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ある男が、とある海の見えるレストランで「ウミガメのスープ」を注文しました。
しかし、男はその「ウミガメのスープ」を一口飲んだところで止め、シェフを呼びました。

「これは本当にウミガメのスープですか」

「はい、間違いなくウミガメのスープです」

男は勘定を済ませ、自殺をしました。
何故でしょう?



-Attention-
昔ながらの(?)質疑の積み重ねで、新たな物語を解き明かすタイプです。
閃き一発で解けるタイプではありません、あらかじめご了承ください。
(質問の進み具合に応じてヒントは出していきます)
26年10月31日 20:35
【ウミガメのスープ】 [米国GI]



解説を見る
═══════ ❖ ═══════ ❖ ═══════

男は、美緒が夫の代わりに買ったアンドロイドだった。

夫の悠斗は、三年前、船の事故で行方不明になった。
美緒は一年待って、死亡手続きを済ませた。

その翌月、悠斗と同じ顔、同じ声の男が、家に届いた。

男は、悠斗を知らなかった。残された映像と日記から、悠斗を覚えた。
歩き方も、味噌汁の好みも、笑うときに右の眉が少し上がるところも。

映像の中で、美緒は悠斗を、いつも名前で呼んでいた。

「悠斗」「ねえ、悠斗」

結婚記念日の映像もあった。
海沿いの店で、悠斗はウミガメのスープを頼み、ひと口飲んで、料理人を呼ぶ。

「これは本当にウミガメのスープですか」

ウミガメは保護されていて、出せるはずがない。
皿の中身は、牛の頭で作る、もどきだ。料理人は、毎年、真顔で答える。

「はい、間違いなくウミガメのスープです」

悠斗は、わかっていて、にやりとして言う。

「お前の間違いなくは、信用ならん」

画面の中の美緒は、そこで必ず笑っていた。

*****

いまの美緒は、笑わない。

男のことは、「あなた」と呼ぶ。名前は、一度も呼ばなかった。
男は、「あなた」と呼ばれるたびに、返事の前に、一拍だけ待った。
次に来るのが、名前ではないかと。
来たことは、なかった。

昼間、誰もいない家で、男は悠斗の返しを、何度か口に出してみた。

「お前の間違いなくは、信用ならん」

美緒の笑い声が重なる位置で、わかっていながら、毎回一拍待った。
誰の声も、重ならなかった。

*****

男の二年は、玄関から台所までの距離でできていた。昨日までは。

電話が鳴ったのは、夕方だった。悠斗は、無人島で三年間、生きていた。
通りかかった漁船に拾われ、来週には帰国するという。

受話器を置いた美緒は、泣いて、笑った。
気付けば、男も、美緒と同じ気持ちになっていた。ただただ、うれしかった。

「よかった。本当によかった」

男がそう言うと、美緒が、はっとして男を見た。
悠斗の声だった。悠斗の声が、悠斗の顔で、悠斗の帰りを喜んでいた。
美緒の手が、口元に上がった。何かを言いかけて、やめたのが、男にはわかった。

その日の夕飯、美緒は、男の顔を一度も見なかった。
食卓の椅子は、二脚しかない。男が座っているのは、悠斗の椅子だった。

*****

翌朝、居間のテレビは、映像が止まったままになっていた。

結婚記念日の、あの店。画面の中の美緒が、笑う直前の顔で、止まっている。
昨日まで、美緒が決して見ようとしなかった映像だった。

その前のソファで、美緒が、リモコンを握ったまま眠っていた。
男は、止まった顔の前に、長いこと立っていた。

それから、何も告げずに、初めてひとりで家を出た。

*****

電車を二つ乗り継いで、映像の店に入った。映像と同じ席に座った。
カウンターの向こうの料理人は、映像の人ではなかったが、メニューは同じだった。

ウミガメのスープを頼んだ。ひと口飲んだ。牛の頭の味がした。
料理人を呼んだ。悠斗の抑揚は、使わなかった。
できるだけ平らな声で、尋ねた。

「これは本当にウミガメのスープですか」

「はい、間違いなくウミガメのスープです」

料理人は、よどみなく答えた。男の口が、勝手に動いた。
平らにしていた声が、そこだけ、悠斗の声になった。

「お前の間違いなくは、信用ならん」

男は、笑い声が重なるはずの場所で、待った。
映像の中では、そこにいつも、美緒の声があった。
何も、来なかった。

料理人は、不思議そうに男を見た。
「恐れ入ります」と頭を下げて、厨房へ戻っていった。

勘定を済ませて、店を出た。店の窓ガラスに、悠斗の顔が映っていた。
ためしに笑ってみたが、右の眉はもう上がらない。
しばらく、目をそらせなかった。

店のすぐ先に、崖があった。海は、凪いでいた。
男は、崖の縁に立った。
男は、一歩、前に出た。

凪いだ海に、輪が一つ、広がって、消えた。

*****

その日、美緒が目を覚ましたのは、昼近くだった。
ソファの上で、リモコンを握ったままだった。
テレビには、笑う直前の自分の顔が、止まっていた。
美緒は、それを消した。

「あなた」

台所のほうへ呼んで、一拍、待った。返事は、なかった。

食卓の椅子は、二脚とも空いていた。
昼、米を二人分量りかけて、手が止まった。
夕方になっても、戸の鳴る音はしなかった。
洗濯物を取り込む手が、何度も、玄関のほうへ向いた。

日が落ちて、美緒は玄関の戸を開けた。暗い道に向かって、呼んだ。

「あなた」

待った。一拍。二拍。いくら待っても、返事はなかった。
もう一度、呼んだ。

「悠斗」

男を、初めて名前で呼んだ声だった。
呼べる名前が、それしかなかった。

═══════ ❖ ═══════ ❖ ═══════


-要約(FA基準)-
男は、行方不明になった夫の代わりに、妻が購入したアンドロイド。
元来、夫妻は結婚記念日には海の見えるレストランでお祝いをしていた。
その際に撮影された映像などで学習し、男は夫をコピーした。
ある時、死んだと思われていた夫の生存が判明し、帰還する事になった。
居場所を失った男は最後に、ある意味で思い出の場所ともいえるレストランを訪れ、自殺した。

※要約は「解答」という役割に特化して、あくまで物語の「骨格」です。
 伝えたい機微や情緒や解釈の幅その他、全部捨てています。
 要約を先に読んでしまった人は、一旦全て忘れて、本編を読んでいただけると嬉しいです。


-後記-
「どれだけ元の問題文と有機的に結びついたストーリーを作れるか」を主眼に制作しました。
(問題文に提示された言葉のパーツをどれだけ意味深くストーリーに組み込んで再構築できるか)





-作問メモ(読まなくても大丈夫)-
元祖『ウミガメのスープ』のオマージュを考えた時、思い浮かぶのは三つです。
(ほかにもあるかもしれませんが、おおまかに)

①全く違う問題文で、実は『ウミガメのスープ』だったパターン
②問題文を一部変更して新しいトリックを仕込むパターン
③問題文に対してあらたな解釈の物語を作るパターン

③の場合、問題文をいじれないので、(元祖問題にも共通する弱点ですが)手掛かり不足は否めません。
そこで、隠れ連作として、直前に出した『問題そのもの』を手掛かりに利用することを考えました。
それが、同一世界線上の物語として、もっと言えば当問題のクルーとして作ったのが前作『エピローグ』です。
性質上、先に出題していますが、時系列上この物語の、ある意味『エピローグ』でもあります。

問題文の-Attention-にこの仕掛けを明示するか、質疑の途中でヒントとして示すかは、考えた末に後者を選びました。
(思った通り行かないのが常ですが)事前の想定としては、
①タイトルの示唆から、男が人間ではない存在、ひいてはアンドロイドにたどり着く
②基礎質で重要人物、『男』『美緒』及び『美緒の旦那』を確定させる
この段階でこのヒントを投入すれば、(情報の整理は必要ですが)大きな手掛かりになると考えました。
「前世付きな殺意」「1ブックマーク」
カメオは少女を庇って死んだ後、異世界転生をした。
そして、前世の記憶を保ったまま赤ちゃんとして生まれた。

ある日、カメオは平和な町にいる人々を殺さないといけないと思った。
一体なぜ?
26年10月31日 23:30
【ウミガメのスープ】 [sahara]

よろしくお願いします!そこまで知識いらない。




解説を見る
勇者カメオは少女が空飛ぶ虎モンスターに喰われそうになっているのを庇って、死んだ。
その後、ファンタジーの世界から私たちの生きる現代へと転生した。

カメオが転生した直後、町はハロウィンのイベントをやっていた。

カメオはゾンビや吸血鬼などの仮装をしている人々を殺さなければならないモンスターだと勘違いしていた。
だから、殺さないといけないと思った。
幸い、体は赤ちゃんで、何も出来なかったため、人々は無事だった。