みんなのGood

SCARLET ROT「11Good」
トリック:4票物語:4票納得感:3票
甘い香りを放つ「ラテハーブ」と呼ばれる赤い草は、
今やウミガメ国の一般家庭で見られる、メジャーなハーブの一種である。

そんなラテハーブブームの真っ只中、
カメコはカメオの元を訪れていた。

久しぶりに再会したカメオは、かなり痩せており、
ひと目で病気であることがわかるほどに顔色も悪い。

カメコは彼を元気づけようと「ラテハーブ」の包みを持ってきた。

彼女の記憶が確かなら、
彼は自分と同じく、このハーブが大好きなはずだ。

「…ああ、それはラテハーブ…。」

彼は鼻先に差し出された包みに顔を近づけると、眉をひそめて言葉を続けた。

「いつ嗅いでも嫌な香りだ…果実が腐ったような甘い香り…。
 そうだよ…。俺は昔からずっとラテハーブの香りが大嫌いだったんだ。」

・・・

さて、カメコが『カメオはラテハーブが大好きだ』
と誤解していたのは、一体なぜ?
22年06月29日 22:00
【ウミガメのスープ】 [るょ]



解説を見る
ウミガメ国では麻薬密売の横行により、
今や一般家庭にまで、麻薬というものが浸透しつつある。

元刑事・カメオといえば、
かつて麻薬を憎み、取り締まりに心血を注いでいた熱血刑事である。

彼が今や、麻薬中毒者に成り果てている…。
真偽を確かめるべく、我々は抜き打ちで彼の家宅捜索に向かう。

捜査にあたったのは、彼の意志を継ぐ後輩の私と、
彼の元相棒・カメコ。

「元相棒を逮捕させるのは心苦しいが、
 お前より優秀な麻薬探知犬がいないんだ。」

・・・

当日。

数人の警察官でカメオ宅を訪れ、彼を抑えている間に、
カメコに麻薬の匂いを探知させる。

その甘い香りを頼りに、
彼の荷物からあっさりと麻薬の包みを見つけ出した彼女は、
私が制止するより早く、急いで包みを彼の元へ咥えて走っていった。

…嬉しそうに、尻尾をブンブンと振り回しながら。

麻薬を見つけてカメオに報告すれば、
彼も嬉しそうに笑い、自分を褒めてくれる。

彼女にとっては、その程度の認識だったのだろう。

・・・

大粒の涙を流しながら、カメオは言った。

「いつ嗅いでも嫌な香りだ…果実が腐ったような甘い香り…。
 そうだよ…。俺は昔からずっとラテハーブの香りが大嫌いだったんだ。」

…それなのに、いつから道を間違えたんだろうな。
そう独白しながら、カメコの頭を撫でるカメオ。


事情を知っている周りの警察官は、
何も言えず、黙ってその光景を見守っていた。



【答え:】
かつて、麻薬探知犬であるカメコのパートナーだったカメオ。

ラテハーブを見つけるといつも彼に褒めてもらえる。
そして、彼もいつも嬉しそうに笑ってくれる。
きっと彼も、自分と同じでラテハーブの香りが好きなのだろう。
彼女はそう思っていたのだった。
(問題文の詳細な状況は長い解説参照)
いたづらないたずら「11Good」
良質:3票物語:8票
「20歳の誕生日おめでとう!!」
そういって娘の誕生日をお祝いする母親を見ながら、15歳の娘はそっと涙を流した。
一体どういう状況だろうか?

{※この問題には二つの解答が存在しますので、両方の解答を当てて下さい。}
それぞれを「Yes/Yes良質」や「Yes 良質!/No関係ありません」などとスラッシュ(/)で分けて解答します。
22年09月18日 21:43
【ウミガメのスープ】 [ベルン]

母親はボケていません




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【簡易解説】
解1 
余命数ヶ月の母親が、こっそりと20歳の誕生日をお祝いするビデオレターを作った。
その様子を見てしまった娘は、母親の死後が近いことを悟ってそっと涙を流した

解2
幼い頃に母親を亡くした娘。
娘は毎年誕生日の時に、母親が生前とっていたビデオレターを流していた。
しかし病気により15歳の娘も余命あとわずかとなってしまった。
もう残された時間は少ないと感じた娘は、母親のビデオレターの残りを見ることにした。


【物語風解説】

ケイコは、夫と、一人娘のショウコと幸せに暮らしていた。

しかしショウコが中学二年生になった頃、ケイコは最近身体が異常にだるいため病院に行ってみると、不治の病にかかっており、余命1年と診断された。
あまりにも突然の余命宣告に実感が湧かないまま帰宅したケイコ。
夫に相談したところ驚き、なぐさめられ、ショウコにはとりあえず余命1年ということは言わないと決めた。
しかし、日に日に自分がもうすぐ死んでしまうということがいかに怖く実感を伴ってくるようになり、ケイコはみるみるうちに元気がなくなり、娘にも心配され始めた。
「お母さん、大丈夫? 病院どうだったの?」
「…うん、大丈夫だよ、 ちょっとお仕事とか頑張りすぎたみたい。でもすぐに良くなるから」
「それ大丈夫じゃないじゃん。 ちゃんと休んで元気になってね」
「うん…」
そういって娘が愛おしくなり、溢れ出る涙を見られないように、ケイコはショウコをぎゅっと抱きしめた。
「やめてよ~ 小学生じゃないんだから!」
「…いいじゃん、たまには」

そんな日々の中、どうも母親が最近元気がなくて涙もろくなっていることをショウコは薄々気付き始めていた。

そして半年が経つ。
自分の死を受け入れ始めてきたケイコは、娘に向けてビデオレターを作ることに。
毎年娘の誕生日が来たらこのメッセージを流してもらうよう、夫に頼んでおいた。
「ショウコちゃん、16歳の誕生日おめでとう! 早いものでもう高校生ですね。


何度も泣きそうになってしまい、何度も撮り直した。
お祝いなんだから、ずっと笑顔のままでいようとしても、どうしても感極まってしまう。
10回ほど撮り直し、やっと16歳の誕生日を祝うことが出来た。

そんな調子である日の深夜、ショウコが寝た後、ケイコは20歳のビデオレターを作製した。
「ショウコちゃん、20歳の誕生日おめでとう! 
成人となったショウコちゃんはきっと綺麗で優しくて、とてもよい子のままでいるとお母さんは確信しています。 
今は大学生ですか?それとももう就職してますか?それとも…
…」
このとき、ショウコはトイレに起きていた。
そこで母親の部屋から声が聞こえるので少し覗いてみたところ、20歳の私を祝うビデオレターを撮っている姿を目撃してしまった。

お母さん…

お母さんがもうすぐ死んでしまうのだと娘の目から涙が流れおちた。
そしてそっと扉を閉め、トイレに行くのも忘れ布団に潜り、一晩中泣き続けた。










…時は流れ、ショウコは大人になり、結婚して娘をもうけた。
どんなことがあっても未来に向かって生きていて欲しい、そう願いを込めて娘にミライと名付けた。
そんな名前の通り、ミライはすくすくと元気に育っていった。

しかしミライが4歳の頃、ショウコもケイコと同じ病気にかかってしまった。遺伝的な要素も強く、いまだに治療法は確立されていない病気で同じく余命1年、とのこと。
母親とほぼ同じ状況に悲しむショウコだが、いつまでもくよくよしてはいられないと、よりいっそう娘や夫といった家族との時間を大切にした。
幸いと言っていいのかは分からないが、ミライもまだ4歳、母親がもうすぐ死んでしまうとは一切思っていない様子で、それはショウコをひどく安心させた。

そして、体が完全に動かなくなる前にと、自らも母親がしてくれた誕生日のビデオレターを作製することに。
「ミライちゃん、6歳の誕生日おめでとう! …」
やはりどうしても泣きそうになってしまう。
普段は元気でいられるふりをできているのに。
それでも笑顔を忘れないように、ミライに向けて何度も撮り直し、20歳までのビデオレターを作り終えた。

そしてショウコは32歳の生涯の幕を閉じた。
ただ、5歳のミライにとってはまだあまり実感が湧かない。
テンゴクという二度と会えないところに行ってしまったらしい。
「おかーさんはどこいっちゃったの?」
「お母さんは、遠くのところへいっちゃったの。だから、きっといつか会えるよ」
「え!そうなの?いつ?」
「…いつかはわからないけど、きっといつか。未来だよ。」
「…ミライ?」
「うん、ミライ。」
「そっか、ミライか。」
5歳にして父親が嘘をついており、自分を安心させるためだと心のどこかで分かっていたのか、ミライはそれ以上は何も聞くことはしなかった。

そうして母親がいなくなった悲しみを乗り越え、元気に大きくなっていったミライ。
ショウコの遺伝子を継いだのか、とても優しくて美人に育っていった。

が、ミライが中学二年生になった頃。
ミライも母親のショウコ、そして祖母のケイコと同じ病気にかかってしまった。
医師から告げられた余命1年という言葉を受け、中学校にも行かずずっと部屋にこもって泣いた。
そして三日三晩泣き続けたあと、部屋から出てきたミライはこう父親に告げた。
「私、残りの1年、精一杯楽しんで生きるから。」
反抗期まっただ中の娘からそのような言葉をかけられ、驚く父親。
「…あ、あぁ。」
「だから、この1年は色々なやりたいことをさしてね」
「もちろん! お前の好きなように楽しんでやれよ。 お前の人生はお前のものだ。」
「言われなくても分かってます~」
すっかり元気になったように見える娘が、いやに大人びて見えて、枯れたと思っていた涙が再び溢れそうになった。
「…じゃあとりあえず明日はお父さん仕事休むし、行きたがってた海にでも行くか!」
「うん、たまにはドライブもいいね。」

そうして1年近くが経ち、精一杯楽しみ尽くして迎えた15歳の誕生日。
病室のベッドで毎年恒例、母親のビデオレターを見ているミライ。
『ミライちゃん、15歳の誕生日おめでとう!
ついに中学三年生ですね。
高校はどこに行くか決まったかな?
受験勉強してるかな…?
いや、きっとミライちゃんのことだから誰にも言われなくとも勉強頑張っていると思います、だから受験勉強もほどほどに残りの中学生活を楽しむんだ!
ふふふ、そんなこと言われなくても楽しんでいるでしょう。
中学ではどんなことがあったのかな、お母さんいつもミライちゃんのこと見てるけど、それでも教えてくれると嬉しいな。
これから悲しいこと、辛いこともあるかもしれないけど、ミライちゃんならきっと上手く乗り越えていけると信じています。
どうぞ、これからもお元気で、また来年会いましょう。
改めて15歳のお誕生日おめでとう!』

残りの中学生活どころか人生が終わりそうになっているのに、何て母親は暢気なことをいっているんだろう。
高校なんて行けるはずがない。
ましてや受験勉強なんてしていないよ。

でも、こんな母親の動画が心に深く刺さる。
今までは毎年聴けると思っていた母親のビデオレター、今年で最後になってしまう。

…だから、ミライは父に頼んだ。
「もうすぐ私も死んじゃうから、残りのビデオレター、毎日一つずつ見せて」
「…でも…」
「ううん、もう覚悟は出来てるって言ったじゃない。あと長くて数週間で私の命は終わるの」
「そんな終わる終わるって言わない!」
「…ごめん、でもやっぱりお母さんの姿を少しでも見ておきたいの。」
「…分かった。明日から一緒に見ような。」
「ありがとう」



五日後。
毎日恒例となってきたお母さんのビデオレター鑑賞。
あれからますます元気がなくなり、体もほとんど動かなくなってしまった。
それでも、ビデオレターの時間になると目を輝かせ、ぎこちなく笑顔を見せている。
「じゃあ、いくよ。 これでお父さんが持っている最後のビデオレターだよ。」
「…うん、」

『ミライちゃん、20歳の誕生日おめでとう!
遂に成人!
早いね~~
きっととっても優しい美人さんになっているでしょう。
今頃は大学生かな?
それとももう働いているかな?
ミライちゃんが輝かしい生活を送っていると信じていますし、天国からお母さんも見ています。

二十歳ということで、これでビデオレターは最後です。
なので、ちょっとだけ昔話をさせてね。

小さかった頃のミライちゃんはとてもよい子で物分かりがよくて、人の気持ちをよく分かって行動できていたの。
これは大人になったミライちゃんにも言えることだけど、本当に優しい子なのだな、と感じています。
だから、ミライちゃんなら大丈夫だろうけど、これからもずっとその優しさを忘れずに生きて欲しいです。

さて、これから色々なことがあると思うけど、いつのまにかミライちゃんは立派な大人です。
ミライ、という名前の通り、精一杯、これからの未来を、人生を楽しんで下さい。

そしてミライちゃんが人生を終えて、いつかお母さんのところに来たときにはいっっぱいミライちゃんのお話を聞かせて欲しいな。楽しかったこと、嬉しかったこと、辛かったこと、悲しかったこと、なんでもいいです。
…恋の話なんかも聞きたいな。

ミライちゃんを産むことが出来て、ここまで大きく育ってくれて、お母さんは本当に幸せです。

本当にありがとう。』
ママ=ハハ「11Good」
良質:3票トリック:1票納得感:7票
几帳面なカメオは、毎回の昼休憩の時間に、必ずウミコからのメッセージを見る。
しかし、カメオの母がそれを手にしたが最後、ウミコからのメッセージは誰にも読まれることなくゴミ箱行きとなる。

ウミコのメッセージの内容を明らかにせよ。
22年12月18日 00:23
【ウミガメのスープ】 [こはいち]



解説を見る
【A.ウミコ<たたんでくれてありがとう❤】
クリスマスの贈り物「11Good」
良質:6票物語:1票納得感:4票
独身中年男のケンジは「今年こそ彼女が欲しい!クリスマスは彼女と二人で過ごしたい!」と毎年願っています。
そんなケンジは去年のクリスマスに、「今日はクリスマスだし、思い切って贈り物をしよう」と考えてある贈り物をしました。
この時ケンジは駅前のデパートで千円以内の買い物をしていたのですが、ケンジがクリスマスの贈り物に込めた願い事は何でしょう?
23年01月08日 21:25
【20の扉】 [わかめ]

ちょっと遅いですが記憶の新しいうちに。




解説を見る
ケンジは「今年こそ彼女が欲しい!」と毎年初詣で【五円】を賽銭箱に入れて【「ご縁」】を願っています。
そんなケンジは去年のクリスマス、買い物帰りに通った駅前の繁華街で募金箱を見て「今日はクリスマスだし、思い切って贈り物をしよう」と考えました。
ケンジは財布を取り出し、さっきの買い物で受け取ったお釣りの【九千】円を海外への募金箱に入れて【{「休戦」}】を願いました。
恩を仇で返す鶴「11Good」
良質:6票トリック:2票物語:2票納得感:1票
昔々。
ウミガメ山に亀吉という若い男が住んでいた。彼はお人好しで有名な男で、多くの人から信頼されていた。

ある冬の日のこと。
獣害に悩む麓の村民からの依頼で、ある猟師が一帯に罠を仕掛けていたのだが、その罠に1羽の鶴がかかっていた。
村に食料を買いに来ていた亀吉はたまたまその様子を見つけ、「かわいそうだ」と思い鶴を罠から逃がしてやった。

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

激しく雪が降り積もるその夜。

─────コンコンコン。

「ごめんください。」

誰かが亀吉の家を訪ねて来た。
一瞬、人伝に聞いた鶴の恩返しの話が脳裏を過った亀吉。
しかし即座に訪問者の正体が鶴ではないことに気づいた亀吉は、自衛のため家の玄関に立て掛けてあった斧を手に取った。

(…来るなら来い)

そう思い身構える。
しかしその後、「訪問者の本当の目的」に気付いた亀吉は斧を置き、この怪しい存在を家に招き入れてやることにした。


<問>

{訪問者の正体}を踏まえて、{亀吉の元を訪れた目的}を推理して欲しい。
23年01月30日 22:31
【ウミガメのスープ】 [だだだだ3号機]

前にチラッと原型を話したことがあるかもしれません。知ってる方はお口チャック!




解説を見る
【簡易解説】
鳴き声から、訪ねて来たのが女性に化けた狐であることに気づいた亀吉。「人間に化けて自分をからかいに来た」と思った亀吉だったが、「人に化けて喋れる狐が鳴き声を発する必要がない」ことから、まだ人に化けられない狐を連れており、「化かしに来たわけではない」と判断した。
そして最近起こっている獣害の内容が、「狐による食料庫荒らし」であることから、恐らくこの狐は「{厳しい冬の雪で食べ物に困っている}」と考えたお人好しの亀吉は、家に招き入れてやることにした。

{FAポイント:鳴き声と獣害の内容から「狐が食料を恵んで貰いに来た」ことを明らかにする。}


【ながいやつ】
ウミガメ山の麓にある村。
そこに住む村人達にはある悩みがあった。

村の食料庫が、よく獣に荒らされているのだ。

歯形や足跡から「犯人は恐らく山に住む狐だろう」と言われていたが、猟師が見張っているときに限って狐はなかなか出てこない。
奴らはずる賢いのだ。
現時点での被害自体は極端に多いわけではないのだが、この後どんどん悪化する可能性だってある。
業を煮やした猟師は、辺り一帯に罠を仕掛けることにしたそうだ。

ある時、食料を買いに村に来ていた亀吉は、帰りに罠にかかった鶴を助けてやった。
その夜は激しく雪が降り積もり、亀吉の住んでいる山全体が吹雪いていた。

{コンコンコン。}

「ごめんください…。」

そんな時、女性の声で亀吉の家を訪ねる者があった。
いや、厳密には女性の声の前に「コンコンコン」と狐の鳴き声が聞こえた。

一瞬人伝で聞いた鶴の恩返しの話が脳裏に過った亀吉であったが、狐の鳴き声を思い返しすぐに考えを改めた。

(狐だ。狐が俺を化かしに来たんだ。)

そう思った亀吉は鍬を持ち、ジリジリと戸に近づいていった。もし訪問者が無理やり入ってくる素振りを見せるようなら、すぐにでも斧頭で打ち据える気だった。

【(…来るなら来い)】

「……。」

「……。」

「………………。」

おかしい。入ってこない。
まるで律儀にこちらが招き入れるのを待っているようだ。
そこで亀吉は思った。

(そもそも、ずる賢い狐が鳴き声を聞かれるなんてへまをするだろうか?)

人間に化けても鳴き声をあげることがあるのか?それとも、そもそも狐であることを隠す気がないのか?まさか化けられない狐を連れているのか?なんのために???

あれこれ考えているうちに、亀吉の中で一つの思いが浮かんだ。

(こいつ、マジで俺を訪ねて来ただけなんじゃないか?)

そうだ。そもそも疑問だった。
{なぜ山に住む賢い狐が、わざわざ麓の村まで畑を荒らしに来たのか?ひょっとして、例年以上に厳しい雪のせいでこの山の食料が枯れ、比較的降雪が優しい麓村まで来るしかなかったんじゃないか?思えばさっきの鳴き声も、少し甲高かった気がする。子供がいるのか?}

可能性は高い。村の警備が強化されたもんだからとうとう畑も荒らせなくなって、食料を恵んで貰いに来たのだろう。ひょっとしたら、村で食料を買うところもこっそり見てたのかもしれない。

確証は無かった。でも、彼は亀吉。
{お人好しで有名な男である。}

斧を置き戸を開けると、そこには美しい一人の娘と─────やはり、その傍らに1匹の子狐がいた。

亀吉が二人(?)を家にあげると、狐はお礼を言いながら変身を解き、食料を恵んで欲しい旨と、その身の上をポツリポツリと話し始めた。

いつも狩りをしていた旦那に事故で先立たれ、冬を越すための食料が集められなかったこと。
例年より厳しい冬で、山の食料が殆ど枯れてしまったこと。
自分は最悪死んでも構わないが、子供だけはなんとか食わせてやりたいこと。

内容は、大方亀吉の予想通りだった。
狐が話し終わると、亀吉はゆっくりと頷き、こう言った。

「わかった。少し食料を分けてやる。」

「…いいのですか?ありがとうございます!」

「ただ、俺も裕福な方じゃねぇし、冬を越すまでずっと、ってなると厳しいだろう。」

「分かっています。2、3日分だけ分けていただければ、どこか別の住みかを探して…」

「いや、麓の村民に分けて貰おう。あそこは麓だからこっちほど雪は酷くないし、食うのにもそこまで困ってねぇはずだ。」

「しかし、私が娘に化けても、見ず知らずの人に食料を分けて頂けるでしょうか…?」

「それは俺から頼んでみるよ。多分、気前良くわけてくれるはずだ。その代わり…」


「今度、ちゃんと謝りに行くんだぞ。付いてってやるから。」


狐は何度もお礼を言って、翌日、亀吉と一緒に麓の村まで謝りに行った。
亀吉から事情を聞いた村民達は、亀吉への信頼故か、今回のことは見逃してくれたそうだ。
その後、村民たちに分けてもらった食料で、狐の親子は無事に冬を越すことができた。


以来狐の親子は山を降りてきては、時折村の畑仕事を手伝っている。最近ではすっかり村民たちと打ち解け、分けてもらった野菜を亀吉に届けたりしているようだ。

それから狐の親子はふたり仲良く、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。

めでたしめでたし。