ガイド:問題の作り方
ウミガメのスープを遊んだことがあると、「自分でもこういう問題を作ってみたい」と思うことがあります。
けれど、いざ白紙を前にすると、どこから考えればいいのか分からなくなる人も多いはずです。
このページでは、まだ問題がない状態から、最初の1問を形にするまでの考え方を、初心者向けに整理して説明します。
ここで扱うのは、できた問題をより良くするための改善論ではありません。まずは、嘘のない1問を立ち上げるための考え方、つまり0→1を作るための入口に絞って話します。
- 「名作の作り方」を断定するのではなく、最初の1問を立ち上げるための考え方をまとめています。
- 作問の入口は一つではありませんが、初心者が進めやすい流れを中心に整理しています。
-
このページは0→1の作り方が中心です。
できた問題をさらに磨きたい場合は、 ガイド:問題をさらに良くする を読んでください。
目次 #
- まず押さえたい、作問の基本原則
- 作り方に唯一の正解がない理由
- ネタの種は、どこから拾えばいいのか
- 入口はいろいろあるが、初心者には「真相先行」が作りやすい
- 真相の核を決める
- 誤認の方向を決める
- 「何を省き、何を残すか」を考える
- 問題文の原型を作る
- 初心者がつまずきやすいポイント
- まずは「完成度」より「成立」を目指す
- 最後に
まず押さえたい、作問の基本原則 #
ウミガメのスープにはいろいろな型がありますが、初心者が最初に意識したい原則はかなり共通しています。
まずはここを土台にすると、作問の方向がぶれにくくなります。
問題文に嘘は書かない #
解説を読んだときに、「あの一文は実は嘘でした」となってしまうと、クイズとしての土台が崩れます。
問題文は短くてもかまいませんが、解説と矛盾しないことは必須です。
後出しで強引にしない #
真相は自由に作れますが、自由だからこそ、あとから無理にねじ込んだような設定にしないことが大切です。
解説を知ったあとで、「それなら最初からそう書いておいてほしい」と思われるような作りは避けたいところです。
質問によって真相へ近づけるようにする #
ウミガメのスープは、質問者が質問を重ねながら、少しずつ状況を絞っていく遊びです。
そのため、真相はただ意外であればいいのではなく、質問によって少しずつ近づける構造になっている必要があります。
問題文には「引っかかり」を置く #
読み手が「えっ、それはどういうこと?」と感じる不思議さがないと、問題としての魅力が弱くなります。
これは用語集でいう
チャーム
にあたる部分で、派手な展開でなくても、日常の中の小さな違和感で十分です。
ただ隠すのではなく、自然に誤認させる #
ここは特に大切です。ウミガメのスープでは、必要な情報を全部隠せばいいわけではありません。
全部伏せてしまうと、答えようのない問題になってしまいます。
面白いのは、嘘は書いていないのに、読み手が自然に別の状況を想像してしまうことです。
つまり、作問で大事なのは「隠すこと」そのものよりも、読み手が勝手に誤認してしまう見せ方です。そうなっているからこそ、質問を重ねるうちにその誤認が崩れ、「そういうことだったのか」と納得できます。
真相が分かったときの納得感を重視する #
トリックが奇抜でも、解説に無理があると満足感は出ません。
真相を知ったときに「意外だけれど、たしかにそう読める」「ちゃんと筋が通っている」と思える形を目指しましょう。
作り方に唯一の正解がない理由 #
ウミガメのスープは、出発点が人によってかなり違います。
日常の違和感から作る人もいれば、言葉の二重の意味から作る人もいます。既存の一場面を切り取って問題にする人もいれば、先に真相だけ思いついて、そこから問題文を考える人もいます。
そのため、「絶対にこの順番で作るべき」とは言い切れません。
ただ、初心者にとっては、入口が多すぎるとかえって迷いやすくなります。そこで、まずはよくある入口を知ったうえで、組み立てやすい流れに寄せて考えるのが有効です。
特に初心者におすすめしやすいのは、真相を先にある程度固めてから、そこに誤認を仕掛けて問題文にする流れです。
もちろん、それ以外の入口から入ってもかまいません。大事なのは、自分に合う入口を見つけつつ、最終的に「嘘がなく、質問で崩せる謎」に着地させることです。
ネタの種は、どこから拾えばいいのか #
何もないところから突然名作を発明しようとすると、たいてい手が止まります。
でも、実際の作問は、完全な無から始まることばかりではありません。日常で見たもの、聞いた話、ニュースの一場面、コントや漫画の構図、昔印象に残ったやり取りなどから着想することはよくあります。
大切なのは、元ネタをそのままなぞることではなく、そこにある違和感の核や、誤認のポイントを抜き出して、自分の問題として組み立て直すことです。
日常の出来事を少しずらして見る #
当たり前の出来事も、言い方を変えるだけで不思議に見えることがあります。
たとえば、女性が一人暮らしだと悟られにくくするために、男物の靴をわざと玄関に出しておく、という行動も、「家にいない誰かが、そこにいるように見せようとした」と言い換えると、少し違った見え方になります。
一場面だけを切り取る #
長い物語の全部を考えなくても、印象的な一瞬だけを切り取ると、問題の核になることがあります。
たとえば、「喜んでいるのに泣いている」「逃げたはずなのに戻ってきた」「注意されたのに安心した」など、前後を知らないと奇妙に見える一場面です。
既存の話や構図を、自分なりに組み替える #
ニュース、コント、漫画、実話などから、構図だけを借りることもできます。
ただし、そのまま写すのではなく、視点を変えたり、重要な言葉を外したり、別の状況に置き換えたりして、問題として成立するように組み替える必要があります。
入口はいろいろあるが、初心者には「真相先行」が作りやすい #
ここまで見たように、作問の入口はいろいろあります。
けれど、実際に最初の1問を作るとなると、初心者が一番つまずきにくいのは、先に真相をある程度決めてから問題文へ落としていく方法です。
最初から問題文だけ作ろうとすると、「何を隠せばいいのか」「どこが謎なのか」が曖昧になりがちです。
その点、先に真相を持っていれば、そこから次のことを順番に考えやすくなります。
- 何を当てさせたいか
- 何を隠すか
- 何を残すか
- どこで誤認させるか
もちろん、場面や言葉から入ってもかまいません。ただ、迷ったときはまず「実はこういう状況だった」という答え側を先に決めてみると進めやすくなります。
真相の核を決める #
作問の中心になるのは、やはり真相です。
ここでいう真相とは、「誰が、どこで、何をしたから、こう見えたのか」という、問題の土台になる事実のことです。
まず「何を当てさせたいか」を決める #
真相全体がひとつでも、質問者に当ててもらいたいポイントはいくつか考えられます。
行動の目的なのか、登場人物の立場なのか、言葉の意味なのか、状況の勘違いなのか。ここが曖昧だと、問題文を書き始めたときに焦点がぼやけます。
- なぜそんな行動をしたのかを当ててほしい
- その人の正体を当ててほしい
- その言葉の意味を当ててほしい
- 一見おかしい場面の裏事情を当ててほしい
このように、謎の中心を一つ決めるだけでも組み立てやすくなります。
納得できる真相にする #
真相は意外であることも大切ですが、それ以上にあとから読んで納得できることが大切です。
作り手の頭の中にしかない特殊なルールや、偶然が重なりすぎた状況だと、解説を読んでも腑に落ちにくくなります。
初心者のうちは、日常的な行動原理、よくある勘違い、普通の心理、身近な出来事などを核にした方が、問題として成立させやすいです。
質問で近づける真相かを考える #
真相が面白くても、質問で近づけないなら、ウミガメのスープとしては扱いづらくなります。
つまり真相は、ただ突飛であればいいのではなく、質問によって少しずつ削っていける形であることが望ましいです。
「それは勘違いですか」「ほかに人物はいますか」「目的が普通と違いますか」などの質問で輪郭が出てくる真相は、初心者にも扱いやすい真相です。
作問するときに、「どんな質問が来そうか」を少し想像できると組み立てやすくなります。
質問の考え方そのものは、上手な質問の仕方も参考になります。
誤認の方向を決める #
真相が決まったら、次はそれをどう誤認させるかを考えます。
ここで大事なのは、真相を完全に消すことではなく、読み手がまず別の解釈をしやすいように見せることです。
言葉の意味をずらす #
ひとつの言葉に複数の意味があるとき、読み手が自然に一方へ寄るように問題文を作る方法です。
これは用語集でいう
言葉遊び
に近い発想ですが、特殊すぎる意味や無理のある日本語に頼ると、不自然な引っかけに見えやすいので注意が必要です。
目的を隠して行動だけ見せる #
行動そのものは普通でも、目的が見えないと奇妙に見えることがあります。
たとえば、防犯のための行動や、誰かへの配慮、勘違いによる行動などは、目的を伏せるだけで不思議な場面になりやすいです。
立場や関係性をずらす #
「この人は当然こういう立場だろう」という読み手の前提を利用して誤認を生む方法です。
ただし、名前の特殊さや極端な抜け道に頼りすぎると、自然な誤認ではなく、不意打ちに見えやすくなります。
時系列や見えている範囲を絞る #
前後の事情を隠したり、一瞬だけを切り取ったりすることで、別の状況に見せる方法です。
これもウミガメのスープではよく使われます。
「何を省き、何を残すか」を考える #
問題文を作るとき、初心者は「何を隠すか」ばかり考えがちですが、実際には何を残すかのほうが大事です。
全部を削ってしまうと、ただ意味不明な文章になります。
ウミガメのスープで必要なのは、「不思議な状況は見えているが、その意味だけが分からない」状態です。
- 行動は残すが、目的は隠す
- 結果は残すが、原因は隠す
- 発言は残すが、前提状況は隠す
- 感情は残すが、理由は隠す
初心者のうちは、真相の中から一つだけ隠す要素を決めて、それ以外の不思議に見える部分は問題文に残す、という考え方が扱いやすいです。
問題文の原型を作る #
ここまで決まれば、いよいよ問題文の原型を作れます。
この段階では、まだ細かい言い回しを詰め切る必要はありません。まずは、真相と問題文がちゃんとつながっているかを優先します。
ミニ例題で流れを見る #
ここでは、説明用の実例として、甘木さんの問題
「担任教師」
を使って流れを見てみます。
この問題は、「なぜそんな行動をしたのか」ではなく、「違和感の正体は何か」を当ててもらう型の例です。
掲載にあたっては、甘木さんにご許可をいただきました。ありがとうございます。
身近な題材でありながら、どこで誤認が生まれているのかが見えやすく、作問の流れを説明する例として使わせていただきます。
STEP 1:題材を決める
「テスト用紙の不正解だったところに○がついていたら、ふつうは採点ミスに見える」という、学校で誰でも想像しやすい場面を題材にします。
STEP 2:真相を決める
「その○は採点の印ではなく、先生が置いた湯呑みの跡だった」を真相にします。
STEP 3:何を当てさせたいかを決める
この例では、「なぜそんな行動をしたのか」ではなく、「問題文の違和感の正体は何か」、つまり○の正体を当ててもらいたいと決めます。
STEP 4:誤認の方向を決める
テスト用紙に○がある以上、読み手はまず「先生が採点を間違えたのではないか」と考えやすいです。
そこで、「不正解だった問題の所に○がついていた」「先生に文句を言った」「先生は謝った」という情報を残しつつ、「点数は変わらなかった」という事実を加えることで、採点ミスのようで採点ミスではない状況にします。
こうすると、読み手は自然に採点ミスを疑いながらも、そこでは説明しきれない違和感を抱えることになります。
STEP 5:問題文の原型にする
たとえば、原型は次のようになります。
亀太郎が先生から返してもらったテスト用紙を見ると、亀太郎が不正解だった問題の所に○がついていた。
亀太郎は先生が真面目に採点していないことを怒り、先生に文句を言った。
先生は素直に反省し、亀太郎に謝った。
亀太郎のテストの点数は変わらなかった。
状況を説明してください。
- 隠しているのは、○の正体が採点結果ではないこと
- 誤認させているのは、「テストの○だから採点の印だろう」という読み手の自然な思い込み
- 「その○は採点の印ですか」「点数が変わらないことは重要ですか」などの質問で真相に近づけます
原型ができたら、質問の流れを少しだけ想像する #
この段階で、どんな質問が来そうかを2〜3手だけ想像してみると、問題文の方向性が見えやすくなります。
全部の質問を予想する必要はありませんが、少なくともどこから崩れていく問題なのかは意識しておくと、作りやすさがかなり変わります。
初心者がつまずきやすいポイント #
最初のうちは、似たところで何度かつまずきやすいので、あらかじめ知っておくと楽です。
自分にしか分からない理屈で作ってしまう #
作り手の頭の中ではつながっていても、読み手には飛躍に見えることがあります。
「この人ならこう考えるはず」と思い込みすぎると、解説が伝わりにくくなります。まずは、誰が読んでも理解しやすい行動原理に寄せた方が安全です。
要素を盛り込みすぎる #
難しくしようとして人物や条件を増やすと、謎の中心がぼやけます。
最初のうちは、「不思議な点は一つ」「当ててほしいことも一つ」くらいの気持ちで作った方がまとまりやすいです。
情報を削りすぎる #
逆に、難しくしようとして情報を削りすぎると、何が謎なのかすら分からなくなります。
ウミガメのスープでは、分からなさそのものよりも、不思議な状況の輪郭は見えているのに意味だけが分からない状態を作ることが大切です。
最初から知識依存を強くしすぎる #
特定の作品、専門知識、歴史的事情を知らないと入口に立てない問題は、初心者には扱いが難しいです。
もちろん、知識を使う問題そのものが悪いわけではありません。ただ、最初のうちは、誰もがイメージしやすい題材の方が、誤認や誘導の練習をしやすくなります。
不自然な引っかけに頼る #
名前の特殊さ、普通はしない一人称の使い方、極端な言葉の抜け道などに頼ると、「うまい誤認」ではなく「無理な引っかけ」に見えやすくなります。
初心者のうちは、まず日常的な言葉の範囲で自然に誤認が起きる形を目指すのが無難です。
問題文だけで解ける状態にしてしまう #
瞬殺そのものが絶対に悪いわけではありませんが、ウミガメのスープでは質問で探る楽しさが大きな部分を占めます。
最初から問題文だけでほとんど
正解が見えてしまう場合は、
ベールのかけ方や、
クルーの残し方を見直してみると整いやすくなります。
「当てろ」状態にしてしまう #
逆に、選択肢だけが無数にあり、どれを絞ればいいのか分からない状態も避けたいところです。
これは用語集でいう
「当てろ」状態
に近く、質問で少しずつ範囲が狭まるように、問題文の時点である程度の輪郭や方向性を残しておくと、遊びやすい問題になりやすいです。
まずは「完成度」より「成立」を目指す #
最初から名作を作ろうとすると、手が止まりやすくなります。
けれど、0から1の段階で本当に大事なのは、完璧さよりもまず問題として成立していることです。
- 問題文に嘘がない
- 解説とつながっている
- 何を当てさせたいかがある程度はっきりしている
- 質問で近づける
- 読み手に何かしらの引っかかりがある
このあたりが満たせていれば、最初の1問としては十分に前進です。
最後に #
まずは、嘘がなく、質問で少しずつ真相へ近づける1問が形になれば、0から1のステップは成功です。
そこから先には、別解を減らす、難易度を整える、表現を磨く、より印象的なチャームを作る、といったブラッシュアップの工程があります。
ただ、それらは最初の作問とは少し別の技術です。
最初からそこまで全部やろうとすると、かえって動けなくなることがあります。だからまずは、日常の一場面でも、聞いた話でも、思いついた小さな違和感でもいいので、ひとつの真相を決めて、それをどう誤認させるかを考えてみてください。
ウミガメのスープの作問は、無から壮大な謎を発明することではありません。
むしろ、すでにどこかにある出来事や感覚の中から、「不思議に見える切り口」を見つけて整えることに近い作業です。
まずは1問。
完璧でなくても、嘘のない原型ができれば、そこから先はいくらでも育てていけます。
1問の原型ができたら、次に考えたいのは「どうすればもっと遊びやすく、解きやすい問題になるか」です。
問題文と解説の整合性だけでなく、参加者にとっての質問のしやすさや、進行のしやすさまで含めて見直したい場合は、
ガイド:問題をさらに良くする
に進んでください。












