「にせウミガメのスープ」のGoodトリック・物語・納得で良かったら1票分。全体評価で特に良かったら3票分Goodができます。
「すみません。これは本当にウミガメのスープですか?」
「はい……ウミガメのスープに間違いございません。」
女は首をかしげた。
思っていたウミガメのスープと全然違う。
――そうか、昔食べたスープはウミガメじゃなかったんだ……
味の違いがしめす真実に思い至り、彼女の顔から思わず笑みがこぼれた。
以来、人生がちょっぴり楽しくなったそうな。
一体、何があったのだろう?
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短い解説
女は、それまで水平思考ゲームを知らなかった。
思いがけず「ウミガメのスープ」とめぐりあって感激!
すっかりはまって人生が少しばかり楽しくなったのだった。
私の物語
数年前のとある夜。
自宅でひとり、自分の人生をふりかえっていると、小さい頃に遊んだコンピュータゲームが気になって仕方なくなった。
(なぜ人生をふりかえっていたのかは重要ではない。大人は突発的に幼少期の思い出にひたりたくなるものなのだ。)
しかし調べようにも「こんなゲームがあったな」というおぼろげな記憶しかなく、タイトルもストーリーも覚えていない。
かろうじて思い出せるのは、ゲームの舞台がルイス・キャロルの不思議の国のアリスをモチーフにした遊園地だということ。遊園地の屋台で「ウミガメモドキ」のキャラクターが「ウミガメのスープ」を売っていたのが、妙に印象に残っている。
私は手始めにスマートフォンで〔アリス 遊園地 ゲーム〕と検索してみた。
「うーん、ないなあ」
それらしきものはヒットしなかった。
〔90年代後半 PC用 ゲーム〕〔ウミガメモドキ ゲーム〕……
手当たり次第に検索ワードを変えてみるが、一向に見つからない。相当マイナーなゲームみたいだ。
これは時間の無駄ですね、諦めよう。
私は潔く電気を消してベッドに潜った。なくした思い出に執着しないこともまた大人には大切なことだ。
◆
しかし眠りに落ちる間際になって、また別の興味が頭をもたげた。
「ウミガメのスープっておいしいのかな……」
どんな味がするのだろう。子牛で代用するくらいだから牛肉のような食感だろうか。海の生き物だし塩味強めかな。
料理の画像なんて見たら睡眠が阻害されると思ったものの、やはり気になりはじめたら止まらない。暗闇のなか、再度スマートフォンを手に取り〔ウミガメのスープ 〕とサーチ。
すると思いがけないことばが。
「ウミガメのスープとは、推理ゲームの一種です。」
……えっ、なんだろうこれ?
水平思考? 推理ゲーム? 思ってたのと違う。
私ははげしく興味をひかれ、詳しく書いてありそうなページをクリックした。
✳︎✳︎
ある男が、とある海の見えるレストランで「ウミガメのスープ」を注文しました。
しかし、彼はその「ウミガメのスープ」を一口飲んだところで止め、シェフを呼びました。
「すみません。これは本当にウミガメのスープですか?」
「はい……ウミガメのスープに間違いございません。」
男は勘定を済ませ、帰宅した後、自殺をしました。
何故でしょう?
✳︎✳︎
「むむ、なぜだろう」
不思議な問題に私は首をかしげた。胸が高鳴りはじめる。
思い返せば、大した楽しみもなく味気ない我が人生(趣味は寝ること)。
しかし唯一ミステリーは好きだった。文章を読むこと自体はどちらかといえば苦手なのだが、「なぜ?」「どうやって?」という謎めいた話が好きだったのだ。探偵が「徐々に真相に迫っていく」感覚も好きだった……
私は爬虫類の味なぞすっかりどうでもよくなり、男が自殺した理由に思いを巡らせた。
◆
やがて――
「そうか、昔食べたスープはウミガメのスープじゃなかったんだ…… 人肉だったんだ!」
衝撃の解説に震えながらも、気づけば感激でにやけ顔になっていた。
味の違いがしめすおぞましい真実。
問題文に描かれない壮絶な過去。
そして、男が自殺せざるを得なかった理由の圧倒的納得感……!
「すごいものに出会ってしまった。こんなにわくわくしたのはいつぶりだろう!?」
もっともっと! と私の脳みそは「ウミガメのスープ」を渇望した。
……そして、その欲求が満たされるまでにそう時間はかからなかったのだ。
なぜ? ――数秒後には"ラテシン"にたどりついたからである。
それが私と「ウミガメのスープ」の出会い。
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物語部門
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色々な意味で王道な作品。チャーム感が良いと思います。