに際して、通常のペンではなく{極太の油性ペン}を用いた目的はなんだろうか?
{※}元ネタとして想起しうるあのノートについては、私がよく知らないくらいですので知識は不要です。
{※}当然ですが、回答に際して私の前問については閲覧不要です。
23年07月09日 00:11
【ウミガメのスープ】 [さなめ。]
【ウミガメのスープ】 [さなめ。]
解説を見る
【要約:】
国に伝わる最終兵器Dyaryは、ひと一人を葬るほどの強大な魔力を持つゆえ、{通常の日記帳より遥かに大きい。}そんなDyaryに{正確に認証されうる}順当な書き込みをするのに、極太のペンは打倒な太さである。
それだけでなく、国の規定によって、Dyaryに書き込みをする際は{周囲に観測者を置き、その者らにも書き込み内容がリアルタイムで目測できるように}しなければならないと定められていた。これは幹部による{裏切りを阻止}するためであるが、その規定に忠実に従うべく、サグリは極太のペンを使って書き込みを明瞭にした。
(FAここまで。詳細は解説へ託す。)
【解説:】
「今こそ、今でしか使う場面がないはずです。」
会議卓を囲む大勢の幹部に対し、力の限り説得するサグリ。その卓のうち一際大きなスペースを占める総帥の席には、今は誰も座っていない。
東国ハイオンと西国ウェルー。壮絶な戦闘状態である二つの国の関係は、まさに今揺らごうとしていた。東国の総帥ドイ・バレン師が危篤に陥ったのである。西国がその権力を恣にするという時勢に真っ先に反旗を翻し、革命を掲げ、カリスマとしか言いようのない主導力で東国全体をその機運に統一させた、この闘いの立役者。
彼が、{父が}この革命から文字通り離脱すれば、我々はどうなってしまうのだろうか、サグリは考えた。家屋が主柱を失うように、羊たちが群れの長を失うように、我らの進む先に迷いが生じてしまいはしないか。
事実、すでに東国はまとまりを欠きつつあった。革命を中断し穏便に降伏しようと宣う者。自分を次期総帥にすべきだと独りよがりな者。さらに国民も、こうした軍の体制に疑問を持ち始めている。
そうした東国の劣勢を救うため。それだけではなく、ドイ総帥がまもなく亡くなるその前に、彼が生涯をかけて追求し続けた我らが自由を実現するため。サグリが幹部として抱く全ての決意のためには、Dyaryの使用が絶対であると固く主張した。
「Dyaryは今やあとたった一度しか使えないんだぞ。たとえひと一人を殺める危険な兵器だとしても、ここでその歴史に終止符を打つべきなのか?」
「だからこそ、今Dyaryを使うのです。悪魔の兵器の最後の一回、という重大な局面を使用に至らしめるには、我々のみならず国民の合意が不可欠でしょう。総帥の命が永くない今、{再び国民に、我ら自身に問おうというのです。この革命の、本当の意義を!}」
サグリは声高らかに訴えた。Dyaryは、440年もの歴史を持つこの国の誕生の前から伝わっている兵器であり、その強大な力から法による制限が厳しく為されていた。それにも関わらず今や使用制限に達しそうであるという事実は、歴史が表す人類の愚かさであろう。
しかし、そんな愚かな争いが現に起こっている時分にそのような悠長なことは言っていられない。今こそDyaryを用いて、{国全体の革命への意志を再び統一させようというのだ。}
——————
そして、サグリの提言や病床のドイ総帥の後押し、それに国民投票の大きな総意によって、Dyaryが最後の役目を果たすことが決まった。
記す名前は、議論の余地もなく西国の総帥ダズ・ラインである。西国の独裁者である彼を滞りなく葬ることができれば、体制が緻密な西国の集団といえども一時は混乱に陥るはずである。余談であるが、メディア発達の不十分な周辺地域において西国等には、「東国で悪名高い日記型の兵器は、何年も前に使用回数制限が上限に達した」という間違った言説が流布されている。
{ 最終兵器Dyaryの使用に際して国を挙げて激動の議論を交わし、意志のまとまりが強固になった今の東国}であれば、その一時の混乱に乗じて十分な優勢を築き上げることが可能だ。
過去何年も封印されていた巨大な金庫の扉がゆっくりと開かれ、サグリら幹部が少しづつ入場する。一瞬、常時に備え付けられている警報がけたたましく鳴り響いたが、エンジニアの遠隔操作で停止された。
中に収まっていたDyaryは、サグリたちの入場を待っていたかのように妖しくその紋様を顕現させる。軽く見上げるほど大きな日記帳の、表紙の紋様の下に刻まれた「1」の文字。{これが今日、0になる。}サグリは、Dyary開帳役の幹部が{二人がかりで}ゆっくりとページを開いていく様子を見守った。
計8人全員の幹部の立ち合い、そして金庫内のカメラの監視の下で、サグリを含む三人の幹部は持っていた極太の油性ペンの蓋を開いた。三人はそのまま、天井から垂れ下がったワイヤーを自身の体にくくりつけ、遠隔操作で吊り上げられる。
ページの中央部分まで上がったところで、ワイヤーは止まり三人は宙吊りになる。そして、とうとうDyaryへの書き込みが始まった。
まずは一人が、日付を。そしてもう一人が、死の状況を。最後にサグリが、間に西国の総帥の名前を。
サグリは震える手で、この世で最も憎い人物の名前を荒々しく堂々と記した。幹部の監視の下、とうとうDyaryに書き込みを行うというのだから緊張も尤もであるが、監視などという大層な探りを入れられずとも、父の教えに忠実なサグリが東国への裏切りを起こすなど、天地においてあり得ない事象だった。
{2023.7.8 ダズ・ライン 病死}
サグリら三人はやがて書き込みを完了する。通常の大きさの日記帳に行うよりも明らかに時間を要して行った書き込みだが、監視員が地上遠くからその字を眺めると、案外小さく収まっており辛うじて読める程度だ。
そして先の開帳役の二人がゆっくりとページを閉じると、表紙の紋様が点滅したのが確認できた。その様子がしっかりをカメラにも収まっているのを見て、サグリはついに安堵の嘆息を漏らす。
ついに私は、西国の牙城を崩すきっかけを自らの主張によって作ってしまったんだ。そのことにただならぬ思いがあったのはもちろんだが、サグリには全く別の達成感もあった。
{Dyaryの役目を、この手で終わらせたことである。}
革命の執行とはいえ、一般に考えれば日記帳への書き込みによって西国の総帥を自然死に追いやるというのは卑劣は行為といえる。実際、13の使用制限があったとされるDyaryの使用のうち、ほとんどは不当な犯罪に用いられたものと記録されている。このような悪魔の兵器をいつまでも携えていては、ハイオンという国は革命を遂行して自由を訴えることなど到底できない。サグリはしかし、特異に非道な独裁者を打ち砕く、という比較的合理的な理由を以て、その使用制限に至ったのである。使用へ賛成の票を投じた隊員や国民の中にも、{あるだけで国の威信を乱すこの悪魔の日記帳を一刻も早く滅ぼしてほしい}一心だった者は多いだろう。
畢竟、悪魔の兵器を用いた自分が悪烈なことには変わりないが、だからこそサグリには改めて強大な決意が宿った。
この日記帳を使用した全責任を取るためにも、父の生きるうちに革命を遂行せねばならない。
かつて私が生まれる前に存在していたような、統一された自由の国を再建し、全ての民にそれを見せなければならない。
『この瞬間は、歴史を通して国中で悪魔の兵器と呼ばれたDyaryが、一人の人間に強大な決意という希望の光を与えた、最初で最後の瞬間であった。』
迷いのない瞳を湛えるサグリ。他の幹部らと共に、暗黒の金庫から厳粛に出てくる彼女が、この時も着ていた軍服の胸元には、東国のエンブレムが強く光輝いていた。
{『日記帳型兵器の使用及び執行法 第12条1項
:日記帳型兵器に書き込みを行う者及びそれに立ち会う者は、前条に示した特別会議によって選任された者でなければならない。
同2項
:日記帳型兵器への書き込みは、その時点及び後世の者への視認性確保のため、また当該兵器自体への正常な認証のため、別紙の規定に則った筆記具を用いて行う。
同3項
:日記帳型兵器への書き込みを行う際は、その書き込みを三人に分担した上で三人以上の監視の下で行う。』
(12条起草意図:
1項
:1680年代に起きたベルゲート市街連続殺人事件に基づく。(中略)独断や無許可で当該兵器を用いることは、何人も、また国の最高司令部であっても固く禁止されるべきである。
2項
:当該兵器の始めのあたりのページにある書き込みは極めて薄い字で為されており、その使用について詳細が今も不明である。また我が国が起こる以前に、極端に小さな字で書いた書き込みが当該兵器に誤認識され暴走した歴史が確認されている。当該兵器の明瞭かつ慎重な使用という同1条の観念に即し、記載の視認性は必要不可欠である。*一定起草者の反対意見・補足意見あり。
3項
:前2項に同様、当該兵器の慎重な使用及び政体への反旗の目的での使用を防止するためには、(中略)故意または過失により、特別会議での合意と異なる事項が書き込み段階で書かれることがないような監視を置くのが妥当である。)}
(終わり。)
【簡易解説:】
そもそもDyaryは通常の日記帳より規格外に大きい上、書き込み内容は周囲にもわかりやすくなければならないので、正確な認証や周囲への配慮のため視認性の高い極太のペンを使うのは妥当で必然だった。
国に伝わる最終兵器Dyaryは、ひと一人を葬るほどの強大な魔力を持つゆえ、{通常の日記帳より遥かに大きい。}そんなDyaryに{正確に認証されうる}順当な書き込みをするのに、極太のペンは打倒な太さである。
それだけでなく、国の規定によって、Dyaryに書き込みをする際は{周囲に観測者を置き、その者らにも書き込み内容がリアルタイムで目測できるように}しなければならないと定められていた。これは幹部による{裏切りを阻止}するためであるが、その規定に忠実に従うべく、サグリは極太のペンを使って書き込みを明瞭にした。
(FAここまで。詳細は解説へ託す。)
【解説:】
「今こそ、今でしか使う場面がないはずです。」
会議卓を囲む大勢の幹部に対し、力の限り説得するサグリ。その卓のうち一際大きなスペースを占める総帥の席には、今は誰も座っていない。
東国ハイオンと西国ウェルー。壮絶な戦闘状態である二つの国の関係は、まさに今揺らごうとしていた。東国の総帥ドイ・バレン師が危篤に陥ったのである。西国がその権力を恣にするという時勢に真っ先に反旗を翻し、革命を掲げ、カリスマとしか言いようのない主導力で東国全体をその機運に統一させた、この闘いの立役者。
彼が、{父が}この革命から文字通り離脱すれば、我々はどうなってしまうのだろうか、サグリは考えた。家屋が主柱を失うように、羊たちが群れの長を失うように、我らの進む先に迷いが生じてしまいはしないか。
事実、すでに東国はまとまりを欠きつつあった。革命を中断し穏便に降伏しようと宣う者。自分を次期総帥にすべきだと独りよがりな者。さらに国民も、こうした軍の体制に疑問を持ち始めている。
そうした東国の劣勢を救うため。それだけではなく、ドイ総帥がまもなく亡くなるその前に、彼が生涯をかけて追求し続けた我らが自由を実現するため。サグリが幹部として抱く全ての決意のためには、Dyaryの使用が絶対であると固く主張した。
「Dyaryは今やあとたった一度しか使えないんだぞ。たとえひと一人を殺める危険な兵器だとしても、ここでその歴史に終止符を打つべきなのか?」
「だからこそ、今Dyaryを使うのです。悪魔の兵器の最後の一回、という重大な局面を使用に至らしめるには、我々のみならず国民の合意が不可欠でしょう。総帥の命が永くない今、{再び国民に、我ら自身に問おうというのです。この革命の、本当の意義を!}」
サグリは声高らかに訴えた。Dyaryは、440年もの歴史を持つこの国の誕生の前から伝わっている兵器であり、その強大な力から法による制限が厳しく為されていた。それにも関わらず今や使用制限に達しそうであるという事実は、歴史が表す人類の愚かさであろう。
しかし、そんな愚かな争いが現に起こっている時分にそのような悠長なことは言っていられない。今こそDyaryを用いて、{国全体の革命への意志を再び統一させようというのだ。}
——————
そして、サグリの提言や病床のドイ総帥の後押し、それに国民投票の大きな総意によって、Dyaryが最後の役目を果たすことが決まった。
記す名前は、議論の余地もなく西国の総帥ダズ・ラインである。西国の独裁者である彼を滞りなく葬ることができれば、体制が緻密な西国の集団といえども一時は混乱に陥るはずである。余談であるが、メディア発達の不十分な周辺地域において西国等には、「東国で悪名高い日記型の兵器は、何年も前に使用回数制限が上限に達した」という間違った言説が流布されている。
{ 最終兵器Dyaryの使用に際して国を挙げて激動の議論を交わし、意志のまとまりが強固になった今の東国}であれば、その一時の混乱に乗じて十分な優勢を築き上げることが可能だ。
過去何年も封印されていた巨大な金庫の扉がゆっくりと開かれ、サグリら幹部が少しづつ入場する。一瞬、常時に備え付けられている警報がけたたましく鳴り響いたが、エンジニアの遠隔操作で停止された。
中に収まっていたDyaryは、サグリたちの入場を待っていたかのように妖しくその紋様を顕現させる。軽く見上げるほど大きな日記帳の、表紙の紋様の下に刻まれた「1」の文字。{これが今日、0になる。}サグリは、Dyary開帳役の幹部が{二人がかりで}ゆっくりとページを開いていく様子を見守った。
計8人全員の幹部の立ち合い、そして金庫内のカメラの監視の下で、サグリを含む三人の幹部は持っていた極太の油性ペンの蓋を開いた。三人はそのまま、天井から垂れ下がったワイヤーを自身の体にくくりつけ、遠隔操作で吊り上げられる。
ページの中央部分まで上がったところで、ワイヤーは止まり三人は宙吊りになる。そして、とうとうDyaryへの書き込みが始まった。
まずは一人が、日付を。そしてもう一人が、死の状況を。最後にサグリが、間に西国の総帥の名前を。
サグリは震える手で、この世で最も憎い人物の名前を荒々しく堂々と記した。幹部の監視の下、とうとうDyaryに書き込みを行うというのだから緊張も尤もであるが、監視などという大層な探りを入れられずとも、父の教えに忠実なサグリが東国への裏切りを起こすなど、天地においてあり得ない事象だった。
{2023.7.8 ダズ・ライン 病死}
サグリら三人はやがて書き込みを完了する。通常の大きさの日記帳に行うよりも明らかに時間を要して行った書き込みだが、監視員が地上遠くからその字を眺めると、案外小さく収まっており辛うじて読める程度だ。
そして先の開帳役の二人がゆっくりとページを閉じると、表紙の紋様が点滅したのが確認できた。その様子がしっかりをカメラにも収まっているのを見て、サグリはついに安堵の嘆息を漏らす。
ついに私は、西国の牙城を崩すきっかけを自らの主張によって作ってしまったんだ。そのことにただならぬ思いがあったのはもちろんだが、サグリには全く別の達成感もあった。
{Dyaryの役目を、この手で終わらせたことである。}
革命の執行とはいえ、一般に考えれば日記帳への書き込みによって西国の総帥を自然死に追いやるというのは卑劣は行為といえる。実際、13の使用制限があったとされるDyaryの使用のうち、ほとんどは不当な犯罪に用いられたものと記録されている。このような悪魔の兵器をいつまでも携えていては、ハイオンという国は革命を遂行して自由を訴えることなど到底できない。サグリはしかし、特異に非道な独裁者を打ち砕く、という比較的合理的な理由を以て、その使用制限に至ったのである。使用へ賛成の票を投じた隊員や国民の中にも、{あるだけで国の威信を乱すこの悪魔の日記帳を一刻も早く滅ぼしてほしい}一心だった者は多いだろう。
畢竟、悪魔の兵器を用いた自分が悪烈なことには変わりないが、だからこそサグリには改めて強大な決意が宿った。
この日記帳を使用した全責任を取るためにも、父の生きるうちに革命を遂行せねばならない。
かつて私が生まれる前に存在していたような、統一された自由の国を再建し、全ての民にそれを見せなければならない。
『この瞬間は、歴史を通して国中で悪魔の兵器と呼ばれたDyaryが、一人の人間に強大な決意という希望の光を与えた、最初で最後の瞬間であった。』
迷いのない瞳を湛えるサグリ。他の幹部らと共に、暗黒の金庫から厳粛に出てくる彼女が、この時も着ていた軍服の胸元には、東国のエンブレムが強く光輝いていた。
{『日記帳型兵器の使用及び執行法 第12条1項
:日記帳型兵器に書き込みを行う者及びそれに立ち会う者は、前条に示した特別会議によって選任された者でなければならない。
同2項
:日記帳型兵器への書き込みは、その時点及び後世の者への視認性確保のため、また当該兵器自体への正常な認証のため、別紙の規定に則った筆記具を用いて行う。
同3項
:日記帳型兵器への書き込みを行う際は、その書き込みを三人に分担した上で三人以上の監視の下で行う。』
(12条起草意図:
1項
:1680年代に起きたベルゲート市街連続殺人事件に基づく。(中略)独断や無許可で当該兵器を用いることは、何人も、また国の最高司令部であっても固く禁止されるべきである。
2項
:当該兵器の始めのあたりのページにある書き込みは極めて薄い字で為されており、その使用について詳細が今も不明である。また我が国が起こる以前に、極端に小さな字で書いた書き込みが当該兵器に誤認識され暴走した歴史が確認されている。当該兵器の明瞭かつ慎重な使用という同1条の観念に即し、記載の視認性は必要不可欠である。*一定起草者の反対意見・補足意見あり。
3項
:前2項に同様、当該兵器の慎重な使用及び政体への反旗の目的での使用を防止するためには、(中略)故意または過失により、特別会議での合意と異なる事項が書き込み段階で書かれることがないような監視を置くのが妥当である。)}
(終わり。)
【簡易解説:】
そもそもDyaryは通常の日記帳より規格外に大きい上、書き込み内容は周囲にもわかりやすくなければならないので、正確な認証や周囲への配慮のため視認性の高い極太のペンを使うのは妥当で必然だった。