お客様は神様なんかじゃない

加藤は、郊外のファストフード店で働き始めた高校1年生のアルバイター。
まだ数回程度しか入ってない、レジの操作がなんとかできるようになったばかりの新人です。

今日のシフトは放課後から。出勤即、店長に「加藤くん、今日のポジションはここね」と、窓際に配置させられます。「ある程度のスピードが求められるけど、ここのレジはあんまり複雑じゃないし、大丈夫だと思うよ。今日一日でここをマスターしよう！」

夕飯時、お店にたくさんの入店がありました。別のレジの先輩も、キッチンもみんな大忙し。加藤はてんやわんやしてしまい、お客さんに怒られてしまいました。

「加藤くん、今日ありがとね。急いでるんだ〜って怒ってきた人、怖かったね。ああいうの気にしないでいいからね」

退勤後、加藤は怒ってきたお客さんのことを思い出し、しゅんとしていました。
店長は優しいけど、お客さんを怒らせたのは僕が未熟だからだし………。もう一度基本を振り返ってみよう。そう考え、貰っていたマニュアルを読み進めると………

「あ、これ、今日めっちゃ言うの忘れてた！やばいかな！？」

そこには、前のシフトでレジを担当したときに忘れがちになってしまっていたセリフが載っていました。

“お持ち帰りですか？”
“店内でお召し上がりですか？”

「………いや、今日はドライブスルーのレジしかしてないから、大丈夫だった。あぶね〜」

軽減税率制度上では、金銭授受にも関わる大事な確認ですが、この日の加藤はドライブスルーのみのレジ専門でした。ドライブスルーの場合だけは、店内で食べるか？とは聞かなくて問題ありません。当たり前に持ち帰りだからです。

加藤はうっかり忘れていただけですが、逆にテンパって言ってなくてよかったな〜、と思ったのでした。