「快楽殺人鬼に情はあるか?」「12ブックマーク」
狙った獲物を苦しませて殺す快楽殺人鬼、ラテソン。
彼が捕まえた人間の爪を剥がしながら、「お前は…殺さない」と言ったのはなぜ?
彼が捕まえた人間の爪を剥がしながら、「お前は…殺さない」と言ったのはなぜ?
23年05月30日 20:52
【ウミガメのスープ】 [ひゅー]
【ウミガメのスープ】 [ひゅー]
解説を見る
お前は… ベリッ 殺さない。
ベリッ 殺す。
ベリッ 殺さない。
ベリッ 殺す。
ベリッ 殺さない。
ベリッ 殺す。
ベリッ 殺さない。
ベリッ 殺す。
ベリッ 殺さない。
ベリッ 殺す。
ベリッ 殺さない。
ベリッ 殺す。
ベリッ 殺さない。
ベリッ 殺す。
ベリッ 殺さない。
ベリッ 殺す。
ベリッ 殺さない。
ベリッ 殺す。
ベリッ 殺さない。
<ベリッ 殺す。>
ベリッ 殺す。
ベリッ 殺さない。
ベリッ 殺す。
ベリッ 殺さない。
ベリッ 殺す。
ベリッ 殺さない。
ベリッ 殺す。
ベリッ 殺さない。
ベリッ 殺す。
ベリッ 殺さない。
ベリッ 殺す。
ベリッ 殺さない。
ベリッ 殺す。
ベリッ 殺さない。
ベリッ 殺す。
ベリッ 殺さない。
ベリッ 殺す。
ベリッ 殺さない。
<ベリッ 殺す。>
「Dyary スパイ」「12ブックマーク」
革命派の東国ハイオンと守旧派の西国ウェルー。両国は冷戦と熱戦の狭間にあった。
そんな中で、東国の総帥が病気により危篤となる。死は一刻を争う状態で、精神的支柱を失いつつある東国はまとまりを欠いていた。
こうした噂を耳にした西国の幹部サクリ。といっても実はサクリは、東国の総帥が秘密裏に派遣した東国のスパイであった。サクリは東国の劣勢を憂い、起死回生の一手として、苦心して入手した最終手段をついに用いることにした。
『Dyary』という日記帳状の道具で、これに日付・名前・状況を記すことで表紙の紋様が点滅し、記した通りに任意の相手一人を必ず自然な死に追いやることができる。ただし大きな制約として全体の回数制限があり、歴史の中で様々な人々に使われたために、今となってはあと一回しか使えない。
東国の総帥が危篤という今しか使用のタイミングはないだろうと思い、サクリは西国の総帥の名前を綴った。
{2023.8.8 ダズ・ライン 病死}
さて、サクリがDyaryへの書き込みに際して{極太の油性ペン}を用いた目的はなんだろうか?
{※}元ネタとして想起しうるあのノートについては、私がよく知らないくらいですので知識は不要です。
そんな中で、東国の総帥が病気により危篤となる。死は一刻を争う状態で、精神的支柱を失いつつある東国はまとまりを欠いていた。
こうした噂を耳にした西国の幹部サクリ。といっても実はサクリは、東国の総帥が秘密裏に派遣した東国のスパイであった。サクリは東国の劣勢を憂い、起死回生の一手として、苦心して入手した最終手段をついに用いることにした。
『Dyary』という日記帳状の道具で、これに日付・名前・状況を記すことで表紙の紋様が点滅し、記した通りに任意の相手一人を必ず自然な死に追いやることができる。ただし大きな制約として全体の回数制限があり、歴史の中で様々な人々に使われたために、今となってはあと一回しか使えない。
東国の総帥が危篤という今しか使用のタイミングはないだろうと思い、サクリは西国の総帥の名前を綴った。
{2023.8.8 ダズ・ライン 病死}
さて、サクリがDyaryへの書き込みに際して{極太の油性ペン}を用いた目的はなんだろうか?
{※}元ネタとして想起しうるあのノートについては、私がよく知らないくらいですので知識は不要です。
23年07月08日 23:47
【ウミガメのスープ】 [さなめ。]
【ウミガメのスープ】 [さなめ。]
解説を見る
【要約:】
サクリは西国の総帥の名前を通常のペンで書いたあと、表紙の紋様の点滅を待ってから日付と名前を極太の油性ペンで{黒塗り}した。
これによって、{『誰がDyaryの効果で病死したか』がうやむやになる。}サクリは東国の者共が、東国の総帥こそがその効果の該当者だと勘違いするように誘導しようとした。
(FAここまで。その詳しい意図は解説へ託す。)
【解説:】
サクリは人混みの中を闊歩していた。東国の総帥の秘書を待っているのだが、周囲の人間に必要以上に怪しまれてはいけない。やがて総帥の秘書が見えた際も、立ち止まることなく迅速に彼の持つ文書を奪い取った。
剣呑な目つきでその場をあとにする秘書を横目に、自身もその場を去る。西国の拠点にて一人でその文書を開くと、中には暗号でこんなことが書かれていた。
『親愛なる右腕 サクリへ綴る
東国ハイオンの総帥、私はついに病に侵された。西国との闘い半ばにして、無念なことである。
残念だが、私という求心力を失えば、東国の者はまとまりを欠き、憎き西国以下の正義しか執行できないほどになるだろう。ずっと苦心させてきただろうが、とうとう君に頼るほかなくなってしまった。
西国はもちろん、{味方の東国すら欺いて}秘密裏に派遣した我が右腕サクリよ。今こそ東国の人々を団結へ導き、西国を打ち砕く星となって欲しい。手段は問わない。
ドイ・バレン』
サクリは深く息をついた。ハイオンの総帥は、{父}はもうじき世を去る。それはサクリにとって哀しいことであるとともに、東国の多大な窮地をも招くであろう事実だった。
サクリは想像した。東国の人々は精神的支柱を失い、徐々に意志の分裂が起こる。主導者を失って革命的な東国の正義が明確には信じられなくなり、現状維持にすがるあまり西国に寝返ろうとする輩すら現れうる。東国は内部分裂の深化によって、意志の固い西国に大きく劣っていくことになる。このままでは敗戦は必至だ。
サクリは厳重に錠がなされた引き出しから日記状の代物を取り出し、表紙を静かに見つめた。「Dyary」。あと一回だけ、誰かを{自然な死}に追いやることのできる道具。今となってはこれに頼るしかない。思慮深いサクリですらそう感じる、絶望的な状況だった。
ずいぶん前にこれを手に入れてから、幾度となく使用を迷った。西国の総帥ダズ・ラインの名前を書けば、一発でたちまちに彼はいなくなる。
しかし、それだけでは目的の達成に不十分だった。
先の通り、東国とは対照的に守旧の西国は国の意志が硬く統一されている。一番トップの総帥がいなくなったところで、次に偉い誰かがたちまち指揮を安定させるだけだ。そしてその誰かは、幹部の自分とは限らない。
一方の我が東国はどうだろうか。総帥がいた頃ですら、まともな団結はギリギリの状態だった集団。総帥という柱をひとたび失えば、残るのは意志薄弱の平和ボケ集団だ。西国の総帥が死んだからといって、そこから一気呵成に攻めに転じられるとは考えられない。自陣のまとまりに腐心するうちに西国が体勢を立て直すのがオチだろう。
そんな状態では、自分というスパイが一人いたところで、西国側を内側から崩壊させることは難しい。ひと一人を殺めたくらいでは、革命の闘いは集結しないのだ。
また、サクリは{東国の人々にすら内密でスパイを行う身}である。(これも内密の情報であるが)東国の総帥の子供であるとはいえ、まとまりを欠いている東国を自分一人の力で{直接}団結に導くことは当然難しい。
今の状況のままでは、たとえ運よく西国を下せたとしても、{まとまりのない東国の統治では真の平和や真の統一は、決して実現できない。}革命は、決して完遂しない。
それに、道具概念としてのDyaryの存在は誰もが知っている。そうしたものを下手に使用して、攻勢に転ずる前にサクリの計画が明るみになれば、東国にメリットは何もない。
そうしたいくつもの制御しがたい懸念から、いつまでも使い所に恵まれずいたこの道具。しかしサクリは今、これを用いた起死回生の一手を編み出していた。
東国の総帥の病。自分が、東国の味方にすら知られていないスパイであること。西国の好戦的姿勢。
現状で生じつつあるこれらの不利な要素を、{一気に味方につける一手}を。
サクリは小さく流麗な字で、この世で最も憎い人間の名前を綴る。
{2023.8.8 ダズ・ライン 病死}
{一ヶ月後}、西国の総帥は病死する。{表紙の紋様の点滅を見届けて}、サクリは確信した。やはりこの道具は本物だったのだと安心するのも束の間、サクリはペンを持ち替えた。通常のペンから、極太の油性ペンへ。そして、自身の小さな字を{大胆に上書きした。}
{2023.}■■■■■■■■■ {病死}
震える手で少し歪んだ黒塗り。しかし、それが書き終わる頃には震えは止まり、サクリの覚悟の表情に迷いはなかった。
革命のためだったら、私は何だってする。ずっと前にそう決めたのだから。
病床に伏す父に、革命の主導者に誓いを立てる思いで、サクリは一旦再び、Dyaryを引き出しに入れた。
——————
その後、{東国の総帥の訃報が席巻し混乱が訪れる中}、サクリは「不用意にも」東国ハイオンに独断・孤立無援で侵入した。敵情視察という大層な名目を引っ提げつつ、その実は無能を演じる。サクリはやがて西国の幹部として、東国の人間に捕えられた。
所持品の押収に拷問じみた尋問。我が国ながら敵国の人間の処理は尤もなものだと感心する。苦しい尋問に耐えるサクリは舌を巻いた。
「おい、この日記帳はなんだ?」
監視員の怒号に、サクリは表情を変えず皮肉混じりに応える。
「さあ。何だろうな。噂の、魔法の日記帳か何かじゃないか。」
そのまま尋問を凌ぎ、サクリはあのページが開かれる瞬間を待った。
「ちょっと、教官!これ、最近の記述じゃないですか?」
「これは…。まさか、これってあのDyaryなんじゃないのか?最近の記述で誰かが殺されているみたいだ。
{ヤツは黒塗りで隠したつもり}だろうが、ここに総帥の名前が入っているとしたら…。」
{2023.}7.20. ドイ・バレン {病死}
「お前が…総帥を手にかけたのか。国の威信をかけた闘いに、こんな卑劣な道具を使いやがって!」
にわかに受容し難い推測に狼狽する監視員の二人は、サクリをそう罵倒した。こうした展開は、当初サクリの思っていたようなものになっていたのだった。
{西国の一員としか認識されない自分}がDyaryに綴るであろう人物は、東国の総帥と予想される。自分は、「西国の一員として東国のリーダーを卑劣な方法で死に追いやった者」だと認識される。
東国の総帥は本当に病で死んだ。しかし、それすらもこの日記帳によって仕組まれたものだと錯覚させることができれば…。サクリは、{そして西国は}、東国にとって卑劣なヤツに映るだろう。
威信をかけた闘いにフェアを欠いた、非道な西国。その西国が語る思想に傾倒することを迷っていた東国の人々は、この事件を知ってからはその迷いを断ち切る。反対勢力を手段を選ばず葬るような卑劣な西国を、革命によって打倒しようという風潮は、俄然に確固として強くなる。
カリスマのドイ総帥を殺めた西国への恨みを募らせ、東国は一致団結する。死してなお、ドイ総帥という精神的支柱が東国を導くのだ。
さらに西国には追い討ちとして、その後にダズ総帥の死が待っている。サクリが本来仕組んだ、計画的な死。のちに先の計画のために黒塗りにしてしまったかの書き込みだが、{当然上から黒塗りしたところで効果は消えない。}サクリが書き込んだ直後に{表紙の紋様が点滅したのが確認された時点で、書き込みを消そうが黒塗りしようが、仕組まれた死は不可避のものとなっている。}
その死の影響を西国が立て直す前に、団結した東国が攻めに転ずれば、東国の優勢が実現しうる、と考えたのだった。Dyaryの効果の実像と虚像。ひと一人を殺められる日記帳への書き込みを、サクリは二重に利用したというわけである。
事実、みるみるうちにその通りに、東国は優勢となった。今となってはもう、西国の陥落は時間の問題だろう。
それに…。それに、今の東国は革命へのまとまりを持った集団となった。ドイ総帥の、いや人々の{本来の意志}が全員に共有された今なら、西国を下せさえすれば{真の統一が実現できる。}
これは、ただ単に西国の総帥を病死させるだけでは叶わなかったことだ。東国の変わりようを目の当たりにし、サクリは改めて確信した。
私の犯したことは、決して間違いではなかった。
——————
サクリは今、東国の処刑台にいる。若き新たな総帥の立会いのもと、「一連の闘いにおける最大の悪人」を裁くときが訪れた。
『自由を志す我が東国の意志に反し、凄惨な方法で始祖たる元総帥の命を奪った西国の痴れ者』
処刑台に向かって、口々にそんな言葉が放たれた。
{全て真実だ}と、サクリは思った。
「西国の」総帥をDyaryで殺めたのは自分に違いないし、それは東国の意志に反する悪烈な行為である。自分は正体を隠していることに関係なく、もはや東国の人々に受け入れられることのない人間に堕ちてしまった。
それでもサクリは、満足そうに不敵な笑みを浮かべた。
『今こそ東国の人々を団結へ導き、西国を打ち砕く星となって欲しい。手段は問わない。』
ドイ総帥の、父の教えにしたがって東国を統一に導いたのは自分だ。ただ、誰にも知られずスパイを続けた自分に、痴れ者としての孤独は相応しい。私たちが全てを投げうってでも実現したかった自由が、まさに今、実現に向かっているのだから、進んで東国に立ちはだかった敵たる自分は、闘いの妥当な犠牲である。
自分一人が悪役となって、国が平らかになるのなら。
それが「我ら」の望みなのだから。
遠く眼前で、こちらに迷いのない軽蔑の眼差しを向ける新たな総帥へ、サクリは全ての希望を託すように、誰にも気づかれないほど小さく微笑んだ。
彼女が着ていた囚人服に刺繍された東国のエンブレムが、執行の瞬間、わずかに輝いた。
(終わり。)
【簡易解説:】
書き込みの名前部分を{黒塗り}し、誰がDyaryの効果で亡くなったのかわからなくするため。
サクリは西国の総帥の名前を通常のペンで書いたあと、表紙の紋様の点滅を待ってから日付と名前を極太の油性ペンで{黒塗り}した。
これによって、{『誰がDyaryの効果で病死したか』がうやむやになる。}サクリは東国の者共が、東国の総帥こそがその効果の該当者だと勘違いするように誘導しようとした。
(FAここまで。その詳しい意図は解説へ託す。)
【解説:】
サクリは人混みの中を闊歩していた。東国の総帥の秘書を待っているのだが、周囲の人間に必要以上に怪しまれてはいけない。やがて総帥の秘書が見えた際も、立ち止まることなく迅速に彼の持つ文書を奪い取った。
剣呑な目つきでその場をあとにする秘書を横目に、自身もその場を去る。西国の拠点にて一人でその文書を開くと、中には暗号でこんなことが書かれていた。
『親愛なる右腕 サクリへ綴る
東国ハイオンの総帥、私はついに病に侵された。西国との闘い半ばにして、無念なことである。
残念だが、私という求心力を失えば、東国の者はまとまりを欠き、憎き西国以下の正義しか執行できないほどになるだろう。ずっと苦心させてきただろうが、とうとう君に頼るほかなくなってしまった。
西国はもちろん、{味方の東国すら欺いて}秘密裏に派遣した我が右腕サクリよ。今こそ東国の人々を団結へ導き、西国を打ち砕く星となって欲しい。手段は問わない。
ドイ・バレン』
サクリは深く息をついた。ハイオンの総帥は、{父}はもうじき世を去る。それはサクリにとって哀しいことであるとともに、東国の多大な窮地をも招くであろう事実だった。
サクリは想像した。東国の人々は精神的支柱を失い、徐々に意志の分裂が起こる。主導者を失って革命的な東国の正義が明確には信じられなくなり、現状維持にすがるあまり西国に寝返ろうとする輩すら現れうる。東国は内部分裂の深化によって、意志の固い西国に大きく劣っていくことになる。このままでは敗戦は必至だ。
サクリは厳重に錠がなされた引き出しから日記状の代物を取り出し、表紙を静かに見つめた。「Dyary」。あと一回だけ、誰かを{自然な死}に追いやることのできる道具。今となってはこれに頼るしかない。思慮深いサクリですらそう感じる、絶望的な状況だった。
ずいぶん前にこれを手に入れてから、幾度となく使用を迷った。西国の総帥ダズ・ラインの名前を書けば、一発でたちまちに彼はいなくなる。
しかし、それだけでは目的の達成に不十分だった。
先の通り、東国とは対照的に守旧の西国は国の意志が硬く統一されている。一番トップの総帥がいなくなったところで、次に偉い誰かがたちまち指揮を安定させるだけだ。そしてその誰かは、幹部の自分とは限らない。
一方の我が東国はどうだろうか。総帥がいた頃ですら、まともな団結はギリギリの状態だった集団。総帥という柱をひとたび失えば、残るのは意志薄弱の平和ボケ集団だ。西国の総帥が死んだからといって、そこから一気呵成に攻めに転じられるとは考えられない。自陣のまとまりに腐心するうちに西国が体勢を立て直すのがオチだろう。
そんな状態では、自分というスパイが一人いたところで、西国側を内側から崩壊させることは難しい。ひと一人を殺めたくらいでは、革命の闘いは集結しないのだ。
また、サクリは{東国の人々にすら内密でスパイを行う身}である。(これも内密の情報であるが)東国の総帥の子供であるとはいえ、まとまりを欠いている東国を自分一人の力で{直接}団結に導くことは当然難しい。
今の状況のままでは、たとえ運よく西国を下せたとしても、{まとまりのない東国の統治では真の平和や真の統一は、決して実現できない。}革命は、決して完遂しない。
それに、道具概念としてのDyaryの存在は誰もが知っている。そうしたものを下手に使用して、攻勢に転ずる前にサクリの計画が明るみになれば、東国にメリットは何もない。
そうしたいくつもの制御しがたい懸念から、いつまでも使い所に恵まれずいたこの道具。しかしサクリは今、これを用いた起死回生の一手を編み出していた。
東国の総帥の病。自分が、東国の味方にすら知られていないスパイであること。西国の好戦的姿勢。
現状で生じつつあるこれらの不利な要素を、{一気に味方につける一手}を。
サクリは小さく流麗な字で、この世で最も憎い人間の名前を綴る。
{2023.8.8 ダズ・ライン 病死}
{一ヶ月後}、西国の総帥は病死する。{表紙の紋様の点滅を見届けて}、サクリは確信した。やはりこの道具は本物だったのだと安心するのも束の間、サクリはペンを持ち替えた。通常のペンから、極太の油性ペンへ。そして、自身の小さな字を{大胆に上書きした。}
{2023.}■■■■■■■■■ {病死}
震える手で少し歪んだ黒塗り。しかし、それが書き終わる頃には震えは止まり、サクリの覚悟の表情に迷いはなかった。
革命のためだったら、私は何だってする。ずっと前にそう決めたのだから。
病床に伏す父に、革命の主導者に誓いを立てる思いで、サクリは一旦再び、Dyaryを引き出しに入れた。
——————
その後、{東国の総帥の訃報が席巻し混乱が訪れる中}、サクリは「不用意にも」東国ハイオンに独断・孤立無援で侵入した。敵情視察という大層な名目を引っ提げつつ、その実は無能を演じる。サクリはやがて西国の幹部として、東国の人間に捕えられた。
所持品の押収に拷問じみた尋問。我が国ながら敵国の人間の処理は尤もなものだと感心する。苦しい尋問に耐えるサクリは舌を巻いた。
「おい、この日記帳はなんだ?」
監視員の怒号に、サクリは表情を変えず皮肉混じりに応える。
「さあ。何だろうな。噂の、魔法の日記帳か何かじゃないか。」
そのまま尋問を凌ぎ、サクリはあのページが開かれる瞬間を待った。
「ちょっと、教官!これ、最近の記述じゃないですか?」
「これは…。まさか、これってあのDyaryなんじゃないのか?最近の記述で誰かが殺されているみたいだ。
{ヤツは黒塗りで隠したつもり}だろうが、ここに総帥の名前が入っているとしたら…。」
{2023.}7.20. ドイ・バレン {病死}
「お前が…総帥を手にかけたのか。国の威信をかけた闘いに、こんな卑劣な道具を使いやがって!」
にわかに受容し難い推測に狼狽する監視員の二人は、サクリをそう罵倒した。こうした展開は、当初サクリの思っていたようなものになっていたのだった。
{西国の一員としか認識されない自分}がDyaryに綴るであろう人物は、東国の総帥と予想される。自分は、「西国の一員として東国のリーダーを卑劣な方法で死に追いやった者」だと認識される。
東国の総帥は本当に病で死んだ。しかし、それすらもこの日記帳によって仕組まれたものだと錯覚させることができれば…。サクリは、{そして西国は}、東国にとって卑劣なヤツに映るだろう。
威信をかけた闘いにフェアを欠いた、非道な西国。その西国が語る思想に傾倒することを迷っていた東国の人々は、この事件を知ってからはその迷いを断ち切る。反対勢力を手段を選ばず葬るような卑劣な西国を、革命によって打倒しようという風潮は、俄然に確固として強くなる。
カリスマのドイ総帥を殺めた西国への恨みを募らせ、東国は一致団結する。死してなお、ドイ総帥という精神的支柱が東国を導くのだ。
さらに西国には追い討ちとして、その後にダズ総帥の死が待っている。サクリが本来仕組んだ、計画的な死。のちに先の計画のために黒塗りにしてしまったかの書き込みだが、{当然上から黒塗りしたところで効果は消えない。}サクリが書き込んだ直後に{表紙の紋様が点滅したのが確認された時点で、書き込みを消そうが黒塗りしようが、仕組まれた死は不可避のものとなっている。}
その死の影響を西国が立て直す前に、団結した東国が攻めに転ずれば、東国の優勢が実現しうる、と考えたのだった。Dyaryの効果の実像と虚像。ひと一人を殺められる日記帳への書き込みを、サクリは二重に利用したというわけである。
事実、みるみるうちにその通りに、東国は優勢となった。今となってはもう、西国の陥落は時間の問題だろう。
それに…。それに、今の東国は革命へのまとまりを持った集団となった。ドイ総帥の、いや人々の{本来の意志}が全員に共有された今なら、西国を下せさえすれば{真の統一が実現できる。}
これは、ただ単に西国の総帥を病死させるだけでは叶わなかったことだ。東国の変わりようを目の当たりにし、サクリは改めて確信した。
私の犯したことは、決して間違いではなかった。
——————
サクリは今、東国の処刑台にいる。若き新たな総帥の立会いのもと、「一連の闘いにおける最大の悪人」を裁くときが訪れた。
『自由を志す我が東国の意志に反し、凄惨な方法で始祖たる元総帥の命を奪った西国の痴れ者』
処刑台に向かって、口々にそんな言葉が放たれた。
{全て真実だ}と、サクリは思った。
「西国の」総帥をDyaryで殺めたのは自分に違いないし、それは東国の意志に反する悪烈な行為である。自分は正体を隠していることに関係なく、もはや東国の人々に受け入れられることのない人間に堕ちてしまった。
それでもサクリは、満足そうに不敵な笑みを浮かべた。
『今こそ東国の人々を団結へ導き、西国を打ち砕く星となって欲しい。手段は問わない。』
ドイ総帥の、父の教えにしたがって東国を統一に導いたのは自分だ。ただ、誰にも知られずスパイを続けた自分に、痴れ者としての孤独は相応しい。私たちが全てを投げうってでも実現したかった自由が、まさに今、実現に向かっているのだから、進んで東国に立ちはだかった敵たる自分は、闘いの妥当な犠牲である。
自分一人が悪役となって、国が平らかになるのなら。
それが「我ら」の望みなのだから。
遠く眼前で、こちらに迷いのない軽蔑の眼差しを向ける新たな総帥へ、サクリは全ての希望を託すように、誰にも気づかれないほど小さく微笑んだ。
彼女が着ていた囚人服に刺繍された東国のエンブレムが、執行の瞬間、わずかに輝いた。
(終わり。)
【簡易解説:】
書き込みの名前部分を{黒塗り}し、誰がDyaryの効果で亡くなったのかわからなくするため。
「名探偵シュガー:交通事故の起こる密室」「12ブックマーク」
カメオが交通事故で死んだので、密室殺人事件の解決を専門とする名探偵シュガーが呼ばれた。
名探偵シュガーは一切その事故に関わっていないし、カメオと名探偵シュガーには面識すらなかったのだが、一体何故?
名探偵シュガーは一切その事故に関わっていないし、カメオと名探偵シュガーには面識すらなかったのだが、一体何故?
23年07月12日 18:35
【ウミガメのスープ】 [ベルン]
【ウミガメのスープ】 [ベルン]
BSの一案「名探偵シュガー」問題です
解説を見る
有名推理作家のカメオが書く、新聞に連載中の推理小説「海亀山荘の殺人」。
完璧と思われるほどの密室での殺人を取り扱った小説で、さらに謎が謎を呼ぶ展開から大変人気があった。
しかし、解決編の執筆に取りかかる直前、カメオが交通事故にあって死んでしまった。
世間ではカメオの突然の死を偲ぶと同時に、予期せず遺作となってしまった「海亀山荘の殺人」の真相を明らかにしたいと躍起になる人も多かった。
しかし誰もこれという真相に思い至らず、カメオの書斎からその犯人やトリックなどを記したメモなども一切みつからなかった。
そこで密室殺人事件を専門とする名探偵シュガーが呼ばれ、その犯人やトリックを突き止めてもらうことにした。
完璧と思われるほどの密室での殺人を取り扱った小説で、さらに謎が謎を呼ぶ展開から大変人気があった。
しかし、解決編の執筆に取りかかる直前、カメオが交通事故にあって死んでしまった。
世間ではカメオの突然の死を偲ぶと同時に、予期せず遺作となってしまった「海亀山荘の殺人」の真相を明らかにしたいと躍起になる人も多かった。
しかし誰もこれという真相に思い至らず、カメオの書斎からその犯人やトリックなどを記したメモなども一切みつからなかった。
そこで密室殺人事件を専門とする名探偵シュガーが呼ばれ、その犯人やトリックを突き止めてもらうことにした。
「推してだめなら」「12ブックマーク」
人気YouTuberグループ『らてらるず』の一人、幕雅府院ハヤトに本気で恋をしてしまったヒトミ。
叶わぬ恋だろうと思いながらも日に日に募る気持ちを抑えられなくなった彼女は、家にある中で最も思い入れのないぬいぐるみを、自宅のリビングに飾ることにした。
一体なぜ?
叶わぬ恋だろうと思いながらも日に日に募る気持ちを抑えられなくなった彼女は、家にある中で最も思い入れのないぬいぐるみを、自宅のリビングに飾ることにした。
一体なぜ?
23年07月23日 21:45
【ウミガメのスープ】 [「マクガフィン」]
【ウミガメのスープ】 [「マクガフィン」]
解説を見る
『要約』
ハヤトと同じく{『らてらるず』の一員である}ヒトミ。
告白が成功すれば良いが、もし振られてしまった場合には、今まで通りの関係を続けるために{「この告白はドッキリである」}という嘘をつくことに決めた。
その嘘の整合性をとるために、ヒトミ宅での告白をぬいぐるみに仕込んだ{隠しカメラで撮影}する準備をした。
※思い入れのないものを選んだのは、カメラを仕込む関係上、手を加える必要があったからである。
ハヤトと同じく『らてらるず』の一員である水平坂ヒトミ。
5人組としてずっと対等に切磋琢磨してきた仲であり、これから頑張らなくてはいけない時期にグループ内恋愛など認められない。
みんな、特にリーダーのハヤトはそう考えているのだろうと、彼女は気持ちを伝えられずにいた。
しかし誰よりも近くでハヤトを見つめる時間はあまりにも長く濃密で、残酷だった。
次第に恋心が抑えられなくなった彼女は、自宅にハヤトを呼んで想いを告白することに決めた。
告白がうまくいけばいい、ヒトミは心からそう思った。
だがそう楽観視できない状況であることもわかっている。下手をすればこれまで積み上げてきた信頼が崩れるかもしれない。
もし断られたとしても今まで通りの関係を続けていくためにはどうすればいいか、悩んだ末にヒトミが出した結論は、「この告白は『らてらるず』のドッキリ企画である」という嘘を保険として準備しておくことであった。
自宅にハヤトを呼び、告白する。
受け入れてもらえればそれでよし。晴れてこの想いが報われる。
受け入れられなければ、彼女は涙を流すだろう。彼は謝罪をするだろう。わかってくれると嬉しいと、そう優しく言うだろう。
そして彼女は無理に笑って告げるだろう。
{『ドッキリ大成功』}、と。
さて、この嘘を真実にするためには、告白の一部始終を撮影しておき、いざという時に実際に動画として公開できるように準備しておかなければならない。
押し入れからいつ買ったかも覚えていないクマのぬいぐるみを取り出したヒトミは、その体を切り開くと、内部に隠しカメラを仕込み、リビングの隅の棚の上に飾った。
ちょうど部屋のソファで話す2人が捉えられる角度にぬいぐるみを調整すると、録画開始のボタンをそっと押した。
彼女は今、独り静かに彼を待っている。
用意してきた愛の言葉を、頭で何度も繰り返しながら。
この不恰好な思いの丈を耳にするのが、ハヤトだけになることを願いながら。
「ねぇ、こないだのらてらるず観た?」
「肝試しのやつでしょ?最近ドッキリ系多いよねー。」
「あ、また新しい動画でたみたいだよ。」
「ほんとだ。なになに、
『ご報告』?」
ハヤトと同じく{『らてらるず』の一員である}ヒトミ。
告白が成功すれば良いが、もし振られてしまった場合には、今まで通りの関係を続けるために{「この告白はドッキリである」}という嘘をつくことに決めた。
その嘘の整合性をとるために、ヒトミ宅での告白をぬいぐるみに仕込んだ{隠しカメラで撮影}する準備をした。
※思い入れのないものを選んだのは、カメラを仕込む関係上、手を加える必要があったからである。
ハヤトと同じく『らてらるず』の一員である水平坂ヒトミ。
5人組としてずっと対等に切磋琢磨してきた仲であり、これから頑張らなくてはいけない時期にグループ内恋愛など認められない。
みんな、特にリーダーのハヤトはそう考えているのだろうと、彼女は気持ちを伝えられずにいた。
しかし誰よりも近くでハヤトを見つめる時間はあまりにも長く濃密で、残酷だった。
次第に恋心が抑えられなくなった彼女は、自宅にハヤトを呼んで想いを告白することに決めた。
告白がうまくいけばいい、ヒトミは心からそう思った。
だがそう楽観視できない状況であることもわかっている。下手をすればこれまで積み上げてきた信頼が崩れるかもしれない。
もし断られたとしても今まで通りの関係を続けていくためにはどうすればいいか、悩んだ末にヒトミが出した結論は、「この告白は『らてらるず』のドッキリ企画である」という嘘を保険として準備しておくことであった。
自宅にハヤトを呼び、告白する。
受け入れてもらえればそれでよし。晴れてこの想いが報われる。
受け入れられなければ、彼女は涙を流すだろう。彼は謝罪をするだろう。わかってくれると嬉しいと、そう優しく言うだろう。
そして彼女は無理に笑って告げるだろう。
{『ドッキリ大成功』}、と。
さて、この嘘を真実にするためには、告白の一部始終を撮影しておき、いざという時に実際に動画として公開できるように準備しておかなければならない。
押し入れからいつ買ったかも覚えていないクマのぬいぐるみを取り出したヒトミは、その体を切り開くと、内部に隠しカメラを仕込み、リビングの隅の棚の上に飾った。
ちょうど部屋のソファで話す2人が捉えられる角度にぬいぐるみを調整すると、録画開始のボタンをそっと押した。
彼女は今、独り静かに彼を待っている。
用意してきた愛の言葉を、頭で何度も繰り返しながら。
この不恰好な思いの丈を耳にするのが、ハヤトだけになることを願いながら。
「ねぇ、こないだのらてらるず観た?」
「肝試しのやつでしょ?最近ドッキリ系多いよねー。」
「あ、また新しい動画でたみたいだよ。」
「ほんとだ。なになに、
『ご報告』?」
「【夏季休暇の闇扉】一択の……」「12ブックマーク」
<{⬜︎}>【の部分に入る数字は6しかない】と知っていたにもかかわらず、6ではない数字を答えた学生が10人もいた。
一体なぜ?
一体なぜ?
23年09月16日 01:00
【ウミガメのスープ】 [霜ばしら]
【ウミガメのスープ】 [霜ばしら]
重い時用の解説文→ https://note.com/keccyap/n/na2085ea45417
解説を見る
【〖 答え 〗】
仲間内のとある男女を肝試しのペアにするため、くじ引きに細工をして口裏を合わせていたから。
同じサークルのカメオに片想いしていたが、中々二人きりになるチャンスがなく、告白するタイミングを見失いかけていたカメコ。
そんなこんなで夏休みが始まり、サークル仲間と肝試しをすることに。
夏休み中に告白すると決めたカメコは、{カメオとペアにしてほしい}とみんなに頼みこんだ。
前々から、両片思い状態の二人をじれったく思っていた仲間たちは、嬉々としてカメコに協力したという。
こうして、{6しか入ってないくじ}が用意され、カメコとカメコ以外の者は、「何だった?」「3」「私も3!」という風に、他の数字を引いたふりをして適当にペアを作るという{やらせ}が行なわれた。
ちなみに二人の順番が最後なのは、戻って来る彼らをみんなで祝福するため。
その後の酒盛りは、二人を肴に盛り上がること請け合いである。
仲間内のとある男女を肝試しのペアにするため、くじ引きに細工をして口裏を合わせていたから。
同じサークルのカメオに片想いしていたが、中々二人きりになるチャンスがなく、告白するタイミングを見失いかけていたカメコ。
そんなこんなで夏休みが始まり、サークル仲間と肝試しをすることに。
夏休み中に告白すると決めたカメコは、{カメオとペアにしてほしい}とみんなに頼みこんだ。
前々から、両片思い状態の二人をじれったく思っていた仲間たちは、嬉々としてカメコに協力したという。
こうして、{6しか入ってないくじ}が用意され、カメコとカメコ以外の者は、「何だった?」「3」「私も3!」という風に、他の数字を引いたふりをして適当にペアを作るという{やらせ}が行なわれた。
ちなみに二人の順番が最後なのは、戻って来る彼らをみんなで祝福するため。
その後の酒盛りは、二人を肴に盛り上がること請け合いである。