みんなのブックマーク

むぎのゆりかご「5ブックマーク」
ミズエは自分で揺らした買い物カゴの中で転がるビールの缶を見ると、
つい手に取っていたビスケットを棚に戻した。一体なぜ?
22年02月26日 20:47
【ウミガメのスープ】 [春雨]



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◆簡易まとめ◆
ベビーカーを揺すって息子をあやす癖で買い物カートを前後に動かしてしまったミズエは
カゴの中で転がるビールの缶を見て「もう息子は亡くなったのだ」と改めて実感し、
いつものように手に取った息子のおやつのビスケットをそっと棚に戻した。


--

『…… xx日xx時xx分頃、xx市xx区の県道でベビーカーを押しながら横断歩道を歩いていたxx歳の主婦が減速しないまま進行してきた乗用車に撥ねられた。この事故でベビーカーに乗っていたx歳の幼児がx時間後に死亡。幼児の母にあたる主婦も軽傷を負った。xx県警xx署の調べによると ……』

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痛ましい事故から少し経った後、ミズエの怪我は回復したが心の傷は癒えないままだった。迫る軽自動車、信号機、横断歩道、ベビーカー……。あの日のあの瞬間のあの光景が目に焼き付いたまま、毎日眠れぬ夜を過ごすミズエは久しぶりにお酒でも飲もうかと小雨のそぼ降る中、傘もささずにスーパーマーケットへと向かった。
子育てに必死だった日々、ビールを飲む余裕も無かった日々を、全て忘れ去ってしまいたい気持ちで手に取った缶は買い物カゴのすみに大人しくおさまっていた。

(今日の晩御飯は何にしようかな……。簡単に作れるものが良いかな……)

ぼうっと考え事をしながらも、通いなれたスーパーでは歩みを緩めることもなく、いつも通りにお菓子コーナーの一角で、息子のおやつのビスケットを手に取った……。



ころん――



ふと買い物カゴに目を落とすと先ほどのビール缶が前後に揺られていた。その時、無意識に息子をあやすためベビーカーのように買い物カートを前後に揺すっていたことを自覚した。

ああ、これはベビーカーではないのだ、息子はもういないのだ

と無機質な銀色の缶に改めて突きつけられた思いがして、手に取ったおやつをそっと、棚に戻したのだった。

(やっぱり、元気が出るご飯にしよう)


外に出れば、雨はあがっていた。
まだまだ晴れ間は見えないけれど曇ったままでも進んでいこう。
ミズエはそう思った。
汝は河童なりや?「5ブックマーク」
名を聞かれし女は「{沙悟浄 也}」としたためけり。

いかにぞや。
22年02月27日 21:47
【ウミガメのスープ】 [ほずみ]



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≪簡易解説≫
「{沙也}」という名前の漢字をスマホで変換する際に「{沙}悟浄 {也}(さごじょうなり)」と打ち込むと一発で正しい漢字に変換できるから。

『ねぇねぇ、ミサキっちの名前って漢字でどう書くっけ?』
ある日クラスメイトの加藤さんからLINEが届いた。
そういえばクラスで卒業前に記念品を作るとか言ってたな、と思いつつ送信欄に「三崎」まで打ち込んで指を止める。
漢字を間違えて打たないようにいつも以上に気を付けないと。
そう思った私は慎重に「{沙}悟浄 {也}」と打ち込んでから『悟浄』の部分を消した。いつからか、名前の漢字がうまく変換できないときはこう打ち込むことが癖になっていた。そうして入力された「三崎沙也」の文字列を加藤さんに送信する。
そこまで打って、ふと魔が差した。

「沙悟浄 也って打つと速いよ」
「多分、加藤さんが普通に打つと別の漢字が出ちゃうから」
『確かに~!さんきゅ!ミサキっち!』

そう返した彼女とのトーク履歴の左上には「加藤紗耶香」の文字が無機質に並んでいた。

≪参考≫
古文はこちらのサイトhttps://catincat.jp/javascript/kogo3.html で自動変換したものをベースに自力で直したものなので間違いがあってもご容赦ください。
〈変換前〉
名前を聞かれた女は「沙悟浄 也」と準備した。
なぜだろう?

テストプレイ:きっとくりすさん、靴下さん、だだだだ3号機さん、松神さん
Special thanks:私のリア友
校外野鳥観察「5ブックマーク」
今ではすっかり親友となった凛さんが転校してきた日に、ズボラめな卯月ちゃんは、美術の授業で使うスケッチブックに[ A ]をかいてから先生に提出した。

[ A ]に鳥を当てはめるとすれば、それは何?
22年02月28日 22:00
【20の扉】 [さなめ。]

ご参加ありがとうございました!




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【FA:】
カッコウ

【簡易解説:】
凛さんと卯月ちゃんは苗字が同じ。珍しい苗字だったので卯月ちゃんは元々スケッチブックに苗字だけ書いていたが、回収・配布を毎授業行う先生が確認するときに紛らわしくなるので、苗字の隣に{(卯)}と記した。

+++++おまけ+++++

(4月12日)
今日は新学期初めての美術の授業。後々の野鳥観察スケッチの為の練習を行うらしい。先生からは、学期中ずっと使う各人のスケッチブックと、班ごとに鳥の模型が配られた。

みんな、先生が木材で作った鳥の模型のデッサンに四苦八苦していたのだが、これは卯月ちゃんにとって本領発揮といったところ。絵の上手さだけなら、誰にも負けない。

評価5も夢ではない描写を済ませ、早々にスケッチブックを提出しようとする。が…

(そういえば、名前を書かなきゃ。)

立ち上がって先生の前に来たところで、卯月ちゃんは思い当たる。先生が一旦回収し、次の授業で各人に配るので、スケッチブックには名前を書いておき配布を簡単にしなくてはならなかった。

後ろの自席に戻って鉛筆を取りに行くのが面倒だった卯月ちゃんは、前の席の友達にペンを借り、スケッチブックの裏側に苗字だけ記しておいた。

{若凪}

否、書き殴った。こんな珍しい苗字が被ったこともないし、パッと見でわかるだろう。うちの学校には「若なんとか」さんすらいない。

こんなズボラな若凪 卯月ちゃんが、そのとき借りたペンをまだ返していないのは想像に易い。

(9月12日)
親の事情で転校してきた凛さんを見て、卯月ちゃんは心底驚いた。

{若凪 凛}

なんと苗字が同じ。すごい偶然!
席も隣になったし、好きなアイドルの話ですぐ意気投合し、10月にはもう親友になった…のはいいとして。

一限の美術でいつものように流麗な作品の下書きを創出した卯月ちゃん。そそくさと先生に提出し、余った時間ではやく三限の数学の課題を終わらせねば…。

そこまで思ってふと気づく。半年前に書き殴った、{若凪}の文字。これでは先生がスケッチブックを配る際に即座の区別がつかない。

半年前に、「同じ苗字がいる人は区別のつくように」と注意喚起していた先生を想起し、苗字の横に{(卯)}と書いておいた。

{若凪(卯)}

「みてみて凛さん!これ、カッコウ!」

その名前の横に描いた簡単なイラストを隣に座る女の子に見せる卯月ちゃん。{括弧卯}でカッコウ。ちょっとしたユーモアである。

「わ!上手!」

転校初日で緊張気味だった凛さんが初めて見せた笑顔は、このときのものだった気がする。

おわり。

【要約:】
(卯)
らてらんど名物「5ブックマーク」
風花さんはテーマパーク「らてらんど」の常連さん。年間パスを持って毎週のように通っているような、園内作品の熱烈なファンなのである。

彼女は来る度に遊ぶアトラクションは変われども、いつも園内限定品の「ウミガメソフト」を購入することだけは欠かさない。抹茶風味のとろけるクリームに、キャラの焼印のあるサクサクのメープルコーン。このために毎週この地を訪れているといっても過言ではないほどのお気に入りな名物品だ。

ところで、そんな彼女の姉・凪さんも、同じく年間パスを持って風花さんと一緒に園内を回り楽しむ熱狂的なファンなのだが、彼女の方はアイス目当てではなく、いつも決まって○○○○○○をするらしい。

伏せ字に入るのが何かわかりますか?

{※}ニュアンスが正しければ、伏せ字の文字数と一致しない回答も正解とします。
22年03月08日 21:00
【20の扉】 [さなめ。]

ご参加ありがとうございました。




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【FA:】
{来園客の財布}をする{(掏る)}らしい。

【簡易解説:】
姉妹は共犯のスリ。妹の風花がアイスクリームを意図的に客にぶつけ、誠意を装って汚れを拭いたりなんだりしている間に、姉が相手の隙をついて犯行に及ぶという常習の手口を用いている。

+++++おまけ+++++

「あー!ごめんなさい!すぐに拭きますね!」

混みあった園内を通行中に、持っていた名物品のウミガメソフトを他人にぶつけてしまい、慌ててハンカチを取り出す…{という一連の演技}を行う風花。

あちゃ~、とこちらの「失態」に同情する二人組の女性。現役かどうかは怪しい制服姿に、ここで買ったであろうお揃いのカチューシャ。どうやら幾多の例に漏れず、かなりの浮かれ気分のようだ。

少し離れたところからその人混みを窺う姉の凪は、漸く安堵した。ハイな気持ちから油断し、風花の「誠意」を受容してわざわざ立ち止まる二人。懐もハンドバッグも緩く、標的として最適だ。

刹那、凪からの目配せを受ける風花。可愛い制服に付いてしまった抹茶色のクリームを拭き取りながら、申し訳なさげに女性たちに話をふることで注意を逸らす。すぐ溶けてベトベトになりやすいウミガメソフトは、{標的になすり付けるのにぴったりなので風花のお気に入り商品}である。

「本当にすみませんでした!良かったら、これ、どうぞ!」

礼と共に謝る風花は、バッグからここのキャラストラップを出し、制服姿の女性に渡す。自分の顔よりも記憶に残るものによって、犯行を露見させにくくするものだ。それに、「誠意」の表れにもなる。人によってはこれをあげるのだが、どうせ余るほど持っているものなので、一つくらいは必要経費である。

そそくさとその場を立ち去った風花は、ある程度は人気のない場所まで来ると、セーターを脱ぎTシャツ姿になった。理由は同上で、犯行の露見の防止。

残ったソフトのメープルコーンをかじりながら、姉の到着を待つ。今頃の凪は、{紙幣を抜き取った「抜け殻」の処理}に奮闘しているところだろう。

風花は所在なさげに、近くの売店を見つめる。

そこには、ガラス越しに、らてらんどのキャラクターグッズが、たくさん並んでいる。

ラッテーの桜衣装ver.ぬいぐるみ。
はらこちゃんの春季限定ペナント。
犬のオカブのバレンタイン仕様のタンブラー…。

早く、あれを手に入れたいな。

それはきっと、凪も同じ気持ちのはずだ。

早くグッズを全て揃えて。

部屋に飾って、部屋に飾って。

らてらんどのみんなに、囲まれて。



{空想の郷に暮らすんだ。}

{まだまだ浸っていたいんだ。}



3年も前、姉が解雇されて貯金が尽き、風花に泣きついてきたことが脳裏をよぎる。風花も一心同体で、ひもじく暮らした。苦難の末にやった初めてのスリは、それはそれは拙いものだった。

それからずっと、彼女たちはこうやってらてらんどで他人のお金を盗むことで生計を建てている。風花の仕事の給料は、年間パスやグッズ費用のほんの足しにしかならない。風花だって、スリになる前からもグッズの買いすぎで、いつ破産してもおかしくはなかったのだ。

{もう、罪悪感は一つもない。あるのは、幼少期から大好きな、憧れのらてらんどへの愛情だけ。}

多分それも、イベントの行きすぎで会社に愛想を尽かされた凪と同じ。

我慢できず、姉が来る前にショップへと入店した風花。グッズの「収集」が終わったら、もう一度ラッテーのスカイコースターに乗りに行こう。そう考える彼女が手に持っていたのは、{いつぞやの来園客から盗んだ紙幣}の入った、ラッテー柄の財布だった。

ふらふらと売店に吸い寄せられ、虚ろな目を妖しく輝かせる風花の後ろで、係員がこんなアナウンスを響かせた。



【{らてらんど名物の、スリに要注意!}】



おわり。

【要約:】
姉妹はスリ常習犯。
伏せ字は「来園客の財布」。
アイスをわざとぶつけて気を惹き油断させる手口を使う。
とあるAの話「5ブックマーク」
「お願いです。いわば、今設定されているのをAにちょいっと変えるだけのことじゃん?俺もカラオケとか行きたいし。」
「アンタももう中学生だしねぇ。」

Aに入る一文字は?
22年03月22日 21:50
【20の扉】 [さなめ。]

ご参加ありがとうございました~




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【FA:】
Aに入るのは「ひ」

【解説:】
「俺」は母親に、お小遣いの値上げ交渉をしていた。

現在設定されているのは月1000円。しかし、これでは遊び盛りの中学生には物足りない。せめて月{5000円}くらい欲しい…。

それを「俺」は、さも単純なことであるかのように、「今(お小遣いとして)設定されている{の}を{ひ}に」変えるだけ、と表現した。

つまり、月額を1000円から5000円に変えるのだから、{野口}が{樋口}になる、ということで…。

{※}2022年現在、1000円札の肖像は野口英世、5000円札の肖像は樋口一葉です。
ためになったね~。

【要約:】
お小遣いを{野}口から{樋}口へ。