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今年高校3年生になったマユミは、友人のカナコが
「今回めちゃくちゃ頑張ったんだよ~!」と言ってテストの答案用紙を広げたのを見て
数年前、自分がゴミ箱を漁って探していたものはそもそも初めから無かったのではないか と考えた。
マユミはなぜ、ゴミ箱を漁ったのだろうか?
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解答
友人が「捨てた」と言った答案用紙を探すため
解説
「ナッちゃん、見て!今回すごい点数良かったんだ~!!」
中学1年生の夏、放課後。隣のクラスの親友のナツコにマユミはテストの答案用紙を広げて見せた。たくさんの赤マル、右上には94点の文字。
「……すごいねぇ!マユちゃん」
「ナッちゃん何点だった?」
「ええとね……78点!今回難しかったよ~」
「やったー!ナッちゃんに勝てたー!!」
無邪気に喜ぶマユミに、ナツコはへへへと笑う。
「マユちゃん、勉強頑張ってたもんね」
「ナッちゃんに負けられないからね~。ねぇねぇ、答案用紙見せてよ」
えっ、と一瞬ナツコはうろたえる。そして申し訳なさそうに頭を掻いた。
「実は捨てちゃったんだよね~、あんまり点数よくなかったから」
「ええっ!そうなの?でも確かにナッちゃんが78点って珍しいよねぇ。いつももっと点数高いのに」
「今回の範囲、苦手だったみたい」
そして部活へ向かうナツコを見送ったマユミは、やがて人がいなくなると、こっそり教室のゴミ箱を探った。
ナツコの答案用紙が気になったのだ。
頭のいいナツコとマユミは、小学生の頃からテストで高得点を叩き出していた。しかしナツコの方が点数が高いことの方が多かった。
今回ばかりはマユミは自信があった。そしてその手応え通り、いつにも増して高得点を叩き出した。クラスの皆からも尊敬された。
がさごそ、がさごそ。
ナツコの答案用紙は見当たらない。
(掃除の時間に一旦ゴミ回収されちゃったとかかな……?)
マユミは探すのを諦めた。そして、改めて自分の答案用紙を見る。
94点。誇らしかった。
月日は流れ、二人は中学を卒業。それぞれ別の進路に進み、マユミはいっそう勉学に励んだ。
そして、カナコという友人ができた。彼女も頭がよく、努力家だった。
「マユミ、頭いいよねぇ」
プライドの高いカナコがマユミをライバル視していることは、マユミにもひしひしと伝わっていた。
ある日のこと。
中間テストが返却され、担任の教師が「今回平均点低かったぞー。65点だ」と告げた。
授業終了のチャイムが鳴り響くなり、カナコはマユミのもとへ駆けてきた。
「マユミ!テストどうだった?」
「え、まぁそこそこ……。カナコは?」
「それがね、めっちゃ良かった!!」
嬉々として答案用紙を広げるカナコ。たくさんの赤マル、右上には91点の文字。
すると周りにいた生徒が振り返り、
「うおっ、すげーじゃん」
「カナコちゃんあったまいい~」
と口々にカナコを褒めた。
「……すご!平均65点なのにめっちゃいいじゃん」
「今回マジで頑張ったからね~。で、マユミは?」
「あー……84点」
「っしゃ!勝ったー!!」
「お前らマジ頭いいなー」と周りの生徒は感嘆の声をあげ、カナコの答案用紙を覗き込む。
誇らしげなカナコに「ちょっとトイレ行ってくるね」と告げ、マユミはその場を離れた。
マユミの机の中には、94点の答案用紙があった。
カナコは自分がとびきり良い点数を取ったとき、マユミの答案用紙を見たがる。帰り道に答案用紙を見比べあって、ここはこうだとか振り返るのがお決まりのパターンだ。
別にそれは良かった。いい復習にもなる。
だが今回は別だ。
咄嗟に嘘をついてしまった。
(……テスト、失くしたことにしようかな)
そう考えたところで、マユミの思考は数年前の風景をとらえた。
ぼんやりとナツコの顔が浮かぶ。
『捨てちゃったんだよね』
彼女の答案用紙は、彼女の手元にあったのではないか?
ちょうど今の自分と同じように。
とびきりの高得点を叩き出していたのではないか。
つまり、あの日自分が漁っていた教室のゴミ箱の中にナツコの答案用紙なんてそもそも無かったのではないか。
授業開始のチャイムが鳴り響く。
はっと顔を上げたマユミは、慌てて教室へ駆けていった。
物語:6票納得:2票
物語部門
とかげ>>
数年前にゴミ箱を漁って探したものは、初めから無かったのではないか……派手さはないけれど、奇妙に惹かれる意味深な疑問。日常にある些細なエピソードかもしれないが、それを問題にすることで、物語の受け取り方がまた変わるように感じた。