必要な人材

ある大陸にはいくつもの国があり、それらが互いに領土をめぐり対立し、たびたび戦争が起きていた。
そのうちの一つの国「トルトゥーガ帝国」は急速に軍事力を強化し、周辺諸国に侵攻。その全てを滅ぼし、自国の領土に編入した。
こうして、領土をめぐる争乱の時代は終了し、「トルトゥーガによる平和」の時代となった。
その後、新たに獲得した領土や富をどう分配するか、功労者である騎士・軍人の重要職登用をどうするかが話し合われた。
皇帝は言った。
「騎士や軍人には最低限の富を分配するだけでよい。領土や、要職の官位は全て、これまで軍事以外に携わっていた者らに与えよ。」
これに対し、周囲の大臣たちが口々に反論した。
「陛下、それではあまりに不公平です。」
「さよう、これまで、戦果に応じて要職の官位を与えることになっていたはずです。」
大臣らの言葉に、皇帝はこのように返した。
「これまで、我が国は戦いに勝ち、他国の富を奪い、それを民に配分してきた。だからこそ、手柄をたてた騎士・軍人にそれ相応に報い、更なる戦果を上げてもらう必要があった。しかし、すべての敵を滅ぼした今、最新鋭の武器は用済みとなり、戦略・智謀に長けた武将は、もはや必要なくなった。いや、むしろ今後の憂いにしかならない。
　今後求められるのは、国家の安定した運営だ。戦いが繰り広げられる中、食糧を数え、物資を運搬し、人々の病気を治し、焼け落ちた建物を復興した・・・そういう影の尽力者こそが、これからの時代の礎となる。」

おしまい