【正解のないウミガメ】卒業、それはふれあいの心、幸せの青い雲

エリー先生は日本語がわからないみたいだから、

皆で英語の歌を歌ってあげよう。
スティーブくんならそういう歌を探すのもお手の物だろうね。

そして、皆で高いご飯を食べに行こう。
藤井先生も美味しいものをいっぱい食べればきっと元気になるよ。

代金は西園寺くんの親に払ってもらおう。皆で出世払いだ。

ダニー先生には…なんにもしなくていいみたい。

だって、ずっと引きこもってたキミが、
こんな素晴らしい提案をしてくれたんだもの。

それが何よりも一番うれしいんだって。

ね？『田中くん』

アメリカ人なのに他国育ちで、とにかく英語が苦手なスティーブくん。
彼はいつも、そのことを気にしていました。
僕たちは毎日、英語の勉強に付き合いました。
スティーブくんは一生懸命勉強した英語を披露して、エリー先生を勇気づけました。
「Ｏｈ！（人間って、出来ないことはないのね！）」

大手ゼネコン会社だけど、会社が傾いた御曹司の西園寺くん。
ダニー先生は、彼が自分よりも貧しいご飯を食べているのを知っていました。
しかし、西園寺くんはどうにか高級料理で恩返しがしたかったのです。
僕たちも僅かながらお金を出し、西園寺くんは先生に奢ってあげました。
「（厳しいだろうに…）ありがとう！」

モデルを夢見ているのですが、仕事が少ないタカくん。
そんな彼を人一倍気にかけていたのが藤井先生でした。
彼が落ち込んでいると、藤井先生も辛いのです。
僕たちは一緒になって、色んなオーディションを探しました。
「ラテラテの専属モデルが決まりました！」
その報告を聞き、藤井先生は元気が出ました。

先生たちは３人の先生が悩んでいるのを知っていたので、
「あの笑顔が何よりの恩返しだよ」と、僕たちに言ってくれました。 [編集済]

僕たちは明日、学校を去るけれど、先生たちはこのまま学校に縛られることが気がかりだった。
給料が安くダニー先生はいつも貧乏だったし、エリー先生は「日本語の勉強ができる」と嘘の採用条件で教職についたらしい。
藤井先生も日々の業務の多さが異常でどんどん元気がなくなっている。

僕たちが卒業するまで踏ん張り励まし続けてくれた先生たち。先生たちがいなければ学校からの理不尽な仕打ちに耐えられなかっただろう。
僕らは先生たちの再就職先をプレゼントしようと思った。パソコンオタクのスティーブが好条件の仕事を検索、
さらに西園寺家のコネを使って面接を取り付けた。タカくんから好印象をもたれる立ち振る舞いなど、面接に有利なスキルを伝授。
おせっかいなことは分かっているけれど、先生たちも一緒にこの学校を卒業してほしいんだ。
唯一気がかりなのはダニー先生の再就職先にと考えているお線香のメーカーがちょっと人手不足らしいこと。
でも2人くらいアルバイトを募集するらしいからそんなに心配することはないのかな。

いやあ、びっくりしたよね。
えっ、知らないの？　ダニー先生と藤井先生、結婚するらしいよ。
すごいよね藤井先生、だってダニー先生、すごく貧乏じゃん、よく貧乏人と結婚する気になれたよね。
お金がなくて結婚式挙げられるか微妙らしいよ。
だからかな、藤井先生、最近元気ないの。
たぶん、マリッジブルーとダニー先生の甲斐性のなさでダブルパンチなんだね！
あと、エリー先生も日本語全く分からないのに二人から友人代表のスピーチ頼まれて困っているみたい。
よし、三人の先生にはお世話になったし、私たちで何とか結婚式を成功させよう！

まず、式場だけど、大手ゼネコンの御曹司、西園寺くんちが近所で教会を作っている最中なんだって。
西園寺君に頼めば場所は確保出来そうだよ。

あと式の進行だけど、モデルの仕事をしているタカくんが、結婚式も取り扱ってるイベント事務所でモデルの仕事したことがあるみたい。
そこに頼めば、格安で済むかも。

最後に、日本語分からなくて友人代表のスピーチで困ってるエリー先生は、パソコンオタクで留学生のスティーブに翻訳アプリを作ってもらおうよ！
なぜかエリー先生は外国人のスティーブと普通におしゃべりできるから、スティーブの語学力に期待だね！

えっ、結婚式はムリ？　ダニー先生の借金が数兆円でそれどころじゃない？
うーん、この話はここまで！　解散！

校長の藤井先生が元気がないのは、過疎化が進み、この学校が廃校になってしまうから。
そこで、僕たちは卒業式が終わった夜、みんなを呼び出したんだ。

タカくんのコネを使い、敏腕編集者に私たちの記念写真で使えるものを選んでもらい、
スティーブに徹夜でプログラムを組んでもらい、
西園寺君に紹介してもらい、この学校の卒業生でもある西園寺くんの父親に施設の設置のお願いして、

学校の壁にプロジェクションマッピングをやったんだ。

これなら言葉はいらないからエリー先生も楽しめる。
ダニー先生には、露店でたこ焼きを焼いてもらい足しにしてもらえる。
藤井先生には、僕たちの成長を実感してもらえる。
学校は高台にあるから、村中から見える。病室からもアイツの自宅からも見える。
…かなって思ったんだ。 [編集済]

パソコンオタク、留学生のスティーブにお願いして
同時翻訳の通話型のケータイ電話を自宅にこもらせ開発してもらい、
全く日本語がわからないエリー先生に取り付けることで
母国語を話しながら日本語に相互変換してもらえるようにしたのです。

大手ゼネコン会社の御曹司、西園寺くんと貧乏のダニー先生の精体と身体を取り換えてあげるのです。
良かったですね、若い肌つやと美味しい食事が毎日楽しめるのです。

藤井先生が最近元気がないのは大好きな生徒のタカ君がモデルの仕事で忙しく中々学校に来れないからなのです。
クラスの皆から50円をカンパしてもらい3000円でモデルの鑑賞チケットを買い与えサプライズでタカ君に会わせてあげるのです。きっとタカ君も喜び2人の仲も再び進展することでしょう

(；ﾟдﾟ)ふー　これで3人ともハッピーになってくれると良いのですが

それはそうと、スティーブ・西園寺くん・タカくん。
君たちにはお世話になったのです、何か悩みはないですか?お礼に何か解決してあげるのですよ(ﾟдﾟ)ゞ

映画が好きなダニー先生。薄暗い部屋でカップ焼きそばをすすりながら、古いパソコンの小さな画面でDVDを見るのが落ち着くらしい。外に出歩くとお金を使っちゃうから極力部屋でひっそり過ごすようにしてたら、すっかりそれが馴染んじゃったんだって。
でもいつだったか、ダニー先生はぽつりと溢してた。
「みんなと一緒に映画を見るなんてのは、幸せそうだなぁ。」
ダニー先生の夢、叶えてあげたいな。

ラテリカから来たエリー先生は、ラテリカ語を話す美術の先生。必要な時には通訳の人が隣にいて、日本語はぜんぜんわかんないみたい。
でも、エリー先生は絵を描いたり身振り手振りで僕たち生徒とコミュニケーションを取ってくれていた。
言葉はわかんないけど、言葉がなくても伝えられるものってあるよな。サイレント映画みたいにさ。
……サイレント映画か。
エリー先生も呼んで、みんなでダニー先生のために映画鑑賞会を開くなんてのはどうだろう？
僕たちでサイレント映画を作ろう。言葉が通じないエリー先生にも伝わるようなやつを。短いものでいいんだ。

僕らは先生たちと過ごした学校生活の思い出をもとに台本を作り、ムービーに納めることにした。
大手ゼネコン会社の御曹司である西園寺くんがなんかすげぇ高価なビデオカメラを持ってて、それを拝借することにした。モデルのタカくんが「それプロ仕様の超いいやつじゃん」って食いついてたな。
そんで、演出とか魅せ方に関してはタカくんが指揮官だ。『最も美しい振り向き方講座』は随分と盛り上がった。そんな重要なシーンでもないのに。
一通り録り終えたら、あとはパソコンオタクのスティーブに丸投げだ。「ヘンシュウ、オレニマカセル、オケ」って言ってたから。その言葉に甘えて僕らは編集をスティーブに託し、人数分のカップ焼きそばを買いに行った。夢の箱買いだ。

そしてこの映画は基本的に学生だけで作るはずだったんだけど、藤井先生に声をかけて特別出演してもらった。
というのも、明日卒業式だっていうのにここ最近ずっと藤井先生の元気がなかったからだ。ダニー先生からこっそり聞いた話によると、どうやら学生たちとうまく距離が縮められないまま卒業に至ってしまったと悔いているらしかった。シャイな藤井先生はあまり感情を外に出さないけれど、「一緒に映画を作ろう」と誘った時には何とも言えず嬉しそうな表情をした。まるで先生も学生に戻ったみたいに、僕らは一緒になってはしゃいだ。


来る明日、僕らは卒業する。
最後の日、僕らは大好きな先生たちと一緒に手作りのサイレント映画を観る。
古いパソコンの小さな画面に顔を付き合わせて、カップ焼きそばをすすりながら。
音のないその映像にめいっぱい込めた『ありがとう』が伝わりますように。 [編集済]

数年前に教員になったばかりのダニーにとって、ラテラル高校3年A組は彼女が受け持った初めてのクラスだった。
パソコンに詳しいスティーブや、学生ながらモデルの仕事を行うタカくんなど、個性派の生徒が多く集まるこのクラスに彼女は散々手を焼かされた。
しかし生来の明るさと純真さから、彼女は多くの生徒たちに愛され、学校生活は3年A組の誰にとっても大切なものになっていた。

その生徒たちの中に、彼女のことを教師としてではなく人間として愛してしまっている生徒がいた。
大手ゼネコン会社の御曹司である西園寺である。
しかし、そんな彼ももうすぐ卒業。
彼女からいろんなものを貰ったのに、碌に恩返しも出来ぬまま関係が途絶えてしまう。
ずっと彼女と一緒にいるためには・・・・彼女を幸せにするには・・・もう結婚するしかない！

西園寺は皆に協力してもらい、卒業式の日に先生にプロポーズをすることに決めた。
モデルの仕事をやっているタカくんに協力してもらい、外見もビシッと決めてきた。
先生に何て言うかも自宅で繰り返し練習した。

西園寺が先生にプロポーズをするという話は、3年A組のお喋りな生徒から広まってしまい、しまいには学校中の人間が知るところとなっていた。
卒業式が終わった後、各々のクラスに戻るはずが、なぜか3年A組に人だかりが出来ていた。
怪訝そうな目で人々を見る先生を前に、西園寺が立ち上がって言った。
「先生。3年間俺たちを指導してくれて、本当にありがとうございました。
先生の笑顔から、先生の言うことから、たくさん元気を貰ったし、たくさん学ぶことがありました。
卒業したら先生と毎日会うことも出来なくなると思うと、凄く悲しくなります。

でも、そんなの嫌なんです。
・・・率直に言います。俺、先生のことを一人の女性として愛してます。
先生、俺と結婚してくれませんかっ！！」
盛り上がる生徒たち、目を丸くして驚いているダニー先生。
ダニー先生が何と返事するか皆が注目する中、少し笑って先生が口を開いた。
「ありがとう西園寺くん。いきなり結婚は出来ないけど・・・恋人ならいいわ。」

先生の返事に皆が湧いた。
日本語が分からないエリー先生にもスティーブが通訳してくれたのでこのニュースが伝わった。
このハッピーなニュースは学校中に伝わり、聞くものの気持ちを暖かくさせたに違いない。