財布を落としただけなのに

買い物終えた帰り、カメコは自分の家のドアを見て叫んだ。

「きゃあ！？　鍵が……！」

出かける前、確かに施錠した鍵穴が乱暴に壊されて、ドアが勝手に開くようになってしまっていたのである。
恐る恐るドアを開いて外から家の中の様子を見れば、明らかに誰かが侵入をした形跡が見える。
空き巣である。

恐怖で青ざめるカメコだったが、とにかく警察に通報しようとスマホを出した時、ふと、ドアから少し外れた場所に何かが落ちているのに気がついた。
それは財布だった。
自分のものでも家族のものでもない、と、いうことはまさか犯人の……？

カメコは拾った財布の情報とともに警察に通報を入れた。
対応した警官がカメコに指示を出す。

「現場はそのままで、何も手をふれないでいてください。すぐに警官を向かわせますから、彼に財布を渡してください」

カメコは指示通りに動いた。
間もなく、財布に入っていた免許証からカメオの存在をつきとめ、空き巣の疑いでカメオを任意同行。
観念したのか、カメオは犯行を認め（これが初犯だったので、当然カメオの情報は警察の犯罪記録にはない）逮捕に至ったのである。