「アフター5の暗殺者〜君は命の価値を知っているか?〜」「9Good」
良質:3票物語:6票
ボナオは大企業『電磁ボーナス社』で働くサラリーマンである。
業績は高く、社内からの信頼も厚い。まさしく理想の社会人であった。
そんな彼はある日、自分の{給料}に関して質問されたのでとっさに{嘘}をついた。
一体なぜか??YESかNOで答えられる質問で真実を解き明かしなさい。
(元ネタあり。初見で分かった方はROMでお願いします。)
業績は高く、社内からの信頼も厚い。まさしく理想の社会人であった。
そんな彼はある日、自分の{給料}に関して質問されたのでとっさに{嘘}をついた。
一体なぜか??YESかNOで答えられる質問で真実を解き明かしなさい。
(元ネタあり。初見で分かった方はROMでお願いします。)
19年09月23日 11:29
【ウミガメのスープ】 [弥七]
【ウミガメのスープ】 [弥七]
Special Thanks!!! 電磁ボーナスさん(タイトルもろもろお借りしました^ ^)
解説を見る
<解説>
簡易解答:毎日仕事で忙しいボナオと遊びたかった娘が、{時給}を聞いてお父さんをお小遣いで買おうとした。娘に寂しい思いをさせていることに気づいたボナオは給料を実際よりずっと低く申告し、だからたくさん遊べるね、と言ったのである。
ーーーーーーーーーー
時間は…夜の1時頃だったろうか?
俺が自宅に帰る時間は決まって深夜であったが、はっきりと覚えているわけではない。
静まり返ったマンションの8階。下降するエレベーターのモーター音をやけに大きく感じながら、玄関の扉にスマートフォンをかざした。
いつものように、家族を起こさないよう電気をつけず手探りで冷蔵庫を漁った。妻の作った夕飯を机に並べながらふと、部屋の中がいつもより少しだけ明るいことに気付いた。
寝室のドアから、照明の光が漏れていた。消し忘れだろうか??
するとその隙間からひょっこりと、娘の顔が出てきた。
「おかえり、パパ。」
「どうした?こんな遅くに。眠れないのか?」
トコトコと娘が俺の方まで歩きてきた。妻が買ったのだろうか?かわいいパジャマだ。
「パパにね、お願いがあるの。」
こんな時間にお願いとはなんだろう??全く想像できなかった。
「どうした?お小遣いでも欲しくなったか?^ ^」
「うん…。」
冗談めかして言ってみたつもりが、予想外の答えが返ってきたので少しびっくりした。娘も5歳になるし、欲しいものもあるんだなぁと人ごとのように感心してしまった。
とはいえ言った手前あげないわけにはいかないだろう。5歳だしなぁ…少し考えて、俺は財布の中に入っていた300円を娘に与えた。娘はありがとう、と言って両手で受け取った。
「ねえ、」
娘はもらったそれらを握りしめながら言った。
「…パパは、{1じかんでどれくらいのお金がもらえるの?}」
時給のことかい?と聞くと、わからないけど…と返ってきた。
「うーん…1ヶ月働いて、給料はだいたいこのくらいだから…ええと」
実際のところ、俺の給料は同年代のサラリーマンに比べてずっといい。営業成績は高い方だし、社内からの信頼も大きいと自負している。
「…そうだな、だいたい3000円くらいかな。」
「それって、これよりおおい?」
彼女は手に持っていたお金をまた俺の前に広げて見せた。
そっかそっか、まだわからないよな^ ^
「もっともっと多いぞー。だから心配しなくていいよ?
それもらっても、お父さん怒らないから。」
「そっか…」
かわいいなぁ。娘とのやりとりにとても癒された。そういえば娘と会話したのも久しぶりだったような気がする。こんな時間に起きていてくれたこと、感謝しないとな。明日からまた頑張れそうだ。さて、これから寝かせて夕飯をば……
「そっか、じゃあ、全然足りないね。」
「え?」
突然の言葉に面食らった。俺の給料のことか?それともお小遣いのことか?娘の欲しいものとは、一体なんなんだ?理解できないまま反射的に言葉が口をついて出た。
「えっ、それってどういう…」
「はいこれ」
娘は俺に、握りしめた両手をずいと押し付けた。手を開くと、じゃらという音とともに、硬貨が3枚現れた。
…300円だ。
「お願いします
このお金で、パパと遊ぶ時間を買えるだけください。」
目の前で、娘は泣いていた。
家族を守るために、娘の将来の幸せのために。
自分を犠牲にして、昼夜問わず一生懸命働いてきた。
しかし俺は、いままでもっと大きなものを犠牲にし続けてきたのかもしれない。そう思った。
ひと呼吸おいて、俺は娘に言った。
「ごめん、お父さんね、いま{嘘}ついたわ。」
ーーーーーーーーーー
〜『電磁ボーナス』社内にて〜
「あり?ボナオ先輩、珍しいっスね。定時に帰るなんて。」
「ああ、そうだな」
「むむっ、その声、もしかして女ですか!?僕の耳はごまかせませんよ!!家庭があるのに、いけないんだぁ〜〜><」
「???まあ、そういえなくもないな」
「否定しないんスか…どんな女なんです??」
「最高の女よ。そんでもって俺にゾッコン。(ニヤニヤ)」
「へえ〜〜(ドン引き)」(こいつ、{悩殺}されてヤンの...)
「じゃ、そういうことで、後よろしく。
……あ、そうそう。俺これから毎日定時で帰ることにするから。」
「えっ!?どういうことですか??先輩がいないと仕事がまわりませんって〜〜」
「しょうがないだろ、俺の残りの人生全部買うって言われちゃったら。」
「はあ!!?女に?人生全部売ったって!!?ってかいくらもらったんですか、先輩!!!」
「いくらって、そりゃあ……
俺の名前はボナオ。
大手株式会社『電磁ボーナス』で働くサラリーマンだ。
自分で言うのもなんだが、業績は高く、社内の信頼も厚い。請け負った仕事は必ずこなす。
しかし、大切な人を目の前にしたら。
そんな俺の価値など、たとえ一生を捧げたって…
…たった{300円}あればいい。
(おしまい)(この物語は全てフィクションです。)
元ネタ:「An Hour of Your Time」
http://mylifeyourlife.net/2013/03/an-hour-of-your-time/
余談ですが…
『忙』という字は「心(りっしんべん)を亡くす」と書きます。
確かに忙しさで我を忘れると、心がささくれ立ってしまうものです。
学校で、部活で、会社で、家庭で。
そして私たちは忙しさに追われ、他人に優しさ(心)を与えるチャンスを失ってしまいます。
その間にも一刻一刻と過ぎていく時間。
もしその時間をお金で買い戻すことができたら、どんなに素晴らしいでしょう。
あなたなら、『大切な人と過ごす時間』を一体いくらで買いますか?
逆にその時間を取り戻したいと言われたら…
…あなたは一体いくらで売りますか??
(弥七)
簡易解答:毎日仕事で忙しいボナオと遊びたかった娘が、{時給}を聞いてお父さんをお小遣いで買おうとした。娘に寂しい思いをさせていることに気づいたボナオは給料を実際よりずっと低く申告し、だからたくさん遊べるね、と言ったのである。
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時間は…夜の1時頃だったろうか?
俺が自宅に帰る時間は決まって深夜であったが、はっきりと覚えているわけではない。
静まり返ったマンションの8階。下降するエレベーターのモーター音をやけに大きく感じながら、玄関の扉にスマートフォンをかざした。
いつものように、家族を起こさないよう電気をつけず手探りで冷蔵庫を漁った。妻の作った夕飯を机に並べながらふと、部屋の中がいつもより少しだけ明るいことに気付いた。
寝室のドアから、照明の光が漏れていた。消し忘れだろうか??
するとその隙間からひょっこりと、娘の顔が出てきた。
「おかえり、パパ。」
「どうした?こんな遅くに。眠れないのか?」
トコトコと娘が俺の方まで歩きてきた。妻が買ったのだろうか?かわいいパジャマだ。
「パパにね、お願いがあるの。」
こんな時間にお願いとはなんだろう??全く想像できなかった。
「どうした?お小遣いでも欲しくなったか?^ ^」
「うん…。」
冗談めかして言ってみたつもりが、予想外の答えが返ってきたので少しびっくりした。娘も5歳になるし、欲しいものもあるんだなぁと人ごとのように感心してしまった。
とはいえ言った手前あげないわけにはいかないだろう。5歳だしなぁ…少し考えて、俺は財布の中に入っていた300円を娘に与えた。娘はありがとう、と言って両手で受け取った。
「ねえ、」
娘はもらったそれらを握りしめながら言った。
「…パパは、{1じかんでどれくらいのお金がもらえるの?}」
時給のことかい?と聞くと、わからないけど…と返ってきた。
「うーん…1ヶ月働いて、給料はだいたいこのくらいだから…ええと」
実際のところ、俺の給料は同年代のサラリーマンに比べてずっといい。営業成績は高い方だし、社内からの信頼も大きいと自負している。
「…そうだな、だいたい3000円くらいかな。」
「それって、これよりおおい?」
彼女は手に持っていたお金をまた俺の前に広げて見せた。
そっかそっか、まだわからないよな^ ^
「もっともっと多いぞー。だから心配しなくていいよ?
それもらっても、お父さん怒らないから。」
「そっか…」
かわいいなぁ。娘とのやりとりにとても癒された。そういえば娘と会話したのも久しぶりだったような気がする。こんな時間に起きていてくれたこと、感謝しないとな。明日からまた頑張れそうだ。さて、これから寝かせて夕飯をば……
「そっか、じゃあ、全然足りないね。」
「え?」
突然の言葉に面食らった。俺の給料のことか?それともお小遣いのことか?娘の欲しいものとは、一体なんなんだ?理解できないまま反射的に言葉が口をついて出た。
「えっ、それってどういう…」
「はいこれ」
娘は俺に、握りしめた両手をずいと押し付けた。手を開くと、じゃらという音とともに、硬貨が3枚現れた。
…300円だ。
「お願いします
このお金で、パパと遊ぶ時間を買えるだけください。」
目の前で、娘は泣いていた。
家族を守るために、娘の将来の幸せのために。
自分を犠牲にして、昼夜問わず一生懸命働いてきた。
しかし俺は、いままでもっと大きなものを犠牲にし続けてきたのかもしれない。そう思った。
ひと呼吸おいて、俺は娘に言った。
「ごめん、お父さんね、いま{嘘}ついたわ。」
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〜『電磁ボーナス』社内にて〜
「あり?ボナオ先輩、珍しいっスね。定時に帰るなんて。」
「ああ、そうだな」
「むむっ、その声、もしかして女ですか!?僕の耳はごまかせませんよ!!家庭があるのに、いけないんだぁ〜〜><」
「???まあ、そういえなくもないな」
「否定しないんスか…どんな女なんです??」
「最高の女よ。そんでもって俺にゾッコン。(ニヤニヤ)」
「へえ〜〜(ドン引き)」(こいつ、{悩殺}されてヤンの...)
「じゃ、そういうことで、後よろしく。
……あ、そうそう。俺これから毎日定時で帰ることにするから。」
「えっ!?どういうことですか??先輩がいないと仕事がまわりませんって〜〜」
「しょうがないだろ、俺の残りの人生全部買うって言われちゃったら。」
「はあ!!?女に?人生全部売ったって!!?ってかいくらもらったんですか、先輩!!!」
「いくらって、そりゃあ……
俺の名前はボナオ。
大手株式会社『電磁ボーナス』で働くサラリーマンだ。
自分で言うのもなんだが、業績は高く、社内の信頼も厚い。請け負った仕事は必ずこなす。
しかし、大切な人を目の前にしたら。
そんな俺の価値など、たとえ一生を捧げたって…
…たった{300円}あればいい。
(おしまい)(この物語は全てフィクションです。)
元ネタ:「An Hour of Your Time」
http://mylifeyourlife.net/2013/03/an-hour-of-your-time/
余談ですが…
『忙』という字は「心(りっしんべん)を亡くす」と書きます。
確かに忙しさで我を忘れると、心がささくれ立ってしまうものです。
学校で、部活で、会社で、家庭で。
そして私たちは忙しさに追われ、他人に優しさ(心)を与えるチャンスを失ってしまいます。
その間にも一刻一刻と過ぎていく時間。
もしその時間をお金で買い戻すことができたら、どんなに素晴らしいでしょう。
あなたなら、『大切な人と過ごす時間』を一体いくらで買いますか?
逆にその時間を取り戻したいと言われたら…
…あなたは一体いくらで売りますか??
(弥七)
「ウミガメまんじゅう」「9Good」
良質:3票トリック:2票納得感:4票
ウミオが真剣に車選びをしている理由は、
彼の自宅から120kmほど離れている『海亀市』の名産品、
『ウミガメまんじゅう』を『食べたい!!!』と猛烈に感じたから、{『だけ』}である。
状況を補完して。
彼の自宅から120kmほど離れている『海亀市』の名産品、
『ウミガメまんじゅう』を『食べたい!!!』と猛烈に感じたから、{『だけ』}である。
状況を補完して。
19年09月29日 21:45
【ウミガメのスープ】 [ENE]
【ウミガメのスープ】 [ENE]
もしかしたら要知識かも...
解説を見る
{私はロボットではあり
ません}
<自動車>
の画像をすべて選択してくださ
い
すべて選択し終わったら[確認]
をクリックしてください。
...よし、これで『ウミガメまんじゅう』をネット注文できたはずだ!
にしても、あの認証システムみたいなの、かなり難易度高かったな。何度もやり直した...
ません}
<自動車>
の画像をすべて選択してくださ
い
すべて選択し終わったら[確認]
をクリックしてください。
...よし、これで『ウミガメまんじゅう』をネット注文できたはずだ!
にしても、あの認証システムみたいなの、かなり難易度高かったな。何度もやり直した...
「彼氏とデートなうに使っていいよ」「9Good」
トリック:3票物語:6票
今日は藤井さんとデートの日。前からカラオケ行きたいと思っていたたか君。
カラオケもしたし水族館にも行った。タピオカミルクティーも飲んだしはらこ飯も食べた。もちろんデートなので、たか君がしっかりお支払いしました。
楽しかったね。と藤井さん。
とてもいい顔で電車に乗り帰る藤井さんを見ながらたか君は
すぐに違う女に電話をかけた。
一体なぜ?
カラオケもしたし水族館にも行った。タピオカミルクティーも飲んだしはらこ飯も食べた。もちろんデートなので、たか君がしっかりお支払いしました。
楽しかったね。と藤井さん。
とてもいい顔で電車に乗り帰る藤井さんを見ながらたか君は
すぐに違う女に電話をかけた。
一体なぜ?
19年10月15日 01:03
【ウミガメのスープ】 [Taka]
【ウミガメのスープ】 [Taka]
解説を見る
足が臭いという理由で離婚して3年。たか君は元妻との約束で3年間は娘に会わないと約束させられていた。
それでも頑張って耐えた。大事な娘に会いたい一心で。
そんな娘も今は元妻の名字の藤井を名乗っている。
7歳の娘と1日デートの日。そりゃパパ何でもやるで。買うたるで。任しとき!
娘がしたいことは全部してあげた。カラオケも水族館もタピオカミルクティーもはらこ飯も。
あっという間に時間がきた。
今日は楽しかったね。
娘のその一言で今までの感情が一気に溢れ出した。
泣きながら一緒に帰る電車の中でたか君に膝枕されながら眠る娘の顔を見て、思いが決まった。
たか君は元妻に電話をかけて言った。
もう一度よりを戻してくれ!娘と君を一生大事にする!
元妻はクスッと笑いながら言った。
嫌よ。足臭いもの。
それでも頑張って耐えた。大事な娘に会いたい一心で。
そんな娘も今は元妻の名字の藤井を名乗っている。
7歳の娘と1日デートの日。そりゃパパ何でもやるで。買うたるで。任しとき!
娘がしたいことは全部してあげた。カラオケも水族館もタピオカミルクティーもはらこ飯も。
あっという間に時間がきた。
今日は楽しかったね。
娘のその一言で今までの感情が一気に溢れ出した。
泣きながら一緒に帰る電車の中でたか君に膝枕されながら眠る娘の顔を見て、思いが決まった。
たか君は元妻に電話をかけて言った。
もう一度よりを戻してくれ!娘と君を一生大事にする!
元妻はクスッと笑いながら言った。
嫌よ。足臭いもの。
「オセロ好き」「9Good」
トリック:3票納得感:6票
カメオは、オセロについて熱く語られると、いつも負けてしまい、
{◯◯}になるという。
◯◯に入る言葉を当ててください。
{◯◯}になるという。
◯◯に入る言葉を当ててください。
19年12月14日 14:29
【20の扉】 [salt]
【20の扉】 [salt]
解説を見る
オセロの店を開いているカメオは、客がオセロに熱く語ると、
機嫌が良くなり、{値段}を安くして売ってしまう(負けてしまう)。
そのため、カメオは{赤字}になるという。
機嫌が良くなり、{値段}を安くして売ってしまう(負けてしまう)。
そのため、カメオは{赤字}になるという。
「マンダリンの空、オレンジの楼上。」「9Good」
良質:3票トリック:2票物語:4票
昔々、楠木リットという娘が両親と暮らしていました。
家の裏には大きな蜜柑畑があって、その世話をするのが彼女の日課です。
ある晩のこと。
家に帰るなり、玄関で足についた土を落としている姿を母親が見つけると、
「{もう二度と、この家に帰ってこないで。}」
と彼女に向かって言いました。
一体なぜでしょう??
家の裏には大きな蜜柑畑があって、その世話をするのが彼女の日課です。
ある晩のこと。
家に帰るなり、玄関で足についた土を落としている姿を母親が見つけると、
「{もう二度と、この家に帰ってこないで。}」
と彼女に向かって言いました。
一体なぜでしょう??
20年01月25日 23:29
【ウミガメのスープ】 [弥七]
【ウミガメのスープ】 [弥七]
劇団ココナッツ🌴
解説を見る
<解説>
簡易解答:母親と娘は父親の暴力(虐待)に耐えながら生活し、少女は一人蜜柑を売って生計を立てていた。ある晩予想以上の売上で、自分のポケットや帽子に入りきらないほどの大金を『{長靴}』に入れ運んできた娘を見て、母親は今こそ彼女を逃すべきだと悟ったのであった。
ーーーーーーーーーー
私は何度も考えた。
この見えない檻の中から、愛する娘を救い出す方法はないものか、と。
病弱な私と、大酒家で暴力的な父を両親に持ちながらも、リットはたった一人で家庭を支えてくれた。蜜柑畑に通っては水と肥料を与え、収穫した果実は市場に売りに出して毎日の生活費を得ていた。
私はベットの上で、毎日ひび割れた窓ガラス越しにそれを眺めることしかできなかった。
井戸と畑の間を水桶を持っていったりきたり。仕事の合間には樹の根元に腰掛け、小さい頃に買い与えたギターを手に練習をする彼女の姿があった。
リット(Beautiful city… beautiful city…)
幼い娘には、たくさんの可能性が眠っているというのに。
いつか音楽家になりたいと言っていたが、彼女には全く違う将来が待ち受けているかもしれないし、その願い通りになるのかもしれない。
あの人のように、誰かを傷つける大人になるのかもしれないし、他人に愛や幸せを与える人間になるかもしれない。
しかしどれだけ彼女の明日を夢見ようがここは檻の中。全ては砂上の楼閣、なんとも脆い、叶わぬ夢に他ならなかった。
その原因が私自身にもあるかと思うと、なおさら私は耐えられずにいた。
・
・
・
あの晩。
家に帰ってきた娘の姿を見て、私はとうとうその答えを見つけた。いや、彼女自身がそれを運んできた。
迎えに行くと玄関に立つリットの足は土と泥にまみれていた。靴を履いていなかったのだ。彼女は手に持っていた長靴を差し出して、私に向かい笑いかける。その中には蜜柑を売って手に入れた大量のお札や硬貨が詰め込まれていた。
リット「持ちきれなかったから。見て、全部売れたんだよ。これであたたかいスープでも作ろう、そしたら病気も治るかもね。」
声をかけながら小さな背中を抱きしめ、理解した。彼女は私の考えている以上に、優しく、たくましく育ったのだろう。そして決めた。
ーーーあの人は家にいない。チャンスは今しかないのだ。
お金の入った長靴と宝物のギターを渡し、家の外へ連れ出した。
私があの時喋ったことは、もう思い出したくもない。ただ滔々と、感情を捨て、苦しい言葉を吐いた。あの小さな目がどんどん丸くなるのを見て、胸が張り裂けそうだった。
港に見える、あの船に乗って、どこまでも逃げなさい。
そして、
「{もう二度と、この家に帰ってこないで。}」
私は彼女の後ろ姿を最後まで見送ることもできず、その場に泣き崩れた。
・
・
・
外輪船は汽笛をあげ、飛沫を立てながら波止場を後にする。
甲板にうずくまる少女の袖から、かさこそと一匹の蟻が這い出てきた。彼女はそれを手に乗せてしげしげと見つめた。服の中に隠れ、きっとここまで一緒についてきたのだろう。
もう二度と、元の棲家へ帰ることもない。
「…私と、おんなじだね。」
「…もし、お嬢さん。」
はっと顔を上げると、向かいの老人がリットに向かって話しかける。
「ずいぶん年季の入ったギターだこと。旅のお供に一曲、聞かせてもらえんかね?」
少女の前に、一枚の硬貨が転がった。揺れる足場で、ころころと行ったり来たりしながら危なっかしくも目の前へとやってきた。彼女はそれを掴まなければなるまいと思った。そして少しでも前に進まなければ、生きなければ。からんと硬貨をギターの中に入れると、徐に弦に手をかけた。
リット(Beautiful city… beautiful city…)
ひとり、またひとりと彼女の周りに人だかりができた。彼女は演奏を続けながら、もはや遠く離れてしまった故郷の方角を振り返った。
今、朝日が登ろうとしている。
線香花火の火球のように、その輪郭がじくじくと腫れぼったいのは、瞳に溜まった涙のせいだろうか。朝焼けが森を焦がしてゆく。彼女は遠い山の頂上でひときわ輝く光から、目を離すことができなかった。間違えるはずもない、あれは…蜜柑の樹だ。
彼女の育てた蜜柑畑が、太陽と溶け合ってひとつの色に染まっていた。
リット(Beautiful city… beautiful city… さよならさ。)
景色が、その色が、彼女の心にどう映ったのか。
例えるにも、それは筆舌に尽くし難く。
ただ{マンダリンの空}の下、美しい{オレンジの楼上}は、彼女の行く先をまっすぐに照らしているのだった。
(おしまい)(この物語は全てフィクションです。)
ーーーーーーーーーー
『劇団ココナッツ🌴』
・老人役(弥七)
・楠木リット役(きっとくりすさん)
・母親役(みづさん)
ふたりにSpecial Thanks!!!
☆参考:『琥珀色の街、上海蟹の朝』(くるり)
簡易解答:母親と娘は父親の暴力(虐待)に耐えながら生活し、少女は一人蜜柑を売って生計を立てていた。ある晩予想以上の売上で、自分のポケットや帽子に入りきらないほどの大金を『{長靴}』に入れ運んできた娘を見て、母親は今こそ彼女を逃すべきだと悟ったのであった。
ーーーーーーーーーー
私は何度も考えた。
この見えない檻の中から、愛する娘を救い出す方法はないものか、と。
病弱な私と、大酒家で暴力的な父を両親に持ちながらも、リットはたった一人で家庭を支えてくれた。蜜柑畑に通っては水と肥料を与え、収穫した果実は市場に売りに出して毎日の生活費を得ていた。
私はベットの上で、毎日ひび割れた窓ガラス越しにそれを眺めることしかできなかった。
井戸と畑の間を水桶を持っていったりきたり。仕事の合間には樹の根元に腰掛け、小さい頃に買い与えたギターを手に練習をする彼女の姿があった。
リット(Beautiful city… beautiful city…)
幼い娘には、たくさんの可能性が眠っているというのに。
いつか音楽家になりたいと言っていたが、彼女には全く違う将来が待ち受けているかもしれないし、その願い通りになるのかもしれない。
あの人のように、誰かを傷つける大人になるのかもしれないし、他人に愛や幸せを与える人間になるかもしれない。
しかしどれだけ彼女の明日を夢見ようがここは檻の中。全ては砂上の楼閣、なんとも脆い、叶わぬ夢に他ならなかった。
その原因が私自身にもあるかと思うと、なおさら私は耐えられずにいた。
・
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・
あの晩。
家に帰ってきた娘の姿を見て、私はとうとうその答えを見つけた。いや、彼女自身がそれを運んできた。
迎えに行くと玄関に立つリットの足は土と泥にまみれていた。靴を履いていなかったのだ。彼女は手に持っていた長靴を差し出して、私に向かい笑いかける。その中には蜜柑を売って手に入れた大量のお札や硬貨が詰め込まれていた。
リット「持ちきれなかったから。見て、全部売れたんだよ。これであたたかいスープでも作ろう、そしたら病気も治るかもね。」
声をかけながら小さな背中を抱きしめ、理解した。彼女は私の考えている以上に、優しく、たくましく育ったのだろう。そして決めた。
ーーーあの人は家にいない。チャンスは今しかないのだ。
お金の入った長靴と宝物のギターを渡し、家の外へ連れ出した。
私があの時喋ったことは、もう思い出したくもない。ただ滔々と、感情を捨て、苦しい言葉を吐いた。あの小さな目がどんどん丸くなるのを見て、胸が張り裂けそうだった。
港に見える、あの船に乗って、どこまでも逃げなさい。
そして、
「{もう二度と、この家に帰ってこないで。}」
私は彼女の後ろ姿を最後まで見送ることもできず、その場に泣き崩れた。
・
・
・
外輪船は汽笛をあげ、飛沫を立てながら波止場を後にする。
甲板にうずくまる少女の袖から、かさこそと一匹の蟻が這い出てきた。彼女はそれを手に乗せてしげしげと見つめた。服の中に隠れ、きっとここまで一緒についてきたのだろう。
もう二度と、元の棲家へ帰ることもない。
「…私と、おんなじだね。」
「…もし、お嬢さん。」
はっと顔を上げると、向かいの老人がリットに向かって話しかける。
「ずいぶん年季の入ったギターだこと。旅のお供に一曲、聞かせてもらえんかね?」
少女の前に、一枚の硬貨が転がった。揺れる足場で、ころころと行ったり来たりしながら危なっかしくも目の前へとやってきた。彼女はそれを掴まなければなるまいと思った。そして少しでも前に進まなければ、生きなければ。からんと硬貨をギターの中に入れると、徐に弦に手をかけた。
リット(Beautiful city… beautiful city…)
ひとり、またひとりと彼女の周りに人だかりができた。彼女は演奏を続けながら、もはや遠く離れてしまった故郷の方角を振り返った。
今、朝日が登ろうとしている。
線香花火の火球のように、その輪郭がじくじくと腫れぼったいのは、瞳に溜まった涙のせいだろうか。朝焼けが森を焦がしてゆく。彼女は遠い山の頂上でひときわ輝く光から、目を離すことができなかった。間違えるはずもない、あれは…蜜柑の樹だ。
彼女の育てた蜜柑畑が、太陽と溶け合ってひとつの色に染まっていた。
リット(Beautiful city… beautiful city… さよならさ。)
景色が、その色が、彼女の心にどう映ったのか。
例えるにも、それは筆舌に尽くし難く。
ただ{マンダリンの空}の下、美しい{オレンジの楼上}は、彼女の行く先をまっすぐに照らしているのだった。
(おしまい)(この物語は全てフィクションです。)
ーーーーーーーーーー
『劇団ココナッツ🌴』
・老人役(弥七)
・楠木リット役(きっとくりすさん)
・母親役(みづさん)
ふたりにSpecial Thanks!!!
☆参考:『琥珀色の街、上海蟹の朝』(くるり)