みんなのGood

物語:4票納得感:1票
少年はちょっとした怪我や体調不良でも学校の保健室に行くのだが、その際保健室の先生とほとんど話さないのは、「保健室の先生が嫌いだから」というだけではない。
では、他の理由とはなんだろう?
18年08月13日 21:16
【ウミガメのスープ】 [とかげ]

スープ病




解説を見る
「先生、早見君が怪我しました」
いつもより高い声で隣にいる長井が言うと、多田はいつも通り柔らかく笑って聞き飽きたセリフを口にする。
「また連れてこられちゃったのか。早見君、今日はどこ?」
「腕です、左の。教室で掃除してて。早見君が机を運んでるとき、ふざけた男子がホウキ振り回して。ホウキがささくれてたみたいで、ほら、腕に切り傷ができちゃったんです」
聞かれた俺ではなく、長井がスラスラと説明する。これも毎度のことだ。
「どれ、見せてごらん」
「……大した傷じゃないからいいですよ」
「多田先生にちゃんと見てもらわなきゃダメだよ。血も出てたし。早見君、いつもそうやって我慢するから」
君づけで呼ばれるのが気持ち悪い。長井は小学生の頃からの幼なじみで、ずっと俺のことを呼び捨てしている。
多田は俺の左腕を眺め、袖についた血にちらりと目をやると、またあの笑顔を浮かべた。
「ああ、ちょっと範囲が広いから、血も多かったかもしれないね。もう出血は止まっているし、深くないから大丈夫だよ。念のため消毒はしておこうか」
「お願いします。できれば怪我したってことがわかるように、大きな絆創膏ももらえますか? 怪我させた人に、ちゃんと反省してもらわなきゃ」
長井は口をとがらせて怒っている風を装うが、本当に怒っていたら、この程度では済まない。それはもう般若のごとく恐ろしいのだ。俺は何度も見たことがある。
「そうだね、もし目に入ったりしていたら、大変なことになっていたしね。ちょっと大袈裟だけど、ガーゼにしようか」
「いや、そんなにしなくても――」
「そうしてください! ね、早見君。佐々木君、ヘラヘラ笑って全然悪びれてなかったじゃん。マズイことしたってわからせた方がいいんだよ」
佐々木は中学に入ってから知り合った奴だが、やはり長井は普段呼び捨てしている。
多田は慣れた手つきで俺の腕にガーゼをあて、医療テープで綺麗に止めていく。長井はその様子をまばたきもせずにじっと眺めている。ただでさえ多田に触られるのが嫌なのに、もう痛くもない傷にこの処置は、なんとも居心地が悪い。
「さすが多田先生、本当に器用ですね!」
「ありがとう」
また、笑う。多田は自分の笑顔の効果を絶対わかっている。
「おっと、そろそろ掃除の時間が終わるね。教室に帰って、その佐々木君とやらに説教してやってね」
「はい、先生、ありがとうございました! ……ほら、早見君!」
「……ありがとうございました」
今すぐガーゼを引き剥がしてやりたいくらいなのだが、大人しく従う方が早く退場できそうだ。仕方なく小声で礼を言う。
「長井さんは本当にしっかりしているね」
最後にとびっきりの笑顔と褒め言葉。本当ははしゃぎ出したいくらい嬉しいのだろうけれど、それをなんとか抑えて、お上品な笑みを浮かべつつ、お辞儀をする長井。苛立つ気持ちを、保健室のドアを粗っぽく閉めるだけで、我慢した。


「もう、早見、態度悪すぎ! 先生に失礼でしょうが!」
ふくらはぎに容赦ない蹴りが入る。保健室から出た途端、これだ。そのまま教室へ向かう廊下をずんずん進む。長井の後ろについていく形で、俺も歩き出す。
「言ってるだろ? 多田は嫌いなんだって。あんまり話したくないんだよ」
「あんなに素敵な先生が嫌いなんて! 先生がカッコいいから、僻んでるんじゃないの?」
「……合わないだけだっての」
確かに多田をカッコいいと言う女子はたくさんいる。今年の四月に赴任してきたときは、保健室の養護教諭が若い男ということで、抵抗を感じる女子(と、ガッカリする男子)も少なくなかったはずだが、半年も経たずに生徒からも保護者からも好かれる人気教師になった。あいつを嫌う俺はかなりの少数派だろう。
「俺の態度が嫌なら、自分で仮病使えばいいだろう」
「嫌よ、多田先生に対して嘘つきたくないの」
「多田の前で猫かぶってるのは嘘に入らないのか? ……痛っ!」
今度はすねを蹴られた。
「じゃあもう直接話しかければいいじゃん。保健室に遊びにきました、先生とおしゃべりしたいんですって」
一瞬、その状況を想像したのか、長井はピタリと止まる。パッと振り返った彼女の顔は、真っ赤に染まっていた。
「そ……そんなの無理、無理! それができたら苦労はしないわよ!」
俺が怪我したり具合が悪そうにしたりすると、長井が嫌がる俺を保健室に引っ張っていく……と見せかけて、実は俺も共犯なのだ。俺は必ず、大丈夫だから保健室には行かない、と言う。長井が行った方がいいと説得する。結果、俺ひとりだとちゃんと保健室に行かないので、長井が付き添う形になる。保健室に行く口実ができるわけだ。
「付き合わされて、嫌いな奴の手当てを受ける俺の身にもなれよ」
「悪いってば! でもこんなの頼めるの、長井しかいないんだもん!」
「じゃあ、俺があいつとあんまりしゃべらないのも多目に見ろよ。それに、その方がお前、たくさん話せていいだろう?」
「……あ、確かに、ね」
今まで気づいていなかったのか、こいつ。当然、嫌いだから話したくないというのもあるが、同時に長井にとってもそれがよかろうと思ってやっていたのに。
「早見、ありがとう」
保健室で見せたよそゆきの笑みではなく、気にしている八重歯を遠慮なくのぞかせた笑顔。
たまにこいつは、いやに素直になる。調子が狂う。
「……わかればいい。ほら、もう少し急ぐぞ」
教室まではあと少しだ。早足になる俺に歩調を合わせて、長井も小走りになる。
「かわりにさ、早見に好きな人ができたらいくらでも協力するから。ね、遠慮せず頼んでよね」
お礼のつもりなのだろうが、突然そんなことを言ってくるものだから、ぎょっとする。
「……お前に手伝ってもらうことなんてない」
「なにそれ、役に立たないって意味?」
にらみをきかせて、肩にグーパンチをあてる素振り。
多田の前で見せる澄ました顔より、そうやって目まぐるしく変わる表情の方が良いと思うのだが、それは教えてやらない。
「役に立たないことはないだろうが、お前に誰が好きか教えなきゃならねぇじゃん」
「いいじゃないの、幼なじみの仲なんだからさ。あれ? もしかしてもういるの? ねぇねぇ、ちょっと打ち明けてみなさいよ、ほらほら」
まったく、この女は。

最後の質問を無視して、あと数メートルの距離を走った。後ろで長井が逃げたな、などと叫んでいる。そりゃあ逃げるに決まっている。

好きな奴を打ち明けろだって? 簡単に言ってくれる。

それができたら、こんな苦労はしていない。

END

【要約解説】
少年が片思い中の少女は、保健室の先生に夢中で、少年の怪我や体調不良を口実に保健室へ一緒に来る。恋敵である先生のことはもちろん嫌いなのだが、自分が黙っていた方が少女が先生とたくさん話せるので、少女のためにほとんど喋らないようにしているのだ。
伝書鳩かよっ!「5Good」
納得感:5票
ヒロシはある会社にメールを送ったところ、そのメールは1週間以上遅れて返ってきた。それが理由でヒロシはその会社に入りたいと思ったという。どういうことだろう。
20年06月02日 22:05
【ウミガメのスープ】 [ぎんがけい]

軽めの闇スープ 先着5名




解説を見る
ヒロシはある会社にゴールデンウィーク前にメールを送ったところ、そのメールはゴールデンウィーク明けに返ってきた。ヒロシはこの会社はゴールデンウィークにちゃんと休ませてもらえるようなホワイトな会社だと思い、入りたいと思った。ゴールデンウィークにあたる部分は年末年始やお盆、その他長期の有給休暇など長期休暇に当てはまれば正解としています。

自分の体験談に少し基づいています。私の本名はヒロシではありませんが。
しねばいいのに「5Good」
トリック:3票物語:1票納得感:1票
コトハは大好きなマコトが交通事故に遭ったと知り、心から心配した。
しかし、マコトの命に別状がないと分かるとコトハはがっかりした。
なぜ?
19年03月17日 14:54
【ウミガメのスープ】 [紺亭 唐靴蛙]

よくあるはなし




解説を見る
コトハは人気ドラマ「煮込めばスープにダシが出る」を毎週欠かさず見ていた。
エンディングの「亀ダンス」がブームになっている通称「にこダシ」だ。

先週の放送は、ヒロインのカメコの恋人マコトが交通事故に遭った場面で終わっていた。
コトハはそのマコトという登場人物が大好きだったのでマコトが無事かどうか気になっていた。

(あ~ドラマの続き気になる…早く帰って録画みたい…)
昨日ドラマの続きが放送されたのだが、予定があって見れなかったコトハは帰宅して録画を見るのを楽しみにしていた。

「ねぇねぇ昨日のにこダシ見た?」
帰り道の電車内、隣に座っている女子大生風の二人組がドラマの話をしているのが耳に入る。
「にこダシ」というワードに思わず耳を傾けてしまったのがまずかった。
「見た~!マコト君無事で良かった~」
「ね〜!先週マコト死んじゃうかと思ってひやひやしたよ〜」

(うわーマジかー!マコトが無事で良かったけど、聞かなきゃよかった…)

【FA】コトハは楽しみにしていたドラマのネタバレを聞いてしまい、楽しみが減ってしまったことにがっかりした。
良質:3票物語:2票
クラスいち、控えめでオドオドしたカメオくん。

風邪をひいているわけでも無いのに、
彼は何故かずっとマスクを付けて過ごしています。

う~~~ん…一体なんのためでしょう?
誰かお分かりになりますか?
20年06月08日 21:56
【亀夫君問題】 [るょ]



解説を見る
はるか遠く。地球のアメリカという国から留学に来たカメオくん。
彼はずっと、マスクで口元を隠して生活しています。

地球には『{さべつ}』なる習慣があるそうですね?
それを聞いて合点がいきました。

我々ウミガメ星人の口元には、大き目の『牙』が生えています。
彼はきっと、{牙が生えていない自分はいじめられるのでは?}
と心配したのでしょう。


なんというか、文化の隔たり(ディスタンス)を感じますね。
肌や髪の色だとか、牙だとか、生まれた星がどこだとか…。

地球で何があったかは知りませんが、この星でならそんなことを気にする必要はありません。
見た目など些細な違いに過ぎないということに、地球人は気づくべきなのです。



【答え:】
口元に大きな牙を持つウミガメ人の星に留学に来たカメオ。
彼は地球で、内容は伏すがある差別を受けていた。
ウミガメ星でもまた、牙を持っていない人が差別されることを恐れて、
極力、マスクで口を隠して日常生活を送っているのだった。



【※補足※】
ウミガメ星には『人を見た目で差別する』という文化が無いため、
「私」はカメオの身体的特徴(牙がないこと含む)に関して、
『変だ』と認識していません。

そのため「彼の口元は変ですか?」などの主観を伴う質問に関しては、
基本的に『変わったところはない。彼は普通です。』のように答えます。
揺れない不良たち「5Good」
納得感:5票
ある学校の話。
真面目で大人しい生徒が多いAクラスと不真面目で落ち着きのない生徒が多いBクラスがあった。

ある日、突然地震が起こったのだが、すぐさま事態を把握して机の下に隠れるなど冷静に対処出来た生徒が多かったのはBクラスの方であった。
一体なぜ?
20年06月10日 20:01
【ウミガメのスープ】 [ブラダマンテ]

SP:イナーシャさん、ダニーさんです。ありがとうございます!




解説を見る
この高校では、「校内ではスマホ・携帯電話等の電子機器類の電源はオフにする」という校則があった。真面目なAクラスの生徒はそれを律儀に守ってスマホの電源を切っていたが、不真面目なBクラスの生徒はほとんどの者がこれを守らず、当然の権利のようにスマホを利用していた。

ある日のこと、Bクラスの生徒の持っていたスマホから、緊急地震速報のアラームが鳴り出した。これにより、Bクラスの生徒は「地震が来る」という事態をすぐさま把握し、冷静に対処出来た。これに対して、Aクラスの生徒は皆スマホの電源を切っていたため、緊急地震速報が鳴らず、対応が遅れた。