「泣きたくなるほど嬉しい日々に」「6ブックマーク」
小さい頃からクランの花が大好きで、一度でいいからクランの花畑に行きたいと望んでいたコトミ。
しかしコトミは体が弱いため、なかなか遠くの地にしか咲かないクランの花畑に行くことが出来なかった。
それでもなんとかして連れて行きたいと、両親は、コトミの18歳の誕生日にクランの花畑に連れて行こうと決めた。
そして迎えた18歳の誕生日、両親に連れられ、コトミは念願のクランの花畑に行くことができた。
クランの花畑を初めて目にしたコトミは、涙を浮かべ、頬を緩めた。
「これがクランの花… とってもきれい…」
さて、クランの花に囲まれ、微笑むコトミの頬を伝う涙は、{嬉しさではなく、悲しみによるものである}。
一体なぜ?
しかしコトミは体が弱いため、なかなか遠くの地にしか咲かないクランの花畑に行くことが出来なかった。
それでもなんとかして連れて行きたいと、両親は、コトミの18歳の誕生日にクランの花畑に連れて行こうと決めた。
そして迎えた18歳の誕生日、両親に連れられ、コトミは念願のクランの花畑に行くことができた。
クランの花畑を初めて目にしたコトミは、涙を浮かべ、頬を緩めた。
「これがクランの花… とってもきれい…」
さて、クランの花に囲まれ、微笑むコトミの頬を伝う涙は、{嬉しさではなく、悲しみによるものである}。
一体なぜ?
22年10月03日 22:33
【ウミガメのスープ】 [ベルン]
【ウミガメのスープ】 [ベルン]
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月曜22時頃まで!
解説を見る
【簡易解説】
クランの花畑を見た夜、発作に対応できず、そのまま亡くなってしまったコトミ。
死ぬまでに見ておきたかったクランの花を見ることができたのか、その死に顔は微笑んでいた。
さて、お葬式のとき、棺の中でクランの花に囲まれて横たわるコトミを見て母親の流した涙がコトミの頬に落ち、そのまま流れていった。
【物語風解説】
コトミは少し貧しい家に、一人娘として生まれた。
念願の子供だったのもあり、両親は大変愛情をこめてコトミを育てた。
コトミもそんな両親が大好きだった。
しかし、コトミは生まれつき体が弱く、ほとんどの時間を病院で過ごしていた。
両親はそんなコトミの治療費を稼ぐため、必死になって働いていた。
そのため、コトミのそばにはいつもおばあちゃんがいて、話し相手になったり、簡単なゲームをしたり、本を読んであげたりした。
その中でもコトミが大好きだったのは、おばあちゃんの昔話。
おばあちゃんは旅がとても大好きで、色々なところに行っており、ほとんど病院から出られないコトミにとって見たことのない所の話は、とても新鮮で面白かった。
アフリカに行ってピラミッドという大きなお墓の中に入った話。
アメリカに行って今は亡きおじいちゃんと運命的な出会いをした話。
インドに行って大量のお金を盗まれた話。
この世界は色々なことで満ちあふれているというのは、コトミにとってとても魅力的だった。
その中でも特にコトミが気に入っていたのは、北欧にあるというクランの花のお話。
なんとクランは、雪の中から鮮やかな青色をした花を咲かすという。
そのためその花は、どんな辛いときでも希望を与えてくれる花だと現地では言い伝えられているらしい。
そしてその花畑は、おじいちゃんがおばあちゃんに結婚を申し込んだところでもあった。
懐かしそうに、それでいてどこか淋しそうにその話をしてくれるおばあちゃんを見ていると、コトミもクランの花畑にとっても行きたくなった。
おばあちゃんが見せてくれた、当時撮った写真の中のクランの花は、色あせているのにも関わらずコトミの瞳にとても鮮やかに映った。
私もこんな綺麗なところ、おばあちゃんの思い出の場所に行ってみたいなぁ。
コトミの口からは自然とその言葉が漏れた。
…そうだね、大きくなって、元気になったらおばあちゃんと一緒に行こうね。
おばあちゃんは笑顔でそう言った。
うん!
コトミも嬉しそうに返した。
それから約一年、おばあちゃんは病気にかかり、そのまま天国に行ってしまった。
生まれてから一番長く一緒の時間を過ごした人の死。
コトミはそれが受け入れがたく、固く心を閉ざしてしまった。
それを見た両親は、少なくとも片方はずっとコトミのそばにいてあげようと誓った。
ある日、お母さんがおばあちゃんの遺品を整理していると、コトミ、と書かれた箱が出てきた。
箱を開けると、中からはノートが一冊入っていた。
ノートを開くと、そこにはコトミと過ごした日々が日記に綴られていた。
とりとめもない日常のことばかりだったが、コトミとおばあちゃんが二人で過ごした日々が、明確に脳裏に浮かんでくるようで、お母さんの目からは涙がこぼれた。
そのままペラペラとノートをめくっていくと、中から何枚かの写真が落ちた。
ピラミッドに行ったときの写真や、おじいちゃんとのツーショット。
そして、雪の中に咲き誇るクランの花畑。
こんなにいろんなお話をしてくれたんだね...
ありがとう...
そう思いながらもお母さんは、その形見をコトミの病室に持って行った。
コトミにそれを見せると、コトミの目からは一筋の涙がこぼれ落ちた。
…そしてまた一筋。
そのノートと写真は、コトミの心を開く鍵となり、それからおばあちゃんとの思い出をコトミはゆっくりと話してくれた。
そして、おばあちゃんはもうここにはいないと知っているのに、全然実感が湧かなかったということも。
そして…
でも、最近は夢でずっとおばあちゃんが色々な話をしてくれるんだ。
…だから、もう悲しくなんてないよ。
今まで、折角そばにいてくれたのに態度悪くしてごめんね。
お母さんには、7歳になるコトミの姿が、ずいぶんと大人びて見えた。
こちらこそごめんね、お母さん、こんなにコトミのこと知らなかったなんて気付かなかった。
こんなお母さんだけど、これからもよろしくね。
…うん!
それからコトミは、お母さんやお父さんとも、生前のおばあちゃんと同じくらい心を開き、それからの入院生活を楽しそうに送り始めた。
そんなある日、お母さんは、8歳の誕生日を祝おうと、誕生日に何が欲しいかを尋ねてみた。
するとコトミは、クランの花を実際に見たいと告げた。
家があまり裕福でない上に病気の治療費がかさんでいるのを知っていたのか、滅多に欲しいものなど言わなかったコトミが求めたもの。
それは、遠くの地にしか咲かない、今は亡きおばあちゃんの思い出の地である花畑だった。
滅多に願い事を言わない娘が希望したものだったので、クランの花畑は絶対に見せようと両親は心に誓った。
…いつか絶対一緒に見ようね。ただ、今すぐにはコトミの体調もあるし、ちょっと遠い場所にあるからなぁ。
大きくなって、体調が良くなったら絶対見に行こう、約束するね。
それから十年近く経った。
コトミの病気はなかなか良くならず、いまだにクランの花畑まで連れて行くことは出来ていなかった。
もうすぐ18歳、ついに成人だな。
誕生日は何が欲しい?
…やっぱりクランの花畑が見たい
そうだよな、小さい頃からずっと言ってるもんな。
でも私の病気がっていうんでしょ?
…いや、数日病院を離れるくらいは何とか出来るか、お医者さんにもう一度尋ねてみよう
そうやって毎年のように言ってるじゃない
…はは、でも折角成人になるんだ、今年こそコトミの夢を叶えてあげたいんだ
そして何度も無理言って医者に頼んだ結果、お医者さん同行のもと、数日間の旅行をなんとか許可して貰えた。
コトミ! 今年こそクランの花畑に行けるぞ!
え! 本当に?
コトミの体調が良かったら、という条件付きだけど、サトミ先生も一緒に来てくれるんだって!
ぱぁっと満面の笑みを咲かせるコトミ。
それだけで、両親の心は温かくなった。
そして迎えた旅行前日。
コトミの体調も旅行に合わせたかのように、絶好調だった。
これなら数日病院を離れても大丈夫でしょう、という先生の言葉は、それだけでコトミと両親をとっても嬉しくさせた。
そして出発の日。
コトミは初めて日本を出た。
初めての飛行機、初めての外国、初めての景色…
初めてだらけの経験にコトミは胸を躍らせていた。
…と同時に、体には負担がとてもかかっていることにコトミは気づけていなかった。
そのまま、コトミ一行はクランの花畑のある国に到着した。
明日はついに長年の夢だった、クランの花畑。
今が満開で一番の見頃だという。
興奮とある種の緊張で、その晩はなかなか寝付けなかったコトミだが、ホテルのベッドで微睡むうちにいつのまにか翌朝になっていた。
今日、ついに、クランの花畑が見れる。
おばあちゃんの思い出の場所に行ける。
そう思うだけでワクワクしていた。
そして、母親に車椅子を押してもらいながら、クランの花畑に到着したコトミ。
実はコトミには内緒で、両親は花畑を一時間だけ貸し切りにしてもらっていた。
貸切状態に驚くカメコの目の前に広がっているのは、雪の積もる中、一面に咲き誇る青色の花。
どんなに辛いときでも希望を、幸せを運んでくれるという花。
そして、おばあちゃんとおじいちゃんの思い出の花。
クランの花畑を初めて目にしたコトミは、涙を浮かべ、笑みを浮かべた。
「これがクランの花… とってもきれい…」
車椅子からいつの間にか立ち上がり、ただただ青色の花々に見とれるコトミ。
その目からは嬉し涙が溢れていた。
「本当にクランの花畑を私、見てるのね…」
普段は観光客でいっぱいの花畑が、この一時間だけはコトミだけのものである。
心の底から喜ぶコトミを見ながら、両親も涙を流して微笑んでいる。
コトミが人生で一番見たかったもの、それを一緒に見れている。
私たちはなんて幸せなんだろう。
「コトミ、18歳の誕生日、おめでとう」
「お父さん、お母さん… ありがとう… 本当にありがとう…」
このまま時が止まってしまえばいいのに。
ずっとここにいられたらいいのに。
しかし時間は残酷で、貸し切りの一時間は一瞬で過ぎ去り、閉園時刻が訪れた。
あとはホテルに戻って、明日には飛行機で日本に帰ってしまう。
あぁ、クランの花畑は本当に綺麗だったな…
もっともっといたかったな…
そう思いを馳せながら、タクシーに揺られるコトミ。
でも本当に幸せだったな…
そんな時だった。
慣れない旅行で疲れていたのか、予期せぬ発作が起こった。
「う゛っ!!」
突然苦しみ出すコトミ。
必死に呼びかける両親。
異常に気付き、急いでタクシーを路肩に止める、言葉のほとんど通じない運転手。
鞄から発作を収める薬を取り出し、焦りつつも慣れた手つきで注射する医者。
「う゛っ げほっ げほっ」
「コトミ! 大丈夫か!?」
「コトミちゃん!」
「… うん、 げほっ 薬のおかげで大分落ち着いたみたい…」
胸をなで下ろす両親と医者。
「よかった…」
「う゛ぅ … ふぅ。。」
「いったんタクシーから降りて、そこに横になろう」
「…うん」
タクシーの外に運ばれながら、コトミは直感的に感じていた。
この発作は今までに無いほど辛いもので、
このまま自分は死んでいくことを。
「クランの花… とっても綺麗だったよ」
「…うん、綺麗だったね」
「本当に連れてきてくれてありがとう。
私のわがままを聞いてくれてありがとう」
「…」
「本当にお父さんとお母さんの元に生まれれて幸せだった」
そのままそっとコトミは息を引き取った。
その顔は、発作が起こったとは思えないほど穏やかで、口元には笑みすらたたえていた。
数日後。
特別に許可をもらい、クランの花畑から摘んで持って帰ってきたクランの花が、コトミのお葬式で大量に飾られた。
その中心で微笑む、写真の中のコトミ。
両親は改めて愛娘の死を実感したが、もはや涙は出なかった。
そしてお葬式が終わり、式場を飾っていたたくさんのクランの花がコトミの入った棺の中に全て入れられた。
クランの花に囲まれるコトミ。
その微笑みを浮かべた死に顔を見て、両親の目からは枯れたと思っていた涙が再び溢れ出してきた。
その中の一滴がコトミの頬に落ち、そのまま流れてクランの花びらに染みを作った。
どんな辛いときでも希望を運んでくれるという、幸せの花。
その見事なまでに青い花は、コトミと一緒に灰となり、天高く昇っていった。
クランの花畑を見た夜、発作に対応できず、そのまま亡くなってしまったコトミ。
死ぬまでに見ておきたかったクランの花を見ることができたのか、その死に顔は微笑んでいた。
さて、お葬式のとき、棺の中でクランの花に囲まれて横たわるコトミを見て母親の流した涙がコトミの頬に落ち、そのまま流れていった。
【物語風解説】
コトミは少し貧しい家に、一人娘として生まれた。
念願の子供だったのもあり、両親は大変愛情をこめてコトミを育てた。
コトミもそんな両親が大好きだった。
しかし、コトミは生まれつき体が弱く、ほとんどの時間を病院で過ごしていた。
両親はそんなコトミの治療費を稼ぐため、必死になって働いていた。
そのため、コトミのそばにはいつもおばあちゃんがいて、話し相手になったり、簡単なゲームをしたり、本を読んであげたりした。
その中でもコトミが大好きだったのは、おばあちゃんの昔話。
おばあちゃんは旅がとても大好きで、色々なところに行っており、ほとんど病院から出られないコトミにとって見たことのない所の話は、とても新鮮で面白かった。
アフリカに行ってピラミッドという大きなお墓の中に入った話。
アメリカに行って今は亡きおじいちゃんと運命的な出会いをした話。
インドに行って大量のお金を盗まれた話。
この世界は色々なことで満ちあふれているというのは、コトミにとってとても魅力的だった。
その中でも特にコトミが気に入っていたのは、北欧にあるというクランの花のお話。
なんとクランは、雪の中から鮮やかな青色をした花を咲かすという。
そのためその花は、どんな辛いときでも希望を与えてくれる花だと現地では言い伝えられているらしい。
そしてその花畑は、おじいちゃんがおばあちゃんに結婚を申し込んだところでもあった。
懐かしそうに、それでいてどこか淋しそうにその話をしてくれるおばあちゃんを見ていると、コトミもクランの花畑にとっても行きたくなった。
おばあちゃんが見せてくれた、当時撮った写真の中のクランの花は、色あせているのにも関わらずコトミの瞳にとても鮮やかに映った。
私もこんな綺麗なところ、おばあちゃんの思い出の場所に行ってみたいなぁ。
コトミの口からは自然とその言葉が漏れた。
…そうだね、大きくなって、元気になったらおばあちゃんと一緒に行こうね。
おばあちゃんは笑顔でそう言った。
うん!
コトミも嬉しそうに返した。
それから約一年、おばあちゃんは病気にかかり、そのまま天国に行ってしまった。
生まれてから一番長く一緒の時間を過ごした人の死。
コトミはそれが受け入れがたく、固く心を閉ざしてしまった。
それを見た両親は、少なくとも片方はずっとコトミのそばにいてあげようと誓った。
ある日、お母さんがおばあちゃんの遺品を整理していると、コトミ、と書かれた箱が出てきた。
箱を開けると、中からはノートが一冊入っていた。
ノートを開くと、そこにはコトミと過ごした日々が日記に綴られていた。
とりとめもない日常のことばかりだったが、コトミとおばあちゃんが二人で過ごした日々が、明確に脳裏に浮かんでくるようで、お母さんの目からは涙がこぼれた。
そのままペラペラとノートをめくっていくと、中から何枚かの写真が落ちた。
ピラミッドに行ったときの写真や、おじいちゃんとのツーショット。
そして、雪の中に咲き誇るクランの花畑。
こんなにいろんなお話をしてくれたんだね...
ありがとう...
そう思いながらもお母さんは、その形見をコトミの病室に持って行った。
コトミにそれを見せると、コトミの目からは一筋の涙がこぼれ落ちた。
…そしてまた一筋。
そのノートと写真は、コトミの心を開く鍵となり、それからおばあちゃんとの思い出をコトミはゆっくりと話してくれた。
そして、おばあちゃんはもうここにはいないと知っているのに、全然実感が湧かなかったということも。
そして…
でも、最近は夢でずっとおばあちゃんが色々な話をしてくれるんだ。
…だから、もう悲しくなんてないよ。
今まで、折角そばにいてくれたのに態度悪くしてごめんね。
お母さんには、7歳になるコトミの姿が、ずいぶんと大人びて見えた。
こちらこそごめんね、お母さん、こんなにコトミのこと知らなかったなんて気付かなかった。
こんなお母さんだけど、これからもよろしくね。
…うん!
それからコトミは、お母さんやお父さんとも、生前のおばあちゃんと同じくらい心を開き、それからの入院生活を楽しそうに送り始めた。
そんなある日、お母さんは、8歳の誕生日を祝おうと、誕生日に何が欲しいかを尋ねてみた。
するとコトミは、クランの花を実際に見たいと告げた。
家があまり裕福でない上に病気の治療費がかさんでいるのを知っていたのか、滅多に欲しいものなど言わなかったコトミが求めたもの。
それは、遠くの地にしか咲かない、今は亡きおばあちゃんの思い出の地である花畑だった。
滅多に願い事を言わない娘が希望したものだったので、クランの花畑は絶対に見せようと両親は心に誓った。
…いつか絶対一緒に見ようね。ただ、今すぐにはコトミの体調もあるし、ちょっと遠い場所にあるからなぁ。
大きくなって、体調が良くなったら絶対見に行こう、約束するね。
それから十年近く経った。
コトミの病気はなかなか良くならず、いまだにクランの花畑まで連れて行くことは出来ていなかった。
もうすぐ18歳、ついに成人だな。
誕生日は何が欲しい?
…やっぱりクランの花畑が見たい
そうだよな、小さい頃からずっと言ってるもんな。
でも私の病気がっていうんでしょ?
…いや、数日病院を離れるくらいは何とか出来るか、お医者さんにもう一度尋ねてみよう
そうやって毎年のように言ってるじゃない
…はは、でも折角成人になるんだ、今年こそコトミの夢を叶えてあげたいんだ
そして何度も無理言って医者に頼んだ結果、お医者さん同行のもと、数日間の旅行をなんとか許可して貰えた。
コトミ! 今年こそクランの花畑に行けるぞ!
え! 本当に?
コトミの体調が良かったら、という条件付きだけど、サトミ先生も一緒に来てくれるんだって!
ぱぁっと満面の笑みを咲かせるコトミ。
それだけで、両親の心は温かくなった。
そして迎えた旅行前日。
コトミの体調も旅行に合わせたかのように、絶好調だった。
これなら数日病院を離れても大丈夫でしょう、という先生の言葉は、それだけでコトミと両親をとっても嬉しくさせた。
そして出発の日。
コトミは初めて日本を出た。
初めての飛行機、初めての外国、初めての景色…
初めてだらけの経験にコトミは胸を躍らせていた。
…と同時に、体には負担がとてもかかっていることにコトミは気づけていなかった。
そのまま、コトミ一行はクランの花畑のある国に到着した。
明日はついに長年の夢だった、クランの花畑。
今が満開で一番の見頃だという。
興奮とある種の緊張で、その晩はなかなか寝付けなかったコトミだが、ホテルのベッドで微睡むうちにいつのまにか翌朝になっていた。
今日、ついに、クランの花畑が見れる。
おばあちゃんの思い出の場所に行ける。
そう思うだけでワクワクしていた。
そして、母親に車椅子を押してもらいながら、クランの花畑に到着したコトミ。
実はコトミには内緒で、両親は花畑を一時間だけ貸し切りにしてもらっていた。
貸切状態に驚くカメコの目の前に広がっているのは、雪の積もる中、一面に咲き誇る青色の花。
どんなに辛いときでも希望を、幸せを運んでくれるという花。
そして、おばあちゃんとおじいちゃんの思い出の花。
クランの花畑を初めて目にしたコトミは、涙を浮かべ、笑みを浮かべた。
「これがクランの花… とってもきれい…」
車椅子からいつの間にか立ち上がり、ただただ青色の花々に見とれるコトミ。
その目からは嬉し涙が溢れていた。
「本当にクランの花畑を私、見てるのね…」
普段は観光客でいっぱいの花畑が、この一時間だけはコトミだけのものである。
心の底から喜ぶコトミを見ながら、両親も涙を流して微笑んでいる。
コトミが人生で一番見たかったもの、それを一緒に見れている。
私たちはなんて幸せなんだろう。
「コトミ、18歳の誕生日、おめでとう」
「お父さん、お母さん… ありがとう… 本当にありがとう…」
このまま時が止まってしまえばいいのに。
ずっとここにいられたらいいのに。
しかし時間は残酷で、貸し切りの一時間は一瞬で過ぎ去り、閉園時刻が訪れた。
あとはホテルに戻って、明日には飛行機で日本に帰ってしまう。
あぁ、クランの花畑は本当に綺麗だったな…
もっともっといたかったな…
そう思いを馳せながら、タクシーに揺られるコトミ。
でも本当に幸せだったな…
そんな時だった。
慣れない旅行で疲れていたのか、予期せぬ発作が起こった。
「う゛っ!!」
突然苦しみ出すコトミ。
必死に呼びかける両親。
異常に気付き、急いでタクシーを路肩に止める、言葉のほとんど通じない運転手。
鞄から発作を収める薬を取り出し、焦りつつも慣れた手つきで注射する医者。
「う゛っ げほっ げほっ」
「コトミ! 大丈夫か!?」
「コトミちゃん!」
「… うん、 げほっ 薬のおかげで大分落ち着いたみたい…」
胸をなで下ろす両親と医者。
「よかった…」
「う゛ぅ … ふぅ。。」
「いったんタクシーから降りて、そこに横になろう」
「…うん」
タクシーの外に運ばれながら、コトミは直感的に感じていた。
この発作は今までに無いほど辛いもので、
このまま自分は死んでいくことを。
「クランの花… とっても綺麗だったよ」
「…うん、綺麗だったね」
「本当に連れてきてくれてありがとう。
私のわがままを聞いてくれてありがとう」
「…」
「本当にお父さんとお母さんの元に生まれれて幸せだった」
そのままそっとコトミは息を引き取った。
その顔は、発作が起こったとは思えないほど穏やかで、口元には笑みすらたたえていた。
数日後。
特別に許可をもらい、クランの花畑から摘んで持って帰ってきたクランの花が、コトミのお葬式で大量に飾られた。
その中心で微笑む、写真の中のコトミ。
両親は改めて愛娘の死を実感したが、もはや涙は出なかった。
そしてお葬式が終わり、式場を飾っていたたくさんのクランの花がコトミの入った棺の中に全て入れられた。
クランの花に囲まれるコトミ。
その微笑みを浮かべた死に顔を見て、両親の目からは枯れたと思っていた涙が再び溢れ出してきた。
その中の一滴がコトミの頬に落ち、そのまま流れてクランの花びらに染みを作った。
どんな辛いときでも希望を運んでくれるという、幸せの花。
その見事なまでに青い花は、コトミと一緒に灰となり、天高く昇っていった。
「【世界田中奇行】時をとめる中年、田中」「6ブックマーク」
現在の時刻、11時45分。
田中は指で時計の長針を押さえて針の動きを妨げている。
まもなく12時になるが、田中が長針を押さえているので、時計の時刻は11時45分のままだ。
そして12時になった時。
田中は長針から指を離して布団に飛び込んだ。
その時、田中が泣いていたのは何故?
※過去問リメイク。ピーンと来た人はそのままピーンとした状態を利用して骨盤矯正を行なってください
田中は指で時計の長針を押さえて針の動きを妨げている。
まもなく12時になるが、田中が長針を押さえているので、時計の時刻は11時45分のままだ。
そして12時になった時。
田中は長針から指を離して布団に飛び込んだ。
その時、田中が泣いていたのは何故?
※過去問リメイク。ピーンと来た人はそのままピーンとした状態を利用して骨盤矯正を行なってください
22年10月21日 00:13
【ウミガメのスープ】 [ダニー]
【ウミガメのスープ】 [ダニー]
解説を見る
大きな大きな時計塔の修理に来た田中。
この時計塔に入るのは初めてなのでワクワクしている。
なので修理に入る前に屋上に上り、そこからの眺望を楽しむ。
うーむ、いい眺め・・・
その時、突風が田中の背中を押した。
前につんのめり、何とか踏ん張るものの屋上から落ちてしまった田中。
田中は必死に手を伸ばし、時計台の長針を掴むことに成功した。
手の指でなんとか長針にしがみつく田中。
そのせいで時計の針は動かなくなった。
「た〜すけて〜!」
と田中が叫ぶと街の人たちがわらわらと時計塔の下に集まってきた。
田中の状況を見た街の人たちは各家から布団を持ち出して、田中の落下地点となるであろう場所に敷き詰め巨大なクッションを作り上げた。
その間15分ほど。田中の握力に限界がきて
「も、もうダメぇ」
という声とともに落下。
しかし街の人たちが用意してくれた布団に見事おさまり、無傷で生還することができた。
九死に一生を得た田中は、死の恐怖と無事生還できた安堵感により、涙で顔面グチョグチョになっていた。
リメイク元
http://sui-hei.net/mondai/show/18172
この時計塔に入るのは初めてなのでワクワクしている。
なので修理に入る前に屋上に上り、そこからの眺望を楽しむ。
うーむ、いい眺め・・・
その時、突風が田中の背中を押した。
前につんのめり、何とか踏ん張るものの屋上から落ちてしまった田中。
田中は必死に手を伸ばし、時計台の長針を掴むことに成功した。
手の指でなんとか長針にしがみつく田中。
そのせいで時計の針は動かなくなった。
「た〜すけて〜!」
と田中が叫ぶと街の人たちがわらわらと時計塔の下に集まってきた。
田中の状況を見た街の人たちは各家から布団を持ち出して、田中の落下地点となるであろう場所に敷き詰め巨大なクッションを作り上げた。
その間15分ほど。田中の握力に限界がきて
「も、もうダメぇ」
という声とともに落下。
しかし街の人たちが用意してくれた布団に見事おさまり、無傷で生還することができた。
九死に一生を得た田中は、死の恐怖と無事生還できた安堵感により、涙で顔面グチョグチョになっていた。
リメイク元
http://sui-hei.net/mondai/show/18172
「肌の上でスーッと伸びるうるふわ*¹クリームで愛され美肌に」「6ブックマーク」
A「『&Umi』って、Bちゃんが使ってるハンドクリーム?」
B「そう。ウミガメエキス配合のね」
A「わー!すっごくすべすべー!いいなぁ。欲しいなぁ。」
その後、優柔不断なAは「欲しいなぁ」と言いながらも暫くの間購入を迷っていた。しかし、そのハンドクリームが( )ことに気付くとすぐに購入を決めた。( )に入る言葉は何だろうか。
※キーワードが入っていて文意が合っていたら正解。
B「そう。ウミガメエキス配合のね」
A「わー!すっごくすべすべー!いいなぁ。欲しいなぁ。」
その後、優柔不断なAは「欲しいなぁ」と言いながらも暫くの間購入を迷っていた。しかし、そのハンドクリームが( )ことに気付くとすぐに購入を決めた。( )に入る言葉は何だろうか。
※キーワードが入っていて文意が合っていたら正解。
22年11月06日 12:02
【ウミガメのスープ】 [こはいち]
【ウミガメのスープ】 [こはいち]
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ジャンルミスです!20の扉です!
解説を見る
<答.テスターではない>
B「あれっ?これ、テスターじゃないね」
A「えっ!やばやば!もうこれ買うわ!」
B「Aは一度迷うと長いから逆によかったかも」
A「もう!そんなこと言って!こっちは冷や汗かいたよ〜〜」
B「あれっ?これ、テスターじゃないね」
A「えっ!やばやば!もうこれ買うわ!」
B「Aは一度迷うと長いから逆によかったかも」
A「もう!そんなこと言って!こっちは冷や汗かいたよ〜〜」
「ヘブンデナイ」「6ブックマーク」
とある宗教家の男がいた。
彼は常日頃からこう説いていた。
「魂の世界に、病気や怪我は存在しない。
天国に行けば、肉体の苦しみから解放されるのだ。」
そんな彼が、
「私が死んだら、どうかこれを私の棺桶に入れてほしい。」
と言って、死の間際に残した紙切れには、
彼のその説を否定するようなものが書かれていたという。
さて、何と書いてあった?
※同じような意味合いの内容なら正解にします。
彼は常日頃からこう説いていた。
「魂の世界に、病気や怪我は存在しない。
天国に行けば、肉体の苦しみから解放されるのだ。」
そんな彼が、
「私が死んだら、どうかこれを私の棺桶に入れてほしい。」
と言って、死の間際に残した紙切れには、
彼のその説を否定するようなものが書かれていたという。
さて、何と書いてあった?
※同じような意味合いの内容なら正解にします。
22年11月07日 00:22
【20の扉】 [るょ]
【20の扉】 [るょ]
解説を見る
昔から悩まされているこの私のひどい肩こりも。
幼い息子が事故で失くしてしまった両腕も。
天国に行けばきっと良くなることだろう。
ただ一つだけ心残りなのは、
彼が事故にあう前にプレゼントしてくれた、
あの『肩たたき券』を使ってやれなかったことだ。
ああ、私には見えるぞ。
天国で息子が嬉しそうに「手を振っている」のが見える。
(父さん、やっと肩たたきしてあげられるね!)
…と、言っているのが見える…。
例え天国に行ったとしても、
この券を使うまで、私の肩こりが治ることは決して無いだろう。
答え:
『肩たたき券』
(肩もみ券、マッサージ券などでも可)
幼い息子が事故で失くしてしまった両腕も。
天国に行けばきっと良くなることだろう。
ただ一つだけ心残りなのは、
彼が事故にあう前にプレゼントしてくれた、
あの『肩たたき券』を使ってやれなかったことだ。
ああ、私には見えるぞ。
天国で息子が嬉しそうに「手を振っている」のが見える。
(父さん、やっと肩たたきしてあげられるね!)
…と、言っているのが見える…。
例え天国に行ったとしても、
この券を使うまで、私の肩こりが治ることは決して無いだろう。
答え:
『肩たたき券』
(肩もみ券、マッサージ券などでも可)
「ダダダーウィン進化論」「6ブックマーク」
「ラテライツの森」は国内有数の大森林であり、未発見の生物も多種生息している野生動物の宝庫だ。
ここでは野生動物の保護や新種の発見を目的として、日々様々な研究者が活動を行っている。
今から20年前、「ラテライツの森」にて新種の生物の痕跡が見つかった。研究の結果、その生物は独自の進化を遂げた鳥の仲間であることが判明した。
この生物は発見者の名前を取られ、「ダダダ鳥」と名付けられている。
さてこのダダダ鳥だが、この20年の間、{飛べない鳥であるにも関わらず飛んでいる姿が報告されてきた}。
一体なぜ?
ここでは野生動物の保護や新種の発見を目的として、日々様々な研究者が活動を行っている。
今から20年前、「ラテライツの森」にて新種の生物の痕跡が見つかった。研究の結果、その生物は独自の進化を遂げた鳥の仲間であることが判明した。
この生物は発見者の名前を取られ、「ダダダ鳥」と名付けられている。
さてこのダダダ鳥だが、この20年の間、{飛べない鳥であるにも関わらず飛んでいる姿が報告されてきた}。
一体なぜ?
22年11月09日 23:22
【ウミガメのスープ】 [だだだだ3号機]
【ウミガメのスープ】 [だだだだ3号機]
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SP:異邦人さん ありがとうございました!
解説を見る
【簡易解説】
重要なパーツを欠いたまま全体骨格を再現したことで、誤った姿で復元されてしまったから。
【ながいやつ】
未だ多くの生物が発見され続ける「ラテライツの森」。豊富な生態系で有名なこの地では、定期的に化石の発掘調査も行われており、両方の保全を目的とした活動研究が盛んだ。
今からおよそ20年前、この森で新種の生物の羽毛……{の一部とおぼしき化石}が見つかった。
そのサイズと構造から生態と全身像がある程度予想され、その姿の{復元図}が学会で報告された。
羽根の形状から現代の鳥の仲間であることが明らかになったため、発見者のダダダーウィン博士の名前から、「ダダダ鳥」と命名された。
この時はまだ、彼らは自分たちの盛大な勘違いに気づいていなかった…。
少ししてから、新たに肋骨の一部の化石が見つかった。続いて特徴的な鶏冠の一部が見つかり、首の一部、肋骨の一部と続き、最終的には脚部周辺と翼以外のほぼ全てのパーツが揃った。
鶏冠の有無、胴のサイズ、首の長さ…様々な変化がありつつも、{復元図では一貫して勇猛に飛行する姿が報告されていた}。
その姿は頭部から尾羽までで15メートルを優に超えるまさに大怪鳥であり、飛行生物としては間違いなく最大級であった。
巨大でありながら軽量化による機能美を追及した姿に、人々は浪漫を感じざるを得なかった。
【{だがつい最近、残されていた脚部周辺の化石が発見された}。】
その稼働部は大変丈夫な構造となっており、また脚自体も想定より大幅に太く、長く、力強かった。
この脚部は明らかに、飛行する生き物のそれではない。
そしてとうとう「翼の化石」が見つかった時、ダダダーウィン博士は叫んだという。
<「翼ちっっっっさ!!!」>
そう、ダダダ鳥、{空を飛ばずに走っていた}。
実はこの生物、地上生活に適応する進化途中の種であった。それ故かつて空を飛んでいた時代の名残のある部位が多く、全身骨格が揃うまで誰もミスに気が付かなかったのである。骨格に見られた軽量化の工夫も、全ては高速で疾駆するための進化であったのだ。
最新の研究によれば、10m超えの巨体でありながら最高時速100kmで地上を爆走した超ド級生物だと言う。
ついに現代に復元されたダダダ鳥の本来の姿は、今までとのギャップも相まって一大センセーションを巻き起こした。
新発見の度に変化を繰り返し、古生物学の話題と人気のトップに君臨し続けたダダダ鳥。
その復元骨格は現在「ラテライツ美術館」にて一般公開されている。
貴方も一度、足を運んでみてはいかがだろうか?
『唯一生き残る種とは、変化に対応できる種である』
チャールズ・ダーウィン
重要なパーツを欠いたまま全体骨格を再現したことで、誤った姿で復元されてしまったから。
【ながいやつ】
未だ多くの生物が発見され続ける「ラテライツの森」。豊富な生態系で有名なこの地では、定期的に化石の発掘調査も行われており、両方の保全を目的とした活動研究が盛んだ。
今からおよそ20年前、この森で新種の生物の羽毛……{の一部とおぼしき化石}が見つかった。
そのサイズと構造から生態と全身像がある程度予想され、その姿の{復元図}が学会で報告された。
羽根の形状から現代の鳥の仲間であることが明らかになったため、発見者のダダダーウィン博士の名前から、「ダダダ鳥」と命名された。
この時はまだ、彼らは自分たちの盛大な勘違いに気づいていなかった…。
少ししてから、新たに肋骨の一部の化石が見つかった。続いて特徴的な鶏冠の一部が見つかり、首の一部、肋骨の一部と続き、最終的には脚部周辺と翼以外のほぼ全てのパーツが揃った。
鶏冠の有無、胴のサイズ、首の長さ…様々な変化がありつつも、{復元図では一貫して勇猛に飛行する姿が報告されていた}。
その姿は頭部から尾羽までで15メートルを優に超えるまさに大怪鳥であり、飛行生物としては間違いなく最大級であった。
巨大でありながら軽量化による機能美を追及した姿に、人々は浪漫を感じざるを得なかった。
【{だがつい最近、残されていた脚部周辺の化石が発見された}。】
その稼働部は大変丈夫な構造となっており、また脚自体も想定より大幅に太く、長く、力強かった。
この脚部は明らかに、飛行する生き物のそれではない。
そしてとうとう「翼の化石」が見つかった時、ダダダーウィン博士は叫んだという。
<「翼ちっっっっさ!!!」>
そう、ダダダ鳥、{空を飛ばずに走っていた}。
実はこの生物、地上生活に適応する進化途中の種であった。それ故かつて空を飛んでいた時代の名残のある部位が多く、全身骨格が揃うまで誰もミスに気が付かなかったのである。骨格に見られた軽量化の工夫も、全ては高速で疾駆するための進化であったのだ。
最新の研究によれば、10m超えの巨体でありながら最高時速100kmで地上を爆走した超ド級生物だと言う。
ついに現代に復元されたダダダ鳥の本来の姿は、今までとのギャップも相まって一大センセーションを巻き起こした。
新発見の度に変化を繰り返し、古生物学の話題と人気のトップに君臨し続けたダダダ鳥。
その復元骨格は現在「ラテライツ美術館」にて一般公開されている。
貴方も一度、足を運んでみてはいかがだろうか?
『唯一生き残る種とは、変化に対応できる種である』
チャールズ・ダーウィン