私が泣いているのは、
骨に混じって、ネジが出てきたからである。
状況を説明しなさい。
ーーーーーーーーーー
Ladies & gentlemen!!!
みなさま、正解を創りだすのお時間となりました。
今宵、司会を務めさせていただきます、弥七です!^ ^⛄️💠
前回の創りだすはコチラ→https://late-late.jp/mondai/show/17535
年内最後の創りだすがやってきました。
師走を迎え、慌しい毎日かと思いますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか??
(そういえば去年のこの時期も私は創りだすの司会をしていたような…? 12月と私に、一体何の縁があるのでしょうね( ̄▽ ̄;)不思議です。
4年連続だってよ、嬉しいね🙌🙌)
ととと、前置きはこれくらいに。
要素設定に参りましょうか^ ^
☆気になる今回の要素は…コチラ!
①投稿フェーズで選ばれた[要素10個中5個以上]を使用すること。
②文字数制限は『なし』。
③『簡易解説』の作成を推奨する。
以上となります。投稿フェーズが終わったらまた告知するのでご心配なく!
それでは、いつものルール説明へ、GO!!
★★ 1・要素募集フェーズ ★★
[12/15(木)21:00頃~質問が50個集まるまで]
もしくは12/16(金)6:00を過ぎるまで
まず、正解を創り出すカギとなる質問(要素選出)をして頂きます。
☆要素選出の手順
1.出題直後から、YESかNOで答えられる質問を受け付けます。質問は1人4回まででお願いします。
2.皆様から寄せられた質問の数が50個に達すると締め切りです。
選出は全てランダムです。今回も、ある程度の矛盾要素をOKとします。
選ばれた質問には「YES!」の返答とともに『[良い質問]』(=良質)がつきます。
※良質としたものを以下『要素』と呼びます。
※条件が狭まりすぎる物は採用いたしません。
[矛盾例]田中は登場しますか?&今回は田中は登場しませんよね? →今回もOKとします。例は今回も田中さんで譲りません。
[狭い例]ノンフィクションですか?(不採用)
[狭い例]登場キャラは1人ですか?(不採用)
[狭い例]ストーリーはミステリー・現実要素ものですよね?(不採用)
要素が揃った後、まとメモに要素を書き出しますのでご活用ください。
★★ 2・投稿フェーズ ★★
[要素選定後~12/26(月)23:59まで]
要素募集フェーズが終わったら、選ばれた要素を取り入れた解説を投稿する『投稿フェーズ』に移行します。
各要素を含んだ解説案をご投稿ください。
らてらて鯖の規約に違反しない範囲で、思うがままに自由な発想で創りだしましょう!
※過去の「正解を創りだす(らてらて鯖版・ラテシン版)」もご参考ください。
ラテシン版:sui-hei.net/mondai/tag/正解を創りだすウミガメ
らてらて鯖:https://late-late.jp/mondai/tag/正解を創りだすウミガメ
☆作品投稿の手順
1.投稿作品を、別の場所(文書作成アプリなど)で作成します。
質問欄で文章を作成していると、その間他の方が投稿できなくなってしまいます。
コピペで一挙に投稿を心がけましょう。
2.すでに投稿済みの作品の末尾に終了を知らせる言葉の記述があることを確認してから投稿してください。
記述がない場合、まだ前の方が投稿の最中である可能性があります。
しばらく時間をおいてから再び確認してください。
3.まずタイトルのみを質問欄に入力してください。
後でタイトル部分のみを[良質]にします。タイトルは作品フェーズが終わり次第返信させていただきます。
4.次の質問欄に本文を入力します。
「長文にするならチェック」がなくなりましたので、主催が長文許可を忘れてなければそのまま質問欄にて改行込みでのコピペが可能です。
つけ忘れていた場合は、お手数ですが適当な文字を入力した後に質問の編集画面に飛び、作品をコピペしてください。
5.本文の末尾に、おわり、完など、終了を知らせる言葉を必ずつけてください。
6.投稿作品に対する簡易解答の作成を推奨します。
創りだすに投稿される物語は「ウミガメのスープの解説文」です。もしこの作品が実際に出題されたときを想像して、簡単な「答え」を作ってみましょう。
※作品のエントリーを辞退される際は、タイトルに<投票対象外>を付記して下さい。
★★ 3・投票フェーズ ★★
[投票会場設置後~12/31(土)23:59まで]
※作品数多数の場合や司会者の判断により、期間を延長する場合もございますのでご了承ください。
投稿期間が終了したら、『投票フェーズ』に移行します。
お気に入りの作品、苦戦した要素を選出しましょう。
☆投票の手順
1.投稿期間終了後、別ページにて、「正解を創りだすウミガメ・投票会場」(闇スープ)を設置いたします。
2.作品を投稿した「シェフ」は3票、投稿していない「観戦者」は1票を、気に入った作品に投票できます。
それぞれの「タイトル・票数・作者・感想」を質問欄で述べてください。
また、「最も組み込むのが難しかった(難しそうな)要素」も1つお答えください。
※投票は、1人に複数投票でも、バラバラに投票しても構いません。
※自分の作品に投票は出来ません。その分の票を棄権したとみなします。
※投票自体に良質正解マーカーはつけません。ご了承ください。
※投票対象外作品のみを投稿されたシェフに関しても、3票の投票権があります。
3.皆様の投票により、以下の受賞者が決定します。
◆最難関要素賞(最も票を集めた要素):その質問に[正解]を進呈
◆最優秀作品賞(最も票数を集めた作品):その作品に[良い質問]を進呈
◆シェチュ王(最も票数を集めたシェフ=作品への票数の合計):全ての作品に[正解]を進呈
→見事『シェチュ王』になられた方には、次回の「正解を創りだすウミガメ」を出題していただきます!
その他『エモンガ賞』『匠賞』『スッキリ賞』など副賞もあります、お楽しみに!
※票が同数になった場合のルール
[最難関要素賞][最優秀作品賞][その他副賞]
同率で受賞です。
[シェチュ王]
同率の場合、最も多くの人から票をもらった人(=複数票を1票と数えたときに最も票数の多い人)が受賞です。
それでも同率の場合、出題者も(事前に決めた)票を投じて再集計します。
それでもどうしても同率の場合は、最終投稿が早い順に決定させていただきます。
■■ タイムテーブル ■■
☆要素募集フェーズ
12/15(木)21:00~質問数が50個に達するまで
または12/16(金)6:00まで
☆投稿フェーズ
要素選定後~12/26(月)23:59まで
☆投票フェーズ
投票会場設置後~12/31(土)23:59まで ※予定
☆結果発表
1/1(日)22:00 ※予定
◇◇ お願い ◇◇
要素募集フェーズに参加した方は、できる限り投稿・投票にもご参加くださいますようお願いいたします。
質問だけならお手軽気軽、でもメインはあくまで投稿・投票です。
投稿は意外と何とかなるし、投票もフィーリングで全然OKです。心向くままに楽しみましょう!もちろん投稿フェーズと投票フェーズには、参加制限など一切ありません。
どなた様もお気軽にご参加ください。
皆様の思考や試行、思う存分形にしてみて下さい。
☆そして『正解を創りだすウミガメ』では参加賞・入賞にコインバッジの贈呈を行なっております。企画終了後、参加者さまに私がミニメにてコード配布を行います。
コインバッジの内訳は後ほど連絡いたします!
…以上となります、長すぎてみんな寝ちゃったかな??
それでは、これより要素募集フェーズを始めます。再度確認ですが、質問は一人、4回まで!
新古参問わず、誰でもお気軽にご参加くださいませ(OvO)♪♪
よーい、スタート!!
☆結果発表 1/1(日)22:00 ※予定
(2)クリスマス中止のお知らせを出します。
(7)小さく重くなります。
(9)毎年同じ時期です。
(10)チョコレートます。
(16)扉が開きます。
(19)濁っています。
(24)目に焼きつきます。
(28)しりとりが好きです。
(32)これは本当にウミガメのスープです。
(36)呼び捨てにされます。
またメモにも、掲載しておきますね!
これより12月26日(月)23:59まで投稿フェーズになります!
皆様の投稿をお待ちしておりますm(_ _)m
クリスマスは原稿の追い込み期間のため中止となりました(2)。いやーすまんな(棒)
というか創作始めてからずっとそうです。
クリスマスやバレンタインなんて画面の中の二人がいちゃつく為の口実であって。現実?知らない子ですねぇ。
毎年同じ時期に(9)まとまった休み取るのを職場には遠恋中の彼氏がいるからだってことにしてるけれどまぁまぁ。
うん???間違ってないな。(漫画や小説の中の)恋焦がれた男に主に年に2回逢いにいってるわけだから。
それはそうとして新しいカタログチェックのたびにmyカプの面積が狭くなってゆくよ……
その分愛の熱量は反比例して小さいほど重くなっていく(7)けどね!
さーて、一区切りついたしTwitterチェックしよ~~同士の悲鳴からでしか摂取できない栄養素があr…
フォロワーたちが!みんな墓に!!どういうことだ…??(検索)
アッアッヤメテ公式様、突然のネジと骨の新規絵という燃料投下で我々の村を燃やさないで!!嘘です!目に焼き付く(24)勢いで凝視します!!!
ありがてぇよぉ…これで新しい扉が開いて(16)ご新規さんやってこないかなぁ…🔩🦴沼はいいぞ!怖くないぞ!濁っている(19)どころかみんな腐っているが居心地はいいぞ!
そうして私は新たな燃料を投下してくれた公式に感謝の祈りを捧げ感涙に咽ぶのであった。
[おわり]
【要約】
骨とネジというのはそれぞれとある作品のキャラクターを指す隠語。
その二人に萌えている腐女子の私は人気キャラクターの骨に紛れて推しであるネジの新規絵が出てきたことに嬉しさのあまり涙した。
私の今回の創りだすのテーマは、『課題文の想定解をふやそう!』でした。たくさんの投稿作品を得るためには、まず開催した本人が課題文を見た瞬時に5、6個解答が思いつかなきゃダメだろうって。そんな課題文作りを目指しました。最終的な作品と自分の解の多さで勝負しようぐらいの気持ちだったんですけどねー…。たけの子さんの『ホネとネジを擬人化(キャラクター化)する』って発想は良い意味で常軌を逸していて、狂気すら感じました笑 作品の風潮に沿った文体をロールプレイをするのがお上手で創りだす常連の実力を拝見させていただきました。 [編集済]
人々は毎年同じ時期(9)になると、決まってそわそわしはじめる。師走と呼ばれる忙しい季節の中でも最も大切な日、クリスマスだ。
私も例外ではない。落ち着かない心を抑えながら、クリスマスソングの流れる百貨店で同僚の彼に贈る髪飾りを選ぶ。
彼は喜んでくれるだろうか。プレゼント交換をしようと言い出したのは私で、彼がそれをどう思っているのか不安でしかたなかった。
待ち合わせは電飾で彩られた巨大なクリスマスツリーの下。そこではたくさんのカップルが幸せそうに手を繋いでいて、私は少し羨ましい気持ちになる。
待ち合わせの時刻ちょうどに彼は現れた。そして「峰岸さんが何がお好きか分からなかったので、これを買ってきました」と開口一番にチョコレート(10)を私に手渡した。「私はチョコレートを食べられないんですけどね」と呟く彼は少し悲しそうに見えた。
私もお返しに髪飾りをカバンから取り出して、彼の髪につける。今日の一大イベントはこうしてあっさりと終わった。
これで終わるのは名残惜しかったから、「少し、街を歩かない?」と私は彼の手を引いた。
「しりとりはお好きですか?」
私は無言もそれはそれで心地よく思っていたのだけれど、彼はそれを取り繕おうとしりとりを提案してくれた。私は「ええ、好きよ(28)」と答える。子供の遊びに興じる私たちはなんだか恋人同士のようで、とても幸せな時間だった。
しばらくしたあと、彼にしりとりで勝てるはずがないことに気づき、今度は彼の出題でウミガメのスープを始めることにした。かなりのヒントを貰って、私はようやく一問を解くことができた。
「今度は私が出題してもいいかしら」
「峰岸さんが出題されるんですか。私はインターネット上に存在する全てのウミガメのスープの答えを網羅していますが、大丈夫ですか?」
「ええ。私の自作のウミガメのスープだから問題ないわ。『愛する人と街を歩く女は、“愛してる”と伝えることができなかった。一体どうして?』」
これは、“愛してる”と直接告白することができない私が言うことができる、せめてもの言葉だった。
「これは、本当にウミガメのスープですか?」
「ええ、これは本当にウミガメのスープよ(32)」
さすがの彼だって、私の発言の意味に気づかないはずがなかった。それでも私は「もちろん全部フィクションの話に決まってるじゃない」と嘘をついた。
「ロボットに恋をしてはいけません」
彼の人造の瞳が私を見つめた。
技術の進歩によってロボットは人間と見間違うほどの容貌を手に入れたが、唯一違う点として、全てのロボットの目には製造番号の焼き印がついている(24)。製造番号5042A。それが彼の名前で、彼が人間ではないことを証明するものだった。
どれだけ似ていても、ロボットは人間ではない。あくまで消耗品であるロボットに人間が情を抱かないように定められたルールがある。
人間はロボットに名前をつけてはならない。ロボットは人間を下の名前で呼んではならない。壊れたロボットを弔ってはならない。人間とロボットは恋をしてはならない。
私だって分かっていた。これが叶うはずがない恋だってことは。
それでも、と彼の手を掴もうとしたとき、辺りにけたたましいサイレンの音が鳴り響いた。
「今年のクリスマスイベントは中止です。今すぐ近くのシェルターに避難してください」(2)
聞こえるのは彼に内蔵されたスピーカーから。緊急事態にはロボットが避難指示の放送を行うようになっているのだ。こんな機能からも、彼が人間でないことが感じられて悲しくなる。
「ねえ、何が起きたの?」
「海外からの攻撃です。技術の進歩により、ミサイルは小型でもかなりの質量を持つようになりました(7)。迎撃は失敗する可能性が高いでしょう。あと6分でミサイルが到達し、この街はおそらく火の海となります。
ここから500m東に地下鉄の入口があるので、そこからシェルターに避難してください」
「あなたは?」
「私は市民の避難指示を続けます」
ロボットは人間の安全を第一に設計されている。この街から全員の避難が完了するまで、彼はシェルターに逃げ込もうとしないだろう。
「私と一緒に逃げよう」
「すみませんが、それはできません」
「なら! 私もあなたについていく」
「峰岸ハルカさん、あなたには生きてほしいんです。最後にハルカさんと人間みたいにデートができて私は幸せでした。
お願いだ。ハルカ、君は逃げてくれ(36)」
初めて下の名前を呼ばれて固まった私を置いて、彼は避難誘導のために街の中心部へと走っていった。
思い足取りで私はシェルターに逃げ込んだ。
轟音が止み、シェルターの扉が開いた(16)とき、まず焦げた臭いが鼻に入ってきた。そして目に入るのは、つい先程までの光り輝くクリスマスとは全く異なる焼け野原と煙で濁りきった(19)空。
彼はきっと生きてはいないのだろうと、私は半ば確信めいたものを感じていた。
後日、ミサイルで亡くなった犠牲者たちを弔う合同の葬式が行われた。葬式は丸一日かけて行われ、全てテレビで中継された。
最新型のミサイルの威力は絶大で、爆心部の近くでは誰が誰だか区別がつかない骨だけの死体もたくさん発見された。
犠牲者として紹介される骨に混じって、ネジが画面に映された。
「これは、最後まで市民の避難を誘導してくれた尊いロボットたちの部品です」
ロボットを弔ってはならない。それは、ロボットの死に罪悪感を抱かないために定められたルールだったはずだ。
でもきっと、みんな気づき始めているのだろう。彼らがただの消耗品などではないということに。
彼らには、心がある。人間になりたかった彼の願いが最期に叶えられたような気がして、私はそっと涙を流した。
(終わり)
[編集済]
前半文章の各所に伏線が散りばめられていて、後々になって怒涛に回収されていく感じが最高にたまらない作品ですね。これは『後で読み返してみたら、これ伏線だったんだー』パターンではなく、作者がおそらく意図的に作った文章中の違和感が読み進めるワクワク感を出していいと感じました。例えば、しりとりでは絶対に勝てないとか、全てのウミガメのスープを網羅しているとか。最終的にロボットの登場だけに関わらず、世界観まで全てひっくり返している構成が圧巻です。 [編集済] [良い質問]
使用要素:全部
【簡易解説】
ロボットが消耗品として人間と区別される世界。
戦争の犠牲者の骨と一緒に犠牲になったロボットの部品が弔われたのをテレビで見て、私はロボットの死が報われた思いがしたのだった。
[編集済]
🦴🔩🦴 [良い質問]
火葬炉から出てきた彼の、小さな灰濁色になった姿は忘れられない。
きっと命日のたびに私の心を重たくすることだろう。(7)(9)(16)(19)(24)
拾った骨の中には骨折用の固定ボルトが残っていた。
彼が怪我人でさえなければ。真っ先に切り捨てられることはなかったのかもしれない。
そう考えて、私は涙した。(32)
【おわり】
【簡易補足】
後に海亀のスープ事件と呼ばれる、聖夜の惨劇があった。
冬の嵐が船上パーティを地獄に変えたのだ。
食料が尽き果て、狙われたのは弱者……怪我人である彼だった。
つい先日、私を庇ったせいで交通事故に遭い、満足な抵抗ができない、彼だったのだ。
もし彼が健康だったなら、もっと美味しかっただろうに。ああ、実に悔しい。
[編集済]
投稿された瞬間、ほえーーって、素直にそんな声が出ました。ただ短文でまとめた訳ではなく、いろいろいろいろ描きたかった表現をぐっと堪えて文章に落とし込んだ感じがして、その引き算に感服しました。そのため書かれた一文一文は際立って美しいのですね。そして創りだす、というかウミガメのスープらしく、最後にはしっかりと(?)世界観をひっくり返していくというね…
ほんと、投票対象外であることが悔やまれます!
[編集済]
《簡易解説》
大学院生の私は、研究室の後輩が卒論のために作成した機械の特殊なネジがなくなったと聞いてゴミ捨て場を探していた。捨てられた傘の骨に混ざって、探していたネジが出てきたので安堵の涙を流した。
《長い解説》
「───先輩、ネジが見つからないんです」
12月24日の昼すぎ、憔悴した顔の後輩が告げた言葉に私も言葉を失う。
この後輩が言う「ネジ」とは卒論のために作った機械に使われている特殊なネジのことだろう。
「予備は?」
「それが最後の1本で…… 実験手順をまとめるために写真撮って、実験の準備している間にどこかに行ってしまって……」
「再実験は?」
「今日の午前中にやるつもりだったんですが……」
最悪な状況である。
12月上旬に行われた卒論の中間発表会で実験の軽い不備を指摘された彼は、年内に再度実験を行ってから卒論本文を書くことになっていた。ちなみに提出期限は1月末。なかなかのハードスケジュールである。
毎年この時期はどこの研究室もそんなものだ(9)。
ひたすらに実験と論文執筆、そして先輩や指導教官の指摘コメントにうなだれる。
こんなルーティーンを12月から発表会のある2月あたりまで続けると、研究室の空気は淀み、メンバー全員の目は濁っていく(19)。
クリスマスも年末年始もあったものじゃない。
だからこそ、この研究室では卒論や修論執筆に励む学部4年生と修士2年生のために、それ以外の学年のメンバーが準備したささやかなクリスマス会を開いている。
……悲しいかな、そうでもしないと本当に寒さ以外で季節感を感じられなくなるので。
そんなクリスマス会当日のトラブル。幹事の私はとりあえず研究室のメンバーに彼のトラブルとクリスマス会中止を知らせる連絡をする(2)。
どうせみんな来てはいるんだろうけど。
(あぁ、せっかくチョコレートケーキ頼んだんだけどな……(10))
幹事特権で頼んだ、私の好きなチョコレートケーキも食べる時間はなさそうだ。
M2の先輩からもB4の後輩からも、教授からも作業を頼まれるM1(中間管理職)の辛いところだ。
そんな落胆を見せないように、私は後輩に告げる。
「さて、焦っても仕方ない。まずは落ち着いて状況を確認しよう」
彼に温かいお茶を入れ、何があったかを尋ねると、こんなことのようだった。
昨日の夕方から夜にかけて、論文に載せるために例の機械の写真を撮っていた。そして今日の朝に実験をするためにセッティングを済ませて帰ったとのこと。
おそらくその際にネジかゆるみ、どこかへ行ってしまったのではないか……と。
朝、やってきてネジがないことに気付き、辺りはおおかた探したが見つからずに焦っているところに私が来たので泣きついた、というところだろうか。
「なるほど……。実験は今日じゃなくても間に合いそう?」
ぎりぎり大丈夫だと思う、という彼の言葉を信頼して、次に取るべき行動を考える。
「今からネジ作ったらどれくらい時間かかる? 既存のネジを切り取ったら代用できないかな」
例のネジは一般的なネジよりも短いため、専門の業者に依頼して取り寄せてもらったもの。逆に言えば、穴の大きさに合うネジならば、長いネジを切れば使えるかもしれない。
「今から行けば工具借りられるんじゃないかな?」
その言葉にハッとした彼は、ネジが作れるかどうか考え始めたようだ。
そして、「俺、ネジ作ってきます」とつぶやく。
「じゃあ私はネジ探してみるね」
そう言って、私はゴミ捨て場に向かった。
寒さに震えながら、金属ゴミの置き場を探す。
危険なもの以外はここに集められるはずだ。毎朝、各研究室棟から回収されているものの、実際にゴミ収集車が来るのは週に1度なので、まだ敷地内からは出ていないはず。
(さて、うちの研究室棟のゴミは…)
いくつかエリア分けされている中から、研究室棟の名前が書かれたゴミ袋を見つける。
ざっと5袋はあるだろうか。この中から小さなネジを探さないといけない。
ネジを作れば、とは言ったものの、あの焦りようの彼が使えるネジを作れる保証はない。
事情を連絡した同期が今頃彼のサポートに行っているだろうけど、こちらとしてもできることはしておきたい。
大きく息を吸い込んで気合を入れ、まずは一番近くの袋に手をかけた。
◇◇◇
冬の夕暮れは早い。
そろそろ手元が見にくくなってきたと思ったところで、最後の袋を開ける。
(これは……傘の骨か。こんなもん大学で捨てないでよ……)
文句を言いつつ、慎重に中身を確認する。
その時。
傘の骨の間から、「ころん」とネジが転がり出てきた。
まさに探していたネジである。
私の頬を、安堵の涙が伝った。
ネジを慎重に拾い、大事に大事に持ち帰る。
研究室のみんなには見つかったことを連絡し、研究室の前まで来た。
すると、研究室の扉が内側から開き(16)、安心したようなみんなの顔が並んでいる。
一応、彼もネジを作れたそうで、明日には問題なく実験が行えるだろう、とのことだった。
私が拾ってきたネジも歪んで使えないかもしれないことを考えると、使えそうなものは多い方がいい。
お騒がせしました、と謝る彼に「この時期にトラブルは付き物だからな」と笑う先輩。
先輩がケーキを取りに行ってくれたようで、クリスマス会の準備もされていた。
予定よりは遅くなったがケーキも食べることができ、みんなもあと2か月ほどのハードスケジュールを乗り越える気力が湧いたようだった。
さあ、あと少し。がんばろう。
〈終わり〉
《使用要素》
(2)(9)(10)(16)(19)
大体はね、課題文で骨を出したら人間や動物の遺骨なんかを想像する人が多いのではと考えていましたが、やはり水平思考の可能性は無限大ですね。傘の骨組みも、もちろん骨です。私の大学は資格を取ることが目的なので卒論とかは存在しなかったのですが、提出できなけれが卒業できない、即留年、というのはすげーストレスなんだろうなと。youtubeで流れていた提出日の大学生の1日とかのshort動画なんかを思い出して読んでいました。なんかハラハラするな、サスペンス小説と言っても過言じゃないなコレ。 [編集済]
ほら、もうすぐ火葬が終わるから、行くよ拓人。
いつもより遥かに小さく、しかし重々しく(7)呼びかける母親の声に誘われ、私はふらふらと歩き出す。いつもは”たっくん”なのに、今日は呼び捨てにされるんだ(36)、と場違いなことばかりが脳裏をよぎった。
両親と目的地に向かう間も、葬式が粛々と進む間も、涙一つどころか、声の一つを上げなかった私を、母親はきっと気遣っているのだろう。
仲良しだった姉を失い、心の整理がつくはずがない、と。いくら聡明と言っても拓人はまだ小学生なんだから、状況の理解すらできていないかもしれない、と。こんなように思っているだろうか。
そう思って私を気遣っているのだとすれば、半分正解くらいといったところだろう。心の整理なんてつくわけがない。私の心は、絶望と混乱で飽和し切っている。
小学校に登校して、今日も私には簡単すぎる授業の数々を受けている最中、突如事務員の人に呼び出され授業を抜け出したあの日。
小学校の事務室という、今まで一度も行ったことのない場所で電話をとり、狼狽した母の声を聞いたあの日。
やってきた病院で、真っ赤に灯ったランプの前で、家族三人でそのランプの消灯を待ったあの日。
ランプの消灯と共に開かれた扉(16)を見ても、いつまでもランプの残像が目に焼き付いていた(24)あの日。
あの日から、私の心には何も生まれていなかった。
母は私に、状況をゆっくりと説明してくれた。お姉ちゃんは、あなたより少し遅れて家を出て大学に行く途中、友達の男の子と喋っていて、交通事故にあった。よそ見していたことや、ヒール靴を履いていて避けるのが遅かったことが運の尽きだった。
この話に嘘が混じっていたのはお見通しだった。きっとその「男の子」は元カレで、ストーカー気味に粘着してきたのを振り払おうとして周囲に目が向かなかったのだろう。いつも先生が、道路を渡る時は左右に気をつけて、なんて言っていたのに。よほど元カレの粘着が酷かったのかもしれない。
いずれにしろ、一つの重い事実を前に、私は泣くことすらできない感情に陥ったのだった。
「”私”が、”拓人”が、死んでしまったという事実に。」
—————————
あれが起きたのは、交通事故の三週間ほど前。私はいつものように鏡と睨めっこして、どの服を着て行こうか悩んでいた。
迷っていた二着は、どっちもブランドものの派手なやつ。つい最近引っ掛けたイケメンを逃すまいと、デートには思いっきり高い服を着ていこうと思っていたのである。
お姉ちゃん、そんなに派手に遊んでたら、いつか酷い目に遭うよ…。
小学生のくせに、私が取っ替え引っ替え男遊びに耽っているのを心配している拓人の忠告を、私は聞き入れない。
そんなことないって〜、と拓人の方も向かずにタンスの上を漁る私。普段使わないバッグを取り出そうと思って探していると、いつも間にか乗っていた丸椅子から足を踏み外してしまった。
危ないっ!
叫ぶ拓人が下敷きになって、私たちは気を失い…。
目を覚ますと、なんとお互いが入れ替わっていた。
その日からの生活は、最悪だった。元に戻る方法もわからないから、私が拓人の、拓人が私の生活をしなければならない。拓人がうまく私になれるわけもないから、あのイケメンに振られてしまったかもしれないと悶々とするし、そもそもせっかくの大学生活も楽しめずに、拓人の通う小学校でごくごく簡単な授業を受けるだけ。身体が小学生だから、先生に舐められている気分になるし。
ほんとに最悪。何度も拓人の前で口にした。
それでも、どこかで元に戻れるかもしれないと思いながら過ごしていた最中に、あの交通事故が起きてしまったのだ。
私には、二つの苦しみがあった。
一つは、拓人が死んでしまったこと。まだ小学生の、かわいい弟の命。それがあの一日で、こうも簡単になくなってしまうことを、すぐに受け入れられるはずがなかった。
もう一つは、”私”という存在が死んでしまったこと。20数年で形成された私の友人関係、苦労してようやく掴んだ夢の大学生活、それに何より、私という人格の一番の居場所。
何を考え、何に慟哭し、何に整理をつけ、どう立ち直るのか。私には何もわからなかった。
いつの間にか目の前には、骨が広がっていた。両親に手を引かれて歩くうちに、収骨の場所に着いたようだった。
目の前に広がるのは、私の骨。そんな喪失への悲哀は、親にすらぶつけられない。誰も私を私と見ない状況で、”自分”の死を、”拓人”の死を嘆いても、誰にも届かない。これは、これから先いつまでだってそうだ。唯一その孤独を共有できるはずだった拓人は、もういない。私は終わることにない孤独に、誘われた。
母から声をかけられ、私はようやくまともに骨に目を向ける。私の番が来たようだった。
そんな虚ろで濁った(19)私の目に、骨に混じって、一つのネジが映った。
あのネジは…。
そう呟く私の声に驚く両親。久々に拓人の声を聞いた気がする。
あのネジは。とても小さく、おもちゃのような見た目の青いネジ。あれは、私の大切なピアスだ。
親友の沙織が、高校生の頃にプレゼントしてくれたネジのピアス。高校の時の技術情報の授業でラジオを作る時に無くしたネジを、沙織が見つけてピアスにしてくれたものだった。
あなたは後先考えずに危なっかしいから、頭のネジの予備にでもしたら?
冗談を言いつつも、器用に作ってくれたであろうピアスをくれた沙織。軽口を叩くくらいには、「私は」仲が良かった。
それが、なぜこんなところにあるのか。深く考えるより先に。
私の目からは、涙が零れていた。
両親や、火葬場の職員は当惑しつつもそれを静かに待っていてくれる。拓人の泣きじゃくる声が、部屋中に響き渡っていった。
あのネジのピアスは、拓人にとってなんの意味もないただのダサいピアスだ。実際これまでの元カレには全員、このピアスをダサいと言われた。
それでも、おしゃれや男遊びに耽るようになった最近でも、私はそのピアスをつけていた。
私という20数年の中での、一番の証だったから。
大学が遠くでしばらくあっていなかった沙織は、そういえば今日の葬儀に来ていた。私は一番の親友にさえ、”自分”がここにいることを容易には伝えられない。
そんなピアスを、拓人がつけていてくれたから、こんなところにピアスがある。
葬儀の職員が、敢えて私の遺体からピアスを外さないでいてくれたのだろうが、それは普段から拓人がそのピアスをつけていなければ成り立たない。
小学生の男の子にとって、毎朝ピアスをわざわざつけてしっかり大学へ行くことが、どんな意味を持つのか。その密かなおしゃれは、私だけがしているものだった。私が入れ替わった状況に半ば不機嫌になりながら教えたメイクも、拓人は拙くこなしていた。大学の授業も、いくら聡明な拓人とはいえ苦痛だったに違いない。
拓人は、これほどに全力で”私”になってくれていたのだった。
私という存在を象徴するピアスを、最後までつけていたのであった。
今振り返ってみると、あの時の私がどんなに自分勝手だったかがわかる。年上のはずの自分が弟より最悪だと何度も吐露し、小学校の授業も居眠りすることがあった。拓人の友達とも、ろくに遊ばなかった気がする。
事故に遭う直前まで”私”という存在を守ってくれた拓人の想い。拓人の忠告を聞かず遊び回っていたせいで事故が起こってしまったことへの罪悪感。自分勝手に振る舞った自分への懺悔。それら全てにいる、”拓人”と”私”の死への慟哭。あるいは、今、”私”と”拓人”が生きているというせめてもの救いへの気付きに、ほんの一滴の安堵があったからかもしれない。
今の私が考えても、なぜあの時に涙が出たのかはわからない。しかし、あのピアスをきっかけに、私が絶望から少しでも這い上がれたのは相違なかった。”私”は、”拓人”と共に生きなければならない。今もそう確信できる理由が、あのピアスにあった。
—————————
【要約】
弟と入れ替わった私は、入れ替わったまま私の身体で亡くなった弟の葬儀に来ていた。あまりの絶望に、この時は涙なんて出なかった。
火葬された骨に混じって、私の愛用していたネジのピアスが出てきた。入れ替わってからも弟がそのピアスをつけていた、つまりは弟が一生懸命に私のふりをしていたことが窺え、失った弟と私の身体への想いが改めて浮かぶようになった。残された"自分"という存在、弟の身体と、私の人格それ自体、が持つ救いに気付き、絶望から少しだけ這い上がった瞬間に、私は泣いていた。
—————————
それからもう何年か。今の私は、拓人の夢を追う中学生。拓人は昔から、将来は医者になりたいと話していた。バカな私と違って聡明な拓人だったから、もし生きていたらきっとすんなり夢を叶えていただろう。
私は、今でも孤独だ。誰もが私を”拓人”だと言うし、そんな拓人はもういない。今でもまだきっと、私は絶望の渦に雁字搦めになっている。
それでも、私は生きなければならない。天国にいる拓人に、その顔向けができるように。いつかちゃんと、拓人に謝れるように。
これが本当に正解かはわからないけど、と呟いて、私はクローゼットから男子用の制服を取り出した。
果てしなく黒いその制服に縫い付けていた、一つの青いネジが微かに光っていた。
終わり。
[編集済]
この物語と同様に、私も年の瀬に身内を亡くしまして、祖母なんですけど。あまりに急だったもので実感がなかったから共感するわーみたいに読み進めたところ、それだけじゃないんですね。彼、というか彼女は『自分自身の死』を客観的に体験してしまった、という超展開でした。そんな非現実的要素を丁寧な描写から追体験した気分になれるのが素晴らしい。そしてそこにもう1人の弟がどんな気持ちで他人の人生を過ごしていたのか類推させ、結果主人公がこれからどう生きていくのか、そこまでがショートでありながら明確に示されている点が良かったです。 [編集済]
私、探偵!メータンテイ!
どんな事件もスピード解決して魅せちゃう、スーパー探偵!
おー?羨ましいか?かっこいいか?よしよし。いい反応だ。そんなみんなには、今日は一つ、私がカレーに解決した事件の話をしてあげよう!
去年のクリスマスにね、お母さんお父さんと一緒にチキンを食べてパーティーしてたんだけど、食べ終わってしばらくテレビを見てたらお母さんが私に”イライ”をくれたの!
ネジが一つ、無くなってて、探して欲しいって。
えっとね、私の家にはツリーの小さいバージョンみたいな、あ、本物の木じゃないよ、なんかガラスのやつ、それを押し入れから出して毎年クリスマスに(9)机に飾るんだけど、そのツリーの部品のネジが無くなっちゃって、立たなくなってたのね。
で、私がかっこいい探偵なのを知ってるお母さんが、相談してきたと!すごいでしょ?これが探偵の仕事の始まりなんだよ〜!
そうと決まれば、捜索開始、探偵は足も大事だって、アニメでも言ってた!
まずは押し入れでしょ、それから廊下、お母さんが運んでる時に落としたかもしれないし。あとはー、リビング、私の部屋とか、トイレとか。たくさん色々探したんだけど、全然見つからないんだよね〜、いやあ、そうも簡単に見つかったらつまんないでしょ?ここからが探偵の見せどころ!
じゃあ、みんなにも聞いてみるけど、押し入れから廊下を通ってリビングの机に持ってくると、ネジが一つ無くなってた。押し入れにも廊下にも、リビングにも落ちてない。もちろん、去年の去年にはネジもあったし、ずっと押し入れにしまってた。落としたネジが勝手にコロコロ転がって他の部屋にきたわけでもないし、ネジは一体どこでしょう??
きぃいーーん、どんっ!(扉が閉まる音の真似。)
え〜、ヒントか〜。ヒントは、チキンの骨!それと、私の家にいる…。
えへへ〜。それじゃあまだ謎が残ってるじゃん、綺麗に解決できないよ〜(19)。わかんない〜?みんなはまだまだだなあ。正解は〜…。
がちゃりん、どーんっ!(扉が開く音(16)の真似。)
私がリビングに戻ってきた時、そういえばチキンの骨の残りはどうしたの、ってお父さんに聞いたの。なんとなく。こういうなんとなくの気付きが、事件解決の鍵になるってことだよ〜!
そしたら、ダインにあげたって。
そうそう、私がよく話してる、仲良しの犬!名前、ダインって言うんだ〜。
それと、ダインのいつものくせ!それで私はきらりーんと閃いた!もうみんなもわかった??
ダインのベットは、お母さんとお父さんの部屋にあるの。そこには…。
綺麗に残った小さいチキンの骨の山(7)と、それに混じって、そのネジ!
そういうこと!廊下でネジを落としたのはあってたけど、ダインがお宝だと思って自分のところに持ってちゃってたの〜。
ネジをお母さんに渡したら、事件解決!”ホウシュウ”として、クリスマスチョコたくさんもらっちゃった!(10)
…え?いやいや、こんな事件ですごいって喜んでても仕方ないよ〜。これは私のメー探偵の「探偵」の、ほんの少しのこと。ヨユーを持って解決しちゃって、あくびが出ちゃうくらいだったんだから(問題文)。
もっと、100万年の財宝とか、「骨」のある事件だったら、頭の「ネジ」もフル回転して、「泣いて」喜んで解決しようとするのになあ〜。
うんうん、もっと褒めてもいいんだよ?だって私は、メー探偵なんだから!
【簡易解説】
私はメー探偵!お母さんが失くしたネジを探す事件を調査して、見事に解決!ペットの犬のダインがそのネジを持ってちゃってたみたいで、ダインにあげたチキンの骨に混じって発見したの!
でも、こんな簡単な事件なら、解決してもあくびを出して泣くくらいのヨユーがないとね。
(実際は、探偵ごっこに疲れて眠くなってただけだし、あくびの涙は「泣いている」わけじゃないんだけどね。)
おわり。(Case Closedとかいって。)
[編集済]
今回の癒され枠ですね。これは^ ^ 全体的にふんわりとした文体で進行しつつ、なぜ骨に混じってネジが出てくるのか?という課題文のアンサーにしっかりと答え、作品の謎を回収していくところが創りだすの作品として良いと思います。flowで盛り上げつつも韻は固いラッパーみたいな感じです。あれ、伝わりづらい…?^ ^; 某コナンのオマージュも入っていて、そういう遊び心も雰囲気を作っていて素晴らしいと感じました。 [編集済] [正解]
サイトの読み込みが終わると、虹色の星を冠したいつもの文字列が見えた。
今回も12月に、なのか。毎年同じ時期(9)ですごい偶然だなーと思いながら、私はトップの黒文字をまじまじと見つめる。
「私」「泣いている」「骨」「ネジ」
うーむ。これ、本当にウミガメのスープ…?(32)こんなにむずかったもんだっけ??全く検討もつかないし、どう書いていこうかなあ。私は思案する。
次に、期限。クリスマス近くかあ。これは、私の中でクリスマスを潰し指令を出して(2)熱中しちゃおうかな。元々クリスマスに予定なんてないけど。
久々の、創りだすだ〜!
私は意気揚々としてサイトを閉じた。
それからしばらく。
私の意気揚々のその「意気」はどこにいったのか、メモと睨めっこ、頭を悩ませていた。
理由は単純。なかなかいいアイデアが出ないから。
骨って、あんまり出てくるアイテムじゃないし、ネジもなんか、機械とかの一部に過ぎないっていうか、普通に書いても面白くないものだし…。
ほね、ネジ。しりとりだ。私しりとり好きなんだよね〜。る攻め(28)。いや、「ネジ」に続いてしょうもない「自分語り」してる場合じゃないか。早く問題文の「理由」を考えなきゃ。
泣いている、も色々できるねー。嬉しい、ゲラゲラ笑い、悲しい、別れ…。あとは…あくびとか?あーでも、あれは泣くとは言わないか。「私」だし、使うなら誰かの勘違いくらい。
あとは…。言葉遊び〜…。ネジの「ネ」が示す偏で、「ジ」が字とかね…。ああ、心が汚れ濁っているから(19)、しょうもないひねくれ遊びばっかり思いついちゃう。
などと、くだらないことばかり考え残したメモを見ても、何もいいものは創れない。バカなことばっか書いてやんの。これだから「頭のネジが外れてる」とか「実はヤバいやつ」とか言われちゃうんだよ〜。
そしてまた、サイトを開く。「要素」と睨めっこして発想していこうと思ったからなのだが、締切もだんだん近づいてきた今、もうすでにいくつかの作品が集まっていた。
うわあ〜その手があったか〜。あーそれも面白い。そっかそっちもあるのか〜。はあ〜。
と次々に思いながら、二画面にして私のメモと比べてみる。
画面左側には、話の「骨」がしっかりとしている「骨」のある作品。右側には、それに混じっていく外れた頭の「ネジ」みたいなくだらないメモ。
その差は、一目瞭然!!圧倒的だ。
私は、くだらないことばっか言ってる自分に泣けてきた。かなしい。
もう一回考え直すかあ〜。
私はメモを全消しし、一から構想を考え始めた。
(そこそこ実話、そこそこフィクションです。)
【簡易解説】
創りだす47の解説を考えていた私。サイトとメモアプリを同時に開くと、画面には他の人が投稿されている、話の骨のしっかりした骨のある作品と、それに混じって自分の、外れた頭のネジの権化のようなくだらないメモが映る。
その差に、私は泣けてきた。
おわり。
[編集済]
今回のメタ枠ですね。これは^ ^笑 私の12月開催は偶然というよりは、ねじ込んだ感がすごいです…実際前回の結果は辛勝だったし。来年は無理だろうなぁーと思いつつ、こんな話鬼も笑うのでここまでで。今回の作品達はさなめ。さんも発言していますが構成力が素晴らしいというか、創りだすの前半後半の印象をひっくり返す型が確立したからこそ良作品が多いのではないでしょうか。でもねぇーそれだけじゃつまらないんだな。創りだすの企画を逆手にとったり、ひいてはらてらてのシステムをメタしてみたり、そんな面白みある作品が出なきゃ、ね。 [編集済] [正解]
<簡易解説>
人体模型を作るメーカーに勤めている男。もう少しで完成するところだった人体模型を後輩に倒されて壊されてしまい、それによって骨を模した部分やねじが飛び出してしまい泣いた。
<本文>
俺の名前はカメオ。人体模型を作る仕事をしている。俺が働いている会社で作る人体模型は主に学校や病院などに置かれているモノがメインだ。えっ?人体模型なんてめったに注文される機会がないから仕事は楽なんじゃないかって?いやいや、そんなことはない。
まず毎年3月の時期になると人体模型を新しくするために教育機関から必ず注文が来る(9)。それも1件だけじゃなく複数だ。それに人やモノが人体模型にぶつかったり、日本だったら地震によって物があたったりして人体模型が壊れることだってある。この間注文してきた小学校の場合は、ある少年が給食に出てきたウミガメのスープ(これは本当だそうだ。なんでもその小学校がある地元はウミガメを日常的に食べる習慣があるのだとか)をいたずらで人体模型にぶっかけ、それによって完全に取り切れないほどの着色汚れがついたというのだ(32)。幸い目立つ傷はないらしく、少し汚れが付いたぐらいで注文する小学校もどうなのかと思うが、そのせいでクリスマスに家族とレストランに行く予定だったのが残業で中止になった。そのことを告げたときの娘の悲しそうな目は忘れることが出来ない(2)。
さて、その日は3月7日ということもあり、ある学校に納入する人体模型を作っているところだった。俺が働いている企業が作る人体模型は本格的で、内臓はもちろんのこと、肋骨部分などの骨の部分も作っている。まあそのせいで完成するまでにかなり時間がかかるのだが、その人体模型はもう少しで完成できそうだった。そう思っていた時廊下から元気な声が響いてきた。
「せんぱーい!いませんかー?」
その声は俺の会社にその年の4月に入る予定であったウミコだ。入社前のインターンとしてここで働いており、このように明るくて元気はいいのだがまだ卒業式を迎えておらず学生気分が抜けきっていないためか時々俺や上司の名前を呼び捨てにするなどの悪いくせがあった(36)。
「あっ、先輩いるじゃないですか。扉開けますよ?」
そうしてウミコが勢いよく扉を開けたその時だった(16)。ウミコが開けた扉が俺が作っていた人体模型に勢いよく当たってしまったのだ!扉にぶつかった人体模型は床に倒れ、勢いよく部品が飛び散った。
床に倒れた人体模型を見ると、臓器を模したものは砕けていて、骨の部分は真っ二つに割れていた。骨を模したものや臓器を模したものを固定するために使っていたねじも床に転がってしまった。
「おい、何しているんだよ!もう少しで完成するところだった人体模型が壊れちゃったじゃないか!」俺はウミコに怒りながらも目に涙が出ていることに気づいた。これまでの努力を後輩の過ちのせいで無駄にされてしまったのだ。俺は悔しかった。
「すみません・・・。」ウミコも申し訳なさそうに涙を流しひたすら謝る光景は今でも俺の目に焼き付いている(24)。
しばらくして、俺とウミコは我に返った。
「どうすればいいんでしょう・・・。」ウミコが言うと俺はこういった。
「作り直すしかないだろ?」
「私、カメオさんと一緒に人体模型を作り直します・・・。」
こうして人体模型をウミコと新しく作り直すことになった。納入期限が1週間後に迫っていたこともあり、終電ぎりぎりまで作業を続け、土日も休まず出勤した。ときどき人体模型を作るのが苦になると、しりとりが好きだというウミコとしりとりで遊ぶことで気を紛らわせた(28)。
1週間後の3月14日、なんとか人体模型を完成させた。人体模型が完成したときにウミコがほっとした表情を見せたのは今でも印象に残っている。そして納入が終わった直後にウミコは恐れながらもあるものを配った。
「すみません、これはお詫びのチョコレートです(10)。今日はホワイトデーでもありますから。」
それまで正直言ってやや粗暴なところもみられたウミコはこれ以降おとなしく優しい子になった。
ウミコは今、正社員として俺の会社で働いている。製造に配属されてからは真面目に仕事に取り組むようになり、今では製造部門の中ではかなり立派な成績を上げている。でも、まだまだウミコは成長するに違いない。製造部門の先輩である俺はそう思いながら今日もウミコの成長を見守り続けるのである。(終)
[編集済]
今回のキーワードは『骨とネジ』です。作品の被りを避けるため葬式や火葬といったシチュエーションを避けるなら、それなりの発想力が試されることでしょう。その中でも『人体模型メーカー』という環境は今回のお題を作るのにピッタリ!納得感を非常に得やすいでしょう。まず発想の勝利ですね!そして課題文のアンサーとは違ってある意味、これはウミコの成長物語出会ったり、カメオとの恋愛物語であったりもするのでしょうか?続きが気になります! [編集済]
私はしりとりが好きだ。国語辞典を片手に持てば、永遠に続けることが出来るかのような錯覚を覚える事が出来る。…その「えいえん」が「終わり」になってしまうせいで決して使う事が出来ないというのは皮肉だが。(28)
何の話だったか…そうだ、私の患っているこの忌まわしい病の話だ。この「終わり」が近づく度に少しずつ、小さくも違えようもなく重くなりゆくこの心の内に秘めたる陰鬱とした病の。(7)
私がこの病を患ったのは間違いなく産まれた時からであるが、それに気づいたのは齢九つに満ちた頃だった。夜中、一日の終わりを迎え眠る時に「それ」はやってくる。始めは小さな思いからであった。決して逃げる事の出来ない恐怖の欠片を、私は望まずに覗いてしまうのだ。
時は流れ気付けば私も齢は二十をとうに越え、火葬技師になっていたというのも皮肉な話である。ご遺体を炉に入れ、綺麗に骨になるよう時折動かす仕事。身近にご遺体があることが私のこの病にどのような影響を与えるのかは定かではないが、それでも長く続けている今もまだこのように生きているのならばそこまで悪くはないのだろう…と、この時はまだ思っていた。まあ、この病にはそもそも私を死に至らしめる効能など無いのだが。
少し前置きが長くなったが、私の心を濁らせている病について話す事にしよう。(19) 私の心に蔓延る病は一般に「タナトフォビア」と呼ばれているらしい。しかし、これは恐らく病でもなんでもない、あらゆる人間の持つ全ての「恐怖」の根源なのだろう。
命あるものはいつか、必ず、何があっても、どう足掻いても、死ぬ。
これはこの世の絶対的な理の一つであり、決して逃れる事の出来ない命ある我々の定め。私達がそれに対し出来る事はただ一つ。目を背けその存在を切り離し、蓋をして忘れる事だけだ。けれど、私にはそれが出来なかった。一日の終わり、夜中になると自らの終わりについて考えてしまい眠りが恐ろしくなり、年の瀬になると毎年月日の流れを実感し自らが決して戻る事の出来ない過去から確実に死へ近づいている事を考えてしまう。(9) そして、医療の発展に僅かな願いを込めながら不死の世界への恐怖に苛まれる。
そんな私が炉の戸を閉めてしばらくすると、中から破裂音が轟いた。しばらく呆気にとられてから、今日のご遺体はペースメーカーが摘出できていないという話であった事を思い出す。極力他人事のようにそう考え、音が収まるのを待ち炉の扉を開きご遺族の前へとお骨を取り出す。(16) 一つ一つ骨の部位について説明を行いながらご遺族へ壺に収めてもらう。その時、私の目に骨でないものが映る。それはネジだった。ペースメーカーの一部であったネジが焦げ、歪み、元の形をなんとか留める程の様でそこにあった。まるで、人類の医療を無駄な足掻きであるとあざ笑うかのようなそのネジの姿に私は恐怖した。今までなんともなかったご遺体が我々の成れの果てであると初めて強く実感した。その場はなんとか涙を流すのみでこらえる事が出来たが、その後は別の人に代わってもらいすぐに早退、そのまま私は会社を辞めた。
メメントモリ・シンドローム/死を忘れられぬ病
【簡易解説】
火葬場で働く「死」恐怖症の私は今までご遺体を見ても発作を起こす事は無かったが、ペースメーカーの埋め込まれたご遺体を焼いた際にその中に入っていたネジを見て医療の敗北を感じ発作を起こした。
-了-
いやー、鬱くて考えさせられる作品ですねー😂誰しもが一度は考える『死ぬことへの不安』が延々と続いたら、それはそれは恐ろしいことですね。個人的には医療って『病気どう治すか』だけではなく『人生をどう終わらせるか』も含まれていると思っているので、ペースメーカーを入れることで社会的な生活ができる時間が1秒でも増えたら幸せなんだろうと思うけれどもそれじゃあ根本的な解決にはなってないという人もいるかもしれないし…うーん、こんな考え方の人がいることも真実だろうと考えさせられました。 [編集済]
【簡易解説】
クリスマスの夜のバイトの帰りに、立ち寄ったパチンコ屋でパチスロを回す私。最後の一回転で、骨の絵柄の中に一つだけネジが混ざっていたのを見て、私は自分が惨敗した事を悟った。ふとガラス張りの入り口に目を向ければ、クリスマスムードに浮かれ切った人々が見える。楽しそうな彼らとパチスロで全負けした自分とを比較し、私は泣いた。
🦴🔩🦴
【解説】
街行く人達は夜も遅いに関わらず、浮かれ切った足取りで煌びやかに装飾された街中を闊歩している。
それも当然、だって今日はクリスマス。
美しいイルミネーションと、楽しげな音楽とで街も気分もぱっと明るくなる、そんな日だから。
だけども、俺が今居るのは…そんな街から少しだけ外れた、薄暗く人気のない公園のブランコの上。
ぎい、ぎい…と、古いブランコの軋む音と、さっき知り合ったばかりの女性の、しゃくり上げる声だけが小さく響く。
空を見上げれば、雪がちらちらと降ってきて…室内の方が良かったかなーと、ぼんやり思った。
*
その女性と出会ったのは、バイトの帰り道でのことだった。
パチンコ屋の扉を壊さんばかりの勢いで開きながら飛び出してきた彼女が、その時たまたま正面を通りかかった俺にぶつかってしまったのが、10分前のこと。
何だこの人、と思ったのは一瞬だけで。
化粧が落ちるのもお構いなしにボロボロと泣きながら、小さく俺に謝った彼女に、むっとした気持ちも霧散して、むしろ何故だか放っておきたくないような気持ちが芽生えていて…気がつけば、「コーヒーお好きですか」なんて声をかけていた。
…我ながらもっと他にあっただろとは思うけど、咄嗟に出てきたのはそんな言葉だけだった。
やっちまった、次に思ったのはそれだった。
声をかけてどうするかも決めていなかったし…そもそも、こんなに泣いている人がそんな文言についてくるとも思えない。
当然、ぶつかった彼女の方もポカンとしていて…
いっそ「なんでもありませんでした!」なんて言って逃げてしまおうかと考えていたところで、ホットチョコの方が好き、なんて彼女が口にした。
それに少しだけ驚きながら、「あ、じゃあホットチョコ、奢るからどうですか。」と、偶然にも近くにあった公園の自販機を指差して…そんなこんなで、2人並んでブランコに座って居る。(10)
*
「…ごめんなさい、ちょっと落ち着いてきました。」
少しして、ぽつりと聞こえた声に横を向けば、目を赤くした彼女が力無く口角を上げた。
そして思い出したように、まだ開けてもいないホットチョコの缶を啜ろうと傾けて、「あれ、おかしいな」と呟いた。
それが酷く痛ましくて…プルタブがなかなか引けずにいる彼女に、「貸して下さい」と手を差し出す。
そして、彼女から受け取った缶のプルタブを引きながら、「どうして泣いていたんですか?」と問いかけた。
彼女は、面食らったように固まって…目線を四方に泳がせた後で、「それ、聞いちゃいます?」と苦く笑った。
かちゃ、とプルタブが開く音がやけに大きく響く。
彼女が、ホットチョコの缶に目を向ける。
そのままぱち、ぱち、と彼女は何度か瞬きをしてから、「いや、まぁそりゃ…聞きたくもなるか。」と、独り言のように呟いた。
「…わかりました、話します。ホットチョコ一杯分…にしては長くて、ありふれたつまらない話ですし…途中で帰ってくれても構いませんが。」と、俺から受け取ったホットチョコを、今度はちゃんと飲み込んで、彼女は口を開いた。
*
…まあ、本当に…よくある事、といって仕舞えばそれだけなんでしょうけど。
最近良くない事が続いてたんです。
不幸の連鎖が止まらない、って感じで。
まず…些細なことから大喧嘩に発展して、恋人に振られたのが大体1ヶ月前。
『ごめん、25日の夕方急にシフト入った!最悪!私のクリスマスは中止です!』(2)
…なんて、バイトの急なシフト変更で、友達とのクリスマス会に行けないって連絡をしたのがちょうど1週間前かな。
それで…いつもの制服を他の子のミスで汚されて、代わりの制服を探し回ったのが大体今日の15時くらいで…
それで…極め付けに…閉店時間間際くらいだったから…20時くらいかな?
よくわかんない理由でお客さんから説教を受けたんですよね。
あ、私のバイト先は、【不思議の国のアリス】がテーマの、所謂コンセプトカフェってやつなんですけど…
…まあ、そういう所ではよくある事、らしいですね。聞く限りだと。
けれども、私はそういう人に会ったのは初めてで…うまく対応も出来なくて。
…だって、「にせウミガメのスープ」って書いてあるのに、「ウミガメの肉も使ってないし作ったのもウミガメ衣装のキャストの子じゃないなんて偽装表示じゃないか」…なんて言われたって、意味わかりませんし、私に言われても困るし…。というか、そもそもウミガメ衣装の子はいないし。
で、私が頑張ってウミガメじゃなくてにせウミガメのスープなんです、そういうものなんですって説明する程に…却って逆上させちゃいまして…がんがん怒鳴ってくるんですよ。ふざけんな、俺が間違ってるっていうのか、って。
見兼ねたボーイさんも宥めようとしてくれたんですけど逆効果で、結局そのお客さんは怒って帰っちゃって…で、怒らせたことを、バイト終わりに店長に怒られて…なんてまさに負の連鎖で。
…そんな感じだったので、割と荒み切った気持ちで帰ろうとしてたんですが…
街を歩いてる人は私以外みーんな、クリスマスで浮かれてます!って感じで歩いてて…
毎年同じ時期にやってるような、珍しくもなんともない行事で、何で揃いも揃ってあれだけ浮かれられるんだか…とかも思っちゃって。(9)
…正直、そんな楽しそうで浮かれ切った空間に、沈んだ気分でいること自体がつらくて。
だから…クリスマスと全く関係のない場所に行きたくて…。
それで私、ふと目に入った、がらっがらのパチンコ屋さんに入ったんですよ。
…パチンコなんて、碌にやったことも無いのに。
んでまぁ…1000円分のメダルを買って…パチスロなんてやってたわけなんですけれども…
少しでも当たるかもーなんて、期待してたのも最初だけ。
ただ、コインが3枚ずつ減って無くなっていくだけ。
期待が小さくなる分だけ、気分が重くなっていくだけ。(7)
最後の一回も結果は…骨、骨…って来て当たるかも…とは思ったものの、結局最後の一個はねじ…みたいな。
…まあ、言っちゃえば…大外れの惨敗です。
そんな感じで、全敗だー!って仰いだパチンコ屋さんのガラス越しにまた、見えちゃったんですよね。
クリスマス仕様でキラキラの街の中を、心底楽しいのが当たり前みたいに歩いてる人達のことが。
その人達の背景に見える、イルミネーションの光だって、綺麗なはずなのに…なんか、見ていたくなくて。
なのにその光が、目に焼き付いて、目を閉じても、背けても…ずっとずっと瞼の裏に残ってて…(24)
輝く街を心底楽しそうに歩く人達が、憎らしくて。
でも、それ以上に…すっごい眩しくて、本当に…眩しすぎて。
ありふれてるような不幸で病んで、楽しいはずのクリスマスがしんどくて、それで逃げ込んだ先のパチスロでも全敗で、って…私って、めっちゃ惨めじゃん?…とか思ったら、すっごく泣けてきちゃって。
それでまあ…結局パチンコ屋にいるのもつらくなって、泣きながら飛び出したところを…あなたにぶつかったってわけです。
*
「…ね、ありふれてて…つまらない不幸話だったでしょう?」
と、彼女は笑って、何も言えずに俯く俺の顔を覗き込んだ。
正直、何と声をかけたら良いかわからなかった。
「…さて、これでホットチョコ一杯分の不幸話はおしまいです。…まあ、話したら少しスッキリはしたかな。」
と、未だに口すら開けずにいる俺を他所に、彼女は立ち上がる。
そうか、これでお別れか…とそれに合わせてのろのろと目線を上げれば…何故だか、彼女とばっちり目が合った。
「…ねぇ、おにーさん。私、話してたら、なんだかお腹空いちゃったんですけれども…ご飯、一緒に行きません?」
「…え?」
「ご飯ですよ、ご飯。私、食べ損ねちゃってて。」
ポカンとする俺に、彼女は先程まで沈み込んで泣いていたとは思えないほどにけろりとした顔で言った。
「…これも何かの縁ですし。このままだと私、クリスマス中止のままで終わっちゃいますし…それにまさか、ホットチョコ奢って不幸話聞くためだけに声かけたって訳じゃないでしょ?」
ね?と言われても、ちょっと訳がわからない。
俺が絶句していれば…彼女は更に言葉を重ねる。
「…見知らぬ号泣女を呼び止めて、ホットチョコを奢ってくれて、おまけに長々しい不幸話を逃げ出しもせずに真面目に聞いてくれるような優しいおにーさんなら、私の不幸を上塗りするようなこと…例えば、ナンパしてきたはずの相手に振られて逃げられるみたいな…そんな思い、させたりしませんよね?」
「…だからおにーさん、私の思い出の1ページに今日を不幸なだけじゃなかった日として刻むための協力をしてくださいよ。」
……彼女は、不幸の連続の末に見知らぬ人間に号泣する顔を見られて、ホットチョコを奢られて、その上で自分の不幸話を話してしまう…なんておかしな状況に…投げやりにでもなっているのかもしれない。いや、最初以外は割と俺のせいなんだが。
あるいは、もともと切り替えが早く図太い性格なのか…最初からずっと投げやりだったって可能性も否定はできない。
なんにしても、先程までとは別人になったかのようなさっぱりした態度で、しかし先程と同じ赤い目で笑う彼女が…なぜだか俺の目にはたまらなく魅力的に見えてしまって。
そこでようやく俺は、自分が彼女との時間を"ホットチョコを奢って不幸話を聞くだけ"で終わらせるには惜しいと思っているらしい、と気が付いた。
…それに気が付いてしまえば、彼女からこう言ってくれているのは、渡りに船というやつだ、とまで思ってしまっていて…
だから俺は、「ファミレスでいいなら。」と、彼女に続いて立ち上がる。
それに楽しそうに頷いた彼女の姿に…ありふれた不幸話ってやつが、こんなおかしな結末に収束するのも悪くはないよな、とぼんやり思った。
-了-
[編集済]
たけの子さんのキャラクター化同様、課題文を作成した当初には私の頭の中になかった発想でした。アイデアIPPON👍こういったスロット?だったり宝くじだったりのギャンブル系のウミガメはみづさん作品の『魔法の絨毯ならば』を思い出しますね。ナイさんの作品も実際に出題成立するような解答なので私は大好きです。創りだす作品ってウミガメのスープの解答って意味合いもあるんだから、そういった点はガンガン評価したいですよね!泣いた理由についても非常に共感できて良きです。 [編集済]
参加者一覧 13人(クリックすると質問が絞れます)
結果だけさらっと見たい方は投票所(https://late-late.jp/mondai/show/17742)をご覧ください!
お待たせいたしました!結果発表です!
始めに、投稿においては9名の方に、投票においては8名の方にご参加いただきました。
本当にありがとうございました。
ということで、早速発表と参りましょう!まずは最難関要素です!
☆最難関要素賞
🥇(32)これは本当にウミガメのスープです。(ベルンさん)
3票獲得
ついにこの質問が、創りだすに登場したか…という感じでした。
らてらてにふさわしい『ウミガメのスープ』を冠した要素が入賞です。
そして作品に導入するのがとっても難しかった…。
実際に投稿した方からの、たくさんのコメントをいただきましたー!
続いてサブ賞の発表です!まずはスッキリ賞!
最もスッキリした解説は……?
☆スッキリ賞
🥇⑩『仮想の場にて』(白さん))
4票獲得
おそらく、歴代創りだす作品の中でもトップの短さであると思われます。
もちろん各回により縛りは異なりますけれども。
しかしたった2行の言葉にありったけの要素を詰め、
後の行間を読書に想像させるというスタイルはなんとも渋い…
素敵でした。
つづいて、エモンガ賞の発表です!
最も読み手の感情を揺さぶった解説は……?
☆エモンガ賞
🥇④『ネジのピアスをつけること』(みさこさん)
3票獲得
キャラクターへの描写が深く、共感性の高い作品であったと思われます。
回答に関しては骨とネジから連想されるダークなイメージを
素材そのまま使用した感じではありますけれども、
その先、『2人の入れ替わり』という特殊な設定をうまく活用し、
他の誰でも書き得ない圧倒的な世界観を作り上げたと感じています。
サブ賞最後は、匠賞の発表です!
最も技術力が光った解説は……?
☆匠賞
🥇⑥『NG集を使って』(さなめ。さん)
3票獲得
やっぱりね、自分の感想でも書きましたけれども。
こうしたメタとか設定を生かしたトリックがあってこそ創りだすは面白い。
私は、そんなふうに考えていますよ。
今回の課題文は難しかったかな?
投稿者のありのままの言葉が反映されていそうですね()
ではいよいよ、メイン投票の結果発表です!
こちらはベスト3の発表となります!
なんですけれど…
今回は…
3作品が同時に4票獲得ということで!!
その中でも1番投稿が早かった作品が最優秀作品賞となります。
3つまとめて、ご紹介!!!
☆最優秀作品賞
「ロボットに恋をしてはいけません」
🥇②『鋼色のクリスマス』(うつまさん)
4票獲得
やはり創りだすの王道といえば、伏線伏線の応酬からの怒涛の回収劇!
これが熱いですよね!!
うつまさんの作品はそうした伏線回収だけではなく、
世界観の逆転する様がまるで本当のウミガメのスープを見ているようで素敵でした。
みなさんの投票コメントからも、そうした素晴らしさを伺うことができます。
見事にランクイン!!
さあ、あと少し。がんばろう。
🥇③『プレゼントはゴミ捨て場に』(ほずみさん)
4票獲得
店長、えっと…この作品は、
大学生向けサスペンスホラーの棚でよろしいんでしたっけ?
大学生の卒論に向けたリアルなハラハラとか、問題が解決した安心感とか。
みょーにリアルな日常に、共感を持った人は多いハズ。
物語を読んでいて楽しいと感じるのは、きっとこんな作品です。
見事にランクイン!!
(そこそこ実話、そこそこフィクションです。)
🥇⑥『NG集を使って』(さなめ。さん)
4票獲得
まあさかねえ、最後の締めを引用することになるとはねえ…笑
今回の入賞作品に共通するのは、
読者や同じ投稿者達の『共感』を産んだ作品と私は感じています。
投稿者も投票者も、参加した人たちがそうだよねーとか、うんうんとか、
きっと相槌を打ちながらさなめ。さんの作品に投票してくださったってことよね。
ということで、最も投稿が早かったのは、うつまさん!
②『鋼色のクリスマス』(うつまさん)が最優秀作品賞です!!
では、最後にシェチュ王の発表と参りましょう!
第47代シェチュ王は……
2作品合わせて……
合計5票を獲得した……この方!!
👑さなめ。さん👑
です!おめでとうございます!🎉🎉🎉
皆さま拍手をお願いいたします!👏👏👏
(💠OvO)つ👑ヽ(OvO🌂)
🦴🦴🦴🦴🦴🦴🔩🦴🦴🦴🦴🦴🦴
さなめ。さんには、唯一称号[◇シェチュ王◇]と、次回である「第48回正解を創りだすウミガメ」の出題権が賞与されます!
本当に、おめでとうございました!
それでは、これにて「第47回・正解を創りだすウミガメ」を終了いたします。
改めて、皆さまご参加ありがとうございました!
次回もよろしくお願い致します!
弥七さん主催ありがとうございました!そしてさなめ。さんシェチュ王おめでとうございます!そしてありがたいことに早いもん勝ちルールで最優秀作品賞に選んでいただきました。ほんとに光栄です[23年01月01日 23:31]
弥七さん、主催ありがとうございました!最優秀作品賞のうつまさん、同率票のほずみさん、さなめ。さん、おめでとうございます!!そして、さなめ。さんはシェチュ王も、おめでとうございます!!三作品同率票、すごいですね!!今回も楽しかったですー![23年01月01日 22:46]
そういえば。今回要素は5/10ですが、投票時の「最も組み込むのが難しかった(難しそうな)要素」とは、「実際に組み込んだ中で」なのか、それとも「組み込めなかった」のどちらなんでしょうね。[22年12月18日 17:51]
【問題文】
私が泣いているのは、
骨に混じって、ネジが出てきたからである。
状況を説明しなさい。
【要素】
(2)クリスマス中止のお知らせを出します。
(7)小さく重くなります。
(9)毎年同じ時期です。
(10)チョコレートます。
(16)扉が開きます。
(19)濁っています。
(24)目に焼きつきます。
(28)しりとりが好きです。
(32)これは本当にウミガメのスープです。
(36)呼び捨てにされます。
①投稿フェーズで選ばれた[要素10個中5個以上]を使用すること。
②文字数制限は『なし』。
③『簡易解説』の作成を推奨する。
【タイムテーブル】
☆要素募集フェーズ
12/15(木)21:00~質問数が50個に達するまで
または12/16(金)6:00まで
☆投稿フェーズ
要素選定後~12/26(月)23:59まで
☆投票フェーズ
投票会場設置後~12/31(土)23:59まで ※予定
☆結果発表
1/1(日)22:00 ※予定
自分が正解した問題・出題者への賛辞・シリーズ一覧・良い進行力など、基準は人それぞれです。
自分専用のブックマークとしてお使い下さい。
Goodって?
「トリック」「物語」「納得感」そして「良質」の4要素において「好き」を伝えることができます。
これらの要素において、各々が「良い」と判断した場合にGoodしていきましょう。
ただし進行力は評価に含まれないものとします。
ブクマ・Goodは出題者にとってのモチベーションアップに繋がります!「良い」と思った自分の気持ちは積極的に伝えていこう!