「死神の誤謬」「2ブックマーク」
間違い電話がかかってきたので、男は死んだ。いったい何故?
21年08月10日 21:01
【ウミガメのスープ】 [アルバート]
【ウミガメのスープ】 [アルバート]
![](/img/f-rh.png)
原点回帰、的な。
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爆弾テロを企てている男。
アジトで密かに作り上げた爆弾は、爆発範囲は狭いながらも極めて強力な、男の自信作だ。
お手製の爆薬を取り付け、自分で書いた設計書どおりに配線し、おまけで特に意味はない赤と青とついでにピンクの線を付け加えて、最後に起爆装置替わりの携帯電話をセットして、さぁ完成。あとは設置して起爆するだけだ、さてさてどこを吹き飛ばしてやろうか……。
男がひとりほくそ笑んでいた、そのとき。
――ピリリ、ピリリ。
小さな電子音がアジトに響いた。
男はそれが何の音か、すぐには分からなかった。それは鳴るはずのない音だった。
起爆装置としてセットした携帯電話が、鳴っている。
着信によって、起爆準備に入ったことを示す赤いランプが点灯した。電気信号が、男の想定したとおりに回路を駆け巡っていく。その様子が、まるでスローモーションのように、男の脳内に浮かぶ。
何故だ、そんなはずはない、だってこの電話は闇市場でこのためだけに購入した携帯電話、この番号にかけてくる相手などいるはずがない。ということは、まさか――
「間違いでん
次の瞬間、真っ白な閃光が迸り、男を包んだ。
アジトで密かに作り上げた爆弾は、爆発範囲は狭いながらも極めて強力な、男の自信作だ。
お手製の爆薬を取り付け、自分で書いた設計書どおりに配線し、おまけで特に意味はない赤と青とついでにピンクの線を付け加えて、最後に起爆装置替わりの携帯電話をセットして、さぁ完成。あとは設置して起爆するだけだ、さてさてどこを吹き飛ばしてやろうか……。
男がひとりほくそ笑んでいた、そのとき。
――ピリリ、ピリリ。
小さな電子音がアジトに響いた。
男はそれが何の音か、すぐには分からなかった。それは鳴るはずのない音だった。
起爆装置としてセットした携帯電話が、鳴っている。
着信によって、起爆準備に入ったことを示す赤いランプが点灯した。電気信号が、男の想定したとおりに回路を駆け巡っていく。その様子が、まるでスローモーションのように、男の脳内に浮かぶ。
何故だ、そんなはずはない、だってこの電話は闇市場でこのためだけに購入した携帯電話、この番号にかけてくる相手などいるはずがない。ということは、まさか――
「間違いでん
次の瞬間、真っ白な閃光が迸り、男を包んだ。
「食人鬼の改心」「2ブックマーク」
殺人鬼の男は犠牲者をわざと甚振り、残虐に殺害してからカニバリ、骨を山奥に埋める。
ある日いつものカニバリを終えた後、手にしたナイフを見てから殺人を一切しなくなった。
一体何故?
ある日いつものカニバリを終えた後、手にしたナイフを見てから殺人を一切しなくなった。
一体何故?
21年08月11日 15:30
【ウミガメのスープ】 [やまびこ]
【ウミガメのスープ】 [やまびこ]
![](/img/f-rh.png)
天童魔子さんにSPをして頂きました!
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男は小さい頃山に捨てられ、狼に育てられた。
山に迷い込んだ人間を襲って喰らい、狼の習性にならい骨を埋める。
そんな日々を続けていたある日、いつもの通り人間を喰らった後人間の持っていたギラギラと光るナイフに映る自分の姿を見て、男は自分が人間だと気付いてしまった。
人間だと気付いた以上、これ以上同族を殺める事は出来ず、人間以外の動物しか狙わないようになったのだった。
山に迷い込んだ人間を襲って喰らい、狼の習性にならい骨を埋める。
そんな日々を続けていたある日、いつもの通り人間を喰らった後人間の持っていたギラギラと光るナイフに映る自分の姿を見て、男は自分が人間だと気付いてしまった。
人間だと気付いた以上、これ以上同族を殺める事は出来ず、人間以外の動物しか狙わないようになったのだった。
「【再出題】しあわせの鳥」「2ブックマーク」
臆病なユウキ少年に、ラブレターを書く決意をさせたのは1羽の鳥であるという。
いったいどういうことだろう?
いったいどういうことだろう?
21年08月10日 23:01
【ウミガメのスープ】 [az]
【ウミガメのスープ】 [az]
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それは、離陸してから5分と経たないうちの出来事だった。遠方の親戚を訪ねるため飛行機に乗っていた木戸勇樹が座席から目撃したのは、{爆音と共に突如として炎を吹いたエンジン}だった。
次の瞬間、機体が大きくガクンと揺れた。窓から見えるエンジンは、真っ黒な煙を吹き上げている。何らかのトラブルが起きたことは火を見るよりも明らかだった。
「お客様にお知らせいたします。エンジントラブルの発生により、当機は緊急着陸いたします――」
にわかに騒がしくなる機内で、ユウキの脳裏をよぎったのは墜落の2文字。
真っ二つに割れた機体、燃え上がる炎、黒焦げの残骸。テレビで見た昔の飛行機事故の映像を思い出したユウキは、きっと自分は死んでしまうのだ、と思った。
恐怖と絶望の中、残された時間で何をすべきかを考えたユウキが、手荷物から取り出したのはペンとメモ帳だった。
死んでしまうのなら、せめて最後の言葉を残しておこう――。そう思ったユウキは震えるペン先を紙に走らせた。
まず家族への感謝のメッセージを書いた。ここまで育ててくれてありがとう。幸せな人生でした。
次に親友に宛てた言葉を記す。俺がいなくなっても、変わらず楽しくやってくれよ。
そして、あとは誰にメッセージを遺そう、と考えたとき、思い浮かんだのは高校のクラスメイトの長谷川サヤカの顔だった。中学で知り合って、一目惚れして以来、実に5年間も片想いを続けている相手だ。臆病なユウキには遂に告白などできなかったが、死んでしまうのなら、最後に想いだけでも伝えておきたかった。
「拝啓 長谷川沙也加様
残暑の厳しい候となりました。長谷川様におかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて、この度私は死ぬことになりまして」
そこまで書いて、ユウキはメモを破いた。
違う。なんだこれは。もっとストレートに想いを伝えなくては。
「ずっと前から好きでした! 僕と付き合ってください!
違う違う。死んだら付き合えない。ユウキはまたメモを破いた。
落ち着け、自分の気持ちを正直に書こう――。ユウキは息をひとつ吐くと、真っ白なメモ帳にペンを向けた。
やっとの思いでラブレターを書き上げたとき、機体が大きく振動した。いよいよ墜落か、とユウキは覚悟したが、次の瞬間、機内は歓声と拍手で満たされていた。
ユウキが手紙に夢中になっている間に、飛行機は着陸に成功していたのだ。
「助かった……!」
安堵のため息を漏らすユウキ。ようやく少し落ち着いた彼は、自分が握りしめている紙切れに目をやった。
「君の声は小鳥のさえずり? 僕は君のために天上から愛のハープを奏でよう? なんだこりゃ?」
……そこにあったのは、勢いに任せて書き上げたあまりにもあんまりなポエムだった。
呆然としていたのも束の間、爆発の恐れがあるのですぐに機内から出よとの指示。そうだ、まだ完全に助かったわけではないのだ――。現実を思い出し、ユウキは慌てて乗務員の指示に従い脱出した。
――エンジンは未だ、黒煙を上げている。手負いの鉄の鳥を眺めてユウキは、自分が置かれていた危機をあらためて実感して震え上がった。そして同時に、その危機を脱した安堵感から、全身の力が抜ける思いだった。
「そうだ、ラブレター……」
さっさとあの恥ずかしいポエムを処分しようと思い立ったユウキだが、そのポエムを記したメモがどこにもない。握りしめていたはずなのだが、どうやら脱出の途中で機内に落としてきてしまったようだ。
ユウキの顔がみるみる青ざめていく。今後、調査などで機内に入った誰かが、あの手紙を拾ったら……
ユウキは天を仰いだ。
あぁ……
爆発してくれ。
――・――・――・――
ユウキの祈りも虚しく、エンジンの火災は無事に消火された。結局、この事故による死傷者は一人もいなかった。
やがて専門家による調査が行われ、事故の原因は1羽の鳥がエンジンに巻き込まれたこと――いわゆる【バードストライク】だったことが判明した。
【要約】
ユウキの乗っていた飛行機が、バードストライクによりエンジントラブルを起こした。
墜落による死を覚悟した彼は、最期に自分の想いを遺しておくため、ラブレターを書こうと思った。
次の瞬間、機体が大きくガクンと揺れた。窓から見えるエンジンは、真っ黒な煙を吹き上げている。何らかのトラブルが起きたことは火を見るよりも明らかだった。
「お客様にお知らせいたします。エンジントラブルの発生により、当機は緊急着陸いたします――」
にわかに騒がしくなる機内で、ユウキの脳裏をよぎったのは墜落の2文字。
真っ二つに割れた機体、燃え上がる炎、黒焦げの残骸。テレビで見た昔の飛行機事故の映像を思い出したユウキは、きっと自分は死んでしまうのだ、と思った。
恐怖と絶望の中、残された時間で何をすべきかを考えたユウキが、手荷物から取り出したのはペンとメモ帳だった。
死んでしまうのなら、せめて最後の言葉を残しておこう――。そう思ったユウキは震えるペン先を紙に走らせた。
まず家族への感謝のメッセージを書いた。ここまで育ててくれてありがとう。幸せな人生でした。
次に親友に宛てた言葉を記す。俺がいなくなっても、変わらず楽しくやってくれよ。
そして、あとは誰にメッセージを遺そう、と考えたとき、思い浮かんだのは高校のクラスメイトの長谷川サヤカの顔だった。中学で知り合って、一目惚れして以来、実に5年間も片想いを続けている相手だ。臆病なユウキには遂に告白などできなかったが、死んでしまうのなら、最後に想いだけでも伝えておきたかった。
「拝啓 長谷川沙也加様
残暑の厳しい候となりました。長谷川様におかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて、この度私は死ぬことになりまして」
そこまで書いて、ユウキはメモを破いた。
違う。なんだこれは。もっとストレートに想いを伝えなくては。
「ずっと前から好きでした! 僕と付き合ってください!
違う違う。死んだら付き合えない。ユウキはまたメモを破いた。
落ち着け、自分の気持ちを正直に書こう――。ユウキは息をひとつ吐くと、真っ白なメモ帳にペンを向けた。
やっとの思いでラブレターを書き上げたとき、機体が大きく振動した。いよいよ墜落か、とユウキは覚悟したが、次の瞬間、機内は歓声と拍手で満たされていた。
ユウキが手紙に夢中になっている間に、飛行機は着陸に成功していたのだ。
「助かった……!」
安堵のため息を漏らすユウキ。ようやく少し落ち着いた彼は、自分が握りしめている紙切れに目をやった。
「君の声は小鳥のさえずり? 僕は君のために天上から愛のハープを奏でよう? なんだこりゃ?」
……そこにあったのは、勢いに任せて書き上げたあまりにもあんまりなポエムだった。
呆然としていたのも束の間、爆発の恐れがあるのですぐに機内から出よとの指示。そうだ、まだ完全に助かったわけではないのだ――。現実を思い出し、ユウキは慌てて乗務員の指示に従い脱出した。
――エンジンは未だ、黒煙を上げている。手負いの鉄の鳥を眺めてユウキは、自分が置かれていた危機をあらためて実感して震え上がった。そして同時に、その危機を脱した安堵感から、全身の力が抜ける思いだった。
「そうだ、ラブレター……」
さっさとあの恥ずかしいポエムを処分しようと思い立ったユウキだが、そのポエムを記したメモがどこにもない。握りしめていたはずなのだが、どうやら脱出の途中で機内に落としてきてしまったようだ。
ユウキの顔がみるみる青ざめていく。今後、調査などで機内に入った誰かが、あの手紙を拾ったら……
ユウキは天を仰いだ。
あぁ……
爆発してくれ。
――・――・――・――
ユウキの祈りも虚しく、エンジンの火災は無事に消火された。結局、この事故による死傷者は一人もいなかった。
やがて専門家による調査が行われ、事故の原因は1羽の鳥がエンジンに巻き込まれたこと――いわゆる【バードストライク】だったことが判明した。
【要約】
ユウキの乗っていた飛行機が、バードストライクによりエンジントラブルを起こした。
墜落による死を覚悟した彼は、最期に自分の想いを遺しておくため、ラブレターを書こうと思った。
「Distance」「2ブックマーク」
一人で映画を観るために、わざわざ同じ上映回のチケットを二枚購入した女。
上映中、空席となった隣の席に女が置いていたものは何だろうか。
上映中、空席となった隣の席に女が置いていたものは何だろうか。
21年08月10日 00:01
【20の扉】 [アルバート]
【20の扉】 [アルバート]
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遺影
「夢の国」「2ブックマーク」
ラテ国では、男性は太っている方が異性から好印象を持たれる(モテる)傾向がある。これは、古くから太った体型を「富の象徴」と見なす文化が根付いており、その影響が現代にまで残っているためだという。そのためラテ国の男性は若いうちから暴飲暴食をしがちで、肥満体型の者の割合は他国と比べても明らかに高かった。
事態を重く見たラテ国政府は、バランスの良い食事と適度な運動による適正体重の維持を推奨するキャンペーンを大々的に展開したのだが、するとラテ国の男性の多くは、むしろより一層、体重を増やそうとするようになったという。何故だろうか?
事態を重く見たラテ国政府は、バランスの良い食事と適度な運動による適正体重の維持を推奨するキャンペーンを大々的に展開したのだが、するとラテ国の男性の多くは、むしろより一層、体重を増やそうとするようになったという。何故だろうか?
21年08月14日 23:41
【ウミガメのスープ】 [アルバート]
【ウミガメのスープ】 [アルバート]
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ラテ国は現在、隣国と軍事的な対立状態にある。その緊張は日増し高まっており、近い将来、大規模な戦闘に発展する可能性は高いと思われていた。
本格的な開戦に備え、ラテ国政府は若い男性の徴兵を進めたいのだが、例の文化のせいで兵に適さない肥満体型の者が多く、徴兵は思うように進まない。
そこで政府はキャンペーンを展開し、国民意識を変えて自ら体重管理をさせることで、兵に適した体型の男性の数を増やそうとしたのだ。
だが、政府のその思惑は国民にはお見通しであり、多くの者は戦争になど行きたくなかったので、徴兵を逃れるために今まで以上に体重を増やそうとする者が増えたのだった。
とあるラテ国民男性の談話
「だって、痩せましょう痩せましょうって言う政府のお偉いさんが、どこの誰よりも一番太ってるんだからな。とりあえずあんたらが痩せて、あんたらが戦地に行け、話はそれからってモンだろう」
本格的な開戦に備え、ラテ国政府は若い男性の徴兵を進めたいのだが、例の文化のせいで兵に適さない肥満体型の者が多く、徴兵は思うように進まない。
そこで政府はキャンペーンを展開し、国民意識を変えて自ら体重管理をさせることで、兵に適した体型の男性の数を増やそうとしたのだ。
だが、政府のその思惑は国民にはお見通しであり、多くの者は戦争になど行きたくなかったので、徴兵を逃れるために今まで以上に体重を増やそうとする者が増えたのだった。
とあるラテ国民男性の談話
「だって、痩せましょう痩せましょうって言う政府のお偉いさんが、どこの誰よりも一番太ってるんだからな。とりあえずあんたらが痩せて、あんたらが戦地に行け、話はそれからってモンだろう」