「9年目の真実」のGoodトリック・物語・納得で良かったら1票分。全体評価で特に良かったら3票分Goodができます。
今から9年前の春、ある女が死んだ。
名前は夏子。自殺とみられた。
彼女がなぜ死を選んだのか、誰もその理由に心当たりはなかった。
遺書や日記も見つからなかった。
唯一の手がかりは彼女の手帳から発見された、
2019年2月10日
という走り書きだ。
皆そんな未来の日付に思い当たることはなく、謎は深まるばかり……
そして時は流れ、今日は2019年2月10日。
女の家族は9年越しに彼女の死の真相を知り、戦慄することとなった。
さて、どうして夏子は死んだのだろう?
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解説
夏子は15年前の「今日」発生した殺人事件の犯人。
事件後、時効完成の日付をメモしてその日を待ちわびていたが、2010年の時効廃止に絶望し、耐え切れず自殺した。
物語
2019年2月10日。
……今日はあの子の手帳に書かれていた日だわ……
冬美は夕食の支度をしながらぼんやりと思った。
長女の夏子がこの世を去ったのは2010年4月28日。まだ、24歳だった。
夫は「仕事疲れで鬱状態だったのかもしれない」と、自殺の理由を推測していたが、冬美に言わせればそんな事はありえなかった。
あんなに頑張り屋のあの子が。
憧れの仕事に就いてあんなに生き生きとしてたあの子が。
仕事を苦に自殺するなんてとても信じられない……
冬美は意識せずともこの9年ずっと「2019年2月10日」に囚われてきた。
そんな予言じみた事があるわけないと思いながらも、何かがわかるのではないかというすがる思いでこの日を待っていたのだ。
◆◆
同日19時、夕飯の席にて。
冬美はいつものように夫と次女・秋菜と食卓を囲んだ。
テレビはニュース番組をやっていた。
──○○区の路上で高校生が殺害された事件から、今日で15年です──
「あ、これ被害者、お姉ちゃんの高校の人だったよね」
秋菜がテレビを指差した。
そんな事件もあったわね、と冬美もテレビに目を向ける。
確か予備校帰りで通り魔に刺されたんだっけ。
現場はうちとは反対方面だし、夏子とは違うクラスの子だったからそこまで気にかけてなかったけれど。
──当時高校3年生だった花園優さんは、帰宅途中に何者かに後ろから──
「まだ人生これからだったのになあ……」
ポツリと夫がつぶやく。無論、自分の娘に重ねあわせた発言に違いない。
冬美も思う。きっとこの被害者の家族も「なぜ死んでしまったの」という思いを抱えて生きてきたんだろう……
私たちと同じように。
──事故発生当時は15年で時効でしたから、本来は今日時効が完成するはずでした──
スタジオのコメンテーターが解説している。
冬美は肉じゃがをつまみながら考えた。
……時効。ご家族はさぞ無念だろう。
逆に犯人にとっては2019年2月10日という日は待ちわびた日だったわけね。
あら?でも確か時効って……
──その後、2010年4月27日の法改正で公訴時効が廃止されました。そのため現在でも──
そうそう。時効って廃止されたのよね。
日本の逃亡中の犯罪者達はさぞかし絶望したことだろう。2010年4月27日……
冬美の箸が止まる。
それって、夏子が死ぬ前日じゃない……
冬美の脳に嫌な考えがむくむくと湧いてきた。
システム手帳のメモページに残されたあの走り書き。
自殺の直前に書かれたものなのかしら?
そうでなかったとしたら。
本当はもっとずっと前、そう、2004年の殺人事件の後に、その時効成立日を忘れないようにメモしたものだとしたら……?
時効廃止のニュースを聞いて絶望して自殺……
……これはまるで。犯人の行動ではないか……
そこまで考えて、冬美は自らの思考を打ち消した。
そんなわけないじゃない、考えすぎよ。偶然よ偶然。
胸騒ぎを押し殺してテレビ画面に注目していると、白黒の映像に切り替わった。店舗の駐車場らしきぼんやりとした映像だ。
──現場付近の防犯カメラの映像です。画面奥の歩道に、現場から立ち去る犯人と見られる人物の映像が写っています。映像解析技術の向上によって鮮明になり、新たな情報として先月警視庁が公開したものです──
家族の目は映像に釘付けになる。
鮮明になったとはいえ性別もはっきりしないようなぼやけた映像だが、それでも冬美にはわかった。
間違いない。この特徴的なバタバタとした走り方。夏子だ。
「ねぇ、お姉ちゃんが死んだのってもしかして……」
秋菜が震える声でつぶやいた。どうやら気づいたらしい。夫も顔面蒼白だ。
家族は戦慄した。ついに思い至った死の真相に。
トリック:2票物語:10票納得:6票良質:39票
全体評価で良質部門
ドタオ>>
トリック/物語/納得感、3部門でGoodしました!分かりやすく非っ常に謎を感じる物語導入、チャームとして設定された手がかり「自殺(何かの被害者としての死?)」「手記上の日付」「9年越し」、それらを元に推理すること自体が先入観やトリックを参加者に体感させ(ウミガメのスープもそうだったでしょ「なんでスープ飲んだくらいで自殺すんの?質問して確認したりもして…」みたいな)、隠された答えにたどり着く…。元祖ウミガメのスープ問題と同じくコピペレベルになる問題だと思います!
休み鶴>>
問題文の凄まじいチャームと、それに呼応する驚愕の真実。元祖にも引けを取らない名作です。
Hugo>>
いろんな人に見てもらいたいと思いました。これだけ緻密で情感を煽る問題でありながら、きちんと解けるようになっているというのが驚きです。是非参加したかった。
トリック部門
ドタオ>>
物語の真相が明らかになるまでの流れがそのままトリックになってて、まさに元祖ウミガメのスープ系問題になってて鳥肌!
物語部門
ぺてー>>
ひとことコメントの目標が見事に達成されています!
質問を重ねることで、恐ろしい真相が少しづつ姿を表します
ドタオ>>
YesNoで答える質問を投げかけることによって、徐々に”物語が明らかに”なっていくんですね!まさに元祖ウミガメのスープ、久しぶりにあの感覚を思い出しました
納得部門
ドタオ>>
物語を解く手がかりとされている「自殺」「9年越し」「手帳の日付」を元に質問をしていく、この流れ自体が物語のトリックを暴く楽しさになっている高クオリティのウミガメ問題となっていますが、問題の真相を暴いたときの恐怖が納得感の高さを代弁してます…!!