「災い転じて」「23ブックマーク」
点字ブロックの上に障害物が置かれている場合、利用する人がつまずき、転倒する危険がある。
カメオが経営する店の前にはいつも客が停めた自転車が並んでおり、点字ブロックの上にも平気で停められている。
ある日、カメオが店の前に張り紙をしたところ、その日以降点字ブロックの上に停められる自転車の数は0になった。
張り紙には何と書かれていたのだろう?
カメオが経営する店の前にはいつも客が停めた自転車が並んでおり、点字ブロックの上にも平気で停められている。
ある日、カメオが店の前に張り紙をしたところ、その日以降点字ブロックの上に停められる自転車の数は0になった。
張り紙には何と書かれていたのだろう?
19年10月20日 21:00
【20の扉】 [滝杉こげお]
【20の扉】 [滝杉こげお]

初心者です。よろしくお願いします。
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閉店
「キビヤックレストラン」「23ブックマーク」
「お待たせしました。名物の鶏刺しです!」
店員が持って来た美味そうな鶏刺しを見て、男は吐き気を催した。
自分で注文したというのに、一体何故だろうか?
店員が持って来た美味そうな鶏刺しを見て、男は吐き気を催した。
自分で注文したというのに、一体何故だろうか?
20年04月04日 09:18
【ウミガメのスープ】 [ゴリリーマン]
【ウミガメのスープ】 [ゴリリーマン]
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一人でちょっと高めの焼肉屋に来た男は、先ずはビールを注文し、カルビやハラミ、鶏ももやせせりなど適当に色々な肉を注文しつつ、名物の鶏刺しも美味そうだと思い一つ注文した。
待っている間男はトイレに行くため席を立ったが、席に戻ると肉が並んでいたので食べ始めた。
「楽しみにしてた鶏刺しはどれかな…お、これか。美味そうだ。醤油をつけて…うん、弾力があって美味い!」
しばらく食べていると、店員がやってきて
【「お待たせしました。名物の鶏刺しです!」】と言った。
(今店員が鳥刺しを持って来たってことは、今俺が食ってるこれは…【加熱用の鶏もも肉じゃねーか!!】)
男は吐き気を催した。
待っている間男はトイレに行くため席を立ったが、席に戻ると肉が並んでいたので食べ始めた。
「楽しみにしてた鶏刺しはどれかな…お、これか。美味そうだ。醤油をつけて…うん、弾力があって美味い!」
しばらく食べていると、店員がやってきて
【「お待たせしました。名物の鶏刺しです!」】と言った。
(今店員が鳥刺しを持って来たってことは、今俺が食ってるこれは…【加熱用の鶏もも肉じゃねーか!!】)
男は吐き気を催した。
「名前の距離感」「23ブックマーク」
.
カメコは、今年のクリスマスに入籍した。
カメコが結婚に前向きになれたのは、カメオが挙げた結婚相手に求める条件に、自分がぴったり当てはまっていたからである。
結婚後、一緒に暮らすようになると、カメオのことを愛しく思う気持ちがどんどん増していったカメコ。
そんなカメコが、カメオに{名前を呼ばれたくない理由}とは、一体何だろうか?
カメコは、今年のクリスマスに入籍した。
カメコが結婚に前向きになれたのは、カメオが挙げた結婚相手に求める条件に、自分がぴったり当てはまっていたからである。
結婚後、一緒に暮らすようになると、カメオのことを愛しく思う気持ちがどんどん増していったカメコ。
そんなカメコが、カメオに{名前を呼ばれたくない理由}とは、一体何だろうか?
21年12月22日 23:59
【ウミガメのスープ】 [霜ばしら]
【ウミガメのスープ】 [霜ばしら]

問題の振り返り→https://note.com/keccyap/n/n3d7e899464d9
解説を見る
.
【《 答え 》】
カメコは、カメオの{父の恋人}。
交際は順調だったが、カメオに家族として受け入れてもらえるか自信がなく、なかなか結婚に踏みきれなかった。
そんなある日、サンタ宛ての手紙から、カメオが「カメコに母(父の{結婚相手})になってほしい」と望んでいることがわかったので、彼らはすぐに結婚した。
義理の息子になったカメオを、本当の子供のように愛しく思っているカメコは、「カメコさん」ではなく「{お母さん}」{と呼んでもらいたい}のである。
………………………………………………………
カメオは、亡くなった母のことを覚えていない。
ひとり親だけど、父がいたから寂しくはなかった。
それでも、母親と手を繋ぐ友達を見てうらやましいと思うことはあった。
一年前くらい前、父が知らない女の人を連れてきた。
カメコと名乗った髪の長いその人は、何だかいい匂いがした。
最初は緊張してたけど、気づいたらすっかり打ち解けていた。
だんだん、休日に三人で出かけることが増えていった。
カメコは、カメオの誕生日にごちそうやケーキを作ってくれたりもした。
父のと違って、彼女の料理の彩りは綺麗だった。
料理をしている彼女は、いつも楽しそうに歌っている。
特別上手いわけじゃないけど、心地良い声だと思った。
カメコは、友達とも親戚とも違う不思議な存在だ。
彼女は父と仲良しだけど、カメオにも優しく笑いかけてくれる。
「お母さんがいたらこんな感じなのかな?」と思った。
最近では、「こんな人がお母さんだったらいいな」って思ったりもする。
ちゃんと聞いたことはないけど、カメコはたぶん父の恋人なんだと思う。
二人が結婚したら、カメコはカメオの母ということになるんだろうか。
それはいいなと思ったカメオは、サンタさんに「お母さんがほしい」と手紙を書いた。
【《 答え 》】
カメコは、カメオの{父の恋人}。
交際は順調だったが、カメオに家族として受け入れてもらえるか自信がなく、なかなか結婚に踏みきれなかった。
そんなある日、サンタ宛ての手紙から、カメオが「カメコに母(父の{結婚相手})になってほしい」と望んでいることがわかったので、彼らはすぐに結婚した。
義理の息子になったカメオを、本当の子供のように愛しく思っているカメコは、「カメコさん」ではなく「{お母さん}」{と呼んでもらいたい}のである。
………………………………………………………
カメオは、亡くなった母のことを覚えていない。
ひとり親だけど、父がいたから寂しくはなかった。
それでも、母親と手を繋ぐ友達を見てうらやましいと思うことはあった。
一年前くらい前、父が知らない女の人を連れてきた。
カメコと名乗った髪の長いその人は、何だかいい匂いがした。
最初は緊張してたけど、気づいたらすっかり打ち解けていた。
だんだん、休日に三人で出かけることが増えていった。
カメコは、カメオの誕生日にごちそうやケーキを作ってくれたりもした。
父のと違って、彼女の料理の彩りは綺麗だった。
料理をしている彼女は、いつも楽しそうに歌っている。
特別上手いわけじゃないけど、心地良い声だと思った。
カメコは、友達とも親戚とも違う不思議な存在だ。
彼女は父と仲良しだけど、カメオにも優しく笑いかけてくれる。
「お母さんがいたらこんな感じなのかな?」と思った。
最近では、「こんな人がお母さんだったらいいな」って思ったりもする。
ちゃんと聞いたことはないけど、カメコはたぶん父の恋人なんだと思う。
二人が結婚したら、カメコはカメオの母ということになるんだろうか。
それはいいなと思ったカメオは、サンタさんに「お母さんがほしい」と手紙を書いた。
「耳たぶのスープ」「22ブックマーク」
耳たぶレストランには「耳たぶのスープ」というメニューがある。
これを注文したカメオは、一口食べて「まずい」といったが、二口目には「うますぎる」と大絶賛した。
どういうことだろう。
これを注文したカメオは、一口食べて「まずい」といったが、二口目には「うますぎる」と大絶賛した。
どういうことだろう。
18年05月19日 00:20
【ウミガメのスープ】 [耳たぶ犬]
【ウミガメのスープ】 [耳たぶ犬]
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カメオが初めに耳たぶのスープを食べた時、あまりの不味さにカメオは一口食べるだけで店を出て行ってしまった。
そのことを悔しく思ったレストランのオーナーは必至で腕を磨いた。
店の評判も良くなったころ、カメオは冷やかしもかねて久しぶりにレストランに赴いた。
その時に飲んだスープは以前のものとは全く違う、美味しい味になっていたのだった。
そのことを悔しく思ったレストランのオーナーは必至で腕を磨いた。
店の評判も良くなったころ、カメオは冷やかしもかねて久しぶりにレストランに赴いた。
その時に飲んだスープは以前のものとは全く違う、美味しい味になっていたのだった。
「織姫の願い事」「22ブックマーク」
7月7日に開かれる県立ウミガメ高校の文化祭で、アツヤのクラスは七夕の演劇をやることに。
普段は引っ込み思案なアツヤだが、彦星役に立候補した。
完璧に台詞を覚えて挑んだ本番当日。
スポットライトのあたるステージで織姫役のアンナはひときわ輝いていた。
劇はいよいよクライマックス、織姫と彦星の別れのシーンを迎える。
そこでステージに立つアツヤが口にした「さようなら」の一言が、観客はおろか、目の前のアンナにさえも届かなかったのは
練習期間中、アンナが書いている短冊をアツヤが見てしまったからだという。
一体どういうことだろうか?
「はい、僕やります。」
その瞬間、教室の時間が止まった。
そして不自然な間の後、先程までとは少し違うざわめきが教室中に広がった。
「え、あいつがやるの?俺話したことないんだけど」「おいヒビキ、おまえやらないの?」「いやいいよ、誰もいなかったらやってもいいけどやるって言ってんじゃん」
「えーっと、じゃあ彦星役はアツヤ、織姫役はアンナでいいか?」
しかし先生の問いかけに反対する生徒はおらず、自然と拍手が巻き起こる。
みんなが手を叩く中、少し前の席に座るアンナがこちらを振り返って口を動かす。
『よ、ろ、し、く、ね』
声は聞こえなくともそう言ったのだとわかる。はじめて向けられたその笑顔に、アツヤは思わず目を背けた。
--------------------------
「ねぇ、せっかくだから教室に笹と短冊、飾らない?」
誰かがそう言い出したのは、アツヤが演劇の練習を始めて1週間ほど経った日のことだった。演劇の宣伝になるのではないか、という話だ。
あの日から毎日、放課後に練習を重ねていたアツヤだが、目線は自然とアンナの方へと向く。
情感のこもった台詞や堂々とした身のこなしはもちろん、休憩中の些細な仕草までもがアツヤの胸の奥をざわめかせていた。
七夕の願い事、かぁ…
もちろん星に託したい願い事はすぐに思いついたが、まさか短冊に書くわけにもいかない。
そんなことを思いながらその『願いの対象』の座る方へと目を向けると、アンナがさらさらと鉛筆を動かしているのが見えた。
いささかの罪悪感を覚えながらもアツヤの目はその手元に吸い寄せられていった。
『ヒビキくんと少しでも一緒にいられますように』
一瞬、アツヤの周りから音が消えた、ように感じた。思考が停止していた。
呆然としているうちに、恥ずかしそうに髪をかきあげたアンナは急いだようにその文字を消し始めた。そして書き換える。
『演劇が成功しますように!』
--------------------------
その日の練習に臨むアツヤは、全く集中できなかった。覚えたはずの台詞は間違え、小道具を持ち忘れ、登場のタイミングを誤る。
言葉にできない思いが胸の中で渦巻いていた。
「アツヤくん、大丈夫?体調良くない?」
そう声をかけてくれたアンナの顔を、アツヤは直視することができなかった。
大丈夫じゃない、と答えたかった。
『ヒビキのことが好きなの?』そう尋ねたかった。
けれどそんなことをしたってアンナは困るだけだろう。アンナのためを思うなら…
『誰もいなかったらやってもいいけど』
『ヒビキくんと少しでも一緒にいられますように』
顔を上げると、アンナの心配そうな顔がそこにあった。彼女には笑っていてほしい、心からそう思ったアツヤは、意を決して口を開く。
「あの、ごめん…僕ちょっと喉が…」
--------------------------
7月7日、文化祭当日。
「いよいよだね、緊張してる?」
ほがらかに話しかけるアンナは、とても緊張しているようには見えない。
「う、うん。ちょっとね。大勢の人に見られるのなんて慣れてないから。」
この日のための衣装を身につけながらアツヤは答える。
初めて見たときは、これは目立つなぁと思ったものだ。
そんなことを考えながらも、アツヤは舞台に上がった。
そして幕が上がる。
ふと顔を上げると、およそ1000の顔がこちらを見ている。緊張で胸が高鳴り始めた。
そんな中、ナレーションが流れる。
「昔々、あるところに、牛飼いの彦星が住んでいました。」
ここで彦星が歩き回りながら台詞を言うんだ。
段取りは完璧に頭に入っていた。
しかし、アツヤは動けなかった。
否、動かなかった。
夜空にかかる天の川という役どころを演じきるために。
舞台袖からヒビキが現れる。牛飼いの衣装を身につけて。
完璧な動作で、台詞で、演技をこなす彦星に笑いかける織姫の頬は赤く染まっていて、それは緊張のせいにも演技にも見えなかった。
これでよかったんだ。
目の前で逢瀬を重ねる2人を見ながらアツヤは思う。
「君を愛しているよ」
本当はアツヤが言うはずだった言葉だ。そして、言えなかった言葉だ。
「必ず君を幸せにする」
アツヤは口には出さなかったが、ある意味では実践した言葉だ。
そして近づくクライマックス。
アツヤの両側へと隔てられた2人は、悲しい別れを嘆く。
「あぁ彦星様、行ってしまわれるのですか。」
そう問いかけるアンナは本当に悲しそうで、アツヤの胸はちくりと痛む。
次にヒビキが言う台詞を、一週間限りの彦星は覚えていた。
「織姫、また笑い合える日を楽しみにしているよ。」
僕にはもう、『また笑い合える日』なんてない。この舞台を下りたらもう、話すこともないだろう。
でもそれでいいんだ、きっとヒビキと一緒にいることが、彼女にとっての幸せだから。
彦星とは違う本当の別れを感じたアツヤの口は、思わず次の台詞を紡ぎだす。
『さようなら』
二つの口から出たその言葉。
演じられた片方は、アンナに届き、観客に届く。
けれど心からの片方は、天の川の呟きは、受け取る相手もいないまま、舞台裏へと消えていった。
『簡易解説』
片思いの相手、アンナと主役を演じるために彦星役に立候補したアツヤ。
しかし短冊を見てアンナの気持ちに気づいたアツヤは彦星役を降りて天の川の役となり、目の前で演じるアンナとヒビキを見ていた。劇のラスト、ヒビキがアンナに別れを告げる場面で誰にも聞こえないように重ねて呟いた。
普段は引っ込み思案なアツヤだが、彦星役に立候補した。
完璧に台詞を覚えて挑んだ本番当日。
スポットライトのあたるステージで織姫役のアンナはひときわ輝いていた。
劇はいよいよクライマックス、織姫と彦星の別れのシーンを迎える。
そこでステージに立つアツヤが口にした「さようなら」の一言が、観客はおろか、目の前のアンナにさえも届かなかったのは
練習期間中、アンナが書いている短冊をアツヤが見てしまったからだという。
一体どういうことだろうか?
19年07月07日 21:00
【ウミガメのスープ】 [「マクガフィン」]
【ウミガメのスープ】 [「マクガフィン」]

藤井さんと2ヶ月煮込んだ合作スープ、七夕の夜にいかがでしょう?
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「はい、僕やります。」
その瞬間、教室の時間が止まった。
そして不自然な間の後、先程までとは少し違うざわめきが教室中に広がった。
「え、あいつがやるの?俺話したことないんだけど」「おいヒビキ、おまえやらないの?」「いやいいよ、誰もいなかったらやってもいいけどやるって言ってんじゃん」
「えーっと、じゃあ彦星役はアツヤ、織姫役はアンナでいいか?」
しかし先生の問いかけに反対する生徒はおらず、自然と拍手が巻き起こる。
みんなが手を叩く中、少し前の席に座るアンナがこちらを振り返って口を動かす。
『よ、ろ、し、く、ね』
声は聞こえなくともそう言ったのだとわかる。はじめて向けられたその笑顔に、アツヤは思わず目を背けた。
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「ねぇ、せっかくだから教室に笹と短冊、飾らない?」
誰かがそう言い出したのは、アツヤが演劇の練習を始めて1週間ほど経った日のことだった。演劇の宣伝になるのではないか、という話だ。
あの日から毎日、放課後に練習を重ねていたアツヤだが、目線は自然とアンナの方へと向く。
情感のこもった台詞や堂々とした身のこなしはもちろん、休憩中の些細な仕草までもがアツヤの胸の奥をざわめかせていた。
七夕の願い事、かぁ…
もちろん星に託したい願い事はすぐに思いついたが、まさか短冊に書くわけにもいかない。
そんなことを思いながらその『願いの対象』の座る方へと目を向けると、アンナがさらさらと鉛筆を動かしているのが見えた。
いささかの罪悪感を覚えながらもアツヤの目はその手元に吸い寄せられていった。
『ヒビキくんと少しでも一緒にいられますように』
一瞬、アツヤの周りから音が消えた、ように感じた。思考が停止していた。
呆然としているうちに、恥ずかしそうに髪をかきあげたアンナは急いだようにその文字を消し始めた。そして書き換える。
『演劇が成功しますように!』
--------------------------
その日の練習に臨むアツヤは、全く集中できなかった。覚えたはずの台詞は間違え、小道具を持ち忘れ、登場のタイミングを誤る。
言葉にできない思いが胸の中で渦巻いていた。
「アツヤくん、大丈夫?体調良くない?」
そう声をかけてくれたアンナの顔を、アツヤは直視することができなかった。
大丈夫じゃない、と答えたかった。
『ヒビキのことが好きなの?』そう尋ねたかった。
けれどそんなことをしたってアンナは困るだけだろう。アンナのためを思うなら…
『誰もいなかったらやってもいいけど』
『ヒビキくんと少しでも一緒にいられますように』
顔を上げると、アンナの心配そうな顔がそこにあった。彼女には笑っていてほしい、心からそう思ったアツヤは、意を決して口を開く。
「あの、ごめん…僕ちょっと喉が…」
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7月7日、文化祭当日。
「いよいよだね、緊張してる?」
ほがらかに話しかけるアンナは、とても緊張しているようには見えない。
「う、うん。ちょっとね。大勢の人に見られるのなんて慣れてないから。」
この日のための衣装を身につけながらアツヤは答える。
初めて見たときは、これは目立つなぁと思ったものだ。
そんなことを考えながらも、アツヤは舞台に上がった。
そして幕が上がる。
ふと顔を上げると、およそ1000の顔がこちらを見ている。緊張で胸が高鳴り始めた。
そんな中、ナレーションが流れる。
「昔々、あるところに、牛飼いの彦星が住んでいました。」
ここで彦星が歩き回りながら台詞を言うんだ。
段取りは完璧に頭に入っていた。
しかし、アツヤは動けなかった。
否、動かなかった。
夜空にかかる天の川という役どころを演じきるために。
舞台袖からヒビキが現れる。牛飼いの衣装を身につけて。
完璧な動作で、台詞で、演技をこなす彦星に笑いかける織姫の頬は赤く染まっていて、それは緊張のせいにも演技にも見えなかった。
これでよかったんだ。
目の前で逢瀬を重ねる2人を見ながらアツヤは思う。
「君を愛しているよ」
本当はアツヤが言うはずだった言葉だ。そして、言えなかった言葉だ。
「必ず君を幸せにする」
アツヤは口には出さなかったが、ある意味では実践した言葉だ。
そして近づくクライマックス。
アツヤの両側へと隔てられた2人は、悲しい別れを嘆く。
「あぁ彦星様、行ってしまわれるのですか。」
そう問いかけるアンナは本当に悲しそうで、アツヤの胸はちくりと痛む。
次にヒビキが言う台詞を、一週間限りの彦星は覚えていた。
「織姫、また笑い合える日を楽しみにしているよ。」
僕にはもう、『また笑い合える日』なんてない。この舞台を下りたらもう、話すこともないだろう。
でもそれでいいんだ、きっとヒビキと一緒にいることが、彼女にとっての幸せだから。
彦星とは違う本当の別れを感じたアツヤの口は、思わず次の台詞を紡ぎだす。
『さようなら』
二つの口から出たその言葉。
演じられた片方は、アンナに届き、観客に届く。
けれど心からの片方は、天の川の呟きは、受け取る相手もいないまま、舞台裏へと消えていった。
『簡易解説』
片思いの相手、アンナと主役を演じるために彦星役に立候補したアツヤ。
しかし短冊を見てアンナの気持ちに気づいたアツヤは彦星役を降りて天の川の役となり、目の前で演じるアンナとヒビキを見ていた。劇のラスト、ヒビキがアンナに別れを告げる場面で誰にも聞こえないように重ねて呟いた。