20XX年、繁栄を極めたAI技術はついに人型ロボットの個人所有を可能にした。
通称『ナナミ』と名付けられたそのアンドロイドは、優秀な演算能力と人間らしい柔軟な思考能力とをあわせ持ち、どのような状況においても最速かつ最善の選択をすることができる。
その利便性から徐々に一般家庭への普及も進み、カオルも『ナナミ』を購入した1人であった。
そんな『ナナミ』たちは月に一度、本社の建物に集められて試験を受ける。システムに劣化や故障がないか確認するために、大量の問題をいかに速く処理できるかを計測するのだ。
カオルの家の『ナナミ』は同型のロボットの中でも優秀な成績を維持していたが、ある月を境に底辺に近い結果を出すようになってしまった。
その報告を聞いたカオルが嬉しそうにしているのは、一体何故だろう?
久々の出題は渾身の一杯。
ナナミの成績不振は、ナナミが人間らしさを獲得したことによって発生していますか?
ある意味YES!ですが、心を持ったことによるバグとかではないのです。 [良い質問]
カオルの所有するナナミの結果を見た本社は、そのナナミに悪い印象を抱きますか?
おそらく NO!本社からしても理由は明白なのです [良い質問]
「底辺に近い結果を出す」ことがナナミにとって最善の選択であったと言えますか?
NO!ナナミは成績の如何は気にしていなかったと言えるでしょう。
ナナミは早く家に帰ってカオルに会いたいがために、試験をパスできるラインを超えたらさっさと切り上げてしまうのですか?
NO!でも微笑ましい!
試験では正答率ではなく解く速さが重要視されますか?
YES寄りのYES NO!人工知能の試験において、全問正解は当然なのです! [良い質問]
ナナミが自分の意思でカオルと同じ名字を書きましたか?
YES!!nice!!もしかして、もうまとめられちゃったりするのです!? [良い質問]
名前を書き直して試験を最後まで解けなかったりしますか?
想定としては NOですが、32,33を踏まえていればそれでも成り立つのです! [良い質問]
カオル家のナナミは余計な数文字を書いたために回答が遅くなりましたか?
YES!!名字を書いたために解き終わるのがわずかに遅れ、成績が落ちたのです!問いかけに合うようにまとめられますか? [良い質問]
カオルの名字は画数が多いので他のナナミよりも名前を書くのに時間がかかり、その分解ける問題数が減ってしまいますか?
解説では他のナナミは名字を持たないのですが、YESでも成り立ちます!同上でまとめられますか? [良い質問]
名前書き直してタイムロスなんて、さてはプロポーズを受けてくれる気があるな?と思って嬉しいですか?
YES!!大正解!! [正解][良い質問]
参加者一覧 9人(クリックすると質問が絞れます)
ある日カオルに婚約を申し込まれた『ナナミ』は、毎月行われる筆記試験で自分の名前に添えてカオルの名字を記すようになった。
コンマ何秒を争うロボットの試験においてそのわずか数秒は命とりだが、『ナナミ』が結婚の申し出を受け入れてくれたと感じたカオルは歓喜した。
◇◇◇◇◇◇◇◇
アンドロイドと人間は何が違うのか?
それは心を持つかどうかである。
では人間がアンドロイドに恋をするのは、おかしいことなのだろうか?
篠崎カオルの思考はいつもこの疑問に行き着いて止まる。その名前や中性的な容姿からよく女性に間違われる彼は自分の優柔不断な性格に悩んでいたが、その恋心だけは疑いようもなかった。
『ナナミ』を購入した数ヶ月前は、まさかこんな感情を抱くことになるとは思いもよらずにいた。職業柄効率的な事務処理が必要とされる彼にとって、その全てを的確にこなすロボットに興味を惹かれただけだった。
だが一つ屋根の下で毎日を共に過ごすうちに、いつしか彼女をただの鉄の塊だとは思えなくなっていった。いつでもカオルを助けてくれるその頼もしさに、時折見せる柔らかな笑顔に、それがプログラムに過ぎないことはわかっていても、胸の高鳴りを抑えられなかった。
毎月ナナミは試験を受けるためにカオルの家を離れて東京へ向かう。アンドロイドがわざわざ筆記試験なんて前時代的なと思うものの、いかにもロボットらしい演算処理に加えて、専属の係員が直接視認して歩く、話す、書くといった人間らしい動作に異常はないかをチェックするというのだから、あながち非合理的でもないのだろう。
しかしそんな一時の留守でさえ、カオルの心をかき乱すには十分だった。
だからある時カオルは、思いの丈をナナミに伝えることにした。夕飯の後に話があると改まった様子の彼を見て、彼女は怪訝そうな表情を浮かべる。
「あなたのことが好きです。僕と結婚してください。」
カオルらしくどもりながらもハッキリとそう口にした。きっと彼女は困ったように断るのだろうと、心のどこかで思いながら。
気まずい沈黙の後、ナナミはゆっくりと口を開く。
「……すみません、私は明日、月例試験に行かなくてはいけないので、今日は失礼します。」
どこまでも無機質なその声は、彼女が閉めたドアの音は、2人の埋めがたい距離を冷たく示すようだった。わかってはいても、拒絶はやはり身にこたえる。カオルは肩を落としながら床についた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「E判定!?」
試験を終えて帰宅したナナミからの報告に、カオルは耳を疑った。
演算処理能力を中心とした月例試験においては、正答を出すことは大前提とされ、その速度を計測してシステムに不具合がないかを調査する。アンドロイドらしいハイレベルなテストでもカオルの家のナナミ・・・『ナナミ J20557』は優秀な成績を収めており、全国に数万台いる『ナナミ』の上位10%にあたるA判定から漏れたことはなかった。それなのに…
「E判定だなんて、最底辺に近い結果じゃないか、まさか、誤答を…」
「していません」
「じゃあ、演算能力が…」
「落ちていません」
「そ、それなら筆記スピードの劣化…」
「そのままです」
「な、なら一体、どうしていきなり成績が落ちたんだろう?」
「それは」
彼女はそこでふいと目を逸らした。
「それはきっと、名前が変わったからだと思います。」
「ん、名前?」
訝しげに首をひねるカオルに、ナナミは一枚の紙を差し出した。
それは月例試験の答案用紙だった。採点後すぐに返却された答案を眺めていたカオルの目は、ふと一点に釘付けになる。
『ナナミ J20557』
もはや見慣れた機体名に通し番号。しかしその横には見慣れぬ、いやむしろ見慣れすぎた二文字が記されていた。
『篠崎ナナミ J20557』
怒涛の進歩を遂げたAIによる試験はコンマ何秒を争うものだ。確かに無駄な漢字なんて書いていたら、一気に抜かれるのも当然と言えよう。
でも、これって……
「すみません、余計なことをしてしまいました。」
下を向くナナミに余計だなんてと紡ぎかけた声は、「でも」という彼女の言葉にかき消された。
「でも、仕方ないですよね。だって…」
「だって私たち、夫婦なんですから。」
はにかんだように笑うナナミは、他の誰よりも人間らしかった。
僕はこの笑顔を、守りたいと思う。人か機械かなんて関係ない。誰が何と言おうと僕が幸せにしてみせる。
きっと大丈夫だ。だって、
愛に不可能はないのだから。
自分が正解した問題・出題者への賛辞・シリーズ一覧・良い進行力など、基準は人それぞれです。
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Goodって?
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これらの要素において、各々が「良い」と判断した場合にGoodしていきましょう。
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ブクマ・Goodは出題者にとってのモチベーションアップに繋がります!「良い」と思った自分の気持ちは積極的に伝えていこう!