今の主人のことを、僕はよく知らない。
ただ両親と死別し身寄りのない僕を、屋敷ごと引き取るくらいには風変わりな女性だった。
彼女は何不自由無い生活を保証する代わりに、たったひとつの約束を守るように言った。
それは「独り立ちする前に、私の選んだ本を全て読了すること。」
最近になって気付いたことがある。
屋敷には多くの蔵書があるというのに、奇妙にも、選ばれた本は全て不幸な結末を辿る。
こんなBad Endばかりを与えて、一体なんのつもりだろう??
SP:「マクガフィン」さん
画像元:フリー画像サイトPixabay
悪魔のゲームの、その先に。
独り立ちとは 僕が成人することと考えていいですか?
YES! 大人になって、1人で生活できるようになるまで、という意味です。 [良い質問]
最終的に不幸な結末となる本は、戦争などの現実問題を取り扱った本ですか?
NOでしょう!!ジャンルについての追求は大切です! [良い質問]
バッドエンド以外に選ばれた本に共通点はありますか?
NO ですがバッドエンドの本には共通点があります!重要!! [良い質問]
バッドエンドばかりの本を読ませているのは君だけが両親を失った世界一不幸な子供ではないことを伝えるためなのです。だから心を閉ざすのを辞めて話してごらん。君の両親を殺した犯人の事を(実は主人の女性が犯人で顔を見られたかどうか確かめているのです)
NOw 犯罪要素は、ないのです。
選ばれた本に出てくるキャラクターの名前は重要ですか?
NO キャラクターは関係ありません。どういった結末で終わるのか、が重要です。 [良い質問]
語り手には父の面影があり悲しげな眼と苦悶の表情があの人を思い出させるので悲しい話しを読ませてますます父に似させますか?
一部YES!父親に似せたい、というか...彼の蔵書を読ませることで...。 [編集済] [良い質問]
恋愛のバッドエンド…つまり『独身ってつらいでしょ?わかる?』という意思を刷り込ませ婚期を早めようとしていますか?
NOw 共感を求めていたわけではありません。
主にバッドエンドの作品を読ませるのは、「悲しい」「切ない」といった感情を疑似体験することで実際に訪れる悲しい出来事への耐性をつける意図がありますか?
NOです。耐性をつけたかったわけではないのです。
身分の違う二人が恋仲になれずにバッドエンドを迎える本を選んで読ませているのですか?
一部YES!!彼女が読ませるのは『別れて終わる恋愛小説』なのです!!重要!! [良い質問]
自殺する本を読んでいる姿を他人に見せることで、後々自殺?した際にあの子は自殺に興味があったのよっと父親同様に言うための下準備ですね?
NO 言い訳をしたいのではありません。
バッドエンドは独身やフラれ(寅さんみたいなの)ではなく本当に愛し合っていたのにかなわなかった愛(ロミジュリみたいなの)ですか?
YESNOですね!簡単に言えば、ふられた話なのです。 [良い質問]
主人が選んだ本を読了させることは、「僕」にとって教育的価値があると見込んでさせたことですか?
NO 教育的な意味があったのではありません。
父親と主人は互いに惹かれ合っていたが、母(妻)がいるので許されない恋だと分かっていた。父親の蔵書のバッドエンドの多くは、そんな父親の心境を投影したものでしたか?
ストーリ上はYESといえます。彼女はそんな父の心境(思考)が投影された本を読ませることによって息子に... [良い質問]
・彼女は父親の不倫相手であった。しかし...。
不倫系の本を読ませることで相手の心境を理解させ父親を責めさせないようにしましたか?
うーんNOかな?不倫系に限定しているわけではありません。ただ「別れた話」なんです。
No.68より 主人は僕に自身の正体(父親の不倫相手であること)を明かせないかわりに、禁断の恋愛の末に別れる物語を読ませることで、僕に自身のことを伝える意図がありましたか?
NO 不倫相手であることは、明かします。息子に、お願いしたいことがあるんです。 [良い質問]
元々、父に雇われたお手伝いさんである現在の主人は、父親と自分のように不幸な境遇(結ばれぬ恋)の女性との関係を作るな、と暗に忠告しているのですか?
NO 忠告の目的はありません。
主人は父と不倫関係にあり、母を殺したが父はその後を追い自殺、主人は死にたいが為にかつて愛した父に似た息子に本を読ませて気付かせ自分を、殺させようとしている?
NO 彼女は死にたいと思っているわけではありません。
主人は父親との交際が不倫であると知らずにショックだったので、僕に失恋の話を読ませることで不倫はよくないと伝えたいですか?
NOです。そのようなメッセージはありません。
79 お願いしたいこととは、僕に父親として演技してもらうことですか?
YES!!父親の蔵書を通して、彼の思考過程を伝えたかったのです。重要です!! [良い質問]
No.86より 主人は、生前の父親にきっぱりと別れを告げられましたか?
NO!!! 突然死んでしまったので、別れを告げられたわけではありません!!重要です!! [良い質問]
僕が独り立ちした時に彼女は出て行きますか?
YES!! そうしたいんです、だから、息子にお願いすることにしました。 [良い質問]
主人は、周りからどれだけ冷ややかな視線を浴び陰口を言われようと、主人の思考をトレースさせた僕に自分の存在を認めてもらうことで救われたかったですか?
NO 存在を認めて欲しかったわけではありません。
主人は僕に父親の代わりに別れを告げてほしいと思ってますか?
YES!!!大正解です!!!素晴らしい!!! [正解][良い質問]
No.92より 主人は父親にきっぱりと別れを告げられなかったために今の今まで自分の気持ちを絶ちきれずにいる。息子である僕に蔵書を読ませることで父親の思考や感情を飲み込んでもらい、僕の口から『生前の父親』としての別れを告げてもらうことで自分の思いに区切りをつけ、新しい道へ踏み出すことを望んでいます(断言)
YES!!!屋敷の蔵書は多く、早く新しい人生を歩むためには、ジャンルを絞る必要があったのですね。お二人に正解を差し上げます!!! [正解][良い質問]
参加者一覧 19人(クリックすると質問が絞れます)
簡易解答:父(恋人)の死後、彼女は家庭の存在を知る。身寄りの無い息子を育てると決めた一方で自身も新しい人生を歩むべく、恋人の蔵書を通して思考を伝え「別れの言葉」を選んでもらう計画を立てた。独り立ちするまでという期限上、結末をBad Endに絞る必要があったから。
FA条件
・彼女は父親に家庭があると知らずに不倫していた。
・新しい人生に進むため、彼女は子供に「別れの言葉」を選んでもらうことにした。
・独り立ちするまでという期限上、ジャンルを絞る必要があった。(Bad Endの恋愛小説)
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貴方が大人になるのを心待ちにしていた、と言ったら
それは私の本心ではないのかもしれないわ。
でも私は嬉しい。
こうして今、全ての事の顛末を打ち明け…
私の用意した物語の結末を、やっと貴方と迎えることができるのだから。
十数年前。
私は、貴方に瓜二つの人と恋をして。
けれど思いを伝えたその日に、彼は突然姿を消した。
そう、何を言わずにね。
もし断ってくれていたら、今もこんなに苦しまなかったでしょう。
私は彼を探して、探して。やっと見つけた時には、既にこの世にいなかった。
残ったものは、このお屋敷と物心付く前の、幼い少年。
私はその両方を引き取ることにしたわ。
それからは、貴方の知っている通り。
今でも思う。これは彼が残した「呪い」ではないかって。
自分では抗えない未練の鎖が、私を過去に縛り付けているのではないか、と。
ねえ?ひとつだけ、私の願いを叶えてほしい。
私は、屋敷の書架からたくさんの本を選んで貴方に読ませた。
彼が触れた世界を、知識を、授けるため。
不幸な結末(Bad End)に気分を害したこともあったでしょう。
ごめんなさい、時間がなかったの。
貴方が大人になるまでに全ての本を読ませるなんて、不可能よ。
……今の貴方、あの頃の彼にそっくりね。どうか、
『彼の考える、一番心が傷つく言葉。』
特別に選んで、言って頂戴。
それを最後に、私達は新しい人生を歩みましょう。
楽しみだわ。貴方はなんて、言うのかしら?
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僕が大人になった、あの日。
彼女から告げられた願いに、自分が何を答えたのか今でも覚えている。
彼女が本を選び、僕が本を喰らう。
そんな生活の中で、書架から運ばれた物語は須く同じ結末を辿った。
積み重なる既読の山に、ふと疑問を投げかけたことがある。
どうして父の蔵書は、こんなにも不幸に溢れているのか??
問えども死人は語らず。
しかし僕が父の生き写しであるならば、答えはこうだ。
普通の結婚、普通の家庭。死ぬ直前まできっと彼の人生は普通で幸せだった。
彼は、そんな自分の人生に飽き飽きしていたのではないか?
睡蓮のように物語に身を浮かべ、今の自分と真逆の世界に浸る楽しみ。
そんな彼の夢が、この書架を生んだのだろう。
彼女にしてもそう。若かりし父の逃避行は、そんな破滅への憧れだったのだ。
堆く積もる蔵書のひとつと同じように、彼女を愛していた。
だから僕は、言葉を選んだ。
『僕は今でも、君のことを愛しているよ。』
ああ、どうして??
と泣き崩れる彼女に手を差し伸べながら僕は思った。
この言葉は、未練の鎖を断ち切るにふさわしい言葉ではない。
彼女は僕に、書架を通してひとつの人格を与えた。
もう、二度と消えない父の記憶だ。
僕はこの先もずっと、自分の肩越しに見る父と生きていくのだから、
2人とも新しい人生を歩むなんてことができるものか。
死して尚お互いを思い続けること。
それが、僕の考えうる一番の絶望だ。
千年の恋も醒めるような台詞なら、彼女はどんなに幸せな未来を歩めただろう。
…でも仕方ないさ。
ページを捲る僕の指先は、いつしかBad Endに染まってしまったのだから。
「貴方は書架の悪魔(Dantalion)ね。私を、腹の中へと閉じ込めた。」
彼女の言葉に、僕は不思議と笑みを浮かべていた。
(おしまい)(この物語は全てフィクションです。)
参考文献:
『熱海の宇宙人』(原百合子)
『三月は深き紅の淵を』(恩田陸)
出題ありがとうございました。切ない系のしっとりエンドかと思いきや解説までマジもんのバッドエンドだった。喰わされすぎて染まっちゃったんやね。輝夜さんのNo.86がすべてでした。[20年08月10日 22:23]
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Goodって?
「トリック」「物語」「納得感」そして「良質」の4要素において「好き」を伝えることができます。
これらの要素において、各々が「良い」と判断した場合にGoodしていきましょう。
ただし進行力は評価に含まれないものとします。
ブクマ・Goodは出題者にとってのモチベーションアップに繋がります!「良い」と思った自分の気持ちは積極的に伝えていこう!