花が咲いたことで、2人は再び会うことができた。
一体どういうこと?
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さて、始まりました第35回正解を創りだすウミガメ!
突然ですが。
「正解を創りだすウミガメ」って何?という方、いらっしゃいますか?
そんな方に、この後の詳しくながーい説明の前に、このイベントがどんなものなのか簡単にご紹介いたします。35回という長きにわたって、多くの人を惹きつけてやまないイベントです!
しかし、この場に書くと、ただでさえながーい説明がさらにながーーくなってしまうので、ぜひ、下記の秘密の部屋をご覧ください!
https://late-late.jp/secret/show/d8MCaJqldjB6JV9SOlry2do4DhGUmmpYsCcIDbNu04c.
少しでも気になった方、実際の様子もぜひご覧ください!正解マーカーのついた歴代の優勝作品は、どれも意表を突かれ感動し、記憶に刻まれること間違いなしです!
少しでも気になったタイトルの会場があれば、ぜひぜひ覗いてみてくださいね!
実際の様子はこちら→https://late-late.jp/tag/tag/%E6%AD%A3%E8%A7%A3%E3%82%92%E5%89%B5%E3%82%8A%E3%81%A0%E3%81%99%E3%82%A6%E3%83%9F%E3%82%AC%E3%83%A1
申し遅れましたが、シェチュ王のたまにんじんさんに代わり今回の司会を務めさせていただきます、輝夜と申します。皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
このような状況では外出も難しいですが、創りだすのなかで咲き誇る花に、幸せな旅行気分を味わってみませんか?
それでは、詳しいルール説明へどうぞ!
★★ 1・要素募集フェーズ ★★
[5/14(金) 21:00〜要素が50個集まるまで]
まず、正解を創りだすカギとなる質問(要素選出)をしていただきます。
☆要素選出の手順
今回は8個の要素を選出します。
1.要素の投稿
出題直後から、YESかNOで答えられる質問を受け付けます。質問は1人4回まででお願いします。
皆様から寄せられた質問の数が50個に達すると締め切りです。
2.要素の選出
寄せられた50個の質問のうち、5個をランダムに、3個を主催者が選出します。
選ばれた質問には「YES!」もしくは「NO!」の返答とともに『[良い質問]』(=良質)がつきます。
※良質としたものを以下『要素』と呼びます。
※ただし、乱数により選ばれた質問が、問題文や前出の要素と矛盾するものであったり、条件が狭まりすぎるものであった場合は、出題者判断でその前後の質問を代替採用することがあります。
[矛盾例]田中は登場しますか?&今回は田中は登場しませんよね?(不採用)
[狭い例]ノンフィクションですか?(不採用)
[狭い例]登場キャラは1人ですか?(不採用)
[狭い例]ストーリーはミステリー・現実要素ものですよね?(不採用)
要素が揃った後、まとメモに要素を書き出しますのでご活用ください。
★★ 2・投稿フェーズ ★★
[要素選定後~5/24(月) 23:59]
要素募集フェーズが終わったら、選ばれた要素を取り入れた解説を投稿する『投稿フェーズ』に移行します。
各要素を含んだ解説案をご投稿ください。
らてらて鯖の規約に違反しない範囲で、思うがままに自由な発想で創りだしましょう。
※過去の「正解を創りだす(らてらて鯖・ラテシン版)」も参考になさってください。
** ラテシン版 **
http://sui-hei.net/tag/tag/%E6%AD%A3%E8%A7%A3%E3%82%92%E5%89%B5%E3%82%8A%E3%81%A0%E3%81%99%E3%82%A6%E3%83%9F%E3%82%AC%E3%83%A1
** らてらて鯖 **
https://late-late.jp/tag/tag/%E6%AD%A3%E8%A7%A3%E3%82%92%E5%89%B5%E3%82%8A%E3%81%A0%E3%81%99%E3%82%A6%E3%83%9F%E3%82%AC%E3%83%A1
☆作品投稿の手順
①投稿作品を、別の場所(文書作成アプリなど)で作成します。複数投稿も可とします。
質問欄で文章を作成していると、その間他の方が投稿できなくなってしまいます。
コピペで一挙に投稿を心がけましょう。
②すでに投稿済みの作品の末尾に終了を知らせる言葉の記述があることを確認してから投稿してください。
記述がない場合、まだ前の方が投稿の最中である可能性があります。
しばらく時間をおいてから再び確認してください。
③まずタイトルのみを質問欄に入力してください。
後でタイトル部分のみを[良質]にします。
④次の質問欄に本文を入力します。
本文の末尾に、おわり、完、など終了を知らせる言葉を必ずつけてください。
投稿フェーズ終了までは、本文、タイトル共に自由に編集していただいて構いません。終了アナウンス後の編集はお控えください。
⑤ 簡易解説(解説文の要約)をつけるかどうかは投稿者の皆さまにお任せしますが、簡易解説は「スッキリまとまった解説」に与えられる「スッキリ賞」の考慮事項になる可能性があることをご承知おきください。文字数やつける位置に指定はありません。
※作品のエントリーを辞退される際は、タイトルに<投票対象外>を付記して下さい。メイン投票は対象外となりますが、サブ投票は投票対象となります。
※ロスタイム投稿の場合、タイトルに<ロスタイム>を付記してください。投票対象外作品同様、サブ投票は投票対象となります。
また、少しでも気軽にご参加いただくために、今回の創りだすでも次回主催辞退制度を採用しております。
仮にシェチュ王を獲得しても次回の主催を務める時間・自信がない……という方は、投稿フェーズ終了後に設置される投票所にて、その旨をお伝えください。投票所の相談チャットにて「出題者のみに表示」にチェックを入れて書き込むか、輝夜までミニメールを送る形でも結構です。
★★ 3・投票フェーズ ★★
[投票会場設置後~5/30(日) 23:59]
投稿期間が終了したら、『投票フェーズ』に移行します。
お気に入りの作品、苦戦した要素を選出しましょう。フィーリングで全然OKです。心向くままに楽しみましょう!
☆投票の手順
1.投稿期間終了後、別ページにて、「第35回正解を創りだすウミガメ・投票会場」(闇スープ)を設置いたします。
2.作品を投稿した「シェフ」は3票、投稿していない「観戦者」は1票を、気に入った作品に投票できます。
※ロスタイム、投票対象外作品を投稿したシェフも、持ち票は3票とします。
それぞれの「タイトル・票数・作者・感想」を質問欄で述べてください。感想については、簡略なもので構いません。一文でも大丈夫です。
また、「最も組み込むのが難しかった(難しそうな)要素」も1つお答えください。こちらの投票数は「シェフ」と「観戦者」で共通です。
※投票は、1人に複数投票でも、バラバラに投票しても構いません。
※自分の作品に投票は出来ません。その分の票を棄権したとみなします。
※投票自体に良質正解マーカーはつけません。ご了承ください。
またこれらとは別にサブ投票として「匠賞」「エモンガ賞」「スッキリ賞」を設けさせていただきます。
これらの詳細は投票会場にてご説明いたします。
③皆様の投票により、以下の受賞者が決定します。
◆最難関要素賞(最も票を集めた要素)
→その質問に[正解]を進呈
◆最優秀作品賞(最も票数を集めた作品)
→その作品に[良い質問]を進呈
◆シェチュ王(最も票数を集めたシェフ=作品への票数の合計)
→全ての作品に[正解]を進呈
→見事『シェチュ王』になられた方には、次回の「正解を創りだすウミガメ」を出題していただきます!
※票が同数になった場合のルール
[最難関要素賞][最優秀作品賞]
同率で受賞です。
[シェチュ王]
同率の場合、最も多くの人から票をもらった人(=一人の方からの複数票を1票と数えたときに最も票数の多い人)が受賞です。(投票者の頭数です。)
それでも同率の場合、出題者も事前に決めた3票を投じて再集計します。
それでもどうしても同率の場合は、最終投稿が早い順に決定させていただきます。
◇◇ コインバッジについて ◇◇
シェチュ王……400c
最優秀作品賞…100c
最難関要素賞…10c
シェフ参加賞…5c
投票参加賞……5c
上記の通り賞に応じてコインを発行する予定ですので、皆様ぜひお気軽にご参加ください。
※「最優秀作品賞」および「最難関要素賞」については、1名分のコインコードしか用意がございません。
このため同率受賞の場合は、先に投稿された要素/作品の投稿者の方にコインコードを贈呈させていただきます。あらかじめご了承ください。
■■ タイムテーブル ■■
☆要素募集フェーズ
5/14(金) 21:00~質問数が50個に達するまで
☆投稿フェーズ
要素選定後~5/24(月) 23:59まで
☆投票フェーズ
投票会場設置後~5/30(日) 23:59まで ※予定
☆結果発表
5/31(月) 21:00 ※予定
毎度恒例、長い説明にお付き合いいただき、ありがとうございました!
細かいルールについては、そのフェーズが始まった時にでもご確認ください。
今回も、前回に引き続き、次回主催辞退してOK!感想は一文でOK!初めての方も大歓迎!な、気軽に楽しく参加できる「創りだす」を目指しております!
初めての方、自分はちょっと……と思わず、ぜひお気軽にご参加ください!
さて、前置きが長くなってしまいました。
これより、第35回正解を創りだすウミガメを開始いたします!
まずは要素投稿フェーズです!お忘れなく、要素投稿は1人4つまでですよ!
それでは、よーい…………
スタート!!!
結果発表です!ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました!
ライオンが鍵を握りますか?
YES NO 密室、消えた凶器、そして増え続ける被害者……。全ての鍵を握っているのは、1匹のライオンだった。本格ミステリー、「百獣の王の慟哭」金曜夜21:00、放送開始!
プランクトンがいないと困りますか?
YES NO 色々な魚の食べ物になっているプランクトン。確かに居ないと困るかもしれません。
本がしゃべりますか?
YES NO ファンタジーの序盤に出てきて、主人公の案内役を務める本を想像しました。実は口が悪い可能性が高いです。
パートナーと呼ぶのがふさわしいですか?
YES NO 要素だけでエモンガシリーズです。問題文の2人も、そんな関係なのでしょうか?
えんじますか?
YES NO スマホで変換しようとしたら、候補に「deep red」や「kindergarten child」が出てきました。予測変換ってすごい。
TETが信じますか?
YES NO TETって何?しかもTETが信じるの主語?乱数に選ばれなくてほっとした要素です。
よく言われますか?
YES NO 創りだすはハードルが高いとよく言われますが、そんなことは気にせず気軽に参加して欲しいものです。
ぺぺぺぺぺぺぺ ですか?
YES NO ぺぺぺぺぺっ!!ぺぺっ!!ぺー!……すみません。ぺがいっぱい並ぶと可愛いものでつい。
秋なのにセミがうるさいですか?
YES NO フライングで1匹で鳴いているセミはよく見ますが、遅れてきたセミはあまり見ない気がします。
バナナの皮で滑りますか?
YES NO定番のネタですが、現実でバナナの皮で滑る人も道端に落ちているバナナの皮も見たことがありません。
要素一覧をまとメモに記載しますので、ご活用ください。
①投稿作品を、別の場所(文書作成アプリなど)で作成します。複数投稿も可とします。
質問欄で文章を作成していると、その間他の方が投稿できなくなってしまいます。コピペで一挙に投稿を心がけましょう。
②すでに投稿済みの作品の末尾に終了を知らせる言葉の記述があることを確認してから投稿してください。
記述がない場合、まだ前の方が投稿の最中である可能性があります。
しばらく時間をおいてから再び確認してください。
後でタイトル部分のみを[良質]にします。
④次の質問欄に本文を入力します。
本文の末尾に、おわり、完、など終了を知らせる言葉を必ずつけてください。
投稿フェーズ終了までは、自由に編集していただいて構いません。終了アナウンス後の編集はお控えください。
※ロスタイム、投票対象外作品を投稿する場合、<ロスタイム>や<投票対象外>の付記をお願いいたします。
それでは、投稿フェーズ、スタートです!
皆様のご作品を、心よりお待ちしております。
勉強って、向き不向きがあると思う。
スタートからどんどん伸びていくヤツもいるし、俺みたいに下っていく一方の人間もいる。
優秀な人間が飛行機なら、俺は滑空がせいぜいのグライダー。①(5)
それも、紙を切り貼りして作った、頼りないペーパーグライダーだ。②(14)
そう、思っていた。
・
・
・
「ねえ、ちゃんと宿題やった?」
「あん…?うっせぇよ…。」③(20)
「え?」
……しまった、寝ぼけていた。
目の前にいたのは母さんじゃなく、同じクラスの女子だった。
「もー、びっくりした!」④(21)
「いやその、ごめん…。」
クラスには他にも人が居るだろうに、なぜ俺なんかに話かけてきたんだろう。
おかげで、入学早々に恥をかいたじゃないか。
やっぱり、人と関わるとろくなことが無い。ひとりが一番だな。⑤(39)
ちなみに、宿題はちゃんとやってきた。内申に響くからな。
・
・
・
試験は嫌いだ。
ちゃんと話を聞いているのに、なぜか点数が取れないから。
個人の能力差を見せつけられるようで、結果が出るたびに嫌になる。
「やあ、テストどうだった?」
「は?イヤミか?」⑥(43)
「あー、40点か。まあゼロじゃないし良いじゃない。」⑦(48)
「どんな励まし方だよ。そういうお前はどうなんだ。」
……クソ、しっかり満点とってやがる。
「でも、毎回宿題はやってきてるしさ。大切なのはそういうことの積み重ねだよ。」
「フン。まあ、内申に響くからな。Cの#くらいで。」⑧(49)
「え?何?」
……クソ。
テスト用紙は紙飛行機にして飛ばしてやった。よく飛んだ。
・
・
・
「ねえ、一緒に勉強しない?」
「は?なんで急に。」
「まあ私委員長だし?困ってる人はほっとけない、みたいな?」
「意味わからん…。」
ホントに意味はわからんが、俺としてはまんざらでもなかった。
このままでは、志望校に行けそうにないからだ。
「…頼むよ。」
「え、ウソ。いが~い!」
……やっぱり帰っていい?
もう、あと一年しかないんだ。
・
・
・
「やあやあ、テストどうだった?」
「まあ、なんとかな。」
「わ、見事な花丸!人生初の満点おめでとう!」
なんで人生初だと決めつけるんだ。
「これで、同じ学校行けるね。」
……まあ、そうだな。
一年後。
満天の桜並木を歩く二人は、お揃いの制服を身に纏っていた。
-終-
-----------------------------------------------------
◆簡易解説◆
勉強嫌いだった少年。
ある日、好意を寄せていた少女に誘われて一緒に勉強し、成績が急上昇。
テストでは見事に満点を獲得して、用紙に花丸を咲かせるまでになる。
二人は同じ学校を受験し、再び出会うことが出来たのだった。
[編集済]
-
【※要約】
花見の場所が同じだったので。
(俺視点ではともかく)奴の視点では会えました
~~~~~~~~~~~~~~~~~
「ちょっとお花摘みに行ってくるわ!!」
「花は上に咲いてるし~それにそれ男の人も使える言い回しだっけ?」
「③うっせぇ!!!(20)」
新歓を兼ねた花見の席で調子に乗って冷たい酒を飲みすぎたせいで胃と腹の具合が①グライダー (5)みたいに急降下、いや込み上げてもきてるから急上昇か?の真っ最中、公園のトイレにダッシュ…ダメだ、走ると勢い良く上からも下からも大噴射だ。
そんなことになってみろ。学生生活がバラ色(希望的観測)からドドメ色になってしまう。
ドンドンドンドン!!!
どうにか到着したトイレのドアを勢い良く叩く。
誰だよ!洋式使ってんの!和式だとえづきにくいんだよ!
漸く出てきた迷惑そうな顔のカップルなんか知らん!!二人で入って何してたんだよ!!!
……
…
「…ふぅ~」備え付けの②紙を切り(14)口元をぬぐい、とりあえずほっと一息。
出すもの出して少し落ち着いたしそろそろみんなの所へ向かおうとトイレを出ると、
「やあ、お久しゅう」
⑥虫の居所も最悪 (43)、胃と腹の具合どころか機嫌まで①グライダー (5)以下略していく俺を知ってか知らずか奴は「春風と酒が⑤身に沁みます(39)なぁ~」こっちは最悪みが染みそうだったよ!
こいつの④第一印象は最悪だった(21)。
悉く大学に落ちた俺にブチ切れた両親が連れてきた家庭教師だった。
教えるのはまぁまぁ良かったが…それ以外は語りたくない。
また会う可能性も⑦ゼロではない(48)と思ってはいたけれど、ゼロではありませんゲ○です。やかましい。
くっそー、通ってる大学が近いとこうなるのかぁ…
はぁ、こっちは会いたくなかったっていうのに。
などとつらつら思っているうちに腹の具合が耐えられないレベルで①グライダー (5)以下略してきて、
ああ、そういや飲んだ酒大分冷えてたなぁ
と便所にUターンしながら俺は思った。
トイレの外までついてきた奴は俺の用を足す音を聞くなり「⑧C# (49)。」とぬかしやがった。
とりあえず叩いておいた。それだけで済ませるなんて俺はなんて優しいんだろう。
【おしまい:約870字】
-
むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
ある雨の夜、家に帰った二人が目にしたのは、どろだらけの土間に水びたしのいろり。
用意していた質素な晩ごはんも食べ散らかされていました。
驚いて立ち尽くす二人の耳に、くーん、と小さな鳴き声が響きます。見ると、ずいぶんと長い間雨の中を歩いてきたであろう一匹の子犬が、部屋のはじっこでまるくなっていました。
そんな散々な出会いではありましたが、心やさしい二人はその迷子の子犬をシロと名づけ、一緒に暮らすことにしました。④
シロはおじいさんとおばあさんの深い愛情の中ですくすくと成長し、おじいさんのさんぽについてくるようになりました。
ある日、「わんわん!」と何か言いたげに鳴き続けるシロについて行くと、少し歩いた先で立ち止まったシロは地面をしきりにたたきます。
「ここほれわんわん!」
おじいさんがそこを掘ってみると、なんとびっくり、おおばんこばんがざくざく出てくるではありませんか。
やさしいおじいさんはシロをたくさんほめ、おおばんこばんの山は村のみんなに分けてあげました。
しかし、実はそんなシロを見ていたのはおじいさんだけではありませんでした。
おじいさんを呼ぶシロの鳴き声がうるさいと、一言文句を言おうとしていた村のいじわるばあさんは、お宝を見つけたのがシロだと知っていたのです。③
そのことをいじわるじいさんに話すと、自分もおおばんこばんを手に入れたいと思ったいじわるじいさんは、やさしいおじいさんにウソをついてシロを借りました。
そしてシロをむりやりひっぱると、お宝を探せとどなり散らします。シロが疲れて立ち止まると、いじわるじいさんはそこの地面を掘りました。すると、出てきたのはごみの山。
虫の居所が悪かったいじわるじいさんはカンカンに怒り、シロを棒切れでぶって死なせてしまいました。⑥
シロを迎えにきたおじいさんは、病気になって死んでしまったといういじわるじいさんの言葉を信じ、シロの遺体を家の庭に埋めてお墓をつくりました。
涙を流しながら手を合わせていると、墓標がわりに差しておいた木の枝がどんどん成長し、大きな丸太になりました。
とても驚いたおじいさんでしたが、この丸太でうすを作ってもちつきをすれば、シロと一緒にいられるような気がしました。
そうして作ったうすで、おじいさんとおばあさんはぺったんぺったんもちをつきました。
するとどういうわけか、もちをつくたびに、うすからはまた、おおばんこばんがあふれてきます。
またしてもこっそりそれを見ていたいじわるばあさんは、いじわるじいさんと共にうすを借りにきます。
やさしいおじいさんを言いくるめてうすを借りたいじわる夫婦は、同じようにぺったんぺったんもちをつきはじめます。
しかしこばんのかわりにあふれてきたのは、またまたごみの山でした。怒ったいじわるじいさんは、うすをかまどにほうりこんで燃やしてしまいました。
やさしいおじいさんがうすを返してもらいに来ると、いじわるじいさんはこわれたから燃やしてしまったと言います。
シロを二度も失ってしまった悲しみの中、おじいさんはうすが燃えたあとの灰を手に取りました。
その灰は風に乗って舞い上がり、枯れてしまった木にふりかかりました。
すると、なんということでしょう。
枯れはてていたはずの木の枝に、次々ときれいな花が咲いていくではありませんか。
シロが自分たちを見守ってくれているんだなと思ったおじいさんは、とってもうれしい気持ちになり、村のあちらこちらの枯れ木に花を咲かせてまわりました。
やさしいおじいさんは花咲か爺さんとしてだんだん有名になり、そのうわさはお殿さまも知るところとなりました。
自分で「はんぐぐらいだぁ」なるものを作ってみるほど珍しい物が好きなお殿さまは花咲か爺さんをたいそう気に入り、ぜひ目の前で花を咲かせてほしいとお城に呼びました。①
そんな花咲か爺さんをこころよく思わないいじわる夫婦は、おじいさんがお城に行く日の朝、こっそり灰をぬすみだしました。
そしてかわりに、こまかく切って炭をまぶした紙くずをおじいさんの家に置いておきました。②
そうとは知らない花咲か爺さんは、お殿さまの前で枯れ木に花を咲かせようとします。しかし、紙くずでは花が咲くはずもなく、おじいさんはお殿さまをだました大うそつきとして、牢屋に閉じ込められてしまいました。
その夜おじいさんは、牢屋の格子窓からきれいな三日月をながめては、おばあさんとシロを想って涙を流しました。⑧(三日月と格子窓)
次の日、おじいさんが捕まったと聞いたおばあさんは、信じられない気持ちで家をとびだしました。
するとどこからか、わんわん、とシロによく似た鳴き声が聞こえてきます。
鳴き声のする方へと歩いていったおばあさんが川のそばにたどりつくと、
ここほれわんわん!
そんな鳴き声が聞こえたような気がしました。
その声を信じたおばあさんは、そこの地面をほっていきます。するとそこには、見覚えのあるつぼが埋められていました。
よく見るとそれは、おじいさんが灰を入れていたつぼでした。昨日つぼごとぬすみだしたいじわるじいさんが、ここに捨てていったのでしょう。
中はほとんどからっぽでしたが、つぼの底にほんのひと握りの灰が残されていました。⑦
つぼを抱えてお殿さまのお城に行ったおばあさんは、その最後の灰でみごと枯れ木に花を咲かせることができました。
事情を聞いたお殿さまは、おじいさんとおばあさん、そしてシロの深い深い愛情に感動しました。もちろんおじいさんは牢屋から出ることを許され、ほうびをたくさんもらいました。⑤
こうして自分たちの家にもどったおじいさんとおばあさんは、シロが咲かせた花にかこまれながら、なかよくしあわせに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
【簡易解説】
いじわる夫婦の企みで、お殿さまを騙したとして牢屋に閉じ込められてしまった花咲か爺さん。
代わりにおばあさんが枯れ木に花を咲かせてみせたことで、おじいさんの無実が証明され、2人は再び会うことができた。
[編集済]
-
【簡易解説】
夕方、オシロイバナの咲く場所で出会った二人。
またその場所に行こうとするが、昼にはオシロイバナはしぼんでしまうため、場所が分からないでいた。
数年後、再び夕方に訪れたときにはオシロイバナが咲いていたため、確かにその場所に辿り着いて再会が叶った。
――――――――――――――――――――
あれは多分、小学三年生のこと。
憶えているのは、薄闇に映える鮮やかなピンクの花と、風に揺れる長い髪。そして君の、涼やかな声。ただ、それだけ。
************
「――っ、ふ、ぅ……」
乱れる呼吸が走ったせいか泣いているせいか、もう分からない。
親に怒られて、言い返して、また怒られて、あとはもう、売り言葉に買い言葉というやつだ。「言うこと聞けないんなら出ていきなさい」「言われなくても出てってやるよ」。
そんなやりとりもしょっちゅうで、ただ違ったのは、飛び出したのが数年ぶりに来るおばあちゃんの家だったということ。
なんとなく覚えのある道を走ったつもりが、すぐに自分がいる場所がどこかも分からなくなる。
家を出たときはまだ明るかった。数日後には夏祭りに行く約束をしているから、午後六時でもまだ明るいはずだ。つまり今暗いのは、木が生い茂っているから。
石段をたくさん登った気もする。そう、だから祭りをやる神社かと思っていたのだが、こんなに暗い場所ではなかったはずだ。こんな、木しかないような場所では。
どうしよう。
帰るくらいならできなくもない気もするけど、まだそう時間は経っていないはず。ここですごすごと帰るのもはあまりにも情けない。
ああ、もう嫌だ。帰りたくない、帰るわけにはいかない。なのに、帰りたい。
情けなくって、腹立たしくって。どうして、こんな――いて。
「なに……?」
おでこに何かがぶつかった。軽い感触。木の実か、葉っぱかもしれない。
なんだろう。地面に落ちただろうそれを探すべく足を踏み出して――軽い感触。今度は、足の裏に。
「あ」
ちょっと、嫌な予感。踏みつけてしまったものを手に取る。潰れているけど、見覚えのある形。
「紙飛行機……?」
今飛んできたもの、のはず。誰が、どこから。
木がたくさんあるとは言っても、隙間がないわけではない。石段をたくさん登ってきたとは言っても、まだ上がある。つまり、投げられる場所はいくらでもあるということだ。
きょろきょろと見回していると、近くから足音。
「……それ」
同い年くらいだろう。小さな一言ながら、すっと耳に入ってくる声。
「踏んだの?」
それ。……これ。手の内の紙飛行機、だったもの。この子のものだったのか。
淡々とした声は、だけど確かにこちらを責めているようで。でも、だって、しょうがないじゃないか。こんなもの、急に。
「こんなところで、投げるほうが悪いんだろ」
狙ったわけじゃないのだろう。人がいることにだって、気づいていなかったかもしれない。だからって、じゃあこっちだって気づかないわけで。
なんなんだ、一体。なんでこっちが責められなくちゃいけないんだ。
ああ、腹が立つ。相手に? 自分に? ――親に? 分からない、何に対してか、なぜかなんて分からないけど、ただひたすらに腹が立つんだ。(43)
「…………別に、いいけど」
自分は悪くない。それにいまさら言われたって、もうどうしようも――うん?
「要らないものだから。ただ聞いただけ。君が悪いとか、そういうことを言うつもりはなかったんだけど」
要らないもの。聞いただけ。言葉を理解すると同時に、顔がかっと熱くなる。つまり? 全部? 勘違いで?
「捨てるつもりだったんだよ、それ。折角だから折って飛ばして……でもゴミをそのままにしておくわけにも行かないし。人がいるとは思ってなかったら。それは、ごめん」
「あ、いや、こっち、こそ」
勝手に勘違いして、逆ギレみたいなことまでして。最低じゃないか。(21)
顔を上げられなくて、自然と視線はまだ手の内にある紙飛行機に注がれて。落ち着かない指は、潰れたそれを整えるでもなく、開くでもなく。紙に書かれているものが、目に入る。
「楽譜?」
「ん、ああ、そう」
「あ、ごめん」
人のものを、勝手に。どうして無意識に罪を重ねるんだろう。
「別にいいよ、見たって。言ったでしょ、ゴミだって」
そうは言っても。なんて思いつつも気になるものは気になって、指は欲望に正直で。
そっと開くとたしかに楽譜で、だけど音符に振られているのは歌詞ではなく、アルファベットだった。
「親にね、やらされてんだ。音がわかるからって弾けるわけじゃあないし、楽譜だって読めないのにね」
「このアルファベットは?」
「だから、音階。楽譜読めないから」
「音階? アルファベットが?」
「ん、ああ、アメリカとかそっちではそうやって表すんだって」
「じゃあ、ドがA?」
「いや、C。ついでにその『ド』はC#だね」(49)
「ふうん……変なの」
「ね、変でしょ」
だから嫌いなんだ。そう言って、唇を尖らせてみせる。最初の言葉は淡々として、冷たい雰囲気さえあったけど。
話してみれば、なんてことはない。
「君、名前は?」
もっと知りたい、なんて思ってしまうのは、どうしてだろう。
「真白。そっちは?」
「夕輝」
「夕輝は、どうしてここに?」
「親と、喧嘩して。おばあちゃん家に来ていたんだけど、喧嘩して、それで……」
「迷子?」
「…………そんなとこ」
知りたい、けど、知られるのは、……嫌だな。そういえばそうだった、喧嘩して迷子だなんて、あまりにも。
また、顔を上げられなくなる。出会ったばかりの子。たった今名前を知ったばかりの子に、きっとバカにされる。
だってバカだから。……ああ、本当に。バカなのは分かっている。それを改めるほどの努力をするつもりも、なくはないけど、まあほとんどない。(48)
なのに、バカにされるのには腹が立つ。なんて、自分勝手な。
「なら、一緒だ」
どこまでも情けなくて、また涙が出そうになる。それこそ情けないのに。
唇を噛んで必死に堪えていると、真白はからりと笑って言った。
……一緒?
「それ、ピアノ。嫌になって、抜け出して。紙飛行機って、いいと思わない? 滑空する、そういうの、グライダーって言うんだって。風の向くまま、コントロールが効かない。自由で、不自由で」(5)
グライダー。頭に浮かぶのは、ハンググライダーだかパラグライダーだか、パラシュートみたいなのをもって山から落ちる、あれ。
風の向くままというのは、たしかに紙飛行機と同じだ。自由で、不自由。分かるような、分からないような。
「一緒でしょ。自由で不自由。親なんてうるさくて嫌だけど、いないと困るし、嫌だし。帰りたくないけど、帰りたい」(20)
一緒でしょ。真白はいたずらっぽく笑う。
一緒、なのかな。だって紙飛行機は、こんなに情けなくない。
それに、真白も。抜け出してきたって言ったって、なんの当ても考えもない自分とは、やっぱり違う。……きっと、迷子じゃないし。
「さすがに暗くなってきたね。そろそろ帰ろっか。おおごとになったら困るでしょ。夕輝、祭りは知ってる? 明後日の」
「え、あ、うん」
「その神社の裏手なんだよ、ここ。帰れる?」
「あ……うん、大丈夫」
やっぱり、神社だったんだ。なら多分、道は分かる。
……それでやっぱり、真白は迷子じゃなかった。
「ならよかった。じゃ」
あ。声をかける間もなく、真白は振り返って、行ってしまう。
また、会える? 聞きそびれてしまった。軽やかな足取りに合わせて揺れる長い髪。いつの間にかすっかり暗くなった薄闇に映える、ピンクの花。
きっとまた、会える。
なんて。
不思議と、信じられる気がした。
************
気がした、だけだった。
次におばあちゃんの家に行ったのは、二年後。適当に散歩に行くとうそぶいて神社の裏山に登って、だけどあの場所にはたどり着けなかった。鮮やかなピンク色は、目立つはずなのに。同じく祭りの時期だから、季節違いなんてこともないわけで。
子供の少ない田舎だから、おばあちゃんに聞けば知っているかもしれない。けど真白のことを聞くのは、なんだかこっ恥ずかしくて。
それからも数年置きに帰省するたびに探したけれど、場所は分からないまま。そもそもあの場所に行ったところで、真白がいるだなんて保証はないんだけど。
「というか、いるはずないんだけど」
もう、十年も経っているわけで。自分にとっては思い出深くても、真白はきっと忘れているし。というか真白だってこの近くに住んでいたとは限らないし、住んでいたとしても今も住んでいるとは限らないし、あの日たまたまあの場所にいただけで、また来るとは限らないし。
そもそも十年も経って、もしまた会えたとしても、分かるかどうか。
だから今石段を登っているのも、もはやただの習慣だ。
「暗くなってきちゃったな……」
あの日も、こんな感じだったっけ。あれ以降は明るい内に来ていたから、なんだか懐かしい。
石段を登って、山道をいくらか登って、なんかこう、適当に。
空は見えないけどある程度先は見えるようなところに、鮮やかなピンクが。そう、こんな感じの。――こんな感じの?
記憶にあるよりも、ずっと背が低くて、ずっと少なくて。だけど近くに来れば絶対に分かる、鮮やかな。
確かに、この場所だ。
「ん、あれ」
どうして今まで気づかなかったんだろう。ここにだって、来たはずなのに。
首を傾げていると、近くで声がした。先客がいたらしい。
同い年くらいだろう。小さな一言ながら、すっと耳に入ってくる声。
……ん、あれ?
「もしかして、前にもここで会いました?」
探るように聞いてくる。涼やかな、少し高めの――だけど私よりは確実に低い、男の声。
「真白?」
風に揺れる髪は、すっかり短くなっている。(14)
それでもなんとなく面影はある――ような。だって、顔なんてろくに覚えていないから。
「やっぱり。ええっと、夕輝」
「覚えてたんだ」
「まあね。あ、もしかして、女だと思ってた?」
「え」
「あの頃、髪伸ばしてたもんね。声も高かったし、初対面じゃあよく間違えられてたよ」
なんだか余計に恥ずかしい。
だって、私よりずっと声も高くて、可愛くて。女の子にしか、見えなくて。
「実を言うとさ、いや失礼な話なんだけど、僕は夕輝のこと、男だと思ってたから。お互い様だね」
「ああ……よく言われてた」
正確には今も言われている。女らしくないだのなんだのと。もう、気にすることもやめたけど。
「ここ、よく来てたの?」
「お気に入りの場所だから。夕輝は、おばあちゃん家なんだっけ」
「うん。でも、何度か来てて……全然、見つからなかったけど」
この花、目立つはずなのに。そういって指差せば、真白は納得したようにうなずいて、笑う。
「そっか、あのときも夕方だっけ。昼間に探してたんでしょ」
「そうだけど……なんで?」
「これね、オシロイバナ」
オシロイバナ。そういえば、こんな花だった気もする。種の中に入ってる白い粉で遊んでいた記憶はある。
その名の通り白粉、なんだけど。女の子らしい遊びもしていなかったから、違う白い粉の遊びを。
「別名ね、ユウゲショウって言うんだって。夕方に咲いて、朝にはしぼんじゃうから」
「あ……ああ、それで昼に来たときには見つからなかったって、こと?」
それに、近くで会っていたとしてもきっと、真白だと分からなかった。多分、真白の方も私と分からないだろう。
目立つと思ってばかりいたから、しぼんだ花には気づかない。男と女と逆だと思っていたから、すれ違っても気づかない。
この時間、この場所じゃないと。
ああ全く、第一印象なんて当てにならない。
思えばあの日だって同じだ。それがいまさら、身にしみる。(39)
「ねえ、夕輝は今、自由?」
随分と唐突な。宗教の勧誘でも始まるのかな。まあ、それでもいいか。第一印象なんて、当てにならないし。
「全然不自由だけど、まあ、あと一時間位は」
自由で、不自由。子供だから? いや、きっと大人になっても。ただひたすらに流されて、どこかに行けるけど、どこにも行けない。
それでも、風に流されるからこそ、行ける場所がある。例えば、こことか。
自由で、不自由。だからそれもきっと、悪くない。
(おしまい)
- [正解]
「今日からこのグループに参加させていただくことになりました、竹鳥 光(たけとり ひかる)です!私の夢は、いつか青いバラを創りだすことです!よろしくお願いします!」
男は女の夢を聞いて、羨ましいと思った。
男は差し出された手を握ることなく、静かに答えた。
「…初めまして。私の名前は満谷 迅(みたに じん)と言います。貴方と同じ志を持っています――」
微笑む女に、しかし男は続けて言った。
「――いえ、持っていました。でも、青いバラを実現することはできそうになく…とても美しい夢ですが、その夢は、諦めた方がいいと思います」
女は目を丸くして答えた。
「でも、確率は0じゃないはずです!挑戦し続ければ、きっとできます!」【⑦】
真っ直ぐな瞳を向けられた男は目を伏せて、やはり淡々と答えた。
「…そうですね、頑張りましょう」
それからしばらくして、男は去った。
女が植物の研究者になってから、10年が過ぎた。研究内容は10年前から変わらず、青いバラを人工的に創りだすことだ。
今日は研究所を引っ越す日なので、女も同僚と共に荷造りをしていた。
年配の同僚の一人、蟹沢が、ポツリと言った。
「そういえば、迅さん今頃どうしてるのかなぁ」
蟹沢はハサミと一枚の紙封筒を持っていた。
それはある男、迅から届いた最初で最後の手紙だった。
そこには男の諦めが、ただただ書かれていた。
30年間に及ぶ研究の日々は実を結ばず、いつまで経っても成功しない、思い描くことすらできない自分自身が嫌になり…といった内容で、結局男は退職して音信不通になったのだった。
引っ越した先の研究所で、遂に、青いバラの花言葉が変化する時が訪れた。すなわち、『不可能』から『夢叶う』へと。
数年後、研究所をある男が訪れた。
「え…満谷先生…ですよね…?」
年老いた男は頷いた。
「お、お久しぶりです!えっと今蟹沢先生はいらっしゃらなくて、今すぐお電話を――」
女が慌ててプッシュ音を鳴らす中、男は言った。
「いえ、今日ここを訪れたのは…貴方に会うためです」
少しの沈黙の後、女が口を開いた。
「私に、ですか…?」
男は頷いて言った。
「あの時、貴方を否定してしまったことを、謝らせてください」
女は笑って言った。
「ああ、そういうことですか…確かに、第一印象は最悪でした。やっと尊敬する先生の下で夢を研究できる!って喜んでたんですから」【④】
すると、男は地面に手を突き頭を下げた。
女は慌てて男の肩に手をやり、
「そんなことしないでください先生!私は先生のおかげで、夢をもつことができたんですから!」
女は続けて言った。
「私、実は、先生のおかげで青いバラのことを知ったんです。先生がテレビに出て紹介して、私が興味を持って、それ以来今まで色んな人にできっこないって言われても、その度に「うっせぇわ!」って思って頑張ってきました」【③】
男は伏せたまま、口を開いた。
「夢を否定される辛さは、私も分かっていたはずでした。しかし、貴方に対してそれをしてしまった。…本当に、申し訳ない」
女は男の体を起こそうとしながら言った。
「きっとあの時は、虫の居所が悪かっただけです。疲れていたんです。顔を上げてください、先生」【⑥】
それでも頑として動こうとしない男に、女は言った。
「先生にお見せしたい子たちがいるんです。私達は、夢を叶えたんです」
女は男を研究室へ連れて行った。
男は心配そうに尋ねた。
「部外者は立ち入り禁止ではないのですか?」
「ええまあ、本当ならそうですけど、特別に許可を取ります」
扉を開けると、そこには青いバラがあった。
「先生、私達は夢を叶えました。それができたのも、先生の先行研究があったからです」
そう言って、女は青いバラに触れた。
「今はまだ最終調整段階なので大きくはないですけど、もうそのものは完成しています。…そうだ、触れられてはどうですか?」
男は首を振った。
「いえ、見るだけで十分です。見るだけで、身に沁みるような思いです」【⑤】
しばらく2人で青いバラを眺めた後、女は男に尋ねた。
「…先生、率直な意見をお聞きしたいんですけど、いいでしょうか?」
男は女に向き直り、はい、と答えた。
「あの、私の髪の毛、短すぎますよね…?実は願掛けで髪を伸ばしていたんですけど、思ったより切りすぎちゃって…」【②】
男は改めて女の髪に注目し、答えた。
「いえ、確かに短いですが、その髪型もいいと思いますよ」
それを聞いた女は、少し頬を赤らめて目をそらして言った。
「あ、ありがとうございます。どうせなら、もう少し髪が伸びてからお会いしたかったです。でも、先生はどうして今日来られたんですか?」
男は、そういえば、と呟いて答えた。
「実は、研究所を辞めたあと、私も引っ越したんです。研究のことを忘れようと、趣味のモグラ…モーターグライダーに時間を費やしたりしていました。そうしたら偶然、研究所が私の家の近くに引っ越して来ました」
驚く女に、男は続けて言う。
「…しかし、合わせる顔はありませんでしたから、近づかないようにしていました。でも、これもまた偶然に、研究所の近くに新しいレジャー施設ができました。そこにもモーターグライダーがあるということで、私はそれに乗ってみることにしたのですが、その時に、研究所内に青い何かが見えてしまったんです」【①】
女は青いバラを振り返って言った。
「…でも、この子たちはまだ外へは出していないはずです。それに外から見えるような所には、青い何かは置いていなかったような…」
今度は男が驚いて言った。
「そんな、確かに見たはずです」
女が持ってきた研究所の地図を見て、男はある場所を指差した。
「ここです。ちょうどこの、『C#』と書かれている場所だったと思います」【⑧】
女はひどく驚いて、しかし、どこか納得したように言った。
「…なるほど、そうですか。…不思議なこともありますね」
男は女の方を向いて尋ねた。
「ここには、何か青いものはないのですか?」
女も男の方を向いて答えた。
「…その場所は、ここです。この研究室のある場所ですよ」
男と女は目を瞬かせ、同時に青いバラの方を見た。
【簡易解説】
青いバラを誕生させるべく研究していた2人。
長く苦しい失敗の連続で、1人は自信を喪失して去ってしまう。
しかし、もう1人はその1人の研究を引き継ぎ、そして青いバラを咲かせることに成功した。
夢叶う青いバラのおかげで、2人はもう一度出会えたのだった。
(終)
[編集済]
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投票会場設置まで、しばらくお待ちください。設置が完了し次第、URLを貼らせていただきます。
現在、ロスタイム投稿も受け付けております!
タイトルに【ロスタイム】を付けて投稿していただければ、サブ投票の対象とさせていただきます。
https://late-late.jp/mondai/show/14334
【簡易解説】
就職活動の面接時、面接官と話に花が咲いたことで内定をもらい、入社後にその面接官と再び出会うことができた。
【詳細解説】
コンコンコン。ノックは3回。2回だとトイレと同じで失礼なんだそうだ。知るか。うっせえです。③(20)
「どうぞ」
「失礼します」
部屋の中には1人の面接官。30代くらいだろうか、思ったよりも若い男性だった。
練習通りに椅子の横に立って自己紹介する。
「水平大学理工学部4年の安藤健です。よろしくお願いします」
……ん?普通ならここで「おかけください」とか言われるはずなのに何もない。面接官を見ると彼もキョトンとした顔だ。
「……あぁ! どうぞ座ってください! 僕も面接官初めてで。流れとかイマイチ分かんないんですよねぇ。気合だけは入れようと昨日、髪切ってきちゃいました」②(14)
「…失礼します」
椅子に腰かけつつ、内心は「コイツ大丈夫か?」と心配になる。正直、第一印象は最悪だ。④(21)
「というわけで、お互い気楽にいきましょう! あ、今日担当します吉田です。よろしくお願いします。えーと、まずはコレを聞けばいいかな…安藤さんが学生時代力を入れたことは何ですか?」
手元のメモを見ながら吉田さんは面接を進めるようだ。いわゆる「ガクチカ」なのでこれは大丈夫。
「はい。3年間続けた航空部の活動です。航空部ではグライダーを使って空を飛びます。そのため、しっかりと訓練をしないと命の危険もあります。その中で周りとコミュニケーションを取りながら飛ぶことができたときはとてもうれしかったです」
「へぇ! 航空部! 座学もたくさんあって大変だったでしょ?」
「はい。航空安全に関する講座を受けました。そのおかげでチームワークの重要性を理論的に学べました」
(あれ? 定番の「あの反応」が来ないぞ…?)
「なるほどー。あ、そういえば。今までさ、就活の面接で『航空部でした。グライダー乗ってました』って言ったらだいたい『あ、鳥人間?』って言われない?」
そう。大学の部活でグライダー、と言うと鳥人間コンテストを思い浮かべる人も多い。滑空機部門では「グライダー型」の機体を作るチームが多いからだろう。
「そうですね。ただ、航空部と鳥人間サークルは全くの別物なんですけどね」
今までのイラっとしたことを苦笑に押し込める。
「だろうねぇ。僕の大学時代の友人に航空部の奴がいてね。『鳥人間』って言われる度に怒ってたのを思い出しちゃってさあ。『グライダーはれっきとした飛行機だ! それに乗るために免許だって取るんだからな!』って熱弁してて。①(5)安藤君も大変だっただろうけど、いい経験したね。その経験は絶対にこれからに生きるよ」
面接でそんなことを言われたのは初めてで、やさしさが身に染みた。⑤(39)
「はい。ありがとうございます! 航空部のことをご存じの方とはなかなか会えないのでとてもうれしいです!」
「たぶん、安藤君も何度も怒りたくなる場面はあったと思う。そこでグッと抑えていかに冷静に返せるかが仕事では大事になってくるんだ。実際、今日面接官をする予定だった部長はそうやって怒っちゃった奴と謝りに行ってる最中だからね」
笑いながらだったが、実感のこもった言葉だった。
「まあ、今回はアイツもかわいそうなところがあったんだけどねぇ。…安藤君はさ、何かを作ってほしいとお願いした相手が『実現できる可能性はゼロではありません』って言ってきたらどう思う?」⑦(48)
急になんだ? どう答えたらいいんだろう。もはや今までの面接マニュアルは通用しない。一方で、航空部の一件で吉田さんを大分信用しているのも確かだ。ここは素直に思ったことを言おう。
「そうですね… 『可能性はゼロではありません』と言われたら、ゼロとは言い切れないだけでかなり低いのかな、と思います。例えば、コストが莫大に必要だとか。0にしろ100にしろ、確実な根拠もなく言い切ることはできませんから」
「そうだね。我々エンジニアからすると、『ゼロではない』とはそういう意味だ。でもね、『ゼロじゃないならできるんだ』と思う人も多いんだ。そういう行き違いばっかだよ、この仕事は。アイツもね、そんな風に答えたんだ。そうしたらさ、案の定、相手は『できるもんだ』と思ってしまってね、こっちが作るための条件を示したときに怒っちゃったんだよね。…お互いに虫の居所が悪かったんだろうね、そこから言い合いになっちゃって今に至るって訳だ」⑥(43)
「そうだったんですね…」
さっきの『グッと抑えていかに冷静に返せるか』はそういう意味だったのか。
「まあ、譲れないラインはあるからね。そこは絶対に譲っちゃだめだけど、ビジネスにはこういう世知辛い面もあるんだってハナシ。……辛気臭くなっちゃったね! 未来ある若者にする話でもないから、ここからはフツーの面接に戻ろう! えーと、志望動機は?」
「はい。御社を志望いたしましたのは…」
***
「はい。ありがとうございます。あとは、特技・資格について教えてください。……お、基本情報技術者持ってるってことはプログラミングもやってるんだ。どの言語やったの?」
「試験はJavaで受けました。他に使ったことあるのはCとC#です」⑧(49)
「C#! ゲームでも作ったの?」
「さすがにそこまでは… 今後卒業研究でC#を使う予定なのでちょっとずつ勉強しました」
「なるほど。勉強熱心なのはいいことだ! 今後も頑張ってほしいな。…これで聞くことは以上かな。今日はたくさん話せて楽しかったよ。安藤君のいいところを他の人にも伝えておくね」
「はい。ありがとうございました!」
今までの面接とは違い、心からの感謝だった。
***
「…新入社員のみなさん。入社おめでとう。わが社は……」
4月1日。俺は入社式会場にいた。このあとは配属先の部署に挨拶にいく予定だ。そんなに大きくない会社だから新入社員も多くはないけど、各部署の先輩社員が会場の外、桜の木の下で待っていた。
「今日からお世話になります! 安藤健です!」
「吉田です。またよろしくね、安藤君」
【終わり】
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参加者一覧 13人(クリックすると質問が絞れます)
ついにやって参りました、「第35回正解を創りだすウミガメ」結果発表のお時間です!!
今回は投稿数こそ少なめながら、エモンガから匠、スッキリまで、様々な解説が創りだされました。
そして、たくさんの方にご投票いただき、最高に盛り上がってこの時間を迎える事ができました!ありがとうございます!!
……え?前置きが長いって?
すみません。皆様お待ちかね、結果発表へ移りましょう!
サブ賞も多くあるため、サブ賞は各ジャンル一位のみ、最難関要素と最優秀作品賞はベスト3を発表していきます!
(投票所の方では全ての開票結果をまとめておりますので、そちらもどうぞ!)
早速発表いたしましょう!!まずは、最難関要素です!!
◇最難関要素賞◇
第三位(1票)
🥉③うっせえです(HIRO・θ・PENさん)
🥉⑥虫の居所が悪いです(アカガミさん)
最近流行りのあの曲を思い出させる「うっせえです」。口調から、作品の風合い自体を決めてしまいそう……という声もありました。
また、「うっせえです」と一緒に回収されることも多かった「虫の居所が悪いです」。ウミガメではあまり扱わない、ストレートに感情を表現する要素に苦戦した方もいらっしゃいました。
それでは続きまして、2位の発表です!
第二位(3票)
🥈①グライダーが重要です(アルカディオさん)
いや難しい!グライダーだけでも登場させるのはなかなか難しい上、それが「重要」。苦戦した方も多かったようです。
ハンググライダーからモーターグライダーまで、様々な種類のグライダーが創りだされました。
しかし、まだ3票です。
圧倒的な差をつけて最難関要素賞に選ばれたのは……
第1位(6票)
🥇⑧C#です(HIRO・θ・PENさん)
納!得!
プログラミング用語か音楽用語の2択しかない上、どちらも自然に物語に登場させる事が難しい。さらにどちらの意味で使ってもある程度の専門知識が必要になりそうで、またまた使いにくい。
あまりにも難しい、文句なしの最難関要素です!
それではサブ賞の発表に移ります!
まずは匠賞から行きますよ!
最も皆様を唸らせたのは、この作品だっ……!
◇匠賞◇
第1位(4票)
🥇③ 『心に花を咲かせましょう』(「マクガフィン」さん)
🥇④『白くて、赤い』(ハシバミさん)
誰もが知るあの昔話に絡めて展開される自然な物語に、誰もが深く納得させられた『心に花を咲かせましょう』。昔話特有の世界観に、C#やらグライダーやら意味不明な要素たちを組み込む技術にも、賞賛の声が集まりました!
そして、1度だけ出会った2人の再会を丁寧に描いた『白くて、赤い』。無茶苦茶な要素たちを自然に回収していくその腕前、そして「2人が会えなかった理由」の謎が解ける鮮やかな問題文回収。匠の腕が光る物語に、惹き付けられる方が続出しました!
「マクガフィン」さん、ハシバミさん、おめでとうございます!
◇エモンガ賞◇
続いてはエモンガ賞です!
勝利のエモンガが微笑んだのは……?
第1位(7票)
🥇④『白くて、赤い』(ハシバミさん)
匠賞1位を獲得したこの作品。続いて、エモンガ賞も2位と大差をつけて受賞です!
「自由で、不自由」。一貫して語られるこの一言に、痺れた方も多かったのではないでしょうか。2人の関係が、感情が、丁寧に丁寧に描かれたこの作品、エモンガでないはずがありません。究極のエモンガに、拍手!
ハシバミさん、おめでとうございます!
◇スッキリ賞◇
サブ賞の最後を締めくくるのは、スッキリ賞です!
皆様を最もスッキリさせた作品は……?
第1位(4票)
🥇①『どうせ赤ならマルが良い』(クラブさん)
これぞスッキリ!!
「花丸」の意外さ、そして再び会えるようになるまでの自然さ。更には流れるような要素回収に加え、非常に読みやすい文体。もはや正解では?とまで思わせる、納得度の高い問題文回収も印象的な作品です。
ちなみにクラブさん、今回でスッキリ賞2連覇となります。おめでとうございます!
さて、続いては皆様お待ちかねの本投票です!
心の準備はよろしいでしょうか?
では、発表いたします!!
◇最優秀作品賞◇
第3位(2票)
🥉③ 『心に花を咲かせましょう』(「マクガフィン」さん)
牢屋に閉じ込められた「花咲かじいさん」?!?!
誰もが知っている昔話、「花咲かじいさん」。その世界観の中で次々と回収されていく問題文と要素。その華麗さには、誰もが目を見張ることでしょう!皆様を苦しめた「C#です」の回収では、あまりにも予想外すぎる回収に震えます!
「マクガフィン」さん、おめでとうございます!
第2位(3票)
🥈①『どうせ赤ならマルが良い』(クラブさん)
咲いた花は、「flower」じゃない?!?!
これぞ水平思考!な問題文回収、エモンガで甘酸っぱい青春を見守っていたらいつの間にか要素が回収されてる?!
わずか900字に詰め込まれたとは思えない、衝撃と感動をとくとご覧あれ……!
クラブさん、おめでとうございます!
さて、いよいよ最優秀作品賞の発表となります。大接戦を制し、栄えある最優秀作品賞を受賞したのは……!
自由で、不自由。だからそれもきっと、悪くない。
第1位(5票)
🥇④『白くて、赤い』(ハシバミさん)
エモンガ!!エモンガすぎる!!!
名前しか知らずに別れた2人。もう一度会いたいと願い、探し続けた人にいつまでも会えないのは、ある理由があった……?真実が明かされる瞬間の感動は、同時に美しく回収された問題文の効果と相まって、強すぎる衝撃を残していきます!
感動の再会のシーンでは、もうひとつのある真実が明かされて……?
匠賞、エモンガ賞の1位も同時に獲得したこの作品。問題文、要素、物語。どれをとっても見事なこの作品が、最優秀作品賞を受賞です!
ハシバミさん、おめでとうございます!!
そして、最後を飾る、シェチュ王の発表に移りましょう!
……と言いつつも、今回は複数投稿なさった方はいらっしゃいませんでした。
つまり、今回のシェチュ王はもちろんこの方……!
シェチュ王
👑ハシバミさん👑
おめでとうございます!
作品数こそ少なめだった今回ですが、投稿された作品はどれも素晴らしいものばかり。そんな中で優勝されたハシバミさんに、盛大な拍手をお願いいたします!!
また、見事シェチュ王に輝いたハシバミさんには、次回である「第36回正解を創りだすウミガメ」の出題権が賞与されます!!
本当に、おめでとうございます!!
さて、閉幕の時間となりました。
これにて「第35回正解を創りだすウミガメ」は終了となります!
改めまして、皆様、本当にありがとうございました!!
輝夜さん、主催お疲れさまでした。拙作に感想・投票くださった皆様、ありがとうございます。投稿作を読んで、ああこれは無理だなと思っていたので、信じられない気持ちでいっぱいです……。次回の出題、精一杯務めさせていただきます。改めまして、本当にありがとうございました![21年05月31日 22:02]
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!そして、ハシバミさん、シェチュ王おめでとうございます!無事今回を終えることができたのは、ひとえにご参加いただいた皆様、運営に当たりご協力くださった皆様のおかげです。本当に、ありがとうございました!コインコードは後ほどミニメにて配布いたしますので、しばらくお待ちください。[編集済] [21年05月31日 21:25]
※相変わらずの長さなので簡易解説がつきました。
①『どうせ赤ならマルが良い』(クラブさん)
納得!です。今回問題文を設定した時に、花が本物の花ではなくなることは想定していましたが、「花丸」は想定外でした。確かに花であることは間違いありません。クラブさんは毎回、もはや正解では?という解説を神速で投稿されていて、本当に驚くばかりなのです。
そして、そこから「再び会うことができる」への繋ぎ方として、同じ学校に受かった、というのは極めて自然なものだと感じました。「再び」会うためには、一度会えない状況にならなくてはなりません。そして、花が咲いたことによって会えなくなった理由となる「障害」が取り除かれるわけなのですが、そこまでの流れが本当に流れるようで美しいです。まさに匠の技です。
そして、要素回収、特にグライダーの回収が印象に残っています。飛行機と比較しての「滑空がせいぜいのグライダー」という表現に痺れました。刺さりました。要素回収とはいえ、とても好きです。こんな文章が書きたい……。結末も、40点から満点とは、どれだけ努力したのでしょうか。ただ、地の文で語られている思考や口調、中学生(制服ということは高校受験を想定されていますよね?)で1年前から志望校が決まっていることから、語り手の真面目さやひたむきさがひしひしと伝わってきて、一気に成績が伸びるのも頷けます。締めの一文には、ふっと口元が綻びました。表現も含めとっても素敵です。2人の合格に、これからの青春に、乾杯!
【簡易解説】
「花」の解釈、そして問題文の2つの出来事の繋げ方、どちらをとっても匠の技が光る作品でした!
②『天体観測は月の光は避けましょう』(きの子さん)
色々と書きたいことはあるのですが。
どうして全てが「トイレ」のたった一言で華麗に回収できるんですか!!
この難しい問題文(すみません)とわけわからない要素(文句は乱数くんまでお願いします)がたった900字程度で、しかもほとんどトイレで回収されていくのに圧倒されました。
C#の回収がまた……なんというか、お見事です。というのも、この要素、プログラミング用語として使うにしろ、音楽用語として使うにしろ、回収するのがなかなか難しいです。どちらの用語も日常生活の中で使うことは少なく、物語全体の世界観に影響を及ぼしかねません。最初から回収計画を立てて物語を設定しないと回収できない要素と言いますか。それが極めて日常的に(?)回収されているのには本当に驚かされました。家庭教師の音感が気になりますが。日常的な音から音程を取るのは、実はなかなか難しかったりします。実は楽器経験者だった……?などと考えてしまいました。
そして語りの凄まじいスピード感。テンポの良い文章、そしてドドメ色(調べてみたらなかなか強烈な色でした)だったり以下略だったり、日常の一場面を切り取ったような文章が印象に残ります。良い意味で小説的な堅苦しさがないと言いますか。次から次へと押し寄せる変な笑いを抑えるのに苦労しました。ちなみに電車の中でした。完全に読む場所間違えました。語り手のキャラが滲み出る、勢いのいい語りが素敵でした。
【簡易解説】
問題文と要素を一つに落とし込むことのできる見事な設定、スピード感あふれる語りが印象的な作品でした!
③ 『心に花を咲かせましょう』(「マクガフィン」さん)
すごい……。感動です。この発想はありませんでした。まずは「花が咲いたことで」という部分。普通、非現実でないのならば、花を人為的に咲かせることはできません。つまりは自然現象なわけです。「自然現象」から起こった出来事に繋げるのが難しいことは過去の創りだすでも証明されているため、自然現象を人為的な影響にする解説も創りだされます。しかし、この方法には致命的な欠点があります。非現実要素を取り入れる以上、問題文を回収するためだけの設定、感を与えかねないところです。前置きが長くなりましたが、その点において、「マクガフィン」さんの創りだされた解説は素晴らしいと感じました。実際に存在する昔話を元にすることで、納得感を生み出すことが難しい非現実要素に、驚くほどの納得感を生み出しています。お見事です!
そして物語。やはり「マクガフィン」さんは物語にあった文章を書かれるな、と感動しました。非現実から現実まで。子供から大人まで。世界観にピッタリとあった文章は、毎回物語に引き込まれる1つの大きな要因です。そして今回は、昔話風という独特の語り口、雰囲気を見事に表現されています。さながら、誰かが読んでいるのを隣で聞いているかのよう。惹き付けられることは必然です。元々の昔話の雰囲気を崩さず、途中で少し変えたオリジナルストーリーを展開する。簡単にできることではありません。もともと地域によって少しずつ内容は違ったりしますし、こんな「花咲かじいさん」があっても素敵かもしれません。最後のシーン、シロによく似た鳴き声はエモンガすぎました。
【簡易解説】
昔話と絡めることで生まれた、非現実要素にもかかわらず素晴らしい納得感、昔話の雰囲気を崩さない文章に魅せられる作品でした!
④『白くて、赤い』(ハシバミさん)
うわぁ好き……です。エモンガです。幼い頃の思い出。名前しか知らずに別れたあの子。そして再会。エモくないわけがありません。大好きなので先にストーリーの感想を。
まずは。完全に騙されました。2人の性別、完全に勘違いしていました。よく読み返してみれば、どこにも女だとは、男とだとは書いていないのです。そして、「性別について書いていない」ことに違和感を覚えさせない筆致に感動です。思い込んでいるだけではなく、書かれていないことにさえ気づかせない。それだけ私が、ハシバミさんの描かれる世界に没頭していたのだと思います。
そして2人の再会、性別が明かされる場面。「今、自由?」という問いかけに心を揺さぶられました。2人の子供の抱える思いが、その思いの変化が印象に残りました。自由で、不自由。不思議と心に残るフレーズです。作品全体に漂う、どこか危うい空気と言いますか、儚さといいますか、そんなところが本当に素敵でした。
そして問題文回収もお見事です。咲いた花を再会のための目印にする、という発想がもうエモいです。そして夕方になるとしぼんでしまい、会うことができない、というのもエモンガです。あれ、回収の感想を書いているつもりがいつの間にか物語の感想になっていました。それくらい素敵です。……話を戻します。夕方にしか咲かないので気づけなかった、という解釈は、花が咲いた、という原因要素と再び会えた、という結果要素を、非常に強く結びつけているような気がします。花が咲いた「こと」そのものに意味を持たせる解釈といいますか。
そして要素回収、特にC#が綺麗に回収されています。最初に登場したC#が、後の「自由で、不自由」という物語の大切な部分に関わってくる。たとえ問題文を回収する必要がなくとも、C#のシーンは物語上必要なシーンです。要素を回収するためだけのシーン、言葉ではなく、物語の中心となっているこの難易度の高い要素に驚きました。
【簡易解説】
どこか儚さの漂う物語の素敵な雰囲気と、説得力の高い問題文回収、自然な要素回収に惹かれる作品でした!
⑤『謎』(知らない人さん)
「不可能」から「夢叶う」へ。とても素敵な物語でした。青いバラという1つの花を中心に、丁寧に丁寧に2人の関係性が描かれています。
視点は三人称であり、主人公たちに名前はありません。そして、2人の心情を直接表現する言葉、いわゆる心理描写がかなり少なく、そして短いです。しかし、感情ははっきりと伝わってきます。例えばこの文。
>> 真っ直ぐな瞳を向けられた男は目を伏せて、やはり淡々と答えた。
この一文から痛いほどに伝わってくる、男の感情がとても印象に残りました。私がよくやってしまうのですが、心情描写は、言葉をつくして人物の感情を描写しようとして、冗長だったり目が滑る文になってしまったりすることがあります。しかし、この文は違います。短い一文から、心理描写ではない行動の描写から、感情がひしひしと伝わってくる。こんな表現ができるようになりたいです。
上手く言えないのですが……地の文、語りのもつ独特な雰囲気に惹かれました。
そして問題文回収。「青いバラ」という題材がもう素敵です。実現不可能と言われている花を扱うことで、「花が咲いた」ことに深くエモンガな意味を持たせ、強い印象が残ります。そしてそこから2人が再び会うことになるのも納得です。1度は諦めた夢、それは気まずさや抵抗を押し切ってでも見たいものであることは間違いありません。ウミガメのスープに落とし込むなら、まさに「物語スープ」な、素敵な物語でした。
【簡易解説】
文体や語りから滲み出る独特の雰囲気が素敵であり、心情が関わる「物語スープ」を彷彿とさせる問題文回収が素敵な作品でした!
⑥『桜の下で二度目のよろしく』(ほずみさん)
「グライダーは重要です」の活かし方が美しすぎます。この要素、最難関2位に選ばれていることもあり、とても使いにくいです。というのも、グライダーを登場させるだけでは不十分で、それを「重要」にしなければいけないからです。ちなみに個人的には最難関要素予想はこれでした。全体を見ても、「重要」であることをここまで活かしきった作品はなかったように思います。話に花が咲いたことで内定を貰ったのなら、話に花が咲く原因となったグライダーは間違いなくとても重要です。見事すぎる要素回収に、感動です。
そして、話に花が咲く、という解釈。個人的にはこの回収をする作品もあるかな、と考えていたので、お、やはり来たか!という感じだったのですが、そこから再び会うまでの流れには意表をつかれました。話に花が咲いたことで内定を貰う。その流れの自然さに驚きました。
そして物語です。久しぶりにほずみさんの世界に浸れて嬉しいです。2人が話に花を咲かせているシーンは、こちらもふむふむと納得しながら読んでいました。色々と考えさせられました。
会話文と地の文のバランスも絶妙で、実際に面接会場にいるかのような臨場感というか、現実感があり。ドラマチックなエモンガも多い中で、どこまでも現実的で説得力のある物語が印象に残りました。
【簡易解説】
「グライダーは重要です」に代表される見事な要素回収と、「話に花が咲く」という問題文回収、そして説得力のある物語が印象に残る作品でした!
◆問題文◆
花が咲いたことで、2人は再び会うことができた。
一体どういうこと?
◇要素一覧◇
①グライダーが重要です(5)
②かみをきります(14)
③うっせえです(20)
④第一印象は最悪です(21)
⑤みにしみます(39)
⑥虫の居所が悪いです(43)
⑦ゼロではありません(48)
⑧C#です(49)
【■■タイムテーブル■■】
☆投稿フェーズ
要素選定後~5/24(月) 23:59まで
☆投票フェーズ
投票会場設置後~5/30(日) 23:59まで ※予定
☆結果発表
5/31(月) 21:00 ※予定
自分が正解した問題・出題者への賛辞・シリーズ一覧・良い進行力など、基準は人それぞれです。
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Goodって?
「トリック」「物語」「納得感」そして「良質」の4要素において「好き」を伝えることができます。
これらの要素において、各々が「良い」と判断した場合にGoodしていきましょう。
ただし進行力は評価に含まれないものとします。
ブクマ・Goodは出題者にとってのモチベーションアップに繋がります!「良い」と思った自分の気持ちは積極的に伝えていこう!