「強欲なお願い」「15Good」
良質:6票トリック:4票物語:1票納得感:4票
大学受験にご利益があるとされる神社を訪れたカメコとウミコ。
「海亀大学に合格できますようにって神様に頼んだわ。奮発して五百円玉入れたから多分届くんじゃない?そんでウミコはなんてお願いしたの?」
「そりゃもちろん私も海亀大学に合格しますように、だよ。そのためにわざわざこの神社に来たんでしょ」
「あ、あと大学で素敵な人と出会えますようにってのもお願いしたわ」
この後ウミコがカメコのお願いの内容に文句を言ったのは一体どうしてだろうか。
「海亀大学に合格できますようにって神様に頼んだわ。奮発して五百円玉入れたから多分届くんじゃない?そんでウミコはなんてお願いしたの?」
「そりゃもちろん私も海亀大学に合格しますように、だよ。そのためにわざわざこの神社に来たんでしょ」
「あ、あと大学で素敵な人と出会えますようにってのもお願いしたわ」
この後ウミコがカメコのお願いの内容に文句を言ったのは一体どうしてだろうか。
22年01月02日 16:46
【ウミガメのスープ】 [うつま]
【ウミガメのスープ】 [うつま]

あけましておめでとうございます
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「余計なお世話だよママ!」
「青い春の1ページ」「15Good」
良質:3票トリック:2票物語:4票納得感:6票
高校生のカメオは、同じクラスのカメコのことが大好きなのだが、猛烈にアタックした結果、カメコから嫌われてしまった。
「もう君の顔なんて見たくないし、名前も呼ばない。 二度と私に近づかないで」
その言葉通り、カメコは明らかにカメオを避けはじめ、事務連絡があるときですら「おい」としか呼ばなくなった。
それでも必死にカメコに対し、優しくしたりプレゼントをしたりとカメコへの想いを募らせていったカメオ。
そんなある日、カメコから「カメオ君」と呼ばれて喜んだカメオは、カメコのことを{本気で好きじゃ無い}のかもしれないと思い始めた。
一体なぜ?
「もう君の顔なんて見たくないし、名前も呼ばない。 二度と私に近づかないで」
その言葉通り、カメコは明らかにカメオを避けはじめ、事務連絡があるときですら「おい」としか呼ばなくなった。
それでも必死にカメコに対し、優しくしたりプレゼントをしたりとカメコへの想いを募らせていったカメオ。
そんなある日、カメコから「カメオ君」と呼ばれて喜んだカメオは、カメコのことを{本気で好きじゃ無い}のかもしれないと思い始めた。
一体なぜ?
22年01月08日 21:25
【ウミガメのスープ】 [ベルン]
【ウミガメのスープ】 [ベルン]
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カメコが交通事故に遭って記憶喪失という知らせがカメオの耳に届いた。
急いで病院に向かうと、カメコがベッドで横たわっていた。
「カメコちゃん! 俺だよ、カメオだよ」
「…カメオ君? 私のお友達?」
(本当に記憶喪失なのか… でも今俺、名前で呼ばれた!!! このままだとまたカメコと一緒になれるチャンスが…)
「…ごめんね、私記憶喪失になっちゃったみたいで何も思い出せないの。」
そこまで考えたところで、最愛であるはずのカメコが記憶喪失という大きな病気を抱えていることを嘆くより先に、自分のことしか考えていないことに気づいたカメオは、カメコのことが本気で好きじゃ無いのかもしれないと思った。
(カメコへの愛は、しょせん自己満足なのか… 俺なんて…)
急いで病院に向かうと、カメコがベッドで横たわっていた。
「カメコちゃん! 俺だよ、カメオだよ」
「…カメオ君? 私のお友達?」
(本当に記憶喪失なのか… でも今俺、名前で呼ばれた!!! このままだとまたカメコと一緒になれるチャンスが…)
「…ごめんね、私記憶喪失になっちゃったみたいで何も思い出せないの。」
そこまで考えたところで、最愛であるはずのカメコが記憶喪失という大きな病気を抱えていることを嘆くより先に、自分のことしか考えていないことに気づいたカメオは、カメコのことが本気で好きじゃ無いのかもしれないと思った。
(カメコへの愛は、しょせん自己満足なのか… 俺なんて…)
「後悔役に立たず」「15Good」
良質:6票トリック:1票物語:1票納得感:7票
田中邸に導入されたセキュリティシステム「ポコーン2.0」には致命的な脆弱性があることが判明した。
「ポコーン3.0」を導入すればその脆弱性はなくなり、セキュリティはより強くなるのだが、田中は導入することなく、「ポコーン2.0」を外してしまった。
何故だろう?
(スペシャルサンクス:きっとくりすさん 異邦人さん 春雨さん マクガフィンさん だだだだ3号機さん 霜ばしらさん ルーシーさん)
「ポコーン3.0」を導入すればその脆弱性はなくなり、セキュリティはより強くなるのだが、田中は導入することなく、「ポコーン2.0」を外してしまった。
何故だろう?
(スペシャルサンクス:きっとくりすさん 異邦人さん 春雨さん マクガフィンさん だだだだ3号機さん 霜ばしらさん ルーシーさん)
22年04月20日 19:28
【ウミガメのスープ】 [松神]
【ウミガメのスープ】 [松神]
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ポコーン2.0が導入された目的は屋敷に泥棒が入らないようにするためであり、さらに言えば田中邸で保管してあるとある名画を怪盗マガツミの手から守り抜くためである。しかし田中とポコーン2.0の努力も虚しくセキュリティは突破され名画はマガツミによって盗み出されてしまった。
致命的な脆弱性というのはその後、ポコーン2.0開発チームが総出で怪盗の足跡を辿りようやく見つけ出したものである。
その発見を基にポコーン2.0は改良を重ねられ、ポコーン3.0へと進化したのだが、田中にとってはそんなものはもう意味は無い。ポコーン2.0はとうに田中邸から姿を消し、開発チーム自体も田中から無能と蔑まれポコーン3.0は導入されることは無かった。
致命的な脆弱性というのはその後、ポコーン2.0開発チームが総出で怪盗の足跡を辿りようやく見つけ出したものである。
その発見を基にポコーン2.0は改良を重ねられ、ポコーン3.0へと進化したのだが、田中にとってはそんなものはもう意味は無い。ポコーン2.0はとうに田中邸から姿を消し、開発チーム自体も田中から無能と蔑まれポコーン3.0は導入されることは無かった。
「邪道プロポーズ」「15Good」
良質:6票物語:1票納得感:8票
◆◆◆
新作映画『Ankward Love』。
生真面目だがお人好しの主人公と、内気で恥ずかしがり屋な病弱ヒロインの恋愛模様を描く映画で、その感動的なストーリーと、ラストシーンにおけるヒロインの詩的で遠回しな逆プロポーズが様々な解釈を呼び、話題を集めているラブロマンスである。
◆◆◆
ある日のこと。
映画への拘りが強く、血も涙も無い辛口レビューで有名な百戦錬磨の映画批評YouTuberカメオ。
彼による、
「{最後のプロポーズのシーンは全く理解できなかった}」
という内容のレビューを見た人々が、
「{この映画は名作だ}」
と思ったのはいったいなぜ?
新作映画『Ankward Love』。
生真面目だがお人好しの主人公と、内気で恥ずかしがり屋な病弱ヒロインの恋愛模様を描く映画で、その感動的なストーリーと、ラストシーンにおけるヒロインの詩的で遠回しな逆プロポーズが様々な解釈を呼び、話題を集めているラブロマンスである。
◆◆◆
ある日のこと。
映画への拘りが強く、血も涙も無い辛口レビューで有名な百戦錬磨の映画批評YouTuberカメオ。
彼による、
「{最後のプロポーズのシーンは全く理解できなかった}」
という内容のレビューを見た人々が、
「{この映画は名作だ}」
と思ったのはいったいなぜ?
22年06月12日 22:02
【ウミガメのスープ】 [だだだだ3号機]
【ウミガメのスープ】 [だだだだ3号機]
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【簡易解説】
あの血も涙も無いカメオですら{涙で字幕が見えなくなる}ほど感動できる映画だと判断されたから。
【冗長な解説】
『Ankward Love』は{洋画}である。難解で婉曲的なセリフ回しを好むダダスリー監督によるこの映画は、その感動的なストーリーと印象的なラストシーンが全米で大きな話題を呼び、つい先日日本でも劇場公開する運びとなった。
当然ながら全編英語であるのだが、カメオは百戦錬磨の映画批評YouTuber。日常会話程度なら字幕無しでも意味が取れる程度には洋画を観ている。(とはいえあくまで「ある程度」であるため字幕を付けるが。)こと洋画に関してはできるだけ原文そのままのニュアンスで楽しみたいカメオは、『Ankward Love』も吹替版ではなく、当然{字幕版}で観ることにした。
さて、カメオはかなりドライかつ辛口であり、よくあるお涙頂戴系の映画で感動を覚えることは殆どない。至って冷静に批評する男として巷では有名であった。
しかしこの『Ankward Love』、あまりにも見事な監督の手腕と役者の名演により、全米が秒で大泣きするレベルの大傑作であった。
それでも中盤までは泣くのを堪えていたカメオであったが、ラストシーン直前でとうとう号泣してしまう。
そして…
<「{な、涙で前が見えなぁぁぁいっ!!}」>
ラストシーンのプロポーズは{表現が婉曲的}であり、詩的な言い回しが多く含まれるため、ネイティブでもなければ{字幕無しで意図を汲み取ることが難しい}。
ただでさえ難解な表現、加えて内気なヒロインの一世一代の逆プロポーズ故に、割と声量もギリッギリである。
しかしあまりの感動で号泣しているカメオの視界は{涙で滲んで}おり、字幕をまともに視認することができない。鼻をすする音で元の台詞も聞き辛い。
感動のラストシーンにもかかわらず、{ヒロインの告白の台詞の意味が全くわからない!}
仕方ないので、今度は吹き替えで観ることにしたのであった。
以下はカメオのレビューである。
『もうラストシーンは涙でマトモに字幕が見えなくてね、主人公より顔ぐちゃぐちゃにしちゃったよ。いや別に洋画は沢山観てるから字幕無しでも何となくのニュアンスはわかるんだがね、あそこのプロポーズは表現が遠回しでネイティブでもなければ翻訳が無いと全く真意が掴めないし、何よりあの詩的な愛の言葉をどう日本語訳したかというのも一種の楽しみだろうから映画評論家としてそこを疎かにするのは良くな…あっ思い出したらまたちょっと泣けてきた…あそこのヒロインの情緒エグいよね。だって逆プロポーズだぜ当初は服屋で店員さんに話しかけられて地蔵になってたあのヒロインがだよヤバくな【(中略)】初は何を考えているかわからない上に物語自体がちょっと鬱々した感じだったんだけど、段々物語が進むにつれ彼女なりの芯の強さというか気品みたいなものが観ている側にも伝わってきて最高【(中略)】っぱりこう、初デートの時に初めてちょっと良い雰囲気になるんだけど、そのときの時間帯がちょうど日が沈みかけて夕焼けの時でさ、それまで全く意識してなかった主人公が夕日に照らされたヒロインの横顔を見て少【(中略)】難病を患ってることが判明してさ、その時の告白も初デートと同じ夕焼け空の下でやるわけよ。もうここの時点で泣きそうになったよね。そんで主人公も葛藤するわけよこのまま何もしなくていいのかとか彼女のためにできること【(中略)】人公の返しも良いよね。最高にクールだった。実は救われてたのは彼女だけじゃないんだよね主人公も主人公で色々【(中略)】いや~洋画は字幕で見る派なんだが、次は吹き替えで見ることにするかな!』
こんなレビューを見た人々は「{あのカメオが涙で前が見えなくなるほど感動できるなんて、本当に凄い名作なんだ!}」と思ったとさ。
あの血も涙も無いカメオですら{涙で字幕が見えなくなる}ほど感動できる映画だと判断されたから。
【冗長な解説】
『Ankward Love』は{洋画}である。難解で婉曲的なセリフ回しを好むダダスリー監督によるこの映画は、その感動的なストーリーと印象的なラストシーンが全米で大きな話題を呼び、つい先日日本でも劇場公開する運びとなった。
当然ながら全編英語であるのだが、カメオは百戦錬磨の映画批評YouTuber。日常会話程度なら字幕無しでも意味が取れる程度には洋画を観ている。(とはいえあくまで「ある程度」であるため字幕を付けるが。)こと洋画に関してはできるだけ原文そのままのニュアンスで楽しみたいカメオは、『Ankward Love』も吹替版ではなく、当然{字幕版}で観ることにした。
さて、カメオはかなりドライかつ辛口であり、よくあるお涙頂戴系の映画で感動を覚えることは殆どない。至って冷静に批評する男として巷では有名であった。
しかしこの『Ankward Love』、あまりにも見事な監督の手腕と役者の名演により、全米が秒で大泣きするレベルの大傑作であった。
それでも中盤までは泣くのを堪えていたカメオであったが、ラストシーン直前でとうとう号泣してしまう。
そして…
<「{な、涙で前が見えなぁぁぁいっ!!}」>
ラストシーンのプロポーズは{表現が婉曲的}であり、詩的な言い回しが多く含まれるため、ネイティブでもなければ{字幕無しで意図を汲み取ることが難しい}。
ただでさえ難解な表現、加えて内気なヒロインの一世一代の逆プロポーズ故に、割と声量もギリッギリである。
しかしあまりの感動で号泣しているカメオの視界は{涙で滲んで}おり、字幕をまともに視認することができない。鼻をすする音で元の台詞も聞き辛い。
感動のラストシーンにもかかわらず、{ヒロインの告白の台詞の意味が全くわからない!}
仕方ないので、今度は吹き替えで観ることにしたのであった。
以下はカメオのレビューである。
『もうラストシーンは涙でマトモに字幕が見えなくてね、主人公より顔ぐちゃぐちゃにしちゃったよ。いや別に洋画は沢山観てるから字幕無しでも何となくのニュアンスはわかるんだがね、あそこのプロポーズは表現が遠回しでネイティブでもなければ翻訳が無いと全く真意が掴めないし、何よりあの詩的な愛の言葉をどう日本語訳したかというのも一種の楽しみだろうから映画評論家としてそこを疎かにするのは良くな…あっ思い出したらまたちょっと泣けてきた…あそこのヒロインの情緒エグいよね。だって逆プロポーズだぜ当初は服屋で店員さんに話しかけられて地蔵になってたあのヒロインがだよヤバくな【(中略)】初は何を考えているかわからない上に物語自体がちょっと鬱々した感じだったんだけど、段々物語が進むにつれ彼女なりの芯の強さというか気品みたいなものが観ている側にも伝わってきて最高【(中略)】っぱりこう、初デートの時に初めてちょっと良い雰囲気になるんだけど、そのときの時間帯がちょうど日が沈みかけて夕焼けの時でさ、それまで全く意識してなかった主人公が夕日に照らされたヒロインの横顔を見て少【(中略)】難病を患ってることが判明してさ、その時の告白も初デートと同じ夕焼け空の下でやるわけよ。もうここの時点で泣きそうになったよね。そんで主人公も葛藤するわけよこのまま何もしなくていいのかとか彼女のためにできること【(中略)】人公の返しも良いよね。最高にクールだった。実は救われてたのは彼女だけじゃないんだよね主人公も主人公で色々【(中略)】いや~洋画は字幕で見る派なんだが、次は吹き替えで見ることにするかな!』
こんなレビューを見た人々は「{あのカメオが涙で前が見えなくなるほど感動できるなんて、本当に凄い名作なんだ!}」と思ったとさ。
「ひと匙の海」「14Good」
良質:6票トリック:3票物語:5票
深夜、男は疲れきって帰宅した。
ふと空腹を覚え、何か食べようと冷蔵庫を開けると、「温めて食べてね」と書かれたメモの貼ってある皿が目に留まった。皿の中には、鮮やかなカボチャのスープが。男はしばし、それをじっと見つめていたが、やがてため息をつくと、冷蔵庫からスープを取り出し、レンジで温めてテーブルについた。
スプーンで掬い、そっと口へ運ぶ。一口啜ったそのスープはとても美味しかったのだが、男の表情は次第に曇り、それきりスプーンを置いてしまった。
男はスープに何を望んでいたのだろうか?
ふと空腹を覚え、何か食べようと冷蔵庫を開けると、「温めて食べてね」と書かれたメモの貼ってある皿が目に留まった。皿の中には、鮮やかなカボチャのスープが。男はしばし、それをじっと見つめていたが、やがてため息をつくと、冷蔵庫からスープを取り出し、レンジで温めてテーブルについた。
スプーンで掬い、そっと口へ運ぶ。一口啜ったそのスープはとても美味しかったのだが、男の表情は次第に曇り、それきりスプーンを置いてしまった。
男はスープに何を望んでいたのだろうか?
18年10月07日 21:12
【ウミガメのスープ】 [チーム対抗さん]
【ウミガメのスープ】 [チーム対抗さん]
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【解答】
妻に美味しく飲んでもらうこと
【解説】
深夜1時、男は自分の家の玄関の前に立ち尽くしていた。
ハッと自分の動作が止まっていることに気づくと、思い出したかの様に家の鍵を探し始める。家の外灯が点いていないから、玄関は真っ暗。鍵一つ見つけるのにさえ手間取ってしまう。
やっと鍵を見つけると、それを鍵穴に差し込んで無気力に捻る。ドアノブを回す時、男は何も考えてはいなかった。男は身も心も疲れ切ってしまっていた。
3時間前、男の妻が交通事故に巻き込まれ意識不明の重体となっていた。
男は大学で妻と出会った。
男は触れ合ううちに、妻の将来の仕事への情熱を理解し、自分は支える側になろうと決めた。
大学卒業後、男は専業主婦となり、そして妻が働き家計を支える生活が始まった。今まで家事全般をしてこなかった男は、一からのスタートだったが、日を追うに連れて、男は家事を段々とこなせるようになっていた。
そんなある日、男は用事があって早くから家を空けていた。大学時代の同窓会に誘われていたからだ。
会場に着くと懐かしい顔ぶれが集まっていた。
顔を合わせると近況報告などで話は盛り上がり、瞬く間に時間は過ぎていった。
夜遅くになって、二次会に参加するかどうかという話をしていると、突然男の携帯の呼び出し音が鳴り響いた。
電話は救急隊員からのものだった。
妻が仕事帰りに暴走した車に巻き込まれ重体。
男は絶句した。
病院に担ぎ込まれたが未だに意識も戻らないとのこと。急いで会場を後にして、車で病院に向かった。
男が病院に辿り着いた頃、妻が集中治療室から出てきて病室に運ばれているところだった。駆け寄って妻の名前を呼ぶ。何度も何度も呼び続ける。しかし、妻が目を覚ますことはなかった。
握っている手は暖かい。
いつかは目を覚ましてくれるのではないかと、名前を呼び続けた。
その後どれくらいの時間が経ったか、わからない。
呼び続けて喉が痛み始めたくらいのところで看護師さんが声をかけてくれた。
妻の着替えも必要だろうから、一度家に帰られてはと。
男はフラフラした足取りで病院を出た。
随分と広く見える玄関に靴を脱ぎ散らかして、リビングに倒れこむ。荷物を降ろしても、身体にのしかかる重量感が離れない。身体を仰向けにして天井を眺めていると、静かな部屋に変な音がし始める。どうやら鳴っているのは自分の腹らしい。振り返ってみれば同窓会では話に夢中で、何も口にしていなかった。何かしら腹に溜めなければと思い、立ち上がって台所に足を運ぶ。
冷蔵庫の前で立ち止まり、扉を開ける。
ふと目線を下げると、そこには思わず男の目に留まるものがあった。
背が低く冷蔵庫の中で大きく場所を占めているもの、それはスープがよそわれた皿だった。
ラップで包まれ、上には「温めて食べてね」と書かれたメモが置いてある。
その皿に、そのメモに、男は見覚えがあった。
それも当然、そのスープを作ったのは男自身に他ならないのだ。
元々、同窓会で遅れることが分かっていた男は、前もって妻の為にスープを作り置いていた。その存在をすっかり忘れていた男は、自身が調理したスープをしばらく見つめていた。
今から他のものを調理し始めたら時間がかかる上、保存料も入っていないこのスープは直ぐに腐ってしまうだろう。やがて男はため息をついてスープを取り出し、レンジで温め始めた。レンジで温める時間がこんなに長く感じたことはない。
チンという音が響く。
スープを取り出しリビングにあるテーブルに向かう。
スープを置き、スプーンを持って椅子に腰掛ける。
向かいの席に人がいないことから逃げるようにスープを覗く。
冷蔵庫の冷気に当たりすぎたのか、スープの湯気が暖かく心地よい。
メモとラップを外して、スプーンを構える。
スプーンでスープを一掬いして口に運ぶ。
そして、男はスープを味わった。
スープは美味しかった。
次第に男の表情が曇っていく。
スープを掬う度に顔が歪んでいく。
しまいには、男はスープを食べる手を止めてしまった。
スプーンを机に置くと同時に、男の感情の堰が切れた。
男は家事の中でも料理が苦手だった。
作り始めた頃の料理は美味しいとは到底言い難いものであった。
そんな料理でさえも妻は嫌な顔せず、嬉しそうな顔をして食べてくれた。
今、男は自分でも美味しいと思えるスープを作ることができた。
妻に食べさせてやりたい。
だが、本来最初に食べるはずの人が、この場にいない。
やり場のない気持ちを男は泣くことで表現するしかなかった。
男は泣いた。
ひとしきり泣くと、男はラップで再び皿を包んだ。
男はそれきり、そのスープを飲むことはなかった。
【要約】
男の愛する妻が交通事故事故に巻き込まれ、意識不明の重体に。ずっと病院にいた男は、周囲の勧めもあって一度帰宅することにした。
ふと空腹を感じて冷蔵庫を開けた男が目にしたのは、専業主夫である自分が、仕事帰りの妻のために作っておいたスープ。男はそのスープを飲もうとしたが、美味しくできたそれを本当は妻に飲んで欲しかったと思うと、それ以上はスプーンを動かせないほど、悲しみが溢れてきた。
妻に美味しく飲んでもらうこと
【解説】
深夜1時、男は自分の家の玄関の前に立ち尽くしていた。
ハッと自分の動作が止まっていることに気づくと、思い出したかの様に家の鍵を探し始める。家の外灯が点いていないから、玄関は真っ暗。鍵一つ見つけるのにさえ手間取ってしまう。
やっと鍵を見つけると、それを鍵穴に差し込んで無気力に捻る。ドアノブを回す時、男は何も考えてはいなかった。男は身も心も疲れ切ってしまっていた。
3時間前、男の妻が交通事故に巻き込まれ意識不明の重体となっていた。
男は大学で妻と出会った。
男は触れ合ううちに、妻の将来の仕事への情熱を理解し、自分は支える側になろうと決めた。
大学卒業後、男は専業主婦となり、そして妻が働き家計を支える生活が始まった。今まで家事全般をしてこなかった男は、一からのスタートだったが、日を追うに連れて、男は家事を段々とこなせるようになっていた。
そんなある日、男は用事があって早くから家を空けていた。大学時代の同窓会に誘われていたからだ。
会場に着くと懐かしい顔ぶれが集まっていた。
顔を合わせると近況報告などで話は盛り上がり、瞬く間に時間は過ぎていった。
夜遅くになって、二次会に参加するかどうかという話をしていると、突然男の携帯の呼び出し音が鳴り響いた。
電話は救急隊員からのものだった。
妻が仕事帰りに暴走した車に巻き込まれ重体。
男は絶句した。
病院に担ぎ込まれたが未だに意識も戻らないとのこと。急いで会場を後にして、車で病院に向かった。
男が病院に辿り着いた頃、妻が集中治療室から出てきて病室に運ばれているところだった。駆け寄って妻の名前を呼ぶ。何度も何度も呼び続ける。しかし、妻が目を覚ますことはなかった。
握っている手は暖かい。
いつかは目を覚ましてくれるのではないかと、名前を呼び続けた。
その後どれくらいの時間が経ったか、わからない。
呼び続けて喉が痛み始めたくらいのところで看護師さんが声をかけてくれた。
妻の着替えも必要だろうから、一度家に帰られてはと。
男はフラフラした足取りで病院を出た。
随分と広く見える玄関に靴を脱ぎ散らかして、リビングに倒れこむ。荷物を降ろしても、身体にのしかかる重量感が離れない。身体を仰向けにして天井を眺めていると、静かな部屋に変な音がし始める。どうやら鳴っているのは自分の腹らしい。振り返ってみれば同窓会では話に夢中で、何も口にしていなかった。何かしら腹に溜めなければと思い、立ち上がって台所に足を運ぶ。
冷蔵庫の前で立ち止まり、扉を開ける。
ふと目線を下げると、そこには思わず男の目に留まるものがあった。
背が低く冷蔵庫の中で大きく場所を占めているもの、それはスープがよそわれた皿だった。
ラップで包まれ、上には「温めて食べてね」と書かれたメモが置いてある。
その皿に、そのメモに、男は見覚えがあった。
それも当然、そのスープを作ったのは男自身に他ならないのだ。
元々、同窓会で遅れることが分かっていた男は、前もって妻の為にスープを作り置いていた。その存在をすっかり忘れていた男は、自身が調理したスープをしばらく見つめていた。
今から他のものを調理し始めたら時間がかかる上、保存料も入っていないこのスープは直ぐに腐ってしまうだろう。やがて男はため息をついてスープを取り出し、レンジで温め始めた。レンジで温める時間がこんなに長く感じたことはない。
チンという音が響く。
スープを取り出しリビングにあるテーブルに向かう。
スープを置き、スプーンを持って椅子に腰掛ける。
向かいの席に人がいないことから逃げるようにスープを覗く。
冷蔵庫の冷気に当たりすぎたのか、スープの湯気が暖かく心地よい。
メモとラップを外して、スプーンを構える。
スプーンでスープを一掬いして口に運ぶ。
そして、男はスープを味わった。
スープは美味しかった。
次第に男の表情が曇っていく。
スープを掬う度に顔が歪んでいく。
しまいには、男はスープを食べる手を止めてしまった。
スプーンを机に置くと同時に、男の感情の堰が切れた。
男は家事の中でも料理が苦手だった。
作り始めた頃の料理は美味しいとは到底言い難いものであった。
そんな料理でさえも妻は嫌な顔せず、嬉しそうな顔をして食べてくれた。
今、男は自分でも美味しいと思えるスープを作ることができた。
妻に食べさせてやりたい。
だが、本来最初に食べるはずの人が、この場にいない。
やり場のない気持ちを男は泣くことで表現するしかなかった。
男は泣いた。
ひとしきり泣くと、男はラップで再び皿を包んだ。
男はそれきり、そのスープを飲むことはなかった。
【要約】
男の愛する妻が交通事故事故に巻き込まれ、意識不明の重体に。ずっと病院にいた男は、周囲の勧めもあって一度帰宅することにした。
ふと空腹を感じて冷蔵庫を開けた男が目にしたのは、専業主夫である自分が、仕事帰りの妻のために作っておいたスープ。男はそのスープを飲もうとしたが、美味しくできたそれを本当は妻に飲んで欲しかったと思うと、それ以上はスプーンを動かせないほど、悲しみが溢れてきた。