聖夜の帳が降りる頃。
私は七海の手を引いて、彼女を屋上へと連れ出した。
一体なぜ?
ーーーーーーーーーー
Ladies & gentlemen!!!
皆様、正解を創りだすのお時間となりました。
今宵、司会を務めさせて頂きます、弥七です!^ ^
前回はこちら→https://late-late.jp/mondai/show/8499
年末でお忙しいと思いますが、皆様いかがお過ごしでしょうか??らてらてでの創りだす企画はこれで18回目となり、年内最後の開催となりました。私は前回(第17回)が創りだす初参戦だったのですが、2回目にしてこのような司会を務めさせていただけるのが夢のようです。悔いの残らないように精一杯頑張りたいと思います!
☆そして今回の要素設定ですが…前回に引き続き5~10個とさせて頂きます。選出された要素のうち少なくとも5個、使用して解説文を創り出してください。また文字数制限は…特別に一律5000字以内とします。弥七サンタからのプレゼントだよ。ホウホウホウ
詳しくはルールをご参照くださいませ。
それでは、第18回の創りだす、みなさまで盛り上げていきましょう!
いつものルール説明へ、GO!!
★★ 1・要素募集フェーズ ★★
[12/19(木)21:00頃~質問が50個集まるまで]
まず、正解を創り出すカギとなる質問(要素選出)をして頂きます。
☆要素選出の手順
1.出題直後から、YESかNOで答えられる質問を受け付けます。質問は1人4回まででお願いします。
2.皆様から寄せられた質問の数が50個に達すると締め切りです。
選出は全てランダムです。今回も、ある程度の矛盾要素をOKとします。
選ばれた質問には「YES!」の返答とともに『[良い質問]』(=良質)がつきます。
※良質としたものを以下『要素』と呼びます。
※条件が狭まりすぎる物は採用いたしません。
[矛盾例]田中は登場しますか?&今回は田中は登場しませんよね? →今回もOKとします。例は今回も田中さんで譲りません。
[狭い例]ノンフィクションですか?(不採用)
[狭い例]登場キャラは1人ですか?(不採用)
[狭い例]ストーリーはミステリー・現実要素ものですよね?(不採用)
要素が揃った後、まとメモに要素を書き出しますのでご活用ください。
※要素数…5~10個 但し、一律5000字以内の文字数制限を設けます。使用する要素数が5個でも、10個でも、5000字以内で解説文を作成してください。
★★ 2・投稿フェーズ ★★
[要素選定後~12/26(木)23:59]
要素募集フェーズが終わったら、選ばれた要素を取り入れた解説を投稿する『投稿フェーズ』に移行します。
各要素を含んだ解説案をご投稿ください。
らてらて鯖の規約に違反しない範囲で、思うがままに自由な発想で創りだしましょう!
※過去の「正解を創りだす(らてらて鯖版・ラテシン版)」もご参考ください。
ラテシン版:sui-hei.net/mondai/tag/正解を創りだすウミガメ
らてらて鯖:https://late-late.jp/mondai/tag/正解を創りだすウミガメ
☆作品投稿の手順
1.投稿作品を、別の場所(文書作成アプリなど)で作成します。
質問欄で文章を作成していると、その間他の方が投稿できなくなってしまいます。
コピペで一挙に投稿を心がけましょう。
2.すでに投稿済みの作品の末尾に終了を知らせる言葉の記述があることを確認してから投稿してください。
記述がない場合、まだ前の方が投稿の最中である可能性があります。
しばらく時間をおいてから再び確認してください。
3.まずタイトルのみを質問欄に入力してください。
後でタイトル部分のみを[良質]にします。タイトルは作品フェーズが終わり次第返信させていただきます。
4.次の質問欄に本文を入力します。
「長文にするならチェック」がなくなりましたので、主催が長文許可を忘れてなければそのまま質問欄にて改行込みでのコピペが可能です。
つけ忘れていた場合は、お手数ですが適当な文字を入力した後に質問の編集画面に飛び、作品をコピペしてください。
5.本文の末尾に、おわり、完など、終了を知らせる言葉を必ずつけてください。
※作品のエントリーを辞退される際は、タイトルに<投票対象外>を付記して下さい。
★★ 3・投票フェーズ ★★
[投票会場設置後~12/31(火)23:59]
※作品数多数の場合や司会者の判断により、期間を延長する場合もございますのでご了承ください。
投稿期間が終了したら、『投票フェーズ』に移行します。
お気に入りの作品、苦戦した要素を選出しましょう。
☆投票の手順
1.投稿期間終了後、別ページにて、「正解を創りだすウミガメ・投票会場」(闇スープ)を設置いたします。
2.作品を投稿した「シェフ」は3票、投稿していない「観戦者」は1票を、気に入った作品に投票できます。
それぞれの「タイトル・票数・作者・感想」を質問欄で述べてください。
また、「最も組み込むのが難しかった(難しそうな)要素」も1つお答えください。
※投票は、1人に複数投票でも、バラバラに投票しても構いません。
※自分の作品に投票は出来ません。その分の票を棄権したとみなします。
※投票自体に良質正解マーカーはつけません。ご了承ください。
3.皆様の投票により、以下の受賞者が決定します。
◆最難関要素賞(最も票を集めた要素):その質問に[正解]を進呈
◆最優秀作品賞(最も票数を集めた作品):その作品に[良い質問]を進呈
◆シェチュ王(最も票数を集めたシェフ=作品への票数の合計):全ての作品に[正解]を進呈
→見事『シェチュ王』になられた方には、次回の「正解を創りだすウミガメ」を出題していただきます!
※票が同数になった場合のルール
[最難関要素賞][最優秀作品賞]
同率で受賞です。
[シェチュ王]
同率の場合、最も多くの人から票をもらった人(=複数票を1票と数えたときに最も票数の多い人)が受賞です。
それでも同率の場合、出題者も(事前に決めた)票を投じて再集計します。
それでもどうしても同率の場合は、最終投稿が早い順に決定させていただきます。
■■ タイムテーブル ■■
☆要素募集フェーズ
12/19(木)21:00~質問数が50個に達するまで
☆投稿フェーズ
要素選定後~12/26(木)23:59まで
☆投票フェーズ
投票会場設置後~12/31(火)23:59まで ※予定
☆結果発表
1/1(水)22:00 ※予定
◇◇ お願い ◇◇
要素募集フェーズに参加した方は、できる限り投稿・投票にもご参加くださいますようお願いいたします。
質問だけならお手軽気軽、でもメインはあくまで投稿・投票です。
投稿は意外と何とかなるし、投票もフィーリングで全然OKです。心向くままに楽しみましょう!もちろん投稿フェーズと投票フェーズには、参加制限など一切ありません。
どなた様もお気軽にご参加ください。
皆様の思考や試行、思う存分形にしてみて下さい。
☆そして『正解を創りだすウミガメ』では参加賞・入賞にコインバッジの贈呈を行なっております。企画終了後、参加者さまに私がミニメにてコード配布を行います。詳細は管理者さまとご相談の上、追ってご連絡いたします。少々お待ちくださいませ。
…以上となります、長すぎてみんな寝ちゃったかな??
それでは、これより要素募集フェーズを始めます。再度確認ですが、質問は一人、4回まで!
新古参問わず、誰でもお気軽にご参加くださいませ(OvO)♪♪
よーい、スタート!!
結果発表しました!みなさま本当にご参加ありがとうございました〜><
★投稿の際の注意★
*質問欄で文章を作成していると、その間、他の方が投稿できなくなってしまいます。
別の場所(文書作成アプリなど)で作成し、「コピペで一挙に投稿」を心がけましょう。
*投稿の際には、前の作品の末尾に「終了を知らせる言葉」の記述があることを確認してください。
記述がない場合、まだ前の方が投稿の最中である可能性があります。
*本文の末尾に、【おわり】【完】など、「終了を知らせる言葉」を必ずつけてください。
*作品中に要素の番号をふっていただけると、どこでどの要素を使ったのかがわかりやすくなります。
投稿〆切りは12/26(木)23:59までです。皆様奮ってご参加下さい!
☆☆☆課題文における「七海」には名前以外、基本的な設定はありません!お好きに料理してくださいませ。[編集済]
年の瀬の慌ただしさも浮ついた雰囲気もどことなく空虚に感じる。
3年前からずっとそうだ。今日は絶対に忘れてはいけない特別な日だ④。
電車から太陽の沈んだ名残が西の端に見えていた。職場から帰宅し、自宅の玄関のドアを開ける。
リビングの明かりを付けた時、私は買った花束の入った紙袋を思わず床に落としてしまった。
何せ、そこには―――
「お帰りー。早かったね」
あの日の前日に別れた姿のままの七海がソファーに座っていた。
「…出迎えてくれるやつもいないのに早く帰っても仕方ないけどな」
「ふーん。こんなリッチなマンション住んでるのに。前の部屋の4倍はあるよね。勿体ない」
「あのな」
言いたいことも、聞きたいことも沢山あった。
かなり私は目の前の出来事に対して適合しているように見えたことだろう。
実際には自分に都合の良すぎる白昼夢を見ている気分だった。
今日はクリスマスイブ。3年前、喧嘩した翌日に七海が、自らの命を絶った日。
「なんだって俺なんかの前に出てくるんだ」
おまえが死ぬことを選ぶほど苦しんでたのに気づかなかった奴なんかの前に。
「3年真面目に頑張ったご褒美です。あんま喋っちゃいけないんだけど死後の世界って色々あってねー。安心して。居るのはあと15分だけだから」
「そう、なのか」胃の辺りがズシリと冷たく重い石を詰められたようになった。
「そう!だから!今からでも出来る思い出が欲しいって」
「は?」
「…って言ってもこの部屋から100メートルも離れられない決まりなんだけどね」
「………このマンション屋上があるんだ。そこから夜景を見るのは?」
「いいね。決定。」
屈託なく笑うさまは不謹慎ながらも本当に自殺した人間なのかと思うほどだった。
「エスコートされたいなー」と手を差し出してきたので手をしっかりと握ってエレベーターで最上階へ行ってから屋上へ向かう。
繋いだ手はどうなっているのかちゃんと温かった⑦。死んでいるのに。
そう。俺が死なせたかもしれないのに。
もし、あの日喧嘩した時にあんなことを言わなかったらよかったのでは⑨。
もし、彼女の悩みや苦しみに気づいていたら。
もし、もっと素直に感謝や愛情を伝えていたら。
もし、もし、もし。
そんな詮方ないことを考えているうちに屋上への扉に着いていた。
カギを開けると100万ドルとまではいかずともまぁ観られる夜景が広がっていた。
七海が私の後ろから脇をすり抜けていった。懐かしさを感じるいい匂いがした⑧。
(本当に、生きているみたいだ)
でももう七海は死んでしまった。そして再び私の前に現れた。
この時間はおまけの様なもので、七海が再びいなくなった後、私はどうなるだろう…
そのときふとある考えがよぎった。
―――彼女は俺をあの世へ連れて行くためにここに来たのではないか?
そう思い立ったので早速柵に登る勢いの七海に尋ねた。
「そんなわけないでしょ!ただ純粋に、心残りを清算してきてくださいって担当の人に言われて…好きな人に会いに行くのがそんなに駄目?」
「好き、②ってお前、俺のこと、恨んだり、とか」
「ないない」
「でも、お前のこと、俺、そば、いたのに、気づいて、やれなかった」
「あなたのせいじゃないし、ってあーもー、泣け泣け!好きなだけ泣きなよ」
私はみっともなく涙と鼻水にまみれて七海に縋り付いてしばらく泣き続けた。
夜景が七海越しに滲んで乱反射していた。
落ち着いた私は大切なことを思い出し、部屋に戻ろうとした。
「ごめん、あとちょっとだ」ふいに彼女がそう言う。
「しばらく、ううん、あなたがこっちに来るまでもう会えない」
「すぐに行きたい」
「すぐには 来 る な」
「わかったよ、!」
頷いた瞬間、彼女が目映い光に包まれて、一瞬のうちに姿が見えなくなった⑩。
驚いた。生前もチキンな俺を散々に振り回してくれる⑤ところのあるやつだったけど、
現れるもの消えるのも急すぎて、七海らしいと思ってしまった。
それからの俺の願い事。
天寿を全うして七海に会いに行くこと。
俺が皺くちゃの爺さんであっちが若いまま、だったりするかもしれないけど。
それと、渡せなかったビロード貼りの小さな箱に入ったリング。
遅いよ、って、笑ってから。
どうか受け取って、ください。
【おわり】(1700文字)
[編集済]
生と死、二つの世界に阻まれがらも変わらぬ愛の形がそこにはありました。自殺の真相について作中には語られておらず、本人が抱えていた葛藤や悲しみを全て伺い知ることはできませんが、それを乗り越え、「心残りの清算」のために私の前に訪れた七海の顔にはきっと笑顔が灯っていたことでしょう。私の言葉に対する七海の「すぐには 来 る な」の一言は天寿を全うした後の再会を示唆するものであり、将来、この先二人に待ち受けるのは至極の結末であるに違いありません。自称ハッピーエンド狂として、美味しく読ませていただきました。ぺろり。 [編集済]
解説
『私』は貧乏な連続殺人犯。いつも拾った仮面を被り食糧を得るために農家を殺しているが(①)、今夜はクリスマスなので(④)、悪い子にサンタがくれるジャガイモを手に入れるため(⑥)、死体を、殺したての強い血の香りそのままに(③)(⑧)空をかけるサンタに見えるように屋上まで引きずってきたのだった。【終わり】
[編集済]
いい子でいればサンタがプレゼントをくれる。いわゆる「サンタ伝説」を逆手に取った作品です。主人公である私は、サンタさんが悪い子にあげるジャガイモをまさに欲しており、アピールのために殺人を犯す…と短文にこれでもかと凄惨なシナリオを盛り込んでいます。どうせならいい子にしてた方がサンタさんからもっといいもの貰えたかも、なんて野暮なことは言いっこなしです。それでフライドポテトでも作ってください。え、ケチャップがないって?何をいっているんですか、それなら、あなたの腕に、べっとりと、ついてるじゃあないですか…ねえ? [編集済]
『聖夜の帳が降りる頃』というタイトルの映画があるらしい。
聖夜。
日本ではクリスマス・イブのことをそう呼んでいる。
七海は『特別な日』に、異様なまでの執着を持っていた。
ハロウィンでは凝りに凝った仮装をするし、誕生日にはプレゼントやハプニングが必須。
バレンタインデー、ホワイトデー、とにかく記念日やイベントの類に敏感に反応する。
もちろん、クリスマスも例外ではない。
間違いなくこの映画のこともチェックしているはずだ。
私はそんな彼女が嫌なわけではなかった。
むしろ、きみはありのまま…そのままのきみでいい③!と叫びたいくらい好きである②。
「『聖夜の帳が降りる頃』って映画のチケットが2枚ある」
私はLINEを送った。
「ちょうど観たかった」
即レスだったので、思わずニヤニヤしてしまう。
「12月24日の夜に行くか?」
「むしろ、その日以外いつ行くの」
よしきた!
やはり七海はすでにチェック済み。
私から誘われることを待っていたのだ。
「仕事終わったらLINEする」
「わかった」
~~~待ち合わせ当日
「おう」
「行こうか」
それ以降会話もなく、私たちはモール内にある映画館へと向かった。
七海は珍しく香水をつけているようで、いい匂いがする⑧。
誘って正解だったな。
『聖夜の帳が降りる頃』は、そこそこカオスなB級映画だった。
タイトルからは想像もできない、コメディ作品?である。
主人公が幽霊を相手にチキンを振り回す⑤シーンは、私たち2人以外は皆爆笑していた。
チキン攻撃により、大量の幽霊が成する⑩。
彼らの望むものはひとつだけ⑥。
フライドチキンの某バケツBOXを抱えて天に昇ることだった…。
映画の内容など、元よりどうでも良かった。
七海と今日この日に会うことが重要なのだ。
「出よう」
映画が終わると同時に、私は七海の手を引いて、モールの屋上へと連れ出した。
繋いだ手はびっくりするほど温かく⑦、そうか私の手が冷たすぎるのだと気づく。
七海に緊張を悟られただろうか?
「……」
「……」
互いに無言なのはいつも通り。
私たち2人は―――
『超クールキャラ』だった。
もう何年も、その仮面①を被らされている。
フキダシの中では互いにそっけなく、会話らしい会話もない。
内心では「デートだ、やったぜー!」とか「今日も七海可愛かったな…」とか、あるいはちょっと読みづらいほど延々と続く心情描写(割愛)が売りのこの少女漫画。
互いに想いあっているにも関わらず、口にも顔にも出せないもどかしさよ!
あの作者気取りのヤツには分かるまい…。
―――しかし、今日は特別な日④だ。待ちに待った、この日。
ついに私は、七海に告白できるのだ。
だから、屋上に連れ出した。
屋上には私たち2人しかいない。
この時期ならではの、色鮮やかなイルミネーションが七海を美しく照らしている。
私は意を決して言った。
「七海、好きだよ。ずっと一緒に居てほしい」
「わたしも…あなたのことが好き」
〖~Fin~〗
「はっ、寝落ちてた!ヤバい原稿仕上げないと」
あんなこと言わなければよかった⑨。
次回、ついに完結!!と銘打ったものの、最終話が思い浮かばない。
「ん…?あれ?」
いつの間にか原稿は仕上がっていた。
「なぁんだ。描けてるじゃん!全然記憶にないけど」
【おしまい】
多分1400文字くらい、要素①~⑩
[編集済]
作中作が作中作を呼ぶ。そんな繰り返される展開に創り出すの新しい可能性を見ました。難しい要素たちをB級映画の内容としてぽんぽんとこなしていく文調はさながら痛快で、気を抜くとクスリを笑ってしまうような、脱力系の展開に思わずニッコリです。そして最後の結末は...おうおうみづさん夢オチかい??^ ^と思って読んでいましたが結局は原稿が完成しているという。うん、これは全て妖怪…いや幽霊の仕業に違いないのです。いつぞやの情熱太陸も思いましたが、端々にミョ〜に現実味の感じるストーリーが、みづさん作品の魅力なのです。
「シャンパン買ってきてー!」
『あいよ』
彼女が立つキッチンからはいい匂いがしていた⑧。
今日は特別な日④。そう、クリスマスイブ
……もあるのだが、メインは七海との結婚記念日である。
七海は高校時代の同級生で、同窓会で再会してから連絡を取るようになった。
何度かデートもするようになり、数年後。
12月に行ったレストランは、夜景が綺麗だった。
「あんたにしては良いとこ選ぶじゃん」
『まぁな』
張り切って探した甲斐があった。
そんなことを思っていると、七海がこう聞いてきた。
「ねぇ」
『何?』
「私のこと、好き…?②」
『急にどうした?』
「いや、気になってさ。」
『まぁ、好きだけど。』
「…私も。」
七海と結婚しようと思ったのはその時だ。
彼女と人生を歩みたい、望むことはそれだけだった⑥。
『…なぁ、俺と結婚してくれないか』
「何言ってるの?」
あぁ…やっぱり駄目か。急すぎたもんな。
「いいに決まってんじゃん」
彼女の返事を聞いた時、私は躍り上がった。
『本当に?』
「うん。」
『良かった…』
「あれ、指輪は?」
『あ、ごめん!用意してない…自分でもプロポーズすると思ってなかったから…』
「フフッ、あんたらしいわ。」
私達はその翌日に婚姻届を出した。
あれからもう10年か…。あっという間だな。
買い物から帰ってくると、七海は仮面を被って立っていた①。手にはフライドチキンを持って振り回している⑤。
「メリークリスマス!」
『…何のつもり?』
「もう、何その顔…つまんないの。」
『そんなんで笑うと思ったの?』
「…うん。」
七海は時折このような意味不明な行動を見せる。
まぁ、そこも彼女の魅力なのだが。
「まあいいや、ご飯食べよ!」
『そうだな。』
「かんぱーい!」
『乾杯!』
やはり七海の作る料理は美味い。
「ねぇ、結婚した時のこと覚えてる?」
『勿論。』
「懐かしいなー。確か私があんたのこと好きって言ったんだよね。あんなこと言わなきゃよかったわ⑨w」
『冗談言うなよwごちそうさま。』
「ごちそうさーん。」
『なぁ、ちょっとこっち来い。』
「な、何…離してよ。」
私は七海を家の屋上に連れていった。
家を決める時は空がよく見える屋上のある家にしようと話していたのだ。
『綺麗だなー、満天の星空だよ。』
「まぁ、綺麗だけど…」
『今までありがとうな。』
「…何。」
『これからも宜しくお願いします。』
「よ、よろしく…。」
『なぁ、俺と結婚して幸せ?』
「幸せだよ。幽霊だったら成仏してる⑩くらいには。」
『分かりづらい例えだな。』
「…ごめん、勉強しとくわ。」
『いや、そのままの君でいい③よ。その方が面白いし。』
「やっぱりあんたと結婚してよかった。」
私はそっと七海の手を握った。
七海が握り返してきた手は温かかった⑦。
~完~
[編集済]
おそらく、多くの参加者さまが課題文を見て考えたであろうこの「屋上へ連れ出して告白をする(愛の言葉をつぶやく)」というストーリー。しかしながら、このカオスな要素たちの中王道的な展開を突き進んでいくのはとても困難で高い技術力を要することは私も理解できますし、また王道であるからこそ、この物語は多くの読み手さまの心を掴んで離さないのです。つまりこの王道的解説文を完成させることこそが、もっとももっとも難しい。私にはそう思います。素晴らしい!そしてストレートな二人の告白に、こっちがニヨニヨしてしまいました^ ^
今日は聖夜。
本来はイエス・キリストの生誕を祝う行事だが、お祭りならなんでもいいこの国ではそんな大仰な意味はない。
わが子が【⑤チキンを振り回しながら】走り回っているのを、妻が叱る。
暖かな我が家の団欒。
そんな幸せな光景を眺めながら、ゆっくり目を閉じる。
今日は聖夜。
僕にとっても、忘れられない、【④特別な日】
七海、という女の子がいた。
可愛いが身体が弱く、人生のほとんどを病院で過ごす女の子だった。
いつどういう経緯で七海と出会ったのか、実はもう覚えていない。
覚えているのは僕が足しげく彼女の病室に通い、面会終了の時間まで2人きりで喋りとおすことだけだった。
「ふふ、君の話はいつも面白いね。」
七海はそう言ってよく笑ってくれたし、僕も彼女とおしゃべりするのが本当に楽しかった。
…そう、そうだった。あの日も、確かクリスマスだったんだ。
「夜景が見てみたい」
普段あまり我がままを言わない彼女が、初めて僕に対して言ってくれた我がまま。
病室の窓からは雪がちらついていた。
ここで彼女の願いを叶えなければ男が廃る。
七海の両親と医者に頭を下げ、どうにか1時間だけ病院の屋上を開けてもらえることになった。
本来病院の屋上というものは解放されないが、きっと気持ちが通じたのだろう。
七海の手を取り、屋上へ向かう。
【⑦繋いだ手は温かかった】。
屋上の扉を開けると、ひゅう、と冷たい風が興奮した気持ちを冷ましていく。
七海、大丈夫?寒くない?
「うん。大丈夫だよ。行こう。」
七海は笑ってフェンスに近づいていく。雪はまだ積もる気配はない。
「わぁ…!」
フェンスにしがみつき、夜景を眺める。
家の明かり、街頭、ネオン、イルミネーション。
ありとあらゆる人工的な光が、街を彩っていた。それに雪が加わり、より一層幻想的な夜景が完成していた。
「すごい…!きれい!すごい!」
凄い凄いとはしゃぐ七海を、微笑ましく見守る。
確かに夜景はきれいだ。だけど…。
「ねぇ…今日は、ありがとう」
はしゃいでいたのも束の間。彼女は真剣な面持ちでこちらを見ていた。
「私ほとんど病院暮らしだったから…こうして夜景を見るのは初めて。こんなに楽しい気持ちは初めて…」
それと、と彼女は目を泳がせ、口ごもりながら、続ける。
「それと…その、男の子と手をつないだのも、男の子と一緒にお話しするのも…君が、初めて。」
七海の目は潤んでいた。そのあまりに切なげな表情に、僕はどきりとする。
「ねぇ、…好き」
「君が好き。大好き。ずっと楽しいお話をしてくれた君が好き。私と手をつないでくれた君が好き。私のために屋上に連れ出してくれた君が好き。いろんな初めてをくれた君が好き。」
なんて熱烈な告白。
僕の肌に触れた雪が、水滴も残さず跡形もなく消える。
「ねぇ、君は?」
「君は…私のこと、【②好き...?】」
すがるように僕のコートをつかみ、潤んだ瞳で僕を見つめる七海。
好きだよ。
僕も好きだよ。
僕の話を楽しそうに聞いてくれる君が。
笑った顔が、温かい手が、楽しそうにはしゃぐ君が、
病気のことはよく知らないけど、【③そのままのきみでいい】。
そのままの君が、好きだよ。
そう言って抱きしめようとする。
が、なぜか七海は僕の腕からするりと逃げてしまう。
驚いた顔をする僕を見る彼女の顔は、涙でくしゃくしゃだった。
「でも、ごめんね…せっかく好きって言ってくれたのに…。私はもう、長くないの」
ぽろぽろと涙を流しながら七海は続ける。
雪が少しだけ激しくなった。
「だから、だから最後に思い出が欲しかったの…。君との思いで出を…。ちゃんと君に好きって伝えたかったの…!」
「でも私はもう死んじゃうから…!君の気持ちに応えることはできないから…!だから…!」
なんで、そんなこというんだよ。
治るかもしれないじゃないか!
「いいの…。私のことは私が1番分かってる…。奇跡なんて起きないの…」
…今日は聖夜だよ。信じようよ。奇跡。
「…じゃあ、約束して。もし、私が助からなかったら…」
…僕は助かるって信じてるよ。でも、なに?
「私が【⑥望むものは一つだけ】…。もし私が死んだら、私のことは忘れて。」
…。
…なんだって?
「私が死んだら、私のことはキッチリ忘れて、ちゃんと前に進んで。私なんかよりずっとずっと可愛くてきれいで健康な人と、幸せになって。約束。」
…。
「約束!」
……。
分かっ、た。
そうやって、僕たちは約束を交わした。
僕は信じてた。聖夜の奇跡って奴を。
けれど世界は残酷で、七海は、年を越してしばらくして、亡くなった。
奇跡なんて起きなかった。
聖夜に奇跡なんて、クリスマスにサンタクロース並みの子供だましだった。
「…さん」
奇跡に負けた僕は、七海との約束を守らざるを得なくなったのだ。
「おとうさん!!」
バチっと目を開ける。目の前には我が子の顔。
…あぁ、もしかして、眠ってしまったのか。
「おとうさん!ケーキできたよ!食べよう!」
「あらあなた、寝ちゃってたの?ケーキ明日にする?」
妻が心配して声をかけてくれる。
いや、大丈夫だ。今ので目が覚めたよ。
ケーキ、食べよう。
妻のことはもちろん愛してるし、子供も可愛くて仕方ない。
だけど、やっぱり僕にとって七海は特別で。
「「メリークリスマス!!」」
「メリー、クリスマス」
織姫と彦星が年に一度、七夕の日にしか会えないように。
僕と七海も、年に一度しか会わない。
会いに、行かない。
思い出をつたって、記憶を頼りに、僕は君に会いに行く。
聖なる夜に、会いに行くよ。
【終】
使用キーワード:②・③・④・⑤・⑥・⑦
[編集済]
「屋上に行って星を眺めたい」そんな小さな願いが、病弱な七海にとってどれだけ大きな価値を持つのか。願いの大小関係なく、叶ったことで得られた幸福感はきっと彼女の人生を素敵に彩ったことでしょう。そして彼女の夢を叶えるために奔走した青年に感情移入しながら読み進めていった先の急転直下。やはり奇跡は起こらないのか、いや、それでも信じたい。だって今日は聖夜だから。こんな素敵な物語、忘れられるわけないよね。
「それじゃあお母さん、行ってきます。」
今日はクリスマス。生命と機械を融合させた所謂サイボーグの町“アルフェール”。
そこに住む七海は、毎年バスケットを片手にクリスマスにおばあさんの家へ向かう。④
一方そのころ。
「やっぱり貴方便利よね。やっぱり私程の姫になると空から愚民を見下ろすのがふさわしいわ。」
「私はお前達を運ぶためにこんなことをしているわけでハ・・・!」
「まあまあ、怒らない怒らない。ところでかぐや姫、それ何なの?」
「わたくしがあの方より頂いた珍品の一つ、“すまあとふぉん”というらしいのです。ですが、壊れてしまっているようで、どうにか直せないでしょうか…?」
「かぐや姫…珍しい物沢山持ってる、羨ましい…」
「あら?あなたも珍品がお好きですの…?」②
「機械の町“アルフェール”。そこに住む機会技師の老婆は世界で随一の技術と聞ク。珍しい物もあるであろうし、尋ねてみてはどうダ?」
「アルフェール…確かあそこは、うん、丁度いいわ!次の目的地はアルフェールよ!」
壊れてしまったスマートフォン。それを直すべく、シンデレラたちも彼女の元へ向かっていた。
「~♬~♪」
鼻歌を歌いながらおばあさんの元へ向かう七海。
歩いていると、サイボーグのマシン狼が七海に声をかける。
「オイ、ドコヘ行クツモリダ?」
「こんばんは、狼さん。あの林を抜けた先にある、おばあさんのおうちに用があるの。」
「ソウカ、ソウカ、トコロデ向コウニ綺麗ナ花ガ咲イテイル。摘ンデ持ッテ行ッタラドウダ?」
「本当?ありがとう!ぜひ寄っていくわ!」
そう言った七海は綺麗な花を求めて数時間、森の中をさまよった。
「それにしても、お腹が空いたわ。ちょっとくらい、食べてもいいわよね?」
そう言って七海はバスケットの中のワインと干し肉を少し食べてしまった。
そんな風に七海が寄り道をしている間に、マシン狼はおばあさんの家に行っておばあさんを殺して食べてしまった。
その後、やっとのことで七海は綺麗な花を見つけ、おばあさんの元へ向かっていた。
けれども、おばあさんの家に着く頃には七海はお腹がすいてどうしようも無くなっていた。
「おばあさん、私、お腹が減ったわ。」
そう言う少女に対して、老婆に扮したマシン狼は食べきれなかったおばあさんの血と肉を“ワインと干し肉”だと偽って食べさせた。
それでも足りず、持ってきたチキンを食べていると、七海はおばあさんの顔が大きい事に気が付いて
「ねえおばあさん、どうしておばあさんのお顔はそんなに大きいの?」
と聞いた。すると、
「それはねぇ、おまえを食べてしまうためだよ!」
と言って狼は七海に襲い掛かった。
驚いた七海は持っていたチキンを振り回して暴れまわる。⑤
そしてマシン狼に噛みついて、“生身の顎”でその肉や鉄塊を貪っていく。
「あら!おばあさんじゃなくってあの時の狼さんだったのね!
こんなことになるならあんなこと言わなければよかったのに!」⑨
「ドウイウコトダ、ナゼ生身ノ顎デ…」
どんどん七海はマシン狼を食べていく。すると次第に、狼ではなく人の肉がそこに交じってくる。
「嗚呼!美味しい!さっきのワインや干し肉と同じ美味しい匂いがするわ!
さっきの肉はおばあさんの肉だったのね!」⑧
「イカ…レテ…イル…」
狼の肉や機械、おばあさんの肉までも食べる少女。
正気とは思えぬ彼女を突き動かすのは異常なまでの食欲。
彼女が望むものはただ一つ、自らの腹を満たす食べ物のみ。⑥
彼女の食欲が満たされた時、そこにあったのは老婆の腕が飛び出しているひび割れたマシン狼の液晶と、腹部にあるメモリのみ。
「アハハ、美味しかったー。そうだ、面白い事思いついた!」
そう言って彼女は家の周りから蟲(バグ)まみれの石を探して持ってくると、その中へ投げ込んだ。
「アガガ…エラー…エラー…」
マシン狼は、死んだ。
幽霊となったデータは、すぐに世界からアンインストールされて消えていく。⑩
ショゴスに乗ったシンデレラ一行がおばあさんの家を訪れた時、そこは既に惨状だった。
部屋中に散乱した血肉や機械パーツ、そしてその中央に座り込む一人の少女。
彼女の真白だった頭巾は、返り血を浴びて真っ赤に染まっていた。
「手遅れだった…みたいね。」
「あら?新しいお客さま?おばあさんはもう居ないの。私でも簡単な修理ならできると思うけど…」
誰も、スマートフォンを直して欲しいとは言え…
「悪いんだけど、この機械を直してもらえないかしら?」
「これは…うん、私でも直せるわ。ちょっと待っててね。」
そう言って少女は奥へ入っていく。
「貴方は遠慮とか配慮って言葉を知らなそうよねぇ…」
「どうして私が遠慮なんてしなくちゃいけないの?」
「はぁ…まあ、シンデレラだから仕方ないのかしらねぇ…」
そんな言い合いをしていると、少女がスマートフォンを片手に戻ってきた。
「はい、これ。どーぞ。」
「どうもありがとう。それじゃあ、貴女にも私たちと一緒に来てもらうわよ、“赤ずきん”?
私はシンデレラなんだから、民である貴女の方から此方へ来なさい。」
そう言って彼女を滞空しているショゴスへ連れて行くべく屋根の上から手を伸ばす。
すると赤ずきんは熱に浮かされたようにその手を握り返す。
てっきり彼女もサイボーグになっていて、冷たいと思っていた手が温かかったため少し驚いたように赤ずきんを見るシンデレラ。⑦
それに気づいたのか赤ずきんは恥ずかしそうに笑って
「私ね、サイボーグ手術は受けてないの。
おばあさんが“私は私のままでいい”って言ってくれたから。」③
と言った。
「これで七人目ね。」
そう言ってシンデレラは周りを見回す。
「かぐや姫が帝から聞いたという狐面の人物。そいつが全ての元凶に違いないわ!」①
狂い始めた物語たち。
それらを元に戻すべく、少女たちは狐面の人物を追い続ける。
(文字数約2351字)
-了-
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「イカ…レテ…イル…」の言葉そのままに、狂った世界で繰り広げらる、イカれた奴らの壊れた物語...でもそれだけじゃあないんだなぁ。私にはなぜか仲間を集めてラスボスを倒す、ジャンプ的王道展開が見え隠れしているように思えて、なぜだかワクワクしてしまいました。解説文だけでは収まりきらない、広大なバックストーリーが心をくすぐる、そんな作品となっています。
※七海視点のお話。
「あんたなんか嫌いよ!」
ああ、また言ってしまった。自分の性格が嫌だ…
今日、16歳になる七海には好きな人が居た。しかし筋金入りの面倒さが邪魔して、今日も今日とて本心ではない言葉が口に出てしまう。
そんな七海の好きな人は同じマンションで暮らす七海の幼なじみで、良くも悪くも「鈍感」なのである。そのくせ七海の言いたいことはすぐ見抜いてしまうので友達としてなら有難いのだが、七海にとってはいつ好きだとバレるのか気が気じゃないのだ。
今日は朝から最悪だった。寝坊したと思ったら学校は休みだし、その姿をアイツに見られるし。朝から「嫌い」と言ってしまった。
ああ、あんなこと言わなければよかった。(⑨)部屋の中で狼狽えていると、ふとチャイムが鳴った。
なんだろうとドアを開けると、アイツが居た。
「ねえ、屋上に行かない?」
「いきなり何なの?まあ、どうしてもならいいわ(えっなんで心配でも行きたい!)」
私がそう言うと、アイツは私の手を取って階段へと歩きだした。
屋上に登ると、夜の冷えた空気が肌を刺激する。アイツと繋いだ手がやけに温かい。(⑦)
アイツが私に聞いてきた。
「ねえ、七海は誕生日プレゼントは何が欲しい?」
「私は欲張りだから、特別なものなら貰ってあげるわ(そう、私が望むものは一つだけ(⑥)」
「じゃあ、僕の気持ちをあげるね。」アイツがあまりにもおかしなことを言うので、首を横に振った。
「ねえ、僕は君が好きだ。そのままの君でいいから、(③)僕に我儘を言ってよ。君は僕が好き…?(②)」
私は、ずっと逃げていたんだ。こればっかりは仕方ない、そう思って生きてきた。でも、今日は私の誕生日。特別な日の特別な夜に、(④)言葉を、勇気を。
「私は…あなたのことが好き…!」
…
………
(??視点)
1組のカップルが誕生する瞬間を、ある仮面(①)の男が見ていた。
「陰キャである俺が死んでから今日で1年…その辺で見つけたリア充を見つけては潰していたが、そこに居るだけで拝みたくなるカップルなんて初めて見た…」
仮面をつけた男はあふれ出る純粋なオーラに耐えきれなくなり、遂に仮面を外し成仏(⑩)した。その表情は、何よりも尊いものを見た顔だったと言われている…
ーおわりー
使用要素:⑨、⑦、⑥、③、②、④、①、⑩
文字数:約1000文字
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こちらも「屋上での告白」をテーマにした王道展開。両作品ともストレートな気持ちのぶつかり合いが読み手の心を掴んで離しません。素敵!!これは尊いオーラに包まれて、悪霊退散、幽霊成仏、妖怪もスタコラサッサと逃げてしまう事でしょう。個人的には仮面の男にも天国で幸せに暮らしてもしいものです。天使でも彼女にして...ね??1000文字の中にできる限り多くの要素を詰め込んでいるのもポイント高いですねー><
今日は特別な日、クリスマスイブ。④
あれから、どれくらいの月日が流れたか。地球上の生物はきっと、もう私達で最後。
「お姉ちゃん!ごはん食べちゃうよ~」
七海は、幸せそうに笑っている。私達の世界はこのマンションの一部屋だけ。
『いただきます。』
二人で食卓を囲めるのもあとどれくらいだろう。
「わぁ、コーンポタージュだ。 いい匂いがしてたんだよね~」⑧
コンポタの暖かさが凍てついた世界を忘れさせてくれる。
「お姉ちゃん。 お姉ちゃんはサンタさんに何お願いしたの?」
「私達もうそんな年じゃないでしょ。」
「いいじゃん、まだこの前まで高校生だったんだから。」
「全く、いつまでも子供気分じゃダメよ…」
そう言うと、七海は少し悲しそうな顔をした。
「そう、だよね。」
今年の初め、世界は雪に包まれた。私達の住むマンションも雪にほとんど埋まってしまった。
「私ね、サンタさんに星空見せてほしいってお願いしたんだ。」
星空…そういえば、あの日から空なんて見られなくなったんだった。
「叶わないわよ。窓は雪で見えないんだから。」
「いいもん。私ね、今夜屋上に行くんだから。」
外気温は、氷点下なんて温く感じる温度になっている。
「屋上? バカなことは止めなさい!」
屋上になんて行ったら、もう二度と帰ってこれないに決まっている。
「ねえ、お姉ちゃん、私のこと好き…?」②
「死ににいくような七海なんて嫌いよ、大嫌い!」
私はもうそれ以上何も言えなかった。
私は、お姉ちゃんに気づかれないようにこっそり玄関を開けた。お姉ちゃんが知ったらまた邪魔されちゃうから。
玄関を開けると寒さが伝わってくる。
一歩、踏み出す。
ここは10階。エレベーターが止まった今、屋上までは5回階段を登らなきゃいけない。
寒さで意識が無くなりそうになるのを必死に堪えて登り続ける。
私達より上の階に人は居ない。
みんな救援のヘリコプターで逃げちゃった。
私達は人数オーバーだって言われて乗れなかった。
でも、お姉ちゃんはそれで良かったって言ってた。
あの吹雪の中ヘリコプターに乗ってたらすぐに墜落しちゃうって。
私達より下の階の人たちは
多分もう凍っちゃった。
一歩、また踏み出す。
先は長いけど、諦めちゃダメ。
頑張らなきゃ。
そう思って次の一歩を踏み出した瞬間、凍りついた階段に足を滑らせて私の体と意識は落ちていった。
鈍い物音で目が覚めた。
「…七海?」
七海が居ない。
慌てて厚着をして玄関を開けると、そこには七海が倒れていた。
「七海!」
頭から流れている血はもう凍り始めている。
「待っててね、今救急箱を…」
「もう、間に合わないよ。自分の体だから、わかるんだ。」
「七海!」
そう言って七海は目を閉じた。
こんなことになるなら、あんなこと言わなければよかった。⑨
「目を覚ましてよ、七海。好きって言ってあげるから…!」
私は、眠る気になれなかった。私はこれまで七海を心の柱にして生きてきた。それが居なくなってしまった今、もう生きていく気力がなくなってしまった。
そうだ、どうせなら七海に星空を見せてあげよう。
コンポタを温めて水筒に詰める。上着を何枚も重ねて着る。七海を背負う。
こうして私は、久しぶりに外の世界に出た。
一歩一歩を確実に踏みしめて、七海を上の階へ連れて行く。
時々コンポタを飲んで体を温める。そうしないとすぐに意識が朦朧としてくるから。
足元には気をつけないと。凍りついた階段が私達の足を滑らせて落とそうとしてくるから。
あれからどれくらい階段を登ったか、もう数えるのも忘れていた。
気がつくと、目の前には屋上へ通じる扉があった。
扉は錆びた鎖で封鎖されていたけれど、元々脆くなっていたのかところどころが劣化して切れていた。
重たい扉を押して開けると冷たい風が吹き込み一瞬で凍りつきそうになる。
やっと、屋上についた。
七海の手を引いて、彼女を屋上へと連れ出した。
屋上についた時、空は雲ひとつ無い快晴だった。
夜空に星は眩しいほど輝いていた。
私達はその場に倒れ込んだ。
寒さのせいか、繋いだ手はまだ温かく感じた。⑦
「七海、七海の見たがってた星空だよ。」
七海は、何も応えない。
「七海、私が欲しいのはね、私が欲しいのは、たった一つ、たった一つの…」⑥
二人は、眠りについた。
オリオン座の下で。
(約1721字 使用要素:②④⑥⑦⑧⑨)
―了―
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非現実的要素を織り交ぜた世界観は投稿作品中唯一無二の存在感であり、オリジナリティを求められる今回の課題文に対して見事な答えを創り出した作品であると言えます。「屋上へ行くこと=死」という構図で語られる文章で、それでもなお屋上を目指す私の行動は地球上にたったふたりしかいない人類の最後であるだけでなくこの世に一人しかいない大切な妹に対する限りない愛を表しています。その先、夜空に浮かんでいたオリオン座は彼女たちの瞳にどう映ったのでしょうか。
家政婦というからどんなおばあちゃんがやってくるのかと思っていたら、やって来たのは私より年下の高校生。七海 雪と申します。と緊張気味に自己紹介する彼女は、まだ青い春に身を置く初々しい女の子だった。
ここは、都会からは少し離れたとある雪国。この街では特例で、聖夜の日には一斉に休みが出る。だが、母子家庭である私の家で、子供二人の面倒を見ながら家事をするのはやはり辛い。特に、今日のような祭の夜は。そんなわけで、家政婦さんを依頼したのだ。
こっちの野菜は銀杏切り、卵の黄身は混ぜなくてよい③。指示通りテキパキと処理してくれる彼女は、天然そうに見えても流石の家政婦さんだ。
七海さんにも、いい匂い⑧のすると褒められた自慢のクリスマスレシピの完成を待ちながら、私は手持ち無沙汰より七海さんに話しかける。曰く、七海さんの家はこの街からは遠く、両親は共働き。予定もないので、今日はアルバイト。
クリスマスの街のツリーみたいに、お洒落すればきっと可愛いのになぁ、と思いながら、私は料理が出来たあとの仕事を彼女に依頼した。
子供たち二人と遊んで欲しいのである。二人はまだ育ち盛りのやんちゃ盛り。聖夜くらい、羽目を外して一緒に遊んでやりたいものなのだが、生憎、私には七海さんには任せられない大切な仕事が残っている。子供たちが聞いたら残念な顔をしてしまうだろうから、七海さんが遊び相手になってくれれば。
子供たちの望むクリスマスプレゼントは、ただ一つ、遊び相手なのだ⑥。せっかくのクリスマスなのに幼い子供の面倒見やり。高校生には少し渋いお願いかとも思ったが、七海さんは快く受けて下さった。
続けてお願いした掃除を終わらせた七海さんは、私の部屋へ戻ってきた。労いの言葉をかけてやると、ここで七海さんは思いもしない提案をちょっぴり熱っぽく語った。
掃除をしていて、部屋を見回してふと思い付いたのだろう。なるほど面白い試みではあるが、少々危険なものでもあった。七海さんの身に何かあっては申し訳ないが、高校生の奔放さに免じて、許可を渡した。今日は特別よ④、と飽くまで釘を刺しながら。
七海さんはそれを聞いて、軽く拳を握りしめていた。ガッツポーズ。
私の服を借りて衣装にするらしく、少々部屋からは退散して欲しいとのことなので、リビングにいる子供たちのもとへ向かった。ひょっとしたら、私を退散させて子供たちと遊ばせるのも、この作戦の狙いの一つだったのかも知れない。
多分、家政婦さんが掃除に来たときは人見知りして縮こまっていたであろう子供たちは、私を見ると一斉に飛び付いてきた。あたーーーーーっく!!痛い痛い。「あたっく」は痛いって。
子供たちが集まって、いや襲いかかってきたところで、私は七海さんの作戦をそれとなく伝える役割を担った。
…あのね、お母さん、今日はたっくんとみくちゃんとはあんまり遊べないの。
えー!なんでだよー!今日はお仕事休みでしょ??
えー?家でもお仕事、するの?
案の定、残念がる子供たちに、今日は家でのお仕事が沢山ある旨を伝えたあと、こんなことを言った。
でもね、今日はお母さんの代わりにすっごい人にお願いして、一緒に遊んでもらえることになったの!だから…そう、煙突の前で、楽しみに待っててね!
子供たちはまだ釈然としない顔をしていたが、少しの間だけ一緒にごっこ遊びに参加していると、途端に元気になった。
だが、もうそろそろ待てない。
二人が遊びに熱中している間にこっそり抜け出し、私の部屋に戻ってくると、そこには「サンタさん」が立っていた。私の昔の服を使ってコーディネートしたにしては、様になっている。
…うーん。でも、その目元の仮面①は、いらないんじゃないかな?その仮面、そんなに好き…?②
えー!?チャームポイントだったんですけど…といいながら仮面を外す「サンタさん」。やはり、そのままの顔でその衣装の方が断然、可愛い③。似合っている。ムリヤリ感のない、流石の高校生だ。
さあ、速く行きましょ!屋上。縄は持った?
頷く七海さんの手を引いて、私は彼女を屋上へと案内した。繋いだ手は冬なのに暖かく⑦、冷え性の辛い私とは大違いだった。
ここが屋上への階段。登ったところに、煙突があるので、そこからリビングに行ける。七海さんが敬礼したのを見た私は、自身の部屋へと戻った。さて、お仕事はここからだ。
花さんが階段を降りるのを見た私は、すーっと深呼吸した。何せ、これから私は、子供たちのサンタさんに化けるのだ。この、冬にはちょっぴり寒い衣装も、子供たちを喜ばせるため。同級生にこんな姿見られたら、恥ずかしさの余りまっかっかになってバック転できる自信がある。
震える手で縄を煙突から下へ下ろし、屋上の杭にもう一方を巻き付ける。引っ張ってもほつれないことを確認すると、意を決して私は、煙突の中に入り込んだ。二階建てとはいえ、落ちないように、慎重に。
だが、日頃の運動神経は裏切らない。あと少しのところで、手を滑らせた。悴んでいたのが良くなかったのかも知れない。
ばーんと地面に叩きつけられ、痛点の鈍いお尻への打撲から捻り出される言葉は、ただ一つ。
いったーーーーーい!!
…いや、むしろ好都合だったのか。叫びを聞いた二人の純真ちゃんたちは、煙突まで駆けつけてきた。掃除するときには子供たちに顔を見られないように動いたので、恐らくこれが初対面だ。なんだなんだ?と怪奇を見る目を向ける子供たちに、恥ずかしさなんて吹っ切れた私は、高らかに宣言した。
メリー、クリスマース!良い子の貴方たちにプレゼント、サンタのお姉さんが遊び相手になってあげるよ!
…サンタさんって、白いおひげのおじいちゃんじゃないんだね。
…お、おじいちゃんのサンタさんは今、プレゼントを用意するのに忙しいから、見習いの私が来たの!そう、見習いなの!
女の子に依る斜め45度のツッコミに、ムキになって対応していると、不意に足元付近に小さな衝撃を感じた。下を見ると、男の子がおもちゃで攻撃してきていた。やんちゃ盛りの男の子は、「サンタさん見習い」に何も疑問を持っていなかった。
喰らえー、僕の必殺、シャイニングウィザード!
なーんて言いながら、凹ませると変な音が出るあの鶏のおもちゃを振り回して⑤いた。何故いきなり攻撃されるのかは知らないが、下手にこの低レベルな演出に疑問を持たれるより、こちらの方がよっぽど有難い。遊ぶ意志を見せてくれるのだから。
…出たな、バスターズめ!?今宵こそ、成仏された⑩仲間のカタキをとってーやーるー!私の必殺、ミーハーちゃん3号をお見舞いだー!
「ミーハーちゃん3号」という名前の手刀で男の子に対抗するうちに、何とか子供たちと打ち解けることが出来た。「サンタのお姉さん」と呼ばれながら、戦闘したり、二人では出来ないパーティーゲームをしたり、私が勝手に創りだすサンタさんのお話を聴かせたり。
女の子の方も、始めのバスターズの戦闘を見るうち、私と遊ぶようになった。終いには私がサンタさん見習いであることを信じてくれる、やっぱり純真ちゃんなのだ。
普段二人きりで遊んでいる同士仲良しなお互いだが、遊ぶのは賑やかな方が良いに決まってる。二人が楽しんで思いっきり笑うのを見ることができたのが、私への何よりのクリスマスプレゼントだった。
漸く準備を終わらせた頃には、すっかり夜も更け、聖夜は終わりを告げていた。本物のサンタさんがいれば、そろそろ活動を始める頃だろうか。私は「完成したプレゼント」を持って、忍び足にリビングへ向かう。
きっと、私の部屋に聞こえるくらい騒いでいた子供たちが、のこのこ寝床に向かうはずもないだろう。リビングのどこかで、疲れて眠っているに違いない。
ソファの上には、七海さんの両肩に寄せ合うように眠る二人が見えた。案の定である。七海さんも眠っているのだろうか。そっと近づくと、七海さんはまだ起きていた。
あ…花さん。準備は終わったんですね。と、夢うつつに呼び掛けてきた。起きているといっても、半分くらい寝ている。
今日は存分に散らかして良いなんて、言わなければ良かった⑨ですね。ごめんなさい。
寝言のように七海さんが謝る。確かに、リビングはトランプが散乱していたり、子供たちが描いた絵が散らかっていたり、雑然としていた。きっと子供たちの、サンタのお姉さんからの許諾を得た上の仕業なのだろう。これから、掃除しなくちゃ。うわごとのように呟く彼女の声が、寝息になるまでにはそれほどの時間を要さなかった。
遊んでくれて、ありがとう。
可愛いサンタさんへ、小さな声でお礼を送った私は、仲良く眠る三人に毛布をかけ、プレゼントを脇に置いた。
子供たち二人へのプレゼントは、クリスマスのお菓子や手編みのハンカチ。同封したサンタさんからのお手紙の作成や、手作りの包装には、些か時間がかかってしまった。七海さんへのプレゼントは、お菓子に加え、急遽用意した砂時計。「砂時計の砂は、もう落ちることはない」という宣伝文句で有名な、砂が上がっていく砂時計だ。これも、手作りの包装には時間を要した。
しかし、出来合いの包装を使うより、こちらの方がよほど、感謝を伝えられるだろう。普段はあまり遊んであげられない子供たちへの、私の愛の贈り物だ。
子供たちが寝静まった頃、役目を果たしたサンタさんは、満足気にリビングをあとにした。
おわり。(総字数3785字・要素数10+α)
女子校生で、家政婦で、サンタ見習い...さなめ。さん、どれだけ彼女に要素を組み込めば気がすむのですか...?(褒め言葉)私が創り出した「七海」というキャラクターで存分に遊んでいただいて、ありがとうございます^ ^登場人物の名前を決めたのは、実は問題文の女性の年齢に固定観念がかからないようにするためだったのですが(少女とか母とか未亡人とか)、図らずも参加者の手で作られた様々な「七海」をみることができて嬉しいです。10要素以外のタネも使っちゃう所が、技術力の高さなのでしょうねー。
いい匂いがした⑧ので、私はふらふらと引き寄せられた。
仮面①を被った少女がいる。
手には骨付きチキンが握られており、少女はそれを振り回していた⑤。
大道芸人か…。
いくつものチキンがくるくると宙を舞う。
器用なもんだ。
「今日はクリスマス・イブだよ。さぁさ、チキンをどうぞ」
客に向かって、それをぽんぽんと放り投げ始めた少女。
ひゅっと私の手元にも骨付きチキンが舞い込んできた。
空腹だった私は、無我夢中でかぶりつく。
なるほど、クリスマスには興味がなかったが良いこともあるんだな。
華麗にポーズを決めてから、芸を終えた少女が何故か真っ直ぐに私の方へと向かってきた。
少女は白くて小さな手を伸ばす。
私は、咄嗟にその手を取ってしまった。
チキンを食べたせいで油まみれだったが、少女は私の手を離さない。
無機質な白い仮面とは裏腹に、繋いだ手は温かかった⑦。
いつの間にか辺りは暗闇に包まれており、仮面だけがぼんやりと浮かんでいるように見える。
少女は空いた方の手で古い建物を指さした。
屋上付近に何か光るものがある。
光に誘われる蛾のように、私は少女の手を引きながら建物の屋上を目指した。
「あれ…は」
宝石だった。
あの日奪った、宝石。私の宝石!
「きみが好きだ②」
少女は言う。
「でも、わたしは料理もできないし。目玉焼きすらまともに作れない」
「私は生卵も好きだから。そのままのきみでいい③んだ。新鮮ならば、ほら。きみは生だって美味しく食べられるのさ」
「あなた…、ありがとう。わたし幸せよ」
何故それを、
私の声は発せられることなく。
とん、と軽く背中を押された。
私が咄嗟に掴んだのは、釣り竿にぶら下げられた翠の宝石だった。
~~~~~
少女は男が落下する様を見て、ふっと息をはく。
「胎児の記憶って、信じる?」
尋ねるべき相手は、すでに朱色の血溜りの中にいた。
翠の石がキラキラと光り、混じりあう色彩はクリスマスに相応しい。
「ママを殺したお前を…神もわたしも赦さない」
聖夜に少女、七海は産まれた。
母親が殺された、その日が七海の誕生日となる④。
身重の女性がバスルームで手首を切って自殺したが、奇跡的に産まれた子。
寝室には一枚のメモが残されていた。
『女の子よ。名前は七海がいいわ』
―――馬鹿な男。
あのメモを処分せずに逃げるなんて。
自殺ではなかった。
殺されたのだ。
女性が大切にしていた宝石と共に消えた父親は、前歴のある結婚詐欺師だった。
すぐに指名手配され、逃亡の日々を送る羽目になった男。
「ママは世間知らずで、お前みたいなクズに騙された。手にした宝石はすぐに質入れしたくせに…」
騙されるもんだね、と七海は笑った。
宝石が今どこにあるかはわからない。
流れ流れて、異国の地で顔も知らない誰かが身につけているかもね。
「渾身のイミテーション、お気に召した?」
ワタクシ、大道芸人ですから。
手先だけは器用なのです。
華麗にポーズを決め、七海はクリスマスショーを終えた。
【終幕】
多分1200文字くらい、要素⑧①⑤⑦②③④
先に申し上げておきますが、私は自称「ハッピーエンド狂」を名乗っておりますが、ハッピーエンドを作るのが好きなのであって、投稿された作品はどんな結末でも美味しくいただいているのでございます...じゅるり。犯罪要素満載の肝もさめざめするようなブラックストーリーながら、どこか少女に肩入れしてしまう、感情移入してしまう自分がいます。何かが少し違っていたら、もっと違う出会い方があったら、こんな結末にはならなかったのかな、なんて。ところで皆さまは、胎児の頃の記憶って持ってたりするんでしょうか??
まずい、遅刻だ。
焦って走るついでに駅前で購入したフライドチキンを振り回し⑤てしまう。
今日はいつものクリスマスではない。
我らが社会人クイズサークルに新たなメンバーが加入してから初めて迎える特別な日④だ。
メンバーの一人の家で今日も集まる予定だったのだが、残業にとっ捕まり今に至る。
エスカレーターを待つのももどかしい。
インターホンを鳴らすと「今開けます」と新メンバーの七海ちゃんの声がした。
「ごめんねー、チキン係が遅くなっちゃって」
「いいえ全然、むしろ私が早く来すぎたかも。お仕事おつかれ様です」
はぁー、やっぱり七海ちゃんは良い子だ、癒されて思わず頭を撫でる。良い匂いがした。⑧
「ごめん、遅くなっ…」
居間のドアを開け、目の前の光景にぶら下げたチキンをぶん投げたくなった。
明らかに出来上がっているメンバーの男2人が似合わない女装をしながらツイスターゲームをしていた。それを見ているほかのメンバーもゲラゲラ笑っている。
あああ、「今日は遅くなるかもしれないから到着次第始めてて良いよ」なんて、
あんなこと言わなければよかった⑨!!!ほら後ろの七海ちゃんもドン引きだよ!
「んー、皆あんなだしちょっと疲れたんなら自分と屋上で外の空気にでも当たる?」
「良いんですか?」「全然気にしなさんな」と玄関へUターンしながら、
「私もあんな風にみんなではしゃげれば良いんでしょうか…」
などと彼女が言うものだから思わず真顔で肩を掴んで
「七海ちゃん、きみはそのままでいい③からね」と言ってしまった。
ダメな大人のお手本を見せてしまった。反省。
屋上へ続く階段を登る途中で、
七海ちゃんの手は温かい⑦なぁ、手が冷たいと心が温かいの反対という事は嘘だな、
とまで思い手を繋いでいたことに気付いた。
いけないいけない、彼女は我々から見たら子供であるが、小さな子供では無いのだ。
それからは屋上でとりとめのない話をして過ごした。
彼女がお手洗いに行くというので、いい加減にほとぼりも冷めただろうかと居間に戻ると、
つけていた大人の仮面①にヒビが入った。
さっきの男2人が全裸になってびっくりするほどユートピアを行なっていた。
何がhoooo!だ。張っ倒すぞ。周りも止めろよ。動画は良い。あとでネタにしてやる。
「ーーおまえら、服を着ろ。それから座れ。」
その時の私は「物凄く良い笑顔で、背後に般若が見えた」(Aメンバー談)
「あ、逆らったらしぬ。と思った」(Bメンバー談)らしい。
「誰がソファーに座れっつった、床に正座だ」
2人は真っ青になって素直に床に正座した。
正座男2人を前に仁王立ちというシュールな状態で説教をしながら、
彼女が余計なモノをこれ以上見なくて本当に良かったと思った。
ちなみに後日部屋を提供してくれたメンバーから、
「妙に暗くて寒くて変な感じがした居間がクリスマスの後明るくなった」という声を聞いた。
クリスマスにアレで成仏する⑩はめになった幽霊にちょっとだけ同情した。
おしまい(約1200文字・要素①③④⑤⑦⑧⑨⑩)
そうそう、こういうの欲しかったの^ ^やっぱり脱力系ギャグって、心のオアシスだよね...なーんてしみじみと感じました。その年になってみてわかるけど、子供の時に尊敬してた社会人って、なってみると意外と心は少年のままだよね。七海ちゃんよ、世の大人って案外こういうもんだぞ。七海ちゃんはそうならないでおくれよ。いや、なってもいいけど、それはそれで面白いから。...まじめな話、絵もなく文章だけで人を笑わせるのって、相当な文章力が必要なんです。それを簡単にやってのけちゃうなんてなあ...きの子さんすげぇや!>< [編集済]
私は、幼馴染みの七海のことが好きだった。
それこそ、物心のつく前から一緒に遊んでいたからか、私はその「好き」が恋愛感情としての「好き」なのか、大切な友達としての「好き」なのか、わからなかった。
中学校に上がり、思春期の真っ盛りの中学生になって、やれ隣のクラスの誰それが可愛いだの、やれ男女バレー部のキャプテン同士が交際しているだの、いわゆる恋バナのでクラスは盛り上がっていたが、情報に疎い私にとってはあまり興味のない話だった。
一度だけ、おしゃべり好きなクラスメイトから、好きな人はいないの、と訊かれたことがあったが、特に名前を上げた記憶はない。七海のことが脳をかすめたが、彼女に七海が好きだなんて教えたら、なんと言われるかわからなかったから、特にいないと答えた。
別に嘘をついたり、隠したりしたつもりではない。
恥ずかしがって仮面被ってるんじゃないの、なんて揶揄されたが、あまり気にならなかった。①
私は七海と同じ高校に進学した。
高校に入っても、それまでと変わらずに七海と親しく過ごしていた。
受験も終わった頃のある日の昼食の時間、クラスの学級委員の子が話しかけてきた。
「お前さ、七海に付き合っている人いるか、知ってる?」
「どうして?」
「俺さ、あいつのこと、気になってたんだよね。もしいなかったら、告白してみようかなと思って」
弁当のおかずを箸に突き刺したまま、手を振って話し続ける。⑤
ハーブのいい匂いがする。⑧
「好き…なの?」②
「うん。恋人がいないなら、告白してみようかな」
私の知る限りでは、七海に恋人がいるという話は聞いたことがなかった。
そもそも私たちは、恋愛事情について話すこともなかった。
しかし……もし、ここで「いないみたいだよ」と答えたら、彼は七海に告白するだろう。
そうすれば、七海は私から離れていってしまうかも知れない。
そんなの、嫌だ。
そう思った途端、私は自分の恋心を自覚した。
気がつくと、「付き合ってるらしいよ」と嘘をついていた。
ハッとして彼の顔を見ると、「なんだ、そうなんだ」と軽く頭を下げたが、「そっか、ありがと」と言い、弁当の残りを平らげると、どこかへ行ってしまった。
私はどうして嘘をついたのだろう。
答えはわかり切っていた。
七海を取られたくない。
誰かの手に渡すくらいなら、自分のものにしたい。
心の中の「好き」が恋愛感情に変わった瞬間だった。
翌日、私は七海を屋上に呼び出した。
今考えると、昨日の件があって気が急いていたのだろう。
少し遅れてやってきた七海に、私はいきなり切り出した。
「あなたのことが好きです。もしよかったら、付き合って欲しい」
あのときの七海の驚いた顔は、忘れられなかった。
「でも…」
まさか私に告白されるとは思っていなかったのだろう。
しばらくの間、七海は目を泳がせながら何も言わなかった。
何か言わないと、と口を開きかけたそのとき、
「ごめん…あの、えっと…ごめんなさい」
言いにくそうにそれだけ言って、七海は走って去ってしまった。
1人取り残された私は、しばらくそこから動けなかった。
すぐに帰るのもばつが悪かったし、人に涙を見せるのも嫌だった。
終わってしまった、と思った。
告白なんかしなければ、今まで通りの2人でいられたのだろう。
あんなこと言わなければよかった。⑨
けれど、線を越えてしまった。
これまでの関係を崩してしまった。
明日から七海に話しかける言葉が見つからなかった。
下校時刻を報せるチャイムを聞いて、ようやく家路についた。
_______
結局、次の日から、七海とは話さなくなってしまっていた。
目が合っても、気まずそうにお互いに目を逸らしたり、学級活動でも同じ班にならなくなったり。
当たり前のように一緒にいた日々は、ぎこちないものになってしまった。
そんな七海から、久しぶりに話しかけられたのは、卒業式の前の日だった。
「あの、放課後、屋上に来て」
目を合わせずそれだけ言うと、返事を待たずに七海は走って教室を出ていった。
何の用だろう。この間の件であることは恐らく違いないが。
私はどきどきしながら、階段を登り、屋上に向かった。
そこにはすでに七海がいた。
私は平然を装って、おまたせ、と声をかける。
私に気がついた七海は、急に頭を下げた。
驚いた私に、七海はこう言った。
「この間は、急に帰っちゃってごめんなさい。まさかあなたに告白されるなんて思ってなくて、びっくりしちゃって。私もあなたのことが好きだったし、あなたもそうだとは思っていたけれど、それは恋愛感情じゃないと思っていたから」
「うん…」
「あの後帰ってから、色々考えたの。たしかに驚いたんだけど、好きって言われたのは嬉しくて。
いきなり帰っちゃった手前、なんだか気まずくて話しかけられなかったんだけど、それからあなたのことを意識するようになって、あなたと恋人同士になることについて考えるようになったの。
もし私たちが付き合ったら周りの人達にどう思われるか、なんて言われるか、とか、考えた。
でも、そんなの関係ない、あなたのことが好きだって思えた。
だから、もしあなたの気持ちが今でも変わらず、好きでいてくれてるなら、付き合ってもらえますか」
私は終始どきどきしたまま七海の話を聞いていた。
そんなに私のことを考えてくれていたなんて、思わなかった。
てっきり引かれているものかと思っていた。
七海の好きな人について聞いたことはなかったが、その中には当然のように「男」という条件があると思っていた。
私は、その対象外。そう思っていた。
七海に告白した時点で、女の私なんかと付き合ってくれるはずがないと思っていた。
たっぷり1分は黙っていただろう。
私はようやく口を開いた。
「本当に、私でいいの? 私は、女なのに…」
七海は笑って答えた。
「それはこっちの台詞だよ。私は、そのままのあなたが好き」③
「嬉しい…」
七海が手を握ってきた。
幼少期から、幾度となく繋いできた手だったが、こんなに温かく感じたのは初めてだった。⑦
「七海、大好き」
「うん、私も好き」
私たちは、初めて唇で触れ合った。
七海の唇は、柔らかかった。
④
_______
しかし、七海には心を許されても、世間がどう感じるかは別の問題だった。
大学に進学し、周囲には七海との関係は隠していたが、周りから「彼氏は作らないのか」と言われたり、家族からも「あなたはどんなお婿さんが来るのかしら」と言われたりするたびに、私は心を傷めた。
世間の常識では女は男と好き合うと相場が決まっているようで、私のような存在に、世間の風当たりは冷たかった。
この世界はどうしても、私たちにとって住みにくい。
七海も、同じような辛さを感じているようだった。
どちらかが男だったら。
私たちは次第にそう思うようになっていた。
そして、今日、クリスマスの日。
夜、どうしても会いたいと七海が電話をかけてきた。
七海は泣いていた。
聞けば、大学で出会った友達に打ち明けたところ、いじめられたらしい。
もう、我慢できない。
私たちの気持ちは一致した。
私は七海の手を引っ張って、私たちの高校にやってきた。
警備の目を盗んで、校舎に侵入する。
そしてそのまま屋上までやってきた。
私が告白し、そして私たちが付き合うことになった、屋上。
そこで何をするかは、七海も気付いているようだった。
何も言わず、私たちは抱き合う。
七海は泣いていた。
怖い? と訊くと、ううん、と答えた。
あなたが一緒なら平気、と笑顔を見せた。⑥
1ヵ所フェンスが脆くなっているところを見つけ、壁の縁に立つ。
七海の耳元にそっと囁く。
「来世でも、あなたと出会えますように」
そのまま、私たちは重力に身を任せた。
翌朝、2人の女性の死体が発見された。
隣に並んで倒れている2人の手は、しっかりと繋がれたままだった。
【完】(4999字、9要素)
[編集済]
おそらく、この課題文でみなさまの頭を悩ませたポイント、それは主人公の主語が「私」であること、だと思います。簡単に女性を想起しやすく、男性ならある程度高い年齢に設定しなければならず、文章も硬くなってしまう...問題文を短くしたぶん、そういう難しさがあってもいいかなーと考えていましたが、靴下さんの解説はそれを逆手に取った見事なストーリー展開でした。社会の目や言葉に振り回された彼女たちの恋愛の行き着く先は、たったふたりだけの逃避行。悲しくも素敵な物語でした。
12月25日
LateralThinkingWrestling
JingleHell
第8試合時間無制限1本勝負女子王座NoDQ戦
ブレイカー七海(チャンピオン)
vs
ビッグインシデント香織(挑戦者)
愛する貴女を悪即斬。 [良い質問]
「さあ今年最後のLTW主催興行『JingleHell~聖夜の決戦!キリストも裸足で逃げ出す6m×6mのリングに響く喜びの歌~』!残すところもメインイベントの女子王座のみとなりました。引き続き実況は海見戸蘭(かいけんとらん)、解説は世界最大のプロレス団体丸々井の元世界チャンピオン78バテオさんにお越しいただいてます。バテオさんよろしくお願いします」
『はい、よろしくお願いします』
「さて12月そして2019年も残りわずかとなりましたが、今月の始めにいきなりとんでもないことが起こりましたね」
『ええ、悪逆無道で知られた王者ブレイカー七海がビッグインシデント香織にまさかのプロポーズを敢行。悪即断をモットーとしてる香織選手も流石に戸惑いを隠せませんでした。その後も香織選手にしつこく求婚さる王者、痺れを切らした香織選手と遂に対戦となりました』
「香織選手は『何だかよく分からんこと言ってるが、とにかくあいつは残虐非道だ。私が成敗する』とコメント、対する王者は『長らく勝利と栄光を手にし続けたが、その中で彼女に恋をした。栄光を手放さず愛も手に入れる』とコメントしております」
『つまり王者は挑戦者が好きということでよろしいんでしょうか②』
「そのようですね。お互いに望むものは一つのみ⑥、栄光の王座に真実の愛。手にできるのは一人だけ!さあ間もなく選手入場です」
「さあまず入場するのは挑戦者のビッグインシデント香織!かねてから悪者成敗を続けてた彼女も流石に此度の奇行には戸惑っているでしょう。しかしいずれは悪の手から王座を取り戻すと思ってたからむしろ丁度いい機会だと王座への執念は耐えることはありません。完全決着を望んだ香織選手の提案により今回の王座戦はNoDQ、つまり反則なしとなっております」
『はい、そして武器持ち込みも可とされたため極めて過激な試合になるかと思われます』
「とにかく暴れ散らすファイトはむしろ王者有利と考えられますが、果たして王座を手にすることが出来るのでしょうか」
「続いてLTW女子王者のブレイカー七海選手の入場です。七海選手は以前は快活で可愛らしいレスラーと知られていましたが、最愛の母の死を切っ掛けに一変。仮面を被り非道の限りを尽くすレスラーとなってしまいました。母親も草葉の陰で心配しているでしょう」
『その残虐ファイトによって母親が望んでた女子王座戴冠を果たせたのは何とも皮肉ですね』
「当の母親は『私の死を乗り越えてそのままのあなたで王者になってほしい③』と書き遺したと言ったのは七海選手本人なんですがね。さて豹変以降お馴染みとなった喧しい入場曲に、これまたお馴染みのムチを振り回す・・・おっと」
『いつもと何か違いますね。あ、これは』
「花束だ!大きな花束を抱えている!そして鞭の代わりにチキンだ!生のチキンを振り回してる⑤!試合に勝ちプロポーズしてチキンでパーティーすることを視野に入れている!残虐で知られた王者とは思えない何ともシュールな画!」
『何というか、コメントに困りますね。丸々井にも奇抜なレスラーはたくさんいましたが、ここまで突飛なのは・・・』
「困惑しております!この寺々市民会館大ホールを埋め尽くした1100人の観客が!困惑しております!先週仮面を外して『私と一緒の仮面を被ってほしい』と香織選手に告げたとき以上に困惑しております!」
『あんな顔をした香織選手は初めて見ましたね・・・』
「あのプロポーズは確実に成功すると思ってたと後に振り返った王者。仮面が重要なアクセントだったそうです①」
『『は?』と一蹴されてましたね』
「さて、花束を脇のスタッフに渡してリングイン、そしてこれまたお馴染みの火吹きパフォーマンス!いつみても鮮やか・・・とこれは?」
『もう一回火吹きを行いましたね・・・これはオーブンでしょうか?』
「何と!王者、リングでチキンを料理しております!念入りに下味をつけてオーブンにイン!会場には何ともいい香りが漂っております⑧!」
『チキンの香りとビッグインシデント香織選手をかけたんでしょうかね』
「これには香織選手も苦笑い!こんな彼女は見たことない!スタッフも困惑しております!母親も草葉の陰で困惑していることでしょう!・・・ともかく両者リングイン完了しました。間もなくゴングです!」
「さて試合開始から30分経過しました!時間無制限一本勝負NoDQマッチ!極めて熾烈な試合が予想されてましたが、それを上回る光景が繰り広げられています!」
『はい、まさか王者がオーブンで熱々に焼けたチキンを香織選手に押し当てるとは思ってもいませんでしたね』
「そしてやはりお馴染みの鞭での攻撃の数々!王者隠し持っていましたね?」
『はい、彼女にとってキーアイテムである鞭、流石に手放すわけにはいかなかったでしょう』
「そして極め付けは蛍光灯!まるで竹刀のように香織選手に叩きつけてました」
『愛してる相手にする行為とは思えませんけどね』
「出血しながらも苦悶の表情を浮かべる挑戦者。元はと言えば今回のNoDQは彼女の提案でしたが、あんなこと言わなきゃよかったと今頃思ってるのかもしれません⑨」
『おっとしかし香織選手立ち上がりました!』
「そして蹴りの連発!王者たまらずリング外へ!そして蛍光灯を持ってトップロープへ!コーナーから叩きつけたああああ!!!ビッグインシデント香織!!飛び降りながら頭に蛍光灯を叩きつけたああああ!!!」
『これはかなり効いていますよ!!』
「王者大ダメージ!!仮面から血が吹き出している!!そして・・・おっとどこへ行くのでしょうか!!」
『場外でフォールしてもカウントされませんがね?』
「しかしNoDQのためカウントアウトもありません!挑戦者、グロッキー状態の王者を引き連れて寺々市民会館大ホールを後にします!!王者も抵抗の意思を見せますが、手を掴んでガッチリと放しません!繋いだその手は自らの血か相手の返り血か、どちらにせよ真紅に染まり生温かく感じているでしょう⑦!さて大ホールを出て・・・」
『階段を登っていますね・・・この扉は、あ屋上だ!』
「屋上だ!香織選手、王者を連れて寺々市民会館の屋上に出ました【問題文】!まさか!!止めろ!!それだけはやってはいけない!!」
『危ない危ない危ない!!!』
「誰か止めてくれ、ああああああああああああああ!!!!!」
『うわあああああああ!!!!!』
「ビッグインシデント香織!!!王者ブレイカー七海を!!!屋上から会場付近のゴミ捨て場へと放り投げた!!!高低差およそ5m!!!何と言うことだ!!!おっと香織選手さらに背を向けた!!!これはまさか!!!必殺のムーンサルトか!!!」
『嘘だろ!?死んじゃうよ!?』
「興行開始時には明るかった空もすっかり星が瞬く時間となっております【問題文】!!!ビッグインシデント香織!!!聖夜の空に!!!空に舞ったああああああああああああああ!!!!!」
『うわあああああああ!!!』
「両者動かない!!!ゴミ捨て場に倒れ伏している!!!こんなことがあっていいのか!!!」
『あり得ないよこれ』
「聖夜の決戦が!!!団体の歴史に残る一戦となろうとしてる!!!おっと香織選手立ち上がった!再び王者を引っ張って会場へ入ろうとしております!!」
『足元がね、もうまともに歩けてませんよね』
「大ホールへと二人が戻ってきた!戻ってきた!!両者ともにボロボロ!!王者に至っては虫の息!!さあ王者をリングに戻して!!自分も再びリングイン!!王者未だに立ち上がれず!!!」
『ちょっと待って!まずいよ!!』
「なんと香織選手、蛍光灯を持ってコーナーへ登った!!そして再びのムーンサルトおおおおお!!!!!カバー!!カウント!三つ!!決まったあああああああ!!!」
『すっげえ!!!』
「王座が!!!王座が動いた!!!長く続いた死闘を制したのは、挑戦者ビッグインシデント香織!!!何度も熾烈な攻撃に晒されてきた!!!何度も夢を追い続け、何度も届かなかった!!!何度も諦めかけた!!!そして今日!!!初めて報われた!!!」
『いやー本当に感動しますよね』
「試合を振り返ってバテオさん、試合を通して優勢だったのは七海選手だったように思えますがいかがでしょうか」
『そうですね、しかし一瞬の隙を突き見事な逆転勝ちを納めました。試合をコントロールされている中でも的確なダメージを時々与えていましたからね。そこも大きく影響したでしょう』
「はい、そして今年の興行はこれで終了となりますが、最後の最後で良いものが見れましたよね」
『はい、香織選手は入団当初から大きな期待をかけられてきましたが中々結果が出せず、だからこそ悪即断という徹底主義を掲げましたがそれでも苦しみ続け、それがようやく実を結んだといった感じですね。今日という日は彼女にとって忘れられない特別な日になったでしょうね④』
「全くその通りですね。さあカメラに映っているのは新王者ビッグインシデント香織、彼女の目には血に混じってたしかに光るものが見えます!さて放送時間が残りわずかとなりました。実況は私海見戸蘭、解説は元丸々井世界王者の78バテオさんでお送りしました。バテオさんありがとうございました」
『いえこちらこそありがとうございました』
「それでは興奮冷めやらぬ寺々市民会館大ホールからお別れとなります。次回は1月5日『新年だヨ!全員闘争-子年なのでトムとジェリーの喧嘩みたいな試合してみたスペシャル-』でお会いしましょう。それでは皆さんよいお年を」
<後日談>
この試合を機に改心したブレイカー七海はベビーレスラーとして活躍した後に改めてプロポーズ。これを受諾したビッグインシデント香織とタッグを組み団体ひいてはプロレス界を席巻していった。
七海の亡き母親も草葉の陰で成仏していることだろう⑩。
【了】(5000文字は行ってない)
すきすき〜!こういうの><笑 もう本当に面白くて、お腹痛いです。多くの投稿者さまの中でシチテンバットーさんがたぶん一番楽しそうに「チキンを振り回して」ます。それだけで要素選んだ甲斐があったってもんです。乱数さんありがとう!!短い問題文だからこそ、書き手さまのオリジナリティが非常に試される状況の中で、圧倒的とも言っていい個性を爆発させていただきました、アッパレ!後日談も私好みのハッピーエンドで、弥七は嬉しいです^ ^
2019/12/19(Thu)
ヘビーユーザーというほどではないが、たまに遊んでいるサイト「らてらて」にて問題文と要素から、解説を作り出すという趣旨の企画が投稿された。私自身も過去に何度か参加している。ここ数回は参加できていなかったことと、もう一つ。「七海」という名前を見て参加を決意した。
2019/12/20(Fri)
今日から冬休み。冬休みの課題を例の企画の解説を考えていた。そんなわけでスマホとにらめっこをしていた時に急に七海から電話がかかってきた。冬休みだからといってずっと寝てばっかじゃだめだよとか母のようなことを言ってきた記憶はあるが、頭の片隅でずっと企画のことを考えていたのでよく覚えていない。今度謝らないとな。
2019/12/21(Sat)
ずっと寝てた。洗った直後の布団はいい匂いがする。(⑧)あと何日で作り出さなければいけないんだ……。26日までだったか。どうせならクリスマスに出したいな。てかクリスマスって七海が家に遊びにくる日か。遊びの誘いなんて言わなければよかったな……(⑨)
2020/12/22(Sun)
クリスマスプレゼントを選んできた。
誕生日プレゼントを選ぶときにも迷ったけどクリスマスはクリスマスで難しいな。とりあえず無難な手袋を選んだけどあいつこういうの好きかな……?(②)解説の構成はある程度固まった。
2019/12/23(Mon)
課題のレポートの資料集めに図書館へ行ってきた。別にそれ以外書くようなこともないような日だった。
2019/12/24(Tue)
七海が昨日風邪をひいていたらしい。電話上の声は元気そうだが大丈夫だろうか。明日無理そうならまた明日連絡してもらう。まあ、望むのは元気になっていることただ一つだけだが。(⑥)
2019/12/25(Wed)
多くの人にとって特別な日。
七海が家に来た。ある程度風邪は治っていそうだ。無理をさせるわけにはいかないけれど、それでもこの日記を解説にしたいから、「星を見に屋上に行く」と言う名目で彼女の手を引いた。たしかにそこには雪も溶かすような温もりがあった。プレゼントされた手袋を挟んでも伝わるような。(⑦)この間電話したとき悩み事があったように思われたらしいが、作り出すのことを聞かれたら本当の連れ出した理由を言わなければいけないため濁すのが大変だった。さて、あとはタイトルを考えなきゃな……
【簡易解説】
日記をそのままここに投稿できるようにするため。
【了】
(簡易解説前までで1010字、要素5/10)
[編集済]
こんな発想もあるんですね〜。創り出すの発想の自由度はここまで広いのか...!と個人的に驚かされた作品です。これが本当の話なら、問題文と要素の通りに動かされる七海とかふぇ・もかろにさんに思わずクスリと笑ってしまいます。日記を解説にしたいという理由で屋上に連れてこられる風邪っぴきな彼女がちょっとかわいそうなような...?でも創りだすのためだから、しょうがないしょうがない。創りだす中毒者の思考って怖いな...と思った瞬間でした^ ^笑
雪やこんこ、霰やこんこ。降っても降ってもまだ降りやまぬ。
手袋を持っていなくても、隣にいる悠衣とこうして繋いだ左手は温かい*。誰もいない通学路、静まり返った雪の世界。こんな景色は小学生以来で、つい嬉しくなって歌を口ずさんだ。
「あ、なつかしいな、それ」
「悠衣も歌ったの?」
「うん、本当に降ってるとこをみたのは二回しかないけど」
マフラー越しにもそもそと喋る悠衣は、空いた左手で街路樹の雪に触れて、つめた、と小さく叫んだ。悠衣は去年の春に鹿児島から越してきた転校生だった。いつか教室で、向こうではしょっちゅう火山灰に降られていたと話してくれたことがある。雪みたいでロマンチックじゃん、なんて茶々を入れたら、結構大変なんだよと困り顔で笑っていた。年によってたくさん噴火したりほとんどしなかったりするから、個人的に「ぐずる」と呼んでいるのだそう。
大きな通りに出ると、雪の轍がずっと遠くまで平行な直線を二本引いている。街灯にぶら下がる広告は、今度やって来るクリスマスに合わせた商店のセールを知らせていた。
「あはは、頬っぺた真っ赤だね」
「そうかな」
寒さで感覚のなくなった顔に、ほんのりと火照りを感じた。私はまだひと気のない街を徒然に眺めた。柔らかな雪を踏みしめる音がどこかに存在する緊張を濁らせていた。しばらく歩くと、車の通らない交差点で赤信号に出くわした。
「七海ちゃん、赤だよ」
「あ、うん」
「もぉ、手を繋いでなかったら渡ってたでしょ!」
悠衣が笑う度に、臙脂色のマフラーがずれて白い息が漏れた。悠衣は品のある笑いかたをする。クラスの女子生徒たちはみんなぎゃあぎゃあ言って騒がしくするけど、私は悠衣がそんな風にしているのを見たことがない。
「ここの信号、結構待たされちゃうね」
「そうだね」
「あー、止まってると寒いなあ」
縮こまった悠衣が視界の端で小さく揺れていた。信号はずっと赤いままだ。
「ねえ、そろそろクリスマスだよね」
「うん。あと一週間くらい」
「欲しいものとか、ある?」
「......特にない、かな。悠衣はどうなの?」
「それは秘密」
え、ずるい。と抗議しようとしたら、信号が青に変わった。手を繋いだまま、歩き出す。私は再び通り沿いのケーキ屋や洋服屋に目を向けて、それから鼓動が落ち着いていくのを感じた。歩く速度に反比例する心拍数。欲しいもの、は、ある。たった一つだけ*。
まだ開かない店の暗いショーウィンドウに私と並んで歩く悠衣の姿が映っていた。思わず、俯いてしまった。
帰りは一人だった。本当は一緒に帰りたかったのだけれど、今日は寄るところがあると言われた。大通りの店は煌々として、夕陽に照らされた外観と合わせて燃えているようだった。
週末は悠衣とよくここに出掛けていた。デパートではお互い似合いそうな洋服を探した。少し逸れた小道の喫茶店では二人でココアを飲んだ。並んでソファに腰かけてお喋りをしたり、ときには無言でくつろいだりした。そのうちの一回、船を漕ぎはじめた悠衣が私の肩に寄りかかったことがある。不思議と心地よくてずっとそのままにしていたら、結局夜まで悠衣は起きなかった。
オレンジの光に包まれながら街中を眺めて歩く。ふと、大通りの暗がりの古書店に目が止まった。しばらく行っていなかったが、シャッターが閉まっていることは今日はじめて発見した。もしかしたら潰れてしまったのかも。
悠衣に出会うまでは友達もいなくて、高校のある日も休日も基本的に一人でいた。だから、この古書店に通ってたくさんの本を買って読んでいた。
気づけば家まであと少しだ。日の当たらない住宅街、踏み固められた雪は影に紛れて見えにくく、足を滑らせそうになる。帰ったらするべき勉強が山のように積み上がっている。それでも、どれだけやれば受かるとか、分からない。
ふと今日の昼休みのことを思い出した。男子生徒の一人がにわかに声を張り上げて、俺はカーネルサンダース!と箸で持った鶏肉を振り回し始めた*。物真似のつもりなのか、なぜかサングラスをかけていた。
あんな風にひょうきんに振る舞うのは、不安な心に仮面をして、なんとか精神を穏やかにしておくためじゃないか*。本心を叫びたいのを誤魔化しているんじゃないか。そうしないといつか、大切なものが黒く壊死してしまいそうだ。
重たい玄関のドアを開ける。お母さんが晩ご飯の準備をする、包丁の刻む音がすぐに聴こえた。金曜日の夜は少し豪勢なおかずが出る。私は靴を脱いで、まず居間の仏壇に向かった。そして、明治の板チョコが添えてある、死んだおじいちゃんの写真に手を合わせる。成仏して、今ごろは天国にいるだろうおじいちゃん*。普段なら習慣としてただ祈るだけだったけれど、最近は強く目を閉じて合掌している。
「ねぇ、クリスマスイヴの放課後って予定空いてる?」
月曜日の朝、いつもの通学路で。
断れるはずもなく、曖昧に頷いてしまった。そしてその放課後が来た。
「七海ちゃん、行こっか」
「うん」
校門を出て、手を繋ぐ。肩を寄せあって歩く。今日は一段と寒く、昼頃から雪がちらついていた。
「ホワイトクリスマスだ!」
「まだイヴだけどね」
はー、と悠衣が息を吐いた。そしてマフラーについた雪を軽く払った。いつもと同じ臙脂色だった。
「今日は特別だから*。奮発して美味しいもの食べよう」
勉強ばかりで、掃き溜めみたいな毎日だけれど。と悠衣は付け足した。あんなに勉強を頑張ってる悠衣でも本当はうんざりしていたんだ、なんて当たり前のことだった。二人で大通りを目指す。
デパートにあるレストランで、クリスマス限定のスイーツを食べる約束だった。店名はフランス語か何かで書かれていて、入り口から厨房が見えた。
予約してあった席まで移動する。忙しなく動き回るウェイター、調理器具の金属音、重なりあう話し声。クリスマスイヴの店内は活気で溢れていた。意識してしまうと、お客さんのほとんどがカップルだとすぐに気づいた。
奥の方の席に案内されてメニューを渡された。悠衣も私も一応眺めてみて、うわ高いね、とか言い合う。それからウェイターに注文を伝えて、砂糖菓子や金粉で飾られた今日限定のケーキを頬張って。楽しい時間はあっという間に過ぎた。
レストランから出ると、悠衣が手を握ってきた。
「ねぇ、屋上に行ってみない?」
「屋上?」
レストランのある階のひとつ上。あるのは駐車場だけだったはずだ。不思議に思う私の手を引いて、悠衣は階段をのぼる。
「屋上の駐車場ってあんまり、人がいなかったよね」
「うん。車出すときに人が来るだけだし」
冷たい色の照明が逆行になって悠衣の背中を黒く見せた。硬質な空間に、二人ぶんの足音がばらばらに響く。
悠衣はぽつぽつと、半分は自分に言い聞かせるように呟いた。
「七海ちゃんにね、話さなきゃいけないことがあるの」
外に出ると、強い風が全身に吹き付けてきた。このままここにいると凍えてしまいそうだ。
駐車場の縁には落下防止の壁が設置されている。悠衣は一度私の手を離してそこに近づいていき、乗り出すようにして外の景色を眺めた。私もそれに倣った。
沈みかけの夕日が狂ったように輝き、視界の下方に広がる街並み全てを鮮烈に照らしている。目に見える全てが燃えている。一人で歩いた街で感じたときよりもどうしようもなく、火の勢いを留めることはできない。
突然、焼け落ちたノートルダムの映像が脳内に蘇った。
言葉で伝わらなかった歴史は、記憶は、聖堂として生き続けていた。あの火事のあとに、何が残っただろうか。
「七海ちゃん。わたし、覚えておきたい。一緒に学校に行った通学路とか、一緒に遊んだこの街とか、全部。隅々まで」
「悠衣?何言って......」
「東京にある大学を目指しているんだ。絶対に行きたい、受かりたい。わたしには、覚悟が必要なの」
そう言って、悠衣は私を抱き締めた。何が起こっているか、分からない。何も分からない。ただ私は、悠衣と離れるのが怖くて。
悠衣の艶やかな髪がふわりと香った。いつもより近くで感じる悠衣の匂い*。私はあまりにもわがままで、ハイリターンを求めてしまった。
「好き」
「え?」
「私、悠衣のこと好き。友達としても、別の意味でも。ずっとずっと好きだった」
ひとりぼっちだった私を救い出してくれた悠衣が好き。私の隣で笑ってくれる悠衣が好き。だから私から離れないで。いつの間にか私は、悠衣の唇にキスをしていた。私の心は雨漏りを起こして。
ねぇ、悠衣は私のこと、好き......*?
「七海ちゃん」
悠衣の声ではっとする。
私は悠衣に何をした?全身が恐怖で震える。悠衣の顔を見れない。全てが終わってしまった。
私は逃げ出した。悠衣に背を向けて、全力で。
「待って!」
脇目もふらず階段を下り、転びそうになりながらデパートを出た。そしていつの間にか灰のように静まり返った街を一人で帰った。
あの日から一度も悠衣に顔を会わせていない。私が勝手に距離を取ってるだけかも知れないけれど、たぶん悠衣も私を避けている。
あんなこと言わなければ良かった*。
うっかりさん、では済まされない。悠衣の気持ちを無視して、勝手に告白して、勝手にキスをして。
後悔の日々。私のせいで屈託させてしまったかもしれない、縛ってしまったかもしれない。彼女の覚悟を汚してしまったかもしれない。私に普段通りに接してくれる、そのままの悠衣が好きだったのに*。溢れてしまった水はもう戻ってこない。涙が頬を伝った。
それからしばらく抑鬱な気分を繰り返したあとで、受験に集中するしかなくなった私はひたすら勉強した。
月日はあっという間に流れた。
あれほど心配していた大学の試験は恙無く終わった。吹雪の多かった冬は終わり、春が来た。志望校には無事受かって、私は地元の大学に通うことが決まった。
卒業式の日になった。
やはり悠衣と口を利くことはなく、私は少し心残りに思いつつ帰ろうとした。
「七海ちゃん!」
振り返ると悠衣がいた。式のドレスコードに身を包んで、それでも柔らかな印象のままの悠衣が。
「なんで......」
「七海ちゃん」
悠衣は一息つくと、あのクリスマスイヴの用に私を抱き締めた。
「えっ?!」
「七海ちゃん。わたしも、好きだよ。すぐに返事できなくてごめんね?」
「そんな、私も逃げちゃって、勝手に告白したままで、ごめん」
「わたしね、ずるいこと考えてたんだ。東京に行って、離ればなれになってもわたしのこと覚えていて欲しいなって」
微笑んで悠衣は言う。忘れるわけないじゃん、と返した。悠衣も、悠衣と過ごした日々のことも。そう言って、なぜかおかしくなって二人でしばらく笑い合った。
「あ、そういえば大学はどうだったの?ちゃんと受かった?」
わたしの気がかりは、あの日の出来事のせいで悠衣が勉強に集中できなくなることだった。しかし悠衣は、目を細めて満面の笑みを浮かべて。
「受かってた、受かってたよ!七海ちゃんは?」
「うん、私も。やったね」
それから私たちは一緒に、いつも行っていた喫茶店へ向かった。当然隣り合って座った。マスターに頼んで二人でコーヒーを啜る。
「そっか......。じゃあ悠衣は本当に東京に行っちゃうんだね」
「うん。でも、夏休みとかには帰ってくるよ」
あ、そういえば。と悠衣はハンドバッグをがさごそとまさぐる。少しして、中から赤い包みを取り出した。
「なに、これ?」
「これね、クリスマスのとき、七海ちゃんに渡そうと思って。中見てみて」
高価そうな包みを、緊張しながら丁寧に開けた。
「これって......」
「うん、マフラーだよ」
悠衣がいつもつけていた、臙脂色の。
「これ買うために、ちょっと遠くまでお出かけしたんだ。もう春になっちゃったけど、また冬になったら使ってほしいな」
その度にわたしを思い出すでしょ?と悪戯っぽく微笑む悠衣。私は泣きそうになりながら、ありがとうと絞り出した。一生忘れない暖かな冬の思い出として、私はこのマフラーを使っていくだろう。
春。雪解けの季節。大通りの雪の轍は消えて、普段どおり道路が顔を出した。その大きな道はずっと先まで続いていく。
おわり!(4800文字くらい・要素もたぶん全部使ってます(*で示した箇所))
[編集済]
こちらも私→女性+恋愛要素が織りなす、青春の物語となっております。受験勉強や卒業、進学といった学生時代特有のイベントによって徐々に引き裂かれていく二人の姿が切なく、涙なしには見られません。しかし離れることはない、思いはずっとつながれたまま。その臙脂色のマフラーを絡ませ合いながら登下校することは叶わないけれど、大切な思い出は一生、彼女たちの心の中に生き続けるのでしょう。素晴らしいストーリー、物語スープでした。
・・・◆ 2012.12.20 ◆・・・
「ねぇ弘崎さん」
「なんだ」
「僕の娘がね、言うんですよ。『パパ。わたし、さんたさんに会いたい』って」
「……はぁ」
「それでね、『サンタさんは恥ずかしがり屋さんだから会えないけど、思いっきりアピールすればちゃんと来てくれるよ』って答えたんです」
「アピールってなんだ」
「それを弘崎さんに相談したくて」
眉間に深く皺が刻まれるのが、鏡を見なくともわかった。きっと俺は今、ひどく面倒臭そうな表情をしているのだろう。
「七海がね……あ、僕の娘です。娘が、『さんたさんにあぴーる計画』を打ち立てていて。パパ、どうしたらいい?って相談してきたんです。どうしたらいいと思います?」
「知らん。パパはお前だろう」
「弘崎さんは僕のパパみたいなものですから」
眉間の皺以上に深い溜息が漏れる。河合の不可解な言動にはもうとっくに慣れたはずだが、俺は毎回ご丁寧に調子を狂わされてばかりいる。
「……屋上でチキンでも振り回せばいいだろ」
「屋上でチキンを振り回す、ですか?」
「あぁ」
「いいですね、それ。最高です」
ぱあっと表情が明るくなる河合。しまった。そう思う間もなく、奴の背中はドアの向こうへと消えていった。
街の外れの小さな事務所。
窓の外では、ちらちらと雪が舞っていた。
・・・◆ 2012.12.24 ◆・・・
「弘崎さん、メリークリスマス」
「…………メリークリスマス」
「どうしたんですか、浮かない顔して」
「お前は随分と浮かれてるな」
「だって、クリスマスですよ?」
真っ赤なサンタ帽を被ってやたらとボリューミーな白髭をつけた河合を前にして俺は頭を抱えた。
「弘崎さん、仕事早めに切り上げてパーティーしましょ。弘崎さんちで」
「却下」
「どうして」
「その言葉そっくりそのまま返す。どうして俺の家なんだ?」
「だって弘崎さんとこのマンション、屋上開放されてるじゃないですか」
「屋上?」
「僕、七海連れて行きますね。あ、チキンはちゃんと僕が用意しますから」
そこまで聞いて、俺の中でピンと繋がった。先日の発言を思い返す。そしてまた頭を抱える。
……あんなこと、冗談でも言わなければよかった。[⑨]
・
・
・
「弘崎さん、お疲れさまです。こんばんは」
「こばんは」
「…………あぁ……こんばんは……」
今年6歳になったという河合の娘・七海も、赤いサンタ帽を被ってやたらとボリューミーな白髭をつけていた。
髭はいらないだろう。
そう言おうとしたが、どうやら本人は気に入っているらしかったので何も言わずにおいた。
やや垂れ下がった目元が河合によく似ていた。
夜7時を過ぎた頃、辺りはすっかり闇に覆われていた。
小さなホールケーキを3人で分け合って食べる。
河合はきっとチキンだけ用意してくるんだろうと思って、事務所からの帰り道に近くのケーキ屋で俺が購入したものだ。
案の定、河合はチキンだけを持ってきた。
思いがけないケーキの登場に、河合と七海は目を輝かせてはしゃいだ。
6歳児二人を相手しているような気分になった。
「弘崎さん、そろそろやりましょう」
「やろぉ」
「屋上か」
「はい。さんたさんにあぴーる計画、です」
「です」
「……寒いから、ちゃんと上着着て行くぞ」
チキンを持って屋上へと向かう。
たまに一人でタバコを吸いに来ることがあるが、人と屋上に来るのは初めてだった。
もちろん、だれも居なかった。
「う~、寒いですね」
「さぶ!」
「いいか、一瞬でアピールしてすぐ帰るぞ」
そして俺たち三人は、寒空の下、ぶんぶんとチキンを振り回した。[⑤]
快晴の夜空には無数の星が瞬いていた。
「さんたさぁ~~ん、きてね~~~」
「きてくださいね~~~~」
6歳児二人(うち一人は見た目30代後半)がものすごい勢いでチキンを振り回している。
警察が通りがかったら職務質問だけでは済まされないかもしれない。
俺はそんな二人を横目にチキンをかじった。
冷たい空気にさらされて冷えたチキンは、思いのほか美味しく感じた。
・・・◆ 2015.12.24 ◆・・・
あれから3年。
俺は、七海の手を引いて、屋上へと連れ出した。
今日は、特別な日だ。[④]
「さんたさん、今年はくるかな」
「……来てもらうためにアピールするんだろ」
スーパーで買ったチキンを二つ持って、星空を見上げる。
ひとつを七海に渡す。
七海は、脱臼してしまうんじゃないかと心配になるくらい、大きく大きくチキンを振り回した。
去年は、サンタクロースが来なかった。
あぴーるしなかったせいかな、と七海はうつむいた。
サンタクロースが居なくなったせいだ、とは言えなかった。
言えなかった。
今日は特別な日。
七海のサンタクロースが、居なくなった日。
「ひろさきのおじちゃん」
「なんだ?」
「さんたさん、くるかな」
「こんだけ振り回せば、さすがに来るだろ」
「わたしね、さんたさんに、頼みたいの」
「……何を?」
チキンを振り回していた手を止めて、七海はぽつりと呟く。
「パパにあいたい」
まるでサンタクロースに呼び掛けるように、七海は空を仰いだ。
「かわいいお洋服も、くまさんのぬいぐるみも、みんなが持ってるゲームも、いらない。パパにあいたい、他になにもいらない」[⑥]
喉の奥が凍りついたように、俺は何も言えなくなった。
ただその小さな手を握ることが精一杯だった。
冷たい空気にさらされた七海の手は冷たいはずで、
だがしかし、思いのほか温かかった。[⑦]
どうやら七海の手以上に、俺の手が冷えていたらしい。
どうせなら、洋服やぬいぐるみやゲームを欲しがってくれたらよかった。
そうすれば、今年七海のもとにサンタクロースが訪れることは可能だった。あくまでも仮の、だが。
しかし七海のねがいごとを聞いて、今年も彼女のもとにサンタクロースが訪れることはないと知った。
彼女のねがいごとを叶えてやれるサンタクロースは、もう居ない。
『こんだけ振り回せば、さすがに来るだろ』……なんて、
あんなこと、冗談でも言わなければよかった。
-end-
【簡易解説】
ある年のクリスマスイブの夜に、同僚の男(河合)とその娘(七海)とともに、『サンタクロースに来てもらうためのアピール』として屋上でチキンを振り回すことを実行した男(弘崎)。
数年後、河合が死んでしまい、七海のもとにサンタクロースが来なくなった。
そんな七海ともう一度サンタへのアピールをするため、弘崎は七海を屋上へと連れ出した。
【使用要素】
④⑤⑥⑦⑨
【文字数】
約2800字
[編集済]
やはり、問題文を作った本人としましては、「屋上へ行った理由」を大切にして欲しいという思いが強くありました。他のどこでもない「屋上」という場所、そこでないといけない理由はなんなのか?という問いに対して「さんたさんにあぴーる計画」はまっすぐに答えてくれました。チキンを振り回しても大丈夫、そして空に一番近い場所。サンタにあぴーるという言葉の裏に、彼女の真実の願いが見え隠れする。もしかして七海はもう気づいているのかもな...なんて想像の膨らむ物語でした。 [正解][良い質問]
今日は、特別な日。④
聖夜である今日だけは。
愛する娘と、ずっと一緒に…
いつもよりも街が明るく彩られ、子供のはしゃぎ声が聞こえてくる。今日は12月24日。クリスマスイブでも仕事で、本当は今すぐにでも帰ってベットに横たわりたいが、今日は一年に一回だけの日。ちょっとだけ我慢して、イルミネーションを眺めながら少し遠回りをする。
街中を外れたところにある小さな公園。昔は娘とよく遊んだ、思い出の場所。感傷的な気持ちに浸っていると、ふいに子供の泣き声が聞こえてきた。すべり台の下でうずくまっている女の子がいる。
「大丈夫?こんな時間にどうしたの?」
「…ママと、ケンカしたの。ママが七海にいっぱいおこったから、おうちとびだしてきたの。」
だんだんと寒さが増してくる時間帯。ずっとここにいたらこの子が凍傷になってしまう。
「七海ちゃん、でいいのかな?お家の場所わかる?お姉さんが送ってあげよっか。」
「…いい。おうちにかえってもママおしごとでいないの。きょうはいっしょにごはんたべようっていってたのに。やくそくやぶったママがいけないもん。」
「そっか…。でもずっとここにいたらお腹空くし寒いよ?」
「…」
「…お姉さんの家でご飯食べてく?本当は良くないと思うんだけど…。お姉さんにもちょうど七海ちゃんと同じくらいの女の子がいるの。でもチキンもケーキも食べられなくて、余ってるの。どうかな?」
「……いいの?」
「うん。七海ちゃんが良ければ。」
「おねえさんありがとう!」
「じゃ、行こっか!」
繋いだ手はとても小さくて、あたたかい。⑦
「ねえ、おねえさん。ママは七海のことすきなのかな…?」②
「どうしてそんなことを訊くの?」
「ママは七海とあそぶやくそくしてもきゅうにおしごとがはいってどっかいっちゃうの。七海のこときらいなのかな…。七海よりおしごとのほうがだいじなのかな…。」
「…お父さんは?」
「いないの。七海があかちゃんのときからいないんだって。」
「そっか…。お母さんはね、七海ちゃんのためにお仕事してるんだよ。これから七海ちゃんは学校に行ったり好きなこともいっぱいできるようになる。でもそれにはお金が必要なの。お母さんは、七海ちゃんがこれから先ずっと楽しくいられるように、頑張ってるんだよ。」
「うん…なんかむずかしいね。」
「そうかもね。でもね、これだけは分かって。子供のことが嫌いな親なんていないの。お母さんはちゃんと七海ちゃんを愛してるんだと思うよ。」
「わかった…。七海はもっとおりこうにすればママはいっぱいいっしょにいてくれるかな?」
「ううん。そのままの七海ちゃんでいいの。③ママはわがままを言う七海ちゃんのことも、きっと好きなんだよ。」
「そっかぁ。ありがとう、おねえさん!」
「どういたしまして!」
それから私の住んでいるちょっとボロいアパートに着いた。
「…きたないね。」
「…そういうことは言わなくていーの。」
今朝作って冷凍しておいたチキンとケーキをテーブルに広げると、七海ちゃんの目がキラキラしてきた。
「いいにおーい!⑧これ、たべていいの…?」
「うん、もちろん!」
「「いただきます!」」
「七海ちゃんはお行儀がいいね。」
「そうかな?」
「うん。私の娘に比べたらね。」
いつかのクリスマスに娘に初めてチキンを買っていったとき、娘はチキンを振り回して海賊ごっこしてたっけ。⑤あの時は、本当に楽しかった。
「ねえねえ、おねえさんのむすめさん?はどこなの?」
「…今は会えないところにいる。でも七海ちゃんはもうすぐ会えるかもね。」
「ほんと!いっしょにあそびたいなぁ。」
「!!一緒に遊んでくれるの…?娘の友達に、なってくれる?」
「うん!七海ねーともだちいっぱいほしいの!」
「それは良かった。ありがとう!」
ーーーーーーーー
「あーおいしかった!」
「そう言ってもらえて嬉しいな!」
「…なんか、たべたらねむくなってきちゃった…」
「………ねえ、七海ちゃん。屋上でイルミネーション見ない?」
ーーーーーーーー
「…きれい…だね…」
「そうだね。」
繋いだ手は、やっぱりあたたかい。
娘とも、もっと繋いでおけば良かった。最後に繋いだのはいつだっただろう。もう、覚えていない。
「…この、おはな、なーに…?」
「これはね、献花って言うんだよ。数年前にここから落ちて亡くなった私の娘のために綺麗なお花をいっぱい用意するの…ってもう寝ちゃったか。」
どうやら睡眠薬がよく効いたようだ。七海ちゃんの体はとても軽くてすぐに持ち上げられる。
ここの屋上は娘が落ちてから危険性が見直され、高い柵ができた。それにもかかわらず、毎年子供が亡くなる。娘と同じくらいの歳の子が。
娘は次の年から小学校に通うはずだった。亡くなった年のクリスマス、何が欲しいか訊いたら、「ともだち!いーっぱいほしいの!」と答えた。何度訊いても同じ答えが返ってきた。しかし、クリスマスを目前にして亡くなった。娘のたった一つの望み。⑥私が叶えてあげなくて、誰が叶えるのか。
「バイバイ七海ちゃん。あっちで娘と友達になってね!」
今年もこれで達成だ。七海ちゃんがちゃんと成仏して娘のもとへ行けることを、心から願っています。⑩頑張ってね、七海ちゃん。
さて、下から悲鳴も聞こえてくるしそろそろ部屋に戻ろうっと。
私の夫は警察官で毎年うまくやってくれているようだから何も心配はいらない。
今年も良いプレゼントが見つかってよかった。
メリークリスマス。
空から仮面を被った少女が一部始終を見ていた。①仮面の下の顔には生々しい傷痕が広がっているが、どこか女に似ている。
「…友達が欲しい、なんて言わなきゃよかった。⑨
………メリークリスマス、お母さん。」
【fin】2293文字・全要素使用
簡易解説
聖夜に屋上から転落死した娘のために、友達になってくれる子供を探していた私。
家出していた七海を家に招き、屋上から落とした。
[編集済]
「親の愛情」をテーマに作り出された作品。私が最初に掲げた通り、「子供のことを思わない親なんかいない。」という言葉はまぎれもない真実であると私は思いますしそう願っています。それが行き過ぎると、こうなっちゃうのかあ...最後に登場した仮面の少女の気持ちとは逆行して、この母親はきっと同じことを繰り返していくのでしょう...それは娘のためか、それとも贖罪なのか。議論は絶えないと思います。ウミガメのスープが本来持つ「ブラック性」を上手に表現できています。意外と好き。
腹をすかせた猫がいた。
クリスマスに焼かれたチキンの匂いにつられて私の家に忍び込んだが、ちょうど訪問してきた彼女に見つかってしまって驚き、木にのぼったまま降りられなくなってしまった。
私はさすがに助けようと思い、チキンを振り回しながら猫をおびき出して捕まえる作戦に出たが、誘い出された猫の重みで枝が折れかけ、今にも落ちそうな状態に。
私は彼女を連れて一緒に木と同じ高さである屋上まで行き、落ちかけた猫の手(前足)をギリギリ掴むことに成功。そのまま引き上げて、猫を救出した。
その猫は、ナァーナァーやミィと鳴くために七海と名付けられ、今は家に住む猫として家族や彼女に可愛がられている。
②猫はたぶんチキンも好き…? だと思います。実際どうなのかは猫を飼ってる人に訊きたいです。
④クリスマスなので特別豪華な料理が振る舞われています。
⑤チキンを振り回して木から降りられなくなった猫を助けようとしています。
⑥私も彼女も両方、猫の無事を願っています。
⑧猫がいい匂いにつられます。
⑪なお、「私」=この解説を作った人ではありません。なので決して「クリスマス、俺今日家に一人なんだよね」とか言って彼女を家に連れ込んだりなぞできるはずもありませんので、ご安心ください。
⑫あと、文字数は大丈夫です。
以上ですニャ🐈
要素を後日談や作者の感想なんかで使っていくスタイル、私は好きです。しかも全てがそちらに振り分けられているならば、個性という意味で完璧、他の作品と比べても引けを取らない存在感でしょう。また人読みになってしましますが、とろたくさんといえば長編物語の中で紡がれる素敵な解説文がお得意と聞いておりますので、この短さにびっくり!とろたくさんはみじたくさんだった...?と読者への裏切りも完璧です。『投票外作品』も楽しみにしておりますよ〜!
投稿期限を過ぎても、『投票対象外』として作品を質問欄に載せていただくことは可能です。しかし匠・エモンガ賞についてはサイト内のアンケート機能にて集計を行う予定ですので、そちらにエントリーすることはできなくなります。どうかご理解くださいませ。
【簡易解説】
フラグが立ったから。
【解説】
―――☆第四章 はじまり☆―――
クリスマス・イブ。結局、誰とも約束がないまま迎えてしまった。
サンタさんが来る、なんてことは高校生にもなってさすがにもう信じていないけど。
「七海、結局今日はなんの予定もないの?」
「由梨ちゃん。うん、なんていうか……」
[選べなくて]
>[いい人がいなくて]
[静かに過ごしたくて]
「いい人がいなくて」
「はー、あれだけ選りどり見どりなのにねぇ」
「そういうのじゃないよ」
声をかけられなかったわけではない。
だけど、この人、という人がいなかったのだ。
それも贅沢な悩みだと言われてしまうのだろうか。
「じゃあ、今日家で一人なの?」
「うん……お父さん、今日も遅くなりそうって」
「もったいない! クリスマス・イブだよ? しかも終業式だよ? こーんな特別な日に一人なんて駄目だよ! ……よし決めた、今日はうちにおいで」(④)
「え、でも……由梨ちゃんは家族で過ごすんじゃ」
「へーきへーき、朔也だって七海なら大歓迎だよ」
[やっぱり悪いよ]
>[お言葉に甘えて]
「じゃあ……お言葉に甘えさせてもらおうかな」
「そう来なくっちゃ!」
☆☆☆☆☆
そうして迎えた放課後。
お父さんにも連絡をして、由梨ちゃんの家に向かう。
「お母さんも楽しみにしてるって。料理もたっぷりあるから、遠慮しちゃダメだよー?」
「うん。わたしも楽しみ」
「ふふ、私も、クリスマスに七海と一緒に過ごせるなんて思ってなかったよ」
由梨ちゃんの家にはもう何度か来ているし、夕食をごちそうになったこともある。
でも、やっぱりクリスマスは。
……ううん、駄目。
歓迎してくれるって言っているんだから、遠慮したらかえって失礼だよね。
家に入ると、由梨ちゃんのお母さんが笑顔で迎えてくれた。
「いらっしゃい。お父さんももうすぐ帰ってくるって言っていたから、リビングか由梨の部屋で待っていてちょうだい」
「はい、ありがとうございます」
「荷物、私の部屋に置いてこよ」
「うん」
由梨ちゃんの部屋は玄関のすぐ横だからキッチンやリビングは通らない。それでもここまでいい匂いが漂っていた。(⑧)
由梨ちゃんのお母さんの料理、とっても美味しいんだよね。
部屋にバッグとコートを置かせてもらう。
由梨ちゃんは部屋着に着替えて、わたしもブレザーを脱いでパーカーを借りた。
そのまま部屋でおしゃべりしているうちに由梨ちゃんのお父さんが帰ってきて、リビングに呼ばれる。
「あ、あの、準備、手伝います」
「あら、気にしなくていいのに。じゃあこのお皿運んでもらえる? ほら、由梨はこっち」
「はーい」
ダイニングテーブルの上はあっという間にご馳走でいっぱいになった。
サラダにシチュー、バケット。チキンは朔也くんのリクエストで買ってきたものらしい。
まだ年長さんの朔也くんには食べるのが難しそうだけど、よほど嬉しいのかチキンを振り回してはお母さんに怒られていた。(⑤)
それを見て、由梨ちゃんもお父さんも笑っている。
賑やかな食卓。まさに『家族団欒』といった光景で。
「七海」
「え、あ、なに?」
「手、止まってるよ。もうお腹いっぱい?」
「あ、ううん、そういうわけじゃ」
いけない、考えごとをしてしまった。
パタパタと手を振ると、お母さんが笑って言ってくれる。
「遠慮しないでいいけど、無理もしないでいいのよ? それに、ケーキのためのお腹を残しておいてもらわなくっちゃ」
「ケーキ!」
朔也くんが目を輝かせる。
「まだ早いよ。ね、七海?」
「うん、お料理、とっても美味しいです」
「ふふ、ありがとう」
☆☆☆☆☆
楽しい時間が過ぎるのはあっという間で。ケーキまでご馳走になって、いつの間にか九時を回っていた。
由梨ちゃんのお父さんは車で送ろうか、と言ってくれたけど、そんなに遠いわけでもないから断った。
さすがにそこまでお世話になるわけにはいかない。
「遠慮しないでって言ったのにー」
「そういうわけにも行かないよ。ただでさえ、あんなにご馳走になっているんだから」
「もう、七海はまじめだなあ」
由梨ちゃんはぼやきながらコートを羽織る。……あれ?
「由梨ちゃん、出かけるの?」
「んー、ちょっとね」
>[こんな時間に……コンビニ?]
[学校に忘れ物でもした?]
[もしかして、わたしの家?]
「こんな時間に……コンビニ?」
「もっと近いとこ」
由梨ちゃんの家からコンビニまでは徒歩3分。それより近くになにかあったっけ。
首を傾げつつも、わたしも自分のブレザーとコートに着替えて荷物を持つ。
「今日はご馳走様でした」
「いいえ、またいつでも遊びに来てね」
「はい、ありがとうございました」
「で、由梨はどこに行くの?」
「ちょっとそこまで送ってくる。すぐ戻るから。じゃ、いってきまーす」
由梨ちゃんがドアをあけるので、あわててお母さんに頭を下げて追いかける。
エレベーターホールで由梨ちゃんはボタンを押して待っていた。
「……上?」
「うん、あ、来た。ほた、乗った乗った」
エレベーターに乗り込むと、由梨ちゃんは最上階のボタンを押した。
「ねえ、どこに行くの?
「行けばわかるよ」
マンションのエレベーターだから途中階で止まることもないまま、最上階に着いた。
「ほら、こっち」
由梨ちゃんはわたしの手を取って、ぐいぐいと歩き出す。
その先にあったのは、階段だ。
エレベーターはこの階までだけど、階段は上に続いている。
わたしは手を引かれるがままに階段を上がった。
階段は外に面しているから冷たい風を感じるけど、繋がれた手のひらは温かかった。(⑦)
突き当たりのドアを由梨ちゃんが開ける。
そのまま連れ出された、そこは。
「……わあ」
一面の星空。
たくさんの星が、きらきらと瞬いている。
「凄いでしょ。他に高い建物がないから、灯りも届かなくて星がよく見えるんだ。七海にも見せたくって」
「すごい……すごくきれい。ありがとう、由梨ちゃん」
「いーえ。……うん、そのままでいいよ」(③)
「え?」
首をかしげるわたしに、由梨ちゃんは笑ってつづける。
「七海はさ、そうやって笑ってるのが一番いいよ。なーんか最近の七海、窮屈そうに見えたからさ。……今日予定ないって聞いて、ホントはちょっと安心したんだ。最近、色々声掛けられてるでしょ? もちろん七海が好きで行くなら全然いいんだけど、押し切られるんじゃないかーって。ごめんね、勝手だね」
そんなこと、考えていたなんて。
最近、いろんな人と関わる機会が増えて。
楽しいことも、大変なこともたくさんあった。
そういえば、わたしが辛いとき、由梨ちゃんはいつも声を掛けてくれた。
「勝手なんかじゃないよ。ありがとう」
ああ、涙が出そう。
由梨ちゃんは苦笑して、またわたしの手を握った。
「もう、泣かないでよ。ほら、もう遅いから帰ろ?」
☆☆☆☆☆
階段を降りて、エレベーターに乗る。
八階で由梨ちゃんと別れる。
ひとりになるのは、なんだか久しぶりの気がする。
そんなはず、ないのに。
駅まで五分。電車で十五分。駅から家まで十分。
そろそろお父さんも家に帰っているかな。
明日から冬休み。
次に由梨ちゃんと会えるのは。
ふ、と足が止まる。
あれ、あれ、もしかして。
わたし、由梨ちゃんのこと――。
>[好き、なのかもしれない](②)
―――☆第四章 おしまい☆―――
【攻略方法】
乙女ゲーム『星の別れ道』では、
・第三章終了時点で攻略対象の男性全員の好感度が50%以下である
・誰ともクリスマスの約束をしない
ことで第四章において友人・由梨の攻略ルートが開かれる。
ここで適切な選択を行うと、第五章より由梨ルートに入ることが可能。
(使用要素:②③④⑤⑦⑧、3130字)
[編集済]
簡易解答が本当に簡潔で、すっきりしていていいですねー!><ゲームの中の出来事である、というのも作中作の中では斬新でおもしろーい!!読み進めてく中で、自分が本当にゲームをしているのか、と錯覚してしまうのは文章中に盛り込まれた「コマンド」のせいなのでしょうね〜素晴らしい発想です地の文と言葉のバランスも良く、サクサクと読み進めていけるのは「解説文である」という面からしても好印象、いや好感度アップです!あ、やべ、好感度あげちゃうと由梨ルートにはいけないんだっけか...><
ショッピングモールでなにをするでもなくふらふらしていたら、ひとりの女の子と目があった。
…間違いない、あの子は七海だ。
七海は七年前に死んだ私の娘だ。
もちろん、実は七海が生きていたと言いたいわけではない。
あの子は七海の生まれ変わりだ。私にはわかる。
成仏できずこの世にとどまってさまよっているのではないかと心配していたが、無事に生まれ変わっているようだと安心する⑩。
私のことは覚えているだろうかとあの子に近づいてみる。
七海が好きだった匂い袋をかばんから取り出しあの子の気をひいてみる②⑧。
匂いに気付き笑顔をみせる姿は、やはり七海なのだという確証を私にもたらした。
再び目が合った。私が手をふると、七海も手を振り返してくれた。
その時、今まで聞き流していた店内の音楽がふと耳に入ってきた。
『あわてんぼうのサンタクロース』
……そうか、今日は12月24日、明日はクリスマス④。
夜中の枕元に届けられるはずのプレゼントを、あわてんぼうのサンタクロースが、今、わたしにくれたのだ。
そうひらめいた瞬間、私は七海の手を引いてエレベーターに飛び乗った。
七海が戻って来てくれたらと何度願ったことだろう⑥。あの時と違って温かい手の感触に嬉しさが込み上げる⑦。
望みを手にした私は七海を連れて家に帰るために、屋上の駐車場へ向かった。
おわり
使用要素
②④⑥⑦⑧⑩
文字数
538文字
[編集済]
自分の娘と信じ込み、錯綜&暴走するウミガメおじさんの誕生です。温かな手の感触という言葉が絶妙に怪しい雰囲気を出していて、ブラックストーリーとして完成度の非常に高い解説文となっております。ん、いや待てよ...?もし本当にあの子は七海の生まれ変わりで、本当に嬉しくて手を振り返したのだとしたら、おかしいのはウミガメおじさんじゃなくて私の方なのか...?頭がこんがらがってきたので、弥七は考えることをやめました٩( ᐛ )وパア 七海が幸せならそれでいいや...。
俺の名はカメオ。俺のクラスメイトには七海という子がいる。
俺と七海は去年のクリスマスイブの日に恋人になった。そして今日はクリスマスイブ。つまり世間にとっても俺と七海にとっても今日は特別な日でもある(4)。
ところで、俺と七海が恋人になったきっかけを聞きたいと思う人もいるだろう。これからその話をしよう。
それは1年前の12月のころだった。俺は七海とは昔から幼馴染で友達からは「実は好きなんじゃないの?」とからかわれるぐらいの関係でいたのだが、あることが気になっていた。それは彼女が12月になるとまるで仮面のように表情がなくなり、それがクリスマスの日に近づくほどひどくなることだった(1)(2)。
ある時。俺は七海にその理由を聞いてみることにした。
「どうしたんだ七海?いつも12月になるとお前表情無くなるよな?何があったんだ?」
「な、何にもないわよ!」七海はこう言って廊下に出た。
あんなこと聞かなければよかったかな、俺はそう思いつつもやはり七海が気になった(9)。
次の日、俺はこっそり七海の後をつけてみることにした。望むことは1つ、なぜ七海がこの時期になると表情が無くなるのかを知りたい、それだけだった(6)。
しばらく七海の後をつけると、七海はある花屋の前で止まった。俺はこっそり電柱に隠れた。すると七海は花束を買った。七海は花屋を出ると、七海の自宅とは反対方面に向かっていた。いったいどこに行くんだろう?そう思ってさらに後をつけると、七海はあるビルの建物の目の前で立ち止まった。そして七海は花束を病院の玄関前においてこういった。
「お父さん、私のせいでこんなことにさせちゃってごめんね。」
俺はビルの隣の店の看板に隠れてこの様子を見ていた。おや、七海が出てくるぞ。さて行くか。すると・・・・。
「痛いっ!」
俺は石に気づかずに転んでしまったのだ。
「ちょっとカメオ君!」
「七海!?」
「いったい何をしているの?」
俺は七海にこれまでの経緯について説明した。
「そう・・・・そんなに私のことが心配なのね。そこまで気になるのなら仕方ないわ。特別に教えてあげる。私ね。お父さんを今から5年前のクリスマスイブの日に亡くしたの。このビルはお父さんが働いていた会社が昔あったのよ。でも5年前の11月にその会社が倒産したの。それからお父さんの生活が荒れるようになってしまったの。それで私、とても怒ってお父さんに『こんなお父さんなんていらない!』って言ってしまったの。そしたらね、お父さんはここで飛び降り自殺したの。だからこの時期になるとそのことを思い出してとても辛くなるし、何より私のせいでお父さんは自殺したから・・・。」
俺は七海の話を聞いて過去の彼女が受けた痛みや悲しみ、七海自身への怒りを感じるとともにあることを提案したくなってきた。
「なあ、七海。クリスマスイブの日に俺と一緒にこのビルの屋上へ行ってみないか?こう見ても俺は霊感が強いんだよ。お父さんは自殺ってことはもしかしたらお父さんの地縛霊がビルにいるかもしれないと思っているんだ。もしかしたら俺の霊感を使ったらお前は幽霊のお父さんに会えるかもしれないぞ?」
「えっ。それ本当なの?」七海は困惑した様子だった。そりゃそうだ。いきなり地縛霊がどうとか霊感がどうとかいきなり言われても意味が分からないだろう。それでも俺は七海がビルに来ることを信じ、こういった。
「取りあえず、クリスマスイブの日にこのビルの前で待ってるぞ。」
そしてクリスマスイブの日がやってきた。俺はビルの管理人にどうしても屋上に行きたい理由があるといって許可をもらい、朝早くからビルの前にいた。
しかしそれから昼、夕方と過ぎても七海は来ない。
「やっぱり、俺って信頼されていないのかな。」そろそろ日も暮れて聖夜になろうとしていたその時だった。
「来たわ・・・。」
それは七海の声だった。
「七海、来たんだね。」
「あの後考えたの。私は今までお父さんの自殺に本当に向き合ってきたんだろうかって。それで思ったんだ。たとえ非科学的でも私はお父さんの自殺に本当に向き合う必要があるんだって。」
「そうか、じゃあ今からビルの屋上へ行くか。」
エレベーターを降りて屋上へつながる非常階段へ行くと、俺は七海にこういった。
「手、つないでいいか?寒いだろ?」
「いいわよ。」
そして俺は七海の手をつないで階段を上り、屋上のドアを開けた。外は寒かったが、つないだ手は温かかった(7)。
俺は屋上でさっそく、七海の父の霊を呼ぶことにした。
「お前の父さんの名前ってなんていったんだ?」
そういった質問を行いつつ、幽霊を呼ぶ儀式を進める。しばらくすると、俺の隣に中年の顔に傷を負った男がぼんやりと見えてきた。俺はその中年の男に質問した。
「あなたは、七海さんのお父さんですか?」
「そうだ、ここから飛び降りたせいでこんな姿になってしまったが・・・。ところでお前の隣にいる女の子は俺の七海か?」
「ああ。今から七海さんにもあなたの姿が見えるようにします。」
しばらくして、七海にも父親の姿が見えるようになると、七海はこういった。
「お父さん!本当にお父さんなの?」
「そうだよ。」
「お父さん、あの時あんなことを言ってしまってごめんね。私がお父さんのことを責めたからお父さんは自殺して・・・。」
「違うよ。」
「えっ。」
「あの時、お父さんも会社が倒産して気持ちの収拾がつかなくなっていた。それでお父さんの生活も荒れるようになってしまった。それであんなことをお前に言わせてしまった。お父さんはその時すごく後悔したんだ。お前をこんな風に思わせるようになってしまったって・・・。そしてお父さんが死んでから辛い思いをしていないかすごく気になっていたんだ。」
「私、すごくつらかったよ。泣きたくても私のせいでお父さんを自殺に追い込んでしまったんじゃないかって思って泣けなかった。」
「お前悲しかったら素直に泣いていいんだぞ。そのままの七海がお父さんは好きだぞ(3)。」
「お父さん・・・。」
七海が泣き出すと、七海の父の霊はゆっくりと空に向かっていくように消えていった。きっと成仏したのだろう(10)。
「どうだった?」七海の父が成仏した後、俺は七海に聞いた。
「良かった・・・。お父さんが死んでから私のせいじゃないかってずっと思っていたし、お父さんに会えないのが悲しかった。でも幽霊でも今日お父さんに会えてそして話せた。それだけでも私にとっては最高のプレゼントだったわ。カメオ君。今日はあなたが私のサンタね!」
「そうか。なあ、七海。そこまで言うのなら俺と付き合ってもいいか?」
「いいわ。こんなプレゼントをあげたあなたは本当に最高の人よ。」
こうして、俺と七海は付き合うことになったのである。
そして俺と七海は今日、七海の家に誘われて幸せな時間を過ごしている。今七海は笑顔でフライドチキンを作っている。1年前の彼女なら考えられなかった変化だ。おっと、揚げたてのチキンからいいにおいがする(8)。そろそろチキンも完成するのだろう。さて、彼女と出来上がったチキンを振り回しながら楽しく食べるとするか(5)。(終)
霊感、霊媒師、シャーマン...「幽霊」という要素が出ていたのにも関わらず、こんなキャラクターが出てくるとは思っても見ませんでした...。サンタさんからの贈り物は必ずしも物だけとは限らない。数ある霊が登場する作品たちの中でも、実際に再会を果たした物語はあまり多くはありません。そういった意味でも印象深いパッピーエンド、美味しくいただきました^ ^もしサンタがシャーマンだったら、同じようなプレゼントを欲しがる人たちは結構たくさんいると思いますけどねぇ...。
【最後のプレゼントと本当の願い】
今日は特別な日、クリスマス。④
昔は大好きだったこの行事も、今や大嫌いに変わっている。
目が覚めたらサンタからのプレゼントを探す楽しみがなくなった時点で、クリスマスとはイルミネーションが綺麗な日でしかないのだが、
クリスマスにトラウマがある私からしたら綺麗なイルミネーションすらも、トラウマの発火装置でしか無いのだ。
クリスマス当日、昨日の徹夜が祟ったのか、いつのまにか寝ていた私が目を覚ますと、誰かの言い争う声が聞こえてきた。
誰も寄り付かない空き教室の真ん中で2人の女子高生が向かい合っている。
これがサンタからのクリスマスプレゼントだと言うのなら、ずいぶんといい趣味をしている事だろう。
私は目の前の光景を見ながらサンタに向かって悪態をついた。
見ながらと言っても2人には気づかれていないので覗き見ながらと表現した方がいいのかもしれない。
2人とも私には見覚えがあった。
まず、廊下側で、泣きそうになっている小柄な子は三河 春香、気弱で正直で優しかった私の親友だ。
そして、窓側で不機嫌そうに春香を責めたてているのは、七海 雪、私の知る一番嫌いな人間だった。
「で、春香、あなたが十山君と付き合ってるってどういう事?」
「春香のアドバイスに従って、背中を押されて、勇気を出してクリスマス前に告白したら、春香と付き合ってるから無理って断られたの!なんなの?馬鹿にしてんの?ねぇ、…」
反論も許さないとばかりに七海は春香を口早に責め続ける。私は聞いていられないと指で耳を塞ぐがそれでも鮮明に声は聞こえてきた。
恋愛相談を受けてくれていた親友が自分の想い人の彼女だったのだから裏切られたと思うのは仕方がないと思われなくも無い。
しかし、春香に責められる筋合いはないのである。
まず、春香が十山と付き合っていることを話していないのは十山の要望であり、そもそも、七海は恥ずかしいからとの理由で自分の想い人が十山であると誰にも打ち明けていなかったのだ。
七海の八つ当たりが始まって20分は経過した。
七海は疲れて少し冷静になったのか声のトーンはいくらか落ち着きを見せていた。
「ねぇ、春香、貴方は十山のこと本当に好き…?なの? 」②
気分が悪くなり座り込んでいた私の耳に、そんな言葉が聞こえてきた。
それは、春香と十山が相思相愛で、自分に入り込む余地などないと、自分を諦めさせるための言葉だった。
「分からない…十山君はこれから好きになってくれればいいと言われて…
ドン
突然、教室の壁が壊れるのではないかという音を立てた。
七海が春香を突き飛ばしたのだ。
続けざまに七海は春香の髪を掴む。
「もういいよ、友達になんかならなきゃ良かった。もう二度と私の前に現れないで。」
そう言って七海は春香の髪を離した。
私は急いで教室の入り口にスタンバイする。
「ごめんなさい」
そう言って春香は私に向かって(正確に言うと廊下に向かって)全速力で走り出す。
このまま行かせる訳にはいかない…
私は教室の入り口に立ち彼女をブロックする。
しかし彼女は止まらなかった、彼女の体が私を貫通したのだ…「待って」と伸ばした手は彼女の肩を突き刺して空を掻いた。
彼女達に私の姿が見えない時点で予想はしていた。いまの私は幽霊の様な立ち位置なのだ。
ただ見ていることしかできない現状に苛立ちが募る。
このまま従来通り行けば、この後春香は屋上から飛び降り、自殺する。
そして、七海はあんなこと言わなきゃ良かったと何年も自分を責め続け自殺未遂を繰り返すのだ。⑨
七海は過去の私なのだ、だから全部覚えている。
覚えている、春香のいない学校も、好きな人(十山)の泣き顔も、リストカットで傷つけた腕の痛みも…だからこそ私は繰り返したくなかったのだ。
彼女を助けたかったのに…
本当に皮肉で最悪なクリスマスプレゼントだ。
私がいい子じゃないからサンタではなくサタンが来たと言ってもいいように…
過去に戻りたい、春香を亡くしたあの日から今まで、私は何度もその願いを口にした。
たしかに、その言葉通りの願いは叶ったといえる…ただし私の求めていない方向で…
春香を死なせたくない、私が望んでいたものはそれだけなのだ、過去を見直したいなんて誰も願っていない!⑥
「サンタでもサタンでもいい!私を過去に戻す超常的力があるのなら、春香を助けてよ!私はどうなってもいいから!」
ダメ元で、透明な藁をも縋る思いで、私は叫んでいた。
《契約は成立した》
何処かからそんな声?が聞こえた。
七海ではない、彼女を見てみると彼女は驚きの表情で口を開けて固まっていた。そもそも声が違う。
「だ、誰?いつから…そこに?」
七海が私を指差しながらそんなことを言い出した。
もしかして、と私は七海の手を掴もうとする。
彼女の手から暖かい熱が感じ取れる。⑦
手を掴めたのだ!今度こそサンタは私の願いを正しく叶えてくれたのだった。
「ついて来て!」
混乱してぼーとしている七海の顔を一発殴りたかったが、春香が自殺するまで時間がないので、私はそのまま強引に七海の手を引き、春香のいる屋上に連れ出すことにした。
今の私は七海と歳が十数年もかけ離れすぎていて、替え玉するには無理がある…結局の所、過去に介入できると言っても、私に出来るのは七海と春香を会わせる事しかないのだ。
ありがたいことに、七海は混乱しているからか、学校内で誘拐の心配がないと思っているからか、不審者の私に対してなんの抵抗も見せずにされるがままになっていた。
順調に懐かしの景色が前から後ろへと流れて行く。
「春香の所に連れて行くの?」
いつのまにか混乱から復活していた七海が、単刀直入に切り出した。
突然のことだったので、肯定するか否定するか悩み言葉が詰まる。
「私のタイミングで謝るからいいでしょ!部外者が首突っ込まないでよ!」
沈黙を肯定と受け取ったのか、七海は私の手から抜け出し抵抗をみせる。
確かにあの頃、私は時間を開けて、ほとぼりが冷めてから謝ろうと考えていたのだ、もう生きて会えないとも知らずに…
このまま、抵抗されては間に合わないと考えた私は七海を説得することにした。
相手は自分、「こじれる前に謝った方がいい!」や、「いつでも謝れるとは限らない!」などと諭しても、説得出来ないことは分かっていた。
そもそも部外者が何言っても説得するのは無理だろう、だからと言って、正直に未来から来たなんて言っても信用されないのは分かりきっている。
だから私は嘘をついた。
「私は春香の保護者よ。春香は今日を最後に転校するの。」
強引だが、私を素性の知らない部外者ではなくすためにはこれしか思いつかなかったのだ。
「嘘っ、春香はそんな事一度も…」
好都合な事に、七海は春香の転校について驚き、私が春香の保護者である事には全く疑いを持っていないようだった。
これで、転校について騙しやすくなる。
「だったら、なんで私がここにいると思っているの?さっき転校の手続きが終わった所よ…急に決まった事だったし、あの子も言えるタイミングがなかったんじゃない?」
私がこの場に居たことが一定の説得力を持ってくれた。
「そんな…」
私が保護者であると信じている七海には、私がこの場にいる理由が他に思いつかないだろう。
しっかり信じてくれたようだ。
そろそろ時間がない、私は呆然としている七海の腕を引っ張り屋上へと早足で向かう。
屋上の入り口を開けると屋上の端に立つ春香の後ろ姿が見えた。
間に合った!私は七海を屋上に押し出し、扉の裏に隠れる。春香の保護者を自称している以上、春香に会うと拗れる可能性が高いのだ。
「ごめんなさい」
閉まっていく扉の向こう側から七海の謝る声が聞こえてきた。
それを聞いて私は安心するというより、肩の荷がやっと降りてくれたような…そんな気がした。
扉が完全に閉じた時
まるで、幽霊が成仏するように、私の身体が徐々に透けていることに気づいた。⑩
どうやらここまでのようだ、このまま完全に身体が消えきったら私は元の世界で目を覚ますのだろう。
突然屋上の扉が勢いよく開かれる!
七海が屋上から降りてきたのだ!
七海は見るからにお怒りのご様子…
おそらく、転校の話が嘘だと気づいたのだろう…
春香は笑いながら七海をなだめている。
どうやら仲直りは出来たようだ。
私は少しの嫉妬を覚えながら…
「ごめんね、そしてありがとう」
満足げに消えていった……
《走馬灯の内容を書き換えただけで、死者が生き返る訳では無いのに、悪魔に魂を捧げるとは、これだから人間は扱いやすい》
完全に身体が透けて消える直前、どこからかそんな声が聞こえたような気がした… (完)
約3600文字
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サンタでもサタンでもいい、彼女を救えるのなら。
ストーリー設定が、非常に素晴らしい。それでいて起こっている内容がすっと頭に入ってくるのは、作者さまの高い技術力の賜物なのでしょう。苦しい悲しみの連鎖を断ち切った時、七海は消滅する自分の姿と薄れゆく意識の中で何を思ったのか。現実改変モノ特有の切ない結末が合間って、ストーリーが読み手の目頭を熱くさせるのです。ある意味ハッピーエンドと呼べるのかな?素晴らしい!!回答としても完成度が高く、そのまま出題できるほどのクオリティ、お見それしました〜><
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[良い質問]
12月24日、記録的な大雪が降った。④
仮面のように雪は白く街を覆い続けていた。①
私は七海と些細なことで口喧嘩して、親父に怒られた。
「俺はお前達に無理に仲直りしろなんて言わない。俺がお前達に望むのは一つだけだ。」⑥
何を言われるかと思っていたら、七海と一緒に雪かきをするよう言われた。
こんなことになるならあんなこと言わなければ良かったと後悔していると、七海に名前を呼ばれた。⑨
七海は背が小さいから自力で屋根の上に登れないのだ。
仕方がないから手を引いてやった。
繋いだ手は、手袋をしていたから温かかった。⑦
喧嘩したまま一緒に雪かきするのは気まずいので仲直りした。
すべて親父の計算通りだった。
―了―
簡潔な解説文と思いきや、そこにはたくさんのストーリーやメッセージが隠れているものなのです。「口喧嘩」「雪かき」「屋根の上」。OUTISさんの創りだす文章の単語ひとつひとつからはっきりとその情景が浮かんでくるようです。そして仲直りした二人の展開が全て父親の計画通りだとしたら、それは「ともに汗水流せば、些細な喧嘩も水に流れる」という、ある意味人生の教訓が聞こえてくように思えませんか??どんな短い文章にも物語は宿る。いい例だと思います^ ^
《投票対象外》「逃避行、転じて仕掛けられる包囲網」Aパート [編集済]
かっぱやのカスタードはやっぱ最強。 [良い質問]
出演
キタロウ ポラリスに何か月かぶりに転身する
南 天馬 クロス わりかし脳筋
ニシキ キタロウの弟。ひねくれた性格?
星野 月子 腕力がすごい系ヒロイン
星野 大洋 自称天才工学者
キタロウSR キタロウの転身アイテム。敬語
サンチャン 天馬の転身アイテム。タメ口
ライズ いろいろ謎の仮面ファイター
日辻 アン 狐日の社長秘書 たぶんセクシーな眼鏡美女
日辻 メイ かわいい
鳳 妖一 狐日社長 名前決まったはいいけどえらそう
固有の単語
SR:サンドレーダー。羅針盤のような形で、割と多機能な転身アイテム
TF:シンク(Think)ファインダー。宝石が先端についたペンデュラムのようなアイテム
グラビティ:黒くべたべたした何か。いわゆる敵怪人ポジ
あらすじ
ニホンのトーキョーの上空から落ちてきたキタロウとニシキ。
その光景に偶然遭遇した南天馬は、二人をトーキョーで見られるようになった正体不明な物体・グラビティを研究する施設、太陽研究所に連れていく。
仮面ファイターポラリスに転身するキタロウは、ひょんなことでクロスに転身することになった天馬と、所長・星野大洋の協力を得ながら、グラビティを倒す日々を送っている。
天馬とニシキは各々の目的のため「狐日」へとやってきたが……?
〇前回のおさらい
(天馬)
茜~さ~す~日がきたのなら~……♪
(サンチャン)
ソノ歌ナニ?
(天馬)
高校のころにつくったんだ。梓馬とよく歌ってたっけな。
***
(黒衣の少年)
お前は「狐日」か? それとも「黒ウサギ」のやつらか?
ここは立ち入り禁止区域だ。奴ら以外に塔内に入れない。
***
(黒衣の少年)
……仮面ファイター、クロス……
「ノア」から人類を救った英雄のひとり……
***
(黒衣の少年)
俺、たぶん南さんの味方だから。
(天馬/クロス)
たぶん……?
(黒衣の少年)
あ、たぶんっていうか、もう確実に味方。
超味方。ウルトラスーパーハイパーに味方。
***
(天馬)
こっちには何が?
(黒衣の少年)
タイムマシンっす。
(天馬)
ちょっと待って、なんでタイムマシンなの?
(黒衣の少年)
そりゃ、南さんがタイムスリップしてきたからすよ。
入口の塔、もしあれが、未来のトーキョータワーって言われたら、信じるっすかね?
***
(天馬)
でもそうだったら、なんであんなふうになるんだ?
(黒衣の少年)
「ノア」……トーキョー全体を襲った、未曽有の大災害。
もうありとあらゆる自然災害がいっぺんにきたような、そんな天変地異みたいなことがあったんす。
……一応俺の知っている歴史では、人類を救うために仮面ファイターが救った、と言われているっす。
***
(黒衣の少年)
(タイムマシンを指しながら)ほら、これっす。たまたま「狐日」の連中に追われてて見つけただけなんすけど、もしかしたら……と思って。
(天馬)
「狐日」?
(黒衣の少年)
やつらは科学技術がすごくて、噂ではタイムマシンも作っていた、という話があって。
***
(黒衣の少年)
……転身!
***
(サンチャン)
「梓馬」ッテ人ト本当ニ仲ガヨカッタンダネ。
(天馬)
……そう、親友だった。施設にいた時から……
***
(鳳)
私の「スイーパー」の爆発力はすさまじくてな。
いくら奴らを消すためとはいえ、一般人を危険にさらすようでは、まだまだ実用化には程遠い。
私はここの社長だ。きみは?
***
(ライズ)
……また会えたな、「ニシキ」。
(ニシキ)
……!! その声、まさか……
(ライズ)
仮面ファイターライズ。ここでは、そう呼ばれてるよ。
お前はどうして力を使わないんだ?
(ニシキ)
……同じ過ちを繰り返したくはない……
(ヘッドホン男)
「過ち」……ねぇ。そう言って、本当は使えないことを隠す嘘なんじゃないか?
(ニシキ)
……お前に何がわかる。
(ヘッドホン男)
わからないから、聞いているのさ。
……いつでも仮面ファイターになれるのに。
(ニシキ)
……お前たちには、関係ない。
「今」のお前たちには……
***
(社長)
「タイムマシン」の開発に、協力してくれないかね?
仮面ファイターポラリス 第8話
〇夜・ある研究所の廊下
若い男性が女性の手を引きながら長い廊下を走っている。
後ろからは武装した集団が追いかけてくる。息を切らしながら逃げている。
男性が急に立ち止まる。逃げる先にはまた多くの武装集団が立ち塞がっている。
挟み撃ちにされる形で男性は女性を庇うが、ちょうど近くに非常階段があることに気づいた。
男性は女性と共に非常階段へ登っていく。武装集団も後を追っている。
男性はそのまま女性の手を引きながら屋上までたどり着き、ドアを開け、鍵をかける。
〇夕方・屋上
もうほぼ日が沈みかけ、雪が降っている。周りはイルミネーションに照らされているせいかほんのりと明るく、にぎわった声がする。
ガイン! と扉を蹴る音がする。男性は女性を屋上の端まで促し、なるべく扉を破られないように、傍に落ちていた棒をつっかえ棒にして立てかける。
(男性)
七海! 早く逃げるんだ!
(七海)
でも、あなたが……
扉が少し壊れた音がする。
(男性)
……君のほうが先だ。
(七海)
……。
(男性)
大丈夫、ちゃんと追いつく。約束する。
だから約束だ。きみも、そのままのきみでいてほしい。③
七海は頷き、男性に抱きつく。男性も、それに応えるように七海をそっと抱きしめた。
名残惜しそうにふたりは離れる。七海の顔をじっと見つめた男性は、七海の右頬にそっと手を当てて優しく微笑む。
七海は男性の手からゆっくりと離れ、そして賑やかな夜の街の中へと溶け込んでいった。
(男性)
……どうか無事で……
扉が蹴破られる音がする。
男性がハッとして振り返ると、拳銃の音が鳴り響いた。
〇狐日・社長室
狐日の社長・鳳妖一は沈みゆく夕日を眺めながら紫色に輝く石がはめこまれた拳銃を手にする。
日辻は鳳の思案を邪魔しないように、そっと声をかける。
(日辻)
……社長。
(鳳)
……何かね、日辻。
(日辻)
何か、物思いにふけっておられるようですが。
(鳳)
……影山七海のことを思い出していた。彼女のことを教えていたか?
(日辻)
……「黒ウサギ」のひとり、であったことは聞いています。
(鳳)
そうだ。あの憎き「黒ウサギ」の、な。それで、何か用か?
(日辻)
新しいプラネタの担当にタイムマシンのことを話してもよかったのですか。
(鳳)
遅かれ早かれ言うことだ。仮にプラネタと契約が切れたところでさして問題はない。
しかし気になるのは……あの仮面ファイターとかいう輩だ。
彼らが現れてからというもの、計画が少しずつ遅れてきている。
もしかしたら、彼らが関係しているかもしれない。①
(日辻)
……対処しますか?
(鳳)
そうだな。まずは彼らを徹底的に調べてみようか。
〇太陽研究所・休憩室
真剣に考え込みながら人形焼きを食べるキタロウ。
対して天馬はリラックスした態勢で人形焼きを食べている。
部屋の隅の方では、ニシキがTFを揺らしながら黒猫と遊んでいる。人形焼きも食べている。
(キタロウ)
んんむむむ……あ、ずんだもち!
(サンチャン)
チキン。ハイ、クロス。
(天馬)
えっ、英語ってあり?
というか「チキン」で続きを振った上に僕に回さないでくれよ。⑤
(サンチャン)
「ン」カラハジマル言葉ッテ結構アルンダヨ。
(天馬)
一応「食べ物関係」って縛りがあるんだけどな?
(キタロウSR)
「ンブシー」。
(天馬)
いや知らないし。
(キタロウSR)
「蒸シ」ヲ語源トスル沖縄料理ノ一技法。(wiki調べ)
(天馬)
ネットアクセスはずるいよ。
(サンチャン)
単語ガナクナルマデズットデキルヨ。「凍ミ豆腐」。
(天馬)
どこまでやるつもりなんだろうこの子たち……
(キタロウ)
意外としりとりが好き……? なのかな……ん? ②
キタロウはニシキの方を見ようと思ったが、ニシキのいる向こうに写真立てがあることに気づく。
キタロウは写真立ての方へ向かい、不思議そうに見つめた。
キタロウの様子に気づいた天馬とニシキは、キタロウの見ている写真を覗き込む。
(ニシキ)
どうした?
(キタロウ)
いや、なんとなく気になって……ここに写ってるのって……
(天馬)
大洋さんじゃないかな? でも昔の写真っぽいね。
あとの二人は……
月子が袋を大量に抱えながら休憩室に入ってくる。
(月子)
はあーっ、疲れたぁ。あ、天馬くんいらっしゃい。
今日は特売日だったから、ついつい買いすぎちゃった……④
って、あーっ! そ、その袋は!
月子は休憩室のテーブルに置かれた「かっぱや」の紙袋に駆け寄る。
(月子)
かっぱやの人形焼き! ちょうだい、ちょうだい!
(天馬)
お、落ち着いて。まず荷物もらうから。
(月子)
だって、こないだグラビティから逃げてた時に全部台無しになったんだもん。もう今度こそ食べようと思って。あれ、何見てるの?
(キタロウ)
あ、ここにあった写真、ちょっと気になって……
(月子)
え? ああ、それねー。お父さん若いでしょ。
お父さんに抱っこされてるのがちっちゃいころの私。
(ニシキ)
左にいるのは?
(月子)
お母さん。この写真撮ったあとに事故で死んじゃったみたいだから、もうあんまり覚えてないけどね。
一応形見はあるんだけど……あ。
(キタロウ)
?
(月子)
そう言えば……あの時お母さんからもらったお守り、グラビティに付きまとわれてた時になくしちゃったな……
(天馬)
あ、それもしかして……(と懐に手を突っ込み、取り出しかける)
(月子)
(天馬の台詞を遮って)確か仮面ファイターが助けに来て、探してくれてたのよね。きっとあの人が持ってるはずなんだけど。
(天馬)
……。(慌てつつお守りを再び懐に仕舞う)
(月子)
はあ、また会えないかな……助けてくれたお礼も言いたいし。
(天馬)
ま、またそのうちひょっこり、現れるんじゃないかな~。
(月子)
でもそんなに都合よく正義の味方が目の前に現れるわけないでしょ?
(天馬)
い、いやあ~~、そうでも、ないかも、し、しれないよ~?
(月子)
そう? まあいいや。 さーて人形焼き人形焼き~。
(ニシキ)
……月子さん、母親、いないんだ。
(キタロウ)
ニシキ。
(ニシキ)
……。
(天馬)
……? (キタロウとニシキが気になりつつも、ふと思い出したように)
……あ、そういえば大洋さんは? 僕が来たときにはいなかったけど。
(キタロウ)
大洋さんでしたら、プラネタに用があるって。
(天馬)
え、じゃあ普通にプラネタに戻れば良かったかな。
(キタロウ)
え、ちゃんとここに来る目的あったんですか。
(天馬)
あのね、キタロウくん。僕、一応仕事中。
大洋さんから研究データをもらいにきたの。
(ニシキ)
今日は狐日にくらべたらやけに一日の滞在時間が長いけどな。
(天馬)
あそこにはあくまで挨拶に来ただけ。また次から狐日にもちゃんと行くから。
(ニシキ)
……ふーん。……なあ、狐日に行くとき、俺もついて行っていいか?
(天馬)
え、いいけど、なんで?
(ニシキ)
……人に会いに?
(天馬)
誰に? また秘書の人?
(ニシキ)
いや、俺もよくわかんないけど……
(月子)
あーーーーーーーっっ!!!
(キタロウ・天馬・ニシキ)
!!??(月子の大声にびっくりする)
(天馬)
つ、月子さん? どうし……
(月子)
なかった……人形焼き……全部食べられた……
(天馬)
えっ、嘘、ごめん。
(月子)
……いいわ……かっぱやのカスタードは……最強だもの……
でもね……ちょっとぐらい……残してくれても……
月子は紙袋をくしゃくしゃに丸めた後、風を切る音を立てながら遠くのゴミ箱に向かって投げる。
ところが、壁に当たった紙袋はそのまま壁にめり込み、ゴミ箱に入らないまま静止している。
(月子)
……いいと……思うのよね……
(天馬)
か、買ってくるから! ねっ、キタロウくん!
(キタロウ)
エッッ、アッハイッッ! (声が裏返りつつも返答する)
(天馬)
だから元気出して! 秒で買ってくるから! ねっ、ニシキくん!
(ニシキ)
……いや、ここからかっぱやまでどのぐらいかかると……
(天馬)
ニシキくん!! メッ!!! とにかく急いで買うの!!!
(ニシキ)
……。
(天馬)
最強のカスタードいっぱい買ってくるから!! じゃっ!!
天馬はキタロウとニシキの首根っこをつかんで外へ連れ出す。
ぽつんと残されたことに気づいた月子は、我に返ったように赤面する。
(月子)
ま……またやっちゃった……帰ったら謝ろ……あと壁修理しよ……
(Aパート 終)
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初めて拝見させていただきました「仮面ライダーポラリス」。独特の世界観とギャグが合わさった読み手を飽きさせない構成に一気読みしてしまいました。登場人物のキャラクターが立っていて、初見の私でも楽しくサクサク読める点が非常にいいと思います。そうかそうか連載モノなのか...じゃあとろたくさんには完結するまで何度でも「創りだす」に参加していただかないといけませんねー^ ^さて、次の作品の感想を...と思ったら、こ、これは2パート構成なのですね!さすがはながたくさん><
〇プラネタホールディングス、エントランス
星野大洋はエントランスで受付と揉めている。
(大洋)
……また留守か!!
(受付)
申し訳ありません……社長は不在でして、今日は恐らく戻ってこないかと……
(大洋)
あ~もう、どうして連絡してこないんだ! 行方すらもわからないし。
(受付)
それが……実はつい先ほどまでいたはずなのですが、忽然と姿が消えてしまったようで……。
(大洋)
忽然とぉ?
(受付)
秘書の者にも確認は取ったのですが、外に出た形跡はないはずなのに、社内のどこにもいないそうで……。
(大洋)
……おたくの社長は幽霊か何かか? ひょっとして成仏でもしてるんじゃないだろうな?⑩
(受付)
いえ、ところがひょっこり何事もなかったかのように次の日会社に顔を出していたりと、社内でも謎の多いと噂のお方で。
……大変申し訳ございません。社長と連絡が取れ次第、すぐお伝えしますので。
(大洋)
いや、こちらこそまた迷惑をかけてしまったね。すまないな、こんなおじさんの応対ばかりさせて。
(受付)
い、いえ私は。全然、大丈夫です。……あの……
(大洋)
ん?
(受付)
……この間は助けて下さりありがとうございました。おかげで、グラビティに襲われずに済みました。
(大洋)
ああ、そういえばそうだったか。いやまあ、私よりは、仮面ファイターの方がグラビティを……。
(受付)
いっ、いえ! 私にとっては、あなたの方がヒーローですっ!
(大洋)
お、おう……それは嬉しいが。
(受付)
その、それで……星野様は、奥さんとか、恋人とかいらっしゃるんですか……?
(大洋)
……んっ? いや、今はいないが……?
(受付)
ほ、ほんとですか? それじゃあ……
ひとりの男が受付カウンターに来る。鳳妖一である。
鳳は、日辻を連れながら落ち着いた声で別の受付に話しかける。
(鳳)
……南天馬は会社にいるか?
(大洋)
……? ……! (鳳の声に反応し、鳳の方を見る)
(別の受付)
少々お待ちください。ただいま確認いたします。
……失礼いたします。南さんにお会いしたいと……はい、……
大洋は鳳の横顔を見ている。
大洋の表情は動揺しているようにも見える。
そして、カウンターの上に載せていた右手をぎゅっと握りしめた。
(受付)
……っていうことで、お礼を兼ねてお食事でもどうですかね。
……星野様?
(大洋)
……あ、ああ。
(受付)
エッ、本当に? いいんですか?
(大洋)
ん? えっと? なにが?
(受付)
やったー! あ、いつ空いてますか? 私は全然今日の夜でも……
(大洋)
えー、あー……今日はちょっと忙しいな。
(別の受付)
(鳳に)……申し訳ありません。南はただいま外出しております。
(鳳)
そうか。戻りはいつかわかるかね?
(別の受付)
15時には戻るそうです。お待ちになられますか?
(鳳)
いや、またの機会にしよう。急ぎではないのでな。では行くぞ、日辻。
鳳は、自分を見ている大洋に気づく。
(鳳)
(大洋に)……何か?
(大洋)
(受付に)……そろそろ、失礼するよ。研究所に戻らなくては。
(受付)
えっ、まだ連絡先……
大洋はその場を去り、足早に出入り口へ。
鳳と日辻もロータリーへ続くルートへと向かう。
(受付)
……さすがに急に誘うのは気分悪くしちゃったかしら。⑨
(別の受付)
(小声で)あんた、本当に惚れっぽいね。
(受付)
だってあの人、超タイプ……
それに、助けてもらった時とっても温かい手だった……⑦
(別の受付)
……はあ。あんた、すごいね。
ロータリーに停まっている社用車に乗る鳳と日辻。
鳳はわずかに見える大洋の後ろ姿を目で追っている。
(鳳)
彼……どこかで会ったかな。
〇午後14時頃、ヒビヤ交差点
キタロウと天馬はバイクを走らせている。ニシキはキタロウの後ろに乗っている。
(キタロウ)
タイムマシン……ですか?
(天馬)
ああ。新しい……というより、同僚の代わりに引き継いだところは、それを開発してるって言ってた。
(キタロウ)
……信じたんですか?
(天馬)
……まあね。できれば、キタロウくんにも教えておきたいと思ってたんだけど。
(キタロウ)
それは、どうして?
(天馬)
……今から僕が言う話。全然心当たりがなかったら、聞き流してほしい。
(キタロウ)
……?
(天馬)
率直に言うけど、二人は……もしかして、未来から来たの?
(キタロウ)
えっ……
(天馬)
今まで気になってたんだ。どうして、君たちの方がグラビティに詳しかったのか。そして、なぜ君たちは「レイワは10年で終わった」と思っていたのか。
(キタロウ・ニシキ)
……。
(天馬)
それでね……ちょっと前に、夢を見たんだ。いや、もしかしたら現実だったかもしれない。
とにかく……ニホンが何らかの大きな力によって一面砂漠になった夢だ。
(キタロウ・ニシキ)
……っ!
(天馬)
……そして、砂漠化したニホンのことを、住人はこう呼んでいた……
(キタロウ・天馬・ニシキ)
……「ジャハラ」……。
(天馬)
……やっぱり、そうか。君たちは未来のニホン……ジャハラから来たのか。
(ニシキ)
俺たちが気づいたのも、少し前だ。
見たことのないはずなのに、どこか覚えのある景色。
(キタロウ)
まるで文化が違うはずなのに、なぜか母国語での会話が成り立っていること。
(天馬)
……もし狐日のタイムマシンが現実に成功したら、君たちを元の世界に帰したいんだ。
(キタロウ)
元の世界に……?
(天馬)
おそらくだけど、君たちは事故で過去のジャハラに来ただろう?
それなら、きっと君たちの帰りを待っている人がいるんじゃないのかい?
(ニシキ)
帰りを待っている人……
(天馬)
もしかしたら、行方不明になっている君たちを、今も探し続けているのかもしれない。
ずっと君たちの安否がわからないまま、どこかで彷徨っているのかもしれない。
(キタロウ・ニシキ)
……。
天馬の脳裏に、グラビティに吸収された梓馬の姿がよぎる。
(天馬)
……生死がわからなければ、その人のために喜ぶことも悲しむこともできないままだ。だから……
(キタロウ)
天馬さん、それは違うよ。
(天馬)
……え?
(キタロウ)
……俺たちは…………。
大きな振動音が響く。キタロウ・天馬のバイクが揺れによって少しよろめくが、体勢を整える。
(天馬)
……な、なんだ!?
(ニシキ)
……! あれだ!
ニシキが指さした先にいるのはグラビティ。
すぐさまバイクを止め、三人はバイクから降りる。
キタロウ・天馬は各々のサンドレーダーを起動する。
ニシキは離れつつもポケットを握りしめる。
(キタロウSR)
ファイトスタイル! ポラリス!
(サンチャン)
ファイトスタイル! クロス!
(キタロウ・天馬)
転身!
キタロウ・天馬はそれぞれポラリスとクロスに転身する。
ニシキがなるべく被害がないか周りを見ていると、見覚えのあるぬいぐるみを抱えながら、うろうろと戸惑ったように立ち竦んでいる少女の後ろ姿をとらえる。
(ニシキ)
あいつ、また……
(キタロウSR)
レイド! ポラリス!
(サンチャン)
レイド! クロス!
転身したふたりに構わず、ニシキは日辻メイの方へ向かって走る。
(キタロウ/ポラリス)
お前たちに……ちょ、ニシキ!?
(天馬/クロス)
(キタロウとほぼ同時に)茜さす日が……おっとっと?
グラビティがニシキに反応し、ニシキを追っていく。
ニシキはグラビティの猛攻を避けながら、メイの元へと向かっている。
ポケットが緑色に光り、その光の強さはメイに近づくにつれだんだん増している。
(キタロウ/ポラリス)
あの馬鹿……生身のまま突っ込んで!
(天馬/クロス)
どうする? 望遠砲で周りを一掃しとく?
(キタロウ/ポラリス)
いや、ニシキに当たる可能性もあると……!
(天馬/クロス)
じゃあ、やっぱりいつもの体術かな!
クロスはニシキを追うグラビティの足止めをしようとダッシュで駆けてグラビティに向かってスライディングする。
しかし手ごたえはなく、スライムのように柔らかく変形するだけである。
だが、グラビティの気を引くことには成功したようで、グラビティはクロスやポラリスの方へ向き襲ってくる。
(天馬/クロス)
へい! こっちまで追ってこいよ!
グラビティがクロスの顔めがけて横から叩こうとする。
すかさずクロスは避け、隙ができた場所に突きを入れる。
やはり手ごたえはないとわかったクロスは、グラビティと距離を取る。
一方ポラリスは頭上から来るグラビティの攻撃を一瞬受け止めたが、すぐにグラビティはぐにょりと変形し、腕をすり抜けてポラリスの頭を狙ってくる。
ポラリスを襲いかけたグラビティの上部が、クロスの上段回し蹴りで一瞬散り散りになったのを見計らって、ポラリスはグラビティと距離を取ることに成功する。
(天馬/クロス)
できるだけ避けたほうがいい! 下手したら掴まれて引き込まれる!
(キタロウ/ポラリス)
だけど、避けるだけじゃもたないですよ!
(天馬/クロス)
くっそ、せめて攻撃が通れば……いや、待てよ?
サンチャン! 今からこのスーツを改造ってできる?
(サンチャン)
デキナクハナイケド、ドウ改造スルカニモヨルヨ。
(天馬/クロス)
じゃあさ、このスーツ全体、望遠砲のみたいに光エネルギーを取り込んで放つことってできない!?
(サンチャン)
望遠砲ミタイナ大キイノハ無理。小サイLEDグライノナラ分ケルコトハデキルヨ。
(天馬/クロス)
(避けながら)っ、何でもいい、とにかくやって!
(サンチャン)
OK! アップグレード!
クロスの身体が眩い光を放ちはじめる。光に怯んだグラビティは、クロスの周りから少し引く。
アップグレードが済んだ部位から光が弱くなっていく。
完全にアップグレードが完了し、クロスのスーツは少し輝きを放ったクロス:シュートフォルムへと変貌する。
(天馬/クロス)
おっ、ちょっとピカピカになった?
(サンチャン)
性能、希望ニ添エテルカワカラナイカラ気ヲツケテネ。
グラビティたちはクロスに襲い掛かりはじめる。
クロスがカウンターのためのパンチを繰り出すと、グラビティの一部が弾け飛ぶ。
先ほどとは違い、抉れた部分はそのままで変形したり再生したりはしない。
(天馬/クロス)
……充分だ!
クロスは避けつつも、先ほどより積極的に攻撃を入れたり受け止めたりしている。
心なしか、グラビティの数も減ってきている。
(キタロウ/ポラリス)
すっげぇ……
(キタロウSR)
ポラリス、貴方モデキマスヨ、アレ。
(キタロウ/ポラリス)
えっ!? 先に言ってよ!
(キタロウSR)
ソーリー。……アップグレード!
ポラリスの体が眩い光を放ち、ポラリス:シュートフォルムに変化する。
(キタロウ/ポラリス)
おおーっ!! ピッカピカ!
(天馬/クロス)
えっ、あっちめっちゃアップグレード早くない!?
(サンチャン)
言ッテル場合カ!
(天馬/クロス)
(避けつつもしゃべり続ける)だってぇ!
ポラリスとクロスがグラビティに応戦している間、ニシキはメイのそばへ。
(ニシキ)
おい! こっちだ!
(メイ)
! ……あの時の!
(ニシキ)
なんでまた襲われてるんだよ……まあいい。
あとはどうやって切り抜けるか……
ニシキは辺りを見渡す。グラビティの数が減ってきたとはいえ、こちらに襲い掛かってきそうな個体は多い。
ニシキはポケットからTFを取り出す。TFは緑色に光り輝いている。
それをそっと握りしめるが、微かに手が震えている。
ニシキはTFを掲げる。TFは一瞬強く光り輝く。
しかし、その強い光はだんだん消えはじめ、ついには全く光を持たなくなる。
(ニシキ)
くそっ、……
(メイ)
お兄ちゃん……?
一方、ポラリスとクロスはグラビティを減らしながら、望遠砲を撃つ機会を見計らっている。
(天馬/クロス)
今だ!
(キタロウ/ポラリス)
はいっ!!
ポラリスは望遠砲を起動する。
(キタロウSR)
望遠砲! 発射ヨオイ!
ニシキはメイを連れて望遠砲の射撃範囲から外れた場所に避難する。
(キタロウSR)
3……2……1……
(ニシキ)
伏せろ!
ニシキとメイは望遠砲の光を浴びないように伏せる。
ニシキは、望遠砲の光とは違う緑色の光が視界の端にあることに気づく。
風船が割れたような大きな破裂音が連続して鳴り響く。
グラビティの群れがいたはずの中心に、仮面ファイターライズが緑の剣を掲げて立っていた。
(キタロウSR)
……対象ノ消滅ヲ確認。発射準備ヲキャンセルシマシタ。
(ニシキ)
あいつは……
(メイ)
! おにいちゃん!
(???/ライズ)
メイ、無事か? 怪我はないか?
(メイ)
へーき! このおにいちゃんが、助けてくれたの!
(???/ライズ)
そうかそうか。それならよかった。
よおニシキ。最近よく会うな。
(キタロウ/ポラリス)
ニシキ、そいつは……仮面、ファイターか……?
(???/ライズ)
おお、最近噂のヒーローコンビも一緒じゃねぇか。
俺は仮面ファイターライズってんだ。メイを助けてくれてありがとう。
(天馬/クロス)
ライズ……?
(???/ライズ)
あ、つっても、俺はいわゆる雇われてる身でね。
俺の行動を見張ってる奴が恐らく近くに……
(日辻)
無駄話をしている場合ですか。
(???/ライズ)
うおっ、出た。どうよ、今の成果。
(日辻)
今から報告するところです。
……もしもし、日辻です。
〇狐日・社長室
鳳は、日辻より電話で結果報告を受ける。
残念そうにしながらも、冷静な表情である。
(鳳)
……そうか。やはりな。
……報告ご苦労だった。
鳳は電話を切る。
(鳳)
……やはり、あの仮面ファイターの存在……手を打たねばならないな。
私が望む、たったひとつの願いのためには……やはり放ってはおけまい。⑥
鳳はかっぱやの紙袋から人形焼きを取り出して食べている。
少し満足そうに、小さく微笑む。
(鳳)
……うん。相変わらず絶品だ。匂いも変わらぬままでいい。⑧
窓の外で夕日が沈みかけている。
鳳は、影山七海と彼女が脱走したときのことを再び思い返す。
(鳳)
……ああ、そうか。……思い出した。
影山七海は、クリスマスの夜、男性に手を引かれながら脱走していた。
屋上に追い詰められた男性は、七海だけでも逃がそうとした。
そして、昼にすれ違った星野大洋を思い出す。
〇太陽研究所・休憩室
月子は、写真立てを掃除している。
(月子)
……これでよしっ。
写真立てには、七海と、七海を逃がした男性、そして男性に抱かれた赤ん坊が写っていた。
〇狐日・社長室
(鳳)
……彼はあの時、影山七海の脱走を手引きした男だったか。
(第8話 終)
[編集済]
前半パートとは打って変わり、戦闘シーンやシリアス展開で全く違つ雰囲気が醸し出される作風がとても印象的でした。新兵器や新キャラ登場など(ネタバレになってない??ゴメンナサイ><)、お話の内容としてもまだまだこの先が見えない展開で、予想や考察が捗りますね!私の前の作品から読み直してこよっと。これらの作品も参加者さまから集めた要素の中からできたモノだと考えると、とろたくさんの作品であることは勿論ですが、みなさまのアイデアで紡がれる、まさにこの企画が本当に創り出したかった作品と言えるのかもしれません!^ ^
「ども、ラテオとラテコです。お願いします」
「クリスマスですね」
「終わりましたけどね」
「私、実は本業でサンタやってまして」
「え、マジで?」
「そりゃもう。プレゼント配る大変なんですよね」
「ホンマですか?」
「ホントホント。いっぺんやってみよ」
「あーー、サンタさんはよ来んかな! サンタ来るまで寝んぞ! サンタ褒めちぎってプレゼントしこたまもらうんや」
「ほーっ、ほっ、ほ」
「え、声がする。もしや!」
「ようこそ、メリークリスマス」
「誰が言うてんねん。逆、アンタがここに来たんでしょ」
「私は、サンタのおばさんだ」
「わーー、サンタさんや。生で見るん初めて。おばさんサンタもおるんやね」
「時代は多様性だからね」
「でも、おばさんて言うけど、はじめサンタさん見たとき、女子大学生来たかと思った!」
「ま、上手だねアンタ」
「へへ」
「いつのかわからないアメちゃんあげよう」
「あ、いらないです」
「遠慮せずに、私もいつ買ったやつかわかってないからね」
「遠慮じゃないです。ようあるけど」
「そんな事より、プレゼントが欲しくないかい?」
「欲しい!」
「ははは、今日は良い子の君にとっておきのゲーム持ってきたからね」
「ゲーム? なんやろ、スーパーマルオかな? ポケノンかな?」
「そのゲームに勝たなければプレゼントは手に入れられない」
「あ、そう言うゲーム!? 去年なかったけどな……」
「改めて自己紹介しよう。私はゲームマスターハデス」
「ハデス?」
「さぁ、ゲームの始まりだよ。ハーーッハッハッハーー!!」
「デスゲームか!! お前これデスゲームみたいになってるやろ!! さりげなく手を握るな! 気持ち悪い」
「油断したな、周りを見るがいい」
「何っ!」
「屋上だよ」
「いつのまに!!」
「手を握った時に連れ出させてもらった」
「クソ、どうりで寒いわけだ」
「君の手は温かかったよ」⑦
「はぁ?」
「ちっさくてぷよぷよのおててだね」
「激キショいねん!いちいち報告すな!」
「さぁ、早速ゲームの説明をしよう」
「やるしかないか」
「ゲームは単純、私の好きなものを20の質問で当てるだけ」②
「知ってるそのゲーム! なんかいけそう」
「だったのだけど、君が私を女子大学生なんて褒めてくれたから出血大サービスゲーム変更だ!!」
「過去の俺ーー!!」
「特別だよ」④
「なに余計なこと言うてんねん!!」⑨
「今から言う問題に正解出来たらプレゼントをあげよう……」
「も、もし、不正解だったら?」
「ふっふっふ、なぜ私の服が赤いかわかるかい?」
「え? 赤い……? 手の匂いを嗅いでる……。まさか!」
「チキンのソースだよ」
「チキン!! 紛らわしいねん!」
「香ばしいチキンの匂いがするよ」⑧
「変なタイミングで言うな、紛らわしいから」
「それじゃあ問題。私はチキンを振り回していただけなのにお父さんに怒られた。さて、なぜでしょう?」
「……チキン振り回してたからや!!振り回すからソース服に飛ぶねん!!いい歳してお父さんに怒られてるな!」⑤
「正解した君にはこれをあげよう」
「やっとプレゼントや」
「清めの塩だ」
「いらん!! 清めソルトいらんわ!!」
「幽霊を撃退できるよ」⑩
「お前が帰れ!!」
「ね、難しいでしょ」
「や、お前が変なだけや。もうええわ」
「ありゃした〜」
[編集済]
漫才形式の作品とは...こちらも個性爆発のアイデア作品となっております。ラテオとカメコの掛け合いが面白く、テンポもいいですね><今回の要素はどれもエモすぎるほどエモなワード満載でしたが、こうやってボケのネタとして出てくると意外と違和感がないような...と自分の中でスッキリ飲み込めたのが新感覚で驚きました!これは創りだすの匠のなせる技なのか...!問題の回収も違和感なく、とても良かったです!......ところで、七海はどちらに???
お知らせをいたします。創りだす企画ですが、投票数の関係上、投票フェーズを延長いたします。締め切りは2020/01/02(木)23:59までとなります。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。(匠・エモンガについてはアンケート機能のシステム上締め切らせていただきます。申し訳ございません。)
☆現在までに投票いただいているユーザーさまは期限まで内容の変更は可能です。
☆また「投票対象外作品」の投稿につきましても、本会場において期限まで受け付けます。
『第18回正解を創りだすウミガメ』のコインバッジ内訳についてご連絡いたします。
今回は以下の内容で参加者さまにコインバッジコードを進呈いたします!
シェチュ王……400c
最優秀作品賞…100c
最難関要素賞…10c
シェフ参加賞…5c
投票参加賞……5c
企画終了とともに司会者が順次ミニメにて送らせていただきます^ ^
参加者一覧 20人(クリックすると質問が絞れます)
※こちらの発表は臨場感を重視しております。長文なので、結果だけが見たい皆様は、是非とも投票会場をご覧下さい。
結果、発表ーーーーー!!!!
ご来場の皆様、紳士淑女その他の皆様。長らくお待たせ致しました!結果発表のお時間です!
今回の創りだすでは、19人の素晴らしいシェフの方々によって、23作品が誕生しました。また投票対象外作品も3作品投稿されております。本当に大豊作!!司会者として弥七は嬉しいです^ ^みなさま、楽しんでいただけたでしょうか…??
ドキドキの結果発表に、さあ移りましょー!
☆最難関要素賞
上位3要素の発表をいたします。
第3位
🥉「そのままのきみでいい」(とろたく(記憶喪失)さん)
🥉「望むものは一つだけ」(きの子さん)
🥉「仮面が関係ある」(OUTISさん)
🥉「繋いだ手は温かかった」(きの子さん)
第3位にはこちらの要素がランクイン!
溢れるようなエモさがにじみ出ていますね。しかし作者の使い方一つで悲しくも面白くもその顔を変化させ、言葉の使い勝手の良さが逆に頭を悩ませてしまう…読者に立つとそんな使い方もあったのね、と投稿作品を読んで驚くこともありました。また、もはや常連要素の仮面もここに入っております。
第2位
🥈「幽霊が成仏する」(白蜜さん)
そんなエモい言葉が並ぶ中、「えっ、ゆ、幽霊!?」と参加者さまを驚かせたのがこちらの要素でしょう。多数の投稿作品の核となり、ストーリーを大きく左右させたこのワード。実際に会えたり、会えなかったり、勝手に成仏させられたり…いろんな幽霊さんを今回は見ることができました。
そんな第2位を破った、最難関要素は…。
第1位
🥇「チキンを振り回す」(シチテンバットーさん)
ばばーん!!!
振り回すの?...えっ、チキンを??
今回の創りだすを実に『チキン振り回し大会』へと変貌させたのは、間違いなくシチテンバットーさんです(褒め言葉)。シチテンさんが要素選抜の際に投稿した他の作品を見てくだされば一目瞭然ですが、四つとも超がつくほどのカオス。「おっ、攻めに来たな…」と弥七も固唾を飲んでいましたがそこは乱数さん、しっかり空気を読んでくれました。いやあ、しかしみなさま本当にチキンの使い方がお上手。さてはこの界隈は普段からチキンを振り回しているとでもいうのか…?
シチテンバットーさん、おめでとうございます!
次なる表彰は、匠、エモンガ賞!
1位発表とさせて頂きます!
☆匠賞
匠の腕が輝いたのは…!!
🥇『12月25日 Lateral Thinking Wrestling JingleHell 第8試合時間無制限1本勝負女子王座NoDQ戦 ブレイカー七海(チャンピオン) vs ビッグインシデント香織(挑戦者』(作:シチテンバットーさん)
🥇『叶うなら』(作:藤井さん)
こちらの2作品です!
私は衝撃でした。「え、これ全部タイトルなの…?」と。面白かったので全文載せてアンケートに突っ込んで見ましたが、みなさまどうでしょうか??作品の内容も非常に魅力的で今回最も個性を爆発させたのはこの、スーッ(息を吸う音)『12月25日 Lateral Thinking Wrestling JingleHell 第8試合時間無制限1本勝負女子王座NoDQ戦 ブレイカー七海(チャンピオン) vs ビッグインシデント香織(挑戦者』でした!そしてその個性に全く引けを取らなかったのが藤井さんの『叶うなら』になります。問題文の謎を一番上手に汲み取りながらも、流れるような文体で紡ぎ出した答えは、読み手の心を寂しくさせるような、それでいて温かい何かを与えてくれるような…これが藤井さんの「あたたかなスープ」なのですね。
シチテンバットーさん&藤井さん、匠賞受賞、おめでとうございます!
☆エモンガ賞
勝利のエモンガが微笑んだのは…!!
🥇『聖夜に奇跡は起きない』(作:リンギ)
リンギさんの作品です!!「屋上へ行って星を眺めたい」という彼女の些細な望みが、とても切なく映るのは、彼女が死を待つ病人であるからだけではなく、才能ある書き手さまが生み出す、いや「創りだす」言葉の賜物なのでしょう。感情移入し、どんどんと引き込まれていくように読了してしまった時の爽快感は、まるでウミガメのスープの解読後と瓜二つ。非常に素晴らしい!!
リンギさん、エモンガ賞受賞、本当におめでとうございます!^ ^
さてさて…これにてサブ受賞式は終了です。メイン表彰に移ります。
今回23作品の投稿となりました第18回正解を創りだすウミガメですが、大豊作がゆえに集計も超大変!!かと思いきや、みなさまの丁寧な投票によりスムーズに進行できたことをここでお礼したいと思います。本当にありがとうございます^ ^
さてさて最優秀作品賞、いうまでもなく大混戦です!気になる結果は…??
では、発表に移りましょう!
☆最優秀作品賞
第3位は……
こちら!
🥉『12月25日 LateralThinkingWrestling JingleHell 第8試合時間無制限1本勝負女子王座NoDQ戦 ブレイカー七海(チャンピオン) vs ビッグインシデント香織(挑戦者)』(作:シチテンバットーさん)
🥉『メリークリスマス』(作:イナさんさん)
🥉『星の別れ道』(作:ハシバミさん)
3作品がランクインしました!
シチテンバットーさんの作品は魅力的な戦闘シーンと登場人物の爆発的な個性があいまった、爆笑!!痛快!!作品となっております。イナさんの作品はお手本のような急転直下のブラックストーリー!「子供のことを思わない親なんていない」とは思いますが、これほどとは…!ハシバミさんの作品はな、なんとゲーム!?フラグ!?創りだすの新たな可能性を見たようで、私はとても興味を惹かれました!素晴らしいー!!!
どれも魅力的でした!第3位に輝かれましたお三方、おめでとうございます!
続いて…
第2位は……
こちら!
🥈『サンタさん見習い』(作:さなめ。さん)
🥈『コイゴコロ』(作:靴下さん)
こちらは2作品がランクインしました!
さなめ。さんの作品はとにかく七海ちゃんのキャラクター性がすごい!問題文の主人公を勝手に「七海」と設定してしまいましたが、図らずも色んな方の七海ちゃんが見れて楽しかったです。靴下さんの作品は百合ィ…ですかねぇ…社会やいろんなしがらみから別れを告げ、二人が選んだ逃避行。非常に切なく、素晴らしいストーリーでした。
このような魅力が評価され、第2位に輝かれました!お二人とも、おめでとうございます!
この5作品から、一歩だけ抜けた作品が、一つだけ。
第1位発表…。。。
の前に、CM挟みまーす^ ^
…今回私の作った課題文(問題文)、いかがだったでしょうか??短い文章に聖夜と屋上というキーワード、登場人物は「私」そして「七海」…難しかったという意見もありましたが、この文章を通して、その先に広がる、みなさまの作品の「オリジナリティー」を私は見たかったのかもしれません。全ての作品、感想をつけて読ませていただきましたが、どれも素晴らしい個性!!魅力!!私は司会をして、この問題文を作って本当に良かったと今感じております。。。
CM終わり!
皆様、いよいよ最優秀作品賞受賞作、その発表と相成ります!
第1位に輝かれましたのは…
⤴️オオオオオオオオオオォォォォォォ…
…こちら!
――『こんだけ振り回せば、さすがに来るだろ』……なんて、あんなこと、冗談でも言わなければよかった。
🥇『叶うなら』(作:藤井さん)
今回の創りだすを制したのは、藤井さんの作品です!!!!
空に一番高い場所でチキンを振り回す。
サンタさんにあぴーるという彼女の言葉に見え隠れする少女の思い。あんなこと言わなければ良かったと後悔しても、現実は変わったりなどしない。
もしかして七海はもう気づいているのかもしれないけれど、七海ちゃんはそれを振り回さずにはいられないのでした。
思いの表現の巧さと言葉・要素のチョイスのセンスが合間って素晴らしい作品が誕生しました!!さすがは創りだす四天王。圧巻、貫禄さえうかがわせる圧倒的優勝に司会者の私の心が高鳴りまくりです^ ^(ズキュウン)
それでは
第18回、正解を創りだすウミガメ、シェチュ王に輝かれましたのは…
言わずも、がな!!
シェチュ王
👑藤井さん👑
です!おめでとうございます!本当にお見事でした!
やっぱり、藤井さんは凄いっ!!!
そして、こ、こ、この王冠を、バトンタッチ!
お、落とさないように、落とさないように…。。
(^ ^つ👑ヽ (=◜o◝=))
∧
フジイサン、オメデトウゴザイマス!!!
ギャワーーーシュ(奇声) 最優秀作品賞ありがとうございます!!メヂャ嬉しいです。慌ただしい年末にこれだけ作品と投票が集まったのはすごいですね。様々なチキン振り回しが見れて楽しかったです。また、皆さんの感想一覧を読んでいて、人それぞれ捉え方が違ったりして面白いなーと思いました。 主催の弥七さん、参加者の皆さん、お疲れさまでした!拙作に投票・コメントくださった方々、本当にありがとうございました。とろたくさんは焼鳥パーティーしましょう。東京で。 次回、どんな創りだすになるかわかりませんが精一杯主催させていただきます(=◜o◝=)9✨[20年01月04日 00:38]
弥七さん主催ありがとうございました!&藤井さんシェチュ王おめでとうございますー!!私自身としては、初めて優秀作品賞3位に食い込むことができて、本当に嬉しかったです。もう今年一番嬉しかった。え?まだ始まったばっかりだって?…今年のうちに最高順位更新できるよう頑張ります!もちろん、作風はブラックで!*^^*[20年01月03日 23:58]
藤井さん、シェチュ王おめでとうございます(๑´ω`ノノ゙✧参加人数、作品数、凄かったですね~。もう悩みに悩んだ回でした。弥七さん、進行力高すぎぃ…お疲れ様でした![20年01月03日 23:39]
弥七さんお疲れさまでした!そして藤井さんシェチュ王おめでとうございます!拙作に投票してくださった方々、ありがとうございます。非常に光栄です。エモいのエの字も分からなかった自分がエモンガ賞だなんて…。光栄極まりすぎて泣きそうです。創り出す初参加でしたが楽しかったです。皆様お疲れさまでした。[20年01月03日 23:36]
弥七さん、お疲れさまでした。藤井さん、シュチュ王オメです。
えー、今回匠賞と最難関要素賞をいただきました。ありがとうございます。ごめんなさい。そして最優秀作品賞でも三位になることが出来ました。本当にありがとうございます。
今回感想を見ましたが、様々な考えや思いがあり何というか非常に興味深かったです。
そして作品の方も中々の数がありながら面白いのが多かったです。問題文や要素が同じなのにここまでシチュエーションや作風が変わるのかとも思いました。
今回久々の参加となりましたが、楽しかったです。次参加することがあればまたよろしくお願いします。[編集済] [20年01月03日 22:57]
弥七さん、主催お疲れ様でした。丁寧な感想もありがとうございます。藤井さん、シュチュ王おめでとうございます! そして拙作に投票・感想くださった皆様、ありがとうございました。要素の方では、色々な後悔が見られて面白かったです。そして自分では使わなくて申し訳ありません……。[20年01月03日 22:46]
弥七さんほんとお疲れ様です。復帰後の創りだすをたのしめたのも、前回のさなめ。さん含め弥七さんの主催のおかげです。そして藤井さんおめでとうございます。ほぼ一年越しにシェチュ王返り咲き。やりましたね!!お祝いに焼き鳥食べましょう。明日東京に帰るけど。[編集済] [20年01月03日 22:45]
弥七さん、主催お疲れ様でした!クリスマス前後での開催で、問題文も要素も統一感があって楽しかったです。なのに投稿作品にはこれだけバリエーションがあるという、、らてらては魔境ですか。そして藤井さんおめでとうございます!読んだ瞬間「これはシェチュ王取るな」と思わず思って(?)しまいました、めちゃエモかったです![編集済] [20年01月03日 22:34]
ふへへ・・・やってしまった・・・弥七さんのご厚意に甘えまくり、自分のわがままで二作品も対象外を投稿してすみません。知ってるか・・・去年の12月も二作品時間外投稿してたんだぜ・・・信じらんねえ・・・また同じ迷惑かけてるんだぜ・・・すいませんでした・・・すいませんでした・・・[編集済] [19年12月30日 04:28]
シチテンバットーさん、かふぇ・もかろにさん、ご投稿ありがとうございます!たくさんのユーザーさまにご参加いただけて、嬉しいです^ ^今回は創りだす常連ユーザーさまが特に多いような...気のせいですか??[19年12月26日 00:24]
聖夜の帳が降りる頃。私は七海の手を引いて、彼女を屋上へと連れ出した。
一体なぜ?
■■要素一覧 ■■
①仮面が関係ある
②好き...?
③そのままのきみでいい
④今日は特別な日
⑤チキンを振り回す
⑥望むものは一つだけ
⑦繋いだ手は温かかった
⑧いい匂いがする
⑨ あんなこと言わなければよかった
⑩幽霊が成仏する
■■ タイムテーブル ■■
☆要素募集フェーズ
12/19(木)21:00~質問数が50個に達するまで
☆投稿フェーズ
要素選定後~12/26(木)23:59まで
☆投票フェーズ
投票会場設置後~12/31(火)23:59まで ※予定
☆結果発表
1/1(水)22:00 ※予定
自分が正解した問題・出題者への賛辞・シリーズ一覧・良い進行力など、基準は人それぞれです。
自分専用のブックマークとしてお使い下さい。
Goodって?
「トリック」「物語」「納得感」そして「良質」の4要素において「好き」を伝えることができます。
これらの要素において、各々が「良い」と判断した場合にGoodしていきましょう。
ただし進行力は評価に含まれないものとします。
ブクマ・Goodは出題者にとってのモチベーションアップに繋がります!「良い」と思った自分の気持ちは積極的に伝えていこう!