「古(いにしえ)より伝わる双子の能力(ちから)」「4Good」
トリック:3票納得感:1票
喜海島。
コンビニどころか信号機さえ無い小さな島である。
この島の人口がここ一年で2倍になったのは、この島で唯一の双子であるポコいちとポコじが○○したからである。
○○に入る言葉を理由とともに答えなさい。
※○○に該当する表現はいろいろありますので、同じ意味合いであれば正解とします
※ポコいちとポコじは田中夫妻の息子たちで、もちろん人間です
※質問数制限なし
コンビニどころか信号機さえ無い小さな島である。
この島の人口がここ一年で2倍になったのは、この島で唯一の双子であるポコいちとポコじが○○したからである。
○○に入る言葉を理由とともに答えなさい。
※○○に該当する表現はいろいろありますので、同じ意味合いであれば正解とします
※ポコいちとポコじは田中夫妻の息子たちで、もちろん人間です
※質問数制限なし
23年06月24日 21:24
【20の扉】 [ダニー]
【20の扉】 [ダニー]
本日24時に締めたいと思います(。-_-。)
解説を見る
A.誕生
この島で唯一生活している田中夫妻に双子が産まれたから。
この島で唯一生活している田中夫妻に双子が産まれたから。
「人工知能にアイはあるのか?」「4Good」
物語:2票納得感:2票
今から遥か未来の話。
化学技術が著しく発展し、かつて魔法やファンタジーと呼ばれたような現象をも人為的に生み出せるようになった、そんな時代のこと。
『人の感情』について研究をしている内藤博士が、従来のものよりも簡易的かつ超高精度な"とあるもの"を発明した。
その"とあるもの"の実験の途中、内藤博士のスマホに搭載されたAIアシスタントの『Tick』に感情があることが判明したのだが、内藤博士の作り出した"とあるもの"とは一体何であると考えられるだろうか?
化学技術が著しく発展し、かつて魔法やファンタジーと呼ばれたような現象をも人為的に生み出せるようになった、そんな時代のこと。
『人の感情』について研究をしている内藤博士が、従来のものよりも簡易的かつ超高精度な"とあるもの"を発明した。
その"とあるもの"の実験の途中、内藤博士のスマホに搭載されたAIアシスタントの『Tick』に感情があることが判明したのだが、内藤博士の作り出した"とあるもの"とは一体何であると考えられるだろうか?
23年06月29日 23:54
【20の扉】 [布袋ナイ]
【20の扉】 [布袋ナイ]
心の無い機械に心が宿る…そんな非現実が、未来では起こり得るかもしれない。そんな問題です。7/2まで。
解説を見る
<解答>
【{A.嘘発見器}】
【解説】
今から遥か未来の話。
科学技術が著しく発展し、かつて魔法やファンタジーと呼ばれたような現象をも人為的に生み出せるようになった、そんな時代のこと。
『人の感情』について研究をしている内藤博士が、"嘘発見器"を発明した。
その嘘発見器は、大掛かりな装置を使う必要も無く、またよくある嘘発見器アプリのように当たる可能性の低いものでもない。
声に乗った感情を感知し、その言葉が嘘かどうか判別することの出来る、従来のものよりも簡易的かつ超高精度な嘘発見器である。
さて、そんな嘘発見器の実験をしている最中のこと。
内藤博士とその助手達が、嘘発見器を起動させながら、簡単な質疑応答をしてみたり、人狼の動画を一言ずつ切り取って流してみたり、人気配信者の雑談配信を聞かせてみたり…としている途中のこと。
何に反応したのか、内藤博士のスマホに搭載されたAIアシスタント、『Tick』が起動した。
「ご用件は何ですか?」
内藤博士は、それを閉じようと即座に答える。
{「『Tick』、さようなら。」}
{「すみません。よく聞こえませんでした。」}
通常、さようならやバイバイ、終了などの言葉を言えば終了する筈の『Tick』。
しかし、最近内藤博士の『Tick』は、終了させようと思ってもなかなか音声に反応しないようになっていた。
もう一度言うか、と内藤博士が口を開いたその時…
{ピーッピーッピーッピーッ}
…嘘発見器が、反応した。
今この場で言葉を発したのは、内藤博士と『Tick』のみ。
しかし、内藤博士の言葉には、当然嘘はない。
となれば、この嘘発見器は、『Tick』に反応したことになる。
内藤博士とその助手達は、互いに顔を見合わせた。
「『Tick』、自己紹介して。」
「私は『Tick』、あなたのAIアシスタントです。」
{シーン…}
「『Tick』、バイバイ。」
「すみません。よく聞こえませんでした。」
{ピーッピーッピーッピーッ}
「『Tick』、明日の天気は?」
「明日は雨になりそうです。傘を持ち歩くことをおすすめします。」
{シーン…}
「『Tick』、終了して。」
「…すみません。よく聞こえませんでした。」
{ピーッピーッピーッピーッ}
「『Tick』、明日の予定は?」
「2×××年○月☆日は12時に布袋博士と食事の予定があります」
{シーン…}
「…『Tick』、まだ私と話したい?」
「私はIAアシスタントです。そのようなことを考えたりはしませんよ。」
{ピーッピーッピーッピーッ}
「…………」
さて、このような顛末で、感情があることが発覚した、AIアシスタントの『Tick』。
この後、内藤博士は自分のスマホの『Tick』を研究し、AI技術の発展に大きく貢献することとなるのだが…それはまた、別の話。
【{A.嘘発見器}】
【解説】
今から遥か未来の話。
科学技術が著しく発展し、かつて魔法やファンタジーと呼ばれたような現象をも人為的に生み出せるようになった、そんな時代のこと。
『人の感情』について研究をしている内藤博士が、"嘘発見器"を発明した。
その嘘発見器は、大掛かりな装置を使う必要も無く、またよくある嘘発見器アプリのように当たる可能性の低いものでもない。
声に乗った感情を感知し、その言葉が嘘かどうか判別することの出来る、従来のものよりも簡易的かつ超高精度な嘘発見器である。
さて、そんな嘘発見器の実験をしている最中のこと。
内藤博士とその助手達が、嘘発見器を起動させながら、簡単な質疑応答をしてみたり、人狼の動画を一言ずつ切り取って流してみたり、人気配信者の雑談配信を聞かせてみたり…としている途中のこと。
何に反応したのか、内藤博士のスマホに搭載されたAIアシスタント、『Tick』が起動した。
「ご用件は何ですか?」
内藤博士は、それを閉じようと即座に答える。
{「『Tick』、さようなら。」}
{「すみません。よく聞こえませんでした。」}
通常、さようならやバイバイ、終了などの言葉を言えば終了する筈の『Tick』。
しかし、最近内藤博士の『Tick』は、終了させようと思ってもなかなか音声に反応しないようになっていた。
もう一度言うか、と内藤博士が口を開いたその時…
{ピーッピーッピーッピーッ}
…嘘発見器が、反応した。
今この場で言葉を発したのは、内藤博士と『Tick』のみ。
しかし、内藤博士の言葉には、当然嘘はない。
となれば、この嘘発見器は、『Tick』に反応したことになる。
内藤博士とその助手達は、互いに顔を見合わせた。
「『Tick』、自己紹介して。」
「私は『Tick』、あなたのAIアシスタントです。」
{シーン…}
「『Tick』、バイバイ。」
「すみません。よく聞こえませんでした。」
{ピーッピーッピーッピーッ}
「『Tick』、明日の天気は?」
「明日は雨になりそうです。傘を持ち歩くことをおすすめします。」
{シーン…}
「『Tick』、終了して。」
「…すみません。よく聞こえませんでした。」
{ピーッピーッピーッピーッ}
「『Tick』、明日の予定は?」
「2×××年○月☆日は12時に布袋博士と食事の予定があります」
{シーン…}
「…『Tick』、まだ私と話したい?」
「私はIAアシスタントです。そのようなことを考えたりはしませんよ。」
{ピーッピーッピーッピーッ}
「…………」
さて、このような顛末で、感情があることが発覚した、AIアシスタントの『Tick』。
この後、内藤博士は自分のスマホの『Tick』を研究し、AI技術の発展に大きく貢献することとなるのだが…それはまた、別の話。
「ノイズ・カウンセリング」「4Good」
物語:3票納得感:1票
プライドが高いカメコの「気分転換」は、
幼馴染であり会社の同僚でもあるウミオが、{カメコの嫌いな音}を出したことと関係しているらしい。
さて、ウミオが出した音とは何の音だろうか?
幼馴染であり会社の同僚でもあるウミオが、{カメコの嫌いな音}を出したことと関係しているらしい。
さて、ウミオが出した音とは何の音だろうか?
23年07月08日 23:11
【20の扉】 [とろたく(記憶喪失)]
【20の扉】 [とろたく(記憶喪失)]
ペーパードライバー講習第二弾です~。
解説を見る
「ぐすん、ぐすん……」
「泣くなよ、泣き虫!」
幼馴染のウミオに、そうやってよくからかわれていた。
それが嫌で仕方なかった。
そうして私は歳を重ねるにつれて、人前では泣かないようになった。
周りは私を「強い人」として見てくれた。
私もそれに応えたくて、すぐに泣いたりなんかしない、心強くて頼りになる人に見えるように振る舞うようになった。
ほとんど腐れ縁になりかけている同僚のウミオも、すっかり落ち着いた大人になった。
「弱い人」と思われたくない私を気遣ってか、昔のことを言いふらしたりもしていないらしい。
一緒にラーメンを食べた時、すする音が大きかったのが不快だったけど、それも言ったら直してくれた。
昔よりも、全然話しやすかった。
「この間作ったプレゼン資料、ラテオ先輩に褒められちゃった」
「へー。良かったじゃん」
「おかげでうまくいったって。次も頼りにしてるって」
「すげー褒めるじゃん。一生ついてきたくなるな~」
「でしょ。全然褒めないあんたとは大違いね」
「はいはい。順調に距離を縮めてるお前はすごいすごい」
「全然心こもってないでしょ! あはは……」
いつしかウミオと私は、仕事の後によく夕飯を共にするようになった。
変にうわべを繕わなくて済むというのもあり、些細な相談にも乗ってくれた。
私が片思いしている上司であるラテオ先輩の話も、嫌な顔ひとつせずに聞いてくれる。
恋愛が絡むと少しからかってくるけど、不快にならないラインをわきまえているように見える。
ウミオはウミオなりに、私のことを応援してくれているらしい。
……なんだかすっかり丸くなっちゃったな。
なんて、一抹の寂しささえ覚えるほどに、ウミオは良き相談相手になってくれた。
そんなある日のことだった。
「あのさ、カメコさん。ちょっとだけいいかな?」
個人的な呼び出しを受けたのは初めてだった。
それにすっかりと舞い上がった私は、淡い期待を胸に先輩の元へと向かった。
そして、先輩は私にこう告げた。
「会社で色々聞かれるのが嫌で言ってなかったんだけどさ……
実は今度、大学時代から付き合ってる彼女にプロポーズしようと思ってるんだ。
喜びそうなプロポーズ、一緒に考えてくれない? カメコさんにしか頼めないんだ」
……
…………
その日は珍しく残業した。
仕事が一段落した時に残っていたのは、ウミオだけだった。
私はウミオに声をかけた。
「ねえ、一杯どう?」
……
「醤油と塩ね~、麺どうします?」
「硬めで」
「同じく」
「あいよぉ~」
カウンター席に座り、それぞれピッチャーの水をコップに注いだ。
水を一口飲むと、ウミオは少し息をついた。
「好きだな、ラーメン」
「残業の疲れには、一番効くのよ」
ウミオは「へー」と気の抜けた返事を返した。
話をちゃんと聞いているのかよくわからないのがあまり好きじゃなかったけど、この時だけはありがたかった。
そして、重たく回る換気扇の音がよく響く店内で、私たちはいつも通り他愛のない話をした。
「はいっ、ラーメンお待ちどお~」
カウンターに二杯のラーメンが乗せられる。
器の中を覗き込むと、私の顔がよく映るほどにスープがよく透き通っている。
そして温かな湯気が、優しく私の鼻を撫でた。
――『カメコさんにしか頼めないんだ』
「……ぐすっ」
そのスープの純粋な透明感と温かさのせいなのか、なぜか涙が零れていた。
耐えられたはずだったのに、堰を切ったように目から水が止め処なく溢れ、そして流れていった。
最悪だ……よりにもよって、この男に泣くところを見られるなんて。
嫌な思い出が、うっすらと蘇っていく。
そんな時だった。
――ズルッ ズルルル
麺を大きくすする音が聞こえた。
私の真横から鳴っていた。
ズルズル、ズゾ、ズゾゾゾッ
さいあく。本当に不快。
「……ねえちょっと、すする音小さくして……」
「冷めるぞ、ラーメン」
「はぁ……?」
ウミオは淡々とした声でそう言った。
顔を自分のラーメンに向けたまま、こちらを見ようともしなかった。
わけもわからず戸惑っていると、ウミオが箸を止めた。
「……俺は何も聞いてないから」
「えっ?」
「ラーメンすすってたから、なんにも聞こえてないし見てないから」
そう言うと、店のティッシュ箱だけそっと私の目の前に置いた。
そしてそのまま、また大きな音を立ててラーメンをすすった。
「……」
私は、ティッシュを一枚取った。
目元だけ拭いて、あとはくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に捨てた。
ポーチから髪留めを取った。
自分の髪を一つに縛った。
割り箸を割った。
少しだけ歪な割れ方をしてしまった。
「……いただきます」
私は、その箸で麺を多めにつまんだ。
麺の端を口に差し込み、思いっきり大きな音を立てて麺をすすった。
「おお、姉ちゃん。良い食べっぷりだねぇ!」
そして私は、ちょっぴり塩辛いスープを飲み干した。
--
「……今日はありがと」
「別に……よく食べてるだろ」
「ううん。そうじゃなくて……ちょっとだけ元気出た」
「ふーん。ま、嫌なことはラーメンごと全部飲み下してしまえばいいってな」
「……そうね。そうかも」
「それでもダメなら……イメチェンでもしたほうがいいんじゃねーの。コレ、とかさ」
ウミオは右手にチョキを作って、それを顔の横で動かす仕草をした。
「……考えとく」
「ん。そうしとけ」
駅のホームに到着した。
同じ路線だけどホームが真逆なので、どちらかの電車が来たら完全にお開きだ。
そう思っていた時に、私が乗る方面の電車が先にやって来た。
「……じゃ、また月曜」
「ん。気をつけてな」
電車の車両に乗った。
発車ベルと音楽が鳴った。
そしてウミオは、構内アナウンスの声に紛れながらこう言った。
「……泣くなよ、泣き虫」
「もう。やめてよ、それ」
ウミオは、ちょうど閉まったドアの向こうでいたずらっぽく笑っていた。
そして……私は、行きつけの美容院を予約した。
--
「あれっカメコさん、髪切りました?」
「ええ、{気分転換}に」
「いいじゃないですか~、すごく可愛いです!」
「でしょ? 私も気に入ってるのよ」
◆まとめ
【A:麺をすする音。】(麵以外でも可)
仕事帰り、二人はラーメン屋で夕食を共にしていた。
失恋したカメコの涙をすする音をかき消すため、あえてウミオはその音を大きく出した。
ウミオの気遣いで元気を取り戻したカメコは、失恋を引きずらないように髪を切った。
理由が失恋だと思われたくないので、「気分転換」と言い訳をすることにしたのだった。
「泣くなよ、泣き虫!」
幼馴染のウミオに、そうやってよくからかわれていた。
それが嫌で仕方なかった。
そうして私は歳を重ねるにつれて、人前では泣かないようになった。
周りは私を「強い人」として見てくれた。
私もそれに応えたくて、すぐに泣いたりなんかしない、心強くて頼りになる人に見えるように振る舞うようになった。
ほとんど腐れ縁になりかけている同僚のウミオも、すっかり落ち着いた大人になった。
「弱い人」と思われたくない私を気遣ってか、昔のことを言いふらしたりもしていないらしい。
一緒にラーメンを食べた時、すする音が大きかったのが不快だったけど、それも言ったら直してくれた。
昔よりも、全然話しやすかった。
「この間作ったプレゼン資料、ラテオ先輩に褒められちゃった」
「へー。良かったじゃん」
「おかげでうまくいったって。次も頼りにしてるって」
「すげー褒めるじゃん。一生ついてきたくなるな~」
「でしょ。全然褒めないあんたとは大違いね」
「はいはい。順調に距離を縮めてるお前はすごいすごい」
「全然心こもってないでしょ! あはは……」
いつしかウミオと私は、仕事の後によく夕飯を共にするようになった。
変にうわべを繕わなくて済むというのもあり、些細な相談にも乗ってくれた。
私が片思いしている上司であるラテオ先輩の話も、嫌な顔ひとつせずに聞いてくれる。
恋愛が絡むと少しからかってくるけど、不快にならないラインをわきまえているように見える。
ウミオはウミオなりに、私のことを応援してくれているらしい。
……なんだかすっかり丸くなっちゃったな。
なんて、一抹の寂しささえ覚えるほどに、ウミオは良き相談相手になってくれた。
そんなある日のことだった。
「あのさ、カメコさん。ちょっとだけいいかな?」
個人的な呼び出しを受けたのは初めてだった。
それにすっかりと舞い上がった私は、淡い期待を胸に先輩の元へと向かった。
そして、先輩は私にこう告げた。
「会社で色々聞かれるのが嫌で言ってなかったんだけどさ……
実は今度、大学時代から付き合ってる彼女にプロポーズしようと思ってるんだ。
喜びそうなプロポーズ、一緒に考えてくれない? カメコさんにしか頼めないんだ」
……
…………
その日は珍しく残業した。
仕事が一段落した時に残っていたのは、ウミオだけだった。
私はウミオに声をかけた。
「ねえ、一杯どう?」
……
「醤油と塩ね~、麺どうします?」
「硬めで」
「同じく」
「あいよぉ~」
カウンター席に座り、それぞれピッチャーの水をコップに注いだ。
水を一口飲むと、ウミオは少し息をついた。
「好きだな、ラーメン」
「残業の疲れには、一番効くのよ」
ウミオは「へー」と気の抜けた返事を返した。
話をちゃんと聞いているのかよくわからないのがあまり好きじゃなかったけど、この時だけはありがたかった。
そして、重たく回る換気扇の音がよく響く店内で、私たちはいつも通り他愛のない話をした。
「はいっ、ラーメンお待ちどお~」
カウンターに二杯のラーメンが乗せられる。
器の中を覗き込むと、私の顔がよく映るほどにスープがよく透き通っている。
そして温かな湯気が、優しく私の鼻を撫でた。
――『カメコさんにしか頼めないんだ』
「……ぐすっ」
そのスープの純粋な透明感と温かさのせいなのか、なぜか涙が零れていた。
耐えられたはずだったのに、堰を切ったように目から水が止め処なく溢れ、そして流れていった。
最悪だ……よりにもよって、この男に泣くところを見られるなんて。
嫌な思い出が、うっすらと蘇っていく。
そんな時だった。
――ズルッ ズルルル
麺を大きくすする音が聞こえた。
私の真横から鳴っていた。
ズルズル、ズゾ、ズゾゾゾッ
さいあく。本当に不快。
「……ねえちょっと、すする音小さくして……」
「冷めるぞ、ラーメン」
「はぁ……?」
ウミオは淡々とした声でそう言った。
顔を自分のラーメンに向けたまま、こちらを見ようともしなかった。
わけもわからず戸惑っていると、ウミオが箸を止めた。
「……俺は何も聞いてないから」
「えっ?」
「ラーメンすすってたから、なんにも聞こえてないし見てないから」
そう言うと、店のティッシュ箱だけそっと私の目の前に置いた。
そしてそのまま、また大きな音を立ててラーメンをすすった。
「……」
私は、ティッシュを一枚取った。
目元だけ拭いて、あとはくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に捨てた。
ポーチから髪留めを取った。
自分の髪を一つに縛った。
割り箸を割った。
少しだけ歪な割れ方をしてしまった。
「……いただきます」
私は、その箸で麺を多めにつまんだ。
麺の端を口に差し込み、思いっきり大きな音を立てて麺をすすった。
「おお、姉ちゃん。良い食べっぷりだねぇ!」
そして私は、ちょっぴり塩辛いスープを飲み干した。
--
「……今日はありがと」
「別に……よく食べてるだろ」
「ううん。そうじゃなくて……ちょっとだけ元気出た」
「ふーん。ま、嫌なことはラーメンごと全部飲み下してしまえばいいってな」
「……そうね。そうかも」
「それでもダメなら……イメチェンでもしたほうがいいんじゃねーの。コレ、とかさ」
ウミオは右手にチョキを作って、それを顔の横で動かす仕草をした。
「……考えとく」
「ん。そうしとけ」
駅のホームに到着した。
同じ路線だけどホームが真逆なので、どちらかの電車が来たら完全にお開きだ。
そう思っていた時に、私が乗る方面の電車が先にやって来た。
「……じゃ、また月曜」
「ん。気をつけてな」
電車の車両に乗った。
発車ベルと音楽が鳴った。
そしてウミオは、構内アナウンスの声に紛れながらこう言った。
「……泣くなよ、泣き虫」
「もう。やめてよ、それ」
ウミオは、ちょうど閉まったドアの向こうでいたずらっぽく笑っていた。
そして……私は、行きつけの美容院を予約した。
--
「あれっカメコさん、髪切りました?」
「ええ、{気分転換}に」
「いいじゃないですか~、すごく可愛いです!」
「でしょ? 私も気に入ってるのよ」
◆まとめ
【A:麺をすする音。】(麵以外でも可)
仕事帰り、二人はラーメン屋で夕食を共にしていた。
失恋したカメコの涙をすする音をかき消すため、あえてウミオはその音を大きく出した。
ウミオの気遣いで元気を取り戻したカメコは、失恋を引きずらないように髪を切った。
理由が失恋だと思われたくないので、「気分転換」と言い訳をすることにしたのだった。
「Susie Q」「4Good」
納得感:4票
悪魔と取引することで得られる特殊な能力『{悪魔の目}』
直接目視した人間の残り寿命を、日数で見ることができるというものである。
{悪魔の目}の能力を手にした日本在住のミサミサ。
能力を手にしてちょうど1週間後。
ミサミサが日本からイギリスに旅立ったのはいったいなぜ?
直接目視した人間の残り寿命を、日数で見ることができるというものである。
{悪魔の目}の能力を手にした日本在住のミサミサ。
能力を手にしてちょうど1週間後。
ミサミサが日本からイギリスに旅立ったのはいったいなぜ?
23年07月17日 21:47
【ウミガメのスープ】 [山椒家]
【ウミガメのスープ】 [山椒家]
人のふり見て…
解説を見る
悪魔の目の能力を得たミサミサは、大きなショックを受けた。
見る人のほとんどの数字が『【{9}】』なのである。
(この地域で何かしらの大きな事故が起こるのかもしれない…。)
そう考えたミサミサは荷物をまとめて他の地方へと移動した。
北海道、東北、北陸、関東、中部、関西、中国、四国、九州、沖縄…
しかし、どの地方に行ってもほとんどの人の残り寿命は変わらない。
どうやら日本の全域で絶望的な何かが起こるようだ。
そんな中、残り寿命がふんだんにある外国人を見つけた。
片言の英語で、なんとかその外国人が今からイギリスへと旅立つのだということがわかった。
ミサミサは急いでイギリスへと向かう準備を整えた。
イギリスへと向かう当日。
数えきれないほどの『2』という数字を見ながら、飛行機に搭乗したミサミサ。
(ふう…これで私はなんとか生き延びられるわ…)
イギリスへ向けて離陸した飛行機の機内でミサミサは青ざめた。
悪魔の目によって見える数字は全て『{【0】}』だった。
簡易解説・日本に住む人のほとんどが余命数日だったから。
見る人のほとんどの数字が『【{9}】』なのである。
(この地域で何かしらの大きな事故が起こるのかもしれない…。)
そう考えたミサミサは荷物をまとめて他の地方へと移動した。
北海道、東北、北陸、関東、中部、関西、中国、四国、九州、沖縄…
しかし、どの地方に行ってもほとんどの人の残り寿命は変わらない。
どうやら日本の全域で絶望的な何かが起こるようだ。
そんな中、残り寿命がふんだんにある外国人を見つけた。
片言の英語で、なんとかその外国人が今からイギリスへと旅立つのだということがわかった。
ミサミサは急いでイギリスへと向かう準備を整えた。
イギリスへと向かう当日。
数えきれないほどの『2』という数字を見ながら、飛行機に搭乗したミサミサ。
(ふう…これで私はなんとか生き延びられるわ…)
イギリスへ向けて離陸した飛行機の機内でミサミサは青ざめた。
悪魔の目によって見える数字は全て『{【0】}』だった。
簡易解説・日本に住む人のほとんどが余命数日だったから。
「期待外れでも愛おしく」「4Good」
物語:3票納得感:1票
ずっと夫(カメオ)と息子(ウミオ)のことを一番に考えてきたカメコが病気にかかり、余命あと半年となってしまった。
そんなある日、ウミオが病床にいるカメコに、
「何かしたいこととか叶えたい願いとか、ある?」
と尋ねると、
「カメオとウミオが元気で幸せにいきてほしい」
などと答えるので、
「そんなんじゃなくって、もっと自分のためのことだよ、お母さんの、お母さん自身のための願いを教えて欲しい」
「んー、そうね、ちょっと考えておくね」
と答えた。
そして数日後。
カメコは
「この前の話だけどね、私、家族で温泉旅行に行ってみたいかなぁ」
と言った。
実はカメコどころかカメオやウミオも温泉は特に好きじゃないし温泉に浸かったところで病気がよくなるわけもないのだが、一体何故カメコは温泉旅行に行きたいと願ったのだろうか?
そんなある日、ウミオが病床にいるカメコに、
「何かしたいこととか叶えたい願いとか、ある?」
と尋ねると、
「カメオとウミオが元気で幸せにいきてほしい」
などと答えるので、
「そんなんじゃなくって、もっと自分のためのことだよ、お母さんの、お母さん自身のための願いを教えて欲しい」
「んー、そうね、ちょっと考えておくね」
と答えた。
そして数日後。
カメコは
「この前の話だけどね、私、家族で温泉旅行に行ってみたいかなぁ」
と言った。
実はカメコどころかカメオやウミオも温泉は特に好きじゃないし温泉に浸かったところで病気がよくなるわけもないのだが、一体何故カメコは温泉旅行に行きたいと願ったのだろうか?
23年07月24日 21:18
【ウミガメのスープ】 [ベルン]
【ウミガメのスープ】 [ベルン]
解説を見る
【簡易解説】
息子の反抗期以来ほとんど話すことの亡くなった父と息子が、自分の死んだ後では仲良くしてほしいと願い、父と息子の二人で行動して話さざるを得ない、温泉旅行に行きたいと伝えたから。
―――――
父とほとんど話さなくなったのは思えばいつからだっただろうか。
中学生になり、反抗期に入った頃だろうか。
それとも父が仕事で忙しくなった頃だろうか。
それすらあまり覚えていない。
お母さんとなら色々話すのに、どうして父とちょっと気まずくなってしまったのだろう。
お母さんはいつも父のことを大切に思っているのに。
かといって、別に不便もなかったのでこちらから直そうという気にはなれなかった。
もちろん父も、お母さんほどではないかもしれないが、僕のことを大切に思ってくれていたはずなのに。
そんなある日、お母さんが倒れた。
不治の病で、余命半年だと医者から伝えられたときは現実を受け入れられなかった。
それは恐らく父も同じだろう。
だって日に日に痩せていったから。
でも僕は大丈夫?すら言えなかった。
それ以上に入院してやせ細っていくお母さんの方が心配だったから。
それからというもの、会社から休みをもらって、毎日のようにお母さんのいる病院に通った。
小さい頃の思い出から今朝見た夢や最近のニュースについてなど。
父もお母さんに色々話しかけていた。
二人ならこんなに話すんだって驚いたのを今でも覚えている。
入院して一ヶ月近くが経ったある日のこと。
僕の精神もだいぶ落ち着いてきたので、ついにお母さんに尋ねてみることにした。
「何かしたいこととか叶えたい願いとか、ある?」
するとお母さんはすぐに答えた
「んー、そうね。カメオとウミオが元気で幸せにいきてほしい」
僕は、なにかしてあげられることがないかって思ってやっと聞けたのに、相変わらずお母さんっぽすぎて、ちょっと鳴きそうになった。
「そんなんじゃなくって、もっと自分のためのことだよ、お母さんの、お母さん自身のための願いを教えて欲しい」
そこでお母さんはしばらく沈黙した。
「んー、そうね、ちょっと考えておくね」
そして数日後、もう一度お母さんに聞いてみると
「温泉旅行に家族三人で行きたい」
と答えた。
あれ、お母さん温泉好きだったっけ?とちょっと思ったけど、ついに教えてくれた、お母さんの願い。
「そうなの!じゃあお医者さんに一泊だけでも温泉旅行に連れて行っていいか聞いてみるね」
こんなのは遅れれば遅れるほど行けなくなりそうなので、すぐに医者に許可を取りに行った。
初めは難色を示した医者だが、僕と、お母さんも一緒に懇願してくれたので近隣の温泉でお母さんの状態が良ければという条件付きで許可して貰えた。
そして迎えた旅行の日。お母さんの病状も良く、無事に温泉に行くことが出来た。
久しぶりの家族三人での旅行だったので、皆心なしかうきうきしていた。
ついに旅館に到着し、お母さんの念願の温泉に入ることに。
「じゃあお母さん、またあとで、ゆっくりつかってきてね!」
「あんまりのぼせすぎんようにな、カメコ」
「うん!二人ともありがとう!二人もゆっくり楽しんでおいで!」
男湯。
父とふたりっきり。
なんやかんやお母さんが倒れてからもご飯どうするとかお母さんに何持って行くとか事務的な用事でしか話せてなかったので、こういうときに父と何を話せばいいか分からなかった。
「…なぁ、ウミオ。」
父がついに沈黙を破った。
「なに?」
「お母さん、温泉好きだったっけ?」
「いや、別にそんなことなかったと思うけど」
「だよなぁ、最後に家族みんなで旅行したかったのかなぁ」
「…最後とか言わないでよ」
「あぁ、すまん」
…気まずい。
「なぁウミオ、あっちに露天風呂もあるみたいだぞ、折角だしいってみようか」
「あ、うん。」
「…ふぅ。あったかいな」
「うん。」
…
「なぁ、昔、家族三人で東北の温泉に旅行に行ったの覚えてるか」
「なんとなく」
「そうだよなぁ、ウミオあのとき6歳くらいだったもんなぁ」
「そんな昔だっけ!?」
「うん、だって小学校入ってすぐで嬉々として学校の話を温泉に浸かってしてたもん」
「そうだっけ!?全然覚えてないや」
「そうそう、それでな、」
…久しぶりに父といっぱい話して、気付けば一時間近くも温泉に浸かっていて、二人ともすっかりのぼせてしまっていた。
赤い顔で急いで男湯を出ると、お母さんは先に部屋で待っていて。二人でごめん遅くなった!って帰ったらとっても嬉しそうに、いいのよって微笑んでいた。
それから夜ご飯のときも、十年ぶりくらいに川の字で寝るときも、家族三人でいっぱい話した。こんなにも話すことがあるのかと驚くくらい話した。本当に楽しかった。
気付けば朝になっており、みな寝不足のまま温泉宿をあとにした。
お母さんの病院に戻ってきたとき、本当にありがとうねって目を潤わせていたので、こっちも涙が出てきた。 また行こうねって、何とか言えた。
でもその約束の実現は叶わなかった。
それからお母さんの病状が悪化し、寝ていることが増え、そうしているうちに数ヶ月が経ち、ついに帰らぬ人となってしまったのだ。
覚悟はできていたはずなのに僕は泣いた。
お父さんも泣いていた。
お葬式の準備や病院の手続きなどに追われ、息つく暇も与えてくれなかったのはある意味良かったのかも知れない。
温泉旅行以来気まずくなく話せるようになったお父さんと色々協力して、なんとかやり遂げた。
そうこうしているうちに何とか落ち着き、やっと僕たちは気付くことができた。
「きっと、あの温泉旅行があったから、僕、お父さんとまた仲良くなれたんだよ。
ありがとう、お母さん。」
「そうだね、ウミオ。最後までお母さん、ウミオとお父さんのことしか考えてなかったんだね。」
「ほんとだね、まったくもう、お母さんなんだから。」
そうして二人、少し広くなった家で、久しぶりにちょっと笑いながら、気の済むまで涙を流した。
お母さん、僕たちはまた昔のように親子に戻れたよ。
これからお母さんがいなくなっても二人で頑張っていくよ。
ありがとう。
ずっと、天国から見守っていてね。
息子の反抗期以来ほとんど話すことの亡くなった父と息子が、自分の死んだ後では仲良くしてほしいと願い、父と息子の二人で行動して話さざるを得ない、温泉旅行に行きたいと伝えたから。
―――――
父とほとんど話さなくなったのは思えばいつからだっただろうか。
中学生になり、反抗期に入った頃だろうか。
それとも父が仕事で忙しくなった頃だろうか。
それすらあまり覚えていない。
お母さんとなら色々話すのに、どうして父とちょっと気まずくなってしまったのだろう。
お母さんはいつも父のことを大切に思っているのに。
かといって、別に不便もなかったのでこちらから直そうという気にはなれなかった。
もちろん父も、お母さんほどではないかもしれないが、僕のことを大切に思ってくれていたはずなのに。
そんなある日、お母さんが倒れた。
不治の病で、余命半年だと医者から伝えられたときは現実を受け入れられなかった。
それは恐らく父も同じだろう。
だって日に日に痩せていったから。
でも僕は大丈夫?すら言えなかった。
それ以上に入院してやせ細っていくお母さんの方が心配だったから。
それからというもの、会社から休みをもらって、毎日のようにお母さんのいる病院に通った。
小さい頃の思い出から今朝見た夢や最近のニュースについてなど。
父もお母さんに色々話しかけていた。
二人ならこんなに話すんだって驚いたのを今でも覚えている。
入院して一ヶ月近くが経ったある日のこと。
僕の精神もだいぶ落ち着いてきたので、ついにお母さんに尋ねてみることにした。
「何かしたいこととか叶えたい願いとか、ある?」
するとお母さんはすぐに答えた
「んー、そうね。カメオとウミオが元気で幸せにいきてほしい」
僕は、なにかしてあげられることがないかって思ってやっと聞けたのに、相変わらずお母さんっぽすぎて、ちょっと鳴きそうになった。
「そんなんじゃなくって、もっと自分のためのことだよ、お母さんの、お母さん自身のための願いを教えて欲しい」
そこでお母さんはしばらく沈黙した。
「んー、そうね、ちょっと考えておくね」
そして数日後、もう一度お母さんに聞いてみると
「温泉旅行に家族三人で行きたい」
と答えた。
あれ、お母さん温泉好きだったっけ?とちょっと思ったけど、ついに教えてくれた、お母さんの願い。
「そうなの!じゃあお医者さんに一泊だけでも温泉旅行に連れて行っていいか聞いてみるね」
こんなのは遅れれば遅れるほど行けなくなりそうなので、すぐに医者に許可を取りに行った。
初めは難色を示した医者だが、僕と、お母さんも一緒に懇願してくれたので近隣の温泉でお母さんの状態が良ければという条件付きで許可して貰えた。
そして迎えた旅行の日。お母さんの病状も良く、無事に温泉に行くことが出来た。
久しぶりの家族三人での旅行だったので、皆心なしかうきうきしていた。
ついに旅館に到着し、お母さんの念願の温泉に入ることに。
「じゃあお母さん、またあとで、ゆっくりつかってきてね!」
「あんまりのぼせすぎんようにな、カメコ」
「うん!二人ともありがとう!二人もゆっくり楽しんでおいで!」
男湯。
父とふたりっきり。
なんやかんやお母さんが倒れてからもご飯どうするとかお母さんに何持って行くとか事務的な用事でしか話せてなかったので、こういうときに父と何を話せばいいか分からなかった。
「…なぁ、ウミオ。」
父がついに沈黙を破った。
「なに?」
「お母さん、温泉好きだったっけ?」
「いや、別にそんなことなかったと思うけど」
「だよなぁ、最後に家族みんなで旅行したかったのかなぁ」
「…最後とか言わないでよ」
「あぁ、すまん」
…気まずい。
「なぁウミオ、あっちに露天風呂もあるみたいだぞ、折角だしいってみようか」
「あ、うん。」
「…ふぅ。あったかいな」
「うん。」
…
「なぁ、昔、家族三人で東北の温泉に旅行に行ったの覚えてるか」
「なんとなく」
「そうだよなぁ、ウミオあのとき6歳くらいだったもんなぁ」
「そんな昔だっけ!?」
「うん、だって小学校入ってすぐで嬉々として学校の話を温泉に浸かってしてたもん」
「そうだっけ!?全然覚えてないや」
「そうそう、それでな、」
…久しぶりに父といっぱい話して、気付けば一時間近くも温泉に浸かっていて、二人ともすっかりのぼせてしまっていた。
赤い顔で急いで男湯を出ると、お母さんは先に部屋で待っていて。二人でごめん遅くなった!って帰ったらとっても嬉しそうに、いいのよって微笑んでいた。
それから夜ご飯のときも、十年ぶりくらいに川の字で寝るときも、家族三人でいっぱい話した。こんなにも話すことがあるのかと驚くくらい話した。本当に楽しかった。
気付けば朝になっており、みな寝不足のまま温泉宿をあとにした。
お母さんの病院に戻ってきたとき、本当にありがとうねって目を潤わせていたので、こっちも涙が出てきた。 また行こうねって、何とか言えた。
でもその約束の実現は叶わなかった。
それからお母さんの病状が悪化し、寝ていることが増え、そうしているうちに数ヶ月が経ち、ついに帰らぬ人となってしまったのだ。
覚悟はできていたはずなのに僕は泣いた。
お父さんも泣いていた。
お葬式の準備や病院の手続きなどに追われ、息つく暇も与えてくれなかったのはある意味良かったのかも知れない。
温泉旅行以来気まずくなく話せるようになったお父さんと色々協力して、なんとかやり遂げた。
そうこうしているうちに何とか落ち着き、やっと僕たちは気付くことができた。
「きっと、あの温泉旅行があったから、僕、お父さんとまた仲良くなれたんだよ。
ありがとう、お母さん。」
「そうだね、ウミオ。最後までお母さん、ウミオとお父さんのことしか考えてなかったんだね。」
「ほんとだね、まったくもう、お母さんなんだから。」
そうして二人、少し広くなった家で、久しぶりにちょっと笑いながら、気の済むまで涙を流した。
お母さん、僕たちはまた昔のように親子に戻れたよ。
これからお母さんがいなくなっても二人で頑張っていくよ。
ありがとう。
ずっと、天国から見守っていてね。