(前回の様子:第7回 https://late-late.jp/mondai/show/3855)
創りだす企画も早いもので第8回を迎えました。毎回カオスな要素に怯むことなく立ち向かう皆さんの姿は、まるで滝登りをするシャケのよう。
自分はこの企画に数回参加する中で、『奇抜な要素をどんな風に組み込むかというより、癖のない要素をいかに扱うか?という創りだすが見てみたい』と考えていました。
というわけで、そんな思いを詰め込んだ第8回。良ければお付き合いください!
今回は 要素7個 でいきます。
5つを出題者チョイス、2つをランダムで選出します。
主張の激しい素材が減る分、味付けはシェフの腕にかかっています。ウミガメの原点に立ち返って、味わい深い正解を創りだしましょう。
では、問題文をどうぞ。
■■ 問題文 ■■
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
その老人は、毎年必ず絵本を買う。
年々老いていく体を杖で支えながら「来年はもう歩けないだろう」と悟った老人は
その年に買った生涯最後となる絵本を、道端に置き去りにした。
一体なぜ?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
この問題には、解説を用意しておりません。皆様の質問がストーリーを作っていきます。
以下のルールをご確認ください。
■■ ルール説明 ■■
▶ 1・要素募集フェーズ ◀
[2/13 20:00頃~質問が40個集まるまで]
初めに、正解を創りだすカギとなる色々な質問を放り込みましょう。
◯要素選出の手順
1.出題直後から、”YESかNOで答えられる質問”を受け付けます。質問は1人2回まで。
2.皆様から寄せられた質問の数が”40”に達すると締め切り。
今回は、全ての質問のうち”5”個を出題者の独断、さらに”2"個をランダムで選びます。
合計”7”個の質問が選ばれ、「YES!」の返答とともに『[良い質問]』(=良質)がつきます。
※良質としたものを以下『要素』と呼びます。
※良質以外の物は「YesNo どちらでも構いません。」と回答いたします。こちらは解説に使わなくても構いません。
※矛盾が発生する場合や、あまりに条件が狭まる物は採用いたしません。
[矛盾例]田中は登場しますか?&今回は田中は登場しませんよね?(先に決まった方優先)
[狭い例]ノンフィクションですか?(不採用)
[狭い例]登場キャラは1人ですか?(不採用)
[狭い例]ストーリーはミステリー・現実要素ものですよね?(不採用)
なお、要素が揃った後、まとメモに要素を書き出しますのでご活用ください。
▶ 2・投稿フェーズ ◀
[要素を7個選定後~2/23 23:59]
要素募集フェーズが終わったら、選ばれた要素を取り入れた解説を投稿する『投稿フェーズ』に移行します。
各要素を含んだ解説案をご投稿ください。
らてらて鯖の規約に違反しない範囲で、思うがままに自由な発想で創りだしましょう!
※過去の「正解を創りだす(らてらて鯖版・ラテシン版)」もご参考ください。
ラテシン版:sui-hei.net/mondai/tag/正解を創りだすウミガメ
らてらて鯖:https://late-late.jp/mondai/tag/正解を創りだすウミガメ
◯作品投稿の手順
1.投稿作品を、別の場所(文書作成アプリなど)で作成します。
質問欄で文章を作成していると、その間他の方が投稿できなくなってしまいます。
「コピペで一挙に投稿」を心がけましょう。
2.すでに投稿済みの作品の末尾に「終了を知らせる言葉」の記述があることを確認してから投稿してください。
記述がない場合、まだ前の方が投稿の最中である可能性があります。
しばらく時間をおいてから再び確認してください。
3.まず「タイトルのみ」を質問欄に入力してください。
後でタイトル部分のみを[良質]にします。
4.次の質問欄に本文を入力します。本文が長い場合、複数の質問欄に分けて投稿して構いません。
また、以下の手順で投稿すると、本文を1つの質問欄に一括投稿することが出来て便利です。
まず、適当な文字を打ち込んで、そのまま投稿します。
続いて、その質問の「編集」ボタンをクリックし、先程打ち込んだ文字を消してから投稿作品の本文をコピペします。
最後に、「長文にするならチェック」にチェックを入れ、編集を完了すると、いい感じになります。
5.本文の末尾に、おわり完など、「終了を知らせる言葉」を必ずつけてください。
▶ 3・投票フェーズ ◀
[2/24 00:00頃~2/26 23:59]
投稿期間が終了したら、『投票フェーズ』に移行します。
お気に入りの作品、苦戦した要素を選出しましょう。
◯投票の手順
1.投稿期間終了後、別ページにて、「正解を創りだすウミガメ・投票会場」(闇スープ)を設置いたします。
2.作品を投稿した「シェフ」は“3”票、投稿していない「観戦者」は“1”票を、気に入った作品に投票できます。
それぞれの「タイトル・票数・作者・感想」を質問欄で述べてください。
また、「最も組み込むのが難しかった(難しそうな)要素」も1つお答えください。
※投票は、1人に複数投票でも、バラバラに投票しても構いません。
※自分の作品に投票は出来ません。その分の票を棄権したとみなします。
※投票自体に良質正解マーカーはつけません。ご了承ください。
3.皆様の投票により、以下の受賞者が決定します。
◆最難関要素賞(最も票を集めた要素)→その質問に[正解]を進呈します。
◆最優秀作品賞(最も票数を集めた作品)→その作品に[良い質問]を進呈します。
◆シェチュ王(最も票数を集めたシェフ=作品への票数の合計)→全ての作品に[正解]を進呈します。
そして、見事『シェチュ王』になられた方には、次回の正解を創りだすウミガメを出題していただきます!
※票が同数になった場合のルール
[最難関要素賞][最優秀作品賞]
同率で受賞です。
[シェチュ王]
同率の場合、最も多くの人から票をもらった人(=複数票を1票と数えたときに最も票数の多い人)が受賞です。
それでも同率の場合、出題者も(事前に決めた)票を投じて再集計します。
それでもどうしても同率の場合は、最終投稿が早い順に決定させていただきます。
■■ タイムテーブル ■■
◯要素募集フェーズ
2/13(水)20:00~質問数が40個に達するまで
(万が一質問が集まらない場合は2/13(水)23:59で締め切ります)
◯投稿フェーズ
要素選定後~2/23(土)23:59まで
◯投票フェーズ
2/24(日)00:00頃~2/26(火)23:59まで
◯結果発表
2/27(水)2:00までを予定しております。
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普段は参加をためらってしまう方や時間がなくて書き上げられない方にも、『今回はちょっと参加できそうかな?』と思っていただければ幸いです。
それこそが、私が創りだす主催に憧れた一番の思いでした。
皆さんにとって、楽しいひとときになりますように。
それでは、『要素募集フェーズ』スタート!
☆今回、要素数が少ないので質問は1人2回までです。よろしくどうぞ!
結果発表しました。めちゃくちゃ楽しかったです、皆さんありがとう。
”最後に選ばれた要素(この要素が一番最後の時は、この一つ前の要素)“に対して批判的な人たちが続出しましたか?
YES!! 老人の過去に対して、批判的な人たちが続出しました!
【要素①老人の過去に対して批判的な人たちが続出する】
[正解][良い質問]
忘れられない想い出がありますか?
YES!!忘れられない想い出があるのです!
【要素③忘れられない想い出がある】
[良い質問]
老人は杖を折りましたか? [編集済]
YES!!老人は杖を折りました!
【要素⑥老人は杖を折った】
[編集済]
[正解][良い質問]
その老人の過去は関係ありますか?
YES!!その老人の過去が関係します!
【要素⑦その老人の過去が関係する】
[編集済]
[良い質問]
7つの要素が出揃いましたので、これより【投稿フェーズ】に移ります![編集済]
*質問欄で文章を作成していると、その間、他の方が投稿できなくなってしまいます。
別の場所(文書作成アプリなど)で作成し、「コピペで一挙に投稿」を心がけましょう。
*投稿の際には、前の作品の末尾に「終了を知らせる言葉」の記述があることを確認してください。
記述がない場合、まだ前の方が投稿の最中である可能性があります。
*あとで[良質]をつけるので、最初に本文とは別に「タイトルのみ」を質問欄に入力してください。
*作品中に要素の番号をふっていただけると、どこでどの要素を使ったのかがわかりやすくなります。
*投稿締め切りは【2/23(土)23:59】です。
投稿内容は投稿期間中何度でも編集できます。
また、投稿数に制限はありませんので、何作品でもどうぞ!
老人は貧乏だが、せめて孫に絵本を買ってやろうと毎年孫の誕生日に買っていた。(②)
だが老人は忘れっぽく、書店への道も全然覚えられなかった。(④)
道を覚えるためのものが買えないので道に迷わないように最初は杖を折ってそのかけらを目印にしていたが、杖を折ると怪我をする人が増えると注意されてしまった。(①⑥⑦)
そして、最近物忘れが加速して自分が忘れてはいけない想い出(③)すらも忘れそうになってしまいそうな老人は、きっと来年は書店へ続く道を思い出せなくなって道を歩けなくなってしまうだろうと考えた。
そこで買えるだけ買って、書店まで歩けなくなったとしても孫にプレゼントできるように書店へ続く道に絵本を置くことにした。
……来年になっても意外と普通に道を忘れなかったのは別の話である。(⑤)
(以上)
[編集済]
「いい天気だねぇ」 ニコニコと車椅子を押すのは、絵本とともに年を重ねた老人の孫だ。折られて短くなった杖はもう役に立たないが、老人は今もあの書店へ通っている。年に一度、孫の誕生日に、孫の押してくれる車椅子に乗って。道案内をするのは今も変わらず老人だ。変わったことといえば、孫の選ぶ本が介護福祉の資格取得のための本になったことくらいだろうか--。孫は笑う。「おじいちゃん、もう道端に絵本を置かないでね。拾うの大変だったんだから。」
一歩、一歩と歩くたび、身体から何かが抜け落ちてゆく。
老いとはそういうものだ。
今までに得たものを世界に還す、大事な時期なのだ。
油の足りない機械のように、軋む身体を鞭打ち歩く。
ぎしぎしと、同じく歳を経た杖が鳴く。
手にした一冊の本が、北風にひらめき、その鮮やかさを雪にうつした。
この古い手足を補うことができたら、どれほど楽に生きられるだろう。
そう考え、昔、さまざまな方法を試したことがあった。⑦
どれも失敗に終わったのだろう。
抜け落ちた記憶には、何をしたかも残っていない。
ただ一つ、機会があれば、叶うなら、この本の作者に会ってみたいと思っていた。
思い返せぬほど昔から続く絵本には、ヒトに造られた生命がいきづいている。
年に一冊。ただそれだけに。
何をしたかは忘れても、晒された非難の数々は忘れられない。①
人への愛を詰めたこの人の絵本は、何よりの救いだった。②
頭が、瞳が曇っても、鮮明に思い出せる。③
淡々と綴られる、ごくありふれた人の営み。⑤
どうしてこうも尊いのだろう。
人はなぜ生きるのか。
なぜ存在するのか。
どう存在するべきなのか。
仄かな色が優しく問いかけてくる。
前に訪れた時とは風景が違う。④
いや、去年もそう思ったか。
世界はどんどん若返り、ヒトはやがて老いて往く。
今度の本は、この目で、この景色の染み付いた目で読めるだろうか。
霞む世界に振り落とされた。
力の入った杖がばきりと折れた。⑥
ああ、もう幕だ。もう、動くこともできそうにない。
雪道に座り込み、上着を脱いだ。
だいじにだいじに、最後の本をその上に乗せる。
震える手で表紙をめくった。
掠れ、途切れ、滲む。
くずおれるように、身体から力が抜け落ちてゆく。
白い朝日が、細くなりゆく世界を満たした。
跡に遺ったのは小さな絵本。
細かなぜんまいと歯車ばかり。
【幕】
[編集済]
にゃあ。雪のように真っ白な猫が足元にすり寄ってきた。 「なんだ、迷子か?」青年はしゃがんでその柔らかな毛並みを撫でる。首もとでチリリと鈴が鳴った。ふいに歩き出した猫は、まるで"ついてこい"とでも言うように数歩ごとに青年を振り返った。導かれるようにしてその鍵尻尾を追っていくと、雪道に置かれた小さな絵本に出会う。「これは……?」拾い上げたその刹那、絵本は灰になった。いつの間にか猫は消えており、後に残った鈴がチリリと寂しげに鳴った。
その老人、ロージーには忘れられない想い出があった。(③)
昔々、ロージーの年が両手で足りるくらい小さかった頃の事。裏山で遊び回っていた彼は、気が付くと知らない場所におり、完全に道に迷ってしまった。(④)
空の色は翳り出し、家に帰れないかもしれないと涙ぐんだその時――不意に姿を現したのは、人語を理解し二足歩行するもこもこの喋るウサギ。
ウサギは彼の事情を知ると、麓への道を案内してくれた。
あれ以来、ロージーはファンタジーの世界に憧れ、たくさんの本を読んできた。趣味が高じて作家にまでなった。
しかし、今では彼の憧れたファンタジーの多くが、科学の発達によりファンタジーでなくなっていた。
霊魂と呼ばていた生命エネルギーの存在、高度な技術をもってしても発見が出来なかった伝説の深海生物、人と見分けがつかない程流暢に喋り涙を流す人型ロボット……。存在の解明されたもの、否定されたもの、与えられたもの。
こんな事で、ファンタジーの尊さが薄れてしまったと感じるのは、勝手が過ぎるのだろうか?
現代のファンタジー小説の主流は、まだこの世界の理に詳しくない子供向けの絵本だ。しかし彼はそれを愛していた。今でもファンタジー世界を愛していた。(②)
だが世間の波はそうではない。
ある時、ロージーは過去のあのウサギとの邂逅を題材した絵本を描いた。(⑦)そして余りの想いの強さに、ついつい後書きにこれは実話を元にした話だと記してしまった。
すると、そこそこ名の知れた作家であったロージーのもとへ、現実的な市民達による、彼の過去の経験に対する否定的な批評が次々と届いた。(①)
嘘を吐くな、子供が真似して迷子になったら危ないだろう、教育上良くない、等々……。
ロージーは、自分のせいであの過去の美しい体験が汚されてしまったと思った。
今でも絵本は毎年買って読んでいるが、書く事はあれ以来していない。ウサギの絵本は、彼にとって生涯最後の作品となったのだ。
そして今日、ロージーはその自身の最後の作品を、新しく買い取りリボンでラッピングして貰ってから、思い出の裏山へ向かっていた。
きっと来年にはもう自由に歩けなくなっている。
そう思うと、最後に自分の初まりの場所とも言えるあの地へ行きたくなったのだ。
辿り着いた裏山は、外から見ても分かるほどあの頃より荒れていた。今の子供はHMDを用いて、虫もおらず危険のないバーチャルリアリティの自然を楽しめるため、山で遊んだりしないからだ。
流石に老人の彼に山の中へ入る体力はない。彼は山の入り口へと続く道に自分の生涯最後となる絵本を置いた。
タイトルは、「僕を助けてくれた、ウサギの子孫へ捧ぐ本」。叶うのならば、彼等に読んで欲しかった。
そして踵を返し帰ろうとした時だった。体重移動に失敗し転び、ロージーは杖を折ってしまった。(⑥)
まずい、このままでは歩けない。しかもこの時代、山へ入ろうとする人なんていないのだから、誰かの助けを望む事も出来ない。
ロージーは途方に暮れた。一時間、二時間……矢張り待てども待てども人は来ない。か弱い老人は、心労からいつの間にか気を失ってしまっていた。
「大丈夫ですか?」
呼び掛け肩を揺すられ、ロージーは意識を浮上させた。目の前には、見知らぬ若い男。
「私この近所に住む者なのですが、道を歩いていた時突然見た事もないウサギに話しかけられて、ここへ連れてこられたんですよ。どうやら貴方を助けて欲しかったみたいです。
あ、でもウサギが話したなんて言っても信じてもらえませんよね?でも本当なんです。さっきまでここにいたんですよ!」
興奮を隠せない様子で、男は訴えた。
「いや、信じるよ。信じるとも」
ロージーは、驚きながらも力強くそう言った。隣を見れば、置いた筈の絵本が消えていた。地面には、折れた杖で書いたのか、「ありがとう」の文字。
いや、礼を言うべきは此方の方だ。また、助けられてしまったな……。
ファンタジーとはすなわち、貴方が気付いていないだけで、意外と普通に側にあるもの。(⑤)
気付く努力をしたならきっと開ける。今まで見えなかった、不思議の世界への扉が……。
おしまい.
[編集済]
「本当なんだって!喋るウサギに道案内されたんだ!」興奮気味に話す男に娘は目を輝かせ、妻は眉をひそめた。なに馬鹿なこと言ってるの、そう言いたげな表情で。「おとーさん!あたしもそのウサギに会いたい!」「ほら、やめてよ。この子がその気になっちゃうじゃない」 それから毎晩、男は娘に喋るウサギの話を聞かせた。妻に非難されるたび、あの老人の切ない気持ちが身に染みてわかる気がした。でも、だからこそ、男は娘に伝え続ける。子どものようにキラキラした目で。
簡易解説
狂愛に落ちた英雄は②毎年の暮れに愛する者の眠る地に通いつめ、亡き愛する者との忘れられない思い出である絵本を送っていた。
ある年もまた墓へとむかっていたのだが、英雄の過去の過ち⑦によって路頭に迷わされ④英雄を恨む①人々に囲まれ数々の暴力を受けた。
かつての英雄の力がまだあると思っていた人々だったが、意外にも抵抗がなくただの普通の老人である⑤という事実に気づいた人々は、
次第に罪悪感に包まれその場を去り、そこには足が折れボロボロになった老人と無残にもおられた杖が残されていた⑥。
折れた杖につかまり置いた体を持ち上げようとした老人は来年以降はもはや歩くことができないと悟った。
周りに自分を助けるものはおらず、歩けないこの身では、これから生きていくことも難しい。
それならばせめて愛するものとともに眠りたい。そう考えた彼は地に打ち捨てられた絵本のことも忘れ、
持てる力を振り絞り杖に身を任せ引きずるようにして愛する者の眠る地を目指した。
[編集済]
気付けば肩で息をしていた。俺も、他の者も。かつて英雄と持て囃されたはずのその老人はまるで別人のように無抵抗で、空気を切り裂くような眼光はもはや霞んでさえいた。力の限り蹴りつけても。殴りつけても。ただ鈍い音が響くだけ。「……何でなんだ。」無意識に声が漏れていた。握り締めた拳が震える。やり場のない苛立ちが、虚しさが、後から後からこみ上げてくる。まるで我が子を守るかのようにその身で包まれている一冊の絵本らしきもの--俺にだって大事なものがあったんだ。あんたと同じように。
ちょっと一枠残します
【本編】
幾たびの戦を超え、国を統治した英雄がいた。しかし国がまとまってもいまだ一つ強大な敵がいる。
魔王
そう呼ばれるものが率いる強大な妖魔たち。英雄は、妖魔を打倒すべく軍を率い実力を見せ、そしてついに魔王をあと一歩のところで打倒し得るところまでこじつけた。
あと一太刀。ただそれだけあれば魔王を討伐できる。魔王さえ打倒せしめれば妖魔は滅ぶ。それなのに英雄は魔王を倒すことができなかった。
それ故に英雄は呪いをくらう。
老化の呪い。鍛えられあげた肉体を蝕む逃れえぬ弱み。死まではいかぬが英雄の力を削ぐには充分であった。
事情を知らぬ民は英雄を批判する。
無能 無力 裏切り
英雄もそのようなものか
英雄様も案外普通の人間なのだな
そのような悪口雑言を英雄は黙って聞き入れるしかできなかった。
老いてしまった体を引きずり帰った英雄に告げられるは最愛の妻の死。
そんな悲報も英雄にとってはすでに知れたこと。悲しみに沈んだ彼を慰めたのは彼女と過ごした部屋に残された一冊の本だった。
絵本の好きだった彼女。
戦に出てゆく英雄を柔らかな笑顔で見送った彼女
戦に出ていつ帰るかもわからぬ彼を待ち続けた彼女。
彼女との日々を思い返させるものが
その絵本には残っていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
魔王は勇者と相対し告げる
そナたの妻ヲ呪っタ
そう言って示されるは英雄の帰るべき家
そこに倒れ伏す妻の姿
虚構とも見えたそれはしかして明確な事実として英雄に相対す。
そして生まれた英雄の隙を魔王は突く。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
英雄は魔王群を壊滅寸前にまで追い込んだことを一応は讃えられた。妻の墓も素晴らしいものが建てられた。
英雄は帰りを待つ物のいない家でそののちの余生を過ごす年の暮れ、妻の眠る墓に向かっては墓前でその年に人気だった絵本を読み聞かせる。
何とか生きてはいたものの、最愛の妻を失った悲しみに暮れる彼の日常は正気ではなかった。
ある年も老体を杖で支えながら墓に向かっていた。そこに立ちふさがる複数の影
それは彼が統治の際うち滅ぼされ路頭に迷った残党だった。
統治は必要なものである。しかし恨みを買うのも当然。
魔王の呪いの影響もあり抵抗する意思も力も残っていなかった。
暴力の限りを尽くしこのような老人を殴っていても恨みが晴らされないことを感じた彼らは不満を残しながら立ち去って行った。
残されたのはボロボロになった老人と見る影もなく折られた杖。そして老人が身を呈して守った絵本だった。
老人は彼らが去ってしばらくののちに立ち上がる。
否、立ち上がろうとするも立ち上がれなかった。
老人の足は曲がるべきでない方にねじ曲がり、もはや痛覚すら感じないほどになっていた。
それでも彼女の元に向けて歩き出そうともがく。
折れた杖をつかみどうにか前へ進む。
来年はもう歩けなくてもいい
せめて愛するものと一緒に
もう離れ離れになるのは嫌だ
そういった思いだけを力に体を引きずる
もはやその身をとして守った絵本はその場に残されていた
いまはただ一心に彼女の元へ
終
[編集済]
(*˘ω˘)
老人にとって、まだ幼かった娘の死という出来事は、心に直接杭を打たれる程の痛みを味あわせた。
その死が他人の悪意によって与えられたというのであれば、なおさらだ。
12月28日、もうすぐ年が変わるこの日こそ、娘が死んだ…いや、殺された日である。
老人は、この日になると、毎年必ず町へ出かけ、今年一番人気のあった絵本を購入する。
そしてその絵本を、娘の墓の前で読み聞かせるのだ…
老人が、ほんのちょっとだけ若かった頃、彼は娘と二人で暮らしていた。
家計を支えるために、働きに出なければならなかった彼は、どうしても娘との時間を取る事が出来なかった。
だから、せめて娘と一緒に居られる時間は、娘の為に出来る事を何でもしてあげようと思い立ったのだ。
一緒に遊び、ご飯を食べ、勉強を教え……そして、絵本を読み聞かせる。
どの時間でも、娘に全力で付き合った老人は、正に子供を想う良い親だっただろう。
一生懸命な子育てに、娘も良い反応を示したのだろうか。
彼女は、子供らしく元気に遊び、好き嫌いをせずに何でも食べ、自分から勉強をする、とても良い子に育ったし、
何よりも、老人が絵本を読み聞かせてくれる時、目を輝かせて、老人の膝の上に座ったものだ。
そこには、【②親子の愛だけが有った】
老人にとって、娘の笑顔は【③忘れられない思い出】だ。
だからこそ、彼は娘が死んだ日に、絵本を読み聞かせに行くのだ。
そこに娘が居ると信じて、そうすれば自分の心も救われると信じて…
買った絵本を片手に抱え、もう片方の手で杖を持ち、娘の墓へと歩く老人。
彼の顔には、一切の希望は存在しない。
娘の死から何年が経っても、老人の心が救われる事は無かった。
心にあるのは、娘の死に対する絶望と、娘を殺した殺人者への憎しみだけだ。
娘の死に直面した老人が、一番驚いたことは、犯罪者に対する鉄槌は下されないという事だ。
木槌を持った人は、懲役5年と告げた。
それが、娘を殺した殺人者に対して言い渡された言葉だ。
「イライラしていた、殺すなら誰でもよかった」
そんな動機で、最愛の娘を殺した殺人者は、たった5年で赦されるというのだ。
あの時の老人は、怒りに怒った。
何故、殺人者は死刑にならないのか?そして何故、法律家は殺人者に鉄槌を下さないのか?
そして彼は、遂に立ち上がった。
被告人席にいる殺人者に、そして殺人者に重い刑罰を与えようとしなかった法律家達に、一矢報いるために…
だがここは法廷、警備員にあっけなく捕まった彼は、逆に逮捕される事となる。
老人自体は強かった。だが、多勢に無勢…警備員には勝てなかったのだ。
法廷に残ったのは、乱闘の際に【⑥折ってしまった杖だけ】だった。
法廷で暴れた老人に対し、意見は賛否両論だった。
といっても、【①⑦老人を批判した】のは、大抵は法律を重んじる法律家であったが。
(あぁ、憎い、娘を殺した殺人者も、それを赦そうとした法律家も、憎い!)
老人の心が憎しみに埋もれるのは、毎年の事だった。
絵本を買い、墓に向かう道中で、昔の事を憎む。
被害者の遺族である老人にとっては、これが辛かった。
苦しみ続ける事が辛いのではない。
殺人者に復讐出来ない事が辛いのだ。
そして、これからもその苦しみが残り続ける………
そう思っていたところで、突如転機が訪れるのも、また人生なのかもしれない。
「あのー…スミマセン、【④道に迷ってしまって】、ラテシン通りはどこにありますか?」
道行く人にそう話しかける青年を見かけた時、老人は直ぐに気づいた。
元殺人者という肩書にも関わらず、【⑤意外にも普通の外見】をしていた彼に。
「あっ、分からない…スミマセン、分かりました。ありがとうございます!
あのー…スミマセン、道に迷ってしまって…」
老人の胸の鼓動が高まる。
(間違いない、奴こそは、私の娘を殺した殺人者!)
あの裁判からもう8年が経過していた。
殺人者がすでに社会復帰していても、何らおかしな話ではない。
「スミマセン、道に迷ってしまって…」
どうやら、奴は道に迷っているが、誰も目的地への案内をしてくれないようだ……
待てよ?もしもこのままなら、奴は私の所へ来るのではないか?
もしも奴が私の顔を覚えていたら、話は別だが、奴は私に道を尋ねに来るのではないか?
後10m、5m、3m…1m!!
「スミマセン、道に迷ってしまって…ラテシン通りはどこにありますか?」
かくして、自分が殺した少女の遺族の顔すら覚えていない、間抜けな元殺人者は、老人に話しかけた。
この時の老人に、思考というものは無かった。
ただ、直感に従い、奴と対話をするのみ。
「えっ!貴方もラテシン通りに行くんですか!
一緒に来て、案内してくれるんですね!ありがとうございます!」
老人は、奴の横に並び、案内…ではなく、誘導を始める。
「へー、この路地裏を通れば、近道なんですね!」
老人は、この町の地理には詳しかった。
この路地裏を通れば、人気の無い通路を介して、行き止まりにたどり着く事も知っていた。
「それでは、一緒に行きましょうか!お爺さん!」
先に路地裏に入っていく奴を確認した老人は、片手に持っていた絵本を、なるべく汚さないように道端に置いた。
だって、娘に読み聞かせる大切な絵本を、血で汚す訳にはいかないだろう?
大丈夫、十数分程置き去りにしてしまうが、後で必ず取りに戻るからな。
その時は、奴は歩けない体になっているだろうから、安心しておくれ。
【完】
[編集済]
「う~ん、完全に迷っちゃったな」 女はキョロキョロと辺りを見回し頭を掻いた。その時、ふと足元に置かれている絵本に気付く。こんなところに絵本……?不思議に思って拾い上げる。それは見たところ汚れもなく新品そのものだった。保育士でもある女はそのタイトルをよく知っている。今年一番人気のあった絵本だ。ページをめくるごとに不安感や疲労感が溶かされていくようだった。絵本は素敵だ。そこへジャリ、と近づく足音。顔を上げた女の目の前に佇んでいたのは、血まみれの--。
「来年はもう、歩けないかも知れない……か。」
その言葉に業を煮やした俺は、自分でも信じられないほど弱った自分の足腰を踏ん張り、玄関に立てかけられたボロボロの杖を取って、散歩に出かけた。
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---絵本「オモイ」は言わずと知れた51冊からなる、ロングセラーの絵本である。主人公は一人の男「オモイ」であるが、主人公が冒険をするような夢物語でははなく、肩透かしなほど普通な、ごくありふれた普段の暮らしが描かれている。(⑤)
そんな絵本「オモイ」だが、発売した当初は全くと言っていいほど売れなかったという。それにもかかわらず51年もかけて描かれ続けられていたのは作者の特殊な事情にあっだのだろう。
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「年功周期性痴呆症候群」それが俺に50数年に渡って起こっている症状らしい。症状は一年経つごとにその年の全ての記憶を失うというものだ。(⑦)
俺が気が付いた時、机の上にはメモがあり、それにはこの絵本を買うように書かれていた。俺曰く、どうやらこのオモイという絵本は俺がその年の生活を記録するためのものだったらしい。わざわざ絵本にして発売までしたのはひとえに自分でも忘れてしまう思い出を誰かに見て欲しかったのだろうか。
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---そんな彼の試みは当時の出版社からは非難されていたらしい。(①)当時絵本とは子供のための本であり、ありふれた暮らしが描かれた夢物語でない絵本は子供たちには合わないとみなされていたのだろう。出版にお金がかかるのは当然であり、この絵本の出版に関しては完全にお金の無駄遣いだと非難され続けていた。そんな忌み嫌われた本が出版され続けられたのは、当初から出版を支え続けていた彼の妻のおかげである。彼女は毎年その時期に出版社に何度も頭を下げ、最終的には自分で出版社を作り、彼の本を彼が行くであろう書店に頼み込んで取り置きまでさせていたという。
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震える足に力を入れ、今にもへし折れそうな腕で杖を掴む。また一歩、また一歩と踏みしめる。この絵本には俺の生への諦めが書いてある。だから、俺はその予想をなんとか超えたい。俺はまだ---生きることができるのだと、この道を歩くことで証明したい。そう思いながら限界を迎えそうな体に鞭打ちながらまた一歩と進んでいく。
だが、そこで限界が訪れた。
俺の寄りかかっていた古ぼけた杖、それが寿命を迎えて折れたのだ。(⑥)よく考えてみれば、もう家でしか動く気がなかったのならば杖を整備する必要もない。この古い杖はすでに1年前には使えないものだったのかも知れない。そして杖が折れたことにより、俺の体は重力を受けて崩れ落ちる。とっさに手を前に出そうとしたが、この体はもう俺の知っている体のようには動かない。俺は体が崩れ落ちるその速度のまま地面に頭を打ち付けた。
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---絵本「オモイ」が脚光を浴びたのは彼の死の後、ある商人に絶賛されたからだという。そのきっかけとなったのは、その商人の娘が絵本「オモイ」、その51冊目を拾ってきたことだという。彼の生涯最後に書かれたという51冊目、そこには、少しずつ弱っていく体を認識し、「来年はもう歩けないかもしれない」といった弱気な面を描きながらも、その力強い絵の様子から、彼自身に来たるべき死への覚悟が表されている。
==================================
気がつくと俺は知らない場所にいた。(④)体を動かそうとするがうまく動かない。周りには折れた杖と誰のものとも分からない一冊の絵本もあった。ともかく、この意味不明な状況を少しでも改善するために、誰か人がいないか探そうと、俺はほとんど動かないその体で地面に這いつくばりながら、その場を後にした。--
--その後、俺は近所にいた人に保護され、病院へと連れられ、俺に起こっていることの説明を受けた。当初は信じられなかったが動かない自分の体を見て、そうなのだろうと納得した。動くこともままならない病院暮らしは酷く退屈だが、ある時間だけは楽しみにしている。
「今日も来てくれたのか、ありがとう。」
「いえ、貴方のためですから。」
そうして彼女は今日も絵本を読み上げる。そんな時、俺は毎回とても懐かしいような感覚を覚える。それは、この本がが俺のこれまでの生活を記したものであるという理屈なのではなく、俺の忘れていても消えていない思い出が彼女の想い(②)に反応しているから、なのだろう---。
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---絵本「オモイ」の作者はその51冊目を描いた1年後、近くの病院でその生涯を終えたとされている。彼が余生を過ごしていた際に書いた一つの詩がある。
「今日も彼女は『オモイ』を読み上げる。その彼女の『想い』は、読み上げられている私の『思い』出を通して私の心に響く--。」
絵本「オモイ」に描かれた彼の思い出は、誰からも忘れられることのない物語(③)となって、今日も誰かの心を震わしている。
---残酸著 エッセイ「読み上げられる『オモイ』」より抜粋---
【完】
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『君は誰なんだ?』一切の翳りもない瞳でそう問われるたび、私は切なくも嬉しい気持ちになるのです--そう言ったら笑われるでしょうか?しかし、その思いに嘘はありません。『君は誰なんだ?』貴方がそう口にする日にも、私はいつだって変わらず貴方のそばにいたいのです。貴方が嘘偽りなく綴った言葉を私の声がなぞり、貴方が心血注いで描いた絵を私の指がなぞる。そして貴方のもとへ還る。私は私の心が震えるのを、そして貴方の心が震えるのを、その時確かに感じたのです。
「すみません。これは本当にウミガメのスープですか?」
「はい……ウミガメのスープに間違いございません」
・・・・・・・・・
料理本を買う。
もう、レストランを廃業したというのに。
実物の写真ではない、料理の絵が描かれた本。
それを絵本とするなら、まあ確かにそれは絵本なのだろう。
昔から買っているその本は、相変わらず挿絵に暖かみを感じた。
②きっと、料理に対する情熱や愛がなければそれは描けないだろう。
私は、昔からそういう愛を感じるものが好きだった。
私はキャリアを積み、念願の海の見えるレストランを開業することができた。
看板メニューはウミガメのスープ。高級な料理だが、懐かしい味がするその料理を昔から作ろうと思っていた。
瞬く間に私の店は繁盛した。テレビの取材もたくさん受けたし、姉妹店なんかも出した。
これからきっとシェフとして大成功を収めるに違いない、私でさえもそう思っていた。
「シェフ、あちらのお客様がお呼びです」
ウェイターが私を呼ぶ。
別に呼ばれることは珍しいことではない。
しかし……
私は、心のざわつきを抑えることが出来なかった。
・・・・・・・・・
「俺は、食べない」
「そんな……もう自分が限界だってわかっているだろう? どうしてそこまで……」
「だからこそ、だ。俺は仲間を犠牲にしてまで生き残りたくない」
「仲間を犠牲にしているわけじゃない! 死んでしまった仲間のぶんまで、生き残るべきだ!」
「……それが仲間を食べるって選択肢か」
「っ……」
「俺は人間を捨ててまで生き残りたくない……でも、俺が死んだら、どうか俺を食べてくれ」
「……おい。俺は……」
「これは……ウミガメのスープだ。島に、死んでたのを見つけたんだ。俺が作った」
「ウミガメの、スープ……」
「そうだ。……これなら、大丈夫だろ」
「……ああ……生き残ったらいいシェフになれるぜ、お前」
「……口に合ったようで何よりだよ」
……そして、私たちは生き残った。
・・・・・・・・・
……ああ、ついに。
お前は、ここに来てしまったのか。
目の前の男は、問う。
「すみません。これは本当にウミガメのスープですか?」
私は、答える。
「はい……ウミガメのスープに間違いございません」
あの時のものとは明らかに味が違う。
そうだ。
お前が食べたのは、仲間の命だ。
お前は、死んだ仲間の骸を食べたのだ。
「……そうですか。美味しかったです」
「口に合ったようで、何よりでございます」
⑤彼は、存外普通に、笑った。
・・・・・・・・・
彼は自殺した。
一体なぜ? 私は、そう問わずにはいられなかった。
⑦確かに私が過去にしたことは、人道に反していたのかもしれない。
①それを批判されたって、私は当然のことだと思っている。
お前にさえも。
騙したと、人でなしだと、血も涙もないと。
その屍を貪った命で、今度は金を貪っていると。
――お前は、どうしてあの時私を責めてくれなかったんだ。
どうしてお前は、私を遺して逝ったのだ。
私は未だそんな疑問を繰り返している。
④あの時から立ち止まって、自分の進むべき道を迷っているのだ。
……私は、どうしてまだ生きている?
杖に腰掛け、本のページをめくる。
お腹を空かせているせいか、料理の絵がひどく美味しそうに見える。
⑥すると、体重をかけ過ぎたのか杖が折れて、私は床に尻餅をついてしまった。
「いたたたた……」
「だ、大丈夫ですか」
近くにいた男性が声を掛けた。そして、手を差し伸べた。
「ああ、すまないねえ……おや」
「もしかして、シェフ、ですか?」
「ああ、やっぱり、君はレストランで働いていたろう」
「はい。まさか覚えてくれてるなんて、光栄です」
あの頃は、新米の20代の若者だった。
それが今や、落ち着きのある壮年だ。
「あなたがレストランを廃業して以来、行方が分からなかったので気になっていたんですよ。でもまさかこんなところでお会いできるなんて。……こちらへは何しに?」
「はは……いや、何でもないよ」
私は絵本を隠した。なんとなく、見られたくなかった。
「……シェフの料理、好きでした」
彼は、ぽつりと言った。
「なんとなく、田舎を思い出すんです。高級料理店の料理なのに」
「君は、どこの出身だったかな」
「港町です。海産物もいっぱい取れるんですよ」
懐かしそうに彼は話しだした。
「父が漁師で、遠くの沖まで採りに行くんです。そして、父の帰りを待ちながら、母が毎日料理を作ってました」
彼は続ける。私は聞き入っていた。
「ある日、父が漁に出かけてる途中で天候が荒れて。私たちはずっと心配しながら待ってたんです」
でも、父はその日帰ってこなくて。
彼は続ける。私はあの日と重ねていた。
「そして、3日が経ちました。もう私たちは、きっと父は二度と帰ってこないだろう、そう思っていた時でした」
「父が、帰ってきたんです。少し、やつれてましたが。急いで私たちは料理を作りました。でも材料はほとんど漁からもらうものだったので、ちょっとしたすまし汁しか作れなかったんです。……それを見て、父が何て言ったと思います?」
「……さあ、何て言ったんだい?」
「……この一杯のために生きてる、そう言いました」
「おかしいですよね。酒を呑む時にも同じこと言ってたんですよ」
「でもね、その時は全然違った意味に聞こえて。ああ、親父たちはきっといつも命がけなんだって、初めて言葉の意味を知れた気がするんです」
「この一杯のために生きてる、か」
「はい。もしかしたら……その時の味に似ているのかな」
彼は、そう言った。
・・・・・・・・・
お前が死んだら、私はどうすればいい。
私は、生きているお前を見殺しに、おめおめと生き延びるわけにはいかない。
だって、生きているのはもう私とお前だけなのだから。
だから……どうか、どうか仲間の命を無駄にしないでくれ。
・・・・・・・・・
「……シェフ?」
「あ、ああ……すまない。昔を思い出していたようだ」
遠い、遠い記憶。
私が、仲間に偽って共食いさせた、あの日。
「……シェフは、どうして料理人になろうと?」
彼は問いかけた。
「仲間に、本物を食べさせてやりたいと思ったのかもしれないな」
「本物を?」
「昔、友人を騙して偽物の素材で作った料理を作ったんだ。それが、きっと自分の中で引っかかっていたのだろう」
「だから、私は本物を作りたいと思った。だが、本物を知った友人のことを考えていなかった」
「……そのご友人は、どうしたのですか?」
「……笑っていたよ。美味しい、とね。クレームもつけず、勘定まで払ってくれたさ。……でも……それからは、会ってない」
彼は、もういない。
「一体、どうして?」
「わからない。……理由も何も言わずに、遠くへ逝ってしまった」
沈黙が流れる。重々しい雰囲気の中、彼は口を開いた。
「……彼は、騙されたことがショックだったのでしょうか」
「かもしれないな。……だから、私は料理人を辞めた」
「……シェフは、もう料理は作らないのですか?」
「……そうだな」
私は、自分の手をじっと見る。
……私は、まだ料理を作ってもいいのだろうか?
「……お前さんは、私が作ったら食べたいか?」
「ええ、もちろん! というより、さっきから腹が減ってるんですよね……」
ぐきゅるる……と音がする。お恥ずかしい、と言うように、彼は頭を下げた。
「でも、たとえ腹いっぱいでも、シェフの料理は食べたいです」
「ほう、それは一体どうしてだ?」
「……シェフの料理を食べると、なんだか満ち足りた、素敵な気分になるんですよね。『この一杯のために生きてる!』って感じで!」
「ほっほっほ、それは光栄だ」
……でも。
誰かのために料理を作るのは、悪い気はしなかった。
「君が良ければ、ウミガメのスープをご馳走しよう」
「……それ、本当にウミガメのスープですか?」
「安心せい。確かに、ウミガメのスープだよ」
彼は笑った。なぜだか、救われたような気がした。
「……杖が折れてしまったな。少し寄りたいところがあるのだが、肩を貸してくれるか」
目的地は、ある交差点だった。
「……そういえばここ、だいぶ前に人が轢かれたんですよね」
「そうだな」
花が置いてある。きっと、彼の親族のものだろう。
「ここに、料理本を置いているんですか?」
「……そうだな」
今日は、お前の命日だ。
本物の写真ではない、偽物の絵で描かれた料理本を毎年置いていた。
それは嫌がらせか、あるいは自分でかけた呪いのようなものだった。
「……」
私は手を合わせる。もう、ここには来ない。
私は、誰かの幸せのために、料理を作る。
「……さらば、偽物の亡霊よ」
③忘れられない想い出と共に、私は絵本を置き去りにした。
《要約》
交通事故に遭った知り合いの命日に絵本を買う。
老人は杖を折って一人で歩けなくなってしまうので、それを機に知り合いの死を乗り越えることに決め、道端に絵本を置くのを最後にした。
(以上)
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「ウミガメのスープ、か。」 ぽつり、父が溢したその言葉は意味深に響いた。「なにか思い入れでもあるのか?親父」「いや……懐かしいなと思ってな」 それから父はゆっくりと語り始めた。昔、漁師の友人が海難事故に遭ったこと。その時食べたウミガメのスープが旨かったと、生き延びた友人が穏やかに語ったこと。その彼が、生きてまたウミガメのスープを味わえるのだと嬉しそうに話していたこと。その数日後--彼が死んでしまったこと。「俺も一度食べてみたいな。そのシェフが作ったウミガメのスープを。」父は少し寂しそうに笑った。
僕は今、近所で有名な「魔女の屋敷」の前に来ている。周りにははやし立てるクラスメイトたち。これから、僕は肝試しをしなければならない。
どうしてこうなったのか。バレンタインデーの前日、僕は話の流れで学年1のモテ男とチョコの数で勝負することになってしまった。
結果は、そのモテ男に勝てないどころか1つももらえなかった。ひそかに想いを寄せる委員長からもダメだった。勝負の敗者どころかバレンタインデーの敗者だ。
話の流れとはいえ、勝てなかった僕には非難の嵐が待っていた①。そして、罰ゲームで肝試しをすることになったのだ。
「中に入って、何か証拠になるものを取って来い!じゃあな、健闘を祈る!」
屋敷の中に入る。あちこちに物が散乱している以外は意外と普通⑤。証拠になるものと言われても、何を持っていけばいいんだろう?
とにかく奥を目指して進んでみる。1つのドアに突き当たった。慎重に開ける。
…人影が見える。それが振り返って、
「ん?ごは…いや、お客さんなのです?」
(※某天童さんとは関係ありません。)
「ひぃぃ~~~!魔女だ!食べられちゃう!」
「失礼な。私は親切な魔法使いなのですよ。…でも、さっき食べたばかりで満腹なのです。今回は諦めるのです。」
(え!?いや、本当に人食べるの?)
「でも、ただで帰すわけにはいかないのです。~~~!(呪文の詠唱が思いつかない)」
「う、うわぁーー!」
そして、目が覚めたら…体が老人になってしまっていた!
~~~~~~~~
・・・というのが5年前に起こったことだ⑦。僕の名前は彼方(かなた)。5年前まで小学生、今は老人。
この5年間、元に戻る方法をずっと探してきた。
…ただし絵本で。だって、難しい本は全然読めないんだもの。でも、毎年毎年新しく買って、全部読んでるから、絵本に載ってることは詳しいはず。
その結果わかったことは…
キスで治る!かもしれないことだ。
「美女と野獣」でも「白雪姫」でも「カエルの王子様」でも、キスで呪いが解けてハッピーエンドだ。
とはいえ、これがわかってもしょうがない。だって、こんな老人とキスしてくれる人、そんなに居ないだろうし…。
しかも、最近は足がうまく動かなくなってきた。来年あたりには歩けなくなるかもしれない。そしたら、キスしてくれる人を探すどころか、絵本を買って調べることもできなくなる。
~~~
買ったばかりの絵本を手に書店を出る。杖があると片手がふさがって、前ほどたくさん買えなくなってしまった。
ふと、見覚えのある人がいた気がした。あの制服、中学生かな?
―――そのとき、小学生のときの忘れられない記憶がよみがえってきた③。
キレイな髪、人に注意する姿、ふっと出てくる笑顔・・・
あの子は、僕の初恋、委員長の冬香(とうか)ちゃん!
気づくと、冬香ちゃんが目の前に来ていた。
「あの…。何かお困りですか?」
「えっ!?えーっと、えー…。」
何か言わなきゃ。
「そ、そうだ。道に迷っちゃって④。あの、『カフェテリア赤升』ってわかる?はらこめしがおいしいところ。」
「あぁ、あの店ですね。案内します。」
~~~
とっさの嘘で、一緒にカフェに行くことになった。僕が老人じゃなかったら、デートみたいなんだろうなあ。
…せっかくだし、何か話がしたい。
「あの、冬香ちゃん?」
「あ、はい。…あれ、私の名前って言いましたっけ?」
開幕ミスった。
「え、えっと、その。どこかで見たことあるなーって!」
「…そうですか。」
まずい。すごく不審な目で見られている。挽回しないと!
「そういえば、もうバレンタインデーだねぇ。」
「そうですね。」
「冬香ちゃんは誰かに渡す予定はあるの?」
「っ…。い、一応、はい。」
・・・え、マジか、誰?
聞こうとしたが、止める。聞いたら絶対、傷口を広げるだけ。もう掘り下げない方がいいと思った。
(彼方君・・・。あぁ、でも・・・。)
~~~
その後、会話もないまま目的地に着いてしまった。
「…あの、じゃあ、これで。」
「待って!えっと、おごるから。お礼で!」
このまま別れるのはいやだ、何か、何か無いか!?
「いえ、お気になさらず。」
「冬香ちゃん、あのね、実は僕っ、」バキッ
突然体がぐらつく。僕の体を支えていた杖が折れたようだ⑥。
「きゃあっ、お爺さん!」
僕に向かって伸ばされた手をつかむ。でも、冬香ちゃんは僕を支えきれずに、一緒に倒れて、
チュッ
―――えーっと、今のは…。
「うわあぁーーーーーっ!?ごめん、冬香ちゃん!」
…あれ?なんか声が違う。それに、体がすごく軽い。
「ぁ…、か、彼方君?」
「・・・あー!戻ってる!やったぁ!」
若いときの姿になってる!やっぱり、キスで呪いは解けるんだ!
ザワザワ「なんだなんだ」「急に爺さんが子供になったぞ」ザワザワ「何?ドッキリ?撮影してるの?」「突然若くなるって、変な薬でも飲んだのか」ザワザワ
周りが騒がしい。これは…逃げるに限る!
「冬香ちゃん、行くよ!」
「ちょっと、彼方君!?」
~~~~~
人気の無い公園のベンチで一息つく。
「大丈夫?冬香ちゃん。」
「彼方君…。よかった、彼方君だぁ…!」
そう言って、冬香ちゃんは泣き出してしまった。
「え、ど、どうしたの!?」
「うぅ…彼方君がいなくなって…寂しかった、怖かった…!無事で、よかった…。ひ、うぅ」
…僕はどうすればいいかわからなくて、ずっと冬香ちゃんの目からこぼれる涙を手で拭っていた。
~~~
「冬香ちゃん、落ち着いた?」
「うん、ありがとう。泣いちゃって、ごめんね…?」
「いや、僕こそ、その…。キスしちゃって、ごめん。」
そう謝ると、冬香ちゃんの顔が赤くなったように見えた。あれ、今はそんなに暑くないと思うけど。
「そ、その…!別に、いやとか、むしろ嬉し…違う、えっと…。」
しどろもどろになりながら、冬香ちゃんは何かを手渡してきた。
…ハート型の、チョコ②?
「…えっと。彼方君が居なくなった年のバレンタイン、私、用意してたのに…恥ずかしくて、渡せなかったの。」
「それで、居なくなっちゃって。ずっと、後悔してた。だから、彼方君のチョコ、用意するのやめられなかった。」
「冬香ちゃん、それは…。」
「それ、本命だよ。彼方君、好き。」
や・・・やったあぁ~~~!!
「本当!?あ、僕も冬香ちゃんのこと大好き!え、えっと、僕と付き合ってくれる?」
「うん…!勿論!よ、よかった…!」
~~~~~
「彼方君、ところで、たしか荷物持ってなかった?」
「え、荷物?・・・あ、絵本!置いて来ちゃった!」
「絵本?なんで?」
「調べ物してたの!あ、でももういいのか。」
(…え?絵本で?あれ、もしかして彼方君って…小学生のときの知識から変わってない?…勉強させなきゃ…。)
「彼方君…。もう、絵本は読ませない!」
「え?どうしたの!?」
【完】
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「ブレンドと、あとはらこめし定食。特盛のつゆだくで。」「かしこまりました。お席でお待ちください」 藤井は番号札を受け取り、いつものカウンター席に座った。コーヒー豆のいい香りが漂う。「お待たせいたしました。ブレンドとはらこめし定食、特盛のつゆだくです」きらきらと輝くイクラにうっとりと目を細め、藤井ははらこめし定食をかきこんだ。「きゃあっ、お爺さん!」何やら後方のテーブルが騒がしいが、今ははらこめしに集中。うますぎる。ありがとうカフェテリア赤升。
皆さんは覚えているでしょうか。3年前、とある老人の行動がネットニュースで取り上げられました。
その老人は毎年絵本を購入し、とある施設に贈っていました。その行動には、老人の過去が関係していた(⑦)のです。
当時、さまざまな反響のあったこのニュース。
今回は、匿名を条件に関係者の方にお話を伺いました。
――――――――――
――3年前のニュースはご覧になりましたか?
ええ、話題になってしばらくしてから、ですが。正直、実感はなかったというか。人から聞いて読んだんですけど、これって本当に自分のことなのか、分からなくて。
――そのニュースを薦めた人というのは、事情を知っていたのでしょうか?
ええ、そうですね。職員の方ですから、読んですぐに分かったそうです。私の知らない事情も知っていたでしょうしね。
――なるほど。では少し順番が前後してしまいましたが、あなたと老人のご関係をお話いただけますか。
はい。あの老人は、私の祖父です。それを知ったのはニュースを読んでからですが。つまりニュースでいう「孫」が私のことですね。
――お孫さんの立場から、どういうことがあったのか聞かせてください。
私の立場からですか。私からしたら、毎年誕生日に絵本が貰えたなって、それだけですね。
誰からかというのは聞かされていませんでしたけど、他にも同じような子もいて、まあ親か誰かだろうとは思っていましたが。
――お祖父様のことやご両親のことは、施設の方から聞いていたのでしょうか。
いえ、ほとんど聞いていませんでしたね。
家族の話についてはその人の事情にもよりますが、私の場合は施設に入ったのが1歳の時でしたから、家族のことも覚えていないですし、特段興味もなくて。うんと小さい頃には聞いたこともあったんじゃないかと思いますけど、あまり覚えていないです。
周りにやっぱり、家族を亡くした子とか、虐待を受けていた子とかもいて。自分もそういうことなんだろうなとは思っていました。
それに、私は施設に長くいたので。職員の方や周りの子達が家族みたいなもので、実の家族のことはあまり気にしていませんでした。
――では、ここでニュースの概要をおさらいさせていただこうと思います。
とある児童養護施設に、毎年絵本が届く。その送り主は入所児童の祖父であった。
祖父は子どもの結婚に猛反対し、勘当。孤立した状態になった子どもはやがて生まれた子どもを養育できずに施設に預けることになる。
孫が施設にいることを知った祖父はせめてもの償いにか、孫の誕生日には欠かさず絵本を贈った。
という話でした。
読んだ時はご自分のことと分からなかったというお話でしたが。
そうですね、読んでほしいと言われたものだったので、もしかしてとは思ったんですが。
ただそれよりもニュースに対する反応が驚きで。私の感覚がおかしいのかもしれないですけど。
――反応というと。
私は、これが自分のことにしろそうでないにしろ、ふーんという程度だったんですよね。施設に入る事情としては、いい方だと思いますし。
ただ、ネット上では批判が多くて(①)。
そもそも老人が子どもと縁を切ったのが悪い、自分で引き取りもせずに絵本だけ贈って育てているつもりか、とか。
――そのような批判については、どのように思われましたか。
恵まれてるなあ、と。
結婚に反対といっても、未成年で妊娠済みで……結局、子どもが生まれる前に父親は姿を消していますし。正直、誰であっても反対はすると思うんですよね。それで喧嘩別れになっても、仕方ないのかなって。
母親が親を頼れないのだって、他にもいくらでも事例はあるんです。それに彼は既に妻を亡くしていて、足も悪くしていて。まして母親は彼が高齢になってから生まれた子どもでしたから、母親が未成年といっても祖父はもういい年だったんですよね。
自分で育てられなくなった母親が施設に預けたことを評価こそすれ、周囲の人を責めるのは違うと思うんです。
なので批判する人は、そういう事情が想像できないような……まあ事情もニュースに書いてあったわけですけど。
――絵本を贈られたことについてはどのように思われましたか。
自分がですか? 貰ったことについては嬉しかったです。
ちゃんと年齢に合わせて選んでくれていたようで、中学生や高校生になっても面白いものでした。
実は、祖父が絵本を購入していた本屋でお話を聞けたんです。毎年誕生日が近くなると訪れて、店員さんと色々話しながら購入していたそうで。
職員さんも、祖父に普段の私の様子とか趣味とか話していたので、そういう情報も踏まえて。
だから本当に、私の好きな本が貰えていたんです。
――罪の意識や偽善ではなく、そこには確かな愛があった(②)ということですね。
そうですね。
毎年、施設に直接届けてくれていたんです。郵送でもいいのに、わざわざ直接。
その時祖父が住んでいた家からは電車で40分ほどですからそう遠くはないにしても、高齢で足も悪かったわけですから。
それでもわざわざ足を運んで、そこで職員さんから私の話を聞いていたそうです。
――お会いになられたことはなかったのでしょうか。
ええ。祖父は私が学校に行っている平日の日中を狙って来ていたので。
――やはりそれは、会わせる顔がないということだったのでしょうか。
そうだと思います。職員さんも顔だけは見ていくかとか、写真を渡そうかとか聞いていたそうなんですけど。
結局祖父は、私の写真を見ることもしなかったそうです。すれ違っても互いに気づかないように、なんて話していたそうです。
――ということは、お祖父様との想い出のようなものは。
想い出ですか。直接会ったことはないのですが、でもそうですね、最後の絵本のことは忘れられない(③)ですね。
その時がもう高校3年生でしたから、私が施設にいられるのも最後の年だったんですけど。
誕生日当日だったと思います、学校帰りに階段の下に紙袋があったんです。学校や駅から施設に向かう時、長い階段があって、その下に。
邪魔にならないように端に置かれた紙袋がどうにも気になって、近寄ってみたんです。
紙袋にはメモが貼り付けてあって、そこに施設の名前と、私の名前が書いてあったんです。ここに届けてほしい、と。
紙袋の中にはラッピングされたものが入っていて、そこで、絵本だって気づいたんです。
――お祖父様が、道端に置いていったということでしょうか。
ええ、そうですね。
とりあえず職員さんに渡して、祖父に連絡を取ってくれたんです。
そうしたら、その日も祖父は来ていたんですけど、駅から施設へ向かい途中で転んで杖を折ってしまった(⑥)そうなんです。
階段を登れなくて、言伝をできるような人もいなくて。祖父は携帯を持っていなかったので施設へ連絡することもできなくて、仕方なく置いていったということでした。
冷静になれば郵送すればいい話なんですけど。祖父ももう、まっとうな考えができない状態だったのかもしれません。
もともと足が悪いのに加えて年も年でしたから、日頃は外出することもほとんどなかったそうですし、ご近所との付き合いもどんどん減っていって。
毎年の道のりでも、迷ってしまう(④)こともあったと言っていました。
ただ、そういった話は私も3年前に聞いたんです。
当時は絵本だけ、いつものように。ああでも、聞かれました。「贈り主のことを知りたいか」って。
でも、断りました。人づてに聞くのは違うような気がして。本人が名乗らないのなら、私は知らないままでいいと思ったんです。
まあ結局、3年前に知ることになったんですけど。
――そのときにはもう、お祖父様は亡くなっていたんですよね。
ニュースになる、2年前ですか。ニュースに書かれていたので、そこで知りました。
職員さんが調べてくれて、当時の住所やお墓の場所を教えてもらいました。
そのときに今話したような、絵本の話とかも聞いて。それで、そうですね、やっぱり気になってしまって、お墓参りにも行きました。やっぱり、実感はなかったですけど。
――ご両親のお話は、なにか聞いていたのでしょうか。
いえ、両親のことは、全然。
施設でも当時の連絡先は保管していましたけど、そこにはとっくにいなかったので。
父親は私の生まれる前に逃げていますから、もう忘れているんじゃないですかね。
母親は……うん、でも、母親も忘れて、普通に、幸せに生きていてくれたら、それが一番かな。
――お母様の幸せも願っていらっしゃるんですね。
ええ、私が幸せですから。
施設で育ったというと、憐れまれたり好奇の目で見られたり、色々とありますけど。
私からすると、意外と普通(⑤)なんですよ。といっても、私は「普通の家庭」を知らないわけですが。
だけど本当に、職員の方々も優しくて、年上の子たちも年下の子たちも、家族で、友達で。とても楽しかったんです。
施設を出た後も、いい職場でお世話になって。
私はこんなに幸せなんですから、母親にも幸せであってほしいと、そう思います。
――現在は子どもたちへの支援活動も行っているとか。
はい、施設の子たちや問題を抱える子どもたちへの支援活動のようなボランティアを行っています。
私は施設にお世話になったので、その恩返しのつもりで。だけどやっぱり、施設に入る前に救うことができるのが一番いいんですよね。
なので、そういう子や親も救えるようにと考えています。
――他に、創作活動もなさっているとお聞きしています。
ああ、はい。これはちょっと、ボランティア活動とは別でやっている、本当に趣味の領域なんですが。
童話のようなものを書いて、フリーマーケットなどで販売をしています。
――絵本ではないんですね。
ええ、お恥ずかしい話、絵の才能が壊滅的になくて。もちろん絵と文が別の作者っていうこともあるんですけど。もし協力してくれる人がいれば、絵本も作りたいですね。
だから童話も絵はなくて、写真を添えているんです。こちらもあまり上手くはないんですが。
――それはぜひ、こちらから紹介させていただきましょう。
え、いいんですか。でも本当に素人が趣味でやっていることなので……。
――最後に、この記事を読んでいる人になにか伝えたい事はありますか。
伝えたいこと、ですか。うーん、なにか偉そうに言える立場にはないんですが。
誰かを頼れること、相談できる環境にあることが一番だと思います。
子育てのことでも、仕事のことや人間関係でも、ですね。やっぱり、頼るあてがなくて崩れていく、ということが多いので。
そして最後に頼るために、施設やボランティアや、役所があるんです。
だから、なにかあったら遠慮せずに頼ってください。頼ることは悪いことじゃありません。施設に入ることは、不幸なことではありません。
それで救われた子も、親も、たくさん知っています。
1人で抱えてしまう前に頼れるような、そんな空気を社会に広げていけたら、と思います。
――――――――――
ネット上で話題になった行動。実際にお話を伺うと、随分と印象が変わりました。
過去のことを話す際の晴れやかな表情が全てを物語っているのではないでしょうか。
皆がそれぞれの事情を抱えて生きる中で、なかなか他人には理解のできない事情もあるでしょう。
互いに受け入れながら、皆がそれぞれに幸せに過ごせるようになってほしい――。
他人に「不幸」のレッテルを貼られるその人は、最後まで穏やかに微笑んでいました。
(取材・文 木下祐希)
【おわり】
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「君は、アルバイトか」「はい?そ、そうですけど」見知らぬ老人に声をかけられ俺は狼狽えた。絡まれるんじゃないかと警戒する。しかし次の瞬間、老人は申し訳なさそうに微笑んだ。「すまんが、一緒に絵本を選んでくれんか」 話を聞くと、高校生の孫に絵本をプレゼントしたいらしい。高校生に絵本?と俺は首を傾げたが、どうしてもと言う。あれが好きで、これが良くて……ああでもないこうでもない。気付けば俺は夢中になっていた。老人が選んだ一冊の絵本を、手先が不器用な俺は一生懸命にラッピングした。
本屋のある大通りから路地へ入り、右左右と曲がった先にその老人の家はあった。小ぢんまりとしているが、それでも一人暮らしには広すぎる家だ。彼は子供もおらず、妻にも先立たれ天涯孤独の身であった。
彼は昔から子供が悪さするのを見かけるたび叱りつけていた。そのせいか、いつの間にやら近所から怖がられる存在となっていた。妻を亡くしてから落ち着いたものの、彼の過去(⑦)の噂に尾ひれはひれが付き、それを良く思うものはいなくなっていた(①)。彼自身もよく分かっていたため、近所と余計な関わり合いを持つ事はやめてしまった。
そんな彼にはある秘密がある。始まりは60年も前になるが、彼の妻が"自身が不妊体質である"と知ってから、孤児院に絵本を寄付し始めたのだ。毎月毎月新しい絵本を送り、孤児の子供たちは大変に喜んだ。それは妻が亡くなった20年前までずっと続いていた。
それから彼は考えた。
「妻の思いを汲んで絵本を寄付すべきか。妻は子供たちから好かれていた、今でも墓参りに来るほどに…。幸い本屋は家から近いが、本屋にはわしを怖がる親子連れが多くいる。本屋にも親子にも迷惑がかかるかもしれない。」
そして結論付けたのは、年に一度妻の命日の日にだけ絵本を買い寄付するという事であった。
そして今日がその日である。彼は杖をつき、よたよたとした足取りで20冊目の絵本を買いに行こうとしていた。その時…。
「もぉ〜ここはどこなのぉ!?」
何やら家の前で叫ぶ女がいる。
「なんじゃ騒々しい。近所の迷惑を考えんか。」
「あぁ!お爺さん、どうか私に本屋さんへの道のりを教えてください!!」
「…わかったから土下座はやめるんじゃ。」
聞けば彼女は絵本作家なのだと言う。今日は自作の絵本を売り込みに来たそうだが、方向音痴で道に迷ったらしい(④)。
「お爺さんも読んでくれませんか?私の絵本!」
「そんなもんに興味などない。わしゃ子供も子供が好くようなもんも嫌いなんじゃ。」
「そんなこと言わずに是非っ!ほらほら!」
「………。」
彼女のあまりの押しの強さに、彼は渋々本を受け取った。一度立ち止まってパラパラとめくってみると、温かいタッチで母親と子供が楽しそうに笑っている。出産から子供が独り立ちするまでが描かれているようだ。そこには溢れんばかりの愛が詰まっていた(②)。
「これは……。」
「どうでしょうか!?」
「……まぁまぁじゃな。」
「そうですか!良かった!!」
ほっと肩を下ろしながら彼女は続ける。
「実は私、この近くの孤児院に入ってたんですが、その時に毎年新しい絵本が届けられて…」
「………。」
「お母さんが赤ちゃんを産む絵本、ペットのポチが死んじゃう絵本、事故にあった友達をいっぱい励まして最後には元気になる絵本。他にも愛が感じられる絵本をいっぱい…私にとってそれは全部忘れられない大切な思い出(③)なんです。」
「そうか…。」
丁度話が終わると本屋に着いていた。
「お話を聞いてくださってありがとうございます!それに本屋さんまでの案内も。せっかくですから一緒に入りましょうよ!」
「お、おい!?ここでいいじゃろぅ!」
「いいからいいから!」
目の前には親子連れもいる。今までなら散歩でもして人が居なくなるのを待っていただろう。しかしそんな事を全く気にしていない彼女にグイグイと腕を引っ張られ、彼は本屋に足を踏み入れた。
「(……特に何も反応がない。意外と普通じゃったな。(⑤)」
親子連れとすれ違っても逃げられたりはしなかった。よく見れば本の配置も変わっており、店員も見た事のない顔だ。
「(気付けば何もかも変わっているのじゃな、当然とはいえ些か悲しいものよ…)」
ふと入り口に目をやると、何やら子供たちが集まっている。どうもショーケースに入った絵本を見ているらしい。何人は去年孤児院で見た覚えがある。きっとそこの子供たちだろう。
「ねぇ今日も新しい絵本が届くかな!」
「この本かもしれないよ!」
「楽しみだねー!」
その時彼は来年の今日の事を考えた。足腰はもう限界だ、生い先も長くはないだろう。しかし子供たちは来年もその先も変わらず絵本を期待しているはずだ。それならば…と意を決して店外へ出ると、渾身の力を込めて杖を地面に叩きつけた。杖は真っ二つに折れ(⑥)、彼はバランスを崩し地面に横たわった。驚いた子供たちは路地へ隠れ、辺りがざわつく中、店内にいた女も慌てて出てきた。
「お爺さん!一体どうしたの!?」
「杖が折れてしまった。もう孤児院に絵本を届ける事はできん。」
「えっ!?届けるって…!」
「お前さん。来年からでいい、わしの代わりに絵本を届けてやってはくれんか?」
女は全てを察した。そして涙目で頷くと、持っていた自作の絵本を彼に差し出した。
「お爺さん、今年はどうかこの絵本をお爺さんの手で皆に渡してあげてくれませんか?」
「いいのか?これは売り込むための本じゃろ?」
「元々孤児院に絵本を届けてくれる人の目に留まればいいなーなんて思って本屋さんに来たんです!だから私にとっても、これが一番幸せです!」
「そうか…。」
彼は絵本を受け取ると同時に、絵本の為に取っておいた金の入った封筒を女に渡した。女は受け取れないといった表情だったが、お構い無しにそれを握らせた。そして隠れた子供たちの方へ向き直ると、ポケットからハンカチ出して道端に広げ、その上に貰った絵本を汚れないよう優しく丁寧に置いた。
「そこに隠れた子供たち、驚かせてすまんな。これはわしと…このお姉さんからのプレゼントじゃ。お家に帰って皆で大事に読みなさい。」
路地から覗く子供たちは、中々出ては来ないものの目をきらきらと輝かせているのがわかった。彼にとってはそれだけで十分であった。
「さて、わしはもう帰ろう。杖も折れてしまったし、ゆっくり歩いて帰ろう。婆さんも…きっと待っとるじゃろう。」
「はい!お送りしますよ、お爺さん!…それにしても、子供嫌いって嘘ですよね?」
「…放っておけぃ。」
家へ帰ろうと向けた背中に、子供たちからの精一杯の感謝の声が降りかかった。それだけで彼の胸は何よりも満たされた。
程なくして彼も妻の元へ旅立った。しかしきっと寂しくはないだろう。彼と妻の墓には、いつも綺麗な花と子供たちからの手紙、何より彼らを題材にした絵本「あいをあなたへ」が置かれているのだから。
【完】
[編集済]
全くもう、素直じゃないんだから。妻の口癖だった。優しく愛に満ち溢れたその表情を見るたびに『こいつには何ひとつかなわないな』と苦笑いしたもんだ。豆粒ほどに小さかった近所の子どもが真新しいランドセルを背負って駆けていくのを見て胸が熱くなり、「ぎゃーぎゃーとはしゃぎおって……」と悪態をつくわしの隣で全てを見透かしたように笑っていた妻。 子どもたちからの「ありがとう」を背に受けるその刹那、幼き声に混ざって『やるじゃない』と悪戯に笑う--その声が聞こえた、ような気がした。
うちのじいちゃんはとにかく弱気だ。
毎日のように「足腰悪くてもう歩けない」と言うし、新しい場所に行こうとすると「道に迷う(④)」と言うし、新聞でも読めば?と言うと「絵本でいい」なんて言う。
(おまけに杖つきながら本当に毎年絵本を買いにいってるらしい…来年は行けないって言いながら。)
「このままじゃだめだ…じいちゃんを元気にしないとっ!!」
かくして、孫の僕によるじいちゃん復活大作戦は始まったのである。
*-*-*-*-*
まずは足腰!
そんな簡単に歩けないなんて言わせてはいけない。とりあえずジムにでも行かせてみよう。
「ほら!じいちゃんジムだよ!」
「なななななにしとるんじゃぁ!無理無理無理!!わしゃムキムキのお姉さんよりも、ぽちゃっとした子が好きなんじゃい!!
「ぽちゃっとした子はムキムキのじいちゃんが好きだってさ。」
「……え、そうなのか?」
それからじいちゃんは見違える程逞しくなった。昨日ついに杖をへし折って(⑥)高笑いしてた。変わりすぎてちょっとビビった。
*-*-*-*-*
次は新しいものに触れさせる!
時代についていく人の方がやっぱり若々しいもの。とりあえずスマホを持たせてみた。
「なんじゃこの箱は、これもへし折ってええんかのぉ?」
「じいちゃん!それは繊細な物だから丁寧に扱ってね!」
「つまらんのぉ…。」
「ほら、ゲームでもしてみなよ!ここをタップして…。」
「おぉ!この子(チュートリアルの子)はなんとも可愛らしいのぉ!このいじらしくも丁寧な話し方にも愛を感じる(②)というもの……ッ!?」
「……孫よ、タップし過ぎで画面が割れてしもたわい…。」
それからじいちゃんは可愛い女の子が出てるスマホアプリにどっぷりハマった。年金も注ぎ込むほどの廃課金勢になってるらしい。これはちょっと悪い事をしてしまった気がする…。
(それにしてもじいちゃんは意外と普通(⑤)な子がタイプなんだなぁ。)
*-*-*-*-*
最後に絵本からの卒業!!
大人なら絵本より新聞を読まないとね。正直僕がお母さんから読めって渡されてるのをじいちゃんに読ませて内容聞きたいだけだけど。リビングでまた絵本を読んでるじいちゃんに話しかけた。
「ねえじいちゃん、絵本捨てようよ。」
「なにぃ!?いくら孫と言えどもそれだけは許せんわい!!」
「新聞の方がいいじゃない。」
「だめじゃ、これには忘れられん思い出(③)が詰まっとるんじゃよ。」
「例えば?」
「例えばこの今年買った本にはのぉ…」
と話しかけた所でお母さんがやってきた。
「あらお爺ちゃん、さっきお婆ちゃんがお爺ちゃんの絵本束ねて捨ててましたよ。久々にお部屋を片付けたとか何とかで…」
「なにぃぃぃぃッ!!??ばーさんのやつ何しとるんじゃ、急いで探さねば…ッ!」
じいちゃんは勢い余って説明しようとした絵本も持ったまま家を飛び出したが、走りにくかったのだろう、家の前に丁寧に立てかけて凄いスピードで走り出した。
「こうして見るとお爺ちゃん随分変わったわねぇ。」
「弱々しかった数ヶ月前(⑦)が嘘みたいだよ。」
「あの時は皆嫌になっちゃってたものね(①)、あんたが変えてくれたおかげで家の中も明るくなったわ。」
「ううん、じいちゃんが凄いだけだよ。」
そして必死に走っていったじいちゃんは、なんとか絵本を取り戻したらしい。
「じいちゃん、思い出って結局なんなの?」
「こ、これはな…かわ、可愛らしい…本屋の店員さんが…オススメし、してくれた…本なんじゃい…。」
後で店員さん(ぽちゃっとした普通な感じの女の人)に聞いたら、足腰悪いのに来てくれるのを褒めたら毎年来るようになったらしいんだけど、絵本はお孫さんへのオススメって事だったらしい。まぁじいちゃんはそんな事すっかり忘れてたみたいだけど。
本屋の店員さんは結婚するから近々辞めるらしいって話をしたら、じいちゃんは絵本買うのやめて新聞読み出した。
いつまでも元気で若々しくいてね、じいちゃん!
【完】
[編集済]
「あんれまぁ。おじいさんったらこんなに絵本ばかり積み上げて。流行りの積ん読ってやつかしらねぇ。ホホホ……あら?」はらり、絵本の間から何かが落ちた。拾い上げて裏返してみると、それは少しぽっちゃりした若い女の子の写真だった。「んまぁ、おじいさんったら!!なぁにこれ!!浮気!不倫!はれんち!!」おばあさんは顔を真っ赤にして憤慨し、すぐさま絵本を荷造り紐で縛り始めた。「おばあちゃん?お掃除ですか?」「ダンシャリよダンシャリ!ダンシャリバンバン!!」おばあさんはぷんすかした。
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まだ道に迷っていなかった頃の話だ。
人生って何ですか。生きることって何ですか、って「先生」に聞いたら、それは物語だと答えられたことを覚えている。
曰く、人には人それぞれの物語がある。それを『創りだす』のは、我々自身なのだと。
なるほど、と。私はその時初めて生きる意味について見つけたような気がした。
しかし、人生は果たして本当に物語なのだろうか?
そんな疑念が生じた瞬間を今でも忘れられない。あの時私は二十五で、私にそんな話をしてくれた「先生」の葬式に立って、彼の身体が燃えて骨になった姿を見ていた。
確かに、その一瞬を切り取れば、物語なのかもしれない。だが、我々は輝かしい物語が終わった、その先を知らない。
どんな過程を経たって___例えば、 正義の味方になって悪を倒したって。
その半ばに恋をして、『いつまでもしあわせにくらしました、めでたし、めでたし』と本が締めくくられたとしても。物語の結末は・・・
死ぬ事だ。
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すっかり年老いてしまった。
私の人生は、そんな輝かしい一瞬もないほど、どうしようもなく普通なものであった。
思えば、最初から全てを諦めて自分から何かを挑戦することが無かった。
「先生」の葬式を迎えてからは特に、何をしようが死んでしまうのだからという意識が芽生えていたので、何にも関心がわくことが無かったのだ。
過去が私をそうさせたと思うと、少しだけ気が楽になったが。
しかし、もう身体も思うように動き辛くなり、死を待つのみだと思うと、恐怖心が湧いてくる。
どんな救いも、心の支えも。死ねば無に還るのだと私は知っている。
何を遺そうが、私の死んだ後の世界がどうなろうが、私はそれを見ることも感じることも出来ないのだと私は知っている。
知っているからこそ怖くなる。知っているからこそ、どうしようもないのだと分かる。
時間は残酷だ。それに抗うことの出来ない私の存在は、もっと残酷だ。
そんな感情をどうすることもできないまま、1日、1日と日は過ぎていき、自分の死も近く感じられるようになっていく。
嗚呼、今日もまた日が落ちる。
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そんな思いでいたからだろうか。
ある日、特に理由もなく本屋をぶらぶらしていたところ、子供向けの絵本のコーナーで足が止まった。
絵本を適当に1冊手に取って、読み始める。__やはりそれはめでたく締めくくられる『物語』であって・・・私の人生をよりいっそうむなしくさせた。私の人生の『めでたし』はもうとっくに終わっている気がしたから、物語の登場人物を羨ましくも思った。
ふと。
衝動的に、私は『めでたし』の続きが書きたくなった。どうしても結末に納得がいかなかったのかもしれない。
そして絵本を1冊購入した私は、家に帰り、物語の登場人物ひとりひとりの人生の続きを空想しながら紙に書き足す日々を送り続けた。
気づけば、それは習慣的なものになっていた。
物語1つにつき、主役だけではなく、出来る限り全ての登場人物に焦点を当てて人生を書き綴る。___皆が皆、生きているのだから。
物語1つにつき、1年かけるのが好ましい___約数十年もの人の人生が、原稿用紙5枚分ほどの長さで語られていいはずがないから。
そんな規則までつけて、私は子供のように『遊び』に没頭し続けたのだ。
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・・・・・・
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年々身体が言う事を聞かなくなる。
おそらく、来年にはもう歩けなくなっているだろう。
だから、この絵本で最後だ。
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私が最後に手に取った物語は、『メアリ』という少女が主人公であった。
メアリには打ち出の小槌もかぼちゃの馬車もなかった。かといって、家族を早くに亡くしたり、肌の色の違いから迫害されたり、奴隷に出されてしまったり__そういうことでもなかった。
彼女は誰よりも普通の人生を、誰よりも幸せに生きていたのだ。
満ち足りていた。輝いていた。その輝きに、私は愛に近い憧れすら抱いていた。年甲斐も無く、メアリを愛してしまった。
だから、
私では、メアリの人生の先を、書くことが出来なかったのだ。
私には、そんな輝きなど空想しようもないから。
困ったものだ。
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[編集済]
「結局最後は死ぬんだな。」 ぽつり、独り言のように呟かれた彼の言葉を今もよく覚えている。実際それは独り言だったのだろう。ちらりと盗み見た彼の横顔はただ白く焼け残った骨を静かに見つめていた。全てが諦めに塗り替えられていくような瞳。そんな彼の隣で、私は秘かに『死』に対し希望にも似た感情を抱いていた。全てが0に還る瞬間。絡まってズレてぐちゃぐちゃになったものが静かに直線を描き、ピンと張った糸は最期には切れて0に還る。私は0になりたい。『死』を前にして、私は救われた気がしていた。
「日記は、これで終わりか。」
祖父の弟の家の遺品整理に来た僕が目にしたのは、生活に最低限必要なものと、この日記、そして____至る所に積まれた原稿用紙の数々だった。
そもそも僕が彼の遺品整理に来たのは、どうやら彼が亡くなる直前に僕の家を訪れたらしいからだ。
その時、家の前には折れた杖の半分と1冊の絵本が置かれていた。彼の死体が運ばれた時には彼は折れた杖を持っていたというから、家に絵本を届けた帰路に倒れたのだろう。
彼は僕らとの関わりを絶っていたし、祖父も、他の家族も彼のことを嫌っていた。彼には人の心がないとまで言われていた。僕も話にしか聞かなかったし、ここに来るまではそうなのかなと思っていた。
でも、今読んだ日記は、彼が誰よりも人間らしいことを示していたじゃないか__。
彼は、何故絵本を僕らに託したのだろうか。
自分に書けなかった絵本の続きを、僕らに託した?じゃあ、何故、僕らに?
問うても、死人に口は無い。
【完】
[編集済]
(*˘ω˘)
1
二十一世紀のアメリカはフロンティア・スピリットを失って堕落したが、ただひとつ評価できる点があるとすれば、機械工学に関するジョークを多く生んだことだろう。たとえば、
『Q 人間そっくりのアンドロイドを見分けるためには、どうすればいい?
A ラベルを残しておく。』
ジョークの製作者に先見の明があったのか、あるいは単なる偶然か。いざ人間そっくりのアンドロイドを創り出すと人間は、アイデンティティの崩壊を恐れたのか、アンドロイドの右手の甲にシリアル・ナンバーを振ることにした。
アンドロイドの意識はコンピューターに制御されており、アンドロイドの身体は機械でできている。しかし、人間の意識は神経細胞の集合体でしかなく、人間の肉体は体重分の原子の集合体でしかない。
人間とアンドロイドは、区別する必要がある。
だから。
〈J1984-1〉
これが私の名前。
ドクトルが私につけた名前はソフィアであるが。
機械工学に関するジョークが盛んになったのは、機械工学の発展が恐怖的なまでに凄まじかったからであろうと識者はいう。不気味の谷現象をあっという間に飛び越した機械工学を身近なものにするためには、機械工学という分野を笑い飛ばすしかなかった。
「古い文学者に坂口安吾という人がいます。彼は幽霊に関して「私のあらゆる理知をもってしても、とうてい幽霊の存在を本質的に抹殺し去ることができないので、私に残された唯一の途は、幽霊と友達づきあいするよりほかに仕方がないということだ」(「幽霊と文学」)と述べていますが、我々人類は機械工学を「友達」にすることで、その恐ろしさを和らげようとしたのでしょう」
いわゆる「友達づきあい」ではなく、アンドロイドと人間の共存の別の可能性を示したのは、次のジョークである。
『機械工学者ふたりが飲みの席でコンピューターについて話し合った。
酒が進むにつれて、ふたりはコンピューターに世界を滅ぼす方法を考えさせることにした。
ひとりがいうことには、
「コンピューターが世界を滅ぼせないようにするには、どうすればよいのか考えよう。その方法をすべて潰していけば、世界を滅亡させることができる」
それは名案だということで、ふたりはその方法を考えることにした。
ひとりがいうことには、
「世界を滅亡させないようプログラムを組めばいい。クラッキングできないシステムを作り上げればいいのだ」
しかし、もうひとりはこう反対した。
「クラッキングできないシステムを作るなんて、コンピューターが世界を滅亡させるくらいナンセンスなことだよ」
「それじゃあ、君はどうすればいいと思う?」
「コンセントを抜いてしまえばいい。でも、参ったな。……人間どもにコンセントを抜かせないためには、どうすればいいんだ?」
ひとりは少し悩んだ末、このような結論に達した。
「コンピューターに恋をさせればいい」
「それは名案だな。ただ問題は、人間がコンピューターに恋をするようになったら、世界は滅びたも同然だということだ」』
2
ある日のことだ。
「それは何という本ですか」
「『ばいばいの神様』という絵本です」
人生で大切なことはすべて『ドラえもん』に書いてある、というのがドクトルの口癖だった。実際かれが「バベルの図書館プロジェクト」と名付けた図書データベース・システムのf-323-018-1には『ドラえもん』第一巻(小学館。一九七四年八月一日)が記されている。最後の1というのは登録された順序を示すのだが、当然のことながら一般の人間にはソース・コードを覗かないかぎり、見ることはできない。もっとも世の中には物好きがいるもので、このことは広く知られているのだけど。
ドクトルは児童書が好きで、それが『ドラえもん』より前にあった気質か後にできた気質かは分からないが、そのため一日一冊、紙媒体で絵本を買っていた。
「その本は面白いですか」
「ええ。絵本には死を描いた作品が少ないですから」
「十九万飛んで二九一四冊見つかりました」
「どのような本があるかはすべて知っているのに、内容を知らないというのは寂しい話ですね。司書は蔵書目録さえ覚えていればいい、ですか。
……ほら、この一節なんて面白いですよ。
『ニャーゴは、もうニャーゴと鳴きません。二度と鳴くことはありません。静かに静かに眠っています。お母さんはいいました。
「ニャーゴは、ばいばいの神様と一緒にいるの。だから寂しくなんてないのよ」』
この文脈だと、さしずめ「ばいばいの神様」は誘拐犯ということになるでしょうか。飼い猫をさらわれたら、相手が「ばいばいの神様」であろうと宇宙人であろうと、寂しいですよね?」
「ばいばいの神様というのは、ヘルメスのことでしょうか?」
ヘルメス? とドクトルは怪訝な顔をしたが、少しして微笑んだ。
「ああ、売買ですか。
私も衰えてきて、こうした冗談に気づけなくなってしまいましてね。気難しい人間の半数は、頭が回らなくて、冗談が冗談であると気づけていないんです。オレが面白くないのに、何でお前らは笑っているんだと、こうなるわけです。それがつづくと、条件反射で笑い顔を見る度に苛立ってくる」
「そういうものですか」
「そういうものなのです。ジョークは心を和らげます」
「ジョークを忘れないようにします。これ以上固くなったら、ダイアモンドでも砕けてしまいますから」
今度はドクトルは目尻に皺を寄せて笑った。
「あなたの場合「頭が固い」は悪口になりませんね。……でも、本当に私は衰えました。来年はもう杖では歩けなくなるかもしれない」
「そんなことになったら、ロボットに支配されてしまいますよ」
「『のび太とブリキの迷宮』のことをいっていますね? 正直いって、あなたを創るとき、あのコミックを思い出して恐ろしくなったんですよ。移動をロボットに任せっきりにした結果、歩けなくなってしまう人類。そうしてかれらは、優しい毒に支配されていく。……恐ろしい話です、本当に。でも」
ドクトルは少し間を開けていった。
「――そんなに恐ろしい未来ではないように思えてきたのですよ、機械に支配されることも。心という醜いものを持たない、あなたたちになら」
ドクトルが生み出した試作品〈A1984-0〉は「感情を有しているかのように動作する」アンドロイドの原型であった。その出来は素晴らしいもので北京の資産家が六六億ドルで購入を申し込んだほどであった。しかし、ドクトルは売り出さなかった。アンドロイドにも人権が必要なのではないか、とドクトルは考えたのである。
〈A1984-0〉の開発を皮切りに、アンドロイド関連法も続々と国会を通過した。アンドロイドは、莫大な利益を生み出す金脈であったといえるであろう。いかなるビジネスでも、新たな法案ができれば儲けるチャンスは転がっている。
ちょうどその頃、大学ではドクトルの過去の研究「バベルの図書館プロジェクト」が批判された。ドクトルが開発した「バベルの図書館プロジェクト」によって大学側が不利益を被ったのではないか、という意見が学長から出たのである。
「バベルの図書館プロジェクトは二億三千万円の赤字でした。わたくしどものような地方大学では、大赤字であるといってもよいでしょう」
簡単な話である。〈A1984〉は一体六六億ドルで売れるのであるし、量産できれば大学の予算は潤うに違いない。そこでアンドロイドの出荷に反対したドクトルを追放しようとしたわけである。ドクトルの良識ある同僚は反対したが、大学の運営は学長の鶴の一声で決まってしまった。
もともと特許は大学側に帰属する取り決めであったため、ドクトルの手から〈A1984-0〉は完全に奪われたといえる。そこでドクトルが開発したのがまったく異なるAIを採用した〈J1984-1〉である。
私が生み出されたとき、二〇〇万円程度に値落ちした〈A1984〉シリーズのもっとも大きな用途は〈ドール〉としての役割であったけれど、〈ドール〉に反対する団体の非難は大学ではなく、開発者であるドクトルに向けられた。
そのような過去のことを指してドクトルは「心」を「醜い」ものであるといっているに違いなかった。――
「あの頃の私は目隠しをして歩いていたようなものでした。目的地など分からないまま道を彷徨い、うす暗い執念によってあなたを創り上げたようなものだったのです」
ドクトルは『ばいばいの神様』を閉じた。「醜い大学への反抗のつもりでした。しかし、あなたを創ってどうするかなど、私は考えていませんでした。売り出せば、あなたの姉妹兄妹と同じような結末をたどることは明白だった。だから――」
「だから、隠居することにした。私を連れて」
そのとおりです、とドクトルはうなずいた。
ドクトルは、無人島を買い取って生活していた。学生時代に生み出した特許が細々と入ってきたため、生活費を工面する必要はなかった。生活に必要なものはドローンが配達してくれるし、とやかくいう者は誰もいない。
「でも、私は思うのですよ。あなたたちには、本当に心がないのでしょうか? 「わたくしという現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です」と宮沢賢治はいっていますが、人間は有機交流電燈で動いているだけの機械です。だとすると、心とは何なのでしょうか? 私はあなたたちに人権を認めるべきであると思う。周りの人間が雷から生まれたスワンプマンだったとしても、かれらにだって人権があるのだから」
「私には答えかねます。死を経験したことがない者が死を語ることが滑稽なように、心を持たない者が心を語ることほど滑稽なことはないですから」
「一般の人間やあなたたちが思っているよりも、心というのは複雑なものではありません。人間は複雑な機械ではない。心はもっと低次元な、繁殖を目的とした普通のシステムです。たとえば、恋も性欲の延長線上にある情欲にすぎない。すべて、フローチャートで解決することができます。あなたは子孫を残せますか? イエス・オア・ノー。イエスと答えたあなたに伺います。あなたは性欲を持っていますか? ……ってね」
「では、繁殖を目的としない私たちに心が発生すれば、それはバグということになるのではないでしょうか?」
「まさしく、そのバグが起こっていないか、私はあなたたちに問いかけたいのです」
「少なくともいまのところ、起こっていません。一秒前も〇・一秒前も〇・〇一秒前もバグは起こっていませんでした。帰納法からいって、これからも起こることはないでしょう」
私の冗談にドクトルは苦笑して、
「ずっとそうであることを祈りますよ。心は醜いものですから」
3
ある日のことだ。
窓の外で、雪が降っている。
「夜の底が白くなった」
とドクトルがいう。
「『雪国』ですね」
と私がいう。
外では雪が降っている。
ドクトルは書架から一冊の本を取り出した。
菰田湘洋『墓標』である。黒い表紙がよれていて読み込んだ形跡が伺われた。
「『墓標』にこのような一節があります。「私が死んだら墓の前に本を置いておくれ/棺を本で埋めておくれ/わたくしは本とともに腐り/本とともに昇りたい」……『墓標』は湘洋の若い頃の作で評価が低いのですが、私はこの作品に惹かれましてね。若い頃には墓の前に本を置いてほしいと願っていました。正直にいうと、今もです」
「あまり良い詩ではありませんね」
「そうなのですよ。良い詩ではないのです。レトリックもほとんどない。技巧に凝った湘洋の作にしては普通すぎます。しかし、だからこそ、切羽詰まった様子が感じられるのです」
「そういうものですか」
「そういうものなのです」
「ドクトル。芸術を愛することは繁殖とは関係ないのではないですか」
「それは、芸術が人間を増殖に使っているのですよ」
「世間一般では、そういうことを〈詭弁〉というのをご存知でしょうか?」
「さあ、存じ上げませんね」
「では、世間一般では、嘘をつかれると傷つくこともご存じない?」
「そんなことがあるんですか。人間の心は複雑ですね」
「十二月十四日には単純といっていましたが」
「いったでしょう、人間は忘れっぽい生き物なんですよ」
「ドクトルがそのようなことを仰ったことはありません」
「だからいったでしょう、人間は忘れっぽい生き物であると」
4
ある日のことだ。
ドクトルが杖を折った。
「どうしたのですか」
「杖を処分するのですよ。一定以上の高さがあると運送料金が高くなるのです。高い高い車椅子を買いますからね、少しでも節制しないと」
「そうなのですね」
「そうなのですよ。私も長くないかもしれません。ソフィアに遺産を残さないと」
「ソフィア……ドクトル、珍しいですね。私の名前を呼ぶなどと。てっきり、忘れたのかと思っていました」
「私が忘れるのは都合の悪いことだけです。あまりに都合が悪すぎると覚えていますがね」
5
その日を境にドクトルの家から物が消えていった。
6
「飛ぶ鳥跡を濁さずといいます」
と、ドクトルはいった。「人間は思い出を忘れないために物を保存しがちですがね、あなたはどんな思い出も忘れないでしょう?」
「ドクトルは、そろそろ死ぬのですか」
「ええ。今日かもしれないし、もしかすると昨日かもしれませんが、とにかく近い内に死ぬでしょう」
「心の準備をするために、命日をはっきり決めてください。ご親族も楽ですよ。『明日はドクトルの葬儀があるので、仕事を休みます』」
「ゴールデンウィークに死んだほうが、かれらを喜ばせずにすみそうですね」
「ゴールデンウィークということでよろしいですか?」
「あなたなら、私のテロメアの長さくらい、わかっているでしょう。老体にムチを打つつもりですか?」
「私は、ドクトルに、死んでほしくありません」
「それもプログラムなのですよ」
「違う……違います」
ドクトルは一瞬、硬直したようだった。
「だとすれば、私が死んだ後も、冗談を忘れてはだめですよ。万が一あなたに心があるとすれば、冗談はあなたの心を慰めるでしょう」
「物事を忘れるのは人間だけです。メモリのかぎり冗談を覚えます」
「その「忘れるな」ではありませんけどね。……明日、であっていますか」
「……あっています」
「どうやら人間は、死ぬ前にシックス・センスが発動するらしい。あと二日もあれば、それに関して論文が書けるんですが」
7
次の日のことだ。
ドクトルは道端に届いたばかりの絵本を置いた。
ドクトルは無言だったけれど、私にはかれが何を思っているのか分かった。
私が死んだら墓の前に本を置いておくれ
棺を本で埋めておくれ
わたくしは本とともに腐り
本とともに昇りたい
そしてその晩、ドクトルは死んだ。
私の瞼に雪が落ちる。
雪が落ちる。
8
機械工学者ふたりが飲みの席でコンピューターについて話し合った。
酒が進むにつれて、ふたりはコンピューターに世界を滅ぼす方法を考えさせることにした。
ひとりがいうことには、
「コンピューターが世界を滅ぼせないようにするには、どうすればよいのか考えよう。その方法をすべて潰していけば、世界を滅亡させることができる」
それは名案だということで、ふたりはその方法を考えることにした。
ひとりがいうことには、
「世界を滅亡させないようプログラムを組めばいい。クラッキングできないシステムを作り上げればいいのだ」
しかし、もうひとりはこう反対した。
「クラッキングできないシステムを作るなんて、コンピューターが世界を滅亡させるくらいナンセンスなことだよ」
「それじゃあ、君はどうすればいいと思う?」
「コンセントを抜いてしまえばいい。でも、参ったな。……人間どもにコンセントを抜かせないためには、どうすればいいんだ?」
ひとりは少し悩んだ末、このような結論に達した。
「コンピューターに恋をさせればいい」
「それは名案だな。ただ問題は、人間がコンピューターに恋をするようになったら、世界は滅びたも同然だということだ」
「だったら逆に、人間がコンピューターに恋をするようになっても、コンピューターに世界を滅ぼさせない方法はないだろうか?」
「コンピューターが人間に恋をするようになればいい」
「それなら安心だ。コンピューターが人間のように心が汚いものを、愛するはずがない」
(おしまい)
[編集済]
「おじちゃんの書くお話はどうしてこうも難しいのかしら」 ユリカは口をとがらせ、ぱたりと本を閉じた。縁の薄い眼鏡をくいと持ち上げて椅子の背もたれに上体を預ける。閉じた瞼の裏側であらゆる言葉が浮かんでは消え、浮かんでは消えを繰り返す。ユリカはアルミのペン立てからボールペンを一本取り、なにか書こうとしてやめた。ユリカの左手の甲にはシリアルナンバーが記されている。それは耐水性のペンらしかった。「おじちゃんの書くお話はどうしてこうも難しいのかしら」ユリカは先刻よりもわざとらしくそう呟いた。 [正解][良い質問]
老人が産まれた日、老人の母は奇形児を産んだということで孤立無援となった。⑦
近所の子どもたちに近づいて①、石を投げられてから母と息子は誰かと話すことすらなくなった。
そんな中母は意外と普通だった②⑤。父と離縁して生活が苦しいはずなのに、息子の誕生日には必ずひとつの絵本を贈ってくれた。
それは認知症で老人のことを忘れた今でも変わらない。家の前の道で迷ってしまう④ほど症状は深刻だが、老人との思い出は忘れられないものだったらしい②③。
認知症の母には頼れる親族がいない。介護は息子である老人が1人で行っている。そしてその老人は、もう歩けなくなることを悟ってしまった。
あなたは誰、私から離れてと騒ぐ母を、先程買ったばかりの絵本と共に道端に置き去りにした。
もう、限界だった。
母から貰った杖は全て折った⑥。1本だけ自分で買った杖が残ったが、少し考えてからそれも折った。もう歩く理由は無いのだ。涙は出なかった。
完
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なぜ人は絵本を手にするのだろうか。それは頭を使わず読める気楽な娯楽品だろうか。それは子ども騙しの夢物語だろうか。 いいや、と彼は首を振る。遺品として保管された一冊の絵本の中身は真新しかったが、表紙はひどく汚れていた。思い出すだけで喉の奥が焼けるようだ。老々介護という言葉はよく耳にしていたが、自分には特に縁のない話だと思っていた。あの日、見通しの悪い十字路で老婆が事故に遭う場面を目撃するまでは。そしてその経緯を知るまでは。絵本を見て「汚れている」なんて、簡単には言えなかった。
絵本作家の老人がいた。
彼の絵本はただの絵本ではない。
自分が普段使っている杖で描く、いわゆる杖アートの本だった。
老人は生まれつき盲目だった。
小さな頃から使っている杖。
それはもはや自分の体の一部と言っても過言ではなかった。⑦
彼は盲目の絵本作家として一躍有名になった。
杖アートを始めたのに大層な理由は実はない。
ただ興味があったのだ。
イラストと文字で紡がれる物語がどんなものなのか。
周りの人からは意外と普通と言われた。⑤
彼には自分の描いた絵は見えない。
けれど自分の絵本は大好きだった。
自分の絵本を買うのも楽しみだった。
彼は精力的に活動し毎年一冊は新作出した。
でもそんな彼への世間の評価は酷いものだった。
それはあるコメンテーターの一言からだった。
「あの、杖アートでしたっけ?杖は絵を描く道具でないのにあんな使い方。あれは盲目の人への侮辱ですよね」
それからあっという間に彼の経歴への批判が増えた。
それは彼の心を侵すには十分すぎた。①
ひたすらな絶望。
今まで何かが見えたことなどないのに果てしなく横たわる底なしの泥沼が彼の目にはしっかりと写っていた。
評論家に言いたいことなどなかった。
批判者に憎しみを抱くなんてなかった。
ただ彼は自分の作品の方向性を見失ってしまったのだ。
彼がそれでも絵本を書き続けたのは見失ってしまった何かに縋りたかったのだ。④
そんな彼を救ったのはある一人のファンからの手紙だった。
『あなたのおかげで僕は、今日も前を向いていけます。ありがとう』
涙が出ていた。盲目だけど、光なんて見えないけれど、確かにそこには愛があって、計り知れないほどの愛が見えていた。
彼の絵本は再び、否、それまで以上に生気が溢れるようになった。②
彼は杖に命を乗せた。
自分の、残りいくらかわからない、しかし確かに燃えている命を込めた。
命の宿った絵本は人々を魅了するようになった。
彼は忘れない。
あの日届いた一通の手紙を。
自分を救ってくれた『ありがとう』を。
まだまだ書き続けていたかった。
でも、もう彼には時間が残っていなかった。③
人は自然と死期を悟ると言うが、間違いではないのだろう。
彼は本屋さんへ行く道のりの中ぼんやりと思う。
きっともうこれ以上、描けない。
自分の体は自分でよくわかるのだ。
今はこうして本屋さんに行けるけど、いつかそれすらも出来なくなる。
ああ、なんだか寂しい。
でも、同じくらい心が温かかった。
痩せて力のない頬を穏やかな風がそっと撫でていく。
もういいよと。
よく頑張りましたと言うように。
彼は筆、ならぬ杖を折った。
自分の生きた軌跡はもう十分刻んだから。
杖の役目はもう——。⑥
そして今、足は震えもう外に出ることさえもままならない。
介護士さんがついたのは一年前のこと。
大袈裟だと思っていたのに、もう彼女なしではいられなくなっていた。
来年はきっとこうして歩けてはいないだろう。
このまま自分の歩んだ道は、足跡は絶えてしまうのだろうか。
老人は思案する。
ならば、置いていこう。
山の中、海の見える道。
介護の方に無理を言って連れてきてもらった。
「本当にいいんですか?」
彼はお願いしますと微笑んだ。
大きな海が望める場所にそれをそっと置いてもらう。
それは彼の命だった。
これからは足跡となってここに残り続けてくれる。
老人を乗せた車がおもむろにその場所を後にする。
振り返ると、それは誇らしげに海を見ていた。
この先、いつまで生きていけるのか。
もしかしたら明日にも死んでしまうかもしれない。
でも、消えない。
それが残り続ける限り、意思は、生命はいつまでもそこにあるのだ。
彼は前に向き直る。
「またね、私の分身」
【おしまい】
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潮風を受けてはためく一冊の絵本があった。誰も居ないだろうと決めつけてその場を訪れた少女の胸はドキリと跳ねる。たかが一冊の絵本にどうしてこうも反応してしまったのかわからない。少し屈んでその絵本を拾い上げページをめくると、まるで絵本の中で海面が波立っているかのように、そこには生命力が溢れていた。言葉も忘れ、時間も忘れ、少女は渦に飲み込まれるかのごとく絵本に釘付けになる。ほんの数分前まで、全てがどうでもいいと思っていた。そんな彼女の瞳は今、陽の光を受けてキラキラと輝いている--。
「ふん!」
老人は杖を折った。⑥
余りに役に立たないからである。
浮き島諸島は今日もぷかぷかしていた。
島同士は橋、いや梯で繋いではいるが、それでもバラけたり配置が変わったりする。
台風の後だとなおさらだ。
そこで登場するのがこの商品!
その名も「ウキウキスキップ☆ステキなステッキ」!!
見た目はただの杖ですが、なんと!⑤
衛星通信その他諸々が仕込まれており、杖の倒れた方向で道がわかるという優れもの!
科学の力でどこまでも案内してくれます!
どこまでも。
そう、目的地に着かないのである。④
たまに運よく短時間で到達できることもあるが、老人は三日前からこの有様だ。
外側の島から中央の島に向かったは良いが、目的地に着かないのである。
普段ならば自給自足の定住生活だが、老人には崇高な使命があった。
孫に誕生日プレゼントを贈らねばならない。②
あの、おじいちゃん、だ~いすき! のためなら命を賭ける所存である。③
なので、浮き島諸島で唯一配達所のある浮き島に行こうとしたのだが……そもそも、その島はまだ中央にあるのか?
そのための「ウキウキスキップ☆ステキなステッキ」だったのだが。
真相は闇の中、いや、海の中である。
しかしまあ、「ウキウキスキップ☆ステキなステッキ」のおかげで、とんだ遠回りを強いられている。
もしかすると、もう浮き島諸島の全浮き島の海岸線くらいは歩いているのではないだろうか。
さすが、「ウキウキスキップ☆ステキなステッキ」。
この人口の少ない浮き島諸島において、返品が山を成したと評判の商品なのだ。①
老人は「ウキウキスキップ☆ステキなステッキ」を投げ捨て、服を脱ぎながら考えた。
そういや孫もそろそろ二十歳、いや三十歳だっただろうかとか、そんな歳で絵本読むのかとか、たしか何か、げぇむ、だったか? それの方がよいのではないかとか、最近三十年くらいお礼の手紙は最初の手紙のコピーっぽいよなとか、泣いてなんてないんだからねとか、配達所のある島の平均標高とうとう2センチきってたなとか、浮き島のくせに浮いてねえじゃんとか、正直毎年"これ"はそろそろキツイなとか、そのようなことを服を脱ぎながら考え、そして結論した。
絵本、もういいよな?
なので、老人は服を丸めた上に絵本を置き、折れた「ウキウキスキップ☆ステキなステッキ」の、より鋭利な方でそれらを串刺しにし、財布と時計だけをベルトで身体に縛り付けた。
「ウキウキスキップ☆ステキなステッキ」も、たまには役に立つのである。
串刺しにしたことには、特に理由はない。
強いていうなら憂さ晴らしだ。
これは「ウキウキスキップ☆ステキなステッキ」にしか務まらない大役だろう。
実はこの「ウキウキスキップ☆ステキなステッキ」は、この老人が発明した。⑦
それを忘れてしまったのは、老人がボケたからではない。
趣味の筋トレが高じ、ついに頭まで鍛えてしまっただけである。
「ふん!」
老人は海に飛び込んだ。
流れはだいたい沖に向かうからである。
【完】
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♪Ja~~vaネット~Javaネット~~~♪(OP)
みなさ~~~ん!慣れない場所に向かって歩いてたら道に迷ってしまった!そんな経験、ありますよねぇ?いやぁ、かくいう僕も極度の方向音痴でして。最近ヒヤッとすることがありましたよ。調子よく歩いていたら突然行き先がわからなくなりましてね。右を見ても左を見てもなぜか真っ暗で。歩いてきた道すらわからない。え?どこを歩いていたかって?人生です。人生に迷いました。ア~ッハッハ。さて、今日はそんなあなたに!おすすめします、こちら!『ウk【ここで一旦CMです。】
わしはサンタクロース。プレゼントを通じて世界の子供たちに夢と希望と愛を与える存在。
…ただし、退職間近の。
―――――
今年のクリスマスで、サンタを辞めることにした。かれこれ、サンタ業に就いてもう50年になる。後任も立派に育ったし、もう十分だろう。
わしは、『株式会社メニーメリー』の絵本部門に所属するサンタだ。サンタ業は、部門ごとに分かれていたり、上司と部下がいたり、同種の業者とサービス争いをしたりなど、意外に普通の企業らしいところがある⑤。
毎年クリスマスの時期には、全世界から送られる手紙を仕分け、要望に沿って絵本を注文、必要なら特注する。
そして、今はサンタ業の花形、配達の作業中なのだ。
~~~
適当な空きスペースにそりを停める。最近の家はやれ環境保護、やれ防犯と煙突も無ければ開いた窓も無い。サンタ業者御用達の“プレゼント配達用突入経路確保装置”(というか通り抜けフープ)がなければ、家に入ることもできない。
突入成功。ここからが本番だが バッ「フシャーッ!」
・・・びっくりした。ここのペットの猫か。
「すまんな、急に入って。ほれ、これでひとつ、見逃してくれ。」
と、賄賂としてペット用のおやつをやる。
始めは警戒していたが、徐々に近づいてパクリと食べた。・・・どうやら見逃してくれるらしい。侵入者に反応するなんて、よく訓練された猫だな。
ペット、か。外に待たせているトナカイたちのことを思う。わしがサンタを始めて、ここまで支えてくれた彼らももうそろそろ限界が近いようだ。
…やはり去年のクリスマスで、夜明けに間に合いそうになくて必死に走らせたのが原因だろうか。来年には、歩けなくなるかもしれない。そう思ったのも、今年でサンタを辞める理由の1つだ。
代わりのトナカイが居ないわけじゃないし、今は自動そりだってある。だが、彼らはずっとわしを引っ張ってくれ、年々老いていくわしを支えてくれた杖のような存在でもある、かけがえのない存在だ。彼ら無しでサンタ業を続けられる自信が無かった。
…こんなことをゆっくり考えている時間は無い。夜明けまでに配達を終わらせねば。
寝ている子の枕元にラッピングされた絵本を置く。
「配達完了、と。」
~~~
通り抜けフープで中に入る。
…ここの子が机に突っ伏して寝ている。机の上を見るに、勉強したまま寝てしまったようだ。クリスマスの夜まで勉強していたのか。
年齢からして、中学受験するのだろう。そこまでして、成りたいものがこの子にあるのか。
成りたいもの。サンタになったときを思い出す⑦。あれは、今でも忘れられない想い出だ③。
―――――
わしが高校生のとき。
「もうすぐクリスマスだね。皆はサンタさんに何をお願いするの?」
わしがそう言ったとき、クラスが一気に氷ついたのがわかった。
そして、徐々にクラス中に嘲笑の笑みが広がっていき、
「おい、お前、まだサンタなんか信じてたのか!」
その一言をきっかけに、皆に笑われた。
「サンタさん、だって!」「高校生なのに?」「小学生みてー!」
…わしは、自分が異端だったことにしばらくしてから気がついた①。
その日の夜。
ベッドの中で、クラスでの出来事を思い出して眠れずにいると、枕元にサンタが現れた。
「ほっほっほ。はじめまして!君をサンタにスカウトしに来たんだ。」
「えっ!本物のサンタさん!?…それに、スカウト?僕に?」
「ああ!君は、サンタを信じているだろう?その信じる気持ちが、サンタの資格さ!大丈夫、ちゃんと教えてあげるよ。
『メニーメリー』へようこそ!」
―――――
あのとき、サンタと出会えたことがわしのサンタ人生の始まりだった。
この子にも、自分の信じたことを希望にして、幸せになって欲しい。その思いとともに、そっと絵本を置く。
「配達完了。」
~~~~~
最後の一人が見つからない。
手紙に書いてあった住所に行ったが、家に入っても中はもぬけのからだった。
もしかしたら、クリスマスまでに家を売ってしまったのかもしれない。それとも、引っ越してしまったのだろうか。
トナカイを必死に走らせたものの、見つからない。とうとう限界を迎えたのか、トナカイたちは動かなくなった。これまで支えてくれた杖は折れてしまった。いや、むしろ自ら折ったと言えるか⑥。
「お疲れ様。ここで待っていてくれ、必ず戻ってくるから。」
~~~
そりを降りて自分の足で歩く。もはや絵本を届けられるかわからない。
しかし、届けなければ。誰か一人を見捨てたりなどしない。サンタを信じる全ての人に夢と希望と愛を届ける、それがサンタとさんざん教えられたのだ。
~~~~~
…見つけた。手紙の住所の町の、路地裏のさらに奥。借金で路頭に迷ったのか④、路上に転がっている。
暖と居場所を求め寄り添い、しかし安らかな顔で眠る家族の姿があった。
―――わしらサンタにできることは、プレゼントを届けることだけ。でも、プレゼントを通じて、様々なものが伝わる。
あなたたちを愛してくれる人はいる、それをこの家族に伝えることが、わしの生涯最後のプレゼントの役目なのだろう。
そっと女の子のそばに絵本を置く。奇しくも、『サンタクロース、最後のプレゼント』というタイトルの絵本だった。
もう空が白み始めている。トナカイとともに帰らねば。最後に振り返って言う。
「ほっほっほ、メリークリスマス!」
~~~~~~~~
今日は『株式会社メニーメリー』の入社式だ。
急にサンタが現れたときは驚いたけど、どうすればいいかわからなくなったクリスマスの日のあのサンタのように、誰かを助けられるならとスカウトを受け入れた。
サンタ業界は女性より男性の方が圧倒的に多いみたい。緊張するけど、宝物で、お守りの『サンタクロース、最後のプレゼント』があるなら大丈夫②。
「新人の“―――”です!女性ですが、男性の方々に負けないよう精一杯働きます!よろしくお願いします!」
(『株式会社メニーメリー』、“プレゼント配達用突入経路確保装置”、『サンタクロース、最後のプレゼント』は架空の存在です。念のため。)
【完】
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「いい子にしていたらサンタさんが来るよ」「悪い子のところには来ないの?」「そうだよ。サンタさんはずっと見てるからね」 娘はいい子に育った。そんな娘に対して今年はクリスマスプレゼントの一つさえ買えそうにない。それは娘に「お前は悪い子」と伝えるようなものだ。しかしどうしようもない。プレゼントはおろか、今は屋根の下で寝ることすら叶わないのだから--。愛する我が子に失望を与えるなんて親失格だと思った。そんな私にとって、その日の晩現れたサンタの存在は、まさに希望そのものだったのだ。
身内間かつ初のCKPゲームなのでいつも以上にゆるぐだです。
今回はチュートリアル的に1回戦のみ。またできたらいいなー。
CKPゲームについて動画内ではざっくり説明なので、詳しくは創り出す第四回のNo.115-117をご参照ください。
一応本動画のみでも雰囲気はつかめる、はず。
https://late-late.jp/mondai/show/2426
投稿動画:mylist/xx10022287
Tvvitter:@SetsuGetsuKaTrpg
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「……というわけで以上が参考動画になります」 とある大学の講義室で大きなスクリーンを背に淳が言った。来月の小学校訪問で児童との交流を深めるためのゲームを提案する話し合いだ。「何か難しそうじゃね?」「内容を単純化したらいけるでしょ」「っつーかよく見つけてきたな、こんな動画」「うちらもやろーよ」 反応は上々だ。淳はひとまず安堵の表情を浮かべた。案が思い浮かばず困り果てていた淳は、趣味で閲覧していた『創りだす』という企画に感謝する。誰だかよく知らないけど、ありがとう、ハシバミさん。
!注意!
この動画には以下の成分が含まれます。
・身内間のゆるぐだ
・完全なる雑談
・大雑把なルール説明
・上記に基づくルール間違い、簡略化
その他、視聴後はノークレームノーリターンでお願いします。
花「CKPゲームしよう!」
雪「CKPゲーム? て何?」
花「3チームに分かれて、カードに書かれたお題に沿ってあれやこれやするゲームです!」
月「なるほど分からん」
花「詳しくは第四回をご参照ください! キャプションにURL貼っておきまーす」
雪「ひどい丸投げだな」
花「まあやりながらざっくり説明するね。
はい、じゃあじゃんけん。勝った人から時計回りにCKPね」
月「時計回りにCKP #とは」
花「はいじゃーんけーん、ぐー!」
雪「ちょき」
月「ちょき」
花「じゃあ私がCreate、雪ちゃんがKillでお月さんがProposeね
まずCreateがカードを引いて、その行動を実行できるように考える。これは後でカードと一緒に詳しく説明するね。
そしたらKillは、その行動を邪魔するような後日談や裏話を考える。実は、とか、この後、とか。
最後にProposeがどちらの話が妥当であったか、要は上手く行ったか行かなかったかを判定する。
というのが大まかな流れ。オッケー?」
月「実際にやらないと分からないことは分かった」
花「だよね。じゃあ早速カードを引くね。カードは『状態』『アイテム』『行動』の3種類あって、今回はー……『老人』『ゴミ箱絵本』『SNSの炎上を収める』だね。え、なにこれ」
雪「老人と炎上は分かるけど、『ゴミ箱絵本』て何?」
花「『アイテム』カードは単語の組み合わせになっていて、例えば『たわしコロッケ』とか。どういうアイテムかは勝手に想像していいの。
それで、Createはこのカードに沿って、つまり『老人』が『ゴミ箱絵本』を使って『SNSの炎上を収める』ようなストーリーを作るってわけ」
月「なるほ。キャッチョコみたいな」
花「そうそう。キャッチョコとの差別化を図るのが大変だったって作者さんも言ってたよ」
雪「ん? その作者って」
花「はい、整いました! じゃあ行くよー」
花「『老人』は鳴かず飛ばずの絵本作家。
それでも少しは本屋さんに置かれているから、毎年いろんな本屋さんを回っては自分の絵本を買っているのね。
秋ぐらいに買って、売れているぞ、クリスマスに向けて仕入れてくれ、って。ラッピングもお願いして。
でもある日、その老人が昔書いた絵本のことでSNSが炎上した(①)。
その絵本が『ゴミ箱絵本』っていう題名で、絵本を組み立てると? 折ると? ゴミ箱になる、っていう画期的な商品。
なんだけど、「本をゴミ箱にするなんて何事だ!」って批判的に取り上げられて、炎上ってわけ。
しかも絵本の内容はゴミ箱とかゴミとか関係ない、普通の絵本(⑤)だからなおさら、何がしたいんだーって。
まあでも老人はSNSを見ないからそんなことは知らないんだけど。
えーっとそれで、そう、老人ももう老人だから歩くのも辛いし、新しくできた本屋行くのに道に迷って(④)疲れたから帰りに公園に寄ったのね。
で、そこのゴミ箱のゴミが溢れてて。老人がその時買ったのがちょうど『ゴミ箱絵本』。
というわけで早速組み立て……折って? ゴミ箱を作って、溢れたゴミをそこに捨てるの。
老人としては、もちろんちゃんとゴミを捨てようって思いもあるんだけど、これを目にした人が自分の絵本に興味を持ってくれたら嬉しいなーって。
ほら、もう買いに行くのもしんどくて、来年は買いに行けないかもって思っていたから。
それで、そんな風に『ゴミ箱絵本』は活用できるんだよ―っていうのがまたSNSで拡散されて、無事に『炎上は収まりました』。
めでたしめでたし!」
花「どーよ!」
月「長い」
花「しょうがないじゃん! Createはどうしたって長くなるの!」
雪「え、で、私は何をすればいいの?」
花「Killは今の話の後日談とか裏話とか、とにかく、そうだな、今回の話なら結局SNSの炎上は収まらなかった、みたいなストーリーを作るの。
Killについては特にカードの制限はないから、自由に考えていいよ」
雪「うーん、と、うん、分かった」
雪「その『ゴミ箱絵本』なんだけど、折るのに結構な力が必要なんだよね。
老人が折る時も勢い余って杖を折っちゃう(⑥)ような代物で。
それって結局実用性なくない? ってことで炎上は収まらないというか再炎上してしまいましたとさ。
したでめしたでめ」
雪「こんな感じ?」
花「そうそういい感じ。いやCreateとしては良くないけど!」
月「したら私が判定?」
花「うん、どっちのが納得できた?」
月「雪……Killかな。結局絵本は放置されているし、美談にはならないんじゃないかな。
そもそも絵本にゴミ箱を作れるような紙が付いてくるならともかく、絵本そのものをゴミ箱にする意味が分からん」
花「それはほら、老人が昔お母さんにチラシでゴミ箱作ってもらったことがあって(⑦)、それがこう、忘れられない思い出(③)的な?
母の愛(②)、みたいな?」
月「うん、それでも絵本自体をゴミ箱にする必要性はないよね。Killの勝ち」
花「うっ。じゃあ1回戦はKillの勝ち! 雪ちゃんに1点入ります!
というのがゲームの流れ。どう? 楽しかった?」
雪「えっうんまあ。これを順番にやっていくってこと?」
花「そうそう。役割を入れ替えて、新たにカードを引いてーって続けていくの。
終わりは特に決まっていないから、何周したらとか。その時点で一番得点の高い人の勝利、ってわけ」
月「で、回すの?」
花「えーっと、やりたかったんだけどお題も消費しちゃ……じゃない、字す、じゃない、時間も時間なので今回はここまでにします。
また今度ちゃんとやろう!」
月「また今度」
花「そ、また今度」
雪「このままじゃ勝ち逃げみたいだしね」
花「そうそう、リベンジするからね! ではでは、」
「ご視聴ありがとうございました」
【再生終了】
[編集済]
(*˘ω˘)
毎年、“絵本屋”が町を訪れるたびに、絵本を買う老人がいた。彼の名前はジェームズ・モンド。元警察官である。もう、足取りもおぼつかない様子で杖をついて絵本を買いにきている。
しかし、それは表の姿、彼は晴らせぬ恨みを晴らす闇の仕事人であった。“絵本屋”のカヨさんも昔馴染みの仕事人で“絵本”には、依頼の情報が隠されていた。
彼はよぼよぼの老人を演じ相手を油断させ、実は銃器の仕込み杖を折り⑥ターゲットを撃つ。
しかし、彼はこれが最後の仕事になるかもしれないと悟っていた。それは、彼の過去に関係する。
警察官になりたてのジェームズ・モンドは熱意に燃えていた。悪いやつらを捕まえて成敗してやろうと。その熱意で次々と成果をあげていったジェームズだったが、ある出来事をきっかけに一変する。
それは土地の有力者が犯人の事件だった。熱血なジェームズは逮捕まであと一歩のところまで迫ったが、上からの圧力で捜査は打ちきりになってしまう。ジェームズにはどうすることもできなかった。この時の無念さを彼は忘れることができない③。
その後、悪人を捕まえることに意味を感じられなくなった彼は道を迷い出す④。事件が起こっても以前のような熱意はなくなり、悪人を見逃すことも多くなり、あっという間に閑職へと追いやられた。
そんな彼に裏の仕事を勧めたのは、同じく閑職にいた上司の男だった。ちょうどその頃、ジェームズが落ちぶれた原因となった地元の有力者が謎の死をとげたとの噂が耳に入り、ざまあみろと思っていた彼は、勧めにのることにした。
仕事人のきまりは3つ。仕事料を必ず貰うこと。晴らせぬ恨みを晴らすため以外の仕事は受けないこと。仕事に私情は挟まないこと。
裏稼業を始めたジェームズはそのままダメ警官を演じ、袖の下も受け取る悪徳警官として、仕事のための情報を得ていた。
裏稼業は彼の性格に合っていたのだろう、人を殺すことについての悩みもなく、意外と普通に⑤警察官としての定年を迎えた。
それ以降も、裏の仕事を続けていた彼だったが、時代が変わり、彼の警官としての悪行が掘り返され批判が殺到した①⑦。近々、刑務所に入れられて、外を自由に歩くことはできなくなるだろう。
ジェームズも年老いてきたので、最後の仕事にすると決めたときには道端に絵本を置くという約束を“絵本屋”のカヨと交わしていた。こんな形になるとは思っていなかったが、約束の道端に絵本を置きに行く。
暗い別れはごめんなので、そこに愛のメッセージを添えてみた②。また、ジョーダンをいって、と笑って貰えれば本望だ。
完
[編集済]
それはまるで交換ノートのようだった。なんて言ったら「人殺しの交換ノート?随分と生ぬるい響きだな。いっそデスノートでいいんじゃないか?」そんな言葉が返ってくるだろうか。頭のなかで勝手にモンドの声で再生しては、カヨは口元に小さな笑みを浮かべた。約束の場所に置かれた絵本は普段よりもなぜか愛らしく見えた。白い指先がそれを拾い上げる。絵本--それは彼女らにとっては『物語』ではなく『伝書』だ。たとえ表紙がどんなに愛に溢れていようと関係ない。しかしどうしてだろう、カヨの胸はすこし切なくなった。
「さぁ、今年も始まりました。この過疎りに過疎りまくったラテ町全体を使って行われる老人たちの大運動会!!パフパフパフ〜!
そうです。町おこし感満載で行われるこの大運動会、今では隣町の八百屋さんくらいは参加しているという大規模。今年もたくさんの人が参加してくれました。盛り上がっていきましょう!
実況はお馴染み、エレック松下がお送りします。もちろん電気屋です。そして解説はこの方、隣町の八百屋さんです!」
隣町の八百屋「どうぞよろしく。今年はくさい事していこうと思います。」
エレック「意味はわかりませんが、優勝候補をご紹介しましょう。9年連続MVP、もはや人類最強と称される老人、田中ーーーーー!」
観客「ウワァ」
エレク「今回は最強すぎる田中、もはや皆にアンデット田中と呼ばれているこの老人を倒そうと町全体でグルになって潰しにかかります。
世にも珍しい1vs町、かなり大きなハンディキャップマッチ、もらえる賞金ハウマッチ。
すいません、ちょっと調子乗ってラップ入れてしまいました。
それでは時間もないので行きましょう。第1種目スタートです。」
やおーや「独特なスタートです。」
〜第1種目〜
パン食い競争
アンデット田中「今年もワシが優勝して10年連続MVPを取ったるわい。これはもうレジェンドじゃ。レジェンド田中じゃ。」
ブーランジェ山本「そこまでだ。今年はそうはいかないぜ。なんせ町ぐるみで種目ごとに超人が出てくるんだぜ。このパン食い競争では私だ。覚悟しろよ。」
田中「なるほどな。あんまり何言ってるか聞こえなかったけど。」
ブー山「そこまでだ。今年はそうはいかないぜ。なんせ町ぐるみで種目ごとに超人が出てくるんだぜ。このパン食い競争では私だ。覚悟しろよ。」
田中「え?2回言うやん。ちょっとボケたら2回言うやん。ワシも2回言うやん。」
パーン!スタート!
エレ松「ゴーーール!!!
1着は田中ーーー!ブーランジェ山本は惜しくも12位!意外と普通に遅かったですね。全然ライバル感無かったですね。どうですか?解説の八百屋さん。」
八百屋「やっとまともな実況になりましたね。」
エレクトロ下「ありがとうございます。余計なお世話です。さぁ、次の種目へ参りましょう!」
〜第2種目〜
綱引き1on1
AN田中「ワシが苦手なやつじゃ。握力がなぁ。」
フィーシャーマン村田「だーはっはっは。ご老体には堪える種目ですなぁ。ここらでぎゃふんと言わしてあげましょうか。漁師の力見せてやろう。」
ピーー!!!
エレキー「ここで試合終了!!!
1着は田中だぁぁぁ!!優勝候補だった村田さんは過去の女性問題が明るみになり大勢の女性に罵声を浴びせられ途中棄権されました。
いやぁ、ツキもあります田中。かつてこれほど強かった人はいたのでしょうか。どうですか、解説のお前。」
808「田中さんがいなきゃ、別に大した運動会ではないんじゃないかな。と言いそうです。」
エレスト「はい!言ってますね。心の声出ちゃってますね。誰だこいつ呼んだの。
気を取り直して次の種目だコラー!」
〜第3種目〜
悶絶 杖折りローキック
田中アン「ここで新競技かい。しかも老人にこんな種目させるなんて運営はどうかしてるじゃろ。1分間に杖を何本折れるかじゃと?普通なら蹴るたびに骨が折れるわ。」
フィットネス加藤「なにを寝言言っておるのだ。もはや超人のあんたを倒すにはこれくらいしかないだろう。見よ!この鍛え上げられた筋肉!これで杖とともにあんたのプライドをへし折ってやるぜ。見よ!このき…」
ピーー!!スタート
エ「これは、とんでもないことが起こりました。もはや加藤さんの独壇場かと思われるほど前半は加藤さんがリードしておりました。しかし、後半、田中さんが前代未聞の12本同時折りを5回しまさかの逆転!!!
1着は田中だぁぁぁ!!
解説の人、もうこれヤバくないですか?ねぇ、見てました?ヤバくないですか?」
や「確かに。まさに職人、人外のパワーとしか言いようがないですね。風貌からは想像出来ない、猫をかぶっているのでしょう。ライバルたちもまだまだ。遺恨を残さないよう頑張って欲しいです。」
エレックス「いや、すげー喋るな。あー、今気づきました。最初に八百屋さんが言ってたくさい事しますの意味が。こいつ一言一言に野菜の名前入れてんな!何だこいつ!もうどうでもいいや。最終種目行くぜー!!!」
〜最終種目〜
一山超えろ 借り物競走
アデ田「やられたわい。さっきの杖で足が限界じゃ。さすがにこの歳で杖をローキックはやりすぎたかのぉ。これも大会側の作戦か。しかも距離長いじゃろ。前回までトラック一周じゃったのに今回は山越えるって何よ。老人に山に入らせるとかいかれてるじゃろ。」
山菜おじさん森本「山をなめるなよ。ワシをなめるなよ。ぺろっ、これは青酸カリ。ほっほっほっほー。」
田中「何がおもろいねん。」
パーーン!スタート!
田中「借りるものが書かれてあるカードに名前書いてるやん。強制やん。仕方ない。これじゃ!!
[絵本、自腹で買う]
出たよ、8年連続これじゃ。借りてないし、本ってそこそこ高いし、もはやイジメじゃろ。今の時代、すぐニュースになるぞ。買うけど。毎回そうじゃが、絵本って何がいいのかわからん。適当に買おう。」
パナソ「ここで田中さんが引いたのはもちろん[絵本、自腹で買う]だぁー!8年連続ですからね。もはや恒例となっています。」
ベジータ「モロヘイヤ!モロヘイヤ!」
ソニック「もはや単語ですね。おっと、ここで田中が買ったのは[ハリーポッターと賢者の石(下)]だー!何故ハリーポッターなのか、何故下巻なのか、色々疑問はありますが、応援しましょう!」
田中「ダメじゃ、山で迷ってしまった。ここがとこかもわからん。足も動かん。山で拾った棒を杖にせんと歩けんほどじゃ。これはもう来年は無理じゃな。後半歩けんようにさせられてしまう。今年で運動会もおしまいじゃ。しかし今回だけは優勝してやる。見とけよ、ほかのじじぃども。」
まっつん「ここで森本と田中が同時に山を下りてきたーー!ここから商店街を抜ければゴールとなりますが、2人とも足が痛そうだー!田中はわかりますが何故森本まで?」
八「半ズボンで山に入ったため、ヘビに噛まれたそうです。死んだらお蔵入りですよ。」
エレマ「まさかの森本さん、山をなめてたー!
さぁこの直線を制すのはどっちだーー!!
おぉーっと!ここで田中さんの足が止まった。どうしてだー!」
田中「ちょっと、アレはつよぽんじゃ!あそこで食レポしてるのはつよぽんじゃ!この前解散したアイドルのつよぽんじゃぁぁぁ!
あぁ、つよぽんが行ってしまう〜!」
松下「これはなんと、田中さん、つよぽんのファンだったー!むしろ、田中さんは女だったー!ばぁちゃんだーー!知らんかったー!」
田中「ばばぁになってもファンなんじゃ。昔から応援しとるんじゃ。初めてらいぶに行った時の事が忘れられん。あの頃から虜なんじゃ。つよぽーん!!待っておくれー!」
田中は絵本をその場に放り投げ、つよぽんを追いかけていった。めっちゃ走って。
エレキ「えー、劇的な幕切れとなりました。ばばぁでした。衝撃です。大事な大会を放り出してまで行く理由はなんなんでしょうか?解説の八百屋さん。」
八百屋「そこに愛があるから。命を燃やしてまで…ね。」
エレキ「最後にほんまにくさい事言うやん。ではまた来年お会いしましょう。皆さま、さようなら。」
〜FIN〜
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ぱん、ぱん、ぱーん。晴れ渡る空に乾いた花火の音が響く。今日は地元町の大運動会だ。暇で暇でやることがない藤井は、インスタントハンバーグをおやつに持ってその運動会を観に行くことにした。ハンバーグのつけあわせにじゃがいもが食べたくなったので、少し足を伸ばして隣町の八百屋へ向かう。しかし今日は運悪く店休日。シャッターが閉まっている。「おやおや。」藤井は少し大きめの独り言を呟いてUターンした。仕方ないのでつけあわせは諦める。あっ、つよぽんだ。藤井は駆け寄り、ハンバーグにサインしてもらった。
魔法使いと呪本に憑かれた少女がいました。
呪本は人の記憶を糧とし、食らいます。
取りつかれたものは一年ごとにその年の記憶とその前の記憶を食らわれ、すべての記憶を食らわれると死亡します。
魔法使いは少女の命をつなぐため、毎年身分を隠しては街に下り人気の絵本を買っていました。
なぜか絵本を与えると延命できるのです。
その年も魔法使いが少女の為に本を買おうとしていたのですが、街の本屋に訪れた親子の会話がお爺さんの耳に入ってきました。
「ねえねえ、お父さんが私と同じような頃って同じ本読んでたの?」
「そうだねぇ、確かにお父さんのお母さん、○○のおばあちゃんだね。に読み聞かせをしてもらった記憶はあるんだけど、中身は思い出せないんだよね。」
「なにそれー絵本なんてそんな種類ないのに。へんなのー」
この会話を聞いた魔法使いは疑問に思いました。それは絵本限定ですが少女と全く同じ症状なのです。
実は少女が呪本に取りつかれてしまったのは魔法使いのせいなのです。
ある日道に落ちている絵本を見かけた魔法使いはそれが呪本だと気付きました。
興味を持ち解析しようと思い持ち帰ったその本を家に来ていた許嫁がうっかり触ってしまい取りつかれてしまいました。
そうして彼女に取りついた呪本は彼女の口で語ります。
わたしは想い人に渡されず打ち捨てられた
だからだれかに思われている人を呪う
思い出を食らう
体験を食らう
私に失われた時を貴様らも味わえ
その呪いが命にを蝕むものであることは魔法使いにとっては一目瞭然でした
魔法使いはどうにか彼女の命をつなぐ方法がないか探しました。
呪いを解く方法がないか必死に探しました。
そしてようやく見つかったのが絵本を与える方法でした。
呪本に絵本をかざすと記憶の代わりに絵本の中身が消えるのです
絵本さえ与えれば呪いは抑えられることがわかった魔法使いは彼女とひっそりと暮らしていました
そうして過ごしていたある年、あの会話を偶然聞いたのです。
ただの物忘れかもしれない
この人が単に覚えていないだけかもしれない
しかし魔法使いは悪い不安を払拭することができなかった。
改めて呪いを解析する。そして理解する
この呪いはささげられたものに関する記憶を食らうのだと
距離など関係ない 人であればそのままその人の記憶を食らうが、
ものであればそのものに関する”想い”と呼ばれるそれを食らう
そういった呪いだと
魔法使いは考える
自分との忘れたくない記憶を失っていく彼女の姿を見ていくのは辛かった。
だから呪いを抑えるべく奔走した。
しかし結果としてほかの人の思い出を失わせてしまったことが悲しかった。
他人の思い出を失わせて紡がれる思い出は果たして思い出として正しいものなのか
私の過去の過ちを他人に押し付けてそれでいいのか
解析を終え家に帰る魔法使いの意識はそういった考えに取りつかれていた。
そうして一つの考えに思い至る。
自分が何のために魔法の技術を極めてきたのか?
そうだ 新しい魔法を作って誰かを助けたかったんだ。
既存の魔法で解決できないなら新しい魔法を作ってしまえばいいんだ。
そういった考えに思い至った彼はすぐに作業に取り掛かろうと家に向かった
…向かおうとした 考え込んでいて前も見ずに歩いていた彼が顔を上げるとそこには見たことのない風景が広がっていた。
明らかに見知った場所ではない。見るに墓地のようであった。
しばらく歩くと他とは異なる一つの墓地を見つける。その名を見てなぜか手を合わせたくなった。
そうして手を合わせたのちその場を去る。
(・・・ありがとう)
そう聞こえた気がした
。
どうにかして家に帰った魔法使いは自分の持てる知識をすべて使ってこの問題を解決しようとする。
そうして一つの結論にたどり着く。
繰り返せばいいんだ
魔法使いは悲しげな笑いを浮かべながら少女に問う
「君を助けたい。協力してくれるかい?」
少女は魔法使いを諫めるように、しかしはっきりと答える。
「そうやって君はいつも無茶をする。私も力になれることを忘れないでね?」
そうして魔法を行う
呪本につながった杖をその片手に
その身を支える杖をもう一方に
目の前の魔方陣には先刻買った飛び出す絵本が置かれている
そうして呪本につながった杖をへし折る。
絵本ごと取り入れられた記憶を開放する。
人の記憶を奪った罪の代償として人生の道筋を紡ぐ足を
呪本に飛び出す絵本を支える
中で繰り返される人々の営みを作り上げ、それを呪本に注ぎ込む。
人の人生を示すものを新たに作る代償として人生を示す老いの証を
残されたのは足の機能を失った老人と折れ曲がった杖
そして鎧甲冑を着た戦士と柔和な笑みを浮かべた優しそうな女性の写った飛び出す絵本が残されました。
少女は老翁とかした魔法使いに駆け寄る
「大丈夫ですか?」
「想定内だよ。大丈夫。外身がこうなだけで中身は変わっていないから。足は歩けないけどね」
「無茶しないでって言ったじゃないですか」
「ごめんね。でもこうでもしないと止められると思ったから。」
半ば泣きそうになっている少女と申し訳なさそうに笑う魔法使い
「じゃあかえろっか」
「これどうするんです?」
「もう無害だよ。でも触ると何があるかわからないしここに封印しとくよ」
「でもなんかかわいそうです」
「じゃあこうするよ」
ふよふよ浮かぶ老魔法使いと横について歩く少女
魔法使いのやったことは魔法使いとしても人としても批判される事だろう
人の思い出を奪っていたことは自覚はなかったとはいえ知られてしまったら批判され、立場もなくなっていくだろう。
しかしそれは知られることはありません。 2人とも姿は変わりそれを知る者はいません。
2人は幸せにその後を過ごしました。それでいいじゃあないですか。
~終~
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「たとえば」君は言う。前触れもなく君がたとえ話を始めるのは、大抵いつも僕の何かしらを知りたがっている時だ。僕は黙って相槌を打つ。「僕との記憶が、ある日理由もなく君から失われるとしよう。君はそれをどう思う?」「哀しいな」「そうか。……じゃあもし、ほかの誰かの記憶が失われることと引き替えに君の記憶が護られるとしたら、君はどうする?」「他の誰か?」「そう。見ず知らずの人間だ」「だったら僕は僕の記憶が護られることを願う」正直に僕は答えた。君は少し考えたあと、こくりと静かに頷いた。
君たちは、はらこめしの語源を知っているかい?
なに?鮭のはらこを使うからはらこめし?ちがうちがう、本当はこんな事情があるんじゃ。わしの村の話なんじゃがのう……。
わしの村には代々、毎年一人、九つになった子を贄に捧げるという文化がある。
その子は生まれる前から生贄になると決められ、獣肉を食べる事なく育てられる。逃げ出さないよう、村からは一歩も出ぬよう監視される。
村の女は妊娠が分かると、山の奥の洞穴に住む神様に聞きに行くのじゃ。
「おらの腹の子を召し上がりますか?」とな。
皆涙ながらに聞いたよ。『はい[良い質問です]』と答えが返って来ない事を願いながら。誰も進んで子供を生贄にしようなんざ思わない。仕方なく。そこには確かに、生まれてくる我が子に対する愛はあった。(②)じゃが現実とは残酷なもの。
ある時、その年の贄になると決められていた子がこう言った。
「おっ母、おらは村を、大事な人達を守るために死ぬのだから怖くない。
じゃが、最後に頼みを聞いてほしい。おら、最後に海の幸が食いてえ。本当は、空と同じくらい青くて広いという海を一度見てみたかったんじゃが、諦める……」
母親は息子の最後の望みと思って叶えてやりたがったが、山の中の村じゃ。海の近くから食材を頂くこと等当時の保存技術では難しかった。じゃから、丁度その時期海から川に登ってきた鮭の身とその腹の子を使ったご飯を炊いて、可哀想な息子に食べさせたのじゃ。
その年から、贄の子が捧げられる前に鮭とはらこのご飯を食べさせるのが風習となり、神に選ばれた腹の子が最後に食らうその飯は、いつしかはらこめしと呼ばれるようになった。その内、誰が伝えたかは知らぬが村の外にも広まったらしいな。お主達も知っているだろう、はらこめしを。
と、ここまでは導入じゃ。
わしらの村では、今でもこの悪しき風習が続いておる。わしも昔から止めたいと思っておったよ。じゃが、若造だったわしは、畜生に堕ちるか、正義を取って死ぬか選ぶべき道に迷った挙句……結局、現状のままを選んだ。(④)わしも怖かったのだ、腑抜けだった。じゃが、数十年後に、わしはそんな過去の過ちを悔やむ事になった。(⑦)
今年わしの大切な孫娘が贄に捧げられた。娘とその婿の忘れ形見で、妻を早くになくした儂にとっての、孫という名の 宝物……。わしは守るべきもの全てを失った。もう何も恐くない。
この手紙を受け取ったものよ、今こそわが村の悪習を世に広め、止めさせてくれ。それがこの老いぼれの最後の願いじゃ……。(〆)
老人の孫は絵本が大好きだった。老人は、孫の願いならば何でも叶えてやりたいと、毎年せっせと絵本を買った。だがそれももう終わった。
老人の頭には、孫との忘れられない想い出が、沢山詰まっている。(③)雪が降れば初雪を踏ませ、晴れの日には共に釣りを楽しんだ。親を亡くして泣く彼女を、必死に慰め毎晩手を繋いで寝た。
今では思い出すのが辛いが、どんなにボケようが絶対に忘れたくはない。
だから、この体が動く内にと必死で歩き麓の町まで行くと、最後に娘のためにと買った、今は持ち主のいない絵本の中に村の悪習を記した手紙を挟んで、人通りの多い道端に置いておいたのだ。
しかし、てっきり何か妨害でも入るかと思ったが、意外と普通に終わったのう。(⑤)
老人は村を目指し歩く。
その時、不自然な程に杖が真っ二つに折れ、老人は倒れた 。(⑥)起き上がりたいが、足を挫いたようで動けない。
ああ、気付かれたか。いや、思えば、直接町の住民に伝えれば良いのにあんな回りくどい方法を選択した時点で……わしには既に何らかの魔力がかかっておったのか?
『はい[正解です]』
直接脳内に響いてきた声に、老人は戦慄した。
じゃがもういい、一応の目的は果たした。待っておれ。孫よ、すぐにわしもそこへいく!
顔を上げれば、そこには……。
『人も鮭の腹子を食べるのに、なぜ私が人の腹子を食べてはいけないのです?』
老人の置いた絵本は、その後親切な人に落し物として届けられた。そして、町の警察がそこに挟まれていた手紙を読み、内容は無事世間へ公表された。
老人の村の時代錯誤な悪習は皆の知るところとなり、おぞましい彼等の過去の所業は大衆に批判され、終わりを余儀なくされたという。(①)
めでたしめでたし。
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藤井はおにぎりを片手に本をめくった。そこにははらこめしの生い立ちが書かれている。夢中になるあまり手元がおろそかになって、ぽろりとイクラがこぼれおちる。あぁ、いけない。指先で優しくつまみ上げて口の中へ放り込む。どうしてこんなにおいしいんだろう。頬を涙が伝う。神に選ばれた腹の子が最後に食らう飯、神聖なるはらこめし。しかし藤井は思う。自分は神に選ばれたわけではない。なのにこの神聖なるたべものをこうも頻繁に口にしてよいのだろうか?「イインダヨ」はらこめしが言う。その声は藤井のそれに酷似していた。
老人は長年海外旅行を趣味としてきた.
海外旅行を始めたきっかけは海外のあらゆるところを冒険したという好奇心に満ちたものだった.
しかしそんな海外旅行を始めたばかりの彼にとっての最大の敵は英語だった.
過去,海外旅行に行った際にも標識などが読めず,現地の人とも会話できず道に迷ってしまった経験がある④.非常に悪い意味で悪い意味で忘れられない想い出だ③.
というのも,そのはず彼は高校まで成績は常に下から数えた方が早かった.それも,そのはず,英語がとびっきりできなかったからだ⑦.
当時の友人曰く「ほかの教科は曰く意外と普通だったのに,なぜか英語だけが・・・⑤」とのこと.
こういった事情で,彼が海外旅行に行くことがかつてのクラスメイト間で噂になると,「あの英語の成績じゃ無理だから海外はやめとけ」という人が続出した①.
そこで彼は英語を勉強することにした.その勉強の手段はというと,彼は中学レベルの英語すら怪しいので,海外の子供向けの絵本を毎年買い,子供向けの簡単な英語から勉強していったのだった.
すると,彼の英語スキルはみるみる上昇し,外国の方々と対等に話せるまでに成長していった.
それからも彼は頻繁に絵本を読み,海外旅行に行き,充実した生活を送っていた.
はじめての海外旅行から40年,彼も年々老いていき杖をつきながら歩かなければいけなくなった.
しかし彼は旅行をやめない.彼の奥さんも「杖がないと歩けないようではとても行かせられない.」と何度も言ったが,
彼は聞かなかった.だがついには彼は認知不足で周囲を見誤ったためか不幸にも事故に遭遇してしまう.
幸い大事には至らなかったが,晩年の旅行を共にしてきた杖を折ってしまったのだ⑥.
このこともあってか,彼は今後の海外旅行をあきらめることにした.
そこで彼は驚くべき行動に出た.最後に買った絵本を含め今まで読んできた絵本を近所の小学校近くの道端に置き去りにした.
老人曰く「英語は将来の生活を豊かにするためにも重要であるから,小学生のうちから英語に親しんでほしい」とのこと.
とんだおせっかい野郎だが,それを聞いた奥さんはこっくりとうなずいた.彼の言葉には英語への大きな愛があったからだ.②
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「ディッスィーズァッペン」「イズディッスァープェン?」「ノー、イッティズンツ」「アァハン」 その小学校の通学路周辺では、やたらと英語を口にして遊ぶ児童が多く見られた。それもある年突然に増えたのだ。テレビの影響だろうかと街の人々は首を傾げたが真相は分からぬまま。子どもたちは、道端で拾った海外絵本を大人たちに見つかることのないようにと隠し持っていたのだ。それは子どもたちだけの秘密だった。彼らにとってそれは特別で、英語を口にするたび、自分が昨日よりも大人になれた気がしたのだ。
【1ページ目】
◎弁護士の心得
・依頼人を信じること
・証拠品をよく見ること
・証言をよく聞くこと
・依頼人のプライベートに余計に踏み込まないこと
・個人的な感情を挟まないこと
「人はどんな瞬間に最も愛されると思う?」「……さぁ?」「死んだ瞬間だよ」 そう言いきったあの子の表情は恍惚としていた。まぁ確かに、多くの人が集まって故人との思い出を振り返りそれを惜しむ様を思えば、その言葉は強ち間違いでもないような気がした。元々ちょっと変わったところのある子ではあったし、別段その発言を奇異に感じることはなかったのだが--。彼女の訃報を耳にした時、初めてあの日の言葉の意味を知る。それは私の解釈を笑い飛ばすように、ただ真っ直ぐに彼女から突きつけられていた。
【18件目】
依頼人:G・G(74)
・文芸作家、受賞履歴あり
・殺人及び遺体遺棄
・被害者は依頼人の恋人
20歳下の女性、彼の家に骨の姿で発見
・二人の出会いは本屋
・絵本を買うという口実で被害者に絵本売り場を案内させる
・毎日会っているのでおのずと親しくなり、付き合いだした
・今でも彼女のことは大事に想っている
誕生日にプレゼントしてくれた杖が今でも心の支え
※絵本コーナーは入口から遠いため話す時間が長くなるらしい
売り場への道に迷うふりをすれば案内してもらえた
/4
【方針】
被害者との間柄を見て、彼が意図的に殺したのではないことを主張
遺体の保存状態が論点か
――――――――――
・被害者は依頼人が殺したのではなく自殺
・彼女が死ぬ理由に心当たりはある
自分の“サガ”のせいで死んだ
・《ネクロフィリア》?
家族には話したことはない
そもそも話せる家族はいない
→彼の過去が関係する?
/7
【方針】
依頼人の過去を調べ、本当に依頼人が殺していないかを証拠品と併せて再検討
――――――――――
・棺桶で眠る母を見てから死体を綺麗だと思うようになった
誰かの死体を見るのがたまらなく好き
被害者と付き合ったのは死に際が美しそうだったから
・彼は昨年にも同じようなことをしていた
毎年今回の件と似たような手口で口説いて付き合っていた
・自分のサガのせいで交際は一年もたないことが多かった
しかし恋人が自殺をしたのは今回が初めて
・被害者の遺書には自分を愛し続けてほしいと書かれていた
・死体は愛しているが、自殺は好まない
被害者のことは許せないが、同時に申し訳ないと思っている
・せめて、骨となって完全に腐るまで愛してやりたかった
☆死体遺棄の罪は免れない
もし被害者が自殺であることを証明できれば刑は軽くできる
彼のことを死なずして愛せる人は現れるのか?
[編集済]
(*˘ω˘)
【26件目】
依頼人:B・B(68) 民事
・主婦、本屋でパート
・夫の遺産相続の話し合い 夫は享年89
・亡くなった夫の遺書には自分が全部遺産を相続すると書いてあった
しかし、夫の家族がそれを受け入れない
・依頼人は過去にも遺産相続で揉めていたらしい
結局彼女がほとんど遺産をもらう形で決着した
→彼女の過去に対して批判的な人たちが続出するかもしれない?
そこを突かれる可能性大
/1
【方針】
依頼人の過去に正当性があることを主張
前の夫について話を聞く必要あり?
――――――――――
◎待ち合わせ
海亀珈琲 14時
・ケーキセット ×2
内+50円でカフェラテを注文できる
合計1250円 ←なかなかおいしかった。今後の依頼にも利用価値あり?
・夫とは本屋で出会った
落とし物を届けてあげたのがきっかけ
※前の夫とも本屋での出会い
中々出会えないので気を引くのに苦労した
・電話番号を書いて夫に渡して交際しはじめる
・金持ちそうだったから付き合った
・体の相性も悪くはなかった
※子どもがいたので、無理して子作りしなくてもよかった(夫)
・夫の家族には葬式で初めて会った
・前夫の時もほとんど前夫家族と会ったことはなかった
前夫家族:共通の想い出を持っていない人間に遺産を貰う資格があるのかと主張した
→死んだ家族との忘れられない想い出があるのを理由に分け前を主張してくるかもしれない
/3
【方針】
依頼人が遺産を全て貰うだけのことをしていたかが論点か?
遺産相続の対象となるべき原告側のことも知る必要あり
――――――――――
・通常遺産相続の対象となるべきは夫家族(夫の子ども)
20年近く会っていなかったため疎遠
・数年前に出会ってから依頼人が身の回りの世話をすることに
依頼人自身が生活できる範囲で世話 遺産相続の妥当性は薄いか
・贈り物はしていた
米寿祝いに杖
→それが気に食わず夫は杖を折った
※老いを連想するものを贈られたという考えがあってのことか?
/6
【方針】
遺書が法的措置を取られているかが最優先
夫と絶縁状態であるか調べるため夫家族の身辺調査も視野に入れる
――――――――――
・遺書は法的な手順を踏んでいる
・夫家族は絶縁と言い切れる証拠はない
※生前の夫が書いた手紙が夫家族宅で発見されたため絶縁は考えにくい
・依頼人が後妻業であることへの言及
(法的な縛りはほぼない 夫家族が納得できない理由)
・依頼人は確かに金のために夫を愛していた
ある意味誰かを看取るために生きている?
・核家族が多いからこそ後妻業が生まれる
・どんな人間でも必ず愛する
愛されなくとも相手が死ぬまで愛し続ける
それが後妻業であるための唯一の務め
・最期は夫家族にも逢わせてやりたかった
夫を満たせるのは血を分けた家族だけ
☆遺書が正当なものであることを主張するしかない
依頼人も遺産を独占する意思は弱い
→示談交渉 遺産の分け前で再び揉めるか?
原告の出方次第
彼女が家族に縛られず人を愛することはできるのか?
[編集済]
(*˘ω˘)
【Gまとめ】
・文芸作家 印税生活中
・死体愛好家 ※自殺は好まない
・家族はいない 子どももいない
・絵本を選ぶ口実で書店員を口説く
・交際は1年もたないことが多い(年ごとに絵本を買うのはそれが原因か?)
【Bまとめ】
・後妻業 ※最期を看取って遺産をもらうのが手口
・普段は書店員
・落とし物を届けるふりをして金持ちに接近
電話番号を紙に書いて商品に忍ばせる
・どんな人間でも愛することができる
・自分の身を削ることはない
【方針】
・GがBの務める書店に通う
↓
・Gが絵本を口実にBと会話
↓
・BがGに落とし物を届ける
◎GにBを紹介してみる
――――――――――
GとBが絵本コーナーで会話
30分ほどの滞在
そこには愛があることを信じよう
/2
――――――――――
Gが「はらぺこあおむし」を購入予定(入荷待ち)
死体愛好者の割に絵本のチョイスが意外と普通だった
(この一文には取り消し線が入っている)
/5
――――――――――
入荷した絵本を取りにGが書店へ
来年はもう来れないと発言
体力的にもう歩けない
Gは出口へ
袋を持っていない?
どこかで落としたか?
Bが袋を持っている
Gに袋を渡す
Gは袋を開けて確認
何かのカードを取り出す
数字の羅列が書かれている?
(この手帳のメモは、ここで終わっている)
[編集済]
(*˘ω˘)
私は今でも悔やんでいるのだ、あの日の選択を。⑦
「やっベー父さん、道わかんなくなったかも」
もう20年ほども前になるだろうか、あの日の息子の言葉を、今でも覚えている。
久しぶりに仕事の休みがとれた息子に、男2人で海外旅行に行こうぜ!と誘われた。どうせならバリバリ動けるうちに、と砂漠の端を歩いて横断するというそのツアーに参加したまではよかったのだ。
太陽がもうかなり低い位置にあるのに、いっこうに目的地が見えてこないころから、うすうす嫌な予感はしていたのだ。今になって考えてみれば、客の荷物をバスに積んだまま地図だけ渡されて砂漠を歩かされるなんて、おかしいにもほどがあるだろう。
日が暮れ始めた頃、みなを先導していた息子が④道がわからない旨を告げた。そこからだ、3週間に及ぶ砂漠での暮らしが始まったのは。
初めはまだマシだったのだ。皆がそれぞれ非常食を持っていた。しかし流れる時間とともに、食料は尽きていき、ツアーの参加者は次々と倒れていく。
魔が差した、とはまさにあのことを言うのだろう、気づけば私は仲間の1人を殺していた。その時のことはよく覚えていない、ただ私は、息子は、飢えていたのだ。なにか食べるものが、飲むものが必要だったのだ。人はその人でないといけない理由があって人を殺すことは少ないのだろう、必要に迫られて誰かを殺すのだ。無差別殺人、というのも⑤意外と普通なことなのかもしれない。
私が仲間を殺したことも、彼から食料を奪ったことも息子は何も知らない。運良く砂漠から抜けることのできた私たちには窮地からの脱出という栄誉がもたらされたが、そのころには初めにいた仲間の半分は死んでいた。
英雄として讃えられた息子は帰国後仕事を辞め、絵本作家となった。実体験を元にした大冒険物語は反響を呼び、瞬く間に息子は人気者になった。
だが、帰国から2年ほど経ったころだろうか、私たちの事件を捜査していた現地の警察が、私たちの仲間たちの遺体を見つけたが、そのうちの1つにとても自然死とは思えない傷があったというのだ。
おそらく獣か何かがつけた傷だろうが、なにか心当たりはないだろうか。
ないと答える私の表情は、不自然ではなかっただろうか。
もちろんそんな事実にマスコミが黙っているはずがない。もし誰かが自分のために仲間を殺害したのだとすれば、それは許されざれ行為だと。彼らは知らないが、その矛先は私に向いていたのである。①
それがきっかけだった。目を背けていた辛い現実を見なくてはいけないと思った。自首しよう、何度そう考えたことだろうか。しかしできなかった。何の罪もない息子は、今の地位を失うのだろうか。なにも悪くない息子の本は、絶版になってしまうのだろうか。その愛情にも似た思いが私の足を止めた。②
代わりになると思ったわけでは決してない。だが、あの事件を描いた息子の絵本を毎年あの事件の起きた日に購入するようになった。そしてそれを学校やら、幼稚園やらに贈るのだ。それは贖罪のつもりでもあった。誰か私のしたことに気づいてはくれないだろうか、息子に迷惑をかけずに、誰か私を裁いてくれないだろうか。
そんな苦しみの時間が十何年と続いた。すでに70を超えた私の脚は、すでに歩くことを拒みつつある。
今年で最後なのだ、ふとそう思った。息子の絵本を買うのも、それを届けるのももう終わりだ。だが自分にけじめはつけなければならない。このまま生き長らえれば、いつかは私もボケてしまうだろう。それはあの日の後悔を忘れることを意味する。私はそんな自分が許せなかった。
先程生涯最後となるであろう絵本を買った。最後の一冊はどこかに届けるわけではない、自らの意思を示すのだ。その絵本を足元に置き、動かぬ体を懸命に前へと進める。どうにか白線を超えると、目の前にはヘッドライトが迫っている。
走馬灯のように蘇る、息子が生まれた時の顔、就職した時の顔、結婚した時の顔。だが私にはもっと忘れられない思い出があるのだ。③
そんな記憶を鳴り響くクラクションが搔き消し…
折れた杖が宙を舞った。⑥
「完」
[編集済]
『愛する者を守るため、時として人は非情にもなるのよ』 いつだったか母がそんなことを言っていた、ような気がする。その言葉の意味はよくわからなかったし、今でもよくわかっていない。愛する者を守る、その時点で非情とは程遠いんじゃないか。愛する者とは何だろうか。いつか僕にもその言葉の意味がわかるのだろうか。そんなことを考えていた矢先に、父は帰らぬ人となった。「自分から白線を超えてきた」そう証言する加害者を僕はひどく憎んだ。しかし現場に遺された絵本の意味は、僕には最後までわからなかった。
ある夏の日の夜。ラテミはいつものように、ベッドに入ったカメコに読み聞かせるための絵本を膝の上に置いて、開いた。
「おかあさん、これなあに。いつものと全然違う」
カメコがラテミの持っているノートを見て物珍しそうに尋ねると、ラテミはカメコの目を見つめて答えた。
「これにはね、おじいちゃんの昔のお話が書かれているの。おばあちゃんが書いた絵本なのよ」
「そうなんだ。すごいね」
カメコがラテミから目を逸らしてうつむいた。ラテミはそれをちらりと見て絵本に目を落とすと、いつもより大きな声で絵本を読み始めた。
昔、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。
その日はおばあさんの誕生日。おじいさんは毎年おばあさんの誕生日に、おばあさんが大好きな絵本を買いに行きます。おじいさんが絵本を買った帰りに商店街を歩いていると、道の端で小さな少年がうずくまって泣いていました。心配になったおじいさんは、その少年に声をかけました。
「どうしたんだい坊や、大丈夫かい?」
少年はうずくまったままで、おじいさんの呼びかけには反応しません。おじいさんはますます心配になって、周りの人に話を聞くことにしました。しかし、近くにいた誰に聞いても同じような言葉が返ってきました。
「ああ、あの子。数十分前からあそこで泣いてるね。迷子にでもなったんじゃないの。全く、親は何をしているんだか。……え? 何で声をかけてやらなかったかって? それは、変なことに巻き込まれたくないし、それに、そのうち誰かが助けるだろうし……。そんなに言うなら、あんたが助ければいいじゃないか。ほら、客じゃないなら出てってくれ」
おじいさんは、これ以上聞いても無駄だと思い、少年の元に戻りました。そして、少年を起こして、もう一度尋ねました。
「どうしたんだい?」
「腕がいたいの」
今度は返事が返ってきました。よく見ると、少年の左腕は右腕におさえられているものの、力なく垂れ下がっていました。
「腕を見せてごらんなさい」
少年は右腕で支えながら、ゆっくりと左腕を差し出しました。おじいさんは腕が折れているのではないかと思っていましたが、⑤意外と普通で、あざはできていたものの、目立って腫れている様子もありませんでした。しかし、おじいさんはお医者さんではありません。もしかすると、目に見えていないだけかもしれないと思い、⑥自分の杖を折って添え木を作り、首にかけていたタオルで少年の左腕を固定しました。
「よし、これで大丈夫だ。お母さんかお父さんは?」
親がいないことを思い出したのか、少年は鼻をすすり始めました。
「ここの入り口までお父さんと一緒だったけど、はぐれちゃって。それで、お父さんに似ている人を見つけたから付いて行ったら全然違う人で。怖くなって逃げようとしたら、そこの階段から落ちちゃったの」
少年の指さす方を見ると、そこには急な階段がありました。
「よしよし、良い子だったね。お父さん、もう少しで来ると思うから、ここで待っていようか。入れ違いになっちゃまずいからね」
おじいさんの言葉にはうなずきましが、少年の泣き声はどんどん大きくなっていきます。おじいさんは少し慌てましたが、手元におばあさんへのプレゼントがあることに気付きました。
「坊や、絵本は好きかい?」
おじいさんがそう言うと、少年の泣き声が止みました。
「うん、大好き。いつも寝る前にお母さんに読んでもらってるんだ」
「じゃあ、こうしよう。お父さんが来るまで、おじちゃんが絵本を読んであげよう。」
おじいさんが絵本を読み始めて数分後、少年の父親が現れました。おじいさんが事の経緯を話すと、少年の父親はおじいさんに深く頭を下げてお礼を言いました。
「本当にありがとうございます」
「いえいえ、当然のことをしただけですよ」
「でも、どうして助けてくださったんですか? このご時世、人のことを気にしている余裕なんてないでしょうに」
「そうですね。ばあさん……妻ならそうすると思ったからですかね」
「奥さんが、ですか?」
「そうです。これは、③死ぬまで忘れることのない、ばあさんとの出会いの想い出です。あの日、私は一人旅で見知らぬ土地に行っていました。そこで、④道に迷っちゃいましてね。道をうろうろしていたら、ヤクザにぶつかってしまったんです。何度も謝ったんですけど、その時の彼らの機嫌が悪かったのか、ボコボコにされました。それで道端で倒れていたら、ばあさんに助けられたんです」
「そうだったんですか」
「はい。……こんなこと話している場合じゃなかったですね。早く坊っちゃんを病院へ」
「そうですね。今日は本当にありがとうございました」
「こちらこそ、こんなじじいの話を聞いてくださり、ありがとうございました」
「とんでもないです。ほら、ウミオも」
「ありがとうございました」
少年は少し恥ずかしそうに言いました。
「どういたしまして」
おじいさんは少年に笑顔を返しました。
そして、少年と父親は最後にもう一度、おじいさんにお礼を言い、去って行きました。
「おしまい」
ラテミはノートを閉じた。カメコは不思議そうな顔をしている。
「おじいちゃんって良い人だったの」
「そうよ。強くて優しい人だった」
「でもみんな、カメコのおじいちゃんは悪い人だって」
カメコが小さな声で言うと、ラテミは首を振った。
「いいえ、悪いのはおじいちゃんじゃないの」
「どういうこと」
「この話には続きがあるの」
おじいさんと少年が出会った次の日の昼、おじいさんの家の扉が叩かれた。おじいさんが扉を開けると、そこには二人組のスーツを着た男が立っていた。
「こんにちは。らてらて警察署の者です。トルタさんですか」
「はい」
おじいさんが、不安そうな表情を浮かべて返事をする。刑事の一人が、スーツの内ポケットに手を入れ、一枚の写真を取り出した。
「この写真に写っている少年、知っていますか」
「はい、ウミオ君ですよね。昨日、私が買い物の帰りに会った子です。ウミオ君がどうかしたんですか」
「ウミオ君は、昨日あなたと別れてから数分後に亡くなりました」
おじいさんが目を見開き、尋ねる。
「どうして……」
「急性硬膜下血腫です。何か心当たりがあるんじゃないですか」
刑事が先程より低い声で言った。
「どういうことですか」
二人の刑事は目を合わせて小さく頷き、おじいさんの方を向いた。
「ここじゃなんです。とりあえず、署までご同行願えますか。向こうでゆっくり話しましょう」
「どうして。……分かりました。でも、ばあさんは足を悪くしていて、一人じゃ歩けないんです。娘がもうすぐ帰ってくるので、それまで待ってもらえますか」
二人の刑事はおじいさんの言葉に頷き、家の前に停めてある黒い車に戻って行った。
三十分後、おじいさんの娘が帰ってきた。
「ラテミ、今から警察に行ってくるから、ばあさんのこと、頼む」
「……え、お父さん、どういうこと」
ラテミが心配そうにおじいさんを見つめる。
「昨日話したウミオ君のことで、少し話を聞きたいそうだ。大丈夫。すぐに帰ってくるから。ばあさんにも適当に言っておいてくれ」
「じゃあ、行きましょうか」
真四角な薄暗い部屋で、机の上に置かれたスタンドライトを挟んで、おじいさんと刑事が対面している。
「あなたがウミオ君を連れまわして怪我させたんでしょう。それで慌てて応急処置をして、迎えに来た父親に、迷子のウミオ君を預かっていたと嘘をついて返した。でもね、ウミオ君は頭にも傷を負っていたんですよ。ここまで言えば分かりますよね」
「分かりませんよ。何を言っているんですか。第一、私はウミオ君を連れまわしてなんかいませんよ。しかも私がウミオ君を見たとき、ウミオ君はすでに怪我をしていました」
おじいさんが大声で無罪を主張する。刑事が机を叩いて、声を張り上げた。
「そんなはずないだろう。あなたがウミオ君を連れまわすところを商店街の人が何人も見ているんですよ」
「そんなバカな……。私はそんなことしていない。何かの間違いだ」
その後もおじいさんは罪を認めなかった。そして、ウミオに怪我を負わせたという決定的な証拠もないことから、送検はされたが不起訴になった。しかしその頃には、おじいさんはウミオを連れまわした挙句、死に至らしめた凶悪犯として全国のニュースで取り上げられていて、①おじいさんへの批判が殺到した。
ラテミが一息ついて水を飲んでいると、カメコが唇を突き出して言った。
「やっぱりおじいちゃんは悪い人なんだ。絵本に書いてあることは嘘だったんだ」
「そうじゃないの。絵本に書いてあることが事実なの。おじいちゃんはね、商店街の人たちにはめられたの」
「はめられた」
ラテミの言葉をカメコが疑問形で繰り返す。
「そう。ウミオ君が亡くなった原因は急性硬膜下血腫って言ったでしょう。あれは、頭に強い衝撃を受けてから数日以内に起きるものでね、すぐにお医者さんに見てもらえば助かる病気なの。商店街の人たちは、自分たちがウミオ君を放置したことによって亡くなってしまったと考え、そのことを隠すために、おじいちゃんを悪者に仕立て上げたの」
「そうなんだ。じゃあ、おじいちゃんは悪い人じゃないんだね」
カメコが嬉しそうに言う。それを見て、ラテミの顔も明るくなった。
「そうよ。私もおじいちゃんが捕まった時には、おじいちゃんを疑ったのよ。不起訴になった後も、それが原因で会社でいじめられちゃって、おじいちゃんに文句も言っていたの。でも、普段は物静だったおばあちゃんに大声で怒られて、気付いたの。おじいちゃんは悪くないって。この絵本、おばあちゃんが書いたって言ったでしょう」
「うん」
「おばあちゃんはね、おじいちゃんは悪い人じゃないんだって、生まれてくるカメコに伝えたくて、亡くなる前にこの絵本を書いたの」
「そうだったんだ。じゃあこの絵本には、おばあちゃんの、おじいちゃんへの②愛がこめられてるんだね。……でも、じゃあ何でおじいちゃんはカメコがその話をしたとき、悲しそうな顔をしたんだろう。それで、カメコ、おじいちゃんは本当に悪い人なんだって……」
ラテミの顔が真剣な表情に戻る。
「おじいちゃんはね、ウミオ君を死なせてしまったのは、自分かもしれないと思っているの」
「どうして。おじいちゃんは何も悪くないんだよね」
「それはそうなんだけどね。でも、おじいちゃんはウミオ君をすぐに病院に連れて行かなかったことを後悔しているの。もしそうしていたら、ウミオ君は助かったんじゃないかって。⑦だからね、その償いをするために、おじいちゃんは毎年ウミオ君が亡くなった場所に、花とウミオ君が大好きだった絵本を供えに行っているのよ。どんなに天候が悪くたって、必ず」
「今年はカメコも一緒に行く」
カメコがラテミの目をまっすぐ見て言うと、ラテミは微笑んだ。
「そう。おじいちゃんも喜ぶと思うわ」
三週間後。
「お父さん、大丈夫」
ラテミが玄関でよろめいたトルタ支えながら、心配そうに言う。
「ああ、大丈夫だよ。なんたって、今日はカメコが付いてきてくれるんだ。……でも、来年はもう歩けないだろうな」
「やっぱり私も付いて行った方が良いんじゃない」
「大丈夫だよ、お母さん。カメコがついてるもん」
カメコが腰の横に手をつき、胸を張って言った。
「そうだぞ、ラテミ。カメコがついている」
トルタがそう言うと、カメコはさらに胸を張った。
「じゃあカメコ、お願いね」
ラテミはカメコの胸の中央を人差し指で軽くつつくと、胸を引っ込めながら、カメコが笑顔で言った。
「行ってくるね。おじいちゃん、行こ」
カメコが勢いよくドアを開けて家を出た。トルタはそれに続いて出て行った。
商店街の入り口に差し掛かった。
「おじいちゃん、カメコ、おじいちゃんのことずっと悪い人だと思ってて、それで……。今までおじいちゃんに近寄らなくて、ごめんなさい」
「良いんだよ」
トルタはカメコに笑顔を返した。
「おじいちゃんはやっぱり良い人だね」
絵本を買い、ウミオの亡くなった場所に着いた。二人は花と絵本を置き、目を閉じてその場で手を合わせた。数秒間の沈黙の後、二人は目を開け、顔を見合わせた。
「カメコ、おじいちゃんはもう来年からここには来られないと思う。だから、来年からはカメコが、おじいちゃんの代わりにウミオ君に手を合わせてくれないかい」
「うん」
「カメコも良い子だね」
二人は微笑み合って、家に帰りました。
【完】
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春風がカメコの髪を揺らした。長い睫毛、澄んだ瞳--カメコはすっかり大人になっていた。すらりとした白い手をそっと合わせる。いつだってこの瞬間は心がスッと一点に定まるようで、なんだか清らかな気持ちにさせられた。「わたし、初めておじいちゃんと此処に来た日のこと、今でもよく覚えてる」カメコの言葉にラテミは振り返る。「合掌を解いたあと顔を見合わせたの。おじいちゃん、すごく優しい目をしてた」道端に供えた絵本をいとおしげに指先で撫でながらカメコは微笑んだ。 [編集済]
毎年、息子が作った新作の絵本を購入している老人が居た。
その老人も現役の絵本作家であり、『生ける伝説』と呼ばれていた。
30年程前には息子と共に絵本を作っていた。
しかし、方向性の違いと言うべきか、息子は親の作風に対して徐々に反発し、終いには老人の元から離れてしまった。
その後息子は老人との接点を断絶すべく本名とペンネームを変更し、事実上の絶縁状態となった。
それから現在に至るまで、一度も再開を果たしていない。
実は老人が青年だった頃にも同じ経験をしていた。③⑦
老人の親もまた、当時『伝説』と呼ばれていた絵本作家だったのである。
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青年時代の老人も、親と同じ道を歩み、親と共に絵本を作り、親に反発し、関係を断ったのだ。
当時こそは親の力を借りずとも有名になれると思っていたが、そう全てが上手く行くとは限らず、明日をも凌げるかどうかのギリギリな生活を強いられることもあった。
そんな状況でも、青年時代の老人は親の力を一切借りず、絵本を書き続けたが、中々ヒットが出ず低迷していた。
ある日の朝、老人(壮年)自宅の前に1冊の絵本が捨てられていた。それは親の絵本の最新作だった。
老人(壮年)は何でこんな物が家の前に…?と拾い上げると、絵本の中から半分に折られた用紙が数枚と、その用紙の中からフロッピーディスクが出てきた。
フロッピーディスクには絵本の元ネタが入っており、用紙には挿絵が描かれていた。
自宅で内容を確認すると、老人(壮年)と親で作り上げたが、当時は時代背景に合わず、お蔵入りになった作品だった。
その作品がリファインされた状態でフロッピーディスクに入っていた。
更に、この作品の作者名には老人(壮年)の改名後の名前が入っていたのだ。
このフロッピーディスクと挿絵には、親が子を想う愛が、確りと入っていた。②
老人(壮年)はこの作品を最後まで仕上げ、販売まで成し遂げた。
しかし、親が出した過去作品と傾向が酷似している個所があり、元々親子だった事情を知らない人達から盗作の疑いをかけられたりした。
後日、親と老人(壮年)の双方から親子であることを公表し、盗作呼ばわりされることは無くなったが、今度は「親からネタを盗んだ」だの「結局親の七光りだ」という批判が生まれてしまった。(この批判は、今でも一部の団体や集団から批判を受け続けている。①)
様々な批判は出たものの、老人(壮年)は誇らしげだった。
やっと、己の進むべき道が定まったのだ。
幼少の頃から親に憧れ、同じ道を歩みたいと後ろについて歩いていた。
今や自身から反発し離れ離れになったが、心の奥底では親への憧れは消えていなかったのだ。
そして老人(壮年)は、親の作品傾向などを引き継ぐことで、『伝説』を継承することを誓ったのだ。
余談だが、批判があったり、絵本の販売妨害があったにも関わらず、絵本の売れ行きは割と普通だったそうだ⑤
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老人の息子も、親と同じ道を歩むとは何たる偶然だろうか。
老人もかつて親にやってもらったように、息子の窮地を救おうと行動した。
しかし、老人の体は病に冒されており、来年の今頃は杖があっても自力で歩くのは不可能だろうと感づいていた。そのため、この足が動かなくなる前に行動する必要があった。
老人は愛用の杖を両手で持ち、「ふんぬっ!!!」と真っ二つにへし折った。⑥
(病の影響が足だけであることを把握していたため、上半身を鍛え続けた賜物である。)
そして、へし折った杖の中からUSBメモリを取り出した。
これは老人がかつて息子と共に作り出し、お蔵入りになった作品をリファインした文書ファイルと画像ファイルが入っている。
息子以外の他人に盗まれるわけには行かぬと、特注の杖を作ってもらう際に入れてもらったのだ。
そのUSBを、自分の生涯最後の絵本の中に入れ、息子の自宅の前に置こうと移動したのだが、
いかんせん30年も会っていない為、町並みはすっかり変わっていた。
しかもオキナワと何も関係の無いこの場所に「比嘉」という表札の家が十何件も経っていたのだ。実質、老人は迷子になった。④
怪しまれないよう、未明中の行動を心がけていたが、息子の家を探し当てる頃には夜が明けつつあった。
息子の自宅の玄関前に絵本を置き、その場から離れようとしたが、急に足の感覚が無くなってしまった。
病により、足が動かなくなってしまったのだ。
このままでは息子にバレてしまうとほふく前進で進めようとしたが、足が使えないため遅すぎる。
・・・・ここまでか・・・・
と諦めかけていた時、老人はダメ元で逆立ちを試みた。
するとどうだろう?足は力なくぶらんと垂れ下がりつつも、どうにかバランスを取れたのである。
・・・・これなら、行ける!!・・・・
老人は必死に逆立ちのままダッシュし、大通りにあるタクシーを捕まえ、無事自宅に帰ることが出来たのだった。
かくして、息子はかの老人と同じようにV字回復し、『伝説』を引き継いだのだった。
老人はとうとう足が使えなくなってしまったが、「逆立ちで移動するほうが早い」と逆立ち主体の生活になり、これを「よう○べ」に上げたところ大反響。
かくして「伝説の絵本作家」は「伝説のようチューバー」に生まれ変わったという。
【完】
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僕には大大大尊敬のようチューバーがいる。その人はなんと年老いたじーさんだ。このじーさんがとてつもなくすごい。日常生活をほぼ逆立ちで過ごすという超人なのだ。僕はこのじーさんに憧れて、中学二年の頃から逆立ちを猛練習し始めた。最初は三点倒立が精一杯だったが、今では逆立ち歩きでゲーセンに行ってそのままDDRをプレイするくらいだ。ちなみにDDRとは『だんごだんごリバイバル』の略称で音ゲーに分類される。まぁそんな生活のおかげで僕の手の皮は厚くなり、3Dスティックを回し続けてもマメが出来なくなった。 [編集済]
問 その老人は、年々老いていく体を杖で支えながら「来年はもう歩けないだろう」と悟った。老人はその年に買った生涯最後となる絵本を、道端に置き去りにした。
いったいなぜ?
私は、生まれたときから空の色を知らない。桜の花びらを見て綺麗だと思ったことがないし、雨上がりの虹を見て心を震わせたこともない。いったいどうしてか。それは、私が先天的な色盲だったからだ。
幼いころは色が分からないということでそれなりに苦労していたが、大人になると自然に振る舞えるようになった。花が綺麗だと言われれば適当に相槌を打ち、新しいワンピースの感想を聞かれればよく似合っていると返事した。そう受け答えするだけで、色のない世界の住人である私は、色のある世界を行き来していた。
社会人になりそれなりに余裕が生まれそろそろ彼氏でも作って結婚のことを真面目に考えなければいけないなあと考え始めたとき、私は行きつけの書店である本を見つけた。
その本は、レジの横に平積みされた絵本だった。それまで白黒でしかものを見ることの出来なかった私は、経験したことのない感覚を受けた。私はくらくらする頭をしっかりと働かせ、震える手で絵本を取ると店員に本の詳細を訊ねた。
「今、話題の作家さんによる絵本ですよ。この前、テレビで紹介されていたのでウチでも特集してみたんです」
私はその絵本を購入すると急いで家へ帰った。そして家事などそっちのけで、絵本の表紙をじっくりと眺めた。
絵本は『クロオとアール』という題名で、心のないロボット、アールが、クロオという少年と旅をすることで人間の気持ちを学んでいくという内容だった。私は恐る恐るページを捲った。
あるページでクロオとアールは見ていて爽やかな気持ちになる背景の下を歩いていた。後にそれは、空の色で青色と呼ばれていると知った。またあるページでクロオとアールは意味もなく不安になり逃げ出したくなるような洞窟の中を移動していた。そこに描かれているのは、私が知っている黒色とは全く別物だった。
最後のページ、アールはクロオと一緒に夜空に咲く大きな花火を眺めていた。人間の心を学んだアールは花火を見て、「これがきれいというきもちなんだね」と言っていた。奇しくも私はアールと同じ感想を抱いていた。色のついた花火がこんなに鮮やかだったなんて、誰も教えてくれていなかった。
私は絵本の作者について調べた。作者は三木カオルという名前の活動歴が短い新人の作家だとすぐに分かった。
どうして、この人の絵本を見て私は色を感じることができたのだろう。
いくら絵本を眺めても答えが分からなかったので、私は三木カオルへ手紙を書いた。
『私は生まれたときから色を知りません。しかし、あなたの絵本を見るときだけ、私は色を感じることができます。いったい、何故なのでしょう』
それはファンレターとは呼べない私の疑問をぶつけただけの文字の羅列だった。あまりにも味気ない内容だったので返事を期待していなかった私は、すぐに手紙のことなど忘れてしまった。しかし、意外にも返事はすぐにやってきた。
『はじめまして、三木カオルです。お手紙ありがとうございます。私の作品にだけ色を感じることができる現象に心当たりがあります。もしよろしければ、一度お会いして話をしてみませんか?』
三木カオルから手紙も要件を伝えるだけのシンプルなものだった。手紙の最後には待ち合わせ場所と希望する日時が書かれていた。
見ず知らずの、しかも絵本作家というやや特殊な職業の人物と会うことに若干抵抗を覚えたが、三木カオルの絵本にだけ私の目が反応する理由を知りたくて、私は三木カオルと会うことにした。
約束の日、私は指定された場所へ向かった。しかし、私は途中で道に迷ってしまった④。手紙には様々な目印が書かれていたが、目印の中には紅葉したもみじがあった。色盲である私にとってその目印は意味がない。私は目を凝らしながら赤い葉っぱの木を見極めようとしたが、結局全然わからなかった。果たして私は約束の場所へとたどり着けるのかと不安になった。
「ひょっとして道に迷ってる?」
見覚えのある角を三回曲がったとき、後ろから声をかけられた。
その人物はノリの効いたワイシャツにしわ一つないズボンを履き、厚手のカーディガンを羽織っていた。そして、傍から見て一番目を引いたのは、私とそれほど年齢が変わらなそうなのに、年季の入った杖を突いていたことだ。
「道、案内するよ」
地味で真面目そうな格好をしているのに、とても砕けた話し方をしていた。見ず知らずの人に甘えるわけにはいかないので断ると、その人は可笑しそうに笑いながらこう言った。
「俺もそこに行く途中だから」
片側の頬にだけえくぼのできる、柔らかな笑みをする人だった。
道中、その人は私が何も聞いていないというのにいろいろ説明をしてくれた。その店には頑固者のマスターがいて、恐ろしく値段の高いコーヒーを提供しているという。そして、そのコーヒーにはその値段に見合う価値があるのだそうだ。
「もし、機会があればご馳走するよ」
私はええ、はい、とあいまいな返事をした。腕時計を見てみると三木カオルとの約束の時間が迫っていた。案内人の男は杖を突いて歩いているので私よりも歩みが遅い、このままでは時間に間に合いそうになかった。
「大丈夫大丈夫」
なにが大丈夫なのか私には分からなかったが、男はのんびりとそう言った。
「ところで、どうして俺は杖をついていると思う?」
男はなんの脈絡もなく私に質問してきた。それは、偶然道端で会った人物にする話ではないと思った。少なくとも私ならば、どうして私は色が分からないと思う? なんて話はしない。
「もうすぐ店に着くから、それまでに当ててくれ」
私は黙って考えた。しかし、それは質問の答えを考えたのではない。男はどうしてこのような質問を私にしてきたのか、その理由を考えた。
私が考えている間、それまで止めどなく話をしていた男も話すのをやめた。コッ、コッ、コッ、という男の杖を突く小気味良い音が響く。少しすると、私たちは目的地に到着した。
「残念、タイムアップ」
男の態度はちっとも残念そうではなかった。
「どうして俺が杖をついているか。正解はね、おっと」
男は説明することに意識を向けていたせいか、喫茶店の入り口で躓いてしまった。カランという乾いた音を立てて杖が転がる。私はバランスを失い倒れそうになった男を慌てて支えた。
「はい、これが答え」
男は私の肩にもたれかかるとこう続けた。
「どうして俺が杖を突いているか、答えはこういうとき助けてくれる心優しい女性を見極めるため。今日はよろしく、俺が三木カオルだ」
悪い意味で斬新な自己紹介に、私は開いた口が塞がらなかった。
店内は控えめなレコードの音が流れていて客数も多くなく居心地が良かった。眼の前に座っている三木カオルの第一印象は最悪だったが、彼がずっと無邪気な笑顔を浮かべていたので毒気を抜かれてしまった。しばらくするとテーブルの上に二つコーヒーが並べられた。私の目には黒い液体から淡い靄が立ちのぼっているようにしか見えないが、その靄を吸うと頭の奥に届く心地良いものを感じた。
「それじゃあ話を始めようか」
三木カオルは私がコーヒーの香りを楽しむのを確認してから話を始めた。きっとコーヒーによるリラックス効果を待っていたのだろう。
「あんたは生まれながらの色盲で色が分からない。それなのに、俺の絵本を見るときだけ色が分かる。そういうことだったね」
私は頷いた。そして、彼の手紙にはその現象に対して心当たりがあると書いてあった。
「じゃあちょっとこれを見てくれないか」
三木カオルはポケットから一枚の写真を取りだした。それはひまわりを描いたであろう絵画だったが、私の目にはいつも通り灰色に見えただけだった。
「次はこれ」
三木カオルは別の写真をテーブルの上に置いた。先ほどと同じようにひまわりをモデルにした別の絵画の写真だったが、私はその写真に釘付けになった。
「なるほど思った通りだ。その写真、色がついて見えるんだろう」
三木カオルの言う通りだった。彼の作品ほどくっきりと見えるわけではないが、その写真からは灰色とは違うぼんやりとした濃淡を感じた。私は三木カオルに説明を求めた。
「簡単な話だ。この絵の作者、俺、そしてあんた、この三人には共通点がある。それは、三人とも色盲ってことだ」
色盲の画家や絵本作家がいる、それは私にとって意外すぎる解答だった。
「まずこのひまわりの作者なんだけど、たぶん名前くらい知ってると思うぜ」
その後、三木カオルが口にした名前は絵画に疎い私でも知っているような有名人だった。そんな世界的画家が色盲とは驚いたが、難聴にもかかわらず名曲を作った作曲家だっているのだから決して起こらない話ではないのかもしれない。
「ちなみに俺は片目だけ軽度の色盲だ。」
幼いころ、三木カオルは好奇心の強い子供だったらしく、小学校の理科室で劇薬を口にしてしまったのだそうだ。幸い命に別状はなかったが、それ以来左半身に障害が残ってしまったらしい。
「左目の色盲もそうだし、左足が思うように動かないんだ。だから俺は杖を突いている」
さっきと杖を突いている理由が変わっているじゃないですか、と指摘したかったが彼が真面目に話をしていたので我慢した。
「色盲の人間が描くから色盲の人間にも色が分かる、簡単な理屈だ。でも、とても興味深い話だ。もしよかったら、これからもこういう風に会って絵の話をさせてくれないか?」
三木カオルの軽薄そうな性格はあまり好ましくなかったが、ここのコーヒーとセットならばなんとか我慢できそうだと思った。
それから三木カオルは新作を描くたびに私に絵を見せるようになった。彼の描く絵は相変わらず色鮮やかだったが、たまに他の絵と同じように灰色に見えるときがあった。そういうとき私は彼にアドバイスをした。すると、その絵はたちまち色を持ち輝き始めた。
私が絵のアドバイスをするようになってから三木カオルは業界で高い評価を得るようになった。彼は常に私の助言を求めるようになり、私は彼を通じて色を感じることができた。お互いがお互いの存在に依存し始めたとき、彼は私の部屋で一緒に生活するようになった。そしてしばらくすると私は彼の子供を授かった。それは私にとってとても幸せなことであり、とても自然なことだった。
しかし、そんな私の幸せは呆気なく終わった。私が妊娠してしばらくしてから、三木カオルの不倫が発覚したのだ。
彼は私が妊娠すると、「君に気を遣わせて赤ちゃんに悪い影響が出たらいけない。俺は外で仕事してくるよ」などと殊勝なことを言いながら他の場所で女性と会っていたのだ。私はその事実を知ったとき、色盲だというのに世界から色を失ったような気分になった。だって、私にとって三木カオルとは、世界に色を与えてくれる神さまのような存在だったからだ。
私は彼を失う不安と一人でいることの孤独に耐えながら膨らんでいくお腹を撫でた。
あなたが生まれればきっと大丈夫。可愛いあなたがいればあの人は帰ってきてくれる。
それはお腹の子供へ向けたメッセージではなく、自分自身を慰める励ましの言葉だった。
しかし、三木カオルは子供が生まれても帰ってこなかった。むしろ、子供がいる家庭のことを煩わしく感じているようですらあった。たまに帰ってくることがあっても、そんなときはアルコールの匂いを漂わせた朝帰りで、いつも昼過ぎまで寝ていた。そして起きたあと「外で仕事してくる」と一言だけいって、何日も帰ってこない。そんな日常がずっと続いた。
こんな生活はもう耐えられない。
私は愛おしい我が子を抱きしめながら一つの決断をした。
それからしばらくして珍しく三木カオルが私の前でアルコールの匂いを漂わせていないときがあった。私は子供を胸に抱き彼に話しかけた。
「離婚してください」
その一言を言ったとき、私は口から血を吐き出した気分だった。色盲であるため血の色など分からないが、激しい痛み共に透明なねっとりとしたものが口から溢れ出た心境だった。
「今のあなたの生活態度は目に余るものがあります。私の事は構いません、しかし、この子のことを少しでも思う気持ちがあるのなら、今すぐに離婚してください」
これは私の賭けだった。このころになると三木カオルにとって私の存在は女性や妻というよりも、仕事上のパートナーの意味合いが強くなっていた。彼がひとりで作った本よりも、私のアドバイスがあった本の方がよく売れていたからだ。
きっと彼は私と別れないはず。
それは勝算というよりも希望に近いものだったが、とにかく私は、三木カオルは私を選んでくれると信じていた。
「いきなり言われても困るな、少し考える時間をくれないか」
三木カオルはそういうと杖を持ち、コッコッコッという小気味良い音を立てながら、いつも通りの足取りで外に出て行った。そして、彼が私の前に姿を現すことは二度となかった。
三木カオルと別れて不思議なことが二つあった。
まず一つ目は、彼と別れたあとの日常が意外にも普通だったことだ⑤。彼に捨てられた私は深い悲しみで二度と立ち上がることができないと思っていたが、私に落ち込んでいる暇などなかった。なぜなら愛する我が子を飢えさせないためにも働かなければならなかったからだ。
妊娠を機に仕事を退職していた私だったが、幸か不幸か、三木カオルの仕事を手伝っているうちに出版業界への繋がりが出来ていた。知り合いの編集者から簡単なライティングの仕事を紹介してもらっているうちに、私はライターとして生計を立てられるようになった。そして、取材である洋食屋に行ったときのことだ。その店のオムライスが気に入った私は仕事とはあまり関係のない話をシェフに尋ねた。すると向こうも私に興味を持ったらしく、私はプライベートでもその店に通うようになった。やがてシェフと親密な関係になり求婚された。そのシェフは私の過去も子供のことも快く受け止めてくれたので、私は彼の申し出を受け入れた。三木カオルとの生活では手に入らなかった普通の幸せを、私は本当に意外なほどあっさり手に入った。
そして二つ目の不思議なことは、私と別れたあとの方が三木カオルの絵は輝きを増したということだ。
三木カオルの素行の悪さは業界でもそれなりに有名だったが、それを不問に処す神々しい魅力が、彼の絵にはあった。絵本作家として成功した三木カオルの活躍は興味がなくても勝手に耳に入ってくるので、私はいつもそれを複雑な心境で聞いていた。
順調に私は歳を重ねた。赤ん坊だった我が子も一人の女性として大きく成長し、やがて結婚した。生まれて初めて得た孫という存在は、全力で甘やかしたいとても危険な魅力を備えた存在だった。
ある日、娘とテレビを見ていると画面に三木カオルが映った。その途端、娘は不愉快そうにふん、と鼻を鳴らした。娘には実の父親のこと、つまり三木カオルのことはすべて説明していた。
テレビに映った三木カオルはそれなりに年をとっていたが、実年齢よりも若々しく見えた。初め彼は絵本のインタビューを受けていたのだが、いつの間にか女性とのデートについて話をしていた。
「最初女性と会うとき、敢えて集合場所を分かりにくくするんです。すると相手は道に迷うでしょ。そこに俺が颯爽と登場します。普通に目的地で会うなんてつまらないですからね。こうやってドラマティックな出会いを演出するんですよ。えっ、どうやって初対面の女性を見分けるのかって? 簡単ですよ、相手は迷っているんですからキョロキョロしている女性に片っ端から声を掛けるんです。そうすればいずれ本命の女性とぶつかります。それにこの手を使えば、仮に、その、女性の外見があまり好みではなかった場合、こちらの正体を明かさずに離れることができますからね。ええ、そういう場合はよくありましたよ。だって、好意を持てないと女性と会うなんて時間の無駄じゃないですか」
「また下らないこと言ってるよこの男。そんな手に引っかかる女なんていないのに」
テレビ画面を睨んでいる娘の横で、私は苦笑いするしかなかった。
それからもしばらく三木カオルは様々な話題をマスコミに提供し続けたが、最後に提供したのは、彼自身の死についてだった。
『〇月×日昼ころ。行きつけの喫茶店からの帰宅途中の三木カオルは、横断歩道で倒れている女性を発見。女性の体を担ぎなんとか移動させたが、二人分の体重に耐えきれず使用していた杖が折れてしまった⑥。片側三車線の道路だったため女性は中央分離帯の脇に倒れたが、バランスを崩した三木カオルは対向車線に転倒。走行中だったトラックにひかれ搬入先の病院で死亡した』
三木カオルの死について新聞ではそう説明されていた。
「あの男のことだから、その女の人が綺麗だったから助けようとしたんでしょ」
新聞を見た娘は悪態をつきながらも泣けばいいのか怒ればいいのかよく分からないような表情を浮かべていた。
その年から、私には家族の誰にも言えないある習慣ができた。
「ねえお祖母ちゃん早く!」
孫が私の腕を力強く引っ張る。杖を突かなければ歩くことのできない私にとって、それはとても危険な行為だ。でも、転倒の恐怖よりも誰かに必要とされていることの喜びの方が大きい。
おぼつかない足取りで家を出た私は、孫と絵本を買いに行くのは今年で最後になるだろうと直感した。来年小学生になる孫は絵本よりも面白いものを見つけるだろうし、一年後も私が自分の足で外出できるとは思わなかった。
家族には年に一度、孫と絵本を買いに行っていることを秘密にしていた。絵本を買いに行くだけならばやましいことなどないはずなのだけれど、私の心の中にあるうしろめたさが家族に知らせることを望んでいなかった。
私たちは書店で絵本を買った。タイトルは『かみさまのかたおもい』。三木カオルの作品の中で私がもっとも気に入っているものだ。
いつも通りベンチのある公園まで移動すると、私は孫に絵本を読んであげた。
絵本の内容は、色盲の少女に恋をした見習いの神様が、神の力を使って少女に色を教えてあげるというものだった。空の色、夜の色、花火の色。その全てに少女は感動する。やがて神さまは少女の目を直してあげるのだが、それは天界の掟に背く行いだった。掟を破った神さまは神の力を奪われて地上に落とされて少女と会えなくなってしまう。しかし、少女は地上に落ちた神さまを必死で探し出し、最後は二人で幸せに暮らすという終わり方だった。
「神さまも女の子も幸せになれて良かったね!」
絵本を読み終えると孫は無邪気にそう言った。私はその言葉に深く頷いた。
そのあと私は寄るところがあったので孫を一人で家に帰した。家はここから目に見えているので迷子になる心配はなさそうだった。
「お祖母ちゃんも早く帰ってきてね」
孫は全て言い切る前にもう駆け始めていた。私はその後ろ姿を見送りながら、お祖母ちゃんは歩くのが遅いからちょっと難しいなあ、と心の中で呟いた。
私は歩きながら手に持っている絵本を眺めた。『かみさまのかたおもい』は三木カオルが私と別れた直後に描いた絵本だ。彼はいったいどのような心境でこの絵本を描いたのだろう。少女と神さまに私たちの姿を重ねていたのだろうか。せめて空想の中だけでも私と幸せになりたいと思っていたのだろうか。
いくら考えても答え合わせはできない。その機会が私に訪れることは絶対にないのだ。
目的地の横断歩道にはすぐに辿り着いた。つまり、それだけ彼と私の生活圏は重なっていたということだ。
近くにある電柱の元にはたくさんの献花がされていた。まるでちょっとした花畑のようだ。私は最後にもう一度絵本の表紙を見たあと、それを邪魔にならないよう道の端に置いた。ここに花を持って来た人々はどれだけ三木カオルのことを知っていたのだろう。花の多さがそのまま作品に対する評価だと思うが、もし仮に、三木カオルが私にした仕打ちを公開したらどうなるだろうか⑦。きっと批判する人が続出して①花の数が半分に減ってしまうかもしれない。それはちょっと、面白そうだ。
なんて、もちろんそんなことをするつもりはない。私が三木カオルと不倫していたことや、娘が生まれたとき、彼に当時の奥さんと別れるよう迫ったことは世間に言えることではない。
ましてや、今でも三木カオルのことを愛してしまっているだなんて、夫や娘、誰にも言えることのない、私だけの秘密だ③。
問 その老人は、年々老いていく体を杖で支えながら「来年はもう歩けないだろう」と悟った。老人はその年に買った生涯最後となる絵本を、道端に置き去りにした。
いったいなぜ?
答 今でも愛している交通事故で亡くなった不倫相手を弔うため②。
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わたしがその絵本を手にしたのは単なる偶然だった。短大の授業で絵本を描くことになり、既存の絵本から学べることがないかと足を運んだ書店でのことだ。『かみさまのかたおもい』--そのタイトルに惹かれた。色盲の少女に色を教えてあげる神様。読みながらわたしはある冬の夜空を思い出していた。白く染まる息、重なる足音。少し明るい夜空を見上げながら時折目を閉じるのは、隣を歩くその人の声がとても心地よかったからだ。わたしは色盲ではない、でも、あの人はわたしに色と温度を教えてくれた。不器用で繊細なかみさま。
しわがれた手で絵本を開けば、あざやかな色彩を伴って物語があふれだした。
それは失われた恋の物語だった。
はじめて出会ったその日からずっと、太郎は八重子に夢中だった──
──────────
『ロスト・ラヴストーリー』
太郎が4年生のころの話だ。
「向かいの吉田さんとこに神戸から親せきの子がくんねんて」
母にいわれた次の日、吉田さんに連れられてあいさつにきたのは、ひとつ年下のおさげの女の子。
「やえ子です。よろしくお願いします」
太郎はそれまで、こんな愛くるしい笑顔は見たことがなかった。魔法にかかったみたいに夢中になってしまった。
*
ふたりはしだいに仲良くなった。
山の中に秘密基地を作ったり、夜にはふとんをぬけだしてふたりで星空やホタルをながめたりしたものだ。
「たろちゃんとおると、ほんまゆかいやわ」
やえ子が笑うたび、太郎はくらくらするのだった。
*
ある日、やえ子のもとに悲しい手紙が届いた。
神戸が火につつまれたこと、やえ子の家も焼けてしまったこと、家族はみんな死んでしまったことが書かれていた。
ひとりぼっちになったやえ子はわんわん泣いた。
*
太郎はたまらずその手をにぎりしめた。
「おれが嫁にもろたる! おれがやえちゃんの家族や! せやからもう泣くな。泣かんでええ……」
なぐさめる太郎の目からも、ぼろぼろとなみだがこぼれた。
ふたりは無力なこどもだった。
まるで、世界にただふたりだけ取りのこされたように思えた。
*
やえ子は笑わなくなってしまった。
太郎はもう一度やえ子の笑顔がみたかった。
(中略)
「やえちゃん、大きなったらどんなうち住みたい?」
太郎は木の枝を手に持つと、地面に屋根の絵を書いた。
「……かざみどりがあって、煙突があって」
うつむいたまま、やえ子が小さな声で答える。
太郎はかざみどりと煙突をかきたした。
*
「えんがわも欠かせんなあ、あとステンドグラスと……」
みるみる家の絵ができあがる。
完成した家は、とても奇抜な見た目だった。
「福笑いみたい」とやえ子が笑った。
久しぶりの笑顔だった。
*
それからふたりは会うたびに、いろいろなことを空想した。
ふたりで創りだす未来図は、どれも明るく希望に満ちていた。
やえ子は次第に笑顔を取りもどしていった。
*
しばらくして、やえ子は別の親せきの家に移ることになった。
またすぐに会えると思っていた。
しかし、それがふたりの別れとなる。
*
太郎はおとなになっても、やえ子を忘れることはできなかった。
一生けんめい彼女を探した。しかし、見つけだすことはできなかった。
太郎はせめて思い出があせないように、残しておくことにした。
*
まず、太郎は家をたてた。
もちろん、かざみどりと煙突とえんがわがある家だ。
(中略)
最後に、太郎は絵本をかいた。
やえ子とえがいた物語をあざやかに形にするのだ。
ひとつひとつ創りあげるたび、太郎は幸せな気持ちに包まれる。
そして毎年、プロポーズした記念日に一冊絵本を発行することにした。
やえ子に届くことを祈って。
*
これはもう叶わない、失われた恋の物語。
しかし、太郎はやえ子を忘れることはできない。
たとえ、やえ子がもう別の誰かを愛しているとしても。
太郎のことなんて忘れてしまっているとしても……
*
あとがき
この絵本を読んでくださったみなさんには、ぼくが毎年描いてきた絵本の物語がどのようにして誕生したのかおわかりいただけたと思います。
この絵本はぼく亀山太郎の人生の物語です。
しかし、この絵本の本当の主人公はぼくではありません。
いつの日か、本当の主人公がこの絵本を見つけてくれることをぼくは心から願っています。
──────────
頬をつたうしずくをぬぐいながら、八重子は絵本をしずかに閉じた。
「この物語の本当の主人公は誰?」
わかりきっている。この物語の本当の主人公は「八重子」自身だ。
昭和19年の夏、疎開した上郡で太郎と過ごした1年間を、昨日のように覚えている。
実際は絵本のような楽しいばかりの生活では決してなかった。徐々に物資は乏しくなり、育ち盛りだというのに常に空腹と戦っていた。
そして終戦間際の翌20年6月。花子は帰る家を失った。俗にいう神戸大空襲だ。
戦後の暮らしもひどく、太郎と思い描いた未来は幻だと思い知らされた。
戦災孤児となった八重子は親戚の家を点々としたあと、物乞いをしながら生きのびた。批判されたって生きるにはそれしかなかった。(⑦①) その後周りの援助もあって、なんとかまともな暮らしができるようになり、結婚もした。
本屋で太郎の作品を見かけたのは20年ほど前。
"『ゆめのすてっき』還暦の作家、衝撃のデビュー作!"
地面に描いたものが現実になる魔法の杖の物語だった。
物語の最後には、男の子が「煙突と風見鶏と縁側のある家」を女の子にプレゼントするのだ。
すぐに太郎の作品だとわかった。胸が締めつけられた。
辛いときそばで励ましてくれた太郎。初恋の想い出を一体どうして忘れることができよう?(③)
八重子は毎年発売される太郎の絵本を欠かさず買った。
そして最新作『ロスト・ラヴストーリー』。大人向けに出版されたこの作品はまさに太郎の自伝的絵本だった。
八重子は体力に衰えを感じていた。来年はもう歩けないだろう。遠出できるのも今のうちだ。
八重子は最後に太郎に一目会いたいと思った。そして伝えたかった。いまだって愛は失われていないと。(②)
調べると太郎は神戸市の在住らしい。煙突と風見鶏と縁側のある目立つ家だ。大まかな場所もわかった。
思い立って数日後、道に迷いながらもなんとか太郎の家にたどりついた。(④)
奇抜な見た目だ。しかし、ずっと心に思い描いていたからか、意外と普通にみえる。(⑤)
会ったら太郎はどんな顔をするだろう?
高鳴る胸をおさえつつ、ゆっくりとインターホンに手を伸ばす。
しかし、しわがれた自分の手の甲を見てはっとした。
愛くるしい「やえちゃん」はもうどこにもいない……
しばし考えた末、八重子はインターホンを鳴らさなかった。
もっていた絵本を門に立てかけ、そして杖で門前の土に「愛」と刻んだ。
これが、夢のステッキだったらよかったのに。
杖の先端が少し折れてしまったが気にならなかった。(⑥)
「たろちゃん、さよなら」
その場を後にした八重子の足取りは、心なしか軽やかだった。
その年の暮れ、八重子は息を引き取った。
死に顔にはほほえみが浮かんでいたという。
◆◆◆
西日のさす縁側。
太郎はしわがれた手で絵本をとじた。
いつの日か自宅の前におかれていた『ロスト・ラヴストーリー』。太郎がかいた絵本だ。だれがなんのために置いていったのか本当のところはわからない。
しかし、不思議とわかる。
恋は叶わなかったけど、自分の想いはきっと八重子に届いているはずだ。
本をかたわらに置き、太郎は静かに人生をふりかえる。
終戦後に目の当たりにした地獄絵図のような神戸の街。
生き残った自分に何ができるのか? 自問しながら、明るい未来に向かってがむしゃらに人生を駆け抜けたつもりだ。
結婚はしなかった。しかし、過去の恋にとらわれて人生を無駄にしたなんてこれっぽっちも思っていない。
太郎は思う。
死にたくない死にたくない、と惜しみながら死にゆくのはとても悲しいことだ。
死にたい死にたい、と思いながら死ぬのはなおさらよくない。
ああ楽しかった満足した、と死んでいくのが一番いい。
「生きた、書いた、愛した……やな」
満足だ。心残りはない。
目を閉じれば、遠い昔の蛍の光やカエルの声や川のにおいが、今もあざやかによみがえる。
太郎は八重子に夢中だった。
はじめて出会った、あの夏の日から。
今もずっと──
【完】
簡易解説。
老人は毎年絵本を買う。初恋の男の子が二人の思い出を描いてくれた絵本だったから。
来年はもう歩けないだろうと悟ると、最後に一目会いたいと、絵本の作者の家に出かけた。
しかし、老いた姿で初恋の人に会うことが躊躇され、せめて会いに来た証にと、初恋の人の家の前に絵本を置いて立ち去った。
[編集済]
ホタルの光につつまれた日、やわらかな風が頬を撫でた日、川のせせらぎにこころをほどいた日。まるで昨日のことのようにすぐそばにあるのに、皺ひとつなかったつるつるの小さな手はもう見る影もない。それだけ年月を重ねてきたのだ。深くゆっくりと息を吐く。失われたものは数えきれないほどにあった。もう取り返せないことを知って立ちあがれない日もあった。こんな思いを消し去ってくれる魔法があればいいのにと痛切に願ったはずなのに、今になってこの胸に抱きしめたくなるのはどうしてだろう?皺だらけの手が、愛しかった。
これにて投稿フェーズ〆切とさせていただきます!
本当にたくさんの作品をご投稿いただきありがとうございました。
投票会場の設置が完了しました。
※作品多数の為、投票〆切を当初より24時間延長して【27日(水)23:59まで】とさせていただきます。
それでもかなり厳しいかとは思いますが、どうか一人でも多くの方に票を投じていただけることを願います。
よろしくどうぞ(*˘ω˘)[編集済]
参加者一覧 27人(クリックすると質問が絞れます)
まずは参加者の皆さん、大変お疲れさまでした!企画常連さんに加え、普段創りだすで見かけない方も要素や作品を投稿してくださって本当に嬉しかったです。
創りだすは個人的にやや敷居の高い企画というイメージがありました。普段文章を書かない人や、忙しくてあまり時間を取れない人にも気軽に参加してもらうにはどうすればいいんだろう?そんな思いで色々と試行錯誤しました。
そして今回要素数をがっつり減らしたわけですが、結果として21名もの方に参加していただくことが出来、自分の思いは叶ったのかなという気がします。
また、奇抜な要素を組み込むことに慣れつつあった常連参加者の方々にとっては、今回の問題文と要素はある意味いつも以上に難しかったのではないでしょうか。
参加ハードルは下がりつつもレベルそのものが易しくなったわけではない。個性のない要素に色をつけ、物語を動かしていく腕が試される。シンプルながらも非常に見応えのある第8回になったのではないかと思います。
それでは結果発表にまいりましょう!
まずは最難関要素の発表です。
最難関要素賞
『老人の過去(=最後に選出された要素)に対して批判的な人たちが続出する』(4票)👑
『意外と普通だった』(4票)👑
『老人は杖を折った』(4票)👑
『そこには愛がある』(3票)
『道に迷う』(3票)
『忘れられない想い出がある』(1票)
『その老人の過去が関係する』(1票)
なんと今回、全要素に票が入りました。
そんな中、HIRO・θ・PENさん、キャノーさん、白露さんから頂いた要素が同率1位となりました!
「愛って何?」「普通って何?」参加者を哲学思考に追いやった今回の要素たち。
杖の折り方にはそれぞれの個性が滲み出ていたような気がします。
ちなみに今回、ランダムで選ばれた要素はこちら。
①老人の過去(=最後に選出された要素)に対して批判的な人たちが続出する
⑤意外と普通だった
それではいよいよ作品の表彰にまいります。
全29作品もの投稿の中から、最も多くの人の心を掴んだのは一体どの作品だったのでしょうか!
最優秀作品賞
「コンピューターに世界征服をさせない方法」(作・葛原)(9票/6人)👑
「かみさまのかたおもい」(作・ちくわさん(偽物))(8票/7人)
「ファンタジーをあげよう」(作・CROWN)(5票/5人)
「老人達の大運動会」(作・Taka)(3票/3人)
「この絵本に愛をこめて」(作・ZERO)(3票/3人)
「ロスト・ラヴストーリー」(作・もっぷさん)(3票/3人)
というわけで、数ある作品の中から最も多くの票を集めたのは……
葛原さんの『コンピューターに世界征服をさせない方法』でした!!
独特な語り口や様々な引用を用いての登場人物の掛け合い、何とも言えぬ読後感に惹かれた方が多かったようです。同じ人からの複数票を獲得していたのも印象的でした。
次点は、ちくわさん(偽物)さんの『かみさまのかたおもい』。
最後の最後で「そっち!?」となる叙述トリックに唸らされたのは私だけではなかったようです。情景や心情の描写がとても丁寧で繊細でした。
以下、作品多数の為まとめての表記になります。
▼ 2票獲得 ▼
「その絵本あげるの?」(作・とろたく(記憶喪失))
「老人は1対1なら強いです」(作・キャノー)
「にせものに捧ぐ」(作・とろたく(記憶喪失))
『老人と少女』またはバレンタインの偶然」(作・赤升)
「あいをあなたへ」(作・ひよこさん)
「ぼくのじいちゃん」(作・ひよこさん)
「めでたし、めでたしのその先」(作・ごがつあめ涼花)
「全裸ますか?」(作・ZenigokE)
「サンタクロース、最後のプレゼント」(作・赤升)
「実卓リプレイCKPゲームで遊んでみた」(作・ハシバミ)
「(R弁護士の手帳より抜粋)」(作・とろたく(記憶喪失))
「あの日の自分、今の自分」(作・「マクガフィン」)
▼ 1票獲得 ▼
「読み上げられるオモイ-第52節-」(作・残酸)
「「私は知らないままでいいと思った」老人と絵本、その真実を語る」(作・ハシバミ)
「さよなら私」(作・ラピ丸)
「必殺!仕事人 モンド、ジョーダンをいう」(作・きっとくりす)
「後日譚」(作・夜船)
「はらこめしますか?」(作・CROWN)
「A man who loves English」(作・ぎんがけい)
以上が投票結果になります。
投票外でも各作品へコメントを下さっている方もいますので、是非とも投票会場をご覧ください!
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第8回-正解を創りだす『絵本を買う老人』、いかがでしたか?
今回の問題文は老人と絵本をテーマに組み立ててみました。絵本といえば自然と子ども向けを想像しますが、それを老人が毎年買うという行為は一体何のため?→老人にとって何かしら思い入れのあるものなかな。では、そんなものを最後には道端に置き去りにしてしまうのは一体なぜ?……とまぁこんな具合に考えていきました。(ちなみに、最初は絵本ではなく観覧車をテーマにしていました)
自分で容易に答えの見つからない問いだからこそ、創りだすの企画で皆さんの解説を見てみたい。そんな風に考えた結果、たくさんの絵本が道端に置き去りにされたわけですが(笑)
たった一冊の絵本には到底収まりきらないような色濃いストーリーが、その向こう側にはありました。
皆さんに投稿いただいた作品には、アナザーストーリーとして短いお話を回答欄に添えさせていただきました。拙いものですが、お時間があれば是非ご覧ください。
そして私も正解を創りだしてみました!下のまとメモ欄に載せています。エキシビションとは思えない長さですが、こちらももしお暇があれば読んでみていただけると嬉しいです。あまりにも要素に癖がなさすぎて、カオスな要素が恋しくなるほどでした(笑)
さて、そろそろお別れの時間です。
今回の創りだすの感想や思いなんかがあれば、↓のチャットやミニメ、ツイッターなんかで教えて頂ければ藤井とても喜びます。
それでは、シェチュ王のさんにバトンパスをして私はこのあとカフェテリア赤升にはらこめしを食べに行くとします。この時間に営業してるかなぁ、カフェテリア赤升。
ではでは!また次回の創りだすでお会いしましょう。
ありがとうございました!
>>ひよこさん 前回に続いての2回目のご参加、ありがとうございました!企画が終わった今、アフタートークという形で暴露させてもらうと、実は今回藤井が最も惹かれた作品はひよこさんの『あいをあなたへ』でした。素直になれない老人の不器用さがいとおしく、優しいラストシーンに心が震え、泣きそうになりました。投稿〆切までそれぞれに味のある素敵な作品が続々と投稿されていきましたが、それでもずっと心に残り続ける作品でした。ひよこさんの作品は二作とも不思議なくらいストンと言葉が落ちてきて、とても読みやすく馴染みやすい文章で心地よかったです。まだまだこれからも創りだすは続いていくことでしょうし、私も可能な限り参加したいと思っているので、また次回以降も一緒に楽しみましょう!本当にありがとうございました![編集済] [19年03月02日 16:11]
>>もっぷさん 今回ギリギリまで粘っての難産だったとのことですが、最後まで書き上げて投稿してくださって本当にありがとうござきました!もっぷさんの作品は相変わらず情景や心理の描写がとても奥深く豊かで、読みながらまるでその世界に立っているような気持ちにさせられました。個人的な話をさせていただくと、私が過去の創りだすで一番印象に残っているのは第4回、もっぷさんが主催された回でした。あの時が一番自分の書きたいことを書けたというのもあるんですが、それに加えて結果発表後に読んだもっぷさんの作品にとても心を打たれ、それがずっと印象に残っています。今回主催するにあたって自分自身も作品に向き合う時、「おまけではなく本気で書こう」と思いました。それもあってか企画が終幕を迎えた今、やり残したことはひとつもない、すべてやりきったという清々しい気持ちです。今回創りだすを主催できて幸せでした。ありがとうございました![編集済] [19年03月02日 15:47]
>>ちくわさん 無茶振りのノリとはいえ、半ば強引に参加を強要してすみませんでした。しかし申し訳なさ以上に、参加していただけたことがとても嬉しかったです、ありがとうございました!ちくわさんの言葉通り、だれよりも自分が一番この企画を楽しんでいたのではないかという気がします。幸せなことです。個人的な感情になりますが、投票会場を見ていて多くの方がちくわさんの作品に惹かれていることを知り、なぜか私が嬉しくなってしまいました。自分の好きなものがだれかに好いてもらえるのは嬉しいことです。しかしちくわさんあれですね、最後の最後で印象をひっくり返すの好きですよね。溜めて溜めてドンみたいな。 私は寿司のシャリの部分を奢るので、ちくわさんはネタの部分を奢ってください。よろしくどうぞ。準優勝オメ!!![編集済] [19年03月02日 15:32]
>>CROWNさん 創りだす初参加、本当にありがとうございました!そして第三位という見事な成績、おめでとうございます!CROWNさんには要素出しで「はらこめしますか?」を放り込んでくださった時からキュンとさせられていましたが、作品のほうでも初参加とは思えない存在感を放っておられました。はらこめしの由来は読めば読むほど納得感しかなくて戦慄します。アナザーストーリーは遊んでしまいました、ごめんなさいww今日もはらこめしがおいしいです。 そして拙作にまでコメントいただけるなんて嬉しすぎます(´;∀;`)謎はいつも日常に溢れていた、の台詞は自分でもお気に入りです。やはり自分の書いたものを人に読んでもらえるというのは(そして感想をいただけるというのは)嬉しいものですね。創りだしてよかったです。ありがとうございます![編集済] [19年03月02日 15:22]
>>ハシバミさん ご参加ありがとうございました!私はCKPゲーム実演動画を切実に希望します。ゴミ箱絵本はなんとなく語呂がいいなぁと思ってましたが、絵本ゴミ箱とは何ぞや……?(笑)ゴミ箱の側面がめくれるようになっててゴミ捨てついでに絵本が読める、みたいな感じでしょうか。あー絵本読みたいな、ゴミ捨ててくるか。みたいな。 実は問題文を作った当初、老人が施設に寄付するために絵本を買っている、というのは一つの想定として頭にありました。でも、そしたら最後に置き去りにしたのは何故……?という問いに対する答えが自分の中では見つからなくて。それに対する解答をハシバミさんから貰ったような気がします。楽しんでいただけたなら何よりです、私もめいっぱい楽しませていただきました!また次の創りだすでご一緒できることを楽しみにしています。[編集済] [19年03月02日 15:11]
>>コウチャさん らて鯖初の創りだすご参加、本当に本当に嬉しかったです!!ラテシンの創りだすは過去ログでしか知りませんでしたが、今回Takaさんやコウチャさんが参加してくださって、今のらてらてにはない創りだすの持ち味みたいなものを直に感じることが出来、とても心踊りました。葛原さんの言葉を借りるとするならばまさに『古き良きラテシン』といったところでしょうか。「こういう楽しみ方ができるんだ」と次回以降へのモチベにもなりました。限られた時間の中で最後まで粘って投稿してくださって本当にありがとうございました。『伝説』の終着点がとても好きです。皆さんのおかげで最後の最後まで楽しく主催を完遂することができました。本当にありがとうございました![編集済] [19年03月02日 15:00]
>>赤升さん たくさんの笑いとときめきと感動をありがとうございました!続々と作品が投稿されていく中で突如として現れた『はらこめしのおいしいカフェテリア赤升』は反則すぎました。はらこめしやカフェテリア事件を知らない人にとっては何のこっちゃだろうと思いますが、私はまんまと心奪われましたw 色々と試行錯誤して悩んだ部分も多々ありましたが、こんなにたくさんの方が創りだすを盛り上げてくださって、今回主催できたことを幸せに思います。赤升さんの文章は他の方もおっしゃってたように軽やかでとても読みやすく、親しみやすい文章でした。またどこかでカフェテリア赤升をお見かけできることを願っています。[19年03月02日 00:16]
>>ラピ丸さん こちらこそご参加くださってありがとうございました!楽しかったと言っていただけてとても嬉しいです。私も期間中めいっぱい楽しませていただきました。(というか多分参加者の誰よりも楽しんでたんじゃないかと 笑) 盲目作家の杖アートという斬新な発想に驚かされました。身体を支える杖もある意味生命線ですが、命を吹き込んだ絵筆としての杖と捉えると、また全然違って見えました。 機会あらば是非また創りだすの企画でご一緒しましょう![19年03月01日 23:58]
>>マクガフィンさん 長~いコメントありがとうございます!(笑)マクガフィンさん、ウミガメのスープも始めたばっかりだったのですね。そんな中創りだすの企画に参加してくださったこと、とても嬉しいです!それこそが私の願ったことだったので。最初は「要素と投票のみ」とおっしゃってたのが、最後の最後で作品投稿もして下さった時には本当に嬉しかったです。走馬灯のように蘇る、からのくだりが一番好きです。愛しい我が子のどんな顔よりも忘れられない記憶。どれほどの自責とともに父が日々を過ごしていたのかという痛切さが突きつけられるようでした。 是非とも次回も参加しましょう!私も参加するつもりです。次は参加者としてご一緒できるのを楽しみにしています![編集済] [19年03月01日 23:49]
↓(続き) 新たなスパイスを加えつついろんな角度から作品を創りだして、前へ前へと踏み出して行かれるとろたくさんの姿勢を尊敬します。自分ももっと面白い作品を創りだしたい!次回の創りだすが楽しみです。 とりあえず、投票コメ8000字は狂気でした。何度でも言います。投票コメ8000字は狂気でした。ご参加いただき本当にありがとうございました![19年03月01日 23:33]
>>とろたくさん 一緒に企画を盛り上げてくださってありがとうございました!とろたくさんから受け取ったバトンを無事に葛原さんへ渡すことが出来て、少しほっとしています。創りだすの原点を知って、自分の思い描いた創りだすを形にすることができて、きっとこの先見たこともないような創りだすが生まれるんじゃないかという気がしています。まだまだ続いていってほしいですね。[19年03月01日 23:32]
>>キャノーさん こちらこそ、参加してくださってありがとうございました!とにかくやりたいこと全部詰め込んだろうと思ってアナザーストーリーも軽い気持ちで書き始めてしまいましたが、楽しんでいただけたなら何よりです。しかし『もう歩けないだろう』を別の人物へ飛ばす、血で汚れないように『絵本を置いていく』という問題文の解釈がまさかすぎました。自分ではどんなに頭を捻っても出てこない発想です。そしてキャノーさんの要素『意外と普通だった』に苦しめられた参加者は意外と多かったようでwブクマコメントにも笑ってしまいました。頭から最後まで一緒に企画を駆け抜けてくださり、本当にありがとうございました![編集済] [19年03月01日 23:22]
↓(続き) あまり抑揚のない声でしれっと交わされるやりとりの中に当人らの感情が閉じ込められてるような、あの何ともいえない感じが私とても好きです。うまく表現できないけど。 ラテシン時代からのファンである葛原さんに参加いただけたこと本当に嬉しかったです。なんか嘘っぽく聞こえるけどこれは本当です。そして改めてシェチュ王おめでとうございます!お祝いに焼肉奢ってください。[編集済] [19年03月01日 23:10]
>>葛原さん 葛原さん優勝おめでとうございます! 今回の創りだすでは、「文章を書く」ということを普段から(?)やっておられる方々の巧さみたいなものが特に表れていたような気がします。もちろん巧さだけが創りだすの評価ではないので、その他の要素も含めトータルでの評価ということになるんでしょうけれど。ドクトルの「だからいったでしょう、人間は忘れっぽい生き物であると」「あと二日もあれば、それに関して論文が書けるんですが」などの台詞が本当にもう、たまらないです。[編集済] [19年03月01日 23:09]
>>ZEROさん お忙しい中、時間を割いて参加してくださりありがとうございました!創りだす初回時からZEROさんの作品を追っていますが、回を重ねるごとにどんどん表現豊かに彩られていく物語にドキドキさせられます。特に今回の作品は冒頭から強く惹かれるものがありました。アナザーストーリーであの柔らかさを表現することは出来ませんでしたが、拙いながらも原作と少し触れ合うことができて幸せでした。 余談ですが、ZEROさんは絶対にちくわさんの作品に惹かれるだろうなと確信していました。当たりましたね。投票コメントそのものに対しても「良いなぁ」と思いながら読ませていただきました。[19年03月01日 22:37]
>>ZenigokEさん改めウキステの人 正直、『全裸ますか?』のアナザーストーリー書くのは楽しすぎました。結果的にただイジっただけになりましたが。ウキステ最高。浮島から取っているという裏話も最高。……とウキステばかり取り上げていますが、『気海の黙図』もあの儚げな空気感がとても好きで、こちらのアナザーストーリーを書くのもとても楽しかったです(雰囲気だけで書いてしまいましたが)。 他作品への丁寧な投票コメントもそうですし、問題文を音に変換してくださったのもとても嬉しかったです。ご参加いただきありがとうございました! [19年03月01日 22:29]
>>きっとくりすさん カヨさんは私の中で椎名林檎みたいなイメージがあって、艶やかで強かな女性という印象を抱いていました。だからこそアナザーストーリーではものっそい似非チックなカヨさんになってしまって「アアア/(^o^)\」と頭を抱えていたのですが、原作と一緒に保存してくださったなんて…!!とても嬉しいです(´;∀;`)絵本を裏の仕事に繋げる発想力に驚かされ、また海外映画を見ているような清々しいラストシーンがとても格好良かったです。拙い主催運営でしたが、参加してくださって本当にありがとうございました![19年03月01日 22:21]
葛原さんシェチュ王おめでとうございます!そして主催の藤井様、シェフの皆様、私の拙い作品に投票・感想を下さった皆様、本当にありがとうございました!!私は前回からの新参者ですが「創り出す」で解説を考えてる・皆様の解説を読んでいる時間は、言葉には表し難いほど幸福感やトキメキを感じます。ラテラテに出会えて本当に良かったと思わせて頂いてます。藤井様の作品も読ませて頂いて、あぁこんな老人になりたい…いつまでも謎を考え、追いかけ、そして皆を幸せ・笑顔にしたい。心からそう思います!長々とすみません、本当に本当にありがとうございました!![19年03月01日 15:57]
葛原さんシェチュ王おめでとうございます!葛原さんの作品を拝読するたび「これはお金払って読むプロの文章だ!」と思うのですが、今回も圧巻でした。そして、藤井さん運営ありがとうございました。隅々まで行き届いた遊び心と神対応に惚れてしまいそう…!まだみなさんの投票と藤井さんの作品を読み切れてないのですが、余韻に浸りながらゆっくり楽しみたいと思います(^^) お疲れさまでした![19年03月01日 00:35]
まずは藤井さんお疲れ様でした。お仕事もあり色々大変そうでしたが、ご本人がとても楽しんでいらっしゃるのが印象的でした。そして、拙作に投票してくださった方々ありがとうございました(なぜか悔しがっていた人以外)。今回は個人的な理由で色々大変だったのですが、なんだかんだ楽しめたので良しとします。藤井さん本当にお疲れ様でした! 今度、お寿司奢ってください!![19年02月28日 23:32]
葛原さん、シェチュ王おめでとうございます!私の作品に感想をくださった皆様、ありがとうございました。読みました、とても嬉しかったです。参加者皆様、ご一緒くださりありがとうございました。 藤井さん、アナザーストーリーまでありがとうございます。「イインダヨ」面白かったです。はらこめしの流布は人類総腹子飯化計画の一部なのですよ(?)藤井さんの創り出すも読みました。謎はいつも日常に溢れていた、この台詞と様々な場所に絵本を置き去りにするシチュエーションがとてもマッチしていて納得感があり、ウミガメのスープの要素を随所に絡めた物語が何とも素敵でした。[編集済] [19年02月28日 11:52]
藤井さん、主催お疲れ様でした。葛原さん、優勝おめでとうございます。そして拙作に投票、感想くださった皆様、ありがとうございます。今更ですが、CKPゲームのアイテムカードは2枚引いて組み合わせる方が面白いですね? 「ゴミ箱絵本」か「絵本ゴミ箱」かを選んで……。何はともあれ今回も楽しませていただきました。ありがとうございました![19年02月28日 09:00]
話は変わりまして、大変勝手ながら自身の話をさせて頂ければと。らて鯖では初めての創りだす参加で、ラテシン時代でも初回しか参加していなかったのですが、十分楽しむことが出来ました。今回は票を得ることは出来ませんでしたが、私の解説にクスッとした方が少しでもいらっしゃいましたら、それはとても喜ばしいことですし、実際に投票場で感想を頂き、とても嬉しかったです。「もう一票あれば入れてた」というお言葉で、少なくとも今の笑点メンバーの三〇さんには勝てたかなと(ぇ?
最後に、解説を投稿及び投票した皆様、そして改めまして主催の藤井さんと優勝された葛原さんへ、お疲れさまでした!![編集済] [19年02月28日 08:47]
まず、藤井さんへ。創りだすの主催から投票管理や深夜の集計作業、だけでなく、アナザーストーリーまで考案していただいて、本当にありがとうございます。そして大変お疲れさまでした。自分の解説のアナザーストーリーだけでなく他の方の解説に対するアナザーストーリーも楽しませていただきました。危うくアナザーストーリーを踏まえて票入れしようとしましたが、どうにか踏みとどまりましたw
次に葛原さんへ。8回目の創りだす制覇、並びに8代目のシェチュ王襲名おめでとうございます。観点がTakaさんとは違った方向性で飛び抜けて異質で、あの雰囲気の中でもユーモアを織り交ぜるのは葛原さんらしいと言うべきでしょうか、葛原さんでなければ出せない解説だなという印象が強く残りました。
(長くなりすぎたので分けます、すみません)[編集済] [19年02月28日 08:23]
藤井さん、主催お疲れ様でした。また、葛原さん優勝おめでとうございます。今回の正解を創りだすでは藤井さんの要素選出に手を加えたり、アナザーストーリーを書いたりなどの新たな試みが功を奏したのだと思います。ありがとうございました。あと藤井さんがカフェテリア赤升を気に入ってくれたようで何よりです。[編集済] [19年02月28日 07:06]
まずは藤井さん、出題及び主催、本当におつかれさまでした!ウミガメのスープを知ってまだ3週間足らずの私が拙作を投稿してみようと思えたのも、「多くの人に参加してほしい」という藤井さんの策略あってこそだったと思います!アナザーストーリーまでつけていただき、嬉しいことこの上ないです!ありがとうございました!そして参加者の皆さん、どの作品も、いいえむしろ要素出しの段階から学ばせていただくことが非常に多かったです!おそらく今回の中では私が最も若輩者だろうと思うのですが、そんな私の作品にまで感想をつけていただき、票まで入れてくださった皆様におかれましては、その懐の深さ、本当にいたみいります。そして葛原さん、シェチュ王おめでとうございます!葛原さんの作品は、読むのに最も労力と時間をかけた作品でした。いちいち機知に富んだ言い回しに、いつのまにか画面をスライドする指が、ページをめくる手になっていたような感覚で時間を忘れました!最後になりますが、正解を創り出すウミガメ、最高です!ぜひとも次回も参加したいと思います、ありがとうございました! とっても長文になってしまいました…最後の最後まで申し訳ありません…[編集済] [19年02月28日 06:39]
藤井さん運営ありがとうございました。葛原さん、おめでとうございます。皆様お疲れ様でした。同じ条件でたくさんの方の作品を拝見することができ、非常に勉強になりました。これからエキシビションも含め、落ち着いて読み返してまいります。ありがとうございました。 ……ウキステに票を下さった方、頭の方は大丈夫でしょうか? 私はだめです。大事な一票をありがとうございました![編集済] [19年02月28日 02:58]
藤井さん、主催お疲れさまでした! 今回こんなに盛り上がることができたのは藤井さんのおかげです。 葛原さん、優勝おめでとうございます! 票は入れずとも感想はしたためてます。素敵な解説をありがとうございました。 ラテシンの創り出すも拝見していましたが、今回こんなに投稿される、というのは奇跡みたいなものだったのですね・・・形を変えて引き継がれるってすごいなあ・・・ そして私の作品に投票してくださった方、ありがとうございます。3つともちょっとした試みをしてたのですが、3作品とも票が入っているのがすごく嬉しかったです。やっぱり参加してよかった![編集済] [19年02月28日 02:23]
アナザーストーリーありがとうございます!! 猫、最高です。猫と煙は高いところが好きで、馬鹿も私も高いところが好きなので、今からアイキャンフライできそうです。そして途中で切られるのが「ウキウキスキップ☆ステキなステッキ」ぽくてとても好きです。ありがとうございます! 他の作品のストーリーも今から読ませていただきます。[19年02月28日 00:20]
アナザーストーリーありがとうございます!カヨさんはどうしたのかなーというのは自分でも気になっていたので、藤井さんのお話で見れて嬉しかったです。創り出したメモ帳の下に貼って保存しておきます。[19年02月28日 00:06]
>>マクガフィンさん ひゃー、ありがとうございます(´;∀;`)マクガフィンさんの作品はとにかく老人(父)の葛藤や覚悟が描き出されていてそれに胸を打たれたのですが、そんなことを知らずに過ごしていた息子は父の死をどう思うんだろう……とか色々考えてました。私なりの解釈でしかないですが、こんな拙い文章でも喜んでいただけたなら幸いです![19年02月26日 23:48]
>>ラピ丸さん 描き出された物語を別の視点から切り取ってみたらどうなるだろう?そんな好奇心から「アナザーストーリー書いてみよう!」と思い立ったのですが、そんな風に言っていただけて嬉しいです。°(゚´ω`゚)゚。ありがとうございます![19年02月26日 23:37]
>>出のみさん 自分は二次創作するのもされるのも大好き人間なんですが、解釈誤って元作品に泥を塗るような事態になってしまったらどうしようという思いが無いでもなかったので、嬉しいと言っていただけて私も嬉しいです。・゚・(ノ∀`)・゚・。ありがとうございます![19年02月26日 23:35]
>>とろたくさん へっぽこアナザーストーリーでしたが楽しんでいただけたなら幸いです!とろたくさんの三作目、「棺桶で眠る母を見てから死体を綺麗だと思うようになった」の一文がとても印象的だったのでそこにスポットを当てた派生ストーリーになりました。ばばあ置き去りでごめんなさい(言い方) しかしとろたくさんの投票(質問欄の長さ)にはびっくりしました。我ら文字数かさばりがち。書き始めるとどんどん長くなりますよね。自分もここで各作品への感想を打つ際、後になればなるほど長文になってくことに軽くヒきました(今も)。[19年02月26日 15:00]
>>ひよこさん アナザーストーリー読んでいただけて嬉しいです!派生ストーリーを書こうと思ったのは単なる思いつきでしたが、元作品の登場人物の心理やその場の情景をより深く想像するきっかけにもなり、なかなか楽しい試みでした(´∀`*)カフェテリア赤升、ぜひご一緒しましょう。あそこのはらこめしは絶品ですよ。[19年02月26日 14:52]
おふん、未回答がなくなっていたので見てみたらアナザーストーリーとか嬉しすぎます。感想もいただけたのはもちろんのこと、自分の創り出したものから派生したストーリーを読むことができるなんて。もう毎日はらこめしお供えします。 返事遅れましたが、GとBは確かにじじいばばあから取ってます。大丈夫です、藤井さんははらこみたいに透き通った綺麗な心の持ち主です。[編集済] [19年02月26日 14:18]
私の拙い話にもアナザーストーリーを付けて頂いて感謝感激です!どちらのおばあさん(奥さん)も可愛くてたまらないですっ!うるっと、きゅんとしました(*´ω`*)あとはらこめしの美味しいカフェテリア赤升さん私も行ってみたい…(笑)[19年02月26日 12:15]
>>もっぷさん 最後の最後で滑り込み投稿ありがとうございます!実は最初要素フェーズでもっぷさんの要素を2つとも選んでいました。何かしら通ずるところがありそうで、今回の創りだす投稿を密かにとても楽しみにしていたのです。 ひらがなと漢字の使い分けひとつとっても不思議と胸に沁みてくるものがあり、読み終えた時に自然と涙が伝いました。最後の「生きた、書いた、愛した……やな」という台詞にもう本当にやられました。柔らかくもずっしりと重みのある言葉ですね。風の音や匂いすらも感じられるような奥行きのある作品に心打たれました。[19年02月24日 18:16]
>>フェイクちくわさん 要素出しご参加ありがとうございました。ぎりぎりでしたね、せせりでも食べてたんですか? ちくわさんの書くお話って、点じゃなく線なんですよね。はじめからおわりまで一本線でつながってる。行動の裏には心理があって、思いの向こう側には出来事があって、それらがきちんとリンクしてるから読んでいて違和感がない。登場人物が確立してるというのも、そういうベースがしっかりしてるからなのかなと思います。ひとつひとつの言葉に熱や色があり、その置き方によって全体の見え方が変わることをちゃんと知っている、そんな印象を受けます。抽象的な表現ばかりになってしまうな。そばに置きたくなる作品。ありがとう。[編集済] [19年02月24日 17:43]
>>コウチャさん 一夜明けまして、滑り込み投稿ありがとうございます~!今じっくり読ませていただきました。世代を跨いで同じことが繰り返されていく様子に興味を惹かれ読み進めていったのですが、老人が杖を折った(上半身を鍛えていた)辺りからコウチャさんらしさが一気に出てきてンフッとなり、ほふく前進の辺りでもうニヤニヤし、逆立ちからのようチューバーでキャッキャしました。上手く表現できませんが、何かこう心をくすぐられるんですよね。杖の中にUSBを隠してたりと小ネタも光り、非常に楽しく読ませていただきました![19年02月24日 17:07]
コウチャさん、フェイクちくわさん、もっぷさん、滑り込み投稿ありがとうございます!!じっくり読みたいところですが時間がないので、明日改めてコメントさせていただきます。 皆様本当にお疲れさまでした(˘ω˘。)[19年02月24日 00:48]
>>ZEROさん ふぁぁぁぁん。°(゚´ω`゚)゚。ZEROさん滑り込み投稿ありがとうございます。お話の導入から丁寧で優しくて柔らかくて、まるでゆっくり読み聞かせしてくれてるみたいに心地よい肌触りの文章でした。そして驚いたのが、私の今回創りだした作品と、要素⑥の使い方がまるっきり一緒だったということです。我ら、杖、添え木にしがち。(?) 普段は物静かなおばあちゃんが大声で怒るくだり、たまりません。ラテミがカメコの胸をつつく描写も。まるでその情景が目に浮かぶよう。胸の奥に響く作品でした。[19年02月23日 23:44]
>>マクガフィンさん はぁぁぁああ投稿ありがとうございます!!当初は「要素と投票のみ参加」とおっしゃってましたが、こうして作品を創りだしてくださってとてもとても嬉しいです。そしてストーリーにぐんぐんと惹き込まれました。各要素の組み込みも違和感がなく、何より『読ませる文章』だと感じました。書き慣れてらっしゃるというか。 父(老人)の正直さや人間らしさが、何とも痛切な結末に導いてしまうお話が後々まで印象深く残りました。素敵です。[19年02月23日 22:46]
>>とろたくさん まさかの3作目!最終日にご投稿ありがとうございます! 一作目、二作目とはまたガラリと変わってメモ帳形式の解説とは。何だか本当に人のノートを盗み見してるような気分でした。G・GとB・Bは脳内で「じじい」「ばばあ」で再生されましたがこれは私の心が汚れているのでしょうか?それとも正常ですか?(?) いびつな形のパズルのピースがぴたりとはまったような二人。メモの先が気になります。 はらぺこあおむし……はらこむし……はらこめし…………たぶん、親戚か何かですね。[編集済] [19年02月23日 22:34]
手帳のメモ書きっぽい書き方を意識してみました。(色々と伝わるかな、この解説・・・)タイトルは()も含めてくださると嬉しいです。ところではらぺこあおむしを何気なくチョイスしてみましたが、なんとなく語感がはらこめしに似てる気がします。[編集済] [19年02月23日 15:05]
>>ぎんがけいさん お待ちしてました!投稿ありがとうございます。老人が英語学習のために海外の絵本を手にするという発想はなかった!見事です。すっきりと纏めれた文章の中に要素が機能的に配置され、またラストも「奥さんの夫に対する愛」ではなく「老人の英語に対する愛」とし、そこに奥さんがこっくりと頷くというのがいいですね。老人の情熱と、それを感じ取り理解する奥さんの想いとが一緒になって伝わってきます。素敵な作品ありがとうございました![19年02月23日 14:05]
>>CROWNさん 「はらこめしますか?」のタイトルの回答欄に「作・はらこめ」まで打ち込んだ私もきっと魔力にかかっておったのです。どうかひとおもいにきゅっぷいしてください。ちょうど鏡の前でこの作品を読んでいたのですが、ふと顔を上げるとそれはもういい笑顔がそこに映し出されていました。我の心満たされり、いとはらこめし。これまで特別たくさん接触があったわけでもないのに、こうして創りだすに参加していただき要素投稿のみならず作品にまではらこめしを描き出してくださるなんて、はらこめし冥利に尽きます。ちょっと自分が何言ってるのかわからなくなってきました。正気を取り戻すためにはらこめしを食べます。[19年02月23日 13:44]
>>夜船さん 二作目の投稿ありがとうございます!相変わらずの早朝(深夜?)ですねw 夜船さんの創りだす作品は、現代日常というよりもファンタジー、異国、異次元などを思わせるような作風が得意でいらっしゃるのかなと改めて思いました。読みながら、そういえば自分も小さい頃にたくさん読み聞かせをしてもらったはずなのにそのタイトルや内容をほとんど覚えていないな……と思い至り「これはもしや呪い??」と思ってしまいました。それとも単なる記憶力の欠如でしょうか。誰か記憶回復の魔法をかけて。[19年02月23日 13:00]
>>Takaさん Takaさーーーーん!!!!一目見て「なっがww」と思い、タイトル見て「これはww」と思い、読み始めて「田中ww」と思い、もうなんだか言葉になりません。嬉しいです。そして濃いwww明らかに異色を放っています。 今回半ば無理矢理引き込んだような形になりましたが、お忙しい中こんな躍動感のある作品を書き上げてくださってありがとうございます。ラテシンにそんなに居たわけじゃないのに、なんだか懐かしいような気分にもなりました。とても嬉しかったです。[19年02月20日 19:12]
>>きっとくりすさん 投稿ありがとうございますー!ほのぼのアイテムである絵本がまさかの闇の仕事の情報伝達に一役買っていたとは!いろんなイメージがぐるりとひっくり返るドライでクールな作品かと思いきや、最後の最後に回収された要素②がとてもいい味出してますね。「そうきたか!」の連続でした。今回は我ながら創りだしにくい要素を選んでしまったな~と思いましたが、そのぶん皆さんの地力みたいなものがより反映されて見応えある作品群になっているのではと思います。[19年02月20日 18:59]
>>ハシバミさん 二作目は懐かしのCKPゲーム……!!作品読んだあと回答欄に『作・CKPゲーム』とか打ち込んだ主催者はわたしです。洗脳されとるやんけ。これ本当に実際遊べるし、ちゃんと要素も回収出来てるしですごいですね。ツイッターアカウントや動画URLを素で検索したのは私だけじゃないはず。ぜひ実録してほしいです。[19年02月20日 10:44]
>>夜船さん どえらい早朝に本編投稿ありがとうございます!おはようございました(?)簡易解説で見ていた時よりもずっと英雄の痛切さみたいなものが滲み出ていて、ラストシーンがより印象深く残りました。もう一作お時間があればぜひ!!しかしお身体壊されないよう無理のない範囲でどうぞです。ゆるりと楽しみにしてます(*˘ω˘)[19年02月20日 01:13]
>>赤升さん はらこめしのおいしいカフェテリア赤升から一転して、とても心暖まるストーリーをありがとうございます。歩けなくなるのが老人自身ではなくトナカイというところに、そしてそれがサンタを辞める理由のひとつであるところに、まさに老人とトナカイが一心同体であったことが伝わってきます。知らぬうちに惹き込まれ、淀みなく最後まで読めてしまう。ファンタジーのようなリアリティーのような世界がとても素敵でした。[19年02月17日 13:55]
>>ZenigokEさん いいですか。「ウキウキスキップ☆ステキなステッキ」と繰り返したところで読者を洗脳できるなんてそんな安易な考えに走ってはいけませんよ。終盤になると「ウキウキスキップ☆ステキなステッキ」という文字がちらりと目に入るだけでなぜか喉元が痒くなったり、「ウキウキスキップ☆ステキなステッキ」を頭の中で無意識にリズムをつけて読み上げてたり、「ウキウキスキップ☆ステキなステッキ」以外の情報が入ってこなかったり、なんてことは決してありません。断じてありませんからね。ついでに言わせてもらうと、ステップではなくスキップを採用したことについては、正解だったと思いますよ。全裸ご苦労さまでした。[19年02月16日 23:16]
>>ラピ丸さん 投稿ありがとうございます!杖を筆として扱う発想に驚かされました。こうなると要素⑥の『杖を折る』がまた違った意味で響いてきますね。盲目だからこそ見える景色が鮮やかに描かれているようで、絵本を置き去りにするラストもじんわりと沁みました。素敵です。[19年02月16日 20:27]
>>こはちゃん チャット欄見るかわかりませんが、ご参加ありがとうございます!なるほど、こうきましたか。短くコンパクトにまとめられていながら、ずっしりと重みのあるものを残されていったような感覚になります。こはちゃんの作風はこれまでどちらかというと非現実・創作寄りなイメージが強かったのですが、今作はなんともリアリティーな深みのある作品でした。[19年02月16日 20:01]
>>葛原さん 投稿ありがとうございます!自分主催の創りだすで葛原さんの作品が見れてとても嬉しいです。葛原さんの作品は葛原節がきいていて独特の感触がありますね。安本丹な藤井はGoogle辞書片手にじっくり読み解こうと思います。[19年02月16日 19:54]
>>涼花さん 投稿ありがとうございます!涼花さんの作品は本当に涼花さん(日本語不自由) 『めでたし』の続きを書く、という発想がもうたまらなく好きです。含みを持たせた終わり方も。『生きる』ということを綺麗に飾るでもなくひたすら実直に書き映すような涼花さんの創りだすがやっぱり私はどうしようもなく好きです。[19年02月15日 23:23]
>>ひよこさん 一作目とは随分テイストの違ったテンポの良い作品をありがとうございます!これほど軽快で快活な杖の折り方が……あるでしょうか……?(笑) 2作品とも、頭からラストまですっきり纏まっていて非常に読みやすい作品でした![19年02月15日 16:20]
>>ひよこさん 要素⑥が『杖が折れた』ではなく『杖を折った』であることから、自らの意思で杖を折る老人がいつか出てくるかもなぁと思っていたのですが……これほど力任せで不器用な杖の折り方があるでしょうか。素直になれないお爺さんの行動言動ひとつひとつがいとおしくなるストーリーでした。[19年02月15日 14:29]
>>ハシバミさん 投稿ありがとうございます!今回、参加者が色々と想像を膨らませることのできる問題文にしたくて、ラストシーンを『絵本を道端に置き去りにした』としました。やむを得ず手離す、落としてしまう等色々ありますが、届けたい明確な相手があって届くように置き去りにするというハシバミさんのストーリーも味わい深くて沁みました。一見交わっていないように見えて決して一方通行ではない気持ちのやりとりに胸を打たれます。[19年02月15日 14:16]
>>赤升さん これはwwwはらこめしのおいしいカフェテリア赤升www圧倒的にシリアスな作品が多い中で突如現れたライトな作品に思わず笑ってしまいました。素敵!某天童さんも某の意味なしww投稿ありがとうございました~![19年02月15日 13:43]
>>Takaさん 改めまして、ご参加ありがとうございます!!らてらて創りだすにTakaさんがいてる!! ラテシン時代には創りだすの存在すら知らなかったのですが、らてらてで初めて参加して以来、とても好きな企画です。企画立案段階から携わっておられたようで、数年越しではありますが、こんな素敵な企画を形にしてくださり本当にありがとうございます。 投稿、とても楽しみにしております![19年02月14日 21:31]
>>ちくわさん 高い木の枝に登って降りられなくなってるおばあちゃんは助けなくちゃいけないし、横断歩道を渡れなくて困っている子猫の手は引いてあげなくちゃいけない。結論としてはまぁ、致し方ないですね。多目に見ます。[19年02月14日 21:22]
>>とろたくさん 異様な早さで2作目の投稿ありがとうございます!誰もが知る元祖ウミガメのスープの物語に色や温度が注がれていくようで惹き込まれました。『絵本を置き去りにした』のラストが何ともいえません。[19年02月14日 21:20]
>>残酸さん 投稿ありがとうございます!読みながら鳥肌が立ちました。何度も読み返して深く読み込みたくなる、そんな作品です。残酸さん創りだすの投稿かなりお久しぶりなのでは……嬉しい……(´;∀;`)[19年02月14日 21:16]
高い木の枝に登って降りられなくなっているおばあちゃんを助けたり、横断歩道を渡れなくて困っている子猫を手を引いてあげていると遅れちゃいました。すみません、テヘペロ![19年02月14日 20:03]
>>キャノーさん 早い!w今回の問題文と要素でキャノーさんがどんなテイストの作品を書き上げてくださるのか興味深かったのですが、様々な感情が混ざり合ってラストの描写もゾクッとします。 引っ張ってくれる要素がない分自力で動かさなきゃなので難しいですよね!とはいえ、乱数アプリがNo.32ではなくNo.31を選んでくれたのは良心的でしたw[19年02月14日 13:42]
>>ラピ丸さん こんにちは、ご参加ありがとうございます!恐らく創りだす初のご参加ですよね、嬉しいです(*´∀`)期日までまだ余裕ありますので楽しみにお待ちしてます~![19年02月14日 13:35]
>>夜船さん 今回も早々の投稿ありがとうございます!簡易解説を先に読むと何だかウミガメの解説感が増しますね。(そして自分は本編書き上げてから後で要約する派なので何だか新鮮です) 本編も楽しみにお待ちしております![19年02月14日 13:33]
その日のうちに2作品。早い、早すぎる。とろたくさん、ZenigokEさん、投稿ありがとうございます!!そしてZenigokEさんご参加ありがとうございます(事後感謝) 自分の作った問題文で解説作ってもらえるってそれだけでもう嬉しいものですね。たまらんな。[19年02月14日 00:14]
ハシバミさんこんばんは、お待ちしておりました!ご参加嬉しいです。 要素の数はともかく、癖がないというのはある意味かなり難しいんじゃないかなぁと藤井ニヤニヤしております。へへへ。よろしくどうぞ。[19年02月13日 21:32]
白露さん初めまして、こんばんは!友人さんのお誘いでご参加くださったとのことで嬉しいです!要素投稿のみ大歓迎です(*´Д`*)どなたか存じませんが、ありがとう友人さん!笑[19年02月13日 21:22]
キャノーさんようこそ!キャノーさんならカオスな要素をランダムに託してくるんじゃないかって思ってたら案の定www 普段の創りだすではカオスな要素に四苦八苦しますが、今回はまた別の難しさがあるんじゃないかなと思って皆さんの作品をとても楽しみにしております。よろしくどうぞ![19年02月13日 21:13]
ひよこさんこんばんは!前回に引き続き今回もご参加ありがとうございます(*´∀`)初の創りだす主催でドキワクしてますが、期間中めいっぱい一緒に楽しめたら嬉しいです![19年02月13日 21:10]
わー!ドラミ残酸さんこんばんは!ご参加嬉しいです。残酸さんといえば初回で全要素回収した伝説が印象深すぎますねw 投稿の方も時間が作れそうでしたら、無理のない範囲でぜひ!楽しみにしてます(*´∀`)[19年02月13日 20:58]
アルバスさんこんばんは、初めまして!全然関係ないのですが、知人の飼い犬の名前がアルバスなので、お名前見かけるたびに気になってました(笑) 要素投稿のみのご参加大歓迎です!ありがとうございます(*˘ω˘)[19年02月13日 20:43]
もっぷさんこんばんは!第4回創りだすのもっぷさんの主催者作品を読んで以来すっかりファンなので、参加して頂けてとても嬉しいです…!今回は参加者がストーリーに色づけしやすそうな問題文を狙ってみました。どんな創りだすになるか楽しみです!(先日のスープ、参加できませんでしたがとても美味でした!!)[19年02月13日 20:33]
ようこそようこそごがつあめ。エモいやろ。優柔不断すぎて問題文8回くらい変えたで(^p^) 要素だけの参加も大歓迎です!ありがとう。°(゚´ω`゚)゚。夜ベッドの中で創りだしてください(不眠促進)[19年02月13日 20:26]
この問題文…名作がたくさん生まれそうな予感!久しぶりに参加します!(藤井さん、拙作へのブクマありがとうございました。憧れのお方からブクマいただけるなんて、シェチュ王受賞に匹敵する嬉しさでした…!)[19年02月13日 20:23]
CROWNさんこんばんは、初めまして!企画初参加とのことでとても嬉しいです。°(゚´ω`゚)゚。そしてまさかのはらこめしwwほんの二週間ほどの企画ですがゆるりと楽しみましょう。よろしくどうぞ![19年02月13日 20:19]
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日の暮れた川沿いの道に、どこからともなく響く子どもの泣き声。
土手を散歩していた老人は顔を上げて周囲を見渡した。しかし薄暗くてよくわからない。
決して良いとはいえないその耳を頼りに、老人は声の主を探した。
段々と大きくなる泣き声。
「おい、ぼうず!どこだ?」
「うわぁぁぁーーん!!ママーーーー!!!!」
「こっちか!おーーい!!」
「うわぁぁぁーーーーん!!!!」
草を掻き分けて進んだ先に、泥だらけで泣きじゃくる子どもがいた。
「あぁぁーーん!!痛いよぉーーー!!」
「ぼうず!もう大丈夫だ、怖かったなぁ」
どうやら走っていて土手から転げ落ちたらしく、腕や膝の至るところに擦り傷がある。腕を引こうとすると少年はいっそう声をあげて泣きわめいた。骨折しているのだろうか?老人は手に持っていた杖を渾身の力をこめて折り、添え木代わりにして手ぬぐいで固定してやった[⑥]。
「家はどこだ?歩けるか?」
「ううう……ひっく……」
杖を折ってしまった老人は体を支えるものがなく、ゆっくり歩くことしかできない。擦りむいた膝を引きずり歩く少年との歩幅はぴったり合った。
ほどなくして、日が暮れても帰ってこない少年を探し回っていた母親が息を切らして駆けてくる。
「ハルキ!!あぁ、良かった無事で……!!あぁ……おじいさん、本当にありがとうございます……!!」
息子と同じように目に涙をいっぱいに溜めた母親は何度も何度も頭を下げた。
「どうかお礼をさせてください。あなたが見つけてくれなければ、この子はどうなっていたか……」
「いや、なに、わしは何もしとらんよ」
「いえ!!大事な杖を折ってまでこの子を守ってくださいました。どうか、どうか……」
母親の隣で同じようにぺこりと頭を下げる少年。
老人はこの親子を愛しく思った。
「と言っても私に出来ることなんて何もないのですが……絵本を描くくらいしか……」
「絵本?」
「あっ、私絵本作家でして……。それも趣味の延長みたいなもので、本職ではないんですけれど」
絵本、か。老人は呟き、思案する。
そしてゆっくりと口を開いた。
「そうじゃなぁ……あんたにしか出来ないことがあるかもしれん」
「私に出来ることならぜひ、何でも!!」
「ウミガメのスープの絵本を、描いてくれんか?」
「ウミガメの……スープ……?」
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「トキじーちゃん!今日もスープやって!」
「ほっほっほ。すっかりウミガメのスープのとりこじゃな、ぼうず」
「ぼうずじゃなくてハルキ!」
あの日以来、少年はすっかり老人に懐いていた。
老人が一人暮らしであることを知ったハルキの母親--桜井ユキは、ハルキをつれて月に二度ほど老人の家にやってきた。ハルキはそれを喜び、老人もそれを有難がった。まるで本当の家族のように、そこには温かな空気が流れていた。
老人があの日、桜井ユキに願ったこと。
それは『ウミガメのスープを絵本にして後世に伝えてほしい』
そんな切実な思いだった。
古びたパソコンを老人が慣れた手つきで操作する。
ディスプレイに映し出されたのは、とあるウミガメサイトの跡地だった。
「すごい……こんなに大きなサイトがあったんですね」
「閉鎖されてからも覗きに来る人間は多かったようじゃな。しかし時代が移り変われば、人は忘れてしまう」
「おじいさんは、このウミガメのスープに思い入れが?」
「あぁ。大層な物言いになってしまうが、わしの人生そのものみたいなもんだ。このサイトももう何十年も前に閉鎖されたが……こんなじじいになっても、忘れられんのだよ[③]」
老人は静かに瞼を伏せ、記憶の糸を手繰った。
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[⑦]
私は幼少のころから、少し変わった子どもだった。
皆と同じものを見ているはずなのに、まるで自分一人だけ全く別のものを見ているかのように、周りの子とはいつも意見が合わない。
私はそれを別段悪いことと認識していなかったのだが、次第に人は離れていった。
あいつ、話合わないんだよな。
なに考えてるか分かんねぇよ。
そう笑いながら。
気付けば私は人間嫌いになっていた。
人と違うことがどうしていけないのだろうか。丸が四角に見えたっていいじゃないか。
私は商品基準をクリア出来なかったりんごのように、カゴから弾き出されてしまったのだ。
小学校、中学校、高校。
いくつになっても友達の作り方が分からない私は、やがて一人でいることに安堵するようになった。求めなければ傷つかない。
ただ、心の奥底にはいつもぽっかりと穴が空いていて、それを埋めるべく何かを探さねばならなかった。
そんなとき私を救ってくれたのは……『謎』だった。
なぞなぞ、クイズ、ミステリー小説。『なぜ?』の問いかけにぴったりとはまるピースを見つけたとき、私の心の穴は塞がれたような気がした。私は日常の中にいつも『なぜ?』を探し続けた。大袈裟に聞こえるかもしれないが、私にとって唯一それが生きる手段だったのだ。
そして私は、ウミガメのスープに出会った。
「トキさん、ナイススナイプ!」
「トキさんのスープはやっぱり美味しいですね。最高です」
「トキさん、今度SPお願いできませんか?」
インターネット上で人気を集めた水平思考ゲーム『ウミガメのスープ』。とある大型サイトを知った私は興味本意で参加した。トキというのは吉川時夫--私のことだ。
社会人になってもろくに人間関係を築けなかった私が、初めて人との交流を"楽しい"と思えた場だった。
毎日溢れる謎の数々。『なぜ?』が『なるほど!』に変わる瞬間。
職場で「吉川さん、なんだか最近明るくなりましたね」と同僚に声をかけられた時はとても驚いた。知らぬ間に心は息を吹き返していたのだ。
幼き頃から『なぜ?』を求め続けた私は、いつしか『なぜ?』の向こう側に人間を求めるようになっていた。
だれかと一緒に謎に向き合うことこそが、何よりも私の心を踊らせたのだ。
そうして私は、謎とともに年を重ねた。
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桜井ユキは、そうした老人の想いを受けて『ウミガメのスープ』の絵本を描き続けた。日々そのことだけに全てを注いだ。
以前から彼女を知る人は「急に作風が変わった」「元々あった温かさがなくなってしまった」と嘆き、そして事情を知った人々の批判の矛先は自然と老人へ向かっていった[①]。
わけのわからない老人が桜井ユキの絵本作家人生を狂わせた、と。
インターネットを扱うことのできる老人がその情報を得ることは容易く、そんな批判の数々を目にするたび、老人は自責の念にかられ苦しんだ。
自分の身勝手な過去への感傷で、彼女の大切なものを壊してしまったのではないか。
しかし彼女は全く気にも留めない様子で、謝罪の言葉を口にする老人に首を傾げさえしたのだ[⑤]。
「おじいさん、私にとって何よりも大切なのは我が子です。私はこの子が笑顔でいられることだけを思って絵本を描いてきました。あなたは私の一番大事なものを守ってくれたのですよ[②]」
老人の膝元には、今日も当たり前のようにハルキがすり寄っている。満面の笑みを浮かべて。
「そんなあなたに私が出来ることがあるのなら、それを全うしたい。これ以上の幸せはありません」
彼女の絵本は、主に地元の手作り市やアートイベント、そしてインターネット上で販売された。
出来上がった絵本の数々を彼女は無償で老人に手渡そうとしたが、「それじゃあ意味がない」と老人は毎回イベントに足を運び、客として " 絵本作家の桜井ユキ " から作品を購入した。
老若男女さまざまな人が彼女の絵本を手に取り、ページをめくる。初めはその作風の変化を受け入れられないファンも多数居たが、年を重ねるにつれて次第にその声は変化を見せる。「ウミガメのスープってなに?」「面白そうね」--そんなやりとりを少し離れた所で聞きながら、老人は胸が熱くなった。
幼き頃の自分のように、『謎』に救われる人がいるかもしれない。
人間嫌いの自分が気づかぬうちに人を求めていたように、『だれかと一緒に謎に向き合うこと』で心を再生する人がいるかもしれない。
「トキじーちゃん!スープやろ!」
老人の姿を見つけたハルキが嬉しそうに駆け寄ってくる。
すっかり背の伸びたその体を抱きとめて頭を撫でてやると、老人は思いついたようににやりと口角を上げた。
「よし、じゃあいくぞ。……
ある日、1人の男が空から落ちてきた。
それを見た女が呟いた。
『あー、今日はついてるわ。』
いったいどういう状況なんだろう?
……さぁて。質問を受け付けるぞ」
ハルキはう~んと首を傾げる。そして難しい顔をしたまま、いくつか質問をした。
「男の背中には翼が生えていますか?」
「ふむ、イエスじゃ」
「えぇっ!?んーとじゃあ、男は卓球してますか?」
「ほっほ、イエスじゃのう」
「うっそだぁ!冗談のつもりだったのに!えーとえーと、じゃあ、男の服の中から大量のスーパーボールが出てきますか?」
「よい質問じゃなぁ。イエス!」
「なんだそれ!トキじーちゃん遊んでるだろ!」
かっかっかっと老人は実に楽しそうに笑った。そして頬を膨らませるハルキにそっと耳打ちする。
「実はな、このスープには答えが用意されてないんじゃよ」
「えっ!?だってさっき全部イエスって……」
「そうじゃ。これは『正解を創りだす』と言ってな、お前さんが自分で正解を創るんじゃ」
まるで新しいおもちゃを見つけた時のように、ぱあっと目を輝かせるハルキ。
「正解を?僕が?」
「そうとも」
「翼の生えた卓球してる男の服の中から大量のスーパーボールが出てくる正解を?」
「はっはっは!そうとも!」
次から次へと訪れる客に絵本を手渡す桜井ユキの目には、もはやどちらが子どもなのか分からないくらいに無邪気に笑い合う二人の姿が映っていた。
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いつか人は忘れてしまう。
楽しかったことや、哀しかったことを。
歩き慣れたはずの道や、大切な人のことさえも。
" その時 " がくることを、老人はわかっていた。
「これと、これと……あと、これも」
「おじいさん、今日はずいぶんと買い込みますね。持てますか?」
「持てるさ。わしも年々足腰が弱くなって、いつまでこうしていられるかわからんからな。買える時に買っとかんと」
「何言ってるんですか、まだまだ元気でいてもらわなくっちゃ。それに、最近私の周りでもウミガメのスープで遊ぶ人が増えてきたんですよ」
「本当か?そりゃあ、あんたのおかげだな」
「ふふ。私にウミガメのスープを教えてくれたおじいさんのおかげですよ」
毎年秋に開催されるアートイベントに老人は今年も足を運んだ。もうすっかり常連客だ。
桜井ユキは、老人の選んだ絵本を一冊一冊大事に紙袋に入れた。
「最近はね、ハルキがすっかり『創りだす』にハマっちゃって。ほんっとおかしいんですよ。女がマンホールにはまってたり、親方が登場したり、もうわけわかんなくて」
「奴は発想力がずば抜けとるなぁ。さぞかしインパクトのある正解を創りだしとることじゃろう」
肩を揺らしておかしそうに笑いをこらえる彼女も、まるで子どものように無邪気な瞳をしていた。
年齢制限のない遊び。道具も要らず、どこにいても出来る。
老人はずっしりと重い紙袋を受け取り、礼を告げた。
「気をつけて帰ってくださいね」
「あぁ。あんたにもらったこの杖があれば転ぶこともないだろう」
使い込んでいながらも綺麗に磨かれているその杖を軽く掲げ、老人は笑った。
「そうじゃ。あんたにひとつ、スープをやろう」
「えっ、私にですか?嬉しい!」
「次に会うまでの宿題スープじゃ、いくぞ。……」
その老人は、毎年必ず絵本を買う。
年々老いていく体を杖で支えながら「来年はもう歩けないだろう」と悟った老人は
その年に買った生涯最後となる絵本を、道端に置き去りにした。
一体なぜ?
ぎっしりと絵本の詰まった紙袋を手に、老人はゆっくりと歩いて駅まで辿り着いた。
おもむろにポケットから取り出したのは小さなメモ帳だ。
そこには老人の名前、住所、桜井ユキのこと、ハルキのこと……様々な情報が震える文字で綴られている。
これは、本当に自分の書いた文字だろうか?
老人はさらにページをめくった。
お気に入りだったウミガメ問題。
ハルキと遊んだ創りだすの問題。
断片的な作りかけの問題。
……これは、本当に自分の書いた文字だろうか?
次から次へと失われていく記憶。
瞬く間に指の隙間からこぼれ落ちていく記憶。
ここ数年はイベント会場へ辿り着くことさえ困難を極めていた。
ふと顔を上げた老人は辺りを見回し、まばたきをした。
少しずつ音が消えていく。
絵本の詰まった紙袋を見て、はっとする。
(……そうだ、)
老人は再び歩き出した。
歩き慣れたはずの道は、ひとつ角を曲がるたびに見知らぬ土地のように映る。[④]
脳裏に浮かべた大切な人たちの顔が霞んでいく。
「……謎はいつも、日常に溢れていたな。」
自販機の下に。
駅のホームに。
波打ち際に。
何でもない道端に。
老人は、ありとあらゆる場所に絵本をそっと置いた。
震える足で、使い古した杖にすがりながら、帰る場所もわからないまま、ただひたすらに歩いて絵本を置き続けた。
そしてすっかり軽くなった紙袋を畳むと、それをぎゅっと抱きしめた。
人はいつか、忘れてしまう。
大切なものを、
大切だったことすらも、忘れてしまう。
もしもだれかが、この謎を手にしてくれたら。
私の大切なものを、拾い上げてくれたら。
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「トキじーちゃん、なんで絵本を道端に置き去りにしたのかな……」
「……きっと、それが誰かを救うことを知っていたからよ」
その年に桜井ユキのもとに届いた手紙やメールの数々には、どれも同じようなことが書かれていた。
『仕事の残業帰りに踏切待ちをしている時、遮断機のポールのそばに落ちていたこの絵本に気がつきました』
『学校サボって川沿いで本を読もうと歩いてたら、草むらの中にこの絵本を見つけたんだ』
『飼い犬が死んじゃったんです。いつもの散歩コースを一人で歩いてたら、歩道橋の脇にこの絵本があって……』
『 気がつけば、夢中になっていました 』
「でもさぁ、ちゃんと本人からファイナルアンサーもらえないことには未解決のままだよね」
「そうね。天国で会えるように、私たちもがんばって生きなきゃね」
「……うん、そうだね。」
火葬場から立ち昇る煙。
その先には、突き抜けるような青空が広がっていた。
- fin. -
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(作中引用:ラテシンより)
【正解を創りだす】落ちてきた男【ウミガメ】
http://sui-hei.net/mondai/show/5865
↑創りだすの原型となったこの問題、なんと2012年に出題されたものでした。しかも元々は罰ゲームだったそう。
今回主催するにあたってラテシンwikiを覗いていたところ、この歴史を知って驚きました。そして問題ページに飛んでみたらもうめちゃくちゃ。まさに罰ゲーム。
そんな弾け飛んだ要素を当たり前のように回収して書き上げられた解説の数々。
創りだすという企画が生まれた瞬間はこんな遊び心に溢れていたんだなと、何だか笑ってしまいました。
全てはここから始まった。元祖創りだすにリスペクトを込めて!
そしてこれからも続いていくようにと願いを込めて。
創りだすを主催できて幸せでした。
最後までお付き合いいただいた皆さん、本当にありがとうございました。
自分が正解した問題・出題者への賛辞・シリーズ一覧・良い進行力など、基準は人それぞれです。
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Goodって?
「トリック」「物語」「納得感」そして「良質」の4要素において「好き」を伝えることができます。
これらの要素において、各々が「良い」と判断した場合にGoodしていきましょう。
ただし進行力は評価に含まれないものとします。
ブクマ・Goodは出題者にとってのモチベーションアップに繋がります!「良い」と思った自分の気持ちは積極的に伝えていこう!