みんなのブックマーク

人を食った話「9ブックマーク」
【南米の奥地に住む少数民族・リバニ族には、今もなお食人の風習が残っている】……との噂がある。

噂がある、というのはつまり、リバニ族が実際に人間を食しているところを見た者は誰もいない、ということだ。いや、何も、真実を知った者は生きては彼らの集落から出られないとか、迷い込んだ旅人はことごとく襲われ喰われるので誰も近づきたがらないとか、そういう恐ろしい話ではない。

噂によるとこうだ。{リバニ族は、民族の誰かが死亡すると、その親族が集まり、死者の肉を食べ、血を飲む。これは、死者の血肉を己の身体に取り込むことで、その魂をこの世に留め、不滅のものとするという、リバニ族流の弔いの儀式である}……とのことらしい。
そして、その儀式の場には死者の親族以外は決して立ち入ることを許されない。そのため、実際の儀式の場で何が行われているのか、リバニ族以外は誰も見たことがないのだ。

{文化人類学者である私}は、リバニ族のこの噂に大いに興味を持ち、その真相を確かめるべく、フィールドワークとして彼らの住む小さな集落を訪れた。
いきなり噂のことを尋ねてもまともに答えてくれる訳がないと思った私は、とにかくまずは彼らとの交流を深めることに注力。やがて、カメルという一人の若者と親しくなった私は、彼の家に住まわせてもらえるようになった。昼はカメルの仕事――彼の仕事は主に森から資材を切り出し、それを集落の倉庫へ運ぶことだ――を手伝い、夜はカメルの家族から、リバニ族に伝わる言い伝えや昔話を収集し記録するという、学者としての本業を行う日々。カメルの家族や、その他のリバニ族からの信頼も得て、私はすっかり彼らの暮らしに溶け込んでいった。

そんな暮らしを続けることおよそ3ヶ月。{カメルの祖父・ウミスが死んだ。}
横たわるウミスの遺体と、すすり泣く彼の親族たち。そんな中、カメルは私に、「弔いの儀式を行うので、しばらく家を出ていてほしい」と伝えてきた。
私は思いきって、儀式に同席させてくれないかと尋ねたが、カメルは申し訳なさそうに首を振った。
「君が我々のことをよく知ろうとしてくれていることは嬉しく思うし、本当は儀式のことも気になっていたのだろうけれど、それを無闇に口にないようにしていたことも分かっている。僕もウミスも、君のその誠実さがとても好きだ。けれど、すまない、儀式には家族しか立ち会えない……これは我々の掟なんだ、分かってくれ」
「分かった。無理を言ってすまなかった。すぐに出て行くとするよ。外で待っているから、終わったら声をかけてくれ」
そう言うと私は、彼の家を出た。

――それから2時間程が経った後。

儀式が終わったのか、家からカメルが出てきた。
「ありがとう。おかげで儀式は無事に終わり、ウミスを弔うことが出来た。ウミスの魂は僕とともにある。彼も君に感謝しているよ。今の僕にはそれが分かる」
「礼を言うのはこちらの方だ。君たちのおかげで私は多くを知ることができた。ありがとうカメル、そしてウミス」

私はカメルと固く抱き合いながら、

 【――リバニ族が人を食うという話は、どうやら嘘のようだな。】

{と結論付けたのだった。}

さて、それは何故だか、わかるだろうか?
22年06月19日 00:58
【ウミガメのスープ】 [ブルーエール]



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カメルに家を追い出される直前。
私は、{ウミスの遺体に、極めて強力な毒物をこっそり注射しておいた。}

もしカメルや他の親族が、その遺体の肉や血を口にしようものなら、たちまち彼らはウミスの後を追うことになっていただろう。
そして、カメルは今、私と力強く抱き合っている。それが私にとっては答えだった。


「……100年くらい前までは、本当に死肉を食べていたらしいんだ」

ずいぶん後になって、カメルはそう教えてくれた。もっとも、そのときの彼は、アマゾンの奥地に暮らす少数民族ではなく、シアトルに本社を置く某巨大企業の社員という肩書きだったが。森の奥で木を運ぶだけの暮らしに飽きた彼は集落を出て、指先ひとつで世界中のあらゆる物を動かすエリート会社員へ転身したのだった。

「でも、さすがに人肉を食らうのはどうなんだという話になって、形だけ儀式を行った後、そのまま遺体を土葬するように変わったんだ。本当はそれだけの話のはずだったんだが、その直後くらいから、どこからなのか、"リバニ族が人間を喰っているらしい"って噂が広まったらしくてな。学者や作家、テレビ局なんかが入れ替わり集落に取材やら調査やらに来るようになったんだ。連中も、取材に来るだけ来てこっちには何も渡さない、ってほど無作法じゃあなかったからな、リバニ族にとっては、ちょっとした小遣い稼ぎになったわけだ。そういえば、集落でも仕事がしたいって言って、ネット回線をわざわざ引いてくれた学者がいたっけな……。ま、そういうわけだから、『人を食ってる』って誤解されたままの方が都合が良かったから、儀式の実態は秘密っていう体にして、噂をそのままにしておいたのさ」
「なるほど、そういうことだったのか。教えてくれてありがとう、カメル。やはり君は心の友だ」
そう言うと私たちは、グラスになみなみと注いだ真っ赤なワイン――これには特に何も入れていない、その必要がないから――で乾杯するのだった。
拝啓、6月のいちばん遠い場所から「9ブックマーク」
雨が降るたび机から双眼鏡を取り出して、窓の外を眺める純太郎。

噂では『【双眼鏡で女性の下着をウォッチングする変態クソヤロー】』とのことだが。

しかしレンズを一生懸命覗く姿を偶然見つけた時、
私は『これは【{生き別れた妹}】を探すため』という彼の言葉を信じることにした。

一体なぜ?

※SP:みづさん
※解説文の挿絵をくろださんに描いていただきました、お楽しみに!
※『創りだす38 ほうき星をナントヤラ』のオマージュです。
(https://late-late.jp/mondai/show/15053)
22年06月26日 22:01
【ウミガメのスープ】 [弥七]

6月の雨には、物語スープを。




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【簡易解答】
双眼鏡に押し当てた目から化粧が剥がれ、色の無い素肌が現れたことで、純太郎が透明人間であると知った。彼は雨の日に窓の外を観察することで、同じように剥がれて現れる『透明人間の家族』を探しているのだと気付いたから。






ここからいちばん遠いところは自分の背中である。
(寺山修司)










(J Kは 6月なんて 好きじゃない!)

放課後、予報はずれの雨を前に、心の一句。
毎日1時間かかるお化粧が、あっという間にぐずぐずになるのが私は嫌いだった。
そんな顔、女子高生なら誰だって見られたくないでしょう?

机に置き傘があったっけ、と教室へ戻ったとき
隣のクラスから微かな声が聞こえた。

「始めようか天体観測、ほうき星をナントヤラ〜♪…」

2分後に誰も来ないと思って、鼻歌なんか歌っている。
扉の隙間から覗くと、彼がちょうど机から『あれ』を取り出すところだった。

ああ、学校の七不思議とは言わずとも。
噂の現場を、目撃した。






ジュンタロー先輩の奇行が知れ渡ったのは、6月の梅雨入りからだった。
雨が降るたび、一生懸命双眼鏡で窓の外を観察している。

私の友達は、『双眼鏡で女性の透けた下着をウォッチングする変態クソヤロー』
だと言っていた。みんなも、たぶん、きっとそうだと。

女の敵じゃん、サイテーじゃん。
と非難轟々。でも本当にそうだろうか?

彼は意に介さないようだが、たった一度だけ「妹を探している」と弁明した。
無事に一蹴されてロリコンに昇格したけれども。

仮にそれが嘘だとして、
そんな虚言で上塗りする意味がどこにあるのか??






先輩の家族のことは、誰も知らない。
ただ母親が、小さい頃に消えてしまったのだと、聞いている。

文字通り、消えてしまったのだと。

その真実は、子供ながら「お星様になった」なんて詩的に表現する事柄なのかもしれない。
しかし机から双眼鏡を取り出す
彼の天体観測は誰の目にもロマンチックに映らなかった。

ただ、
そんなレンズを覗き込む顔に、気付いた人は他にいるのだろうか。

(なるほど、ね。)

私はみつけてしまった。
擦れて化粧が剥がれ、透明な素肌が現れた、あの目を。

「見えないものを見ようとして〜…」
彼の鼻歌は、まだ続く。






『透明人間』

がこの世に、いや目の前に存在するということ。
彼の思惑が理解されないように、
私がいま見た現実も、周囲にはわかってもらえないだろう。

そりゃあそうだ。
どちらもすべて理解してくれるのは、『同類』しかいないのだから。

…例えばそれは、彼の言う、生き別れた妹みたいな存在、とか。
私はそっと、教室の扉を開いた。
「見つかりましたか?妹さんは。」

彼が驚いたのは鼻歌を聞かれたからでも、突然背中から話しかけられたからでもない。
私の、擦れた顔のせいだ。

お互い顔を見合わせ、ひと呼吸おいて笑みが溢れる。
「ああ…しかし、どうやらいちばん遠いところにいたらしい。」

そして1番遠い場所は自分の背中なのだと兄は言った。
扉の隙間には、うっすら化粧の跡が残っている。




(おしまい)(この物語はフィクションです)
参考:『飛んだピエロ』(なかとかくみこ)
人を食っていない話「9ブックマーク」
そのレストランには、{「人肉を出す」}という噂がある。なんでも、誰も食べたことがないような旨い肉料理を出すのだが、その不思議な味わいはとても牛や豚とは思えない、もしかして……ということらしい。

自称・美食家である私は、その話を聞いて大いに興味を持ち、ある週末にそのレストランを訪れた。
早速、看板料理であるステーキを注文。程なくして料理が運ばれてきた。
ナイフで切り分け、フォークに突き刺し、口に運ぶ。
……旨い。そしてなるほど、不思議な味だ。蕩けるように柔らかいのに、確かな歯応えがある。どこか野性の荒々しさのようなものを感じさせる一方で、後味はどこまでもさっぱりと上品だ。
私は夢中になって食べ続け、あっという間に完食してしまった。

紙ナプキンで口元を拭きながら、私は考える。
確かに不思議な味だった。今まで食べたことのあるどの肉にも似ない。普通の牛や豚などでないのは間違いないだろう。怪しげな噂が立つのも頷ける……

{……が、しかし。}

 【――少なくとも、人肉を出しているというわけではなさそうだ。】

私はそう結論付けたのだった。

さて、それは何故だか、分かるだろうか?


なお、これは敢えて言うまでもないことではあるが、{私は人の肉など未だかつて一度も食べたことはない}し、当然ながらその味についても一切知らない。
22年07月17日 00:01
【ウミガメのスープ】 [ブルーエール]



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そのステーキは{骨付き}だった。

完食した後の皿には、ごろりと一本、骨が残っている。
【大きさといい形状といい、少なくとも人間のそれでないことは間違いない。】

自称・美食家であり本業は{解剖医}であるところの私は、一人そう結論付けたのだった。
食欲もしくは海水浴「9ブックマーク」
太ったことにショックを受け、頭を抱えて倒れ込んだカメコ。
たった今、彼女は何を諦めた?
22年07月25日 20:54
【20の扉】 [ルーシー]



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腹筋運動
SunahamaDeGomiesを拾わない話「9ブックマーク」
ゴミ拾いのボランティアで、
海水浴場を訪れた環境保護活動家のカメオ。

しかし、
彼はその日、殆ど一日中ずっと砂浜で貝殻を拾っていたという。

さて、一体なぜ?
22年07月27日 22:46
【ウミガメのスープ】 [るょ]

新・深夜の小ネタ集20(29日の24:00で締め)




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「相変わらずここの砂浜は汚いな…ん?」

落ちていたペットボトルのキャップを拾い上げると、妙な感触があった。

……中身が入っている…。

ひっくり返すと、可愛らしい住人が姿を現した。
ヤドカリである。

よくある話だが、こういったゴミの多い場所では、
ヤドカリがゴミを住処としていることが少なくない。

…そして、
…このゴミを回収するということは、彼の住処を奪うことと同義である。


「待っててね。すぐにキミの新居を探してくるから。」


そう言ってカメオは、代わりのヤドを探しに出かけたのだった。
はてさて、すぐに気に入る物件は見つかるのでしょうか…!?


答え:
(一日中、貝殻を拾う羽目になったのは)思っていたよりもヤドカリが頑固だったため。