ゴミ箱に捨てられた一枚の紙を見ると、女は自分の恋が叶ったことを知った。
どのような状況だろう。
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紳士淑女、その他の皆様。正解を創りだすのお時間となりました。
今宵、司会を務めさせて頂きます、さなめ。です!
前回はこちら→https://late-late.jp/mondai/show/8117
らてらてでの創りだすはこれで17回目とのことですが、17といっても主催は十七条の憲法くらいしか思い付きませんでした。問題文は、17と全っ然関係ありませんね。
また、肝となる要素設定ですが、今回は5~10個とさせて頂きます。少なくとも5個、選ばれる要素を使って下さい。前回に続き、文字数制限もかかります。
詳しくはルールをご参照あれ!
それでは、第17回の創りだす、盛り上げていきましょう!
いつものルール説明へ、どうぞ!
★★ 1・要素募集フェーズ ★★
[11/16(土)21:00頃~質問が50個集まるまで]
まず、正解を創り出すカギとなる質問をして頂きます。
◯要素選出の手順
1.出題直後から、YESかNOで答えられる質問を受け付けます。質問は1人4回まででお願いします。
2.皆様から寄せられた質問の数が”50”に達すると締め切りです。
選出は全てランダムです。今回も、ある程度の矛盾要素をOKとします。
選ばれた質問には「YES!」の返答とともに『[良い質問]』(=良質)がつきます。
※良質としたものを以下『要素』と呼びます。
※条件が狭まりすぎる物は採用いたしません。
[矛盾例]田中は登場しますか?&今回は田中は登場しませんよね? →今回もOKとします。例は今回も田中さんで譲りません。
[狭い例]ノンフィクションですか?(不採用)
[狭い例]登場キャラは1人ですか?(不採用)
[狭い例]ストーリーはミステリー・現実要素ものですよね?(不採用)
要素が揃った後、まとメモに要素を書き出しますのでご活用ください。
※要素数…5~10個 但し、要素数×200字の文字数制限を設けます。例外として、10個使用の場合は無制限とします。
★★ 2・投稿フェーズ ★★
[要素選定後~11/24(日)23:59]
要素募集フェーズが終わったら、選ばれた要素を取り入れた解説を投稿する『投稿フェーズ』に移行します。
各要素を含んだ解説案をご投稿ください。
らてらて鯖の規約に違反しない範囲で、思うがままに自由な発想で創りだしましょう!
※過去の「正解を創りだす(らてらて鯖版・ラテシン版)」もご参考ください。
ラテシン版:sui-hei.net/mondai/tag/正解を創りだすウミガメ
らてらて鯖:https://late-late.jp/mondai/tag/正解を創りだすウミガメ
◯作品投稿の手順
1.投稿作品を、別の場所(文書作成アプリなど)で作成します。
質問欄で文章を作成していると、その間他の方が投稿できなくなってしまいます。
コピペで一挙に投稿を心がけましょう。
2.すでに投稿済みの作品の末尾に終了を知らせる言葉の記述があることを確認してから投稿してください。
記述がない場合、まだ前の方が投稿の最中である可能性があります。
しばらく時間をおいてから再び確認してください。
3.まずタイトルのみを質問欄に入力してください。
後でタイトル部分のみを[良質]にします。タイトルは作品フェーズが終わり次第返信させていただきます。
4.次の質問欄に本文を入力します。
「長文にするならチェック」がなくなりましたので、主催が長文許可を忘れてなければそのまま質問欄にて改行込みでのコピペが可能です。
つけ忘れていた場合は、お手数ですが適当な文字を入力した後に質問の編集画面に飛び、作品をコピペしてください。
5.本文の末尾に、おわり、完など、終了を知らせる言葉を必ずつけてください。
※作品のエントリーを辞退される際は、タイトルに<投票対象外>を付記して下さい。
★★ 3・投票フェーズ ★★
[投票会場設置後~11/30(土)23:59]
※作品数多数の場合、期間を延長する場合もございますのでご了承ください。
投稿期間が終了したら、『投票フェーズ』に移行します。
お気に入りの作品、苦戦した要素を選出しましょう。
◯投票の手順
1.投稿期間終了後、別ページにて、「正解を創りだすウミガメ・投票会場」(闇スープ)を設置いたします。
2.作品を投稿した「シェフ」は“3”票、投稿していない「観戦者」は“1”票を、気に入った作品に投票できます。
それぞれの「タイトル・票数・作者・感想」を質問欄で述べてください。
また、「最も組み込むのが難しかった(難しそうな)要素」も1つお答えください。
※投票は、1人に複数投票でも、バラバラに投票しても構いません。
※自分の作品に投票は出来ません。その分の票を棄権したとみなします。
※投票自体に良質正解マーカーはつけません。ご了承ください。
3.皆様の投票により、以下の受賞者が決定します。
◆最難関要素賞(最も票を集めた要素):その質問に[正解]を進呈
◆最優秀作品賞(最も票数を集めた作品):その作品に[良い質問]を進呈
◆シェチュ王(最も票数を集めたシェフ=作品への票数の合計):全ての作品に[正解]を進呈
→見事『シェチュ王』になられた方には、次回の「正解を創りだすウミガメ」を出題していただきます!
※票が同数になった場合のルール
[最難関要素賞][最優秀作品賞]
同率で受賞です。
[シェチュ王]
同率の場合、最も多くの人から票をもらった人(=複数票を1票と数えたときに最も票数の多い人)が受賞です。
それでも同率の場合、出題者も(事前に決めた)票を投じて再集計します。
それでもどうしても同率の場合は、最終投稿が早い順に決定させていただきます。
■■ タイムテーブル ■■
◯要素募集フェーズ
11/16(土)21:00~質問数が50個に達するまで
◯投稿フェーズ
要素選定後~11/24(日)23:59まで
◯投票フェーズ
投票会場設置後~11/30(土)23:59まで ※予定
◯結果発表
12/1(日)22:00 ※予定
◇◇ お願い ◇◇
要素募集フェーズに参加した方は、できる限り投稿・投票にもご参加くださいますようお願いいたします。
質問だけならお手軽気軽、でもメインはあくまで投稿・投票。
投稿は意外と何とかなるし、投票もフィーリングで全然OKです。心向くままに楽しみましょう!
もちろん投稿フェーズと投票フェーズには、参加制限など一切ありません。
どなた様もお気軽にご参加ください。
皆様の思考や試行、思う存分形にしてみて下さい。
…それと、謝罪しなければならないことが一つ。
賞金コインの設定ですが、現時点で未定とさせて頂きます。申し訳ございません。
…これで全部ですか?よし。
さぁ、それでは、これより要素募集フェーズを始めます。再度確認、質問は一人、4回まで!
OK,now let's start the show!!
よーーーーーい、始めっ!
結果を発表しました!シェチュ王の座をその手に掴んだのは…!
★投稿の際の注意★
*質問欄で文章を作成していると、その間、他の方が投稿できなくなってしまいます。
別の場所(文書作成アプリなど)で作成し、「コピペで一挙に投稿」を心がけましょう。
*投稿の際には、前の作品の末尾に「終了を知らせる言葉」の記述があることを確認してください。
記述がない場合、まだ前の方が投稿の最中である可能性があります。
*本文の末尾に、【おわり】【完】など、「終了を知らせる言葉」を必ずつけてください。
*作品中に要素の番号をふっていただけると、どこでどの要素を使ったのかがわかりやすくなります。
投稿〆切りは11/24(日) 23:59です。皆様奮ってご参加下さい![編集済]
私の世界と言えばつい最近まで家と学校と塾の往復と、手のひらサイズ⑥のスマートフォンというちっぽけな世界だった。
それでも全然気にならなかった。えてして人は知らないものは認識できないものなのだ。
そんなある日、あの日は雨が降っていて⑦、バスを待ちながらスマホでSNSを見ていたら
バシャン!
通り過ぎる車に水をかけられ、私のスマホはあっけなく壊れてしまった①。
急いで修理に出したが、新しいものを勧められてしまった。
親に相談したら自分で何とかしなさい、と言われてしまい仕方なしに小遣いが溜まるまでのスマホ無し生活が始まった。
一度文明の利器を知ってしまったらもう戻れない③んじゃないかと思っていたけれど、
そんなこともなくいともあっさりと私は適合して見せた。
元から連絡もマメではないし、そもそもそんな友人も少ない。
それでも一応スマホ購入のためにアルバイトを始めた。
倉庫内で箱の中のみかんをチェックして腐っているのを抜き出して捨てて②補充するバイトだ。
このバイトをやってみて、意外にも近い年頃の人がいたことに驚いた。
(おばちゃんばっかりだろうと思っていたので)
初めはゴミの廃棄場の近くにいた彼がいつもごみを捨てる係になっていて、
「何か貧乏くじっぽくないですか?」と自分が話しかけゴミ捨てを手伝ったことから、
彼と少しずつ話をするようになっていった。
時折メモとペンでゴミ箱に伝言を残して雑談するようになった。
(基本的に私語は厳禁だったのだ)
たまに暗号めいたメモを置いてもしっかりと返答してくる彼に、
自分がスマホを壊してしまいバイトをするようになったことを書くと、
彼もちょっと笑って、少しずつ自分のことを書いてくれるようになった。
ゆくゆくは海外に行って⑧勉強したいこと、
その資金をためるべくバイトをいくつか掛け持ちしていること、
もう少しで目標金額に届きそうなこと。
気が付いたら彼とちょっとしたやり取りをするためにバイトに来ているような状態になっていた。
そんな日を過ごすようになって1月と少々。彼がバイトをやめると聞かされた。
タイムリミットが定められてしまい、なりふり構っていられなくなった私は、
それでも臆病だったので気付いてくれたら儲けもの,ダメで元々のつもりで
自分と彼がゴミ捨て当番のようになっていたゴミ箱に
○○くんへ、
3322410485
と書いたメモをこっそり上に置いておいた。
作業をしながら、スマホを壊したころSNSで話題になっていたし、知っていてほしい、でも…と
思いつつ満杯になったごみを捨てようとしたら、
自分のメモの下に
159475
と書かれていたのを見て、
私は思わず泣きそうになってしまった。
おしまい
(1063文字・6要素使用)
[編集済]
倉庫内の狭い世界でのバイト、という舞台に至る経緯の書き方、まずこれがとても巧いと感じました。雨やスマホ等、始めの少ないスペースに要素を織り交ぜながら、スマホと別れを告げ、気さくな彼との出逢いを果たす。
また後半の、恋を魅せるパートで多くを語らない手法も、こちらに行間を想起させる意味で成功している。総じて問題に対する答えへの道しるべを追いかけているような感覚を抱け、楽しく読ませて頂きました。
……というのが始めに読んだ印象でした。なんと、きの子さん作品の魅力の半分も気付けていませんでした。
…ここ
両親も伯母さんたちも、ずいぶんと勝手だと思う。
伯父さんが仕事で海外に行くことになった。(⑧)それは仕方ない。伯母さんもついていく。それも仕方ない。高校に通う一人息子は私の家に預ける。……なんで?
伯父さんの仕事がいつまでか分からないからとか、伯母さんはひと月くらいで戻るからとか、だからって女子高生のいる家に、従姉弟とはいえ男子高校生を預ける?
従弟――渉くんは私の一つ年下で、電車で30分の距離に住んでいる。だから小さい頃はよく互いの家に預けられたり、一緒に遊びに行ったりしていた。だけど中学に上がる頃にはそんな機会も減っていった。
久しぶりに会う従弟と、一つ屋根の下。少女漫画的なシチュエーションで、だけど現実は少女漫画じゃない。少女漫画的なことは起こらないまま、2週間が過ぎた。
部活を終えて帰ると、家には誰もいなかった。今日はお母さんもパートだから、まだ帰ってこない。渉くんも部活だろうか。……入ってもいいだろうか。
渉くんはお父さんの書斎――とは名ばかりの漫画部屋を使っている。渉くんが来てからは出入りしにくかったけど、普段は私もしょっちゅう漫画を読みに入っている。ちょうど続きを読みたい漫画もある。
私の家なんだから。漫画を取るだけ。誰もいないのに何となく周囲を気にしながら扉を開ける。畳まれた布団から目を背けて、目当ての漫画を探す――あった。手に取ったところで、ふとゴミ箱が目に付いた。二つに裂かれた封筒が捨てられている。シンプルだけど、綺麗な花柄の封筒だ。もしかして。
魔が差した、としか言いようがない。なんだかんだ、少女漫画的な展開を求めていたのかもしれない。あるいは捨てていることに文句を言いたかったのかもしれない。だって、私も先週渡したばかりだったから。
封筒を取り出してひっくり返すと、そこに書かれていたのは私の名前だった。――私? あわててゴミ箱を見れば揃いの柄の便箋もある。私宛の。先週、私が渡した相手からの。告白の返事。良い、返事。それが、なんで、ここに。
ふと、机の上に砂時計があることに気がついた。白い小さな花がデザインされている、小ぶりの――小学生の手に、ちょうど馴染む大きさの。(⑥)昔、私も持っていた。一緒に出かけた、あれはどこだったか。デイジーの花畑が綺麗で、お揃いで買ってもらったもの。(⑨)私はいつの間にか、失くしてしまったけれど。
どうして、こんなものを、まだ、わざわざ。ぐるぐると、変なことを考える。少女漫画、的な。ありえない。ありえない。
逃げるように部屋を出る。かしゃん、と音がしたような気がした。
❁❁❁❁❁❁❁❁❁❁
人の家、人の部屋に帰る。少ない荷物に入れてきた砂時計が割れていた。床に砂がこぼれている。(④)どうして。屈んだ拍子にゴミ箱が目に入る。――ああ。
もう戻れない。(⑨)分かっていた。無邪気に笑いあっていたあの頃にはもう、戻れないんだ。(⑩)
(おしまい)
[編集済]
わ、渉くん…。
この物語は特に、砂時計とデイジーの花畑、二つの(個人的)難関要素を綺麗に組み込ませている印象でした。
始めの前説明では、それこそ少女漫画的な展開を表向きに想起させ、読者を期待へ導きます。甘酸っぱい展開に、な、なるんですか!?と…。
その流れから、後半へ繋げるための少し不気味な、サスペンス風味の危険を混ぜこみつつ、彼女のパニックを描く。このパニックの描写、もうそれだけでぶっとび大ジャンプできるくらいの衝撃。なのですが、最後の最後にもうふた爆弾。まず、彼女のパニック場面でも、「彼の部屋」
【簡易解説】
同居人によって捨てられた自分宛のラブレターを見つけた。
[編集済]
(*^^*)簡易解説で分かりやすく解決して下さり、ありがとうございます!
彼との出会いは突然だった。カメ子は児童館の受付をやっていて、その日は七夕で。出会いもないこの退屈な職場で、織姫に半ばあきらめ気味に出会いがないかなー、なんて思っていた。案内前の自動ドアが開き、カメ子は仕事に戻る。自動ドアから出てきた彼は一番に「すいません、①スマホを壊してしまって・・」と、道を尋ねてきた。
それからしばらくして、助けてもらった彼は児童館への恩といって、時々手伝いに来るようになった。もともと彼は子供好きだったらしい。そしてカメ子はその彼に思いを寄せていた。それと同時にカメ子は彼の目線が児童にばっかり向いていることを気にしていた。
「ほら、七夕の短冊作るよー」
「「わーーー」」
あれからもう1年弱、彼は今日も児童たちの面倒を見ている。今日は七夕の準備、それぞれ⑥手のひらサイズの短冊に思いを書いている。
やっぱり彼は子供のほうしか見てない・・。とカメ子は思う。カメ子とはほとんど目を合わさず、あったとしてもすぐに目線をそらしてしまう。
また、カメ子はこうも考えている。彼は仕事で⑧海外に行くようなエリート、対して私は・・彼がこちらに興味を示さないのも当然だと。それでも思いは収まらなくて、そしてカメ子はついに告白する。彼と出会った七夕の日に。しかし・・
「カメオさん、私、あなたのことが好きでした。こんな私ですが付き合ってくれますか?」
「え、えと、ごめん!また明日」
それだけ言うと彼は慌てたように逃げてしまった。
やっぱりこんな私じゃ・・そんなことを思うカメ子、しかし告白してしまった以上、③もう戻れない。そんなカメ子の気持ちを表すかのように⑦にわか雨が降り始める。
「催涙雨・・」
天の川を増水させ、はるか遠くの恋人を引き裂く涙を誘発する雨。あの二人でさえ出会えないのだから、私なんて・・としょぼくれながらカメ子は職場に戻る。
それでも仕事はあって、カメ子は残りの作業をしていた。その拍子に短冊の飾りが一つ⑤とれてしまい壊れてしまった。カメ子は端材でどうにか直せないかゴミ箱の中を探す。その時にカメ子はふとその中の一つの短冊に目がいった。
「カメ子と
付き合えま 」
それはまるで途中まで書いた所で、誰かに見られることに気づいて捨てたように見える、間違いない彼の思いで・・。
「ちょっとカメ子、何気持ち悪い顔してるの。」
でぅへへ・・
カメ子は同僚に突っ込まれながらもご機嫌な顔をしていた。彼はまた明日、といっていた。ならその返事は・・。そう思っていると自動ドアが開いて、彼がやってきた。
「えっと、昨日はすいませんでした。つい、驚いてしまって。」
「大丈夫だよ。」
カメ子はそう言いながら短冊を見せる。
「ちょ、 それは!」
―――「おいコラバカップル!いちゃつくなら外でやれ!」
同僚の声に追い出され二人は屋上へ行く。
彼は今度はしっかりとカメ子の目を見て言う。
「告白ありがとう、僕もカメ子のこと・・―――。」
(1194文字)
[編集済]
これを読んだあとの私の顔ですか?カメ子と同じものを感じますよね(。。。)。
まず、前半のあっさりめな解説から、催涙雨が出てきたときはいささか興奮致しました。七夕という舞台設定を、短冊やこれを併せて無駄にしていないところや、雨を伝説と共にして彼女の心情に重ね合わせて、一時の敗北を描写する。こういうのは私みたいな読者には大好物です。こういうのだけでも…。
後半!彼がかわいすぎる!児童館の出来事とはいえ、短冊にズバリ想いを込めちゃうところ、目の前で夢が叶って、大慌てで逃げ出すところ、翌日に素知らぬ顔して彼女
【簡易解説】
児童館に勤めているカメコは、①スマホが壊れ迷った人に道案内をして仲良くなり、次第に想いを寄せるが、仕事で⑧海外に行く彼との身分の差に悩む。七夕の日カメコは彼に告白するが逃げられてしまい、⑦雨を浴びながら③彼ともう戻れない関係になったことに落ち込む。しかし、児童館のゴミ箱に⑥手のひらサイズの短冊が捨てられており、そこには彼の想いが綴られていた。カメコは彼が逃げたのが照れ隠しのためだったと理解する。(193文字)
(*^^*)簡易解説で分かりやすく解決して下さり、ありがとうございます!
人の運命とは、まるで裏返すことのできぬ砂時計。
一度落ちた砂は、二度と時を刻まない。底に沈み、ただゆっくりと最後の一粒が流れるのを黙って待つほかにないのである。③
私の主人は政治に巻き込まれ遠い国へと嫁に出た。
世は戦国。女性にとってこれほどの名誉はないと、世間がどれだけ賞賛しようが彼女の心は晴れなかった。
故郷に大切な人を捨ててきた。
罪なき少女は、要らぬ罪悪感に身体までもが蝕まれていく。
心ノ病を患い、祈祷だの薬草だのくだらない治療を受けている彼女の姿を見て、一番近くで仕えていた私の心が最も痛んだ。
彼女は私に問いかける。
「私の命に、意味はあったのでしょうか??最愛の人を忘れることもできず、好きでもない人と婚約して⑩、病気になって、ただ死を待つだけ。」
彼女の目に、もはや一筋の光もなかった。
「寒い冬はもう越せそうにありません。…この部屋から見える楠木の葉がすっかり落ちるのと、一体どちらが早いでしょうね??」
私は答えられなかった。
人の運命とは、まるで裏返すことのできぬ砂時計。
目の前の少女もまた、刻一刻と終わりを告げようとしていた。
もし叶うなら、私の灰で、その砂足してやろう。
不肖、韋駄天。剣術・投げ物の心得あれば、越えるべきものは山五つ。
単身、隠密。三日三晩走り続け、私は故郷の国へと辿り着いた。
そこで彼女の想い人から一枚の手紙と、手のひらにのるほど小さな簪(かんざし)⑥を受け取ると、来た道を引き返した。もはや一刻の猶予もない。
いつしか背後に暗雲立ち込め、雨足と競いながら城を目指した。⑦ついに私が城門に手をかけようとしたその時。
「誰だッ、貴様!!」
見張りの男共が周りを取り囲んだ。幸か不幸か、大雨で互いの顔を見ることすらできない。両手を挙げて、距離をとった。
「私は…」
と言いかけ、自分の立場を思い出す。
冷静な頭でなくとも理解した。私は紛れもない反逆者だ。今の私に、名乗る姓もなければ、墓に刻む名さえ無い。案山子の如く、私は黙った。
その巻藁のような腹めがけて九尺の槍がずぶり、と刺さった。鋭利な刃は切られたことさえ分からぬと聞くが、そんな言葉はまやかしだ。火箸を押し込んだように熱い肺腑。内臓の痛みを感じながら、もう戻ることはできないと悟った。③
全ては遅けれど、せめてこの手紙を届けねば。
私は城を見た。そして病に伏せる少女の姿を思った。その手前には、彼女が言っていた、あの大きな楠木が一本豪雨に耐えていた。
ーーー遅咲きの 想いよ届け かざぐるまーーー
私は全身全霊、渾身の力で『それ』を投げた。
軌跡を見届けることもなく、私は絶命した。
「窓を開けてちょうだい。雨音が聞こえるわ。きっと今夜には葉は全て落ちてしまうでしょうね。」
掛け布団に皺ひとつ寄せず。よもや体も起こせない少女の言いつけを守り、侍女はしぶしぶ雨戸を開けた。
するとどうだろう。
そこから広がる一畳も満たない世界の中、その瞳に映った景色に彼女は思わず呟いた。
「ああ、どうして?…こんなに雨が降っているというのに、あの楠木は葉を落とすどころか『一輪の花』まで咲かせるんだから。なんて美しいのでしょう。」
少女は横になったまましばしそれを見つめていた。それから侍女を呼んだ。
「死にたいと思うなんて、罰当たりなこと。あの木が教えてくれたわ。さあ私の体を起こして。そしてお粥をもってきて頂戴。」
数日後。
屋敷の塵捨て場の中で、落ち葉や腐ったみかんなどの中から②一枚の紙切れを侍女が見つけた。おそらく楠木の幹に刺さった髪飾りに括りつけられていたものが、ぽたりととれて枯葉に紛れたのだろう。⑤
少女は、掠れた手紙を読んで涙を流した。
後に大きな楠木の下。
誰にも知られることなく、積み上げられた小さな石。
そして幹には、こう刻まれた。
『遅咲きのかざぐるま、ここに眠る。』
(おしまい)(要素7個 1399文字)
(元ネタ:O.ヘンリより『最後の一葉』)
[編集済]
まず、1399字、と要素数7に対してぎりぎりの文字数の中で、この物語は流れるような自然な言葉のリズムが蠢いています。静かな空間で、ひっそりと朗読しているような、唄っているような、そうした不思議なリズムに包まれているのです。作中詩(俳句)や「私」の想いは、自然であるのに精巧で、目を見張る構造だと感じました。
また、物語として、要素を用いながらも素敵な、いのちや恋に対しての見識を織り交ぜ、恋、愛強き故の彼女の慟哭を、「私」が一つの風に依って、ほぐしていく。腹に槍を打ち込まれながら彼女の心へ想いを届ける反逆者
[正解]
簡易解答:世は戦国。二人の男女は、政略結婚により引き離されてしまう。恋い焦がれ衰弱していく少女の姿を見た私は単身、故郷に帰り想い人からの手紙を受け取った。城に帰るあと一歩で命尽きるが、その手紙はごみ捨て場の箱から見つかった。その文面より、彼は今も変わらず少女のことを愛してくれていること、本当の恋が叶ったのだと、涙を流して喜んだ。
(*^^*)簡易解説で分かりやすく解決して下さり、ありがとうございます!
11/12(火) 晴れ
部長に呼び出された。支社長もいて、何かと思えば、海外転勤だった。まだ決まりではないが、俺の意思次第との事。
海外で働くことは、俺の夢の一つだった。でも、今の俺には。
綾に、なんと言えばいいのだろうか。
返答期限は2週間と言われた。それまでに決めなければ。
11/17(日) 晴れ
今日も綾に話せなかった。明日、部長から何か言われるだろうか。
綾にだって仕事がある。遠距離を覚悟するか。海外に行けば、しばらくはもう戻れないかもしれない。(③)そんな俺を、綾は待っていてくれるだろうか。
着いてきてほしい、と言えば、それはプロポーズと同義だろう。覚悟はある、つもりだが。
同棲を始めて3ヶ月。まだ、綾だってまだ、先のつもりだろう。
11/19(火) くもり
ない、ない。どこへやってしまったのか。
片付けをしたときに間違って捨ててしまったのだろうか。そんなはずは。
大切なものなのに。
11/20(水) 雨(⑦)
今日は厄日だと思っていたが、違ったらしい。
昨日手紙を失くして、今朝スマホが壊れていて、傘を忘れて。(①)
仕事から帰ると、テーブルの上に手紙があった。やはりゴミ箱にあったものを、綾が見つけたそうだ。
小中学生の女子がよく使う、長方形のメモ帳を折った手のひらサイズの手紙。(⑥)
小学生の頃、俺が綾からもらった手紙だ。告白された手紙。
バレンタインにもらって、ホワイトデーの前に俺はあわただしく転校して、それっきりだった。
大学で再会したとき、綾は俺のことを覚えてはいなかった。だから何も言わなかった。
手紙を見て、綾も思い出したらしい。こんなものを持っていたなんて、と笑われた。
ついでに、俺がずっと悩んでいたのもばれていた。返事も書かず手紙を捨てた罰だと言って、尋問された。
綾は、どこでもいいと言ってくれた。離れていたって、海外だって、どこでもいいと。
俺が海外で仕事がしたいのであれば、行ってこいと。
ついていくのでも、待つのでも、なんでもいいと。
情けない。まだ先だろうと、プロポーズは俺からしようと思っていたのに。
そう言ったら、まだプロポーズではないと怒られたけど。
明日、部長に返事をしよう。(⑧)そして、綾にもちゃんと。返事をして、返事をもらわなければ。
(完)
【簡易解説】
恋人が捨てた手紙が小学生の時に自分が渡したものだと気付き、女は自分の初恋が叶っていたのだと知った。
[編集済]
問題文の主役である彼女を対岸に置き、かつ相手の彼を、日記形式にすることで過去に置く。この手法の凄いところは、彼の独白だけで物語を完成させてしまう挑戦です。言うならば、出来事の端々を切り取ってフラッシュバックさせるような感じが、こちらに彼等の葛藤や喜びをそこはかとなく伝えてきます。…いや、こちらもこちらで、短い中に綺麗な物語が纏まっていますね…。
そして物語は、もう!彼女の返事が!古い記憶と一緒に押し寄せて、彼女が彼の全ての運命をも受け入れて、決断する場面がエモいです!きっと彼女は、彼が日記に記すほどに悩
私は駅のロータリーに黒塗りの愛車を止めると、ダッシュボードに置いた小さな砂時計⑥を裏返す。砂の流れる音をききながら、深く座席にもたれ目を瞑った。
何人かの男たちが悪態をついてフロントドアを叩いたが、全て無視した。
少しばかりの期待と不安。
きっかり3分。その間だけ私は待ったのだ。
そして駅から縦縞のオーダーメイドのスーツを着た青年が歩いてくると、私は『空車』のランプを消して後部座席の扉を開けた。
「自宅まで…あれ?また女の運転手さん??」
「奇遇ですね、またお会いできるなんて。ええと、西荻でしたっけ?」
そう言って私はルームミラーを彼の顔に合わせ、タクシーを発車させるのだった。
「…そうですか、普段は広告代理店で働いていらっしゃるのですね。」
彼の自宅に着くまでの15分間、彼の口は止まることを知らない。
新社会人の彼は慣れない環境で話したいことがたくさんあるらしい。仕事先での愚痴や、同期の友人のこと、そして恋愛に至るまで。彼は私に包み隠さず教えてくれる。
今日は会社の受付嬢を食事に誘ったが断られてしまったと、悔しそうな顔をした。⑩その姿がとても微笑ましかった。
しかしまあ、そんなことは、すべて知っているのだけれど。
おまけです、などと言って私は目的地の300M手前でメーターを切った。そうすると彼が喜んで、今度予約するからと私の名前を聞いてきた。
会計の時、私はまごつきながらも手袋を外して小銭を受け取ろうとした。それをみて彼が言った。
「湿気が強いですから。…今日は夜から雨が降るので、気をつけて。」
「ありがとうございます。」
雨か。と思いながら、心優しい青年が玄関に入るまで見届けた。
その夜。
私は悪天候の中⑦、黒いフードを目深に被りながら、つい4時間前に別れたその場所に、ひとり立っていた。
こんなこと、一度やってしまったら、二度と戻れない。③
私は雨で壊れ、照明代わりにしかならいスマホ①を頼りにゴミ捨て場の箱を漁ると、一塊の袋を我が家へ持ち帰った。
ビニールシートを被せた机に、それをぶちまける。
腐ったみかんの皮や②、取っ手のとれたカップ⑤などをかき分けながら、小さなポリ袋にひとつひとつ分類していく。私はそんなことに、喜びを覚えていた。
そう、私は青年のすべてを知っている。
その愛は、すでに腐っていた。
ふと、私はそのゴミだまりの中から小さな紙片を見つけた。同じようなものが数え切れないほど底に溜まっている。
シュレッターの紙クズだ。
引き込まれるように、私はその長方形のジグソーパズルを埋め始めた。彼が隠そうとした秘密のメッセージとは…?
しばらくして、私はそれが紛れもない彼の字、誰かに向けて宛てられた『失敗作のラブレター』であることに気づいた。送り先は…きっと先刻話していた受付嬢だろう。
チッと短い舌打ちをした。
みると宛名の部分が「 さんへ」と消されている。まるで誰かに見られることを嫌がるかのように。
私は最後のピースを埋めるべく、筆箱から鉛筆を取り出すとまるで刃物を研ぐかのように、その紙を擦りあげた。
シャッ、シャッ
しかし…そこに書かれていた言葉に、私は動揺を隠せなかった。驚いた、そこに書かれていたのはーーー
ーーー「私」。
その瞬間、私の脳裏に今日の出来事がフラッシュバックした。
「自宅まで…」
「今度予約するから、名前を教えてください。」
「…今日は夜から雨が降るので、気をつけて。」
ああ、そうか。
青年もまた、私のすべてを知っていた。
私は駅のロータリーに黒塗りの愛車を止めると、深く座席にもたれ目を瞑った。
砂時計に手をかけることもない。④それは、約束された未来なのだから。
そして駅から縦縞のオーダーメイドのスーツを着た青年が歩いてくると、私は『予約』のランプを消して後部座席の扉を開けた。
「また会いましたね。では、自宅まで。」
(おしまい)(この物語はすべてフィクションです。)
(要素8個 1397文字)
[編集済]
全体の印象として、良い意味で「不可解」な作品だと感じます。
大前提の魅力として、先の作品のように、文章ひとつひとつの言葉選びがとりわけ丁寧で綺麗なのです。それは本当に、普段からの弥七さんスタイルを裏切っておらず、私には感嘆と憧れが渦巻いております。
本筋ですが、こちらは裏切りの連続!やや人読みを含みますが、弥七さんなら今回の文章で、絶対、ぜーったい幸せで容量オーバーしてしまう作品を書かれる!と思っていましたので、こうした歪みを含んだ作品にまず裏切られます。それは、作品読みの途中の場面の話ですが。
後
[正解][良い質問]
簡易解答:タクシーの女性運転手は広告代理店で働く青年のストーカーだった。ある日彼の自宅のゴミ箱から大量の紙片を見つける。組み合わせていくとそれはシュレッターにかけられた一枚の『失敗作のラブレター』だった。そしてその宛先が彼女自身だと気づいた時、自分の恋は叶ったと確信したのだった。 [編集済]
(*^^*)簡易解説で分かりやすく解決して下さり、ありがとうございます!
⑦しとしと降る雨は、傷心の女の内面を映すような空模様。
愛する男が去ってしまった部屋の中で、デイジーは呆然とベッドに横たわっていた。
「ああモリオ、あなたは結局ビッチを選ぶのね」
悔しさに駆られたデイジーは、手にしたスマホを壁に投げつけた。デイジーは①壊れたスマホをみつめ、二人で過ごした幸福なあの頃には③もう戻れないと悲しんだ。数ヶ月前、⑧国外のフラワー王国から花の買い付けにやってきたモリオ。⑨デイジーの花畑に惚れ込んだモリオは、交渉の契約を交わそうと熱心にアプローチをかけた。あくまでもビジネスの関係であった二人は、次第に互いを恋慕う間柄になり。酒場でベロンベロンに酔っ払った晩、ついに唇を交わしてしまった。
しかし、モリオにはビッチという、祖国に残してきた妻がいた。
「すまん、デイジー。ワイには妻も、会社もある。君を選ぶっちゅうことは、それらを全部捨てなあかん」
涙にくれるデイジーを静かに抱きしめ、モリオは彼女の元を離れた。失意のデイジーは狂乱し、いつしか泣き疲れて寝てしまった。
意気消沈していたデイジーだったが、いつまでもそうしてはいられない。彼女にも花屋という生活がある。食べきれずに②腐ったみかんを捨てようとゴミ箱に近づいたデイジーは、ぐしゃぐしゃに丸められた一枚の紙を発見した。昨日はこんなものはなかったはずだ。気まぐれにデイジーはその紙に目を通した。
「これは、フラワー王国行きの航空券?なんでこんなところに……もう飛行機は飛んでいる時間よ」
訝しんでいたデイジーは、突如としてその意味を理解した。つまり、モリオは妻も会社も捨て、彼女の元にいる決断をしたのだ。ということは。
ガチャ。玄関を開けて入ってきたのは、二度と会えないと思っていた、愛しい恋人であった。
「ああ、モリオ。あなたは本物のモリオなの?」
「せやで。まんま見ぃや」
デイジーは、優しく語りかけるイケメンなモリオの顔にみ⑤とれる。その火照った右頬に、モリオはそっとキスをした。恋愛には勝者と敗者がいる。⑨かつてモリオと愛し合っていたビッチの恋は敗れた。神に誓った永遠の愛を裏切ったモリオには、いつか天罰が下るかもしれない。しかし、それでも。
今この瞬間だけは。愛のために全てを捨てたモリオの決断に、拍手を送ろうではないか。
終わり。(要素数:8 文字数946)
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お、大人な恋だ…。
しとしと降る雨、壊れたスマホ、腐ったみかん。一癖強い要素を織り交ぜながら、この作品は主人公であるデイジーの鬱屈とした失恋、またその事実への落胆、狂乱をこと細かに綴っている印象でした。その鬱屈さを細部まで、直接と間接の二側面から描くことでこちらの共感、思いの汲み取りを誘い、また最後の意外な結末を問題文の回収と共に輝かせる。その一本道が太く、力強いものである種の曇りのなさを感じました。
そして、今回の創りだすでは稀有だった、すこぶる大人な恋!感性が中学生まで振れ幅な私にとって、熱い二人
カメコとカメオは小学校のころからの仲良しだった。
カメコとカメオが出会ったのは、カメコが小学校4年生で小学校に転校してきた時のことだった。
カメコは転校したばかりのころ、カメコがそれまでいた田舎の小学校と転校してきた都会の小学校の違いになれず、いじめられてしまうことがあった。
ある日カメコが悪ガキの同級生の子にデイジーの花畑に突き飛ばされそうになった時のことだ。
「やめてよ!」
「お前は本当に田舎者だな。田舎に帰れ!」
その時、デイジーの花畑に倒れそうになるカメコの腕をとる一人の男の子がいた。それがカメオだった。
「大丈夫か?」
「うん・・・・。」
「おい、こんなバカなことやめろ!先生に言うぞ!」
「うわあああああああ。」
カメコはカメオの毅然とした態度に惚れた。
「ところであなたは?」
「カメオ、4年生だ。」
「私はカメコ。4年生なんだけどこの学校に転校してきたばっかりでなかなか慣れないの。」
「そうか・・・。この小学校のルールを教えてあげようか。」
「お願いします。」
カメオとカメコのクラスは違っていたが、カメオが丁寧にカメコに小学校のルールを教えたことで、カメコのクラスの男の子がカメコをいじめることは減っていった。
そして入った部活でたまたまカメオと一緒になり、部活で汗を流した。カメオの部活にまじめに取り組む姿にカメコはさらに惹かれた。聞けばカメオは成績も優秀なのだという。それを知ってカメコは次第にカメオに恋心を抱いたのだった。
しかし、カメコの片思いは小学校の卒業式の時に破れてしまうことになった。(10)
というのもカメオの父親が海外に転勤することになり、カメオもそれについていくことになったのだ。(8)
カメコはこの時、嘘だと思いたかった。カメオの親が原因とは言えカメオと別れてしまうことになるのだから。しかし当時カメコは恥ずかしがり屋であったため、なかなかカメオに恋心を言い出すことができなかった。
3月になりカメオが引っ越す日が来た。その日は雨が降っていた。(7)まるでカメコの今の気持ちを表すかのように。それでもカメコはカメオの家に向かうことにした。せめてカメオと最後に話がしたいと思ったのだ。
しかし、カメコがカメオの家に着いたとき、カメオの家はもうもぬけの殻だった。カメオの家の前の梅はまるで2人の恋を表すかのように散っていた。
カメコはそれを見てスマホでカメオに連絡しようとするも、なぜかこの時ばかりは電源が入らず、スマホが壊れていた。(1)
ああ、遅かった。カメコは泣き出し始めた。せめてもう少し早く恋心を伝えていれば。しかし、カメオが引っ越してしまった今もうその時に戻ることはできない。(3)
カメコは後悔した。
その後カメコは泣きながら自宅に帰っていった。自宅につくと、カメコは家の前にあるごみ箱の整理をしようと思った。ごみ箱を見ると、弟が捨てたのであろう腐ったミカンやこの間ガラスが割れて砂が散らばって使えなくなった砂時計に混じって1枚の手のひらサイズの紙があった。(2)(4)(6)
カメコはそれを見つけるとその紙を何故か取りたくなった。紙はゴミ箱の奥の方にあったが、何とか取れた。(5)
カメコは取り出した紙を読んでみることにした。そこにはこのように書かれてあった。
「カメコへ
実は俺、本当はお前のことが好きだ。
俺が日本に帰ったら、俺がお前と初めて会った小学校のデイジーの花畑でまた会おうな。(9)
カメオ」
カメコはそれを見てまた涙を流した。しかしそれは悲しい意味での涙ではない。カメオがカメコのことが好きであることを知ったことで恋が叶ったと思ったゆえの嬉しい涙であった。
3年後、カメコは高校生になった。入学式の1日前、カメコは3年前にカメオからもらったメッセージをふと思い出し、母校の小学校に向かった。カメコが小学校を卒業してからの3年間で遊具や一部の施設は変わっていた。だが、デイジーの花畑は相変わらず残っており、カメコがカメオと初めて会った日と同じように花が咲いている。
カメコがデイジーの花畑に着くと周りを見回した。だが、カメオの姿は見当たらない。
「やっぱり、忘れちゃったのかなあ・・・。」
カメコが泣きそうになったその時、背後から声がした。
「カメコさん。」
振り向くと、それはカメオだった。
「カメオ君・・・・。あの紙に書かれていた約束覚えていたのね・・・・。」
「ああ・・・。俺は海外に行ってからもお前のことを忘れることはできなかった。お前確か○○高校に行くんだろ?実は俺もそこに行くんだ。これからもよろしくな。」
「えっ、カメオ君も高校一緒なんだ。これからはもっと仲良くなれそうだね。」
「ああ、そうだ。一緒に家に帰ろうか。」
「そうね。」
カメオとカメコはそういうと、手をつなぎながら小学校を出た。小学校の桜の花は美しく咲いていた。それはまるで2人の恋の実りを祝っているかのようだった。(終)
カメオ、完全にヒーローやないか…。
この物語は、恋のいわゆる「王道」に美しいトッピングを散りばめた面白い作品だと、総じて感じました。大筋としては、慣れない環境に苦しむカメコのもとに、カメオが颯爽と登場し、一時の別れを経て、再び繋がれる。始まりの舞台が小学校ということもあり、ヒーロー役のカメオのちょっぴりクサイ台詞が微笑ましく、穏やかに読み進められました。特に、「先生に言うぞ!」なんて、もう小学校の格言並みに小学生らしさを滲み出していて、カメオかっこよかわいいー!とニヤニヤしていました。
また、梅やデイ
今はもう、昔のことでございますが。
あるところに、竹を採って暮らしている老夫婦がおりました。
ある日、おじいさんがいつものように竹を採っていると、一本だけ光り輝いている竹があることに気が付きました。
「はて、この竹はなんだろうか。」
疑問に思って切ってみると、中から手のひらサイズの愛らしい赤ん坊が出てきました。⑥
老夫婦は子宝に恵まれなかったため大層喜びました。
彼女は「かぐや」と名をつけられ、大切に育てられました。
すると、彼女はすくすくと成長し見目麗しい少女となりました。
そんな噂を聞きつけて、かぐやは5人の有力者たちから彼女は求婚されました。
彼女は欲深かったため、その有力者全員の求婚に応じようとしましたが、彼らがそれを許しません。
そこで、彼女はそれぞれにおとぎ話の中にしか出てこないような品を持ってくるよう言い、それに応えられた者のもとへ嫁ぐと言い始めました。
一人目の男は仏の御石の鉢。海を渡ってインドまで買付に行きました。⑧
しかし、男は光の宿っていない偽物を掴まされてしまい求婚は失敗しました。
二人目の男は蓬莱の玉の枝。庭に生えていた立派な蜜柑の枝を手折り、職人にメッキさせました。
職人によって、蜜柑の枝は真珠を実らせた蓬莱の玉の枝へと化けました。
これにはかぐやも大喜び。さっそく結婚しましょうというところで、何やら異臭がすることに気が付きます。
メッキ加工などによって腐敗してしまった蜜柑の匂いから偽物だとばれてしまい、偽蓬莱の玉の枝は捨てられ、求婚は失敗しました。②
三人目の男は火鼠の皮衣。裕福なことで有名な彼は、火鼠の皮衣だという舶来品の毛皮を高値で買って差し出しました。
しかし、実際に火にくべてみるとあっという間に燃えて灰になってしまったため、この求婚も失敗しました。
四人目の男は竜の顎の珠。龍を倒しに意気揚々と海へ出ましたが、龍の怒りを買ってしまい嵐に襲われて遭難しかけ、命からがら帰ってきました。⑦
当然何も持ち帰ることができなかったため、この求婚も失敗しました。
最後の男は燕の子安貝。燕の巣に手を入れて探していると、これかと思う物が手に当たり“取れた”と思った瞬間に足場が崩れ腰の骨を折ってしまいました。⑤
その上、“取れた”と思った物は燕の糞だったのですから救いようがありません。この求婚も失敗しました。
こうして、5人の男たちの恋が破れました。⑩
これらの話を聞いた帝はかぐやに興味を持ち始めます。
そこへ、狐面の人物が現れて“本物”の宝物を用意します。
「さあ、これをどうぞ。これで物語は幸せな結末に至ります。」
帝は、宝物を持ってかぐやの元へ行きます。
そして、自分は本物を持ってきたと示すために燃えやすい紙を包んだ火鼠の皮衣を石製の釜戸で焼却します。
しかし、釜戸の中が灰だらけになっても皮衣だけは燃えずにいました。
皮衣を開けてみると、中の紙も燃えていません。
これを見てかぐやは自分の望むものを与えてくれる良き恋人に巡り会えたと喜び、帝と結婚しました。
しかし、かぐや姫は月の世界の住人です。帝と出会って一週間も経たぬ間に月から使者が迎えに来てしまいます。
それを察知したかぐや姫は帝を呼び出しました。
「わたくしはもう月に帰らなければなりません。
そこで、あなたへせめてものお返しとして不老長寿の魔法をかけさせていただきます。『
เวลานิรันดร์』」
そう言って紡ぎ出された魔法は、帝へと飛んでいき・・・
「見つけたわ!かぐや姫!」
その時かけられた言葉に皆が驚いて体制を崩してしまい、魔法は帝ではなく帝が手土産に持ってきた舶来品の砂時計にあたってしまい、砂時計の砂はもう落ちることはなくなってしまった。④
その元凶となったのは雲に乗った月の使者・・・ではなく、雲のような黒い触手の上に乗った4人の姫たち。
「あなたがかぐや姫ね!帝の求婚は断っているはずなのに・・・やっぱりおかしくなっていっているわね。」
「いろんなキレイな物持ってるわね・・・妬ましい・・・」
「Zzz」
「大切な人と別れるのは辛いけどぉ、一緒に来てもらうわよぉ?」
「問答無用ダ」
そういうと、慌てて宝物から壊れたスマホまですべてかき集め一つでも多く持っていこうとしているかぐや姫を黒い触手が丁寧につかみ取り、一瞬のうちにどこかへ去っていってしまいました。①
少なくとも、かぐや姫はもうしばらく月へは戻れないでしょう。③
少女たちは、どこを目指すのか。
(要素数9,文字数1788)
ー了ー
さあさあ、今宵のOUTISさんの挑戦は、前回主催様の手によって一段と厳しくなっております…。
前回の予言通り、創り出されたシリーズに月のプリンセスがやって来ました。…それにしても、まるで仕組まれたかのような、物語の精巧さが光っています。腐ったみかんや海外渡航などの要素が、有名な求婚のシーンとマッチしており、問題文の回収、ゴミ箱に捨てられた一枚の紙の使い方も素晴らしいです。主催としては、紙に何かしらのメッセージや暗号、最悪でも香りのようなものなど、つまり何か付与がされることを予想し、その中身やいかに…とい
この町は砂漠の街。今日も砂塵は町を覆い、砂時計は満ちてゆく。
この町の中心には大きな逆さまの漏斗があり、毎日起こる砂嵐によってその漏斗は常に満たされ、
通称「砂時計」と呼ばれていました。
そんなこの町の主な産業は生け花産業。デイジーを育てて、その花を環境を生かしてドライフラワーとし、それを周囲に売ることによって生計を立てています。
そんなわけで、この町には広大なデイジーの花畑が広がっており、大変きれいなものである。
これだけきれいな花畑があると観光業も発展しそうなものですが、残念ながらこの町特有の砂塵によって、観光客はほとんど訪れないのでした。
人が訪れないほどの砂塵が舞うこの街であるのに、何故だかそのデイジーは枯れることもなく、きらきらと咲き誇っています。
そんなこの町に一人の人物が訪れました。普通に最寄りの街からやってくるだけでも数時間かかるようなこの町に訪れたこの人物は明確に困っていました。
「...っち」手のひらサイズの携帯の画面をパシパシと叩き、しばらくそんなことを続けた後、諦めたように携帯をしまいます。
「翻訳が利かないとなると困ったな。せっかく時間をかけてこの町にやってきたというのに。このままでは、、、」
そうやってうんうんうなっていると、そんな様子を見かねたのか、一人の人物が声をかけてきました。
その人物が何かを言っているのは確かでしたが、それを理解するのは難しかったようです。諦めて、身振り手振りを用いて事情を説明しようとすると、
その人物も事情を察したかのように、街のほうへと誘導してくれました。
2人が街につくと、街の人々は遠くからの来訪者を歓迎するように、精一杯のもてなしをしました。
そこまで量がある食事でもなく、質の良いものでもありませんでしたが、真心のこもった良い食事でした
現地の人々と、お互いの言葉を教えあったりもしました。
そんな日々を過ごす中で、彼らはお互いに恋心を抱いていきました。
しかし、言葉の通じない彼らの思いが知られるようなことはありませんでした。
そうして数日が立った日のこと。連絡が取れなくなった"彼女"のことを心配して、本国から迎えが来ました。
迎えが来た彼女のことを祝い、村のみんなは彼女の歓迎会を開きました。
翌日に期間を控えた彼女の元に、最初に彼女に声を掛けた彼。彼女と恋心を抱いている彼が別れの挨拶をしてきました。
その言葉は大変拙いものでしたが、それは彼女の心をとらえていきました。
しかし、最後に刻まれた言葉は彼女の心を大きく傷つけました。
それは、彼女の国での最大級の侮蔑の言葉でした。
彼女はその言葉に悲しみました。彼のことを押しのけて、部屋を出て、本国の車に駆け込み、そのまま彼と会うことはありませんでした。
実は彼女は彼女はかの街に雨を降らせてあげる研究を推し進めていました。
実地検査の際、計測機器が破損してしまい、その町のお世話になっていたのです。
結果として彼女の研究は大きな成果をなし、街から帰った半年後には、その街に雨を降らせることに成功しました。
過剰に降らせることもなく、最適な環境を整えることのできる。そんな環境を整えられた。
そう思っていました。結果を見るために街に訪れるまでは。
街に訪れた彼女の目の前に広がっていたのは、崩れ落ちた人間の死体でした。それは一つ二つではなく、無数に町全体に広がっていました。
原因の探求を行うと、ドライフラワー及びアロマオイルの製造に乾燥地で関わり続けていた人物が突然の過剰な湿気に触れたことによって、表皮が変質し、
崩れてしまったようです。街のところどころには、腐ったミカンや、ボロボロになったデイジーの花束が落ちていました。
その様子を見た彼女は走り出しました。かつて愛した彼の家へ。彼女を拒んだ彼の家へ。雨にその身が濡れることも厭わずに。
そこには周りと同じく変わり果てた彼の亡骸がありました。
彼女は膝から崩れおちました。その頬に伝ったのは雨だったでしょうか。それとも...
その後、せめて部屋に何か彼を感じられるものがないかと中を見ていると、その一角のごみ箱に一片の紙片が落ちていました。
そこには彼が彼女に伝えた内容が、現地のほうの言葉で書かれていた。そこには正しく彼女への愛の言葉が紡がれていた。
彼と彼女の間を断ち切ったのは雨なのか。言葉なのか。それとも両方か。
この町は雨の街。今日も雨は街を覆い、街を覆った砂を洗い流す。
かつてあった砂時計はもう落ちることはない。泥に満ちた漏斗は固まり、崩れ行く。~終~
[編集済]
街のシンボルとなる大きな砂時計に、ドライフラワーの主産業。やや異質でファンタジアな雰囲気の漂う冒頭は、まず読者の心を惹き付けます。そういった「異国」で迷った彼女と、彼とのやり取りは直接会話文が登場することはなく、語り手のプレイバック調で進行されるので、静かで穏やかな時間が流れていました。それが、前半。
後半の回収は、真実を淡々と明かしていく様が衝撃的で、思わず文章を読み返してしまいます。擦れ違った二人の勘違いが正され、問題文のように恋が「叶ったことを知った」頃には、後悔や懺悔の気持ちが残るばかり。彼女の
ヒナはある日ホダカに告白したのだが,ヒナの思いはホダカには通じなかった.
ホダカいわく,「俺もお前のことが大好きだ・・・でも・・・・会社の重要なプロジェクトを任されて⑧海外に行くことになった.もう日本には戻ってこないかもしれない.」とのことだ.
ヒナのショックは大きかった.
「今まで私たちは付き合ってなかったけど,いつも恋人同士みたいに過ごしてきたのに・・・」
今までドラマなどで⑩誰かの恋が破れるシーンはさんざん見てきたけど,
まさか私の恋が破れるなんて思ってもいなかったからだ.
その日はホダカの連絡先を携帯から消去して,以降一生懸命ホダカのことを忘れようとした.
しかし,そのまたある日携帯が鳴った.この番号!見覚えがある!ホダカからだ!
どうしても伝えたいことがあるから家に来てほしいとのことだった.
内心不安になりながらもホダカの家に向かうことにした.
訳が分からないまま,ホダカの家に到着したヒナ.
そこでホダカはいきなり「ごみ箱の中を見てみろ」と言ったので,
ごみ箱を覗いてみたところ,そこには②腐ったみかんのほかに
1枚の紙が破いて捨ててあった.その紙には「海外出張届」と書いてある.
これを見たヒナはもしやと思った.
(海外出張届を破り捨てているということはこの前の私の告白が届いたってこと?)
ホダカは「この通り,俺は海外にはいかない!破り捨てたからには③もう後戻りはできない.だからこの前の告白への返事を撤回させてもらう.だから俺と付き合ってほしい.」
ヒナの想像通りだった.ヒナの目には涙が浮かんでいた.
(でもなぜ?会社の重要なプロジェクトをけってまで私を?)
ヒナはこう思った.
ホダカいわく,海外出張用に手渡されたスマホの部品が⑤とれてしまい①壊れてしまったため,
縁起の悪さを鑑みた上司に出張を止められたらしい.
それ以外にも転勤先の海外の方々との面談の際にも応接間の④砂時計の砂が落ちなくなってしまうなど,
不審な出来事が相次ぎ,転勤先の方々にいい印象を持たれなかったらしい.
こんな経緯で海外出張に行かなくなったホダカ.
そんな彼がさらに写真をヒナに見せた.
そこには⑨デイジーの花畑が映っていた.
⑦雨が降っていて全体的に暗い背景であったが⑥手のひらサイズの写真の中で赤いデイジーの色が明るく輝いていた.
「知ってるか?デイジーっていうのは日本語ではヒナギクのことなんだ.お前のように美しいヒナギクのことなんだ.
しかも,ここに映っているのは赤いデイジー.花言葉は「無意識」
なんというか,お前に告白されてから,お前のことを無意識に想うことが多くなってだな.
あれから,出張がなくなるように必死に願っていたんだよ.そしたら運よく叶ってしまったわけさ.
今度,この花畑に行こう!そこでまた別の言葉をお前に伝えなきゃな!」
ヒナはなんとなくプロポーズの予感を感じながら,ホダカを抱きしめた.
ホダカは不審な出来事をたくさん起こすほどのトラブルメーカーだが,ヒナはなんとなく2人ならどんな出来事も乗り切れる気がした.
(全要素使用)
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お洒落で、それに思い切った告白だ…。
前半のヒナの心情描写が共感を誘うもので、リアルな感じが致しました。そうそう、こうやって幾人もの恋の物語を読んでいる私だって、急に恋が破れるシーンとは無縁だなんて、勝手に思ってますもん。一種の正常性バイアスのような。いや、というかそもそも私にはそういう恋にすら無縁で…?…あ、話が逸れてしまいましたね。戻します!
また、ホダカの決断にも思い切ったものを感じます。ゴミ箱に他の何か希望を捨てる、という演出は他にもありましたが、こちらは自らの夢、海外渡航を捨てています。彼が
小さな神社の神である私。
賽銭箱の蓋はとれて⑤おり、錆びた南京錠と共に木の葉に埋もれている。
私は『屑箱』と呼んでいた。
訳の分からない物があれこれ捨てられているので、妥当な呼び名だと思っている。
ひと月ほど前、異国人の旅行者⑧らしき二人組が置いていったミカン。
大方迷い込んだのだろうが…。
かろうじて神社の体を保っている為、記念として『オソナエ』をして行ったのだろう。
それが腐臭を放ち始めたことにも、私は辟易していた。
ある雨の日⑦、一人の若い女が訪れた。
「ほんとに、あったんだ…。知らなくて、ごめんなさい」
珍しい。
『私』に話しかける人間と会うのはいつぶりか。
信仰は十数年前にほぼ途絶え、もはや私は弱く小さくなってしまっていた。
「このミカン、捨てた方がいいですか?」
おずおずと腐ったミカンに手を伸ばす女に、私は声を掛けた②。
―――そうしてくれるとありがたいな。
「お供え物だしなぁ。でも、新しい物を持ってきたので!」
やはり私の声は聞こえていないらしい。
手のひらサイズ⑥の、饅頭。
昔はよく供えられた物だ。
なんと懐かしい。
彼女は呼吸を整え、二礼二拍手一礼をした。
そして堰を切ったように言う。
「あのっ、私ずっとウミオが好きで…恋人になりたいんです!」
―――え、ウミオ誰?
幾度も人の恋が破れる所を見てきた⑩。
そもそも私には縁結びの才能がないのだ。
「ここで縁結びしてもらうと、絶対叶うって聞いて…」
可哀想に。ガセネタをつかまされたのか。
確かに数十年前、一度だけ成功したことはあるが…。
女は毎日のように訪れては、境内や屑箱の掃除をしてくれた。
そうして帰り際、屑箱に必ず五円玉を入れて願うのだ。
「どうか、ウミオと…」
―――人の子。毎日、ありがとう。
「え?誰!?」
辺りを見回す女。
私はからからと笑った。
―――君のおかげで少しは力が戻ったらしい。
「気のせいかな?何か聞こえたような気がしたけど…」
足繁く訪れる彼女の恋をどうにか上手く結んでやりたい。
あの時の感覚を思い出すのだ!!
屑箱……いや、今は綺麗に磨かれた賽銭箱の中。
私は特別な一枚の紙に少しシワを入れてから敢えて投げ捨てた。
もしあの子以外が目にしても、屑にしか見えぬよう。
「神様、今日はいいお天気ですねー。栗饅頭、お好きですか?」
賽銭箱の中には、彼女が入れた五円玉がもう幾つも入っていた。
不用心だが、蓋も鍵もないのだから仕方ない。
「あれ?紙切れが入ってる。また誰かがゴミを?」
拾い上げた女は息をのんだ。
『恋愛、必ず成就する』
ほとんどは、彼女の努力であった。
事実私は、ちょっとした手助けくらいしかできなかったのだ。
後日、律儀に成就報告へと訪れた彼女とウミオの幸せそうな笑顔を見て、私には更に力が漲った。
(神様、ありがとうございます!そして亡くなる前に教えてくれたお婆ちゃんも…)
彼女の心の声が聞こえた。
―――そうか、あの子の孫だったか。
私はまた、からからと笑った。
【完】
要素6個
うわぁ大好きだー!!この作品めっちゃ好きですみづさん本当に!後で冷静になって感想書きます!
ということで、冷静になったさなめ。です(上の後日)。まず、お題文のゴミ箱が一捻りされ、神社の賽銭箱となっていました。普通のゴミ箱ではないというだけではなく、ゴミ箱、いや「屑箱」の実物が感じさせる荒れ廃れた印象を形にして残すことで、神社のもの寂しさを私たちの心に植えつけています。要素自体は特異なものを使うことなく、普遍的で曖昧な要素を率直素直に使うことで、むしろ元々の物語の世界観を崩すことなく、引き立てる役割を担い
「あれ…ここどこ…?」
私がふと目を覚ますと、そこは海外だった⑧。
周りを見渡すと見知らぬ部屋のベッドにいて、季節は8月だと言うのに窓の外には雨が降っていた⑦。
「これって私…もしかして……」
「他の人と入れ替わってる~~~?」
そうこうしているうちに一人の女性がやってきた。
おそらく入れ替わっている誰かの母親だろう。言葉はわからなかったが、枕元にスマートフォンがあったので翻訳機能を使って状況を説明した(英語で伝わった)。
彼女は半信半疑だったが、その日は無事一日を過ごした。
どうやらいつか見た映画のように簡単に元の体には戻れない③らしい。一日経っても入れ替わったままだった。
そして、入れ替わりの相手とも連絡がとれた⑤。
自分のスマホに電話をかけてみるとつながったのだ。
英語はあまり得意ではなかったが、片言で連絡や雑談をするうちに彼に恋心を抱くようになった。
しかし、ある日突然スマホが壊れた①。うっかりトイレに水没させてしまった。彼と連絡ができなくなってしまった。
次の朝、ベッドから起きると元の生活に戻っていた。彼に想いを伝えられないまま戻ってきたのだと気付くと悔しかった。
ひとまず布団から出て朝食をとった。机が汚れたのでティッシュで拭いて捨てようとすると、見覚えのない紙が捨ててあった。取り出して見るとこう書かれていた。
「I love you.」
私はとても嬉しくなった。
~完~
タイトルで既に、かの有名な曲が流れてくるようでした…。
入れ替わってる!?その設定をここまでに持って来られるとは、と驚きながら、物語を読み進めるとあっという間の短さ。あれ、本当に要素5コもありましたっけ…?従来のMさんのスタイルを貫く、「短さと成立の両立」をしっかり成し遂げられていて、やはり匠の技は凄い、と感嘆しました。
…というより、朝起きたら海外に飛ばされちゃう彼女、本当に可哀想過ぎませんか??神様何してるんですか?悪戯じゃない悪戯好き過ぎませんか???(錯乱中。)急に海外に飛ばされちゃって、
[編集済]
晴香(はるか)は昔から奏汰(そうた)のことが好きだった。
高校2年生のときに同じクラスになってから、ずっと。
スポーツができるわけでもなく、抜きんでて顔が格好いいというわけでもない。
けれど、他の男子にはない、優しい雰囲気を持っていた。
最初に奏汰と話したのは、5月に入って最初のホームルームだった。
機械に疎い晴香は、高校に入学して初めて親に買ってもらったスマートフォンを、1年経ってもうまく使いこなせていなかった。
カレンダーアプリに予定を書き込もうとしたら、間違えたところを触ってしまい、いつもと違う画面になってしまった。
慌ててホームに戻るボタンを押したらかえって状況は悪化してしまった。
画面が真っ暗になったまま、点かなくなってしまったのだ。
「どうしよう、壊しちゃった…①」
晴香が焦っていると、横から「どうしたの?」と声が聞こえた。
それが奏汰だった。
「えっと…? ごめん…」
「あぁ、俺は吉田。吉田奏汰だよ。」
「あ、吉田くん。ごめんね、私、人の名前覚えるの苦手で…」
「奏汰でいいよ、木山さん」
「あ、奏汰…くん」
そこで、私も下の名前でいいよ、と言えればいいのだろう。けれど晴香の引っ込み思案が災いして、うまく言えずにためらっているうちに話は進んでしまった。
「で、どうしたの、何か困っているみたいだけど」
「あ…、そうなの、実はスマートフォンが点かなくなっちゃって」
「そっか、ちょっと貸してくれる?」
奏汰は晴香からスマートフォンを受け取ると、少しだけ操作をした。
と思うと、次の瞬間「はい、無事点きましたー」といって、返してくれた。
見ると、晴香のスマートフォンは明るい光を放って、待ち受け画面に設定されているデイジーの花畑を映し出していた。⑨
「わ、奏汰くんすごい…! ありがとう!」
「どういたしまして、電源が切れてただけだったよ」
「あっ、そうなんだ…。私、カレンダーを開こうとしてて…」
晴香がそういうと、奏汰は吹き出した。
「アプリ開こうとして電源切っちゃうなんて…。木山さん、ひょっとして機械音痴?」
「え、うん…小さいころから、機械触るのすごく苦手で…」
機械音痴を笑われたが、不思議とあまり嫌な気持ちはしなかった。
「そうなんだ。その待ち受け、デイジーの花?」
「うん、そうみたい」
「そうみたいって、知らないの?」
「うん。写真が変えられるのは知ってるんだけど、変え方がわからなかったから、最初に設定されてた写真のまんまで…」
「そっか、まあでも、かわいいよね、その写真」
「うん、変えなくてもいいかな、って思ってる。…まあ、変えようにも方法がわからないんだけど」
奏汰は、ははは、と笑った後、意外なことを言った。
「じゃあ、俺がいろいろ教えてあげようか?」
「え、色々って?」
「木山さん、機械に弱いんでしょ? 俺、結構そういうの得意だから。どう? スマホ使いこなせるようになると、便利だよ」
「……」
これまでの晴香なら、ううん大丈夫、ありがとう、とでも言って断る場面だった。
でも、高校には情報の授業があり、1人ひとりパソコンを使う授業がある。
スマートフォンもまともに扱えないようじゃ、このままでは困ってしまう。
高校に入って、今が変わるチャンスなのかもしれない。
そう思った晴香は、横に振ろうと思った首を、縦に振った。
「じゃあ、お願い、します」
「オッケー、じゃあ、こんどうちに来てくれる?」
「えっ…?」
「パソコンもって学校来るわけにもいかないじゃん? うち両親が共働きだから、昼間は基本的に家にいないから」
「…うん」
「じゃあ、明後日、放課後ね、木山さん」
こうして、晴香は名前で、奏汰は苗字にさん付けで呼び合う奇妙な関係が出来上がってしまった。
友達の家に遊びに行くのなんて、いつ以来だろう。
小学生の頃は、仲のいい近所の友達の家に行ったこともあったが、中学に上がってからはそんな経験、覚えてる範囲では、1度もない。
ましてや、男の子の家なんて、行ったことなかった。
でも、すでに少し奏汰に惹かれていることも手伝って、今度の午前授業の日に奏汰の家に行くことを約束した。
家に帰って母にそのことを伝えると、これでパソコンも使いこなせるようになるといいわね、と言ってくれた。
晴香の性格を知っている母は、男の子の家に遊びに行くことを揶揄したりはしゃいだりはしない。
それでも、年頃の娘に"おともだち"ができたことを悪くは思っていないのだろう。
なにかお菓子買わないとね、とだけ言った。
2日後、晴香は授業が終わると、奏汰と一緒に奏汰の家に向かった。
その日はあいにくの雨だったが、奏汰の家は近所だというので、2人で傘をさして並んで歩いた。⑦
奏汰が時折咳をしていることに気づいたのは、家に着く直前だった。
「大丈夫? 咳…」
「あぁ、大丈夫だよ。俺昔から、雨が降ってる日は体調が、ゴホッ、悪くなりやすくて」
「そうなの…ほかの日にする? 来週も午前授業の日あるから」
「いや、家に帰ったら薬があるから。飲めばすぐ治まるから…げほっ、ごめんね」
「…うん」
「ほら、着いたよ。ここが俺の家」
家に到着して、この話は終わってしまった。
奏汰の部屋に通されると、ちょっと待ってて、と言って奏汰は薬を飲みに台所に行ってしまった。
奏汰の部屋には勉強机であろう机のほかに、もう1つ大きな机があり、大きな画面がおいてあった。
「奏汰くんの部屋って、テレビがあるんだ」
思わず感動してそう口にすると、
「え? テレビはないよ?」
「え、じゃあこれは?」
「あぁ、これ、パソコン。パソコンのディスプレイだよ」
「えぇっ! こんなに大きいの!?」
驚いた。晴香が知っているパソコンは、A4サイズのプリント程度の大きさだった。目の前におかれた画面は、晴香の家のテレビぐらいの大きさがある。
「パソコンって、こんなに大きいんだ…」
「今はいろいろあるよ。これは結構大きいやつだけど、コンパクトなサイズだと、手のひらに載っちゃうくらい小さいやつもあるんだよ⑥」
コップに入れたジュースと、晴香が持ってきたお菓子を持って奏汰が戻ってきながら言った。
「へぇ…奏汰くん。物知りなんだね」
「パソコンとか、好きだからね。結構詳しい方だと思ってる」
「へぇ、かっこいいなぁ…」
「そ、そう? じゃあ、始めようか。」
何の気なしに晴香が言ったセリフだったが、奏汰は照れたらしく、そそくさとパソコンの説明にとりかかり始めた。もちろん、晴香はそれに気づいてはいないのだけれど。
「…で、こうすれば、この写真を保存できる、と。どう、わかった?」
「うん。奏汰くんの説明、とってもわかりやすかった。ありがとう。でも、さいごの保存のやり方、もう一回教えてくれる?」
「ふふ、木山さん、まじめだなぁ。いいよ、じゃあ実際にやってみて、わからなかったら教えるから」
「うん、わかった。えっと、何の写真にしようかなぁ…」
「そうだ、"デイジー"って検索してみてよ」
「ん? うん、わかった。えっと、D、E、I、Z、I、-、…っと。」
「うん、オッケーオッケー。ひらがなで「でいじー」になってるけど、大丈夫だよ」
意地悪そうに笑う奏汰に、顔を赤くする晴香。
「じゃあ、この写真。これ、保存してみて」
「…うん。えっと、ここで右クリックして、あ、違う…」
試行錯誤の末、なんとか1つのデイジーの写真を保存することができた。
「オッケー。これで保存できてるよ」
「ふぅ、何とかできた」
「よし、じゃあ今保存した画像、消してみよう!」
「えぇっ!? やっと保存できたのに、消しちゃうの?」
それも勉強の1つだよ、と笑う奏汰。
晴香が渋っていると、じゃあしょうがないなぁ、と晴香の手からマウスを取ると、何やらカチカチっと素早く操作をしている。
すると、次の瞬間、画面がパッと変わって、画面いっぱいにデイジーの花畑が現れた。
「はい、これで背景の写真になったよ」
「わぁ…。いいの、変えちゃって?」
と晴香が訊くと、
「うん、このパソコン買ったときに変えて以来ずっと使ってたから。そろそろ変えようかなとも思ってたし」
晴香が写真に感動しているのも束の間、はいじゃあ消してみようー、と奏汰の無慈悲な声で言う。
「えぇー…」とためらいながらも、背景になっているからまぁいいか、と割り切って、教わった通りに写真のアイコンを「ゴミ箱」にドラッグする。
「うん。だいぶ上達したね」
「でも、今の写真、せっかく保存したのに…」
拗ねる晴香に気を遣ったのか、奏汰は、一応ゴミ箱の中には残り続けるから、と教えてくれた。
そっか、じゃあ安心だ、と言って、晴香は立ち上がった。そろそろ帰る時間になっていた。残念ながら。
玄関まで送るよ、と奏汰も立ち上がり、部屋を出ようとしたところで、晴香があのさ、と言った。
「さっき本棚で見たんだけど、奏汰くん、五月雨涼花さん好きなの?」
五月雨涼花とは、新進気鋭の作家のことである。晴香も気に入って何冊か本を読んだことがあった。
「うん、結構好きだよ。木山さんも?」
「うん。奏汰くん、最新刊の『砂時計の砂はもう落ちることはない』持ってるよね。もしよかったら、貸してくれないかな…?」④
「うん、いいよ、…はい」
「ありがとう、今度返すね」
「うん。気を付けて帰ってね、ゲホッ…」
「大丈夫? 奏汰くんも気を付けてね」
薬を飲んだはずなのにまだ少し咳の残る奏汰が心配だったが、毎度のことなのだろう。
大丈夫大丈夫、と手を振る奏汰を後にして、晴香は家を出た。
外はもう暗かった。
振り返ってみると、今日はとても楽しい1日だった。
晴香は、自分が奏汰に想いを寄せていることに気づいていた。
最後に本を借りたのも、晴香なりに、また遊びに来るねというアピールのつもりだった。
傘をさして、数時間前に2人で歩いた道を、歩いて戻る。
心なしか、足取りが軽く感じた。
家に帰って、スマートフォンを開き、先ほどの「練習」で教えてもらったメールアドレス宛に、メールの文章を打ち込んでいく。
自分が男の子にアドレスを聞くなんて、そんな日は来ないと思っていたが、奏汰の方から教えてもらえることは、もっと考えていなかった。
メールの文章を何度も確認して、送信のマークをタップする。
緊張したぶん眠くなってしまい、そのまま寝てしまった。
奏汰くん
慣れないメールだからうまく届いてるか不安だけど。今日はいろいろありがとう。おかげさまで、ちょっとパソコンが楽しく感じました。もしよかったら、またほかの事も教えてほしいです。借りた本、今度読み終わったら返すね。また明日、学校でね。おやすみなさい。
晴香より
こうして、何度か奏汰の家に勉強しに行っているうちに、晴香は人並みにパソコンの操作ができるようになった。
五月雨涼花の本も、何度か借りたり、また、貸したりした。
その間、奏汰のデスクトップの壁紙は、何度訪れてもデイジーのままだった。
晴香のスマートフォンも、ずっと初期設定のデイジーが揺れていた。
晴香はそれが嬉しかった。
いつしか2人は、互いに惹かれ合っていた。
それでも、言葉にするわけでもなく、そのままの状態で2人は日々を重ねていった。
高校3年生の冬、奏汰の家で一緒に受験勉強をすることになった。
その約束だったのに、その日は学校に奏汰が来なかった。
雪が降っていたので、体調が悪いのかと思い、様子を伺うメールをしてみた。
すると、短いメールが返ってきた。
ごめん、今日は一緒に勉強できない。ごめん。
大丈夫なのだろうか。
もしよかったら看病しようか、とメールを送ったが、返事は来なかった。
なんとなく不安だ。
最近、1度雨の日に体調が悪くなるとそれが続くことが多いと言っていたことを思い出す。
行ってみようか。
平日は両親が仕事で帰りが遅いと言っていたので、少しでも1人でいる時間を減らしたかった。
と、いいつつ、自分が奏汰に会いたいだけなのも、晴香はわかっていた。
雪の中、奏汰の家に行くと、晴香は家に入るすべがないことに気が付いた。
奏汰は寝ているかもしれない。寝ていなくても、体調の悪い奏汰を玄関まで鍵を開けさせに呼ぶのも忍びなかった。
どうしようか。
先ほど送ったメールには、まだ返信はなかった。
一度だけインターホンを鳴らして、出てこなかったら帰ろう。
そう決めて、晴香はインターホンを押す。
ぴーん、ぽーん、と電子音が鳴り、やがて消えた。
仕方がない、と帰ろうとしたそのとき、スマートフォンが振動した。
見ると、奏汰からのメールだった。
木山さん、ひょっとしてうちの前にいる?
びっくりして、うん、と小さくつぶやく。
そして、これはメールだったんだ、と思い直し、うん、いるよ。体調は大丈夫? 出られないくらい? とメールを返す。
するとほどなくして、今度は電話が鳴りだした。
思えば、家族以外の人とスマートフォンで電話をするのは、これが初めてだった。
電話をとると、小さく奏汰の声が聞こえてきた。
「もしもし、大丈夫? 今家の前にいるけど」
『郵便受け、あるでしょ? その中に、うちの鍵がぶら下がってるから、開けて入ってきてくれないかな。あの…』
「え? う、うん。わかった。奏汰くん、大丈夫?」
『うん、大したこと、ないよ。薬も、ちゃんと飲んだし』
大したことない、が嘘なのはすぐに分かった。
ひとまず通話を切り、晴香は鍵を開けた
奏汰の部屋に入ると、ベッドに横たわった奏汰の姿があった。
「お邪魔します…大丈夫? 風邪?」
「うん、多分、ただの風邪…ゲホッ、ゲホッ」
「ひどい咳だよ、大丈夫?」
「うん…それより、ありがとう、わざわざ、来てくれて」
「うん、それは大丈夫なんだけど。お昼とか、ちゃんと食べた?」
「うん、母さんが、おかゆ作ってくれたから…あと、みかんも…」
「そっか。…って、あれ、このみかん、腐ってない?」
「本当? 俺が食べたのは、大丈夫だったはずだけど。…ゴホゴホッ…」
「大丈夫? うーん、ならいいけど…一応これよけとくね」②
腐ったみかんを箱から出しながら、私はふと、さっき奏汰が電話で「あの…」と言いかけていたことを思い出した。
「そういえば、さっき何か言いかけてなかった? 電話で」
「ああ、大したことじゃないんだけど」
そのあとに奏汰が言った言葉は、とても意外なものだった。
「うん、実は…今日、一緒に勉強できるはずだったのに、会えなくなっちゃって。ちょっと俺、寂しかったんだ。だから、家に来てくれたって知って、なんか、ちょっと、嬉しくて…」
とぎれとぎれに言う奏汰の姿を見ていたら、晴香は自分の気持ちが抑えられなくなってしまった。
どうしよう。私、奏汰くんのことが、好きだ。
今まで、誰の事も好きになってこなかった晴香だけれど、この気持ちが恋なんだ、とその瞬間に悟った。
もう戻れない。③
好きだ。
晴香は、思わず奏汰の顔に触れていた。
雪の中歩いて冷えた手のひらに、火照った奏汰の頬が触れる。
そのまま、奏汰の身体を抱きしめていた。
奏汰は動かなかったが、優しく、晴香の手を握ってくれた。
「私、奏汰くんのこと、好き」
思わず、口にしていた。
言ってから、自分の言葉にびっくりして、私は赤くなってしまった。
でも、もう止められない。
私は、栓がとれたように、今まで奏汰に秘密にしていたことを打ち明けた。⑤
「私、奏汰くんと同じ大学に行きたい。ずっと秘密にしてたんだけど、奏汰くんN大学の工学部志望なんだよね。私、N大学の文学部を志望してて、それは奏汰くんと同じ大学に行きたいからなの。高校卒業してからも、奏汰くんと一緒にいたくて、で、N大学に文学部があるって知って、それで…」
一気に捲し立てる晴香をきょとんとした表情で見つめる奏汰。そして、その顔はゆっくりと笑顔に変わっていった。
「ふふっ、あのね、木山さん。実はそれ、知ってたよ」
「えぇっ!?」
「こないだの模試の結果、パソコンでしか、見られないからって、うちに来て見たよね。」
「うん、うちパソコンないからって…」
「ちゃんと見終わった後は、ログアウトして履歴消さないと。あのあと、俺も見ようと思ってパソコン開いたら、データ残ってたんだよ」
と言って、奏汰は意地悪そうに笑った。
「え、でも、奏汰くんが、そのままでいいって言ったから…」
「それは、俺も、木山さんがどこの大学に行きたいのか、知りたかったから」
「えっ……」
あっけらかんと話す奏汰に、晴香は絶句してしまった。
そんな晴香に、奏汰は手を繋ぎながら優しく言った。
「2人とも、受かるといいね」
あのあと、奏汰の家を出た晴香は、奏汰の風邪をもらって寝込んだものの、受験勉強を頑張り、無事にN大学文学部に合格した。
奏汰も奏汰で、1日で風邪を治したかと思うと、そこから猛勉強し、危なげなくN大学工学部への合格切符を手に入れた。
合格発表の翌日、奏汰は晴香を映画に誘った。
話題の、五月雨涼花原作の小説を映画化した作品だった。
純愛なラブストーリーを楽しんだ帰り、晴香は思い切って奏汰に告白した。
しかし、意外なことに奏汰は悲しそうな顔を見せ、その告白を断った。
「本当にごめん、俺も木山さんのこと、好きなんだけど、でも、付き合うことはできないんだ」
「……」
晴香は、何も言えなかった。
どうしてだろう。
いままで一緒に過ごしてきたのに。
好きな気持ちは変わらないはずなのに。
奏汰のことが好きで、同じ大学に向けて2人で頑張ってきたのに。
晴香は、生まれで初めての失恋を経験した。⑩
奏汰の病気が悪化して、奏汰が亡くなったことを聞いたのはそれから半年後のことだった。
大学内でも、学部が違うからかすれ違うこともなかったし、告白してフラれた手前、連絡をとるのもはばかられたため、晴香からメールをすることはできなかった。そして、そのままだんだんと疎遠になって言ってしまっていた。
奏汰の訃報をきいて、半年ぶりに奏汰の家を訪ねた。
葬式は身内だけで行われたため、線香をあげに行こうと思ったのだ。
両親に、クラスメイトである旨を告げ、奏汰の部屋に入らせてもらった。
あの頃と変わらない部屋を見て、感慨に浸る。
ふと、奏汰のパソコンが気になった。
母親に許可をもらってから、電源を付ける。
すると、デスクトップの背景が、初期設定の青いものになっている事に気が付いた。
奏汰はあの後背景を変えてしまったのか。
少し残念に思いながら、ふとゴミ箱をのぞいてみる。
前に、壁紙に設定した元の写真が残っているかもしれないと思ったのだ。
ゴミ箱のアイコンをダブルクリックする。
すると、中には画像ファイルはなかった。
そして、その代わりに、「晴香へ」と題したテキストファイルが1つ、入っていた。
驚いて、ごくりと唾を飲み込む。
そして、奏汰から教わったようにデスクトップに移動させ、ダブルクリックで開く。
それは、奏汰からのメッセージだった。
晴香へ
まず、病気のことを黙っていてごめんなさい。
実は、俺は高校の途中辺りから、病気にかかっていて、お医者さんにあと何年生きられるかわからない状態だ、といわれていました。だから、一緒に映画を見に行った日、晴香が告白してくれてすごく嬉しかったんだけど、あと何年一緒にいられるかもわからない状態で、誰かと付き合うのはよくないと思って、断ってしまいました。本当にごめんなさい。
でも、告白してくれたこと、好きだと言ってくれたこと、すごくうれしかった。俺も、晴香のことが大好きだった。
俺はもう少しでこの世を去ってしまうけれど、その後、このパソコンを晴香に差し上げます。
ただし、条件があります。
それは、デスクトップの背景を、デイジーの写真にすること。
本当は俺がもう少し生きられたら、一緒にイタリアに行って、本場のデイジーの写真を一緒に撮りたかったけど。⑧
それは叶わなそうなので、晴香に託します。晴香なら、今までの壁紙よりいい写真が撮れるとおもう。
だから、今までの写真は、消しちゃいました。Shift+Deleteでね。(笑)
そして、一緒に勉強をしたこのパソコンを、俺だと思って、ずっと大切にしてください。
最後になりますが、晴香、ずっとずっと大好きだったよ。
奏汰より
涙が止まらなかった。
どうして奏汰は。
どうして、最期まで一緒にいさせてくれなかったんだ。
失恋なんかしていなかったんだ。
奏汰は、私の事をずっと想っていてくれてたんだ。
両親が見ているのもかまわず、晴香は泣き続けた。
そして、どれくらいの時間が経っただろうか。
晴香はゆっくりと立ち上がると、デスクトップにある1つのテキストファイルを、ゆっくりと保護設定した。
【完】
[編集済]
先に言っておかないと忘れてしまいそうなので、問題文のトリックから。「ゴミ箱」をバーチャルな世界に連れていく発想は面白いと思いました。パソコンの機能としてのゴミ箱にすることで、捨てられた「紙」が何かの文書であることへの説明がつきやすくなりますし、何よりパソコンという重要なアイテムを無理なく物語に組み込ませられています。
…その物語ですね、大好きです。本当に。大前提として、今回の創りだすは短いものが多く集まるルールとなっており、長文を投稿する際は、長文なりの魅力を引き出し、癖の強い要素を巧く組み込む必要があ
秘密の部屋にて、感想の続きを掲示しております。
合言葉「はきだめにはる」
です。よろしくお願いします。
参加者一覧 16人(クリックすると質問が絞れます)
結果、発表ーーーーー!!!!
ご来場の皆様、紳士淑女その他の皆様。大変お待たせ致しました!結果発表のお時間です!
今回の創りだすでは、12人の素晴らしいシェフの方々に依り、14作品が誕生しました。感謝感激雨さなめ。でーーー、ございます!本当にありがとうございました!
ドキドキの結果発表に、移りましょー!
最難関要素賞
ご安心を。今回はしっかり、上位3要素での発表ですので。
第3位
🥉『誰かの恋が破れる』(藤井さん)
第3位にはこちらの要素がランクイン!
この要素、癖がないからこそ、難しいのです。問題文の女の恋を一度破らせるか、それとも違う者を出すか。要素自体にストーリーが秘められており、短文部門の作品を悩ませるものとなったのではないでしょうか…!
第2位
🥈『砂時計の砂はもう落ちることはない』(かふぇ・もかろにさん)
接戦で惜しくも2位となった不思議ちゃん要素!
砂時計を登場させた上で、もう落ちることはない、と独白的な表現にどう繋げるか…。これは難しい。
癖もマシマシで、これが1位でも不思議ではなかったでしょう!
そんな第2位を破った、最難関要素は…。
第1位
🥇『デイジーの花畑は重要』(ぎんがけいさん)
これだーーーー!
「デイジーの、花畑??デイジーさんって、どちら様でしょうか??」
知識のない主催は、デイジーという花があることすら初めは知らなかったので、デイジーさんが持つ花畑のことかな、と思っておりました。それこそ、あのオレンジ色の…。
…いや、どちらにせよ、不思議ちゃん過ぎる。難関要素です!
それに重ね、「重要」なのですから、物語のスキマにしれっと紛れ込ませることが不可能なのも辛い部分で、何もかも難しい、最難関要素に相応しい質問でした!
ぎんがけいさん、おめでとうございます!
次なる表彰は、匠、エモンガ賞!
1位発表とさせて頂きます!
匠賞
匠の腕が輝いたのは…!!
🥇『背景に咲くデイジー』(作:靴下さん)
こちらの作品です!
今回の創りだすでは稀有なものとなっていた、長文作品がランクイン!
短文が混在する中、長文であるからこその魅力をふんだんに詰め込んだ作品でございまして、問題文の回収もお見事!
また、いつものように匠賞は大混戦の模様を呈しております。後々投票会場を訪れて、是非是非ご覧下さい。やっぱり!この作品がある!ってなること必見です!
靴下さん、匠賞受賞、おめでとうございます!
エモンガ賞
勝利のエモンガが微笑んだのは…!!
🥇『背景に咲くデイジー』(作:靴下さん)
なんとー!匠賞との同時受賞!靴下さんのもとへと、エモンガが舞い降りましたーー!
この作品の大きな魅力のひとつ、緻密な描写に裏打ちされた、暖かみのある登場人物!また、鮮やかな対比に依って際立つ衝撃、感動のラスト!そしてそしてっ!デイジーの花畑の見事な味付け!
大変エモンガ溢れる作品なのですよ!この作品は、本当に!
主人公の晴香に想いを寄せ、共感して揺さぶられるストーリーには、多くの皆様が惹き付けられたことでしょう!
靴下さん、エモンガ賞受賞、本当におめでとうございます!エモー!
さてさて…これにてサブ受賞式は終了です。メイン表彰に移ります。
今回、13作品とやや控えめな作品数ながら、複数票が作品に投じられる、ということがありませんでした…。
最優秀作品賞、こちらも大混戦です!
…ではでは、発表に移りましょう!
最優秀作品賞
第3位は……
こちら!
🥉『ひなのきおく』(作:ハシバミさん)
🥉『遅咲きのかざぐるま』(作:弥七さん)
🥉『背景に咲くデイジー』(作:靴下さん)
3作品がランクインしました!匠、エモンガもこちらにランクインしております!
『ひなのきおく』は女の恋の成就と、それに依るあの男の失恋を、要素の上質な使用により克明に描き出した作品、
『遅咲きのかざぐるま』はアレンジの加えられた物語に洗練された構成の光る作品、
『背景に咲くデイジー』は言わずもがな、エモンガの腕が匠色にキラキラしている作品。
どれも魅力的で、第3位に輝かれました!お三方、おめでとうございます!
続いて…
第2位は……
こちら!
🥈『おれも』(作:きの子さん)
🥈『まんま見ぃや』(作:八つ橋さん)
🥈『創り出されたかぐや姫』(作:OUTISさん)
こちらにも3作品がランクイン!接戦模様でございます!
『おれも』はお題テーマとなる恋の心を直接言葉にすることなく、ある暗号を用いたことによる意外性、
『まんま見ぃや』はデイジーがオレンジのあの…となって現れたユーモアと、大人な恋の戦いを描いたその描写力、
『創り出されたかぐや姫』は現代版にちょっと不思議なアレンジの加わったかの有名な月のプリンセスに、「紙そのもの」を使ったトリックの斬新さ。
このような魅力が評価され、第2位に輝かれました!お三方、おめでとうございます!
この6作品達、1票の差でひしめく大混戦だと、先ほどより申しておりますが…この競争から一歩だけ抜けた作品が、一つだけ。
第1位発表…。。。
の前に、ごめんなさい、次の赤字までCMを挟みますね。
…賞金コイン、感想など、沢山の失態を犯してしまって、本当にすみません。
今回は参加される人が多少なりとも減るのかな、と思い色々と試みたのですが、何と言うか、むしろ不必要にややこしい制度ばかり設けてしまったのではないか、と思っています。
…ということを詳しくは、まとメモに書いておきますね。もし良かったら、覗いていって下さい。いやー、主催ってものは、やっぱり大変。
CM終わり!
皆様、いよいよ最優秀作品賞受賞作、その発表と相成ります!
第1位に輝かれましたのは…
⤴️オオオオオオオオオオォォォォォォ…
…こちら!
――そう、私は青年のすべてを知っている。
その愛は、すでに腐っていた。
🥇『腐るほどに、愛。』(作:弥七さん)
今回の創りだすを制したのは、弥七さんの作品です!!!!
問題文のゴミ箱にたっぷりと闇成分を注入し!
綺麗な言葉選びに裏打ちされるプロフェッショナルな問題文、要素回収!また、そのトリック!
細かい描写力が炙り出す、背筋も凍る歪んだ、腐った愛への恐怖感!
そして何より!
ハッピーエンド狂を自称する弥七さんの施しによる、予想外のどんでん返し!
何を取っても感嘆の言葉が溢れかえるような、憧れが心を支配するような、素晴らしい作品でした!普段よりウミガメでその魅力を存分に発揮されている弥七さんの、納得感と物語の両立の技は、本当にお見事です!第1位、おめでとうございます!!
と、いうことは……!!
第17回、正解を創りだすウミガメ、シェチュ王に輝かれましたのは…
言わずも、がな!!
シェチュ王
👑弥七さん👑
です!おめでとうございます!本当にお見事でした!
洗練され、またその個性を残した文体に加え、納得の解答、そしてそしてっ、皆様の心を掴んで止まないその物語っ!
やっぱり、弥七さんは凄いっ!!!
そして、今回の出場が初出場であるとのことで、初出場と戴冠、同時に達成されました!
誰が見ても分かる、このヤバさなのです!
初出場ながら、その大型、いや、もう巨大、大大大ルーキーである弥七さんへ、皆様、盛大な拍手をーー!!
そして、こ、こ、この王冠を、バトンタッチ!
お、落とさないように、落とさないように…。。
((( ; σ//σ))づ👑ヽ ^ ^ )
∧
ヤシチサン、オメデトウゴザイマス!!!
シェチュ王の弥七さんおめでとうございます。主催のさなめさんありがとうございます。今回は私は1票だけでした。さらなる票の獲得を目指して今後もがんばりまります。今後ともよろしくお願いいたします。[19年12月02日 17:23]
Σ(O△O)…(絶句) まずは、みなさま投票いただいて本当にありがとうございます!これは夢なのかな??今回やっと重い腰を上げて「創り出す」に参加して、本当に楽しい企画なんだなぁって再確認しました。毎企画、投稿者さまの作品は拝見しておりましたが、自分があの中に飛び込んだらどうなるだろうってドキドキしてました。この企画ならではですが、たくさんのユーザーさまから嬉しいお言葉をいただいて、弥七は夢現です。(やっぱり夢じゃないか!!)[19年12月02日 00:04]
さなめ。さん、主催おつかれさまでしたー!!&弥七さんシェチュ王おめでとうございますーーー!!今回も名作ばかりで、投票だけの参加だったけどもう悩みに悩みまくりました!シェフの方々、そして最高のエキシビションを書いてくださったさなめ。さん、本当にありがとうございました!!次回も楽しみにしてます!(^^)[19年12月02日 00:02]
さなめ。さん、開催ありがとうございました!弥七さん、シェチュ王おめでとう(*゚O゚*)さなめ。さんのエキシビション感想はミニメで送りました。皆さま、お疲れ様でした![19年12月01日 23:02]
さなめ。さん、主催ありがとうございました。弥七さん、シュチュ王おめでとうございます! 拙作に投票・感想くださった皆様、ありがとうございました。感想書けずに申し訳ありません……今回もとても楽しかったです、ありがとうございました![19年12月01日 22:13]
ゴミ箱に捨てられた一枚の紙を見ると、女は自分の恋が叶ったことを知った。
どのような状況だろう?
■■ 要素 ■■
以下の中から少なくとも5個、使用して下さい。
①スマホが壊れる
②腐ったみかんを捨てる
③もう戻れない
④砂時計の砂はもう落ちることはない
⑤とれる
⑥手のひらサイズ
⑦雨が降っている
⑧海外に行く
⑨デイジーの花畑は重要
⑩誰かの恋が破れる
・要素数×200 の文字数制限をかけます。例外として、要素10個使用の時は無制限とします。
・エントリーを辞退される際は、【投票対象外】を付記して下さい。
■■ タイムテーブル ■■
◯要素募集フェーズ
11/16(土)21:00~質問数が50個に達するまで
◯投稿フェーズ
要素選定後~11/24(日)23:59まで
◯投票フェーズ
投票会場設置後~11/30(土)23:59まで ※予定
◯結果発表
12/1(日)22:00 ※予定
第17回創りだす、皆様ご参加頂き本当にありがとうございました。
解説ではいかにも、予め人数の少なくなることを考慮に入れていたかのように振る舞っております、さなめ。です。
その1、要素数
すごーく悩みました。
前回主催様のアイデアを継承するか、もしくは、果たしてただ要素数を少なくすると短文になるのか、という実験的なものにするか、はたまた15個に戻すか…。
結果的に5~10という選択肢を選んだのは、一つは前回主催様のアイデアが画期的で素晴らしく、是非残したいと思ったからです。
読み込みの負担を減らしつつ、すっきりとした「解説」を創りやすくする。理に叶っています。
また、15→10の変更は、ランダムに要素を選ぶ以上、些かながら長文のハードルを下げたく思った為です。
つまり、バランスを重視しました。が、上手くいったのかは謎のままです。
その2、問題文
すごーく悩みました。
悩んだ結果、今回は実験的なものにすることにしました。
即ち、「短文の中にどのようにして、秘められた物語を投影できるか?」
今回の創りだすは短文を意識したままの形ですが、創りだすには、「納得感のある解説」の裏に、「それを引き立てる物語」があるという構造に面白さを感じました。
それを実現できる創りだすにしたい、そういう隠された物語を問題文から魅せたい…!という思いから、恋をテーマにしました。
ゴミ箱の中の紙を解説、恋を物語、というような相互作用ができることを意図しましたが、難易度は少し高かったみたいです。でも、シェフの皆様は素晴らしいので、かっこよくてかわいい魅力的な人達を、正解に登場させて下さいました。
その3、長い感想
収まりきらず、秘密の部屋に入れるという複雑な仕様にしてしまい、申し訳ありませんでした…。
今回の要素募集での人の集まり方から、私は「投票への」参加人数の少なさを危惧しました。(実際にはそこまでではありませんでしたが…。)
投票する人が少ないということは、その分皆様からの感想も少なくなってしまいます。お忙しい中、全レスも辛いですし。
ですので、今回は特に、主催からの感想を思いっきり書こう、と思いました。
そもそも、創りだすの大きな魅力の一つ、それは主催からの感想だと、考えておりました。
その魅力に恥じないよう、皆様の素敵な作品達に、ながーい感想が付けられたのです。かえって読みにくい場所にいたら、本末転倒ではないですか??本当にすみません。。。
もちろん、感想に書かれていることは、私の本心です。皆様、本当に凄いのです!!
その4、賞金コイン
完全に早とちりと不手際による混乱でした。本当にすみませんでした。。。
その5、主催
すごーく楽しかったです。
自ら作った問題文に答えが付いていくのは凄く感慨深いですし、感想を書くのも楽しかったです。
…と、同時に、やはり大変でした。
言わずもがな、ドジ踏みまくりで。
皆様からの励まし、応援のお言葉は本当に力になりました。ありがとうございました。
あとは、私自身が投稿できないのは少しだけ寂しかったです。投稿したいー!主催様からの感想が欲しいー!という心境でした。あと、投票もしたかった…。。。
その6、ご参加、ご観戦頂いた皆様へ。
感謝感激雨さなめ。でございますー!!本当に、感謝しかありません。皆様、(恐らく)お忙しい中、素晴らしい作品を魅せて下さったり、ちらっと覗いていって下さったり。
さなめ。じゃ足りない。大雨降らせますー!というくらい、本当に嬉しいです。???
本当に本当に、ありがとうございました。
その7、byさなめ。
自分が正解した問題・出題者への賛辞・シリーズ一覧・良い進行力など、基準は人それぞれです。
自分専用のブックマークとしてお使い下さい。
Goodって?
「トリック」「物語」「納得感」そして「良質」の4要素において「好き」を伝えることができます。
これらの要素において、各々が「良い」と判断した場合にGoodしていきましょう。
ただし進行力は評価に含まれないものとします。
ブクマ・Goodは出題者にとってのモチベーションアップに繋がります!「良い」と思った自分の気持ちは積極的に伝えていこう!