「言ってしまっちゃいけないこと」「8ブックマーク」
「新進のテーマパーク『らてらんど』のしゃべる公式マスコットゆるキャラ・ラッテーの体内では常に濃厚な抹茶クリームが作られている。」
ことになったのは一体なぜ?
ことになったのは一体なぜ?
23年10月24日 22:16
【ウミガメのスープ】 [さなめ。]
【ウミガメのスープ】 [さなめ。]
解説を見る
ラッテーのゆるキャラの声優は公式に発表されていないが、その特徴的な声質から、一部の人間からは尤もな予想が飛び交う可能性が懸念された。
「ラッテーの{中身}って〇〇なんじゃね?」
「{中身}、配信者の〇〇かも!?」
「ラッテーの{中身}、考察しがいがあるな」
テーマパーク側としては、そうした夢のない噂が散見されるのは好ましくない。ということでお披露目の際、こんなことを発表した。
【{「ラッテーの体の中身には、なんとらてらんど名物ウミガメソフトの抹茶クリームがあるんだって〜!!」}】
「{中身}が抹茶…!メルヘンすぎる!」
「抹茶クリーム、体の{中身}を支配してると胃もたれしそう」
「抹茶色とかじゃなくまじの抹茶なの?しかも{中身}??」
要約:マスコットの声優(いわゆる中の人)を予想する予測変換汚染の防止・SNS等の検索避けと、園内名物の宣伝を兼ねるために奇抜な設定を用意した。
「ラッテーの{中身}って〇〇なんじゃね?」
「{中身}、配信者の〇〇かも!?」
「ラッテーの{中身}、考察しがいがあるな」
テーマパーク側としては、そうした夢のない噂が散見されるのは好ましくない。ということでお披露目の際、こんなことを発表した。
【{「ラッテーの体の中身には、なんとらてらんど名物ウミガメソフトの抹茶クリームがあるんだって〜!!」}】
「{中身}が抹茶…!メルヘンすぎる!」
「抹茶クリーム、体の{中身}を支配してると胃もたれしそう」
「抹茶色とかじゃなくまじの抹茶なの?しかも{中身}??」
要約:マスコットの声優(いわゆる中の人)を予想する予測変換汚染の防止・SNS等の検索避けと、園内名物の宣伝を兼ねるために奇抜な設定を用意した。
「死____」「8ブックマーク」
ここ最近。
毎夜、日付が変わる頃になると、町と城を繋ぐ街道に幽霊が出るらしい。
先日その街道で死んだ女の霊だという噂だ。
町に住んでいるジャックが、怖いもの見たさで噂の場所に行ってみると、確かにそこには女が一人すすり泣いていた。ぱっと見では気づかなかったが、近づいてよくよく見てみれば驚くほどの美人だ。
「どうして泣いているんだ?」
『もう一度だけでいいから好きな人に会って、私はここにいますって伝えたいのに……それができなくて辛いの。だって私、幽霊になっちゃったんだもの。会えたとしても、きっともう私だって分かってもらえないわ……』
「そんなことないさ。よければ俺がその好きな人とやらをここまで連れてきてやるからよ」
そう慰めても『そんなことしても無駄よ』と一向に聞き入れてくれずに泣くばかりだ。
何故彼女はこんなにも頑なに、“好きな人に自分のことを分かってもらえない”と思っているのだろう?
毎夜、日付が変わる頃になると、町と城を繋ぐ街道に幽霊が出るらしい。
先日その街道で死んだ女の霊だという噂だ。
町に住んでいるジャックが、怖いもの見たさで噂の場所に行ってみると、確かにそこには女が一人すすり泣いていた。ぱっと見では気づかなかったが、近づいてよくよく見てみれば驚くほどの美人だ。
「どうして泣いているんだ?」
『もう一度だけでいいから好きな人に会って、私はここにいますって伝えたいのに……それができなくて辛いの。だって私、幽霊になっちゃったんだもの。会えたとしても、きっともう私だって分かってもらえないわ……』
「そんなことないさ。よければ俺がその好きな人とやらをここまで連れてきてやるからよ」
そう慰めても『そんなことしても無駄よ』と一向に聞き入れてくれずに泣くばかりだ。
何故彼女はこんなにも頑なに、“好きな人に自分のことを分かってもらえない”と思っているのだろう?
23年10月24日 12:00
【ウミガメのスープ】 [オリオン]
【ウミガメのスープ】 [オリオン]
一応検索したのですが、もしネタ被ってたらすみません。
解説を見る
「無駄だなんて言うなよ。やってみなくちゃ分からないだろ?」
『いいえ、分かるわよ。あなた……最近、王子様が、舞踏会で見初めた相手を探しているって話はご存知?』
「もちろん知ってるとも。うちの娘も、その想い人の落とし物のガラスの靴とやらを穿かされたからな。だが、町中の娘を試したのに足のサイズが合う娘が見つからないから、もしかしたら他の国から遊びに来ていたお嬢さんだったんじゃないかって…………って、ちょ、ちょちょっと待て!……まさか、お前さん!」
『そうよ! あの夜ガラスの靴を落としたのは私よ! 急いで家に帰ろうと馬車を飛ばしてたら事故でこんなことに…………。やっぱり、いくら魔法とはいえ、ネズミに御者をやらせるなんて無茶だったんだわ……』
ネズミに御者?
突然飛び出してきた不可解な言葉に、ジャックは首を傾げる。確かに街道で見つかったという女の死体の近くには、ネズミの死体やら砕け散ったカボチャやら、変な物がいくつか落ちていたらしいが。
『靴を頼りに探しているということは、王子様は私の顔をはっきりとは覚えてないのよ。当然よね、一度会っただけの相手だもの。もちろん、言葉で“あの日舞踏会で踊った相手は私なんです”って訴えることはできるわよ……でも、もし嘘なんじゃないかって疑われたら? 証拠を見せろって言われたらどうしたらいいの?…………{幽霊には足がないんだから、もう私ガラスの靴なんて履けないわ}』
そう言って、幽霊がが泣き崩れた弾みでひらりとめくれあがったスカートの下には、
ーーーー確かに足がなかった。
◾️この問題の正式タイトル◾️
『死ンデレラ』
◾️簡易解説◾️
幽霊の名はシンデレラ。城の舞踏会から帰る途中、カボチャの馬車を飛ばしすぎて事故で死んでしまい、幽霊の自分にはもう足がなく、ガラスの靴を履いて「舞踏会で踊った相手は自分だと」証明することができないと思っている。
◾️別解解説◾️
霊体ではそもそも物体に触ることができず、ガラスの靴が履けないから。
「シンデレラ」が「幽霊になったせい」で「ガラスの靴が履けないことを嘆いている」という部分を当ててくだされば、どちらの解答でも正解とします。
『いいえ、分かるわよ。あなた……最近、王子様が、舞踏会で見初めた相手を探しているって話はご存知?』
「もちろん知ってるとも。うちの娘も、その想い人の落とし物のガラスの靴とやらを穿かされたからな。だが、町中の娘を試したのに足のサイズが合う娘が見つからないから、もしかしたら他の国から遊びに来ていたお嬢さんだったんじゃないかって…………って、ちょ、ちょちょっと待て!……まさか、お前さん!」
『そうよ! あの夜ガラスの靴を落としたのは私よ! 急いで家に帰ろうと馬車を飛ばしてたら事故でこんなことに…………。やっぱり、いくら魔法とはいえ、ネズミに御者をやらせるなんて無茶だったんだわ……』
ネズミに御者?
突然飛び出してきた不可解な言葉に、ジャックは首を傾げる。確かに街道で見つかったという女の死体の近くには、ネズミの死体やら砕け散ったカボチャやら、変な物がいくつか落ちていたらしいが。
『靴を頼りに探しているということは、王子様は私の顔をはっきりとは覚えてないのよ。当然よね、一度会っただけの相手だもの。もちろん、言葉で“あの日舞踏会で踊った相手は私なんです”って訴えることはできるわよ……でも、もし嘘なんじゃないかって疑われたら? 証拠を見せろって言われたらどうしたらいいの?…………{幽霊には足がないんだから、もう私ガラスの靴なんて履けないわ}』
そう言って、幽霊がが泣き崩れた弾みでひらりとめくれあがったスカートの下には、
ーーーー確かに足がなかった。
◾️この問題の正式タイトル◾️
『死ンデレラ』
◾️簡易解説◾️
幽霊の名はシンデレラ。城の舞踏会から帰る途中、カボチャの馬車を飛ばしすぎて事故で死んでしまい、幽霊の自分にはもう足がなく、ガラスの靴を履いて「舞踏会で踊った相手は自分だと」証明することができないと思っている。
◾️別解解説◾️
霊体ではそもそも物体に触ることができず、ガラスの靴が履けないから。
「シンデレラ」が「幽霊になったせい」で「ガラスの靴が履けないことを嘆いている」という部分を当ててくだされば、どちらの解答でも正解とします。
「M other」「8ブックマーク」
ナナミのことを「ママ」と呼んでいた息子•ヨウタに、初めて「おかあさん」と呼ばれたとき。
ナナミがヨウタに、ママと呼んで欲しい気持ちを我慢して「ママでもお母さんでもない別の呼び方」で自分のことを呼ぶよう言ったのは何故か?
ナナミがヨウタに、ママと呼んで欲しい気持ちを我慢して「ママでもお母さんでもない別の呼び方」で自分のことを呼ぶよう言ったのは何故か?
23年11月03日 23:12
【ウミガメのスープ】 [オリオン]
【ウミガメのスープ】 [オリオン]
マ〜マ! ママ!
解説を見る
息子は言葉の覚えが比較的早い子だった。
『マ〜マ!』
ぷくぷくとした唇が私に向かって何度もぱくぱくと動いて、初めての言葉はやっぱりママだったねなんて夫と笑いあったのが、息子が1歳になる少し前のこと。
私の両親が良くない筋からの借金を残したまま事故で死んで、どうやらその返済名義が一人娘の私になっているらしいと発覚したのが、息子が1歳になった少し後。
恫喝まがいの取り立てから家族を守りたくて、夫に息子を託す形で離婚したのが同じ頃。
昼も夜も働き通しだった毎日。
やっと完済の目処が立って、学生の頃からの夢だった小学校の先生へと転職したのが去年。
◆ ◆ ◆
そして今年。
何の運命のいたずらなのかーーーーなんと息子が、私の学校に入学してきた。
驚いた。間違っても息子達に取り立ての矛先が向かないようにと、別れてから一切連絡を取らないようにしていたから。
…………どうしよう。声をかけてもいいものなのかしら。でも、なんて声をかけたらいいの。
『ママのこと覚えてる?』『もし叶うなら、もう一度ママと呼んで欲しい』って。そんな風に思ってしまうのは……やっぱりわがままかしら。
悶々と悩み続けて数週間。
「おかあさん」
不意に、息子にそう呼ばれた。
……心臓が止まるかと思った。愛しさで目が潤みそうになったけど……息子がすぐにハッとした顔になって、それから恥ずかしそうにおろおろとし始めたのを見て、気がつく。
そういえば、この子は私を『ママ』と呼んでいたのに、さっきの『おかあさん』は随分と慣れた言い方だった。
そっか…………。
{あなたにはきっと、もう私とは別の『おかあさん』がいるのね。それなら、『ママ』って呼んで欲しいなんて私のわがままで、あなたを困らせるわけにはいかないわ。}
「こら、洋太くん。私はあなたのママでもお母さんでもありませんよ? ちゃんと七海先生って呼んでくださいね?」
「はぁい! ごめんなさぁいななみせんせい!」
寂しいけど、あなたが今幸せなら、
『ママ』とっても嬉しいわ!
◾️簡易解説◾️
息子が物心つく前に離婚した、小学校教師をしてい七海。
数年ぶりに再会した息子が、『せんせい』を呼ぶつもりで間違えて『おかあさん』と呼んできた。それはむまり、息子は咄嗟に呼び間違いをするくらい、普段から『おかあさん』という言葉を口にし慣れており、今は七海とは別の『おかあさん』と暮らしているということだと思ったので、七海は自分が『ママ』だと明かすことをやめて、あくまでも教師として息子と接することにした。
『マ〜マ!』
ぷくぷくとした唇が私に向かって何度もぱくぱくと動いて、初めての言葉はやっぱりママだったねなんて夫と笑いあったのが、息子が1歳になる少し前のこと。
私の両親が良くない筋からの借金を残したまま事故で死んで、どうやらその返済名義が一人娘の私になっているらしいと発覚したのが、息子が1歳になった少し後。
恫喝まがいの取り立てから家族を守りたくて、夫に息子を託す形で離婚したのが同じ頃。
昼も夜も働き通しだった毎日。
やっと完済の目処が立って、学生の頃からの夢だった小学校の先生へと転職したのが去年。
◆ ◆ ◆
そして今年。
何の運命のいたずらなのかーーーーなんと息子が、私の学校に入学してきた。
驚いた。間違っても息子達に取り立ての矛先が向かないようにと、別れてから一切連絡を取らないようにしていたから。
…………どうしよう。声をかけてもいいものなのかしら。でも、なんて声をかけたらいいの。
『ママのこと覚えてる?』『もし叶うなら、もう一度ママと呼んで欲しい』って。そんな風に思ってしまうのは……やっぱりわがままかしら。
悶々と悩み続けて数週間。
「おかあさん」
不意に、息子にそう呼ばれた。
……心臓が止まるかと思った。愛しさで目が潤みそうになったけど……息子がすぐにハッとした顔になって、それから恥ずかしそうにおろおろとし始めたのを見て、気がつく。
そういえば、この子は私を『ママ』と呼んでいたのに、さっきの『おかあさん』は随分と慣れた言い方だった。
そっか…………。
{あなたにはきっと、もう私とは別の『おかあさん』がいるのね。それなら、『ママ』って呼んで欲しいなんて私のわがままで、あなたを困らせるわけにはいかないわ。}
「こら、洋太くん。私はあなたのママでもお母さんでもありませんよ? ちゃんと七海先生って呼んでくださいね?」
「はぁい! ごめんなさぁいななみせんせい!」
寂しいけど、あなたが今幸せなら、
『ママ』とっても嬉しいわ!
◾️簡易解説◾️
息子が物心つく前に離婚した、小学校教師をしてい七海。
数年ぶりに再会した息子が、『せんせい』を呼ぶつもりで間違えて『おかあさん』と呼んできた。それはむまり、息子は咄嗟に呼び間違いをするくらい、普段から『おかあさん』という言葉を口にし慣れており、今は七海とは別の『おかあさん』と暮らしているということだと思ったので、七海は自分が『ママ』だと明かすことをやめて、あくまでも教師として息子と接することにした。
「ゾンビとして蘇ること」「8ブックマーク」
名前も知らない男の死体に必死の形相で銃を突きつけるエミリー。
男が死んでいることは十分理解しているのだが、では彼女は何を恐れているのだろうか?
男が死んでいることは十分理解しているのだが、では彼女は何を恐れているのだろうか?
23年11月28日 22:17
【ウミガメのスープ】 [「マクガフィン」]
【ウミガメのスープ】 [「マクガフィン」]
久々のwhat型ウミガメ。
解説を見る
A. 立てこもり犯エミリーを取り囲む警察隊に、もう人質はいないのだとバレること。
とある店に強盗に入ったエミリー。
店員に銃を突きつけて金を出すよう脅す彼女だったが、逃げ出した客に通報されてしまう。
たちまち建物を包囲する警察を見て、店員を人質にして逃走経路を用意させるしかないと考えたエミリー。
しかし、店員から思わぬ抵抗を受け、揉み合う中で誤って射殺してしまう。
人質が死んでしまったことが警察隊に知られれば、すぐに突入・逮捕されてしまうだろう。
もし窓から覗かれても引き続き人質を脅す様子に見えるよう、店員の死体に銃を突きつけながら、エミリーは震える声で要求を叫んだ。
とある店に強盗に入ったエミリー。
店員に銃を突きつけて金を出すよう脅す彼女だったが、逃げ出した客に通報されてしまう。
たちまち建物を包囲する警察を見て、店員を人質にして逃走経路を用意させるしかないと考えたエミリー。
しかし、店員から思わぬ抵抗を受け、揉み合う中で誤って射殺してしまう。
人質が死んでしまったことが警察隊に知られれば、すぐに突入・逮捕されてしまうだろう。
もし窓から覗かれても引き続き人質を脅す様子に見えるよう、店員の死体に銃を突きつけながら、エミリーは震える声で要求を叫んだ。
「『前略、大切なあなたへ』」「8ブックマーク」
「初めて会った日のことを思い出すなぁ…」
最愛の夫・壮太との思い出のアルバムを眺めながら、ひとり呟く瑞希。
薄暗い部屋の中で自らの死を悟った瑞希は、震える手で遺書を残すことに決めた。
さて、{この遺書の右上にある単語}は何か?
{シチュエーションを踏まえて}答えて欲しい。
23年11月30日 22:30
【ウミガメのスープ】 [だだだだ3号機]
【ウミガメのスープ】 [だだだだ3号機]
扉と迷いましたが、ウミガメです。
解説を見る
【解説】
今振り返ってみても、特に準備不足だったとは思わない。
危険性は充分承知していたし、学生のときに嫌というほど使ったルートでもあった。
・・・・・・・・・・・
…それでも、「山の天気は変わりやすい」ということを身を持って体感するのは初めてだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
───夫・壮太の突然の出張。
家事の全般を請け負っている瑞希にとって、これは予期せぬ余暇の到来に他ならない。
大学生のときの趣味であった登山に思い至ったのも、単にこの余暇を充実させたいと思ったが故の思考だった。
しかし常々、人の都合を大自然は関知しない。
瑞希が山を登りはじめてから十数時間。
突如降り始めた大雪は、あっという間に視界と道標を奪い去っていた。
命からがら無人の山小屋にたどり着いた瑞希は、震えながら救助を待つことにした。
「寒い…」
建物の中とはいえ、所詮は簡素な造りの小屋である。直接の冷風は凌げても、纏わりつくような冷気はどうしようもなかった。
日帰りで下山するつもりだったため、荷物の中には少量の水と栄養食しかない。
加えてこの気温。防寒具は所持しているが、夜を明かす想定はしていなかった。
夜明けまで持つかどうかも、怪しい。
一縷の望みは携帯で救助を呼ぶことだが、孤立した山の自然に悪天候、何度試しても電波は通じなかった。
既に日は落ちかけ、辺りは闇に包まれつつある。
刻一刻と激しさを増し、本格的に吹雪いてきた外の様子を認めた瑞希は、いよいよ生きる希望を失いつつあった。
───徐に、携帯の写真のアルバムを開く。
そこに写る最愛の夫との楽しい思い出を、ゆっくりと懐古する瑞希。
「初めて会った日のことを思い出すなぁ…」
…そうだった、壮太と出会ったのも雪の降る寒い日だったな。まだ付き合ってもいなかったけど、薄着の私を心配して上着を貸してくれたっけ。
あの時は恥ずかしくって、ちゃんとお礼も言えなかったんだよなぁ…。
都合のいい脳ミソだと思う。今際になって堰を切ったよつに心残りが溢れてくるのだから。
「メモ帳…メールの下書きの方がいいのかな。」
携帯のメール機能を開いた瑞希は、新規のメールリストに、下書きで遺書をしたため始めた。
寒さで手が震えて、上手く打ち込めない。
───ご飯はちゃんと食べてね。油ものばかりじゃダメだよ。寝るときはちゃんと暖かくすること。靴下はちゃんと表にしてから洗濯に出してね。読んだ本は床に積みっぱなしにしない。あと…
(あはは…遺書に小言書いてるよ私…)
(先立つ不幸を…みたいなの書いた方が良いかな…いや、堅いよな…)
(あ、クリスマスケーキ予約してた…一人だと多いよね…ごめんね…)
(そういえば壮太のスーツ…クリーニングに出してたな…)
(あー…今度一緒に観に行くはずだった映画のラスト…教えに来てくれるとうれしいかも………)
(一緒にいてくれて、ありがとう…本当に………)
(あと、あと……そうだ……あのときの………上着の……お礼…………)
(………………ちょっと、眠いなぁ………)
(………………………………)
【A、{圏外}】
今振り返ってみても、特に準備不足だったとは思わない。
危険性は充分承知していたし、学生のときに嫌というほど使ったルートでもあった。
・・・・・・・・・・・
…それでも、「山の天気は変わりやすい」ということを身を持って体感するのは初めてだった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
───夫・壮太の突然の出張。
家事の全般を請け負っている瑞希にとって、これは予期せぬ余暇の到来に他ならない。
大学生のときの趣味であった登山に思い至ったのも、単にこの余暇を充実させたいと思ったが故の思考だった。
しかし常々、人の都合を大自然は関知しない。
瑞希が山を登りはじめてから十数時間。
突如降り始めた大雪は、あっという間に視界と道標を奪い去っていた。
命からがら無人の山小屋にたどり着いた瑞希は、震えながら救助を待つことにした。
「寒い…」
建物の中とはいえ、所詮は簡素な造りの小屋である。直接の冷風は凌げても、纏わりつくような冷気はどうしようもなかった。
日帰りで下山するつもりだったため、荷物の中には少量の水と栄養食しかない。
加えてこの気温。防寒具は所持しているが、夜を明かす想定はしていなかった。
夜明けまで持つかどうかも、怪しい。
一縷の望みは携帯で救助を呼ぶことだが、孤立した山の自然に悪天候、何度試しても電波は通じなかった。
既に日は落ちかけ、辺りは闇に包まれつつある。
刻一刻と激しさを増し、本格的に吹雪いてきた外の様子を認めた瑞希は、いよいよ生きる希望を失いつつあった。
───徐に、携帯の写真のアルバムを開く。
そこに写る最愛の夫との楽しい思い出を、ゆっくりと懐古する瑞希。
「初めて会った日のことを思い出すなぁ…」
…そうだった、壮太と出会ったのも雪の降る寒い日だったな。まだ付き合ってもいなかったけど、薄着の私を心配して上着を貸してくれたっけ。
あの時は恥ずかしくって、ちゃんとお礼も言えなかったんだよなぁ…。
都合のいい脳ミソだと思う。今際になって堰を切ったよつに心残りが溢れてくるのだから。
「メモ帳…メールの下書きの方がいいのかな。」
携帯のメール機能を開いた瑞希は、新規のメールリストに、下書きで遺書をしたため始めた。
寒さで手が震えて、上手く打ち込めない。
───ご飯はちゃんと食べてね。油ものばかりじゃダメだよ。寝るときはちゃんと暖かくすること。靴下はちゃんと表にしてから洗濯に出してね。読んだ本は床に積みっぱなしにしない。あと…
(あはは…遺書に小言書いてるよ私…)
(先立つ不幸を…みたいなの書いた方が良いかな…いや、堅いよな…)
(あ、クリスマスケーキ予約してた…一人だと多いよね…ごめんね…)
(そういえば壮太のスーツ…クリーニングに出してたな…)
(あー…今度一緒に観に行くはずだった映画のラスト…教えに来てくれるとうれしいかも………)
(一緒にいてくれて、ありがとう…本当に………)
(あと、あと……そうだ……あのときの………上着の……お礼…………)
(………………ちょっと、眠いなぁ………)
(………………………………)
【A、{圏外}】