________________
天気が良かったので、男は10年後の未来を知った。
どういうことだろう?
________________
正解を創りだすウミガメらてらて鯖版、第10回を開催します!
(前回の様子:第9回 https://late-late.jp/mondai/show/4821)
10回ですって。10回。初回から参加している身としては時間の過ぎる早さに驚いてます。こわいなぁ。気づいたらおじいちゃんになってそう。
そんな第10回にちなんで今回は要素10個で行います。5つを出題者チョイス、残り5つをランダムで決めさせて頂きます。
要素15個に比べて簡単に見えるかもしれませんが、果たして。
さて、上記の問題には、解説を用意しておりません。皆様の質問がストーリーを作っていきます。
以下のルールをご確認ください。
▶ 1・要素募集フェーズ ◀
[4/14 22:00頃~質問が50個集まるまで]
初めに、正解を創りだすカギとなる色々な質問を放り込みましょう。
◯要素選出の手順
1.出題直後から、”YESかNOで答えられる質問”を受け付けます。質問は1人3回まで。
2.皆様から寄せられた質問の数が”50”に達すると締め切り。
今回は、全ての質問のうち”5”個を出題者の独断、さらに”5"個をランダムで選びます。
合計”10”個の質問が選ばれ、「YES!」の返答とともに『[良い質問]』(=良質)がつきます。
※良質としたものを以下『要素』と呼びます。
※良質以外の物は「YesNo どちらでも構いません。」と回答いたします。こちらは解説に使わなくても構いません。
※矛盾が発生する場合や、あまりに条件が狭まる物は採用いたしません。
[矛盾例]田中は登場しますか?&今回は田中は登場しませんよね?(先に決まった方優先)
[狭い例]ノンフィクションですか?(不採用)
[狭い例]登場キャラは1人ですか?(不採用)
[狭い例]ストーリーはミステリー・現実要素ものですよね?(不採用)
なお、要素が揃った後、まとメモに要素を書き出しますのでご活用ください。
▶ 2・投稿フェーズ ◀
[要素を10個選定後~4/25 23:59]
要素募集フェーズが終わったら、選ばれた要素を取り入れた解説を投稿する『投稿フェーズ』に移行します。
各要素を含んだ解説案をご投稿ください。
らてらて鯖の規約に違反しない範囲で、思うがままに自由な発想で創りだしましょう!
※過去の「正解を創りだす(らてらて鯖版・ラテシン版)」もご参考ください。
ラテシン版:sui-hei.net/mondai/tag/正解を創りだすウミガメ
らてらて鯖:https://late-late.jp/mondai/tag/正解を創りだすウミガメ
◯作品投稿の手順
1.投稿作品を、別の場所(文書作成アプリなど)で作成します。
質問欄で文章を作成していると、その間他の方が投稿できなくなってしまいます。
「コピペで一挙に投稿」を心がけましょう。
2.すでに投稿済みの作品の末尾に「終了を知らせる言葉」の記述があることを確認してから投稿してください。
記述がない場合、まだ前の方が投稿の最中である可能性があります。
しばらく時間をおいてから再び確認してください。
3.まず「タイトルのみ」を質問欄に入力してください。
後でタイトル部分のみを[良質]にします。
4.次の質問欄に本文を入力します。本文が長い場合、複数の質問欄に分けて投稿して構いません。
また、以下の手順で投稿すると、本文を1つの質問欄に一括投稿することが出来て便利です。
まず、適当な文字を打ち込んで、そのまま投稿します。
続いて、その質問の「編集」ボタンをクリックし、先程打ち込んだ文字を消してから投稿作品の本文をコピペします。
最後に、「長文にするならチェック」にチェックを入れ、編集を完了すると、いい感じになります。
5.本文の末尾に、おわり完など、「終了を知らせる言葉」を必ずつけてください。
▶ 3・投票フェーズ ◀
[4/26 00:00頃~4/30 23:59]
投稿期間が終了したら、『投票フェーズ』に移行します。
お気に入りの作品、苦戦した要素を選出しましょう。
◯投票の手順
1.投稿期間終了後、別ページにて、「正解を創りだすウミガメ・投票会場」(闇スープ)を設置いたします。
2.作品を投稿した「シェフ」は“3”票、投稿していない「観戦者」は“1”票を、気に入った作品に投票できます。
それぞれの「タイトル・票数・作者・感想」を質問欄で述べてください。
また、「最も組み込むのが難しかった(難しそうな)要素」も1つお答えください。
※投票は、1人に複数投票でも、バラバラに投票しても構いません。
※自分の作品に投票は出来ません。その分の票を棄権したとみなします。
※投票自体に良質正解マーカーはつけません。ご了承ください。
3.皆様の投票により、以下の受賞者が決定します。
◆最難関要素賞(最も票を集めた要素)→その質問に[正解]を進呈します。
◆最優秀作品賞(最も票数を集めた作品)→その作品に[良い質問]を進呈します。
◆シェチュ王(最も票数を集めたシェフ=作品への票数の合計)→全ての作品に[正解]を進呈します。
そして、見事『シェチュ王』になられた方には、次回の正解を創りだすウミガメを出題していただきます!
※票が同数になった場合のルール
[最難関要素賞][最優秀作品賞]
同率で受賞です。
[シェチュ王]
同率の場合、最も多くの人から票をもらった人(=複数票を1票と数えたときに最も票数の多い人)が受賞です。
それでも同率の場合、出題者も(事前に決めた)票を投じて再集計します。
それでもどうしても同率の場合は、最終投稿が早い順に決定させていただきます。
■■ タイムテーブル ■■
◯要素募集フェーズ
4/14(日)22:00~質問数が50個に達するまで
◯投稿フェーズ
要素選定後~4/25(木)23:59まで
◯投票フェーズ
4/26(金)00:00頃~4/30(火)23:59まで
◯結果発表
5/1(水)中の発表を予定しておりますが、延期になることも考えられます。
■■ お願い ■■
要素募集フェイズに参加した方は、出来る限り投稿・投票にも御参加くださいますようお願いいたします。
要素出しはお手軽気軽ではありますが、このイベントの要はなんといっても投稿・投票です。
頑張れば意外となんとかなるものです。素敵な解説をお待ちしております!
もちろん、投稿フェイズと投票フェイズには、参加制限など一切ありません。
どなた様も、積極的に御参加ください。
それでは、『要素募集フェーズ』スタートです!
質問は1人3回までです。皆様の質問お待ちしております!
投票会場→https://late-late.jp/mondai/show/5386
質問数→【1人3回まで】
要素募集締切→【50個まで】
です。申し訳ありませんでした。宜しく御願いします。
キジは関係ありますか? クゥィー⤴️ キュイ⤴️ クルックー⤴️ コーッコーッ⤴️ テッテッテッテッ⤴️ グゥウェイ⤴️
Yesno 重要ではありません
全ての要素が出揃いましたので、これより【投稿フェーズ】に移ります![編集済]
*質問欄で文章を作成していると、その間、他の方が投稿できなくなってしまいます。
別の場所(文書作成アプリなど)で作成し、「コピペで一挙に投稿」を心がけましょう。
*投稿の際には、前の作品の末尾に「終了を知らせる言葉」の記述があることを確認してください。
記述がない場合、まだ前の方が投稿の最中である可能性があります。[編集済]
*本文の末尾に、【おわり】【完】など、「終了を知らせる言葉」を必ずつけてください。
*作品中に要素の番号をふっていただけると、どこでどの要素を使ったのかがわかりやすくなります。
*投稿締め切りは【4/25(木) 23:59】です。
投稿内容は投稿期間中何度でも編集できます。
また、投稿数に制限はありませんので、何作品でもどうぞ!
2018年6月、デイトレーダーの私は今日も負けていた。
20代のうちにタワーマンションの一室を手に入れたが、最近はどうも調子が悪い。
雨ばかりでしばらく外に出ていないせいだろうか。
今日はたまたま天気が良かったので、憂さ晴らしに普段は行かない近所の飲み屋に行くことにした。
時刻は16時を回った頃。
まだ少し早いか、それにしても今日はいい天気だ。⑥
そこで奇妙な男に出会う。
声からして、年齢は自分より少し上くらいだろうか。
既に出来上がっているようで
「兄ちゃんこっち来いよ!!」と大声で誘う。
断る理由もなかった私は、男との相席を許諾した。
「俺は常連だ!俺のことはTFって呼んでくれ!」
意味がわからない。
そのあとも、
ちっちゃな頃から悪ガキで
1+1=3だと言いはった。とか⑩
今は令和10年のはずなのに。とか
俺 鯉焦がしたことあるんだぜ!とか④
聞いてもないことをベラベラと話された。
そんな中、私が無視できない言葉があった。
「俺 未来が占えるんだぜ!」①
素面なら何をバカなことをと一蹴したはずだが、私もそれなりに飲んでいた。
藁にもすがる思いで彼に未来のことを聞くと、
交換条件として「逆立ちをしろ」とTFが言う。⑧
本当に意味がわからない男だ。
体力に自信は無かったが、逆立ちを披露する私。
「まだ出来るんだな」と呟いたかと思うと大声で
「猫ブーム来るぞ!!」閑散とした店内にバカでかいTFの声が響く。⑦
くだらなすぎて呆れたが、その後もTFとの時間は楽しかった。
憂さ晴らしのおかげか、それから徐々にまた取引にも勝てるようになっていった。
TFにお礼を言おうと飲み屋の常連になったが、彼に会うことはなかった。
2019年4月1日、すっかりあの時のことなど忘れていた私は、
テレビを見てハッとした。
令和・・・だと・・・③
あの時の記憶が蘇る。
TFの言葉が酔っぱらいの戯言でないとすると猫ブームが・・・
とはいえ、調子を取り戻した今の私には必要のない情報だ。⑨
しかし、なぜTFは仮面を付けていたのだろうか・・・②
1つの仮説を思いついた私は、上等な酒と手紙を、
近所で有名な大きな桜の木の下に埋めることにした。⑤
私の気持ちは彼に届くだろうか・・・
【完】
[編集済]
不思議で、素敵な話ですね。TFが仮面をつけていた理由、過去に行って(?)『私』と出会った理由が気になります。
桜の下に埋めていた手紙には、どんなことを書き綴ったのでしょうか。
ともかく、私は来たるべく猫ブームに備えてメルカリに売るための猫グッズを作っておこうと思います()
作品投稿ありがとうございました。
[編集済]
その日男は、不思議な仮面を見つけた。②
口元が妙に空いている仮面で、物を入れたくなってしまうフォルムをしていた。口の奥は見きれぬほどの闇。何処か別の次元に繋がっているとでも言うのか。
男は気まぐれで、その中に一匹の猫を放り込むことにした。⑦
男が家で飼っているブチ柄のブス猫だ。
というのも、ある占い師が言うことには「猫」が男の人生を狂わせるらしいのだ。①
それならば、厄を遠ざける意味でも、男は猫を何処かにやってしまいたかった。
嫌がる猫を無理やり入れてみる。
するとどうだろう。猫はたちまち消えて無くなってしまった。
仮面の口の裏に隠れているわけではなく、本当に跡形も無くなったのだ。
驚きのあまり、男は声が出なかった。
次の瞬間、男は急いで台所に向かい、先程焦がしてしまった鯖の逆立ち焼きも仮面の口に入れる。④⑧
料理は壊滅的な匂いごと、何処かへと消えてしまった。
なんて便利なゴミ箱なんだ。
その直感に、男は思わず鳥肌を立てていた。
男はこの便利な仮面を転送顔(Transfer Face)と名付けて、毎日のように使い始めた。
ある時はお菓子の包装紙。またある時は要らなくなった包丁。必要のない車も、仮面の見た目の口幅に反して、捨てることができた。
この仮面の不思議なところは、それだけではなかった。
ある日男は、これまた気まぐれで口の中に手を突っ込んでみた。すると、なんと新しい物資が届いたのだ。
鉛筆を一本入れたら二本になり、二本入れた時は三本にまでなった。
1+1=3になったのだ。⑩
要らないものも偶に出てきたが、それはまた仮面に捨てれば問題なかった。
画期的だと男は喜んだ。
そして、十年の月日が経った。
男は今、裏山の桜の木の下でせっせと穴を掘っている。
男はTFを埋めることにしたのだった。
なにかTFに頼るのが、だんだん嫌になったのだ。⑨
男はTFを桜の木の下の深く深くに埋めると、我が家へと踵を返した。⑤
その日は改元の日だった。
家に戻る道は人で埋め尽くされ、中々進むことが出来ない。
男の口から重いため息が漏れた。
「今日から新しい元号、令和となります」
改元が宣言されたその時、
「でっ!」
「に゛ゃっ!」
頭に何かが降ってきた。
雨でもないのに、どう言うことだ?
拾い上げてみると、そこには懐かしい顔があった。
男が最初に捨てたブチのブス猫だった。
男は空を見上げて、絶句する。
見えてしまった。
晴れ渡っていたため、雲に遮られなかったのだ。
そこには、額に大きく「リセット」と書かれた仮面の姿があった。
改元のせいだろうか。③
「リセット」されたのか?
「おい!あれなんだよ!」
通行人の悲痛な声が聞こえ、男は振り返り目を疑う。
先程仮面を埋めた山が、ものの三十分で、消えてしまったのだ。
まるで仮面が飲み込んでしまったかのように。
男は悟り、身震いした。
……落ちて、くるのか?と。
これから人々は上を向いて生きていくに違いない。⑥
この猫は十年のスパンを得てここへ戻ってきた。
つまり十年間、仮面から物が降ってくるに違いない。
そして、十年後……。
そこで男は、考えるのをやめた。
(星新一のssより、オマージュ)
【了】
[編集済]
奇妙な仮面を中心としたオマージュで、1+1=3などの要素回収の仕方が見事でした。
『気まぐれで猫を仮面の中に放り込む』という行動に男の狂気が見えました。この時点でひょっとすると男の意識も仮面の中に吸い込まれていたりして・・・なんて。
山が消え、大勢が混乱する中、自分だけがどうなるか最悪の事態を予測できる恐怖と不安感が伝わってくる表現の仕方が好きでした。
作品投稿ありがとうございました。
あの日、名前しか知らなかった少女は…
ーーーーー
「未来(みく)ちゃん、今日は何を見せてくれるの?」
そう無邪気に問う少年に少女は一枚の②仮面を見せる。
「なんとかっていう遠い国のお面なんだって。」
手に取って少年はつけようとするが、仮面をうまくつけられず逆さまに付けた少年は前が見えないと笑う。
「⑧逆立ちすれば前が見えるようになるんじゃない?」
「僕逆立ちできないから…」
「⑩1+1=3なんて間違いしてたらダメだよ、私と釣り合わなくなっちゃう…なんて、冗談だよ。」
「えー…だって難しいんだもん。 幼稚園の頃に戻りたいなぁ…」
「ダーメ、ちゃんと頑張りなさい。」
ーーーーー
淡い子供の頃の記憶。
子供の頃未来という少女と共に桜の木の下でよく遊んでいた。
(問題文前半)『天気が良く眩く照りつける日差しは不意に子供の頃の記憶へと俺を誘った。』
高校に入って俺を苦しめる教科が数学というのもあの頃と変わらない。
変わったのは彼女の存在。
彼女は何処かへ消えてしまった。
両親が仕事で海外へよく行くという彼女はある日を境に居なくなった。
今思えば、両親と共に海外へ渡ったのだろう。
⑦『ニャーオ』鈴の音と共に聞こえた猫の声は再びあの頃の記憶を呼び起こした。
ーーーーー
「この子、このままだと死んじゃうけどそんなの嫌…」
「そうなの? じゃあここで飼おうよ!」
「ダメだよ。 私たちじゃごはんも用意できないでしょ?」
「持ってきたよ!ちょっと④焦がしちゃったけど、クッキー!」
「猫に私たちのごはんが食べられるわけないでしょ。」
「そっか…」
「仕方ないから私たちで食べましょう。」
ーーーーー
あの時一緒に食べたクッキーは、俺たちには早い大人の味だった。
家に帰るとどこか懐かしくなりクッキーを探す。
ぼぅっと呆けながらテレビを見ていると新しい元号が始まるというニュースが流れていた。
そうか、もうそんな時期か。
どこか引っかかりを覚えおもちゃ箱を引っ張り出してきて幼き日々を漁りはじめる。
ーーーーー
「これ、あげる! 僕の宝物のTF(トランスフォーマー)の人形! 何かあったら助けてくれるんだよ!」
「要らない。 私、⑨そんな玩具には助けてほしくないもの。 助けてくれるなら…」
「そっか…、じゃあ①占いやらない?」
「わかっている未来に何の楽しみがあるの? 私は占い嫌いだな。」
「うーん…」
ーーーーー
他愛のないやり取りが心を湿らせていく。
ーーーーー
「今は平成っていうんだってね」
「突然何?」
「ねえ、タイムカプセルを埋めない?」
「なんで?」
「③別にいいでしょ。 平成の終わりに私たちがどうなっているか聞くの。」
「いつ平成が終わるの?」
「わかんない。 でもきっと長い間待つ事になるよ。」
ーーーーー
そうだ、あの日俺たちはタイムカプセルを埋めたんだ。
⑤あの桜の木の下に。
急いで家を飛び出す。
今日、あの桜の木の下で開ける約束だったんだ!
駆ける、駆ける。
風景と共にあの日の記憶が流れていく。
ーーーーー
「どこに行くの!」
「ヒミツ。」
そう言い残して彼女は居なくなった。
その後何度も何度もあの桜の木の下へ通ったが遂に彼女が来ることは無かった。
⑥あの日はこぼれた涙をこぼさないよう、上を向いて帰った。
ーーーーー
『カツーン』
あった。
タイムカプセルだ。
急いで土を払い蓋を開ける。
中には手紙とTFの人形、そしてあの時の仮面が入っていた。
手紙には未来について尋ねる内容は無く、代わりにつたない字で様々な事が綴られていた。
・俺と遊んでいた時間は弟が出来たようで楽しかった事
・きちんと算数の勉強はしているか
・あの時の猫は無事飼い主が見つかった事
・彼女は重い病気を患っており、もう先は長くなかったという事
手紙の裏には地図が描かれており、たどり着いた場所には1つの墓石があった。
「桜未来、安らかにここに眠る。」
彼女は、ここに眠っている。
あの日から、ずっと。
夏の日の眩い日差しは、”僕”を10年後の未来の元へ誘った。
―了―
[編集済]
読み終わったあと、タイトルの『永遠に』に込められた思いに胸が熱くなりました。
5回くらいの創り出すで参加してくれた時も思ったのですが、OUTISさんの作品の男女の情景を想起できるような会話とか、綺麗でかっこいい物語の閉じ方がかなり好きです。
作品投稿ありがとうございました。
ここ惑星アルシャリウスでは、猫国と犬国が戦争をしている。⑦
勢力は拮抗状態で、両国とも戦いに疲れ果てていた。
ある日、猫王のもとに猫でも犬でもない者が現れ、自分のことを占い師だといった。
占い師
「私の占いによると、あなた達は滅んでしまいます。」①
「しかしご安心下さい。この仮面を使えば決してそうなることはないでしょう。」②
猫王
「失礼なやつだが、そいつをよこすニャ」
「ワガハイは猫をやめるぞ!犬王ー!!」
・・・・
猫王
「何も起きないニャ」
占い師
「せっかちな方だ。 その仮面を付けると、10年後の未来をみる事ができます。」
「ただし、逆立ちをしながら上を向いて歩き『焦がしちゃった』と叫ばなくてはなりません」④⑥⑧
「そして平和な未来をみることが出来たら、この星で一番大きな桜の木の下に埋めてください。」⑤
※この世界における逆立ち:いわゆるブリッジのこと
猫王
「何を面倒ニャ・・・嘘だったらただじゃあおかないニャ」
「して、おぬしの目的は褒美かニャ?」
占い師
「いいえ。私にとっては暇つぶし。強いて言えば心の天気が晴れ模様だったからでしょうか。」
猫王
「・・・クサイやつだニャ」
「まあいい。早速試させるニャ」
・・・・・
コガシチャッタ!!
・・・・・
猫大臣
「報告します。10年後には獣化と呼ばれる技術が生まれており、同胞での争いが起きています。」
「どうやら力と引き換えに我を失うようです。どうされますか。」
猫王
「そんなの許されるわけないニャ」⑨
「軍事研究開発費削るニャ」
・・・・・
~一方その頃犬国では~
占い師
「私の占いによると、あなた達は滅んでしまいます。」
「しかしご安心下さい。この仮面を使えば決してそうなることはないでしょう。」
・・・・・
~大きな桜の木の下で~
猫王・犬王「「おぬしは!!」」
・・・・
・・・・
猫王・犬王「「これからは手を取り合っていこう(ニャ)!!力を合わせれば3倍にも4倍にもなる(ニャ)!」」③⑩
こうして、惑星アルシャリウスに、平和が訪れた。
しかし、すべての危機が去ったわけではない。
猫王と犬王と仲間達の旅は今日も続く。続くったら続く。
~宇宙船内にて~
占い師を名乗った人間
「最高の星だったね!!本当だったら住みたいけど、まだまだ救わないといけないコ達がたくさんいるからね。」
「あ、VRゴーグルの在庫切れちゃった。一度帰還しなきゃ。」
【完】
[編集済]
ブリッジで上を見る発想はなかったです。みんな幸せのハッピーエンドですね
いやー。色んなところにネタが放り込まれてて面白かったですw 焦がしちゃったの回収の仕方初見で笑いが止まりませんでした。コガシチャッタ!(投票所の感想欄で某氏がイメージ図を書いておられるのでお楽しみに)
作品投稿ありがとうございました。
桜の木の下には死体が埋まっているという。その花の美しさに却って不吉を感じるからだのとも言われるが、理由は重要ではない。多くの人が信じている、或いは知っている。それだけで良い。
物事というのは認識の上に成り立つ。物体はただ物体で在るだけでは意味を持たない。その花を桜と名付け、人々が桜として見るからこそ、それは桜なのだ。もし桜を知らぬ人がその花を見て別の名を与えれば、その木はその人にとっては桜ではない。或いはその木に興味を持たぬ人が居るならば、その木が桜であれ梅であれ、木が無くとも変わらない。
物があり、名があり、意味があり。人の認識を以て、物は物足り得る。
桜の木の下には死体が埋まっていると。そう口にする人とて、大半は信じてはいないだろう。しかしもっともらしく語り、心の隅ではふと、或いは本当かもしれないと考える。その小さな疑念が集まって、果たして桜の木の下には死体が存在するのである。
桜の木の下に死体が埋まっているから噂が立つのではない。桜の木の下に死体を埋めたものこそがその噂なのだ。(⑤)
人の認識が不安定であることは言うまでもない。故に一見頑丈に見える物体も、普遍に思われる物事も同様に、寧ろそれ以上に不安定なのである。
直に元号が変わる。「令和」だ。(③)
この文字を見て、何を想像しただろうか。「和」は良い。「昭和」も記憶に新しく、「元和」、「承和」、或いは「和銅」と元号としても馴染みがある。
問題は「令」である。「命令」、「令旨」。しかしそれらは正しくなく、込められた意味は「令月」である。
果たしてどれだけの人が「令月」という言葉を知っていただろうか。新元号の発表に際して初めて知り、改めて「令和」の字を見る。
するとそこには、梅の花が咲く。暖かな温度を持つ。
認識とは、かくも不安定なものである。
認識が変われば物が変わる。いわんや概念をや。さて、では1+1が3になることはあるだろうか。答えは可である。
事実を変えるのではない。現実として、只今の認識として、1+1は3となるのである。
四捨五入という概念が在る。故に1.4は1である。即ち、1+1は1.4+1.4でもある。即ち、2.8である。故に、1+1=3である。(⑩)
1といえば暗黙に1.0を指すが、1.4を1と表すことは必ずしも間違いではない。現在の当たり前の認識の中で成り立つ理論である。
1.4を安易に1と丸めることで、真理を歪めかねない事態となる。
これは数値の話のみではない。物事を変換した時点で、それは元の物事とは異なる。変換することで比較できる、容易になる。そして、歪む。
変換すれば必ず抜け落ちる要素がある。それを知っていれば、安易に変換に頼ることもなくなる。(⑨)
シュレディンガーの猫という思考実験がある。箱を開けるまで、中にいる猫は生きており、死んでいる。そこに居て、そこに居ない。(⑦)
そも荒唐無稽の例であるから、重なっている状態は有り得ない。けれど、認識の上では真実である。
箱を開けない限り、猫が生きていることも猫が死んでいることも正解とも間違いともならない。無論、箱の中の猫が鳴かず、動かずであれば。或いは箱の中に犬が居ることもまた、起こり得る可能性の一つである。
猫は生きていて死んでいる、同時に犬である。猫が二本足で歩行することが可能なのはよく知られた事実であり、ならば逆立ちも可能である。(⑧)
猫は賢く、合理主義だ。故に必要のない逆立ちはしない。それだけである。
認識は物事を再定義し、塗り替える。トイレ掃除をするのは別嬪になるためであるように。上を向いて歩くのは涙を溢さないためであるように。(⑥)
物事は認識から逃れることはできない。認識されないことは即ち存在しないことと同義である。同様に、認識されればそれは存在する。
マーケティングの手法にペルソナというものがある。商品を利用する顧客像を具体的に作り上げる。それがペルソナ、即ち仮面である。(②)
年齢、性別、職業、趣味、家族構成。事細かく設定された仮面は、どこにも居ないがそこに居る。
実際に存在しない人間であっても、多くの人々に共有された認識は、時に実在よりも確かな存在となる。
認識は物事を定義し、認識は物事に先立つ。
さて、これらを踏まえて、我々は未来を知ることができるだろうか。
未来を知る術の一つに、占いがある。誰にでも当てはまる事柄を語る手法もあればコールド・リーディングもある。しかし話はもっと単純だ。
即ち、占いが未来を語るのではなく、未来が占いによって作られる。(①)
運の良し悪しは認識を以て決まる。運が良いと思う人は運が良く、運が悪いと思う人は運が悪い。餃子を見事に焦がしたとて、今度誰かに振る舞うときにしっかりフライパンを揺することができるのだから、運の良いことだ。(④)
即ち、占いで良いことが起こると言われた者は焦げた餃子から教訓を得、悪いことが起こると言われた者は焦げた餃子に泣くのである。
明日運命の相手に出会うと言われた者が翌日出会った者が、即ち運命の相手であるように。
未来を知ることができる。厳密には、否。知った未来のみが現実になりうる。
想像したことが必ず実現できるのではない。想像したことしか実現できないのである。
未来をより確実にするためには認識をより強固にする必要がある。そのために必要なのが理由であり、根拠である。
如何に非現実的なものであろうと、信ずる拠り所となれば良い。運が良いのはお守りのおかげだと。宝くじが当たるのは妊婦に席を譲ったからだと。
故に、ここに一つ予言を残そう。
明日の天気が快晴であれば、十年後のあなたは――
【止】
※⑨変換=transformation=TF
[編集済]
私が作品を作る時に目指しているものは自分の中の抽象的な感覚を言語化することで具体的に捉えて見据えることなんですが、ハシバミさんは私のそこをとっくに越えていて、考えとして確立できているなぁって。本当にただただ尊敬します。
すべての物は周囲による認識や定義ではじめて存在し得るというのは、自分も4回で【名前のない僕ら】を書く時に考えようとしたテーマなので、とても共感出来ましたし、勉強になりました。
要素を自然に自分の論に組み込めるのも見事としか言い様がなかったです。
作品投稿ありがとうございました。
[編集済]
僕はどこにでもいる、男子高校生。
みんなは好きな映画とかある?
俺はあのSF超大作の大人気映画『星の戦争』シリーズが大大大好きなんだ!
あれは良い作品だよ!素晴らしい監督、素晴らしい俳優、彼らの相乗効果で、1+1が3にも4にもなる、そんな映画だね。⑩
この前、新元号発表に合わせて公開されたシリーズ9作目『星の改元〜ザ・ライズ・オブ・レイワ〜』も公開初日に観てきたよー③
めっちゃ面白かったねー。まさか、ラスボスが主人公の飼い猫だったなんて…⑦
星野元の主題歌『令和』も良かったし。元号発表から2時間足らずで公開されてあのクオリティはすごいよね。
しかも、重大発表があってさ。
なんとシリーズ10作目の公開も決まってるらしい。ついにラスボスと決着だって。まじ嬉しい〜
公開は10年後、つまり令和10年。もう撮影とかも始まってるってさ。
まじ楽しみで待ちきれない。嬉しすぎて、朝、パンを焦がしちゃったよ。俺は『星の戦争』に胸を焦がしてるけどねーあははー④
さーて、それはそれとして、1つ問題があるのだ。
明日は出来たばかりの彼女と初デートなのだが、全くのノープランなのだ。
うっかり逆立ち大会にスカートで来てしまった彼女を、僕が助けてあげた事から付き合い始めたんだけど…⑧
「任せてー」と言ったのは良いが何も決まっていない。どうしたものか。
冴えない男友達に相談しても意味ないしなー
かと言ってTFには頼りたくないし…⑨
あ、TFって言うのは学年1のイケメン&プレイボーイで有名でTF(突然告ってもフラれない)ってみんな呼んでる奴なんだけど。恋愛相談するといつのまにか恋人を奪われてるって噂なんだよな。
まあ、無難に、晴れたらお花見、雨ならカラオケとかでいっかー
寝坊しないように早く寝よっと。
さあ、デート当日だ。
毎朝見ている朝の占いをチェック。僕は1位!絶好調!①
とってもいい天気。
まず、桜並木を通って、桜で有名な公園に向かう。綺麗な桜だ。僕らは上を向いて桜を見ながら歩いた。⑥
桜の木の下で、彼女が作ってきてくれたお弁当を食べる。おにぎり、焼きそば、唐揚げにレモン。まじ美味しいー
あ、唐揚げ落としちゃった。彼女に気づかれたらマズイな、食べたくもないし…いいや埋めちゃお。⑤
この後どうしよう、と思ってたら彼女が近くの展望台に行きたいって言うんだ。賛成賛成
うーん。いい景色。晴れてるから遠くまで見渡せるね。
彼女は百円入れて見る望遠鏡が覗きたいってさ。百円もったい無くない?
一緒に隣で覗こうって言うから、百円入れたフリして見なくていいや。
彼女「綺麗だね〜」
俺「それなーまじ綺麗。天気良くて最高だねー」
彼女「あ、あれ!すごい!見て見て!」
俺「え、どれどれ?」
俺は慌てて百円を入れて覗き込む
俺「どれどれ?」
彼女「ほら!あの丘の上!なんかドラマかなんかの撮影してる!」
俺「あ、本当だ〜なんの撮影だろ?」
とよく見てみると、その瞬間、雷に打たれたような衝撃が走った。
あれは俳優は「班一人 」、そして、あの黒い全身スーツに黒い猫の仮面を被ったあの姿は…②
『星の戦争』シリーズのラスボス、シースの暗黒卿こと「ネーコ=ダーベー」
間違いない『星の戦争』シリーズ最新作の撮影だ…もう撮影始まってるって言ってたしな…おまけに、お馴染みの武器、光棒(こんぼう)も持ってるし…絶対だ…
パニックになりながらも目が離せなかった。
声は聞こえないが、動きはよく見える。2人が話している。結構いい所か?
と思っていると、突然!!
ネーコ=ダーベーが自分の光棒をグサっと自分の胸に突き刺したのだ!
呆然としていると、目の前が真っ暗になった。自分が気絶したのかと思ったら、望遠鏡の時間が終わったようだ…
彼女「まだ時間余ってるの?私のはとっくに終わっちゃった。もう百円入れたの?」
その後のことはよく覚えていない。
軽くパニックだったのだ。彼女が「大丈夫?」と何度も声をかけてくれた気がするけど…
まじか、ネーコ=ダーベーが自殺するなんて…
あーあーあーあーあーあーあーあーあー
今日晴れてさえいなければ、こんな10年後の映画の大ネタバレくらわずに済んだのに!
【完】
[編集済]
問題の解説としての納得感がかなり高いなと思いました。そりゃあ10年後の未来もわかるし、男は可哀想に・・・って感じですね。10年もかけて作る超大作ですし、特に。展開が男の語りで進んでいく分、喜び→うわぁぁぁの変化が分かりやすかったです!
作品投稿ありがとうございました。
[編集済]
「小学校卒業の記念として、タイムカプセルを作ろう!」
と、教壇に手をついて担任が言う。
帰ってくるのは驚きと落胆の混ざった「え~」という声。恐らく半分以上が落胆の声だろう。
僕はといえば、ある程度予想していたので特に何も思わない。若い男性で、快活で教育熱心。いわゆる「熱血教師」なコイツなら、言い出しそうなことだ。
「皆は平成最後の卒業生だから、平成の記念になるようなものを入れよう③!」と担任。
またそれか。ここ数週間で、「平成最後」なんて言葉は聞き飽きてしまった。テレビをつければ「平成最後の」「平成を振り返る」ばかり、学校でも散々「平成最後の卒業生」と言われ続けた。
馬鹿馬鹿しい。元号が変わったところで、何が変わるというのだろう?新しい元号になった瞬間、世界が平和になるとか、逆に破滅するとかそんなわけないのに。
~~~
担任の話をなんとなく聞き流していると、あっという間に段取りが決まっていた。
埋める場所は校庭の桜の木の下⑤、そして掘り出すのは10年後。定番の将来の自分への手紙も書く。ただ、どうしても書けない人は新元号の予想でもいいらしい。
そう、予想。これのせいで、休み時間になった途端に隣の席が賑やかになっている。
時野 史香(ときの ふみか)。僕の隣の席の女子。勉強は中の下、運動は下の上くらい。だが、コイツには強力な「占い」がある①。
天気予報をさせて外したことは無いし、コイツの恋占いはどんな番組よりも雑誌よりも正確だと評判。翌日の一時間目に小テストがあることを当ててみせたり、あるときは先生に「焦がしちゃうから気をつけて④」と言った日の夜、その先生の自宅でタバコの不始末が原因の火事が起きた(幸い大事には至らなかった)りもした。
でも、僕は信じていない。そんな非現実的なこと、あるわけないに決まってる。
~~~
「おい、空!メッセージ、何て書いた?やっぱ史香に聞いた?」
「聞いてないけど」
「え、じゃあちゃんと10年後の自分にメッセージ書いたのか」
「そんな面倒くさいことしないよ」
先生に配られた紙には「銭苔」と書いてある。自宅で飼っている猫の名前だ⑦。
「お前隣なんだから聞けばいいじゃん」
「いやいや…だいたい当てても何も無いのに、聞く必要ある?」
「いやそこはせっかくなら当たった方がいいだろ?お前の場合、ちょっと一言二言口聞きゃいい話だし。史香のこと嫌いなのか?」
「そういうわけじゃないけど…なんかアイツに頼りたくないんだよ⑨」
正確には、占いなどという信用ならないものに、だが。
「ふーん?」
「というか、お前は何持ってんだ。その仮面②」
「これ?空は覚えてないか。今年の文化祭の劇で使ったんだけどな」
「なんで持ってきたんだよ」
「卒業記念になる…は建前で、処分が面倒くさいからついでに埋めちまおうかと。それよりさ…
お前、史香のこと好きだったりする?」
「は?いや何言ってんのほんと」
「ほら、好きな人ほど冷たくする奴みたいに」
「そんなわけ…ああわかったよそんな感じだよ」
こういうのは下手に否定するほど面倒になる。
~~~~~
あれからあっさり卒業と入学を迎え、中学にも慣れてきた。とはいえ、同じ学年の大部分は同じ中学に進んだので、特に変わったという印象は無い。
そして、改元の騒ぎも収まってきて、後2週間ほどで「令和」の時代を迎える。不思議と、改元の騒ぎが収まるとともに改元に対するマイナスな感情も収まってきた。
平成も終わりに近づいているものの、目新しい感動も無く1日の学業を終えてきた。
今年の春は天気が不安定だったが、今日はよく晴れている。自分の名前に「空」と入っているのもあるが、僕はよく晴れた空が好きだ。下校中の開放的な気分も相まって、上の方を見ながら歩く⑥。
…と、突然手を捕まれた。「うおっ!?」
「天宮くん危ない。赤信号」
その声が聞こえると同時に、目の前を大型トラックが走り抜けていく。この声は、史香の声だ。
「ありが、と…いや、でも自分で気づけたから」
「ううん、気づかなかったよ」
「なんでわかるんだよ」
「今朝逆立ちした時から知ってた⑧」
「は…?あ、逆立ちで占いするのか?」
「占い、というか、なんとなくわかるの。逆立ちするのはその方が集中できる気がするから」
…予知みたいなものなのだろうか?
いやいや、そういう非現実的なことは信じていない。神だの幽霊だの運命だの、そんなのは僕からすれば1+1が3になるのと同じくらいあり得ないことだ⑩。
「あ、そうだ、そろそろ一歩下がった方がいいよ」
「え、なんでだよ」
「下がればわかる」
一応言われた通りに一歩下がってみる、とその途端に目の前に上空から鳥のふんが落ちてきた。
「…マジか」
「じゃあ行こうか」
ちょうどそのタイミングで信号が青に変わった。
~~~
「そういえば、史香は次の元号わからなかったのか?」
入学式の日の放課後、史香の席にこれまた人が詰めかけた。どうやら、史香の予知した元号が間違っていたらしい。僕は聞いてないからどう間違ったのか知らないけど。
「ううん、令和になるって知ってたよ」
「じゃあ、わざと違うのを教えたんだ」
万が一発表前に次の元号が広まって騒ぎになったらまずいってことか。
「それも違う。私は本当に正しい元号を教えたよ」
「どういうことだ?」
「タイムカプセルを掘り出すの、10年後でしょ。だから、ちょうど10年後に改元するときの新元号を教えたの」
「…え?じゃあ、次の天皇は?」
「それはね―――」
【完】
[編集済]
【平成最後の】という言葉が飛び交いましたが、今、元号が変わっても確かに何も変わらずに日々は過ぎていくんだなと確かに今私も実感してます。
そんな疑問を持ち物事を現実的に見る男の子と、予知が出来る非現実じみた女の子の会話が描かれた物語ですが、要素を組み込んだことに対する違和感が全くなく、すっきりと読むことができました。
作品投稿ありがとうございました。
[編集済]
葉桜の木の下に穴を掘っている。
木が根を張った土は思った以上に重く、スコップを地面に刺そうとするだけでも汗がじんわり滲む。
まだ生い茂った葉が日差しを遮ってるおかげで、熱中症にはならずに済んでいるが。
そろそろ喉が渇いてきたな。
ふう、と息を軽く吐く。額の汗をシャツで拭い、ぱたぱたと襟で風を作る。足元の土に腕を伝った水滴が落ちる。
「みい」
猫のミーコが足元にすり寄ってきた。
どうやら掘った穴に収まろうとしているみたいだ。
「こら、ダメだぞ」
「ふにいー」
両前脚の付け根を掴んでミーコを持ち上げる。
だらしなくぶら下がって伸びる胴体と後ろ脚が、なんだかみっともなくて気が抜ける。
ちょっと笑ったのが気にくわなかったのか、ミーコの不愛想な顔がさらにむくれた気がした。
しばらくミーコとにらめっこをしていると、視線の奥で彼女がやってきたのが見えた。
走ってきたようで、少し息を上がらせている。
「お疲れー。どう、進捗は」
「充分入るだろ、ミーコも収まるぐらいだったし。お前は」
「ばっちりー。ちゃんと全部この缶の箱に詰め込んどいたからね」
はい、と手渡されたのは炭酸飲料。きらきらと泡が煌めいている。
それと、お菓子が入っていたであろう金属製の箱。
日光が反射して、チカリと眩しく輝いた。
「なんだか少し味気ないな」
「埋める日でも書いとく?」
「任せる」
そう言われた彼女は、鞄にある筆箱からマジックペンを取り出した。
そしてしゃがみ、お菓子の箱を地面に置く。
俺から見ると伏し目がちなので、睫毛が長い。
しゅわしゅわとした刺激を、ごくり、と飲みこんだ。
冷たい液体が火照った体を少し鎮めてくれた。
しばらくすると上目遣いで俺を見る。
ペットボトルを持つ手に力が入る。
「れいわってどう書くっけ」
「命令の令に平和の和……」
うーん、と彼女は唸る。あまりピンときてないようだ。
首筋の上から流れる液体が、うなじを伝って背中の中へと入っていくのが見えた。
「もうR18って書いていいかな」
「ンッブォフッッ」
気管に入った。勢いあまって、中に含んだ炭酸ごと吹き出した。
真正面には、ちょうど彼女がいる。
「ごふっ……ご、ごめ……」
「もう、ゆっくり飲みなよ。……大丈夫?」
かなり彼女に掛かってしまったようだ。
ワイシャツがだいぶ濡れてしまっている。
……ただそれだけならまだ良かったのだが。
「…………みずいろ」
「は?」
そこからの意識は、ほとんどない。
――――――――――――――――――――
早いもので、高校2年も終わりに差し掛かっている。
そして、あいつと付き合って1年目。
きっかけは、熱中症でぶっ倒れた俺を看病してくれた時から。
いろいろと喧嘩はするが、それなりにうまくやっている方だと思う。
何より、互いに居心地がいい。別れるなんて考えられなかった。
いつものように、俺たちは放課後の帰り道を歩く。
他愛ない会話を繰り返して、また明日、と言うはずだった。
「……あのね、私ね――《できた》みたいなの」
――――――――――――――――――――
電車内は、酷く静まり返っている。
がたんごとん、と揺れる音がやけに大きく鳴り響く。
彼女との会話を反芻する。
ぐるぐる。ぐるぐる。
――《できた》みたいなの――。
⑧気づくと、全身の毛が逆立っていた。
夏のせいにするには、滝のような汗はあまりにも冷たかった。
親。子ども。
責任。現実逃避。
結婚。未成年。
恋愛。出来心。
妊娠。中絶。
⑨このことに関してTwitterやFacebookの友達に頼るわけにもいかない。
ただ批判されるだけだ。
――両親に、言うしかないというのか。
――――――――――――――――――――
「ごめんなさーい、最下位は6月生まれのあなた! 大好きな人を傷つけてしまうかも! 責任ある行動を心掛けよう!」
①占いなんて当たらないと思っていたが、存外的を射ることもできるらしい。
鉛の付いた足枷をつけているように、重々しく歩く。
⑥通学路で見上げた空は、そんな俺をあざ笑うかのように純粋な空だった。
「……おはよ」
「…………うん」
青あざだらけの俺に対して、彼女は何も言わなかった。
②マスクで口元は隠せても目元は隠せなかった彼女に対して、俺も何も言わなかった。
案の定、俺は退学だ。
俺のとばっちりで、彼女も。
廊下ですれ違う奴らの話が全て俺たちのことを言っているように感じた。
……もう手遅れだった。
もう友人に会う訳にはいかない。
馬鹿だなと笑える時間も、もう壊してしまったのだ。
すべて。すべて。
俺の過ちのせいで。
④戻らない青春に思いを馳せ、身を焦がす。
――――――――――――――――――――
「にゃーん」
日もすっかり暮れ、ミーコが鳴いた。久しぶりに声を聞いた。
「みゃー」
ミーコは背を向けて窓の外から出て行ってしまった。
ミーコが気まぐれに外に出るのはいつものことだ。なんてことはない。
しかしちりん、と首輪の鈴の音が遠のくにつれて不安になり、なんだか追わないと二度と戻らない気がした。
「……あ……」
着いたのは、公園の近くの桜の木だった。
ミーコはその桜の木の根っこにあった穴のそばに座った。
……この穴は、あの時の。
「まだあったんだ……」
ミーコのすぐそばに、彼女がいた。
彼女は、お菓子の箱を抱きかかえていた。
「――持ってたんだ」
「だって、埋めずじまいだったでしょ」
「……捨てても良かったのに」
「根っこにぽっかり穴が空いたままにするわけにはいかないでしょ」
「ミーコがいるだろ。寝床にはちょうどいいスペースだ」
「違うよ」
「違うって何が」
「⑦ミーコは、私たちが来るのを待ってたんだよ」
「ミーコが?」
「これを埋めるまでずっとここを守ってたんだよ。ねえ、埋めよう、これを。あの頃を思い出してさ」
「そんなの……そんなの自己満足だろ」
こんな罪悪感しかない状態で。お前との思い出を埋めるなんて。
公園中が静まり返る。彼女は俯いた。
そして、ゆっくりとこう言った。
「……じゃあ聞くけどさ。キミは、こうなって後悔してる?」
「そりゃ、だって……」
「私を巻き込んだとか、いろんな人に迷惑かけたとか、そういう理由はなしで。キミ自身はこんなことしたくなかったの?」
「俺は……俺自身は……」
俺は答えられなかった。
自分自身のことを考えても、軽率なことだったと思う。
だけど同時に、幸せな未来を感じずにはいられない。
でも、俺は、やっぱり、俺は、ただ、
「……怖い」
ただ、そんなことを言った。
ガキみたいな理由だ。なんの答えにもなっていない、ただの恐怖心。
でもそんな弱気な答えに眉を顰めることなく、彼女は微笑んだ。
「それは、後悔なんかじゃないよ」
「どうして?」
「だって、未来のことを考えてくれてるんでしょう?」
彼女はまた笑った。一年前のように、あどけない笑顔だった。
「後悔は先に立たないけど、恐怖だって後には立たないんだよ」
人は知らないことに怖いと思うんだから、と彼女は言った。
「それなら、やってみようよ。私とキミ。ううん、それだけじゃない――3人で」
⑩彼女は、彼女自身に宿りかけた命に手を添えて言った。
「にゃーん」
「ふふ。3人と1匹だったね」
「⑤ねえ、証を遺そうよ。私たちがここにいた、確かな証を。この子に伝えるために」
――――――――――――――――――――
「にゃーん」
「ここに何かあるの?」
「みゃあ」
ちりん、と鈴が鳴る。止まったのは、一つの桜の木の根っこのそばだ。地面をよく見ると、少しチカっと光ったものがあるのが見えた。
「お手柄だぞ、ミーコ隊員!」
「みっ」
「よーし、今すぐ土をどけて……取れた!」
中身はお宝だといいなあ。
「『何やら箱のようなものですね、サクラ隊長』『うむ、こういうところに幻の財宝が眠っているのだよミーコ隊い……』……あっこら、ミーコ! 引っ掻くな!」
名前が書いてあるな。
あれ? パパとママの名前……。
「うっわあ、懐かしいなあ。もう10年も前になるか……」
パパは、その缶の箱を見て言った。
「それはな、タイムカプセルだ。まだ、お前がお腹の中だったころの……」
「へえ。じゃあ、今は10年後の未来だね」
「そうだな。今は未来だな」
パパは笑った。それ以上多くは語らなかった。
ひらりと桜の花びらが、儚く散っていったのが見えた。
「なあ、桜」
「なあに、パパ」
「パパとママのこと、好きか?」
「うん」
そう言うと、わしゃわしゃと頭を撫でられた。
なんだかそれが、僕はくすぐったかった。
「ねえ、このタイムカプセルのこと教えて」
「いいよ。何から話そうか」
パパはジュースを飲んでいた。
何から聞こうかな……。
「③じゃあパパ、このR18ってなに?」
「ンゴブォッッ」
雲一つない青空に、綺麗な虹が架かった。
――――――――――――――――――――
《要約》
晴れた日にタイムカプセルを掘り出した10歳の男の子。
タイムカプセルには10年前の日付が書かれていたので、このタイムカプセルの10年後の姿を知った。
(以上)
[編集済]
起承転結が綺麗に整っていて、また、内容に合わせた描写の表現が上手いなぁと思いました。
要素の使い方が独創的ですね。特にTFとか逆立ちあたりが素晴らしいです。R18のくだりで落としてくるのは笑いました。
【ユウアンドアイ】もそうでしたが、とろたくさんの複雑な男女関係の中でそれぞれの心の揺れ動きを表現する手法が私大好きです。
作品投稿ありがとうございます。
※この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
俺の名前は、栄賀 撮夫(えいが とるお)映画監督だ。
親父は有名映画監督の栄賀 駿だ。
親父と違って才能のない俺は、次回作のことで悩んでいる。
来月の会議までになんとか形にしないといけない。しかしアイディアは0だ。
こんなときはあれしかない。掲示板で要素安価だ。
『要素』
①占う
②仮面が関係する
③改元が重要
④焦がしちゃった
⑤桜の木の下に埋める
⑥上を向いて歩く
⑦猫が関係する
⑧逆立ちする
⑨TFには頼りたくない
⑩1+1=3
どうしてこうなった!
ど゛う゛し゛て゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!!!
いけないいけない、ついうっかりTFでちゃった。
彼もいい俳優なんだけど演技がワンパターンだからな・・・⑨
改元がきっかけで占いを信じるとか?①③
んーありきたりすぎるだろ。
猫が不思議な仮面を手に入れる話はどうだろう?②⑦
どっかで聞いたことあるな。
あるものを焦がしちゃったカメオは、上を向いて歩き、桜の木の下に埋めた④⑤⑥
なぜだろうか?
いやスープ作ってる場合じゃねーよ。
逆立ちしたらアイディア出るかな。⑧
あ!! 1+1=3 って⑩
< ゚1+1=3
こうすると鳥が飛んでるみたい^^
・・・
ヤバイよヤバイよ。
ほとんど映画関係ないじゃん。
もっとこう俺の好きな青空とか・・・
そうだ!俺は天気をテーマにした映画が作りたいんだ!!
大切なことに気づいてからの俺は強いぞー。
タイトルは『天気の子ミク』にしよう。
・・・・・
手前味噌だが、めちゃくちゃ面白い話になった。
不思議な力、可愛いヒロイン、時間を使ったトリック、
有名アーティストによる楽曲などなどウケる要素が満載だ。
大ヒット間違いなしだ。もう親の七光りとは言わせない。
~映画公開後~
いやそんなの知るわけ無いじゃん。パクリとか言われても困るし。
昭和の超マイナー作品じゃん。『10年後の未来』ってなんだよ。
【完】
[編集済]
タツヤフジワラでTFやるの天才だと思います。
< ゚1+1=3とかどんな生き方してたら思い浮かぶんですかホントすごい。要素回収するどころか要素でこんなに遊べる人が出てくるとは思いませんでした。
問題文の解釈の仕方も面白いですね。『10年後の未来』という作品を知ったということで、こんな笑いが強い作品でも筋が通っていて納得感がありました。
作品投稿ありがとうございました。
特徴的な耳をしている猫は、私と関係がある。
愛のある証らしいが、傍から見ると可哀想でならない。
そんな私は、オリジナルの身体の一部から作られた2番目のクローンだ。
しかし付けられた番号は3番ということになっている。
その理由はオリジナルを1番と呼んでいるかららしい。
本来2であるはずが3になるなんて奇妙なことだ。
私はまだ小さいが、成長には10年の歳月が必要らしい。
彼らを見下ろせるくらい大きくなれば、きっと褒めてくれる。
早く大きくなりたいが、こればっかりはどうにもならない。
うまく成長できなかったらどうなるのだろう。
彼らはがっかりするだろうか。
私を粉々のミンチにして焼いて食べようとか言うかもしれない。
改元に便乗して、私は姿を消すようだ。
まあ、ついでのような扱いだけど。
雨が降り続いているのでだんだん元気がなくなる。
子どもが靴を飛ばしている。
靴は逆立ちだった。
やだなあ、腐りたくない。
せめて一回ぐらい咲きたい。
おそろいの仮面をかぶるように、みんなと一緒に咲(わら)いたい。
……もしも私が腐ったら誰かの夢に出て下になんか埋めようかな、なんてね。
どうか早く晴れますように。
私は光合成がしたいです。
――――――――――――――――――――
「いやあ、絶好の花見日和だね」
「そうだね。まさかてるてる坊主を量産するとは思わなかったけど」
「てるてるファクトリーだったね」
「もうやりたくないわ」
「だって雨続きだったんだもの。あ、見て、新しい桜が植えてある」
「へえ、10年後には立派になるのか、それは楽しみだな」
《要約》
季節の変わり目で雨続きだったので、男は予定していた翌日の花見ができるかと不安だった。
晴れたので予定通り花見をしてたら10年後ぐらいに立派になる桜が植えてあるのを見た。
《要素チェック》
①占う
靴を飛ばして明日の天気占うやつ ついでに⑤とも軽く関連している
②仮面が関係する
咲く時期が同じクローン→同じ顔→同じ仮面というこじt……
③改元が重要
今の1000円札の裏面は桜があるがそれも変わるらしいということで
④焦がしちゃった
※「粉々のミンチにして~」:砕いた桜チップを焦がして燻製に使うだけです
⑤桜の木の下に埋める
っていう夢を見ると大事な人と別れるみたいな占い結果になるらしい
⑥上を向いて歩く
※「彼らを見下ろせる~」:桜並木を見上げて立派だと褒める
⑦猫が関係する
ある処置をして耳を少し切った猫のことを「さくらねこ」と言うらしい
⑧逆立ちする
靴がひっくり返ったのを逆立ちと言って果たしていいのかどうか
⑨TFには頼りたくない
Teruteru Factoryの略 たくさん作っても結局神頼みだし頼りたくないよね
⑩1+1=3
本来2であるはずが3なので オリジナルも結局数多くある桜の一つ
(以上)
[編集済]
Teruteru Factory(ネイティブ発音) 語感が好きです。
短い文章で10要素回収かつ整った内容にする技量が凄い・・・。
内容もどんでん返しが衝撃的で要約読んだ後にもう一度文章読み返して(あぁーーー!!!)ってなりました。水平思考って感じがして大好きです
作品投稿ありがとうございました。
”今日の運勢は~大吉!
上を向いて歩こう!
友達と遊ぶと何かいいことがあるかも?
それでは本日も良い日をお過ごしください!
それでは本日のお天気です。
今日の天気は...”(ブツン)
嫌いな占いをうっかり見てしまい腹立たしげにテレビの電源を切る。
占いというものは嫌いだ。
たとえ最悪だと示しているものでも大抵はいい思いをするようになっている。
運の合計が明らかにプラスに偏っているのだ。
損と得とは表裏一体
誰かの損の分だけ誰かが得が起こっている。
だから得が1+1=3や4になるようなことはない。
それがあったようなときは
誰かの(-1)が紛れている
今日も私はそんな -1を受けている
「はぁ、雨か...あの占いのせいだ...」
文句を口に出しながら上を向く
その文句は筋違いなものだと自分でも分かっており舌打ちをする。
足元には桜が散り、薄汚れた花びらのまとわりついた死体が転がっていた。
ーーーーーーーーー
今日も私は上司にこびへつらい、同僚に疎まれた。
twetterで
「TFマジ腹立つ あいつ何もやってないくせに上司にこびだけうってやがる
あいつにだけは絶対頼らねえ
逆立ちして頼んだってあいつの話は聞いてやらん
」
などと同僚がほざいていた。
私が気づいていないとでも思っているのだろうか?
そんなことを思い出しながら
雨に降られ傘もささずぼーっと歩く。
そうすると何もかもがどうでもよいような気分になる。
そんな時は周囲に見せていた仮面を取り払い、
普段押し殺していた自分を開放する。
彼の名前は 得崎 冬樹
世間を騒がせている ”連続殺人鬼” である
世間的には 令和最初に話題になった犯罪者かつ、
雨の日に現れる殺人鬼として通称レイと呼ばれている。
”レイ”か。何とも格好の良い名前をつけられたものだ。
ひそかに気に入っているその名前を思い返しニヤリとしつつ、
不運な被害者を吟味する。
偶然通りかかった青年を一刺しする。
苦悶の表情を浮かべる少年をしり目に筋違いな不満をダラダラと口走っていた。
ーーーーーーーーー
足元に転がった死体を見て
今日はなんとなく死体を木の下へ埋めることにした。
桜の木の下には死体が埋まっている
そんな話をどこかで聞いたことがある
それになぞらえてみることにしよう。
作業を終えると彼は満足気に微笑んだ
そうして今日も不幸を
生産し
清算し
凄惨にし
帰路に就く。
こうして不幸な”今日”が終わった。
朝起きて、身支度を整え、朝食を食べながら天気予報を見る
”…それでは本日も良い日をお過ごしください!
それでは本日のお天気です。
今日の天気は快晴、洗濯物を干すのに最適な天気となるでしょう。
ただし空気が乾燥しております。火災にはご注意ください。”
ほかの地方の天気やその日のニュースを目にし、
機嫌もよいので時間より少し早く仕事へ向かう。
玄関を出るとお隣さんが植木鉢に水をやっていた。
猫に関する愚痴や対策法などを少し話し、
”そろそろ時間なので失礼しますね”
そう言って話を切り、仕事へ向かう。
そうして仕事に向かうとその日は幸運だった。
上司の機嫌がいい
同僚の態度もなぜか良いものだった。
而して不運は突然にやってくる。
「こちらに得崎冬樹さんはいらっしゃいますか?」
そう言って警察がやってきた。
返答をすると
「得崎冬樹だな 連続殺人の容疑で逮捕する」
と い っ て き た
初めは何を言っているか理解できなかった。
しかし説明を受けるにつれ理解する。
警察曰く、隣の家猫除けのペットボトルが集光機となり、それは家の壁を焦がし、
ついには発火してしまったと言う。
それが煙を上げているところが発見された。
無事鎮火されたものの、壁に穴が開き
数々の証拠品が発見されたそうだ。
はぁ やっぱり私は不運だ
そんな自己中心的な発言を最後に彼は逮捕された。
彼はその後の人生を牢獄で過ごすこととなる。10年後も20年後も。
誰もいない監獄で無為に過ごす彼は奇しくも幸福そうにしていたという。
FIN
[編集済]
独りよがりな価値観と狂気的な内面を持った男の話ですね。
上手く言い表せないのですが、こういうのめちゃくちゃ好きです。1+1=3の解釈が好きだったり、せいさんのくだりだったりとか、死体がなんともなく扱われている所とか、幸不幸で全部片付ける主人公だったりとか物語の閉じ方とか本当に・・・
作品投稿ありがとうございました。
-----------------------------------------
どうもこんにちは。
唐突なお手紙でごめんなさい。
僕のことわかるかな?同じクラスだよ、「ハル」って呼んでほしいな。
君のことは「ヨシ」って呼んでもいいかな?
まずはどうしてこんな手紙をヨシに書いているのか、なんだけども…単純に僕は友達がほしいんだ。気を遣わずに済む友達が、ね。
親のせいか話しかけられることは多いんだけど、ちゃんとした友人ってのがいない気がしてて。
だからってどんな人かもわからないようなTwitterやFacebookには頼りたくないしね。
そんなわけで、そういうのあまり気にしなそうなヨシに、他人には見られない手紙で友達になりたいな、と思ったんだけど、どうかな?
5月12日 ⑨(TF)
-----------------------------------------
クラスメートの、しかも男子から手紙などもらったことがないので、どう返事を書けばいいかわからずに混乱しています。そもそも本当に私宛ての手紙なのか、何度も眼鏡をこすって確認してしまいました。
ハル、、、くん?と呼べばいいのでしょうか、違和感がありますが…
友達づきあい、私でよろしいのでしょうか?
見ての通り、本ばかり読んでて友達も少ないし、テレビも全然見ないので流行とかもわからないです…
ハルくんについては…隣の席で噂してたような気もするけれど、あまりよく知りません。
親御さん?のことも聞いたことないような。
確かに話しかけられている姿を見ることは多い気がします。
5月14日
-----------------------------------------
お返事ありがとう!
敬語なんて使わなくていいんだよ、それに「ハル」でいいよ! 仲良くなりたいからね。
僕としては毎日手紙を書くつもりだけど、ヨシは無理する必要はないからね。
親については、むしろ知らないでいてくれた方が嬉しい。
1+1=3だと親が言えばそうなってしまうような人だけど、僕はそんなに好きになれないんだ、親も、その肩書きも。
読書が好きなんだね!どんな本が好きなのかな?僕はミステリーとかけっこう読むよ。謎が解き明かされていくのはとてもおもしろいと思う。
5月15日 ⑩(1+1=3)
-----------------------------------------
うん…わかった。まだ慣れないけど、がんばってみるよ、ハル。
親御さんとはあまり仲がよくないのかな。なら私からも余計な詮索はしないでおくよ。
私が好きな本か…いわゆる「文豪」と呼ばれてる作家の本はけっこう好きだよ。
芥川も太宰も宮沢賢治も…でも一番はやっぱり夏目漱石かな。ロマンチックな表現が日本人らしくてたまらないんだ。
5月16日
-----------------------------------------
-----------------------------------------
昨日の学園祭は楽しかったね!
僕はひたすら飲食店をうろうろしてたけど、ヨシはどんなことしてたのかな?
まさか、いつもと同じように本ばかり読んでたんじゃないだろうね?
6月23日
-----------------------------------------
うん、楽しかったね。
あれだけ周りが騒がしいのに、本なんて読んでいられないよ。
でもね、今まであまり話したことなかった子が話しかけてくれて、少しの間だけど一緒に企画を回ってくれたんだ。
もうすぐ新元号が発表されるのを活かした企画が印象的だったよ。
「あなたの元号は………『光安』であります。あなたには今年一年、光り輝く未来が待ち受けていることでしょう。」
とか言って、お客さん一人一人に似合う元号を占ってくれるんだ。
それにしても、新元号発表ってこんなに早いんだね、まだ生前退位まで何年もあるんでしょ?
6月24日③改元 ①占い
-----------------------------------------
-----------------------------------------
ヨシ、君は充実した夏休みを送っているかい?
僕はと言えば、両親が勉強しろとうるさくてね、なかなか遊んでいる暇もないんだよ。
この間話していた、カレンちゃんだっけ?
彼女とは昨日海に行く予定だったとか。あいにくの雨だったみたいだけど、ヨシががっかりしていないかなと思ってね。
7月29日
-----------------------------------------
ねぇ聞いて!
結局一昨日は海には行けなかったんだけど、カレンと映画に行ったんだ〜
本格的なラブストーリーだったんだけどね、夜、2人だけの公園で告白するシーンがもうドキドキしちゃった!
恋愛映画なんて見たことなかったんだけど、いざ見てみるとロマンがあって、読書に通じる部分があるみたい。
7月30日
-----------------------------------------
-----------------------------------------
ヨシは最近、クラスでも友人が増えたみたいだね、よろこばしいことだと思うよ!
僕はと言えば相変わらずだよ、話しかけてくれる人は多いんだけど、友人だとか、ましてや親友なんて呼べる人はいないみたいだ。
愚痴みたいになっちゃってごめんね。もうとっくに慣れたから大丈夫さ。
9月10日
-----------------------------------------
どうしてハルはそう、悲観的で達観的なの?
愚痴はいいんだよ、私だって何度も聞いてもらってるし。
でもさ、自分のことを過小評価するのはやめなよ。ハルには話しかけられるだけの魅力があるんだよ。きっとその人たちも、ハルだからこそ話しかけたんだよ。
それに……さ、私のことは友達だと思ってくれてないの、かな?
私はハルのこと、とっても仲がいいと思ってるよ。初めて手紙をくれたのが4ヶ月前とは思えないくらいに。
思えばあの頃、私はひとりぼっちだったんだ。読書より楽しいことがあるなんて思いもしなかった。
ハルが教えてくれたんだよ、人と話すってことを、ね。
ハルがいなければ今の私は絶対にいない。感謝してるよ、ハル。
9月11日
-----------------------------------------
うん…ありがとうね。本当にありがとう。
僕もヨシのこと、友達だと思ってるよ。もちろん一番の、ね。
僕もヨシに助けられた部分は大きいよ。君がいなければ僕は、とっくに嫌になっていたかもしれないんだ、この境遇を。
愚痴ついでに聞いてくれるかな?
前に少し話した僕の親なんだけど、少し前から引退をほのめかすようになったんだ。つまり、僕に仕事を継げってこと。
生まれた時から周りもそのつもりで、僕が継がないことなんて、猫が逆立ちでもしない限りありえないような様子なんだけど、僕には荷が重いと思うんだよ。
どうしたらいいと思う?
9月12日 ⑦猫⑧逆立ち
-----------------------------------------
ハルも同じように思っていてくれて嬉しいよ。
でも、私の感謝の方が大きいから!なんてね。
そんなに親御さんの仕事は大変なんだ、ハルがそこまで言うのならよっぽどなんだろうね。
そんなハルに、夏目漱石の言葉を贈るよ。
『運命は神の考えることだ。人間は人間らしく働けば、それで結構だ。』
どう?彼に言わせれば、ハルがどんな場所でどんな仕事をしていようとも、ハルらしさを忘れなければそれで充分なんだよ。
ほら、担任もよく言ってるでしょ?
『置かれた場所で咲きなさい』って。
9月13日
-----------------------------------------
ありがとう…ヨシ、本当にありがとう。
かなり気持ちが楽になったよ。いつのまにか、親の肩書きを受け継ぐことにプレッシャーを感じていたのかもしれない。
ねえ、ヨシ?君に直接伝えたいことがあるんだ。聞いてくれるかな?
今まで、君に迷惑をかけたくなくて、僕自身も傷つきたくなくて、手紙という仮面をかぶって君と触れ合ってきたんだ。
でも、今度こそちゃんと伝えたい。ヨシと会えなくなる前に、僕の胸を焦がすこの想いを、きちんと伝えなきゃいけないと思うんだ。
明日の20時、桜花公園に来てくれるかな?
9月14日 ②仮面 ③焦がす
-----------------------------------------
-----------------------------------------
-----------------------------------------
9月15日20時、人気のない夜の公園にはたった二つの人影しかなかった。
「ヨシ、来てくれてありがとう。ごめんね、急に呼び出したりして。」
「ううん、大丈夫だよ。それにしても…こうして2人きりで直接話すのって、ほとんど初めてだよね。それで、どうしたの、今日は?」
沈黙が二人の間を流れるが、周囲にその静寂を破るようなものはない。
「…今日は、さ、感謝を伝えようと思ったんだよ。ほら、手紙でも書いたでしょ?」
伏し目がちに話すハルの表情は、夜の暗さゆえ読み取れない。
「ヨシ、君がいつも僕を励ましてくれたから、僕は自分の運命から逃げ出すことなくここまで来られたんだ。運命は神が決める、だったかな、僕はあの言葉で踏ん切りがついた気がするよ。」
「私だってそうだよ、ハルに教わったんだ。人との話し方も、おもしろいことも全部。」
「ヨシ、僕は君に隠していたことがあるんだ。他でもない、僕の親のことさ。
君が知ろうとしないのをいいことに、君を騙していたも同然だ。だって僕の父は…」
「そこまで」
ぴしゃりとした言葉の響きが夜の冷たい空気にこだました。
「私だって、いつまでもテレビを見てなかったわけじゃないんだよ。さすがにニュースくらいは目を向けるようになったんだ、もちろんハルのせいだよ。
親御さんだけじゃない、ハルだってたまに話題になってたじゃない。」
「え…じゃあ、知ってたの?ずっと、、前から?」
そう問いかけて一歩踏み出すハルの目は、月明かりに照らされて大きく見開かれていた。
「うん…ごめんね、黙ってて。ハルが嫌がると思ったからさ。」
小さな声とは裏腹に、レンズの奥のその目はしっかりとハルを見つめていた。
「ヨシ、君は、、君ってやつは、本当に…」
少し震えた声でそう言ったハルは、泣きとも笑いともとれる表情を浮かべながら、彼の泥だらけの両手を見せた。
「僕は今日、ここで君に秘密を話して、もう終わりにしようと思ったんだ。君からの手紙すべてと一緒に。君に迷惑をかけたくなかったんだ。」
公園の名前の由来となった、しかしすでに葉は落ちかけている木の根元をちらりと見てハルは語った。
「でも僕は、、だから、、その…」
途端に歯切れが悪くなったのは、顔を上げて見た先に、ヨシのブレないまなざしがあったからだろうか。
耐えきれずに目を逸らし、見るべきものを失った両目が、この公園で最も明るいものを捉えた。言葉を失っていた唇が、脳裏に浮かんだ言葉そのままを紡ぎだす。
「月が、綺麗ですね」
その言葉をきいたヨシは、上を向き、前を向き、ゆっくりと首を動かした…
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
トントン
部屋のドアをノックする音でふと我にかえる。また昔を思い出していたようだ。
「失礼します」そう言って入ってきたのは眼鏡をかけた、真面目そうな秘書だった。
「本日のご予定について確認します。まずは午前中に…」
内容は上の空で、そのハキハキとした声をぼんやりと聞いていると、
「どうなされ…!!」秘書は私の机の上に広げられた土だらけの手紙を見て絶句した。
「ハル!その手紙はあの日に埋めたはずでしょう。どうして掘り出してきてしまったの?」
僕…いや、私にこんなふうに強く話しかけてくれるのは彼女くらいだ。
「君との思い出が懐かしくなって…」
あの日、私は人前に立つような人間ではないと言ってゆっくりと首を横に振った彼女は、それでも私のそばにいると約束してくれた。
あの日、もしも月が隠れていたら、私はヨシに想いを伝えられなかったかもしれない。
10年経った今でもこうして一緒にいる未来は、描けなかったかもしれない。
「いい加減に自覚を持ちなさい!」
あぁ、それでこそヨシだ、こんなにも彼女は僕を、私を、励ましてくれる。
「あなたは、春仁様はもうこの国の象徴なのですよ、」
そう言って彼女は私に呼びかける。
「天皇陛下」
⑥(上を向いて歩く)
⑤(桜の木の下に埋める)
③(改元が【重要】)
【簡易解説】
その夜天気が良く、月が綺麗に見えていたため、男は女に夏目漱石の言葉を用いて告白ができた。それによって10年後、2人が共にいる未来を男は知ることができた。
【完】
[編集済]
エモンガ!!!()
エモすぎて主催者権限で5000票くらい入れたくなりました。やんごとなき人との身分の離れた友達としてのやりとり、そして、恋慕のように発展していく感情を手紙でのやりとりで表現して、話を繋げていく__『月が綺麗ですね』って言い方は今まで格好をつけているようで好きじゃなかったんですが、この展開で、このタイミングでのこの一言は素晴らしすぎます。どうしようもなく好きです。平成から令和へと変わっていく時代に、この作品に出会う事が出来て良かったです。
作品投稿ありがとうございました。
[編集済]
その世界の中心部にある小高い丘には、もう何百年も花をつけることのない咲かずの桜の木があった。
その木のてっぺんには神様がいるという。
10年ごとに選ばれし誰かの願いをひとつ叶えるという言い伝えにより、『10年神』と呼ばれていた。
普段は誰の目にも見えず、節目の年に選ばれし者にだけ、その姿が見えるのだという。
ある年の春。
満月のきれいな夜に、一匹の猫が姿を消した。[⑦]
首元でチリリと鳴る鈴の音が満天の星空に響く。
よく晴れた日のことだった。
----------------------------
◆◆◆
「カナタ!」
「……あぁ、今日も来たのですか」
「カナタが居ると思ったです、から」
草原に寝転がる青年、奏多は少しだけ頭を持ち上げて少女を確認すると、またトスンと頭を大地に預けて瞼を閉じた。
「寝てたです?」
「いいえ、寝転がっているだけです」
「わたしもいいですか?」
「好きにすれば良いですよ」
「では好きにするです」
頬をほころばせた少女は奏多の隣に寝転がり、同じように瞼を閉じた。しかし落ち着かないのか、すぐにまた目を開けて隣を見遣る。
ばちりと視線がぶつかった。
「わっ」
「……なんですか、人をばけものみたいに」
「だだだってこっち向いてるなんて思ってなくてゅえっ」
「なんですか、その噛み方」
恥ずかしそうに顔を背ける少女に、奏多はほとんど表情を変えないままそう言った。心なしか柔らかな声音だ。
そしてほんの僅かに口角を上げると再び瞼を閉じ、そっと口を開いた。
「その猫仮面、お気に入りなんですか?」
少女の顔、上半分を覆っているのは猫耳の生えた白い仮面。[②]
それは二人が出会ったとき、奏多の所有物だった。
高校の文化祭で「お前、全然笑わないから猫の役でもやれば」と半ば強引に押し付けられた役で使用した仮面。
奏多は自身が無表情で感情に起伏がないことを自負していた。猫の役は、仮面をつけてただ立っているだけだった。目のところがくり貫かれていて視界は開けている。しかし奏多は「この穴も塞いでくれて構わないのに」と思った。見えても見えなくても、然して変わりない世界だったからだ。
文化祭は終わり、手元には仮面が残った。奏多はそれを普段の日除けに使った。猫の仮面を顔に乗せて草原に寝転がるその様は、傍から見れば異様な光景だっただろう。
そんな折、少女に出会った。
彼女のとても大きな澄んだ瞳は光を取り込みすぎるのか、たえず額に手をかざしていた。
「気に入ってるです。まぶしくないから」
「そうですか」
「カナタやっぱり必要ですか?」
「いいえ?あなたが持っていれば良いですよ」
少女は再び奏多の方を見遣る。今度は視線がぶつかることはなかった。首元でチリリと鈴が鳴る。
「ありがとう、カナタ」
奏多は少女の名を知らない。
……いや、少女は名を持たない。
「あなた」と自分を呼ぶその声が、少女は何よりも愛しかった。
----------------------------
■■ SIDE - god. ■■
もう何人の願いを叶えたかわからない。10年に一人、つまり十人の願いを叶えれば100年だ。俺はとっくの昔に数えるのをやめた。神様は不老不死だ。こんなにつまらない職業はない。
そんな俺でも、その年は印象に残っている。
初めて人間以外の願いを叶えたからだ。
* * * * * * * * *
「ミーォ」
咲かずの桜の木の下でしきりに鳴き続ける猫がいた[⑦]。
まさかとは思いながら、俺はそいつのそばへ降り立った。もちろん、普通なら俺の姿はおろか、声や気配を察知することさえ出来ないはずだった。
「お前、俺のことが見えるのか?」
「ミーォ、ミーォ」
足元にすり寄る猫が俺の身体に触れた。接触可能。
10年に一人、ではなく10年に一匹の選ばれし猫だ。
つややかな毛並み。手のひらでその喉元に触れると、首輪につけられた鈴がチリリと鳴った。
ミーォという鳴き声が次第に人の言葉に変換されていく。
「……あ、あなた……かみ、さま……?」
「そうだ、俺が10年神だ」
「ねが……ねがいごと……」
「あぁ、願いをひとつ聞いてやる。お前の願いは何だ?」
「かみさま……わたし、わたし……」
その猫は俺の目を真っ直ぐに見て言った。
『わたし、人間……なりたい』
* * * * * * * * *
願いを叶えるためには、快晴の夜に月光が遮られない場所で魔法をかける必要があった。その日は幸運にもよく晴れていて、俺は真夜中に猫を桜の木のてっぺんへ連れていった。何にも遮られない月がすぐそばにある。
「お前はなぜ人間になりたいと願うんだ?」
「あっ……おはなし、したいひと、いるです」
「そうか。話したら満足か?」
「えっ……えっと、あのひとの手、やさしい、撫でてくれる。おなじ人間のすがたで、そばにいたいなぁ、って」
猫は月光に照らされた頬をふっと緩ませた。
その表情に反して、俺の目は翳る。
「異種族に対し心焦がしちゃったってわけか」[④]
「こころ……こが……?」
「まぁいい。取引呪縛と言ってな、願い事を叶えるかわりにひとつ呪いをかけなきゃならない。約束事を破った際にお前に降りかかる呪いだ」
「のろい、」
「そうだ。もしお前が約束事を破ったらその瞬間にお前は猫の姿に戻り、それまでの記憶は全て失われる」
「……。約束ごと、なに、です?」
「『決して愛の言葉を口にしてはならない』」
「あい?……よくわからない、」
「まぁ、意味がわからなくとも覚えておけ」
まばゆい月の光が降り注ぐ。
辺り一面が強い光に包まれ、世界の音が一瞬にして消える。
一匹の小さな猫は俺の手の中から消えた。
呆れるほどに、よく晴れた日だった。
----------------------------
■■ SIDE - girl. ■■
喉元を撫でてくれる大きな手が心地よかった。
首輪の鈴を指先で揺らすあなたは、チリリという音に目を細める。
その表情がとても優しかった。
いつもひとりでいるあなたが寂しくないのかと、わたしは気がかりだった。
わたしは毎日あなたの姿を探してこの草原を訪れた。
寂しかったのは、わたしの方なのかもしれない。
猫のわたしは、不思議とあなたの言葉がわかった。
だけどあなたには、わたしの言葉は届かないみたいだった。
人間になりたい。
あなたと同じ、人間に。
----------------------------
◆◆◆
「……猫がいたんですよ。あなたに出会う前に」
陽が傾きかけ辺りが橙に染まりゆく中、奏多は口を開いた。
春に出会ったふたりは、ともに秋を迎えていた。
「ね、ねこ、ですか」
「ええ。……不思議と、あなたによく似ていた」
少女の胸はドキリと跳ねる。
「に、似てたって、わたし、人間ですよ?」
「もちろん分かっています。ただ、その首から下げている小さな鈴の音と……あと、隣にいるときの心地が似ている」
「ここち?」
「そうです。まるで春風のような」
そう言って奏多は少女の方を見た。
その目が今までに見たこともないような温度を帯びていて、少女は一瞬息を飲む。
「毎日ここへ来ていた猫が突然来なくなったんです。その数日後、あなたはここへやってきた。まるで生まれ変わりみたいに」
「そ、そうなのですか。そのねこ、どうしてるですかね」
「さぁ、どうしているでしょうね。元気にしていると良いのですが」
「……カナタ、今日、よくしゃべるですね」
「そうですか?……そうかもしれませんね」
奏多は目を細め、頬をほころばせた。
その優しい笑みは少女が初めて目にする表情だった。
とくん、胸の奥が小さな音を立てる。
この落ち着かなさはなんだろう?
泣きたくなるような、顔を伏せたくなるような、このきもちはなんだろう?
少女は胸を押さえた。
「どうしました?」
「わ、わかんない」
「わかんない?」
「なんだか、くるしい、です」
「苦しい?……大丈夫ですか?」
奏多は手のひらをそっと少女の喉元に添えた。まるで猫をあやすかのように。
ごろごろと喉が鳴る。
「……っふ、本当に猫みたいですね」
「わ、わらった」
「はい?」
「カナタ、笑った……そんなかお、見たことなかったです」
少女の言葉にふと目を丸くする奏多。
「……そうでしたか?」
「そうでしたです。カナタ、……カナタ」
鼓動の音が次第に大きくなる。
その時ふと、少女は神様の言葉を思い出した。
" 決して愛の言葉を口にしてはならない "
今にも口から溢れそうなこの言葉が『愛の言葉』なのだろうか?
きっとそうに違いない。少女は本能で悟った。
きゅっと口を結ぶ。
「……あぁ、そういえばあなたは名が無いと言っていましたね」
「う?うん、わすれたです」
「僕がつけてもいいですか?名を呼べないと不便です」
「えっ!カナタがわたしの名をくれるですか?」
「ええ。そうですね……ミオ、なんてどうでしょう?」
「……!ミオ!うれしい、うれしいです。でも、どうして、ミオですか?」
「猫の鳴き声。ミーォって鳴いていたから、ミオです」
あなたによく似ているから。
そう言って、奏多は微笑んだ。
----------------------------
■■ SIDE - girl. ■■
神様、わたしは知りました。
愛の言葉がどんなものなのか。
抑えようとしても抑えられない、この気持ちが『愛』なのでしょう。
わたしは人間の姿であの人のそばにいたい。
けれど、時を重ねれば重ねるほど抑えられなくなってゆくこの気持ちが、届いてほしい知ってほしいと願うこの気持ちが、いつか溢れてしまうこともわたしは気づいていました。
わたしはあの人のことを、あの人と過ごした時間を、忘れてしまうのでしょうか。
記憶が失われてもまた、出会って時を重ねることができるでしょうか?
あの人にとって、わたしとの時間は『無かったこと』になるのでしょうか。
なるほど、これは紛れもなく呪いです。
神様があのとき少し目を伏せた理由が、今ならわかる気がします。
----------------------------
◆◆◆
「……か、カナタ?なにしてるです?」
「あぁ、ミオ。逆立ちですよ」[⑧]
「ど、どうして?」
「積もった紅葉が夕焼けみたいで」
そう言いながら奏多は逆立ちから直ると、ぱんぱんと手をはらった。
「青い空に紅葉の絨毯。逆立ちしたら、夕焼け空に青い海のように見えるのかなと思いまして」
奏多の言葉に少女はくにゃりと身体を曲げた。逆立ちは出来そうにないので、無理やり逆さまの世界を見ようとした結果だ。
そんな少女に目を細め、奏多はスマートフォンのカメラを向ける。
パシャッ。
「な、何してるですか!」
「ミオ、身体柔らかいのですね」
「そうじゃなくて!写真撮ったです!はずかしいです!」
「すみません、消しますよ」
肩を揺らして楽しげに笑う奏多。
少女と過ごす日々のなかで、彼は随分と表情豊かになっていた。
「……っカナタ、写真、一緒、とりましょう」
「ほう。一緒ならいいんですか?」
「一緒がいい、です」
少女の提案に奏多は快く了承し、スマートフォンを操作してインカメラに切り替えた。覗き込むようにして少女が顔を寄せると、画面には寄り添う二人が映し出される。
「……何だか照れますね」
「かっカナタが照れないでください!!」
「どうしてですか」
「はずかしいからです!!」
「ミオが撮ろうと言ってきたんですよ?」
「うっ……。と、とりましょう!」
「揺らさないでください。いきますよ?いちたすいちはー」
「み、ミ~……?」[⑩]
パシャッ。
「ミーじゃないです。にーです」
「ぅえっ」
「まぁ、ミオらしくて良いですが」
画面のなかで頬を真っ赤にする少女と、柔らかく微笑む奏多。
その写真は少女の願掛けのようなものだった。
奏多がずっと自分のことを憶えていてくれたらいい……
たとえ自分が奏多の前から姿を消してしまっても。
「……カナタ、」
ぎゅっと目を瞑り、少女は奏多の胸へと顔を埋めた。
驚いて目を見開く奏多が、両手をそっと少女の背へ回す。
「どうしました、ミオ」
伝われ、伝われ。
少女は震える手で奏多を抱きしめた。
すぐそばで鼓動の音が響く。それはどちらのものなのかわからなかった。
「……ミオ?」
「……カナタ……わたし……」
----------------------------
■■ SIDE - boy. ■■
強い風が吹いて、はっと顔を上げると無数の落ち葉が宙を舞っていた。
僕はここで何をしていたのだろうか?
いつも通り寝転がって、目を閉じていたんだったか……あぁそうだ、紅葉が美しくて写真を撮っていたんだ。
「……あれ、」
写真フォルダを開くと、最後に撮った写真がなぜか真っ暗で <<データ破損>> と表示されている。
足元には日除け用の猫の仮面が落ちており、手を伸ばして拾い上げると、チリリと小さな音が鳴った。
「……鈴……?」
コロリとした可愛らしい小さな鈴が仮面に引っ掛かるようにして落ちていた。
なんだか胸の奥が落ち着かない。
しかしその理由がわからない。
僕は帰宅して、何となくその鈴をストラップにしてスマートフォンにぶら下げた。
やがて大学を卒業し、就職し、順当に大人になっていく中で、その小さな鈴だけが片時も離れず僕のそばにあった。
チリリと音が鳴るたびにどうしようもなく寂しい気持ちになる。
この感情が何なのか、どれだけ考えてもわからなかった。
そしてあらゆる記憶が薄れていっても、何故だかこの感情が色褪せることはなかった。
----------------------------
◆◆◆
季節が巡り、春。
28歳になった奏多は小高い丘を訪れた。
世界の中心部とされるその場所には咲かずの桜の木があるという。
説明のつかないこの感情をどうにかしたいと思い立ったとき、自然と足がそこへ向かった。根拠は何もなく、強いていうなら本能のようなものがそうさせたのだろう。
----------------------------
■■ SIDE - god. ■■
「そこで何をしているんですか?」
その声が俺に向けられたものだと気づくのに数秒かかった。他人に話しかけられることなんて10年に一度の出来事だからだ。
俺が木からストンと降り立つと、男がこちらへ一歩歩み寄る。パーカーのポケットから覗く小さな鈴のストラップがチリリと鳴った。
「……懐かしい音だ」
「懐かしい音?」
「いーや、べつに。で、俺は10年先の未来もはっきり見える10年占い師、Ten-Fortuneだけど。何かご用でも?」
「テンフォーチュン?」
「長いからTFって呼んでくれ」
「胡散臭いことこの上ないですし、できればそんな怪しいものには頼りたくないですが……[⑨]でもまぁ、まともな占い師よりも今の僕には望ましいかもしれません」
そう言って男はポケットからスマートフォンを取り出し、鈴のストラップを外した。
「TFさん。僕は10年ほど前にこの鈴を手にしたのですが、その辺りの記憶がすっかり失われているような感覚があるんです。断片的には覚えているのですが……この鈴の音を聴くと、たまらなく寂しくなります。その理由がわからない」
チリリ。
春風のように優しい音。
「あんたはこの木が何の木だか知ってるか?」
「え?ええ……桜の木だと聞いたことがあります。もっとも、桜を見たことがないので架空の花だと思っていますが」
「俺はこの桜が咲いたのを見たことがある。もう何百年も前の話だが」
「……胡散臭さが加速されていきますよ」
「桜の木は人の想いを宿すと言われている。その鈴を、この木の根元に埋めろ。そうすればあんたの拭えない寂しさの理由がわかるだろう」[①]
男は少しの間思案して、それからゆっくりと目を見開いた。
「……まさかとは思いますが、あなた、10年神ですか?」
「架空の存在だと思ってくれていいぜ」
「……」
「願いを叶えるのが俺の本業だが、あんたの感情の答えはあんたにしかわからない。俺はただ見守るだけだ」
「…………僕は、この鈴を、この桜の木の根元に埋めればいいんですね」
「その通り。よく晴れた満月の夜にやるといい」
男は戸惑いを隠せない様子で、それでもコクリと頷いた。
「占いの代償は……まぁいいか」
「え?」
「俺がここで人に会うのはあんたが最後だろう。--人混みは苦手なんだ。じゃあな」
* * * * * * * * *
それから三日後。
10年前のあの日と同じように、よく晴れた日だった。
桜の木のてっぺんから世界を見下ろしてもう何百年を過ごしただろう。
いつからか数えるのをやめた。
こんなにつまらない職業はないと思っていたが、この風景も見納めだと思うと感慨深くなった。
10年後また誰かの願いを叶えるとき、俺はこの場所にはいないだろう。
神様は人混みが苦手なのだ。
満開の桜。その息を飲むほどの美しさを、俺は知っている。
----------------------------
■■ SIDE - boy. ■■
神様に会った三日後の満月の夜、僕は言われた通りに鈴を桜の木の下に埋めた。[⑤]
たえずそばで鳴っていたチリリというあの音が聴こえなくなったかわりに、僕はその桜の木に強く惹かれた。これまで経験したことのない不思議な感情だった。
見上げると木のてっぺんには神様がいて、無言のままずっと月を見つめていた。
----------------------------
◆◆◆
翌年の春、世界の色が大きく変わった。
小高い丘の上、咲かずの桜の木が無数の柔らかなピンクの花をつけたのだ。
満開に咲き誇るその桜は、春風に吹かれて鮮やかに世界を彩った。
それを受けて同年には祥瑞改元がなされた。[③]
新たな元号は『美』しい『桜』と書いて『美桜(みお)』と読んだ。
新元号は奏多の心を打った。
部屋の壁にかけられた猫の仮面がやけに懐かしく見える。
特に楽しくもない高校の文化祭で使ったものだったはずだ。古びていて、思い入れもない。それがどうしてこんなにも愛おしく感じるのだろう?
外に出ると春風が頬を撫でる。
すぐそばであの鈴の音が聴こえるようだった。
カナタ、と誰かに呼ばれた気がする。
あれは誰の声だっただろうか?
少しずつ色づき始めた記憶を連れて、奏多は桜の木がある丘へと向かった。
* * * * * * * * *
たくさんの人が、咲き誇る桜を見上げ歩いている。[⑥]
奇跡の象徴とされたその桜の木には連日多くの人が訪れていた。
神様がいるだろうかと目を凝らしてみる。しかしどこにも見当たらなかった。選ばれし者にしか見えない存在だというのだから、見えないだけで今ももしかしたらそこに居るのかもしれない--そう考えてすぐに首を横に振った。
神様は、人混みが苦手だと言っていたか。
確かにこんなにも多くの人の視線を集める桜の木の上では、さぞかし居心地が悪いだろう。
奏多は苦笑した。
ふと、桜の木から少し離れた場所に一匹の白い猫がいることに気付いた。
じっと桜の木を見つめ微動だにしない。
奏多は自然とそちらへ足を向けた。
『ミーォ』
その鳴き声に奏多は聴き覚えがあった。
「…………ミオ?」
丸く見開かれた大きな瞳はどこまでも澄んでいて、光を取り込みすぎるのか、すぐに眩しそうに細められた。
* * * * * * * * *
想いを宿した桜の花びらは、春風に乗って遠く離れた神様のもとへと舞い上がる。
晴れ渡る青空に、チリリと優しい鈴の音が響いた。
======================
■■ answer ■■
快晴の夜、神様は奏多が自分の言葉通りに鈴を咲かずの桜の木の下に埋めることを確信した。
想いを宿したその鈴が桜の木に花をつけるであろうこと、そしてその桜の花が人々を魅了すること、そうすれば自分はこれまで通り桜の木の上には居られなくなるであろうことを予見し、
10年後に次の願いを叶える頃には、自分はこの場には居ないだろうと悟った。
【fin.】
[編集済]
10回くらい読んで10回くらい涙出ました。文字数足りないので後でDMで感想送ると思います。
愛の意味を知らないミオが胸の内に溢れる愛を自覚する描写が印象的でした。
要素もそんな物語に綺麗に溶け込んでいて、問題文の解釈も素敵でした。1+1はミィーかわいい。かわいい。
登場人物も、浮かぶ情景も設定も全てが愛おしい物語でひたすら私はエモンガになりました。
作品投稿ありがとうございました。
[編集済]
「もう、10年ちょっとか。」
もう実体のない男は、しみじみと感慨に浸る。
霊界から今日一日だけこの世に戻ることを許された幽霊は、少し急いだ様子で浮遊する。
やってきたのは、娘の入学式。
この高校か。
制服も清楚で、整備もしっかりされている。
俺の好みの、愛する娘にふさわしい高校だ。
ホッと一息をつく。
んで、本題は娘だ。どこだ、娘は。
幽霊には、一抹の不安が残っていた。
なんせ、男が死んだのは10年前。
娘は5才なのだ。
5才の子供が今や15才だ。
あわや、名前も覚えていない。
見つけることは可能なのだろうか?
いや、今更そんなことを言っている暇はない。絶対に見つけるんだ。絶対。
見つけられずに天に帰るなんて絶対に嫌だ。
「さて、新元号は令和に決定しましたが(③)」
校長の祝辞の声がやたらと大きく聴こえる。
今まで経験した中で二番目に早い1時間が経過した。
霊だから出るはずのない汗が、ジワジワと滲み出る。
にしてもなんでこんなに暑いんだ。
ずっと霊界にいたからここに慣れていないのか。
日がさんさんと照っている。
日陰に移動しよう...
👻====3
よし、ここなら快適に過ごせそうだ。
ふぅとため息をついたその時だった。
こちらに歩いてくる女子高生の目。
意識が飛びかけ、幻覚のようなものが見えてくる。
───────────────────────
『きょうのパパをうらなってあげるー‼』(①)
だけど良くない結果が出て笑いあったあの日。
『パパー‼ おさかなさんが!!』
大慌てで焦げた魚を取り出したあの日。(④)
『パパ!さかだちができるようになったよ!』(⑧)
そのあと思い切り倒れてわんわん泣き出したあの日。
『さくらのきのしたにこれをうめるの!』
とか言いながら紙にお願い事を書いて埋めていたあの日。(⑤)
『この子猫かわいい!かいたいー!』(⑦)
といいながら高すぎる値札を指差した
『タキシード仮面かっこいー!』(②)
そう言いながらセーラームーンを一緒に見たあの日。
『てぃふぁーるなんてなくてもおりょうりできるもん!!』(⑨)
強がった結果、料理には大失敗して拗ねたあの日...
............
『み.........おと.........だいす...』
ん?
『み...い、おと......んだいす...』
み...い?
『みらい、おとうさんだいすき!』
────『みらい』────
────娘の名前は、みらい────
───全てが、よみがえってくる。───
父は、息をのんだ。
僕は、この子のお父さんだ。
霊だから出るはずのない涙が、ポロポロとこみあげる。
そこにいるのは、正真正銘、10年後の未来だった。
立派になったんだな。きれいだ。
あふれでる止まらない涙。
抱きつこうとした。抱きつけなかった。
けれど父には、抱きついているような感覚が残っていた。
あぁ、幸せだ。幸せという言葉でこの気持ちが表せるのだろうか。
涙は勢いを止めず、溢れ続け、地に落ちる。
───────────────────────
今日からこの高校で新しい生活がスタートするのか。
お祝いムードの中、未来は静かに空を見上げる。(⑥)
「お父さん、見てるかな。」
そう呟く。
「ハイ、写真撮るよー」
母と並んで二人で写ったその写真に笑顔の霊が見えたような気がして、未来の口角は少し上がった。(⑩)
【完】【閲覧感謝】
[編集済]
実体を無くして、名前も覚えていないのに自分に娘がいることを覚えているのは素敵ですね。
『抱きつけなかった。
けれど父には、抱きついているような感覚が残っていた。』の部分がとても好きです。胸があたたかくなりました。
未来が父のことを見えなくても、確かに父が未来に抱きつけなくても、お互いどこか通じあっている。深い親子の絆を感じられました。好きです
作品投稿ありがとうございました。
光は屈折する。ガラスや水槽越しにものを見るとき景色が歪むことがあるが、これは物体から届く光が人間の目に届くまでの間曲がっているからだ。より反射率の高い物体を利用すれば、人は目の前にない物体でも車の後方をサイドミラーで確認するように確認することができる。たとえそれが、どんなに遠くて、本来見ることができないものだろうと。
少年が自分の特殊な能力に気がついたのは学校の帰り道だった。午前中に降っていた雨はとっくに止んでおり、青空には大きな虹がかかっていた。
おや? 少年は首を傾げた。虹のすぐ下に学校の先生が見えたからだ。もちろんそこは高い空の上で、実際に学校の先生が立っているはずがない。
少年はそれを蜃気楼の一種だと理解した。蜃気楼は、光の異常屈折でそこにはないものがあるように見える現象だ。虹と蜃気楼、どちらも光の屈折により起こりえる現象だと知っていたので、虹ができるなら蜃気楼が起こっても不思議ではないと考えた。
しかし、虹の下にいる先生はあまりにも現実的だった。まるで生きているみたいに動く。先生はいつも通り教壇の上で授業していて、なにやら一枚の白い紙をひらひらとはためかせた。その紙にはいくつか漢字が並んでおり、視力の良い少年は辛うじてそれを読むことができた。
翌日、教団の上で先生は一枚の紙をひらひらとさせるとこれから漢字の抜き打ちテストを行うと宣言した。少年はクラスでただ一人、満点を取ることができた。
それから雨上がりの空に虹がかかっているとき、少年は虹のすぐ下に様々な映像を見るようになった。犬の散歩をしている近所のおばさん、弁当を作り忘れて謝りながら昼食代を渡してくる母親、ホームランを打って大喜びしている友人。
ほとんどが日常の些細な一コマで、漢字テストのときみたいに有用な映像を見ることはほとんどなかった。しかし、少年が虹の下で見た光景は全て現実に起こった。なぜ自分はそのような映像を見ることができるのか、光の屈折により届けられる映像の元はどこにあるのか、少年にはなにも分からなかった。少年は虹のかかっているときだけ発揮できる特別な予知を、「天気予報」と呼ぶことにした。
ある日、少年は虹の下に見覚えのない人を見た。綺麗な大人の女性が、小さな箱を抱えて子供のように泣きじゃくっていたのだ。
どうしたの、なんで泣いている?
少年は声をかけようとしてやめた。途中で意味のない行為だと気づいたからだ。その代わり最後まで映像を眺めることにした。すると、女性を笑顔にする方法が分かった。少し悩んだ後、少年はその通り行動することにした。
「えっ、辻井の笑ってる写真があるの?」
その情報を耳にしたとき、山井はにわかに信じられなかった。幼馴染である辻井は幼いころから笑わないことで有名な男だった。写真を撮るときに1+1は? と聞かれても3……⑩としか答えなかったとか、文化祭の演劇であまりにも笑わないので笑顔の仮面を被せられた……②とか、真偽の定かではない噂をよく聞いた。普通なら信じるに値しない噂だろうが、辻井ならありえそうだ、と周囲に思わせる男だった。
「それが本当らしいよ」
久しぶりに会った高校のときのクラスメートは世紀のスクープだと言わんばかりに山井に報告した。
「ところで山井、なにしてるの?」
「見れば分かるでしょ。屋台の手伝い」
そう言うと山井はヘラを使い鉄板の上で焼いているお好み焼きを上手に引っ繰り返した。
大学が春季休暇に入ったので実家に帰ってくると、神社の境内で祭りがあるから手伝え、とお好み焼き屋を営んでいる両親から言われた。なぜ休みになのに働かなければならないのか、と反論すると、山井が店に出ると売り上げがいいからだ、と説明された。
「よっ、看板娘」
「ふふん、まあね」
友人からそう言われると悪い気がしなかったので、鰹節の量を少しオマケしておいた。
「山井にも辻井くんの知らないことあったんだねえ」
着物を着て祭りに来ていた友人はお好み焼きのソースが袖につくことを気にしていたが、歯に青のりがびっしりとついていたので結局おめかしが台無しになっていた。
「そりゃあるよ」
山井は数年前に死んでしまった幼馴染、辻井のことを思い出した。
山井は物心つく頃から家の近かった辻井と行動を共にすることが多かった。辻井は物静かで思慮深く様々なことを知っていたので皆に頼られる存在だったが、如何せん行動がマイペース過ぎた。小学校の授業中、授業に関係なくひたすらノートに絵を描いていたり、掃除の時間、一枚のタイルをピカピカになるまで磨き続けたり、学校の帰り道、なにもない空間をずっと見つめたりするような子供だった。
「TF事件って覚えてる?」
「ああ、あったねそんなことも」
友人から聞かされた言葉に山井は懐かしさを覚えた。
山井たちが小学生のころ、学校でパソコンの授業があった。パソコンを操作したことのある子供もいたが、ほとんどの子供たちが今回初めてパソコンを触っていた。
「だから学校の先生は基本的な操作から教えたんだよね」
「そうそう、QWERTY配列とか」
「山井、よくそんな言葉知ってるね」
「うん、まあ」
昔、辻井に教えてもらったから、とは友人に言わなかった。
QWERTY配列とは、文字入力用キーボードでもっとも普及している文字の配列だ。通常、家庭や企業に置かれているパソコンのほとんどがこの配列を採用している。
QWERTY配列には一番初めに指を置いておく基本の形としてホームポジションというものがある。その目印となるのが、キーの表面に小さな凹凸のある「F」と「J」だ。
「TF事件って、どちらかと言えば辻井くん被害者だよね」
「どうだろ? まあ、加害者ではないと思うけど」
パソコンの授業の最後、先生は課題を出した。そして、課題ができた人はメールで先生宛に提出するよう指示したのだ。それまでプリントへの手書きしか経験してこなかった子供たちは新しい課題と提出方法に一気に大人になったような気がした。しかし、クラスの半分ほどの子供たちは課題の提出に失敗していた。彼らは、メールの宛先を間違えてしまっていた。
「あの日、辻井くん深夜まで学校にいたんでしょ?」
「うん。うちにも連絡が来たしね」
パソコンの授業が行われた日の夜、辻井の母親から、うちの子まだ帰ってこない、なにか知らないか? という連絡がきた。心当たりのなかった山井は素直にそう答えると、辻井の母親は警察に連絡した。それから警察、学校の先生、子供たちの保護者、様々な人間を交えた大捜索が行われた。日付が変わるころ、辻井は学校のパソコン教室で発見された。発見した大人がなにをしていたのか尋ねると、辻井はいつもの無表情で「採点をしていた」と返事した。
QWERTY配列のホームポジションである「F」の右上には「T」のキーがある。そして、パソコンの授業をした教師は藤井という名前であり、彼のメールアドレスにはfuziiという文字が含まれていた。まだタイピングに慣れていない子供たちは、入力ミスでfuziiではなくtuziiと入力していた。その結果、提出課題の半分が辻井に届いてしまっていたのだ。そして、辻井は律儀にもその課題を採点していた。
「普通、メールが届いたからって採点しちゃう?」
「しないしない、するわけないよ。単純に辻井が変なやつだったんだよ」
山井と友人は当時のことを思いだして声を上げて笑った。
「しかもこの話ってまだ続きがあるじゃん」
「えっ、そうなの?」
「あれ、山井知らないんだ」
友人は意外そうに声を上げると山井の知らない話を教えてくれた。
辻井によるTF事件が起こったあと、学校ではパソコン授業において二つの変更が行われた。一つは、同じような失敗を起こさないため、メールアドレスからFとTの文字を排除したこと……⑨。もう一つは、パソコンの授業における辻井の採点基準が素晴らしかったので、そのまま教師たちが採用してしまったということ。
「それ本当?」
「さあ?」
山井の問いに友人は曖昧な返事をした。メールアドレスの件もそうだが、いくら辻井の採点が素晴らしかったとはいえ、教育のプロである学校の先生が子供の真似をするというのは考えにくい。いくらなんでもプライドが無さすぎる。
「でもさ」
「うん」
辻井ならありえそう。
当時、子供たちがよく言っていた言葉を二人で口にして、山井たちは声をあげ笑った。
「こういう思い出話で盛り上がっても辻井は笑わないんだろうな」
山井は辻井の無愛想とも言える表情の無さを思い出していた。
「そうだ。話が戻るんだけどさ」
「なに?」
お好み焼きを食べ終わった友人から空の容器を受けとりながら山井は尋ねた。
「辻井くんの笑顔の写真が存在するらしいよ」
「そんなの本当にあるの?」
「噂によると」
噂ばっかりだなあの男は。死んでから数年経つというのに、未だに話題を提供し続ける幼馴染に山井は妙な感心を抱いた。
友人の話によると、小学生だった辻井はある日、男子たちだけで集まって野球をしていた。辻井の所属するチームはギリギリ相手チームに勝っていたが、九回裏ツーアウト満塁という場面で相手チームの四番に打順が回ってきた。キャッチャーをしていた辻井はどうしてもその試合に勝ちたかったらしく、四番が打席に入るとこう語りかけた。
笑顔を写された写真があるのだけれど、処理に困っている。
普通ならばなんでもない囁きだが、そのころの辻井は既に笑わないことで有名になっており、打席に入った四番は大いに動揺した。結局、辻井の言葉に惑わされた四番は見送りの三球三振をしてしまい、辻井のチームは無事勝利したという。
後日、四番が辻井に写真のことを訊ねると、問題は無事解決した、としか教えてくれなかった。
「それはまた……」
辻井らしいエピソードだ、という言葉を山井は飲みこんだ。もうなんと言えばいいのか、話の細かい部分の胡散臭さがとても辻井らしい。
「でしょ? だから山井なにか知らないかなって思って」
友人にそう聞かれても山井はうーんとしか答えられなかった。そもそも幼馴染である山井ですら辻井が笑ったところを一度しか見たことない。そんな珍しい現象を収めた写真が本当に実在するのだろうか。
「えーっと、わざわざ言う必要ないことなんだけどさ」
「なにやってるんだ?」
友人に辻井のことを話そうとすると、休憩に行っていた父親が戻ってきた。学生時代、レスリング部だった父親は今でも筋骨隆々としており、人波の中を歩いていると自然と道が開けていくような風貌をしている。さらに祭りの最中だからだろうか、濃いアルコールの匂いを撒き散らしていた。
「また今度ね」
分かりやすく父親の外見に怯えた友人はそのままどこかへ行ってしまった。
「どうかしたか?」
自身が周囲に与える影響を自覚していない父親は屋台の中に入ると仕事の準備を始めた。
「ううん、なんでもない」
父親に似なくて本当に良かった。そう思いながら山井は熱した鉄板の上にお好み焼きの生地を流した。
鉄板から立ち昇ってくる熱を体に浴びて、山井は溢れ出る汗を拭った。前髪をピンで留めているせいで普段は隠れているおでこが晒されている。そこが暑くなると頭がぼおっとした。まるで高熱でうなされているときみたいだ。
辻井が笑った写真は本当に存在するのだろうか。
山井は固くなった生地の上に細く刻まれたキャベツを撒きながら考えた。山井は辻井と長い時間を一緒に過ごした。けれど、そのような写真があったとは思えない。山井の思い出の中にいる辻井は、いつも彫刻のような無表情だ。
でも、最後まで一緒にいたわけじゃないし。
山井は先ほど友人に言いかけたことを考えた。辻井が死んでしまう少し前、二人は喧嘩をした。いや、より正確に表現するならば、辻井の言動に山井が一方的に怒っただけだった。それ以降、二人は顔を一度も合わすこともなく辻井は死んでしまった。
写真は小学生の頃には存在していたという。もし、あの時喧嘩していなければ、辻井本人から写真のことを聞けたのだろうか。山井の心の一部が黒くて重い塊に変化した。
「おいっ」
父親の怒声で我に返った。目の前に煙が充満している。どうやら、お好み焼きを焦がしてしまったようだ……④。
「おまえちゃんと油ひいたか?」
山井はハッとした。辻井のことを考えていて油をひかずに生地を流してしまったのだ。
「ごめん」
「馬鹿が。しばらく帰って来るな」
頭を冷やして来い。そう言われた。父親は外見通り激しい気性をしており、特にお好み焼きについては厳しかった。少しでもミスをすれば怒鳴ってくるし、味を褒めてくれることはほとんどない。長年手伝いをしている山井でさえ、お好み焼きを作る技術は及第点という評価なのだ。
「はあ」
手伝いから解放されたが山井に爽快感はなかった。失敗による戦力外通知を受けただけだし、辻井のことで心が息苦しかった。
辻井は子供のころ意味の分からない行動をよくとっていたが、特に奇行が多くなったのは空に虹がかかったときだった。虹を見つけた辻井はいついかなるときでも虹を優先させた。障害物が多くて空が見えないときは近くの建物へ侵入しての屋上まで登ったり、固定カメラを使用して何時間も虹を撮影し続けたり、サッカーでゴールキーパーをしている最中、ゴールポストを支えに逆立ちして……⑧眺める角度を変えようとしたり、虹に関わるときの辻井は常軌を逸していた。
よくよく思い出してみれば、最後に辻井と喧嘩した原因も虹が関係していた。高校生の時、虹を見た直後の辻井と話す機会があった。
「僕は大人になる前に死ぬだろうな」
辻井は明日の天気の話でもするみたいに呟いた。
そのころの辻井は相変わらずマイペースだったが、幼い時と比べて奇行の数は減っていた。だから、初め山井はそれが質の悪い冗談だろうと思った。
「せめてもっと具体的な内容が見られれば対策もできるんだろうけど」
しかし、辻井にふざけている雰囲気はなかった。報道記者が記事でも読み上げるようにただ淡々と自分の死について語っていた。
「なんでそんなこと言うの?」
黙って話を聞いていた山井だったが、だんだんとイラついてきた。生活習慣の違いのせいで話す機会が減っており、偶然の出会いに山井は感謝していた。それなのに、辻井は自分との会話を楽しもうとせず不吉なことを口にする。せっかく久しぶりに会えたのに、どうしてそんなこと言うの?
「もういい」
自分の気持ちを軽んじられたように思えた山井は、ろくに言葉を交わすことなく辻井と別れた。山井は今でもその時の自分の行動を後悔している。だって、その数日後、辻井が本当に死んでしまうとは思っていなかったからだ。
あの時、自分はどんな反応をすれば良かったのだろう。怒らず黙って話を聞いておけばよかったのだろうか。いや、あれは辻井が悪い。だって、いきなり自分は死ぬだなんて縁起の悪い話を始めれば誰だって気分を悪くするはずだ、だから、私は悪くない。しかし……。
辻井のことを考えていると山井の心は沈んでいくばかりだった。それでも、屋台に囲まれた参道を歩いていると少し気分が少し晴れた。暗闇を払う提灯の灯り、子供たちのはしゃぐ声、鉄板の上で焦げるソースの香り。参道を歩いているだけで感じられる祭り特有の非日常が、山井の心をワクワクさせてくれた。そしてさらに、山井は古い顔なじみと会うことができた。
「おっ久しぶり」
参道を半分ほど縦断すると、山井の足元に一匹の猫がすり寄ってきた……⑦。屋台の手伝いで山井の体に食べ物の匂いが染みついているせいなのか、昔から山井に懐いている猫だった。
「はい、お土産」
山井はあらかじめ用意しておいた海老の切れ端を猫に与えた。猫は喉の奥から声になる前のゴロゴロという音を立てると海老をくわえて歩き始めた。
「あれ? どこ行くの?」
その場で海老を食べると思っていた山井は、行くあてもなかったので猫について行くことにした。
猫は祭りの喧噪を避けるように人通りの少ない方へ向かうと境内の奥にある社務所の脇を抜け、茂みの中に入っていった。成長期を終えた山井には狭い通路だったが、四つん這いになることでなんとか通り抜けることができた。今日は祭りの手伝いをするために汚れてもいい格好をしていたけれど、外出用の服だったら通ろうと思わなかっただろう。
「うわぁ」
長いトンネルの向こう側には満開の桜があった。周囲を茂みで囲まれているせいか、辺りに人影は見当たらない。こんなところに桜があったなんて知らなかった。
「ふふっ独り占め」
山井は夜桜を見上げながら歩いた……⑥。桃色の花びら、その間から透ける暗闇、そして、全体を柔らかく包み込む月光。近くで鳴り響いている祭囃子が一瞬で意識の彼方へと消えた。
「おっと」
桜を見上げながら歩いていた山井はなにか硬いものに躓いた。足元を見てみると、弁当箱ほどの大きさをした四角い箱が、駐車場にある輪留めのように下半分だけ土の中に埋められていた……⑤。
「なんだこれ」
山井は特に何も考えずにそれを掘り起こすことにした。材質はブリキのようだが酷く脆い。強い力を込めれば壊れてしまいそうだ。腰を曲げて地面に手をつくと指先で優しく周りの土を取り除いた。
箱の表面は苔でびっしりと覆われていた。箱の劣化具合といい苔の成長具合といい、箱が放置されてからとても長い時間が経過しているようだった。
箱を開けると中には一枚の便箋が入っていた。便箋も箱同様に劣化していて、少し触れるだけで封をしていたセロハンテープは音もなく崩れた。好奇心で動いていた山井は少しの罪悪感も覚えることなく便箋を開けた。便箋を開けると古本屋のような匂いが漂って、一葉の手紙が出てきた。
『最後なのに怒らせてごめん』
手紙には子供の文字で短くそう書かれていた。他に何も書かれていない。一体、誰が何のために書いたメッセージなのか、他に何か情報がないか便箋の中を探った。すると、便箋の奥には写真が入っていた。山井は特に何も考えずその写真を見た。そして、息の止まる思いをした。
「……辻井?」
写真には小学生のころの辻井が写っていた。しかも、友人から聞いていた笑顔の写真だ。その写真を見た途端、懐かしさ、戸惑い、後悔、様々な感情が込みあがってきた。
辻井とはたくさん言葉を交わし楽しい時間を過ごしたけれど、それ以上の時間を彼の奇行に悩まされた。いくら注意しても行動を改めようとしない辻井に呆れて距離を置こうとしたこともあった。けれど、離れられなかった。お互い年を重ねて辻井の行動が落ち着いてくると今度は二人で会える時間が減った。山井には山井の生活があり、辻井には辻井の生活があって、その二つが重なることはほとんどなかった。たまに重なることがあったけれど、昔のように言葉を交わせなくなっていた。そして、最後に重なった瞬間、山井は最悪の別れ方をしてしまった。あの時の態度を謝りたくても辻井はもういない。日々の生活で新しく伝えたいことができたけれど、山井には伝える術がない。
山井の辻井に関するあらゆる感情が涙に変換された。
「辻井」
山井はその場で膝をつくと、ブリキの箱を抱えて泣いた。汗と違って涙はいくら拭っても止まることがなかった。辻井が死んだとき一生分の涙を流したと思っていたが、意外なことに山井の涙はまだ残されていた。
ひとしきり泣いた後、山井は写真を検めた。笑顔で写っている辻井の隣に自分が写っていた。幼いころの自分は辻井と違い驚いた表情を浮かべている。きっと、辻井の笑顔に驚いているのだろう。我ながらその気持ちが良く分かる。辻井の笑顔とはそれだけ貴重なのだ。
それにしてもこの写真はいつのものだろうか。辻井の笑顔の印象が強すぎて、他の記憶が酷く曖昧だ。写真の裏側を見てみると今日の日付が和暦で記されていた。最初、山井はそれを何気なく眺めていたが、少ししてからおかしいことに気がついた。
まず、どうして今日の日付があらかじめ書かれていたのか。そして、この日付はいつ記入されたのか。
写真には新しい元号で元年と書かれているが、箱は明らかに何年間も放置された形跡があり、苔の生え具合からその間に箱を開けられたとは考えにくい。そもそも新しい元号が発表されたのはつい最近なのだ。日付の書かれたタイミングに、どうしても矛盾が生じてしまう……③。この矛盾を解決する仮説は一つしかない。この日付を書いた人物は、箱を放置する数年前の時点で、和暦が改元されることを知っていたのだ。
この手紙を書けるのは辻井しかいない。山井は確信した。
妙な占いでもしているのか……①、辻井は母親が弁当を作り忘れることや友人がホームランをうつことなど、どうでも良いことを言い当てることが多かった。
現実に起こる確率は非常に低いと理解していても、辻井なら数年前の時点で新しい和暦を書いていてもおかしくないような気がしてきた。
ハッとして山井は先ほどの手紙をもう一度読み返した。もし仮にこの便箋を用意したのが辻井とするならば、ひょっとしてこの手紙は自分に向けられたメッセージなのではないか。
『最後なのに怒らせてごめん』
なんだ、辻井も悪いと思っていたのか。辻井と最後に話した時、怒った山井は一方的に別れを告げた。その後悔でできた心の傷は、ずっと血を流しつづけていた。けれど、この手紙を読んだことで、出血が治まったような気がした。
あの別れを悔いていたのは自分だけじゃなかった。そう思えるだけで山井の心は少し軽くなった。
「それにしても回りくどいなあ」
悪いと思ったのならすぐに謝ればいいし、手紙を書かずに直接言えばいい。しかも、こんな偏頗なところに埋めておくなんて、猫のおかげで発見することができたが、もしも見つけられなかったらどうするつもりだったのか。
ただ、その面倒臭さや危うい手段を用いて成功させる辺りが。
「辻井ならありえそう」
そう呟くと山井は手紙を眺めながら、辻井の奇行を思い出しニヤニヤと笑った。
ああ、よかった。
少年は虹の下で笑っている女性を眺めてホッとした。最後まで自分のしている行為に意味があるのか不安だったけれど、これでようやく安心することができた。
それにしても、あれはどんな意味だったのだろう。少年は『天気予報』に映し出される映像通り行動しただけで、それにどのような意味があるのか理解していなかった。手紙に書いた謝罪の言葉、写真の裏の見慣れない日付。全てが少年にとって意味の分からないものだった。
ただ、一人の人間が泣くことをやめて笑ってくれた。それだけで少年は満足した。
おかげで悩んでいた問題が一つ解決した。
今回の行動で一つだけ少年にメリットがあった。それは、自分の笑顔が写っている写真を処分できたことだ。初め、少年は写真を廃棄しようとした。しかし、写真に写っている自分の横には片思いしている女の子が写っていた。だから、どうしても写真を捨てる気にはなれなかった。
どうしようかと悩んでいたところ、『天気予報』で写真の活用法を知ることができた。少年は喜んでその通り行動した。どういった因果であの女性が笑うに至るのか分からないままだったが、写真に使い道ができただけで少年は嬉しかった。
そもそも、不用意に人前で笑ってしまった自分が悪かったのだ。今度から気をつけなくては。少年は気を引き締めた。
しかし、我慢できる自信が少年にはなかった。だって、あの厳しいおじさんにお好み焼きの味を褒めてもらえたのだから。
少年は今まで何枚もお好み焼きを焼いて、何回もおじさんに味見をしてもらった。おじさんはとても厳しい人だから、子供が焼いたという理由では褒めてくれない。
それがこの前、ようやく褒めてもらえた。よく今まで頑張ったと認められた。それがとても嬉しくて、人前だということを忘れて笑ってしまった。好きな女の子の父親に褒められたくらいで笑ってしまうようでは、この先やっていけない。少年はただでさえ不愛想な顏をさらに不愛想にさせた。
早く家に帰ってお好み焼きの練習しなくちゃ。
少年は虹に背を向けると家に向かって駆け出した。
おわり
[編集済]
最初投稿された時は編集中だったのか、文章が【おい】の2文字しか無くて新手の無季自由律俳句かと心配したのですが、数時間経って無季自由律俳句はレベルの高い小説になっていました。びっくりしました。
とにかく作り込みがすごい。エピソードにしても要素に伴う設定にしても、深く深く作品に織り込まれている様に感服しました。物語の入りも自然に我々を惹き込むような表現。
【天気がいい→虹】という問題文の解釈も素晴らしかったです。
作品投稿ありがとうございました。
[正解]
《仮面ファイターポラリス 第一話》
出演
針木 キタロウ(しんき-)
南 天馬 (みなみ てんま)
針木 ニシキ (しんき-)
星野 月子 (ほしの つきこ)
星野 大洋 (ほしの たいよう)
用語
バイク:デザードシップ 砂漠のデザートと船のシップ
船を模したバイク 中に望遠鏡型のレーザー砲が搭載
ベルト:サンドレーダー 砂のサンドとレーダー
基本は羅針盤の形で進むべき方向を示してくれる
腰に当てるとベルトに変わる
敵怪人:グラビティ 黒くべたべたした何かで決まった形を持たない
1:トーキョー、ビルが建ち並ぶスクランブル交差点内
ビルのモニターにはニュース番組が映し出されている
交差点は信号待ちの人が大勢いる。南天馬は道路の桜並木の木陰の下、ハンカチで汗を拭きながら信号待ちをしている
テレビ①「4月1日の天気です。今日は快晴、最高気温30度と過ごしやすい日となるでしょう。今週1週間は雨が降らない見通しです。紫外線と熱中症対策は万全にしましょう。次は星座占い! まずは7位から11位の……」
信号が青になる。一斉に歩行者が歩き出す
テレビの星座占いは12位まで続いている
⑥天馬も歩き出すが、頭上から日光が遮られたような気がして、上を向く
空からキタロウとニシキが降っている
キタロウ「うわああーーっっ!!」
天馬 「ん? ……えっ!? 空から男の子が!」
テレビ 「おめでとうございます! 1位は射手座のあなた! 思わぬ出来事に遭遇するかも! 天からの贈り物として大事にしましょう! ラッキーアイテムは黒猫です!」
キタロウと天馬がぶつかる
天馬 「いたた……」
キタロウ「ご、ごめんなさい。大丈夫ですか?」
天馬 「な、なんとか……」
キタロウ「そうだ、ニシキ……弟を知りませんか?」
天馬 「弟?」
キタロウ「一緒に落ちてきたんです!」
天馬 「それさらっと言う!? ……とか言う場合じゃないね、急いで探さないと……ん?」
⑤桜の木の下の土に頭から刺さって埋まっているニシキの周りに人だかりができている
モブ ⑧「逆立ち?」
モブ 「三点倒立でしょ。頭が地面についてるし」
天馬 「……絶対あれだな」
2:太陽研究所・休憩室
⑦猫の鳴き声が聞こえ、包帯を巻かれたニシキがベッドの上で目を覚ます
キタロウ「ニシキ!!」
ニシキ 「キタロウ、ここは……?」
キタロウ「太陽研究所だって。親切な人がここまで運んできてくれたんだ」
ニシキ 「親切な人? ……いてて……」
天馬が部屋に入る
天馬 「まだあまり動かない方がいいよ。簡単な処置はしたとはいえ、僕も素人だから」
キタロウ「この人が俺たちを助けてくれた南天馬さん。ここで働いてるんだって」
天馬 「まあ、働いてるっていうより、取引先なんだけどね。はい、どうぞ」
お粥をベッド横のテーブルに置く
ニシキ 「……ありがとうございます」
天馬 「君たちのことは聞いたよ。針木ニシキくん、それとお兄さんのキタロウくんだったね。色々と事情はお兄さんから聞いたよ。よろしく」
握手を求めて天馬が右手を差し出す。ニシキは怪しそうに天馬を見つめたので天馬は苦笑いした
天馬 「はは、警戒されちゃってるなあ。じゃあ僕はこれで。何かあったら呼んでくれ」
天馬は研究所の休憩室から出て行った
キタロウ「あの人はすごくいい人だよ。きっと仲良くなれると思う」
ニシキ 「俺はいけ好かない……それより、ここはジャハラじゃないのか? 何があったのか思い出せない……」
キタロウ「実は……」
3:回想・ジャハラ砂漠
砂漠のど真ん中、キタロウとニシキがオアシスにたどり着く
水場で水を掬って飲んでいる
キタロウ「……ん?」
ニシキが急に倒れ、水場の中に落ちる
キタロウが落ちたニシキを引っ張ろうとして、自分も水場の中に落ちる
水面にはトーキョーの街並みが上空から映し出された姿があったが、二人が水の中に引きずり込まれるとオアシス諸共消えた
4:回想・トーキョー上空
キタロウとニシキが遥か高い上空から落ちている
キタロウ「うわあああーーっっ!!」
5:太陽研究所、研究室
星野大洋、星野月子、南天馬が研究室内で話しあっている
室内のテレビではニュース番組をやっている
大洋 「素晴らしい! 実に興味深い!」
月子 「もう、お父さんったら興奮しすぎよ」
大洋 「興奮せずにいられるか! もし彼らの話が本当であれば、やはり私の仮説は正しかったんだ! そうだろ、南くん!」
天馬 「は、はあ……」
月子 「どう考えてもビルから落ちただけでしょ。《太陽人》なんているわけないわ」
大洋 「いや、彼らは絶対に存在する。考えてみろ、私たち地球人は太陽には熱すぎて近づくことができない。だから太陽に人がいないことは誰にも証明できないのだよ! そもそも太陽の黒点には……」
月子 「はあ、また始まった……」
天馬 「こうなると止まらないんだよね……そうだ、アレの実験はうまくいった?」
月子 「ああ、アレ? 実用までにはまだ行かないかな。太陽光の力が強ければ強いほどいいんだけれど」
キタロウが天馬、月子の間に入る
キタロウ「あの、アレってなんですか?」
天馬 「うわっびっくりした!」
月子 「ニシキくんは大丈夫なの?」
キタロウ「そのことなんですが……」
6:回想・太陽研究所休憩室
ニシキ 「俺たちは、オアシスの蜃気楼からここに飛んできたってことか……?」
キタロウ「記憶が確かならそうだと思う……でも、まずはどこにワープしたのかを探らなくちゃ……しばらくここにいよう」
ニシキ 「はあ!? 危ないだろ、ここが敵の本拠地なのかもしれないんだぞ!」
キタロウ「大丈夫。例えそうだとしてもコレがある」
羅針盤のような見た目のサンドレーダー(以下、SR)を取り出す
キタロウ「こいつさえ使えば、敵から逃げることもできるし、戦うこともできる」
ニシキ 「使えるのか?」
キタロウ「わからない。まだナビゲート機能しか使ったことがないから……」
ニシキ 「……不安だ……」
キタロウ「じゃあ、お前の持ってるTFは? なんとか使えたんだろ?」
ニシキ⑨「あんなのに頼るぐらいなら死んだ方がマシだ!」
キタロウ「っていうかTFって一体何なの? そろそろ見せてくれよ」
ニシキ 「いくらキタロウでも嫌だね! ……だが、わかった。敵の本拠地ならむしろ好都合かもしれない」
キタロウ「だろ? それにお前もまだ完治してないし、しばらくここにいよう」
7:太陽研究所、研究室
キタロウ「……実はあまりよくないみたいで。しばらくはここにいさせてもらうことになりそうなんですが……」
天馬 「そっか……わかった。星野所長、まだ二人を置いてもいいですよね?」
大洋 「(続き)……だからヒートアイランド現象の理由にも……うん? 何が?」
月子 「天馬くん、聞いてないわよ、お父さん」
天馬 「は、ははは……」
月子 「ああ、それで、アレの話だったわね。じゃあ特別に見せるわ、ちょっと待ってね……」
月子は研究室に大きな布が被せられている機材を指さす
月子 「まだまだ試作段階なんだけどね……じゃん!」
月子が被せを取ると、海賊船を模したバイクがあった
月子 「名付けて、デザードシップ!」
キタロウ「バイクじゃなくて?」
大洋 「そうとも言う。だがただのバイクではない。ここを押すと……」
④デザードシップ(以下、DS)のハンドルのスイッチを押すと、座席後部から望遠鏡のようなものが出現し、大きなモーター音がしたかと思うと、レンズ部分が光を吸収してレーザービームのようなものを放ち、研究室の壁を真っ黒焦げにした
大洋 「……まだ調整中だがな」
キタロウ「一体何のためにこんなものを……?」
天馬 「最近、変な黒いどろどろしたものみたいなのが出てきててさ。知らない?」
キタロウ「黒いどろどろしたもの?」
月子 「そう、あれみたいな……(テレビを指して)」
テレビの音が入ってくる。画面にはニュースキャスター
テレビ 「……速報です。最近見られている未確認物体がヨヨギ公園内で姿を現しました。近隣の住民は速やかに避難してください。繰り返します……」
月子 「……まずいわね。ここの近くだわ」
キタロウ「《グラビティ》だ……!」
8:太陽研究所、休憩室
キタロウと天馬が室内に駆け込む
キタロウ「大変だニシキ! グラビティがっ……!!」
しかし、ニシキは消えている
代わりに、ベッドの周りにコールタールのような黒いベタついたものが付着している
天馬 「一体どこに……」
キタロウ「……もしかして……」
キタロウが急いで外に出る
天馬 「キタロウくん、どこに……!?」
9:太陽研究所
キタロウがDSに乗り、エンジンを起動する。
大洋 「おお、キタロウくん、どうした、そんなに血相を変えて……」
キタロウ「すいません! これちょっと借ります!!」
大洋 「えっ!? ちょっと……!」
キタロウを乗せたDSが研究所内を走って出て行く
大洋 「廊下はデザードシップで走っちゃダメだって……」
天馬 「星野さん! キタロウくんは……」
大洋 「さっき出て行ったけど……一体どうしたんだ?」
天馬 「すいません、バイク借ります!」
大洋 「えっ!?」
天馬を乗せたバイクが研究所内を走って出て行く
大洋 「廊下はバイクで走っちゃダメだって……」
10:トーキョー、スクランブル交差点
キタロウがDSを走らせている
人や車が行き交うのを見ながら辺りを探し回る
キタロウ「ニシキはどこだ……ん?」
懐に入れていたSRが光っている。方向は前方を指示している
キタロウ「急がないと……」
11:トーキョー、ヨヨギ公園
天馬が到着し、ヘルメットを外す
公園内では、大勢の人が消えながら逃げまどっている
天馬は目の前で倒れた人を起こそうとする
しかし、腕があった部分を掴んだと思うと、手の平から砂がさらさらと零れ落ちていく
天馬 「砂……?」
猫の鳴き声。天馬が振り返ると黒猫がいる
黒猫の背後に、黒くどろっとした何か(グラビティ)が蠢いている
グラビティがゆっくりとこちらへ向かっているかと思うと、天馬の首に黒くべたついたものが巻き付けられ、ゆっくりと首を絞め始めた
天馬 「ぐっ……」
天馬はもがくが余計に絡みついてくる。だんだん意識が遠のいてきたところで、グラビティにDSで体当たりを仕掛けたキタロウが登場した
天馬 「キタロウくん……!」
キタロウ「大丈夫ですかっ、まだ吸収されてないですか!」
天馬 「だ、大丈夫……キタロウくん、あれはいったい何なんだ?」
キタロウ「あれはグラビティ……あらゆるものを吸収して砂に変える魔物です……」
天馬 「グラビティ……?」
キタロウ「こいつらを倒す手段は少ない……危ないから下がってください」
天馬 「君だって危険だ! 早く逃げないと……」
キタロウ「……大丈夫です」
天馬 「え……?」
キタロウはSRを取り出す
ベルトに変化したSRを腰に装着する
SR 「ファイトスタイル! ポラリス!」
SRの起動音に合わせ、キタロウが転身のポーズをとる。
キタロウ「転身!」
②キタロウ、仮面ファイターポラリスに変化。
SR 「レイド! ポラリス!」
ポラリス「……おおお! すげえ! 本当になってるー!」
天馬 「え……きみ、本当にキタロウくんかい……?」
ポラリス「はい! 転身は初めてですけど……ってそんなこと言ってる場合じゃなかった。どうにかして助けないと……」
天馬 「助ける……?」
ポラリス「グラビティは人間に憑りついて操るんです。そして最後には宿主も喰らう……」
天馬 「どうしてそんなに……」
キタロウの記憶。幼いキタロウとニシキの目の前で男性と女性がグラビティに取り込まれている
ポラリス「……詳しくもなりますよ。あいつは……俺たちにとって自然災害みたいなものですから……」
天馬 「キタロウくん……」
ポラリス「なんとしても助けなきゃ。たぶん宿主は……っ!」
グラビティがポラリスに向かって襲いだす
ポラリスは攻撃を受け止めるが、押し負ける。
天馬 「キタロウくん!」
ポラリス「だ、大丈夫です……いって……」
天馬 「くそ……弱点はないのか……ん?」
グラビティがタバコの火を避けている。
天馬 「……そうか! キタロウくん、炎だ! 奴らは炎が苦手なんだ!」
ポラリス「炎か……でも一体どうすれば……」
DSに搭載された望遠鏡のようなものから放たれたビームを思い出す。
ポラリス「……天馬さん! こっちだ! 早く乗って!」
ポラリス、天馬がSRに乗って逃げる。
12:トーキョー、スクランブル交差点
天馬 「まずい、目的地の研究所にたどり着かない……」
ポラリス「いえ、ここが目的地です!」
天馬 「え? それってどういう……」
ポラリスがDSのハンドル部分のスイッチを押す。
望遠砲 「望遠砲! 発射ヨオイ! 5……」
ポラリス「俺たちの《位置(イチ)》、そしてあのグラビティの《位置(イチ)》……」
望遠砲 「3……2……」
ポラリ⑩「……ちょうど《太陽(サン)》で発火する!!」
望遠砲 「1……0! ファイヤァー!」
レンズの光が集まり、グラビティにビームが着弾し、燃え上がる。
グラビティの黒い物質は消滅し、中に取り込まれていたニシキが倒れている。
天馬 「ニシキくん!」
天馬がニシキに駆け寄る。体温と呼吸を確かめる
ポラリスが転身解除、キタロウの姿に戻る。
天馬 「よし、まだ息がある……」
キタロウ「よかった……間に合った……」
天馬 「……君は知ってたの? グラビティがニシキくんを取り込んでいたこと……」
キタロウ「俺たちのいたところでは、仲間が取り込まれるのは珍しくないんです。しかもニシキの寝ていたベッドに黒くてべたついたものがついてたから……(よろける)」
天馬 「……っと。大丈夫かい? ひとまず休もう。ね。肩、貸すよ」
キタロウ「ありがとうございます……」
天馬 「いいよ。助けられたのはこっちだから。このぐらい……」
スクランブル交差点のテレビで、即位式が放映されている。
天馬 「……と、そういえば今日からレイワか……すっかり忘れてたなあ……」
キタロウ「……おかしいな……」
天馬 「おかしいって、何が?」
キタロ③「……レイワは10年で終わりましたよね?」
天馬 「……え?」
13:トーキョー、とあるビル
ポラリスの映るニュース報道を見ている男性と秘書。コーヒーを嗜んでいる
男 「今日は邪魔が入ったか……」
秘書 「対策を練りますか?」
男 「ふっ……どうせ取るに足りん。それより、計画は順調か?」
秘書 「はい……この先、10年ほどは雨が降らない見通しになるかと」
男 「それならいいのだ。……楽しみだな、いずれこの小さな島国が砂漠化するのは……」
《第二話に続く》
《要約》
天気がいい日が続き、雨の降らない日をどんどん更新していく。
10年後に砂漠化が実現するようになったことを、元凶である男は知っている。
一方で何も知らない男は、新しい元号が10年で終わるということを未来人から聞かされる。
(以上)
[編集済]
タイトルがまずかっこいい。反則です
世界観を表現するために作品を台本調にしてるのも出来るのも凄いですね。
バイク借りるくだりとか特に言い回しが特撮っぽくておおってなりました。こういうのを映像で見たいなぁ。
作品に合わせて言葉回しを変えられる技術、私には絶対できないし尊敬します。
作品投稿ありがとうございました。
ザー、ピッ 「こちら、ガンマ星。本日の通信を開始する」
オペレーター「こちら、地球。通信開始。龍さん、本日の健康状態は?」
龍「今日もいい感じだ」
オペレーター「では、本日の天気は?」
龍「非常に良好。屋外での活動を要請する」
オペレーター「ガンマ星からの情報を確認…安全を確認、屋外での活動を許可します」
龍「では、本日の活動を開始する」
オペレーター「まずはいつもの?」
龍「ああ、『桜』のところに向かう」
~~~
龍「よし、掃除終わった」
オペレーター「桜の様子はどうでしょう」
龍「やっぱり咲きそうにないなぁ。枯れてないだけ凄いけど」
オペレーター「『桜さん』の品種改良の技量が伺えますね。今日こそ晴れていますが、普段は酸性雨漬けですから」
龍「それだけに、亡くなったのが惜しいよ。せめて、好きだった桜の木の下で幸せにいることを祈ることしかできない⑤」
オペレーター「やはりガンマ星の劣悪な環境のせいでしょうか」
龍「装備は万全だったはずだがなぁ…現に俺は元気だし」
オペレーター「龍さんも体に異常があれば遠慮なく言ってください」
龍「ああ、了解」
~~~
オペレーター「先住民の調査ですか」
龍「まあ、俺の本職だからな。今日は遺跡にあった占いの後らしき痕跡の調査①。前に晴れたときに文字の一覧表らしき石版を見つけたから、解読がはかどる」
オペレーター「それはこの星のテラフォーミングにあまり関わりが無いので続けて欲しくないようですが」
龍「上がか?そう言われても、俺は…」
オペレーター「必要な装備は宇宙船に積んであります。操作に不安があるなら私の指示に従えば問題ありません」
龍「あの宇宙船に載っている方法のテラフォーミングはなぁ…あんまり頼りたくないんだよ⑨」
オペレーター「ですが、この星のテラフォーミングを終えなければ地球に帰ることもできません」
龍「俺は…別に文明調査だってテラフォーミングの役に立たないわけじゃないさ。この星にいた生物の痕跡を調べることで、どうしてこの星の環境がここまで悪化したかわかるかもしれないし」
オペレーター「文明調査はテラフォーミングが終わった後でもできますよ」
龍「…それよりさ、この星にいた生物、結構面白いぜ。まず生殖の方法が地球と違う。雄雌の区別は無いけど、子供を産むときに2匹が合体する。そして、合体したのが3匹に分裂するんだ⑩」
オペレーター「龍さん」
龍「それから、食べた相手の特徴や知識を奪って自分の体に取り入れる生物がいるらしい。絵が描かれていたけど猫みたいだった⑦。その行為を『改元』って言うみたいだ③」
オペレーター「地球に帰るつもりは無いのですか」
龍「…さあな」
~~~
龍「だいたい、本気でガンマ星のテラフォーミングしたいならもっと人員を増やしてくれよ」
オペレーター「地球からガンマ星まで長い距離があるので、時間も燃料も途方もなくかかってしまいます」
龍「そうはいっても、1人でやるなんて無理があるだろ。特に俺なんて、考古学にしか能も目も無い男だ。力仕事もろくにできない」
オペレーター「龍さんが特に非力だとは感じませんが」
龍「剛に比べたら俺はもやしさ。あいつ、たしか親指だけで逆立ちとかできたぜ⑧」
オペレーター「…既にいなくなった人の話はあまり」
龍「なんか聞こえてきた」
コッチカ…ダレダ?…
パタパタパタパタ…
オペレーター「龍さん、周りに隠れられそうな場所は?」
龍「柱の陰にいる。でも、相手の人数は多そうだ。相手と交信を試みるか?」
オペレーター「敵対生物の可能性から、潜伏を優先してください。発見された場合、相手を決して刺激しないように」
龍「了解」
パタパタパタパタ…
ドコダ?…「いたぞ!」バアアアン
龍「うわっ!」ザーー…
オペレーター「龍さん?龍さん!応答してください!」
~~~
オペレーター「龍さん!応答お願いします!」
龍「こちら、龍です。装備に損傷がありますが、怪我はありません」
オペレーター「よかった、龍さん。無事だったんですね」
龍「今は宇宙船付属の通信機を使っている。しかし、あの生物は…」
オペレーター「そうですね、龍さんの出会った生物について報告してください」
龍「あぁ、えっと…人型の二足歩行の動物で、頭に猫耳らしき突起がついていた。言語を使用していて、日本語のように聞こえた」
オペレーター「人型、猫耳、日本語らしき言語」
龍「それから、仮面のようなものを着けていた②。いや、あれは仮面というより…ガスマスク?」
オペレーター「ガスマスク?そこまで科学技術が発達しているのですか」
龍「だが、俺の調査ではここの文明に高度な科学技術は確認されていない…」
オペレーター「龍さんの受けた攻撃についても報告してください」
龍「攻撃を受けた途端に周りが火の海になって…逃げるときに見たんだが、あいつらは武器を持っていて…あれは確か、この船に積んである火炎放射器じゃないか?」
オペレーター「火炎放射器!?宇宙船の火炎放射器は、星の環境が極寒だったときのための物です。人間に向けて打つものじゃ…」
モシモシ…ホカノシンニュウシャ?…アア…
龍「なんかまた来た」
オペレーター「そこから動けそうですか?」
龍「…ちょっと難しいかな」
ハア?…コガシチャッタ④…シタイガミツカラナイ…コガシチャッタッテレベルジャナイダロ…
オペレーター「これ龍さんのことじゃないですか?」
龍「そうみたいだ。他の奴と連絡取ってるのか」
ウチュウセンヲカクニン…トツニュウハマダダ…
龍「…ここを狙ってるらしいな」
オペレーター「迎撃準備しましょう」
龍「いや、もういい」
オペレーター「龍さん?」
龍「…上からの命令の1つでな、『地球や地球人に対して攻撃する意思のある生物によって制圧された、または制圧の可能性が高い場合に』」
オペレーター「ちょっと待ってください」
龍「『星ごと破壊しろ』っていうのがあって」
オペレーター「まだ制圧されていません。迎撃するべきです」
龍「でもな、始めはたくさんいた仲間もどんどん減っていって」
龍「いつも酸性雨と毒の霧だらけの星でひとりぼっち」
龍「なんというか、疲れちまってな」
オペレーター「…」
龍「それにあいつら、多分『改元』を使える奴だろ?俺の仲間を食べたんだろうな」
ナンダ?…マダイルノカ…ソロソロトツニュウダゾ、キヲヒキシメロ…
龍「時間が無くなってきたかな」
オペレーター「龍さん、考え直してください」
龍「そうだ、俺からの遺言でも聞いてくれるか」
オペレーター「…」
龍「上の方ばっか見て歩いていると⑥、いつか足をすくわれるぞ。…これはお前に言うことじゃないか」
オペレーター「この状況に追い込んだ上層部に、ですか?」
龍「そうなるな。まあ、こんなのただの負け惜しみかもしれんが」
龍「ありがとうな、お前も。俺とずっと話しているのも大変だっただろ」
オペレーター「僕…いや、私は…」
龍「そうだ。この星を破壊するとき、強制的に超新星爆発を起こさせるんだ。花火くらい綺麗らしいから、それをこれまでのお礼にするよ」
トツニュウスルゾ…ゼンインジュンビ…
オペレーター「楽しかったんです」
龍「じゃあな」
カチッ ザーー
オペレーター「…ガンマ星からここまで、10光年離れてるんですよ。10年待てって言うんですか、龍さん」
【完】
[編集済]
『Fire flower』の意味に気づいた時に強く感じた切なさ・・・。こういう感じのエモさも大好物です。
そしてなんと言っても問題文の回収の仕方、『10年後の花火』___本当に強い納得感だけじゃなくて衝撃を受けましたし、心にくるものもありました。ここまで最後に揺れ動かされるとは思いませんでした。ひゃー、本当に好きです。
作品投稿ありがとうございました。
「いーい天気」
ぽかぽか陽気の春。澄み渡った空。青とピンクのコントラストに目を奪われ、ユカは上を向いたまま歩いていた⑥。今日はとあるイベントの一環で、マスカレード②が開かれる。ユカはそれに参加するために移動していた。ドレス等の必要物品は全て会場でレンタルできるのと、天気が良いのとで、今日ユカは徒歩を選んだのだ。
「ふぎゃっ」
「えっ」
足元を見ると猫がいた⑦。ぐったり横たわって動かない。軽く砂埃を纏ったスニーカーには、猫の毛がついていた。
「ど、どうしよう、殺しちゃった……!」
世間知らずな箱入り娘。こんな時どうしたらいいか分からないし、なんなら今の状況もよく分かっていない。そんなユカは只今絶賛反抗期中⑨。先日、彼女の父が娘の気を引こうと逆立ち⑧をしたところ、無事首を痛めたそう。
そんな話をしているうちに、ひとりでできるもん! などと言いながらユカは猫の埋葬を済ませていた。満開の桜の木の下を掘って入れて薄く土を被せただけの簡素な墓に手を合わせる⑤。眉は下がっているが、いつも笑顔なユカでいるために口角だけは上げる。かたく閉じられたユカの瞼を、春の風が優しく撫ぜた。
*
「いい天気だなぁ」
藤堂藤夫、職業占い師、芸名TF。人がいない大通りを散歩していた。この通りには、たくさんの桜の木が植えてある。柔らかな日差しに輝く葉桜を眺めながら、藤夫はゆったり歩いていた。
「なーお」
「おっ、猫」
しゃがみ込んで撫でると、妙に引っかかる。猫に触った右手を見ると土がついていた。
「なんだお前。泥だらけで茶色いのか」
何があったんだお前。よし、おじちゃんが占ってやろう。などといいながら、藤夫は猫に何が起こったのかを「占った」①
*
「そうだ、ついでにこれも埋めよう」
ユカは焦げた招待状を埋めた。この招待状にはシトラスの香りづけがしてあったのだが、「きっとあぶり出しだわ! 何か隠しメッセージがあるのよ!」と思い込んだユカが、父の制止も聞かず、焦がしてしまったのだ④。――焦がした招待状には、平成32年と書かれていた。新元号が決まった数日後に、当該部分が令和元年に差し替えられた新しい招待状が届いている③。ユカ含む参加者たちが持っていくのは後者のみである――
無事会場に着いたユカ。しかし、舞踏会の真っ只中に事件は起こった。とは言っても、猫が一匹迷い込んだだけである。土まみれの猫が、体に旧招待状をくっつけて。
会場は動揺したが、ユカの取り乱しようは酷かった。
ゾンビだわ。復讐にきちゃった。どうしよう、どうしよう、
何のことはない。死んだと思い込み猫を生き埋めにしただけにすぎない。だがそんなことは知りもしないユカ。パニックになってしまったので、見かねた一人の男性が猫をつまみ出した。そうしてようやく落ち着いた。この出会いをきっかけに、ユカと男性の距離は近づくこととなる。交際を重ね、互いのことを知るたびに二人は惹かれ合った。
そして10年後、男性とユカの間には一人の子が生まれ⑩、幸せな家庭を築いていた。藤堂という姓に反応してしまい、あなたはもう違うでしょ、と言われ照れ笑いをするユカ――
猫の過去を視たいだけだったのに、思いがけず娘の姿が見えたので、つい未来まで視すぎてしまった。藤夫は今日ほど自分の過去視未来視能力を恨んだことはない。
【完】
[編集済]
1行目。「いい天気」でも「いい天気ー」でもなくて「いーい天気」ってする伸び伸びとしたリズムが好きです。タイトルの語感も良いし頭にこびりつく。ゆるふわみそがーるって何回でも言えちゃう感じがありますね。魔法でしょうか。
猫を生き埋めにするという箱入り娘としても結構ヤバいことをしているのに、それすらも可愛く思えてしまう魅力が登場人物にありました。これももしかしたらゆるふわみそがーるの魔法・・・?
作品投稿ありがとうございました。
改元をして、早くも二年が経った。③
あれからテレビは連日改元の瞬間を報道している。
その度に間の抜けた自分の顔が写って、私はいつしかテレビを見なくなっていた。
新元号を発表することになるなんて、二年前の私は猫が逆立ちしたって信じるまい。⑦⑧
あの日からずっと、胸の奥が痛む。
この大舞台を務めるのが、私で良かったのかと。
改元せざるを得なくなった事を誰かの、ましてや天皇のせいにするつもりはない。
かと言ってこの言い尽くせないズキズキを、持病の通風のせいにもしたくない。※⑨
元号発表の重圧は劇薬のように作用し、私の胸に後遺症を残していった。
近頃では、私と重圧だけの世界にいらぬ痛みを生み出した、つまり1+1=3などという滅裂な式が生まれた原因を追求する気力すらも、すっかりと消え去っていた。⑩
通りを歩くたびに、町の人の姿が気になる。
あそこで会話している人は、私の影口を言っているのではないか。
あの視線は非難の視線ではないのか。
いったい何度仮面を被って、顔を隠したくなったことか!②
「ねぇ、あなた。たまには外に出てみたら?」
めっきり外出しなくなった私に、魚を焦がしてバツの悪そうな妻が笑いかける。④
「ほら、○○を連れて公園にでも行ってくださいよ」
妻が指差す方向をみると、小学校に入ったばかりの娘が、庭の桜の根本に何かを埋めているところだった。⑤
「あれ、やめさせる口実にもなりますし」
娘と二人で人気のない道を選んで歩く。
気持ちのいい晴れの日だった。
「ぶぅぅーー」
「こらこら、危ないからキチンと歩きなさい」
飛行機の真似をして遊ぶ娘。
その手のいく先を追って、歩きながら空を見上げた。⑥
そこには広告だろうか、文字が書かれたバルーンが顔を見せる。
テレビを見ていなかったからだろう。
そのバルーンに書かれている十年後の未来に、私は驚愕した。
『ノストラダムスの大予言!! 2000年の人類滅亡まであと10年!!』①
平成二年のことだった。
※TF(通風)に頼りたくない→TFのせいにしたくない。
【簡易解説】
改元のせいで憂鬱になり、テレビを見ていなかったO渕さん。
久々に外に出て上を見上げると、天気が良くバルーンが見えて、そこに書かれていたノストラダムスの大予言を知るのだった。
【完】
[編集済]
官房長官、しかも平成の方に焦点を当てて、彼の憂鬱を描くという着想が見事でした。ノストラダムスの大予言と10年後の未来を繋げたのも納得感がありますね。
創作物ではありますが、もしかしたら本当にそういう思いを抱いていたかもしれないと思わせるような説得力を言葉に持たせることが出来るのは凄いですね・・・要素も物語の重要な部分を担うようになってますし、面白かったです
作品投稿ありがとうございました。
キキキキーーーッッッ
――――――――――――――
助かった。
男は、スーツ姿で白猫を腕に抱えながら脱力していた(⑦)。
背後では車が再び速度を上げ、走り去っていく。
「ー!」
向こうから、少女がなにかを叫びながら駆けてくる。そして男の腕の中に目的物を見つけたようだ。
「よかった、無事だったの…」
どうやらこの猫の飼い主らしい。少女の声を聞き、男の腕の中で、驚いて逆立っていた猫の毛も下りていった(⑧)。
「この子、急に逃げ出しちゃって…助けていただいて、本当にありがとうございます…」
「いえ、つい体が動いただけですよ。助かってよかった。」
「実は昨日、占いで、危険なことが起こるって言われて、ずっと心配してたんです(①)。本当に、本当に無事でよかった…」
泣きそうになりながら、子猫をぎゅっと抱きしめる少女。男は微笑んだが、その目はどこか驚いたように瞬いていた。
頭上では、桜が男達を見守るように咲いていた。
・
・
・
少女からこの間のお礼がしたい、と連絡があり、公園へ行くことになった。新緑の香りがすがすがしい。
「こんなことしか出来ないんですが…」
と、少女が手に持った包みに視線を向けながら言う。
どうやらお弁当を作ってきてくれたようだ。座るベンチを探しながら、手間をかけたお礼をしてくれる子だ、と男は思った。
するするとお弁当箱の包みが解かれたところで、
「実は、焦がしちゃったんです、卵焼き。」(④)
なんとも肩身が狭いように、少女は言った。
「焦げた卵焼きの方が、普通より珍しいじゃないか。」
男は目を輝かせた。
少女は一瞬ぽかんとしたが、卵焼きに飛びつく男の様子に、それならいいかと安堵した。
「なんだこれ、苦い…」
「だから言ったじゃないですか…」
二人の楽しげな声が、木々の中に吸い込まれていった。
・
・
・
入道雲が空に映え、太陽がまぶしい。外に出るのが億劫になる気温の中歩いていると、買い物帰りの少女と会った。この近くに住んでいたらしい。涼を取っていかないかと、少女の家に招かれた。
着いたのは、年季がかったアパートだった。
「玄関がたくさんあるが、適度な広さじゃないか。」
「何言ってるんですか、私の家はこの部屋だけですよ。」
少女はクスクスと笑いながら玄関のドアを開けてくれた。男は自分の勘違いに気づいた。
廊下を進みリビングへ案内されると、
猫が溶けていた。
「そうか、猫は液体だったのか。」
と男が納得していると、
「ふふ、すごいですよね。猫は皮膚がよく伸びるんですよ。」
と、少女が教えてくれた。またしても勘違いしたらしい。
「そうか、猫とはすごいものだな。」
床に伸びた猫を撫でながら、男は正しく納得し直した。
少女はエアコンとテレビの電源をつけ、お茶の準備をしてくれている。
テレビではニュースが流れている。画面の中のアナウンサーが、新元号の発表に国民が湧いていると伝えている(③)。
あれ、おかしい。
元号の発表があったのは、少女と出会った頃だったはず。これもまた自分の勘違いだろうか…
少女がこちらにお茶を運んできてくれた。猫が目をつむったまま、鼻をひくひくさせた。
・
・
・
少女の声がする。
「私、将来が不安なんです。 五年後十年後、自分がどうなっているのかなんて、全然想像できなくて。」
「君のことだから、大丈夫。きっと五年後十年後、幸せになるさ。…やさしい君のことだから。」
「ふふ、じゃあこの子を助けてくれたあなたは、もっと幸せになりますね。」
男はその言葉に返そうとしたが、喉が詰まったように声が出なかったーー
・
・
・
はらはらと散りゆく桜。
その木の下に、少女がなにかを埋めている(⑤)。
その顔を見ようとするのだが、木の影になっていて見ることができないーーー。
――――――――――――――
どうやら機能が切れかけているようだ。
ーー機能?
そうだ、最後の時間機能(Time Function of the last)。
通称、TF。
命の危機に瀕した時のため、資産家だった男が金をかけ研究者に作らせた。最後に望んだ過去や未来の映像を見ることができ、未練や後悔なく旅立つというものだ。
ただし、生命徴候の低下に伴って機能も弱まり、最後には現実に戻るようになっている。
男は、敵会社が潰れる未来でも見る予定だった。そうすれば長年の恨みが晴らせる。
しかし、あの時敵の魔の手が迫ったのだろう。スモークガラスの車が男を狙ってきた。気配に気づいた男は避けられる、と思った。
が、その時。猫が道を横切り、男と車の間に入りこんできた。
男は、つい、猫に向け足を踏み出した。
あの猫は助かったのだろうか。そう考えていたため、猫と、その飼い主である少女との未来を見ていたようだ。
ふと、男は振り返る。
これまでは仮面を被り続けているような生活だった(②)。
利益や打算で動き、誰かと本音で話したことは久しく無かった。
猫を追いかけたように、
ただ一歩踏み出していれば、それで良かったのかもしれないな。
まだ完全に機能は停止していないが、これで十分だ。
もうTFには頼りたくない(⑨)。
男はベッドに横たわったまま、
病室の窓を見ていた。
天気が良かった。
もう上を向いて歩いて行けない(⑥)。
男は十年後の未来を知った。
――――――――――――――
キキキキーーーッッッ
ドン! ドサッ
これは、あるかもしれなかった、
男と少女のおはなしーー
ふわりと、桜の木の下を横切るものがいる。
白い尻尾が揺れて、姿を見せたのはーーあの猫だ。
そうか、君があの二人を結びつけたんだったね。
これは、1人と1人と1匹
1+1+猫=3(⑩)
の、お話。
【完】
[編集済]
猫は液体だったんですね・・・!!!(錯乱)
あるかもしれなかった未来のお話。いやタイトルの付け方もなんですがめちゃくちゃ話の閉じ方が上手すぎて・・・1+1=3をそうやって持ってくるかぁ素敵だなぁ・・・って感じ余韻に浸りながら読み返しました。
少女が桜の中に埋めていた物は何だったのか、少女はどんな表情でそれを埋めたのか。そして、少女のこの先の未来は__果たしてどのような物だったのでしょうか。想像力がかき立てられましたが、そこを語らずに閉じるのもシャレオツですね。
作品投稿ありがとうございました
私はクミコ。34歳独身OL。彼氏はもう10年間いないの。結婚願望はあるけど、全然いい人が見つからないし、ほんと困っちゃう。でも日々の生活は充実してるし、このままでもいっかな、なんて思っちゃったりもする毎日。
朝ごはんにアサイーボウルを食べる。今日はせっかくの休日。なにしよっかな。そうだ、折角天気もいいし、ちょっとお花畑でも行ってフォトジェニックな写真でも撮ろうかな。そう考えた私は一眼レフと麦わら帽を持って、お気に入りの撮影スポットに向かった。
お花畑でチューリップやポピーの花を撮っていると、1人の外国人の男性に出会った。名前はアルベルトさん。どうもアメリカとイタリアのハーフらしい。だから背丈や風貌がナイスな訳か。どうやらアルベルトさんは日本が大好きらしくって、1人で日本語の勉強をして、1人で旅行に来たらしい。ガッツがあるわね。アルベルトさんは写真を撮っている私を見つけた瞬間、私の方に走って近づいてきてこう言った。
「ぼくは、貴方にヒトメボレしました。ケッコンしましょう!」
……。
……。
……なんだって!!
わあわああたたたたわたわたしに一目惚れですって!なんてことかしら!突然現れた高身長イケメン外国人に告白されるなんて!な、なんてロマンチックなの!私は突然の高火力プロポーズによってアドレナリンが止まらなくなり咄嗟にこう答えた。
「……っも、もちろん(裏声)!」
そこから私はアルベルトさんのお話を聞きながらあたりを散策した。景色は全然覚えてないけど。アルベルトさんの故郷のこと、日本が好きになった理由、勉強で苦労したこと、今までの旅の行程。そしてアルベルトさんは花畑の近くにある山の上から景色を見てみたいと言った。日本の伝統ある改元❸の日に合わせ、最後に訪れてから国に帰るらしい。日本の伝統を大切にするイケメンに、逆らえるわけないじゃん。山登りに向いた靴ではなかったけど、アルベルトさんについて行くことにした。
近くに流れていた小川を目印にして、川上を向いて歩く❻こと20分、小さな茶屋を見つけた。少し休憩しようとアルベルトさんに提案し、座らせてもらう。しばらくするとアルベルトさんがみたらし団子を持って店から出てきた。前からみたらし団子が気になったらしい。みたらし団子を頬張る、彫りの深い男性の横顔。絵になるなぁ。突然、謎の言語で話し出した。どうやら美味しすぎて母国語のイタリア語が出たらしい。美味しさのあまり大喜びするアルベルトに尊みを感じた私は、茶屋の店長に「この店います❶ぐに買い取らせてください。お金ならあります。」と言い放った。アルベルトは今ひとつ意味をわかっていなかったようだが、取り敢えず耳元で「もっと、おだんご、たべていいんだよ♡」と猫なで声❼で言うと大喜びで私に抱きついてきた。私はしめしめ、じゃなくてよしよししてあげた。店長は固まっていた。
指と指の間に団子の串を挟んで武闘家のようになったアルベルトさんは、そのまま登山を再開した。アルベルトさんは日本に来てから毎日日記を書いているそうだ。私は「三日坊主だから全然続かないの、アルベルトさんすごい!」と褒めた。アルベルトは喜んで、私に日記を見せてくれた。そこには綺麗な文字で旅の思い出が綴られていた。ところどころイラストがあるのもセンスある。最後まで読み終わり表示を見てみると「The Narrow Road to the Deep North」と書かれていた。これを本にしたら売れるかな、と照れくさそうに聞いてきたので、「文章はエッセイとして最高だと思うけど、ちょっとタイトルが…。この名前で既に松尾芭蕉がしちゃってる❹から……まてよ、確かに有名作品のオマージュとかはヤバイ反面❷、話題性もあるのでは?日本語堪能なイケメン外人の日本語エッセイとか買わない人いないわこれ売れるうん売りましょう!」と早口で答えた。おそらく最後以外聞き取れていないが私の腕を握ってきたのでいい感じである。
広い空間に出てきた。私は少し休憩することにする。アルベルトさんはまだまだ体力があるみたい。素敵。アルベルトさんはトレーニングを始めた。スクワット、腕立て伏せ、柔軟、逆立ち……逆立ち❽する彼の捲れたシャツから見える腹筋は眼福以上の何物でもなかった。非の打ち所がない。私、この人のこと、好き……///
到着した。頂上での眺めは美しかった。気がする。正直覚えてないというか見てない。アルベルトに首ったけ。私、アルベルトさんがいたら他に何もいらないわ、と思いながらぼーっと景色を見る。アルベルトさんが写真を撮りたいというので、みたらし団子の残った串を預かる。あっそうだ、写真を撮っている間に団子の串を捨てて置いたら私出来る女になれるのかも!と思ってあたりにごみ箱がないか探したが無し。仕方ない…私はそこに生えてた桜の木のしたに8本の串を埋め込んだ❺。
帰り道、アルベルトさんに大胆に抱きついてみた。優しく包み込んでくれるアルベルト。
「あなたみたいな人、待ってた……///」
アルベルトは美しい笑顔でこちらを見た。
アルベルトさんが帰国して、1人になった私。今までは1人で大丈夫だったのに、今はもうアルベルトさんのことしか考えられない…。私どうしちゃたんだろう。抑えられなくなった私は、教えてもらったメールアドレスにメールを送ることにした。もちろん私はできるOLだから、英語圏の友達だっているけど、どうしても友人のノリで話しちゃうから言葉が乱雑になっちゃうのよね。出来るだけ「WTF」には頼らず❾にメールをしなきゃ……。
「私、ずっと待ってるから。私の素敵な王子様♡アルベルト王=3➓」
取り敢えず王って入れてそれとない横向き顔文字を入力する。最初はこんなもんよね。送信ボタンをクリックする。
……。
……。
返事がない。
受信フォルダを開くと、「メールが送信できませんでした」という内容のメールが届いた。
飛行機の中のアルベルト「クミコさん、あの感じじゃこれからの10年間も彼氏なんてできないだろうな。よし、ブログでも書くとしますか。タイトルは…「ヤバイ日本人を発見しました!Part8」くらいでいいか。」
[編集済]
ひろぺんさんが滑り込み投稿してくださったのめちゃくちゃ嬉しかったです。
要素の回収の仕方どれも今までに無いものすぎてびっくりしました。他の人が要素の使い方に悪戦苦闘している中、1人だけ余裕を感じ取れるほどの遊び方で最高です。
クミコの言動や行動がそこそこ頭のネジが外れていて、迷走(暴走?)っぷりを楽しみながら読ませて頂きました。アルベルトもアルベルトで相当酷いですがw
作品投稿ありがとうございました。
これにて投稿フェーズ〆切とさせていただきます!
本当にたくさんの作品をご投稿いただきありがとうございました!
投票箱設置しました!
→https://late-late.jp/mondai/show/5386[編集済]
参加者一覧 20人(クリックすると質問が絞れます)
当初の予定よりも1日以上解説投稿が遅れて本当に申し訳ありませんでした。
では、早速結果発表の方に移りたいと思います!
最難関要素賞
⑤桜の木の下に埋める(4票)👑
⑨TFには頼りたくない(4票)👑
⑩1+1=3(4票)👑
③改元が重要(3票)
②仮面が関係する(1票)
④焦がしちゃった(1票)
⑧逆立ちする(1票)
きっとくりすさんから頂いた⑤の要素とHIRO・θ・PENさんから頂いた⑨の要素、そしてビッキーさんから頂いた⑩の要素が並ぶ結果となりました。
⑤は梶井基次郎の短編小説『櫻の樹の下には』を想起させる要素ですが、今回の問題文は天を見上げるものであり、逆にこの要素は地に埋めるものですから、難しそうだなと思ってました。
⑨は定番のヒロペンさんのアルファベット要素ですね。TFが重要ではなくTFには頼りたくないなのが何とも言えない難しさに変えた感じがします。
⑩はもう語ることがないです。投票会場でのひろぺんさんの『だって2じゃん。』というコメントが全てを語っています。
ちなみにですが、今回私が自分で選んだ5つの要素は①③④⑤⑦でした。
TFと1+1=3については乱数ですワタシハワルクナイ()
さて、それではいよいよ作品の発表に移りたいと思います!
様々な投票基準の中、一番人気を集めたのはどの作品なのでしょうか!
最優秀作品賞
15.『天気予報』(作:たまにんじん)(7票/7人)👑
13.『春風の鈴音』(作:藤井)(7票/5人)
6.『星のネタバレ』(作:太陽が散々)(6票/5人)
5.『滔々モノ語』(作:ハシバミ)(4票/4人)
12.『ロイヤル・ロマンス』(作:「マクガフィン」)(4票/4人)
21.『クミコの一生』(作:HIRO・θ・PEN)(4票/4人)
19.『とある官房長官の憂鬱』(作:ラピ丸)(3票/1人)
8.『思春期』(作:とろたく(記憶喪失))(2票/2人)
2.『TFには頼りたくない』(作:ラピ丸)(1票/1人)
3.『初恋の物語は永遠に』(作:OUTIS)(1票/1人)
4.『動物大戦争~未来がみえる仮面~』(作:バタルン星人)(1票/1人)
9.『栄賀撮夫の困惑』(作:バタルン星人)(1票/1人)
10.『とあるコピーの憂鬱』(作:とろたく(記憶喪失))(1票/1人)
11.『幸福』(作:夜船)(1票/1人)
16.『蜃気楼、転じて摩天楼』(作:とろたく(記憶喪失))(1票/1人)
17.『fire flower』(作:赤升)(1票/1人)
18.『ゆるふわみそがーる』(作:こはいち)(1票/1人)
という訳で、全21作品から最も多く人から支持を得た作品は・・・・・・
たまにんじんさんの『天気予報』でした!!
初投稿で設定がここまで細かく作り込まれた作品が生まれるとは思っていませんでした。得た票数も7人からそれぞれ1票ずつ7票ということで、文句無しの一番だと思います。本当におめでとうございます!!
次点の藤井さんの『春風と鈴音』は票数では同じ7票でした。最多票数が並んだのは第1回以来でしょうか。
こちらは美しい世界観と物語が多くの人の琴線に触れる話でした。
他の話もどれも良くて、今回皆さんの作品のレベル物凄く高いなぁ面白いなぁ・・・って1人でずっっっと思ってました。票もめちゃくちゃ割れましたね。
それでは、らてらて鯖第10回「正解を創りだすウミガメ」、シェチュ王の発表に移ります!
シェチュ王
👑たまにんじんさん(7票)
です!おめでとうございます!!!!!
初投稿初シェチュ王は本当に凄いし、そう言っても全く問題が無いくらいの文才と構成能力でした。
以上が投票結果となります。
投票外でも各作品へコメントを下さっている方もいますので、是非とも投票会場をご覧ください!
今回の創り出すは記念すべき第10回ということで10要素、かつ『TEN』にちなんだ問題文ということで、『天(=ten)』気が良かったことと、10年後の未来を知るという、一見繋がりにくい2つの要素の補完という形での出題を試みました。
4月ということで忙しい方も多く、今回は参加者が少ないかなー、なんて心配していたのですが、ご新規さんも多く参加されて21個もの作品が集まりました。本当に嬉しかったですし、シェフたちの努力と能力が見て取れる素晴らしい作品ばかりでした。本当にすごい。
では、たまにんじんさんに第10回シェチュ王の座と次回第11回正解を創り出すの出題権を贈与して、第10回正解を創りだすウミガメを締めさせていただきます!
(出題に関してなどわからないことがあったら何でも聞いてください)
こうして10回も正解を創り出すを締めることが出来たのは、参加された皆さんのおかげです!皆さん、本当にありがとうございました!!!
遅ればせながら、皆さんお疲れさまでした&ありがとうございました!初参加初投稿でシェチュ王のたまにんじんさん、おめでとうございます。カッコ良すぎます。天気予報と名付けられた男の子の特性が魅力的で、彼視点で描かれるお話をもっと読んでみたいと思いました。 そして主催の涼花さん、大変お疲れさまでした!作品へのコメントも嬉しく読ませていただきました。エモエモエモンガ。 そして拙作に票をくださった方、投票外でコメントをくださった方、ありがとうございました!とても嬉しかったです。投票会場のチャットの方に一言返信を打ち込ませていただきますので、お時間あればチラ見してやってください。 次回は令和初の創りだすですね。楽しみにしています![編集済] [19年05月04日 00:23]
ふおおー。まさかのシチュ王ゲット!!!皆さま拙作を読んで頂きまして誠にありがとうございましたー。今回は本当にレベルが高くて、他の作品を拝見してまさか自分がシチュ王になれるとは思っていなかったのですごくうれしいです!イベントを主催するのはとても怖いですが、過去問をしっかり見直して11回に備えたいと思います。自分の作品に投票してくださった皆様そして開催してくれたごがつあめ涼花さん、ありがとうございました![19年05月03日 21:09]
皆さんお疲れ様でした〜。たまにんじんさん、シェチュ王おめでとうございます!\・θ・/投票会場でも申し上げた通り、男の子の魅力とシーンの描写、そして要素の鮮やかな回収が、まさにエモエモエモのエモエモンガでした。そして私はたぶん最難関要素賞を4連覇(?)してる。微かな罪悪感。しかし私のオチなし(読み返せば読み返すほどまるでオチがない)作品を皆さんに解読していただき、さらに4票も投げていただけて光栄です。2時間だけでもあがいた甲斐がありました。拙作を読んでくださった皆さん、そして票を投じてくださった4名の皆さん、そしてごがつあめ涼花さん、ありがとうございました!・θ・[編集済] [19年05月03日 09:39]
ごがつあめさん、主催&感想ありがとうございました。たまにんじんさん、シュチュ王おめでとうございます。そして拙作に投票・感想をくださった皆様、ありがとうございます。とろたくさんの感想を読んでなぜそれを入れなかったのかと後悔し……ねこですよろしくおねがいします[19年05月03日 08:59]
ごがつあめ涼花さん、主催お疲れ様でした。忙しい中にも関わらず、全ての作品に感想を書いていて素晴らしいと思います。ありがとうございました!また、たまにんじんさんシェチュ王おめでとうございます。[19年05月03日 08:36]
ごがつあめさん、お疲れ様でした&ありがとうございました!たまにんじんさん、おめでとうございます!個人的には一人頭の得票数が最大(三票)だったので、とりあえず嬉しい回でしたね。本当にレベル高い笑笑。令和初の創り出すは果たしてどうなるのか?今から楽しみだぁ……![19年05月03日 04:15]
ごがつあめ涼花さんほんっっとうにお疲れ様です...! 丁寧に読んで下さって感無量でございます... しかしまさかあの何の気なしに書いたAAもどきをいじられるとは思いませんでしたww そしてたまにんじんさん、シェチュ王おめでとうございます! ごがつあめさんも仰ってましたが、初出場初優勝は凄すぎます! 是非とも次回の主催をよろしくお願いします。楽しみにしてます![編集済] [19年05月03日 00:39]
ごがつあめ涼花さん、主催ありがとうございました!!!たまにんじんさんシェチュ王おめでとうございます!今回、自分は創り出せなくて無念でしたが、自分が要素を出した桜の木の下に埋めるがTF、1+1=3という強い要素に並んで最難関要素賞でビックリしてます。[19年05月03日 00:24]
おお! ごがつあめ涼花さん 開催・進行ありがとうございました!お疲れ様です!! たまにんじんさん 記念すべき10回大会のシェチュ王おめでとうございます!ホントすごい作品でした! 皆様お疲れ様でした![19年05月03日 00:24]
ありがとうございます。自分の事情を承知の上で前回書きましたし、シェチュ王としてやる事はやらないとなので、無理せずに適度に頑張ります。24時までには発表する予定ですので、宜しくお願いします。[編集済] [19年05月02日 20:29]
ふと見てみると質問に回答がきていた。しかも、これが中々粋なものだった。ここで私はハッキリと驚く。なにせ投票会場の文中に「浪人にて多忙也」とごがつあめ氏はおっしゃっていた。それにもかかわらず、全作にこうも丁寧な返答をするなんて。なんとまあありがたいことか。こんなに頑張って下さっているのだ。当方はとりあえずネットサーフィンを終え、弁当食べたら、大人しく仕事に戻るとしよう。[19年05月02日 12:57]
ラスト2時間突貫工事。あまりにも突貫工事すぎるしノリと勢い以外皆無で読んで頂くのが申し訳なさすぎるけど、私はこれで投票権を3票手に入れたので(私は)何の問題もありません。皆さんの作品、じっくり読ませていただきます![19年04月26日 00:04]
三作目、完全に②要素ありきです。用語とか要素関係ないやつをいろいろ作りすぎてすいません。勘違いした特撮好きを拗らせるとこうなるので気を付けよう。雰囲気だけでも楽しんでいただければ幸いです。[編集済] [19年04月25日 01:36]
葛原さん歓迎します。そう言って作品を投稿してくれる葛原さんが大好きです(満面の笑み) 太陽がさんさんさん、初めましてですね、歓迎します!ふぁるべさんも歓迎します!![19年04月14日 23:16]
50個ですごめんなさい自害してきます・・・・・・ ちょっとミスが多すぎるのでヒント欄に追記します
藤井さん歓迎しましゅ
バタルンさん了解です!作品お待ちしておりますね[編集済] [19年04月14日 22:13]
天気が良かったので、男は10年後の未来を知った。
どういうことだろう?
『要素』
①占う
②仮面が関係する
③改元が重要
④焦がしちゃった
⑤桜の木の下に埋める
⑥上を向いて歩く
⑦猫が関係する
⑧逆立ちする
⑨TFには頼りたくない
⑩1+1=3
自分が正解した問題・出題者への賛辞・シリーズ一覧・良い進行力など、基準は人それぞれです。
自分専用のブックマークとしてお使い下さい。
Goodって?
「トリック」「物語」「納得感」そして「良質」の4要素において「好き」を伝えることができます。
これらの要素において、各々が「良い」と判断した場合にGoodしていきましょう。
ただし進行力は評価に含まれないものとします。
ブクマ・Goodは出題者にとってのモチベーションアップに繋がります!「良い」と思った自分の気持ちは積極的に伝えていこう!