平均気温39℃といつになく厳しく、うんざりするような猛暑に町の人々は見舞われていた。
男も例外ではなかったが、今日、ついに新しくエアコンを手に入れることができた。
エアコンの電源を入れると、自身の暑苦しい部屋にクーラーの冷気が瞬く間に充満した。
程よい涼しさを全身に感じる。するとその瞬間、男はすぐさまエアコンの電源を切ったかと思うと、
たまらず嘔吐して床中にモノを吐き散らかしてしまった。
部屋にまだ涼しさが残る中、男は胃が空っぽになるまで吐き続け、そして吐き出すものなどとうに無くなった後も、酸っぱい胃液をそのまま吐き続けた。
目からは涙が止まらなかった。
それ以降、少なくともこの夏の間、男はクーラーを忌避し続け、
依然として猛暑が続く中自分からエアコンを使用することは一度もなかった。
一体男の身に何があったのだろうか?
俺的好きだけど辛い問題
目から涙が止まらなかったのは、何か辛い事実に気がつき、悲しくて泣いてます?
No 悲しくて泣いてはいますが、この頃にはすでに辛い事実に気づいています [編集済] [良い質問]
男はクーラーをつける前から死体の存在を知っていましたか?
Yes クーラーをつけるよりももっと前から死体の存在を知っていました [良い質問]
かつて両親を惨殺された経験を持つ男は、死体安置所で両親の身元確認を求められた際のあまりの凄惨さがトラウマとなっていた。その状況が、死体の劣化を防ぐための冷房風とともに男の記憶に残っており、このたび、冷房風を直接浴びたことが引き金となって、その時のトラウマが呼び起こされた、ということですか?
正解でいいでしょう! ただ、両親は人の手によって惨殺されたわけではなく、男が冷気でトラウマをフラッシュバックさせるに至った背景には、正解である『両親を遺体安置所で見つけたトラウマがあるから』以外の要素がもう1,2個重なってます。男の今いる状況を推理できますか? [編集済] [正解][良い質問]
(17)津波ですか
Yes! 一ヶ月前、両親は津波で死亡し、男自身も津波に遭い、なんとか助かったものの溺死寸前になった経験がありました! [編集済] [良い質問]
つまり何らかの経緯を以ってそこにたどり着いた訳ですが、その背景を推理することはできますか?[編集済]
遺体の身元確認のためにいくつもの水死体を見た事がトラウマになっていますか?
Yesなんだけど、そのいくつもの水死体を確認する「直前までの状況」がよりパンチを効かせてます [編集済] [正解][良い質問]
遺体安置所に到着して以降の状況が重要ですか?
Yes! 男は遺体安置所で一晩過ごしてました(ここヒント出しすぎたなー) [編集済] [良い質問]
男は死んでいると思われて他の遺体と一緒に寝かされていましたか?
No! 男は遺体安置所にいる人たちが生きてると勘違いしてそこで一晩を過ごしていました! [良い質問]
(29)死んでいると気付かず、その場にいた女を抱きましたか
No! Oh my god。それの方がもっとトラウマになりやすかったですねー。
参加者一覧 6人(クリックすると質問が絞れます)
男は山道を全速力で逃げていたが、後ろから時速40kmで容赦なく襲いかかってくる津波に飲み込まれてしまった。
しかし無我夢中で近くの崖によじ登ることで、男は奇跡的に生き延びることができた。
茶色い濁流は男のそばで全てを引き摺り込むように山道を駆け上がっていった。
男はなんとか避難に成功すると、山に位置する避難所でしばらく生活することになった。避難所はたくさんの人混みでごった返していたが、彼の父親と母親の姿は見かけられない。
そう、男は唯一の肉親である両親とはぐれている状態だったのだ。
ある日、喧騒と暑苦しさと不安に耐えかねて、男は避難所から出ていくことにした。
もし近くに別の避難所があったら、そこで両親と合流できるかもしれない。男はどこかにいるはずの二人に会いに行こうとした。
そうして夜になり、月明かりに照らされながら山道を進んでいると、別の避難所のような建物を発見した。
中は真っ暗だが、どうやら体育館みたいだ。沢山の人が毛布に身を包んで眠っているのが見てとれた。起きてる人はいない。そしてクーラーが効いてるのか中はひどく涼しかった。
こんなところにもたくさんの人が避難していたのかと男は期待に胸を躍らせた。ただこの見えない暗闇の中、ぐっすり眠ってる人たちを起こしながら両親を探すのもなんだか憚られて、男は焦る気持ちを抑えながら、この避難所で一夜を過ごすことにした。
適当な場所でゴロリと横になる。
明日になったらこの人混みの中から両親を探そう。きっと二人ともこの中にいるはずだ。
そうして彼はこれまでの現実感のない被災体験を一人思い返しながら眠りについた。
…
…目が覚めると朝だった。
肌寒さに身を震わせながら起床すると、思い出したかのようにあたりを見回す。まだ自分以外みんな寝ている。ここにいるかもしれない両親を探そうと立ち上がる彼だったが、周囲を観察してある違和感を覚えた。部屋で眠っている人たち全員ピクリとも動く気配がない。眠ってるというよりかは、ただ物体がそこに横たわっているだけかのように見えた。
なんだか寒気がした。
男は恐ろしくなって、逃げるようにその場から離れた。
が、建物を出る寸前、ばったりと生きてる何人かと鉢合わせ、男は心臓が飛び出そうになった。男は彼らに大丈夫でしたかと心配されたので、一体ここはどこなのかと質問した。そして彼らから話を聞き答えを知ると、恐怖と目眩でその場にぶっ倒れそうになった。
ここは遺体安置所だった。男は一晩中、無数の死体に囲まれて過ごしていたのだ。
男は戦慄した。通りで冷房が効きすぎてるわけだ。今の今までそうとは気付かず屍の隣で一緒に横たわっていたことを想像して身震いした。
男は勇気を振り絞って係の人たちに尋ねた。両親を探している。まさかここにはいないと思うが、この二人について何か目撃情報はないか…
男は彼らに、この中にいないか確認してみてくれと言われた。
半ば強制的に確認作業が始まった。体育館をまわり、見たくもない他人の死顔を何度も確認した。人の死顔を見たのはこれが初めてだった。吐きそうなのをこらえながら、今ここに両親がいないことを祈った。
そして二つの遺体が目に留まった。
二つとも全身に毛布がかかった状態でそこに横たわっていた。
彼の動きが止まった。一瞬で誰か分かった。体中から冷気が吹っ飛んだ。
恐る恐る毛布をめくると、二つの変わり果てた顔が露わになった。
何が起きているのか理解できなかった。頭がはっきりしなかった。いや、男の脳内が総動員して感覚を麻痺させようとしていた。そうして目の前の光景をうまく理解できないでいると、体から吹き飛んだはずの冷気が「嘘をつくな」と再び彼の体に纏わりつき出し、涼しさをじんわりと素肌に押し付けてきた。
気がつくと彼は、元の暑苦しい避難所に戻っていた。そこで隅の方に座り、ぼんやりと宙を見つめていた。
記憶喪失したみたいに今に至るまでの記憶がなかった。なんで今ここにいるんだろう。何があったんだっけ。
しかし暑苦しい避難所内で一人呆然とする最中、男は思い出した。
両親が遺体安置所で死んでいたこと
あの後父と母の亡骸を埋火葬場へと運んだこと
そしてその足で今こうして避難所まで戻ってきたこと
目を背けていたはずの事実が押し寄せてくる。彼がなんとかそこから思考を外そうとすると、身体中に寒気が走った。暑くて敵わないはずなのに震えが止まらなかった。
そうしていくつかの”汚れ”が頭の中で重なった瞬間、辺りの景色が急激に暗転し、まるで世界が180度回転したかのような衝撃と猛烈な絶望に、彼はどうしようもなくその身を打ち砕かれた。
彼は完全なるパニックに陥った。最愛の人達を亡くしたショックだけでなく、忘れようとしていた被災の記憶も呼び覚まされ、本能的な死の恐怖、ストレス、トラウマ、悲しみ、痛み、絶望全てが、ダムが決壊したかのように頭にのし掛かってきた。
お父さんとお母さんが死んだ。現実だと信じたくなかった。夢だと思いたかった。夢であって欲しかった。でも今自分はこうしてここにいて、どうやら現実らしいと認識した瞬間、また頭の中に津波が押し寄せて、気づいたら喉の底から唸り声を上げていた。もはやどうすればいいのか彼には何もわからなかった。心の中にあったのは悲しみではなく、ただ恐ろしいという感情だけだった。もがき苦しみながら深く深く海の底の底の底の方へと沈んでいく感覚だった。
あれから1ヶ月が経過した。
依然被災地の人々は蒸し暑い避難所生活を余儀なくされていたが、ようやく新しく仮設住宅が建てられ、多くの人がそれぞれの仮住まいへと移住した。
男も移住し、自分の部屋を快適にするために早速クーラーの電源をオンにした。
でもダメだった。涼しさを全身に感じると、男は先ほどまで胃袋に押し込んでいた味噌汁やパンなどを全て吐き戻した。
ビチャビチャと音をたてて吐瀉物が床を汚す。
すると毛布から顔を覗かせた両親の顔が脳内にフラッシュバックして、男はさらに胃の中のものを吐き戻した。
胃が空っぽになるまで吐いた。吐くものなどとっくに無くなっていたがそれでも吐き続けた。
室内が熱気を取り戻していく。彼はなぜ自分たちがこんな目に合わなければならないんだと怒りと悲しみに身を震わし、いつまでも涙を流し続けた。
皆さんありがとうございましたー。あかがみさんも参加ありです。わかめさんや脂獣さんも長らくありがとうございました。てらみすさんも小豆人形さんもぎーたさんもありです![21年02月15日 01:33]
この問題はこれで出題します!いきなり非公開にしてぶつ切りにしたりは絶対にしないです。このまま質問を待ちますね(非公開については説明もなしに安易に行わないよう以後気をつけます。指摘ありがとうございます)。よかったらみなさんテキトーに参加してってください[編集済] [21年02月13日 15:50]
規約違反みたいな感じでしたね。申し訳ないです。人が一人でも集まってくれてたら「よっしゃ来た」って感じで出題を続行しますし、もちろん自己判断で人が集まってる最中に勝手に終わらすことはしないです…ってことを説明もなしにやっちゃったし、「問題の出来が悪いって理由で勝手に非公開にするな」ってルールに書いてありましたね。完全にミスっちゃった、すいません。こういうダメな性格なんです。[編集済] [21年02月13日 15:45]
>名無しさん oh、なんの説明もなしに非公開問題を量産するなという件について、まじか。確かにその通りですよね。 人が来ないからというより、この機会に間題文や解説を見直して、もっと洗練させてから再出題しようと非公開にしてしまいました。[編集済] [21年02月13日 15:41]
自分が正解した問題・出題者への賛辞・シリーズ一覧・良い進行力など、基準は人それぞれです。
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Goodって?
「トリック」「物語」「納得感」そして「良質」の4要素において「好き」を伝えることができます。
これらの要素において、各々が「良い」と判断した場合にGoodしていきましょう。
ただし進行力は評価に含まれないものとします。
ブクマ・Goodは出題者にとってのモチベーションアップに繋がります!「良い」と思った自分の気持ちは積極的に伝えていこう!