みんなのGood

織姫の願い事「73Good」
良質:45票トリック:2票物語:24票納得感:2票
7月7日に開かれる県立ウミガメ高校の文化祭で、アツヤのクラスは七夕の演劇をやることに。
普段は引っ込み思案なアツヤだが、彦星役に立候補した。

完璧に台詞を覚えて挑んだ本番当日。
スポットライトのあたるステージで織姫役のアンナはひときわ輝いていた。
劇はいよいよクライマックス、織姫と彦星の別れのシーンを迎える。
そこでステージに立つアツヤが口にした「さようなら」の一言が、観客はおろか、目の前のアンナにさえも届かなかったのは
練習期間中、アンナが書いている短冊をアツヤが見てしまったからだという。

一体どういうことだろうか?
19年07月07日 21:00
【ウミガメのスープ】 [「マクガフィン」]

藤井さんと2ヶ月煮込んだ合作スープ、七夕の夜にいかがでしょう?




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「はい、僕やります。」

その瞬間、教室の時間が止まった。
そして不自然な間の後、先程までとは少し違うざわめきが教室中に広がった。
「え、あいつがやるの?俺話したことないんだけど」「おいヒビキ、おまえやらないの?」「いやいいよ、誰もいなかったらやってもいいけどやるって言ってんじゃん」


「えーっと、じゃあ彦星役はアツヤ、織姫役はアンナでいいか?」
しかし先生の問いかけに反対する生徒はおらず、自然と拍手が巻き起こる。

みんなが手を叩く中、少し前の席に座るアンナがこちらを振り返って口を動かす。

『よ、ろ、し、く、ね』

声は聞こえなくともそう言ったのだとわかる。はじめて向けられたその笑顔に、アツヤは思わず目を背けた。

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「ねぇ、せっかくだから教室に笹と短冊、飾らない?」
誰かがそう言い出したのは、アツヤが演劇の練習を始めて1週間ほど経った日のことだった。演劇の宣伝になるのではないか、という話だ。

あの日から毎日、放課後に練習を重ねていたアツヤだが、目線は自然とアンナの方へと向く。
情感のこもった台詞や堂々とした身のこなしはもちろん、休憩中の些細な仕草までもがアツヤの胸の奥をざわめかせていた。

七夕の願い事、かぁ…
もちろん星に託したい願い事はすぐに思いついたが、まさか短冊に書くわけにもいかない。

そんなことを思いながらその『願いの対象』の座る方へと目を向けると、アンナがさらさらと鉛筆を動かしているのが見えた。
いささかの罪悪感を覚えながらもアツヤの目はその手元に吸い寄せられていった。


『ヒビキくんと少しでも一緒にいられますように』


一瞬、アツヤの周りから音が消えた、ように感じた。思考が停止していた。


呆然としているうちに、恥ずかしそうに髪をかきあげたアンナは急いだようにその文字を消し始めた。そして書き換える。

『演劇が成功しますように!』

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その日の練習に臨むアツヤは、全く集中できなかった。覚えたはずの台詞は間違え、小道具を持ち忘れ、登場のタイミングを誤る。
言葉にできない思いが胸の中で渦巻いていた。

「アツヤくん、大丈夫?体調良くない?」
そう声をかけてくれたアンナの顔を、アツヤは直視することができなかった。

大丈夫じゃない、と答えたかった。
『ヒビキのことが好きなの?』そう尋ねたかった。
けれどそんなことをしたってアンナは困るだけだろう。アンナのためを思うなら…



『誰もいなかったらやってもいいけど』

『ヒビキくんと少しでも一緒にいられますように』


顔を上げると、アンナの心配そうな顔がそこにあった。彼女には笑っていてほしい、心からそう思ったアツヤは、意を決して口を開く。

「あの、ごめん…僕ちょっと喉が…」

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7月7日、文化祭当日。

「いよいよだね、緊張してる?」
ほがらかに話しかけるアンナは、とても緊張しているようには見えない。

「う、うん。ちょっとね。大勢の人に見られるのなんて慣れてないから。」
この日のための衣装を身につけながらアツヤは答える。
初めて見たときは、これは目立つなぁと思ったものだ。

そんなことを考えながらも、アツヤは舞台に上がった。


そして幕が上がる。

ふと顔を上げると、およそ1000の顔がこちらを見ている。緊張で胸が高鳴り始めた。
そんな中、ナレーションが流れる。

「昔々、あるところに、牛飼いの彦星が住んでいました。」

ここで彦星が歩き回りながら台詞を言うんだ。
段取りは完璧に頭に入っていた。
しかし、アツヤは動けなかった。

否、動かなかった。


夜空にかかる天の川という役どころを演じきるために。



舞台袖からヒビキが現れる。牛飼いの衣装を身につけて。

完璧な動作で、台詞で、演技をこなす彦星に笑いかける織姫の頬は赤く染まっていて、それは緊張のせいにも演技にも見えなかった。

これでよかったんだ。
目の前で逢瀬を重ねる2人を見ながらアツヤは思う。

「君を愛しているよ」

本当はアツヤが言うはずだった言葉だ。そして、言えなかった言葉だ。

「必ず君を幸せにする」

アツヤは口には出さなかったが、ある意味では実践した言葉だ。


そして近づくクライマックス。
アツヤの両側へと隔てられた2人は、悲しい別れを嘆く。

「あぁ彦星様、行ってしまわれるのですか。」
そう問いかけるアンナは本当に悲しそうで、アツヤの胸はちくりと痛む。
次にヒビキが言う台詞を、一週間限りの彦星は覚えていた。

「織姫、また笑い合える日を楽しみにしているよ。」

僕にはもう、『また笑い合える日』なんてない。この舞台を下りたらもう、話すこともないだろう。
でもそれでいいんだ、きっとヒビキと一緒にいることが、彼女にとっての幸せだから。

彦星とは違う本当の別れを感じたアツヤの口は、思わず次の台詞を紡ぎだす。


『さようなら』


二つの口から出たその言葉。
演じられた片方は、アンナに届き、観客に届く。
けれど心からの片方は、天の川の呟きは、受け取る相手もいないまま、舞台裏へと消えていった。



『簡易解説』
片思いの相手、アンナと主役を演じるために彦星役に立候補したアツヤ。
しかし短冊を見てアンナの気持ちに気づいたアツヤは彦星役を降りて天の川の役となり、目の前で演じるアンナとヒビキを見ていた。劇のラスト、ヒビキがアンナに別れを告げる場面で誰にも聞こえないように重ねて呟いた。
Youか一億円か「72Good」
良質:54票トリック:13票物語:3票納得感:2票
カメコ「お願いします!殺さないでください!」
誘拐犯「うるさい!」

スマホ越しに聞こえてくる娘の震え声と誘拐犯の怒号。

誘拐犯「いいな、明日の正午までに一億円をお前ひとりで持って来い。警察に連絡したり、少しでも遅れたりしたらこいつをぶっ殺す!」

誘拐犯は身代金として一億円を要求している。

カメオはその要求を聞いて、身代金を支払うべきではないと考えた。

いったいなぜだろうか?
20年05月17日 09:00
【ウミガメのスープ】 [Nimie]



解説を見る
ある日、カメコのもとに一本の電話がかかってきた。

「{お前の父親を誘拐した。}」

金持ちなカメコは誘拐犯に目をつけられ、唯一の肉親である父親を攫われてしまった。

カメコ「父は私の唯一の家族なんです!お願いします!殺さないでください!」
誘拐犯「うるさい!いいな、明日の正午までに十億円をお前ひとりで持って来い。警察に連絡したり、少しでも遅れたりしたらこいつをぶっ殺す!」

誘拐犯の要求を聞いたカメオは、その思惑をすぐに見抜いた。
誘拐犯は私を解放する気など全くないのだろう。
もしも、娘がたったひとりで身代金を払いに来てしまったら、口封じのために私だけでなく娘まで殺されてしまう。

せめて娘の命だけでも守るために、身代金を払いに来させてはならない。

カメコ「す、すぐに持っていきます!だから父を殺さないでください!」
誘拐犯「わかった。こいつの命は保証しよう。」

カメオ【「カメコ!身代金を払うな!ここに来たら二人とも殺されるだけだ!」】

カメコ「...えっ?」
誘拐犯「おい!黙れ!」

これでいいんだ。
愛する娘さえ生きていれば、それで。
愛情デザートパワー「69Good」
良質:48票トリック:8票物語:8票納得感:5票
ハイキングで迷子になってしまった息子のヒカルのことを

母親のアカリが見つけることができたのは

その日アカリが息子に持たせた弁当のデザートのおかげだという。

一体どういうことか?
20年03月03日 12:14
【ウミガメのスープ】 [五条断]

状況補完系スープ




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十数年後

息子が行方不明になってしまった山を見渡していたアカリは

一面の新緑の中に
薄桃色の花を満開にさせたラテラの木が1本だけ生えているの見つけた

あの日息子に
息子が大好きだったラテラの実を持たせてやったことを思い出したアカリは悟った




{きっとあの木の根は愛する息子の遺体と遺品から生えているのだ}
良質:24票トリック:20票物語:5票納得感:12票
あるホテルでは、開業日にあたる毎年4月29日に周年記念イベントを開催している。
支配人によってイベントの開始が宣言された直後、606号室の宿泊客はカーテンを開けた。

近隣の小学生からは「みどりのホテル」と呼ばれている、このホテルの正式名称は何か?
5種類の文字を3回ずつ使用して、合計15文字で答えてほしい。


■補足事項
1. 当問題の意図を汲んでいただけていれば、表記揺れはすべて正解として採用します。
2. ホテル名に含まれる文字や語句を特定しようとする質問も受け付けますが、[良い質問]マークはお付けしません。
3. 当問題は「闇スープ」形式です。各参加者と出題者が1対1で質問と回答を行います。他の参加者の質問を見ることはできません。
4. 多く寄せられることが予想される2つの質問について、事前に回答します。
 ①4月29日が国民の祝日であることは重要ですか? → No.
 ②ゴールデンウイークは重要ですか? → No.
5. 質問回数に制限はありませんが、ぜひ30質問以内での正解を目指してみてください。
22年04月22日 20:00
【20の扉】 [炎帝]

4/29(金) 20:00までの出題を予定しています。




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「オセロの日」である4月29日に開業した{THE OTHELLO HOTEL}では、オセロにちなんだイベントを毎年の開業日に開催している。
宿泊客の全面的な協力の下で、2人のオセロプレイヤーが客室棟の8×8=64室を盤面に見立ててオセロを行う、というものである。
概要は以下の通りである。

①最初は全室のカーテンを閉じておく。

②開始宣言とともにフロントが505号室・506号室・605号室・606号室に内線電話を掛け、各室の宿泊客がカーテンを開ける。
客室の照明が点灯している状態を白、消灯している状態を黒として、これをオセロの初期配置に見立てる。
(※THE OTHELLO HOTELには「死」を連想させる4XX号室やX04号室、「苦」を連想させる9XX号室やX09号室が存在しない。このため、ルームナンバーが実際の階数・室数と異なる。)

③その後は、1手ごとに該当する客室のカーテンを開け、オセロのルールに則って各室の照明を明滅させていく。



ところで、THE OTHELLO HOTELは当イベントを想定して壁面を緑色にしており、カーテンも全室において緑色の物を採用している。
このため、近隣の小学生からは「みどりのホテル」と呼ばれている。
動き出した絵「56Good」
良質:36票トリック:2票物語:15票納得感:3票
あるところに不幸な少女がいました。
彼女は貧しく、いつも退屈していたのです。
しかも、彼女には友達と言える存在がひとりもいませんでした。

そんな少女を見かねたのか、彼女の前に突然魔法使いが現れ、プレゼントだと言ってあるものをくれました。
それは絵を描くための筆、絵の具、そしてスケッチブックです。
そのささやかなプレゼントを、少女はとても喜びました。

次の日さっそく、少女は馬の絵を描いてみました。
すると驚いたことに、絵の中の馬が尻尾を大きく振ったかと思うと、どこかへ駆け去っていってしまったのです。

ありえない出来事に、少女はすっかり目を丸くしていました。まさかこんなことが起こるなんて。
しかし同時に、わくわくした気持ちも、少女の中に芽生え始めていました。
描いたものが、まるで生きているみたいに動き出すのですから。これ以上に面白いことなど、滅多にあるはずがありません。

それから夢中になって、生きた動物を中心に、少女はいろんなものを描いていきました。
しかし、それも長くは続きません。
絵を描くためのスケッチブックが、最後の一枚になってしまったのです。

そして、最後の絵を描きあげた後に、少女は絶望して自殺してしまいました。

いったい彼女の身に何が起きたのでしょう?
19年06月29日 11:28
【ウミガメのスープ】 [伯爵]



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少女が最後の一枚に描いたのは自分自身。つまり自画像でした。
少女とよく似た女の子が、紙の中でひとりたたずんでいます。

絵の中でひとりぼっちな女の子が可哀想だと思った少女は、友達を描きこんであげようと思いました。
しかし、描こうとしても、なかなか筆が進みません。
それも当然です。少女には友達がおらず、誰かと遊んだことなどなかったのですから。

そこでふと、少女はいいことを思いつきました。
退屈しないように、絵を描く道具をあげよう。それなら、ひとりでも大丈夫だと。

さっそく描き加えると、女の子は嬉しそうに絵を描き始めました。それを見て、少女もにっこりと微笑みました。
女の子はさまざまな絵を描きました。花や果物、馬、猫、鳥、など……
そして驚くことに、それらもまた、動き始めていきました。少女が動物を描いた時と、まるで同じように。
最後の一枚になると、女の子はあるものを描きました。それは自画像でした。しかもその自画像に、絵の具やスケッチブックなどを与えています。さらに今度は、その自画像までもが絵を描き始め……

異様な光景に、少女は息をのみました。
自分のしたことが、絵の中で幾重にも渡り、繰り返されているのです。

そこで少女はようやく気づきました。
そうか、わたし自身も誰かによって描かれた存在なのだと……
自分に絵を描く道具をくれた「魔法使い」は、他でもない自分自身だったのだと……

最初から最後まで自分はひとりぼっちで、自分の周りの世界はすべて虚構だと少女は気づいてしまいました。
そして、彼女はこの不毛な無限ループを終わらせようと、ふたたび筆を取りました。

少女が最後に書きこんだのは、絵の中の世界をすべて燃やし尽くすような炎でした……

おしまい。