「忘れ去られたプレゼント」のGoodトリック・物語・納得で良かったら1票分。全体評価で特に良かったら3票分Goodができます。
ダイスケは毎年誕生日になると兄のユウキからプレゼントをもらっていたのだが、18歳になった年だけ、兄からのプレゼントはなかった。
数年後にそのことを何気なく口にしたダイスケに対し、ユウキは軽く笑いながらダイスケのスマートフォンにぶら下がる東京タワーのストラップを指差した。
それはダイスケが彼女とお揃いで購入したものだ。
「あげたじゃん」
その言葉にダイスケははっとして硬直し、兄に謝った。
ダイスケは何に気づいたのだろうか?
解説を見る
解答
東京行きの切符代を兄の財布から盗んだことに、兄が気づいていたということ
解説
17歳の冬、ダイスケには彼女がいた。
SNSで知り合った彼女とは遠距離恋愛で、相手は東京に住んでいた。
冬休みに東京に行くことを彼女と約束したダイスケ。しかし、お金が足りない。なけなしのバイト代では東京までの片道分が精一杯だった。
その時、ふと魔が差した。
4つ上の兄のユウキは社会人で、日頃からダイスケにご飯を奢ってくれたりした。金銭的に困っている様子はない。
(ちょっと貸してくれ、兄貴……)
ユウキは今風呂に入っている。そっと部屋に入り、鞄の中の財布を探る。
そして中から万札を2枚抜き取った。
またバイトして返すから。その時は軽い気持ちだった。
東京で彼女との楽しい時間を過ごし、地元に帰って年が明ける。
ダイスケの誕生日は1月。今年は兄は仕事で忙しそうだった。
兄から誕生日プレゼントを貰わなかったのは、この年が初めてだった。
あれから特に何を言われるでもなく、そのまま年月は流れていった。
数年後、ダイスケも社会人になった。
仕事終わりに久々に兄と飲み交わす。この日はダイスケの誕生日だった。
「20歳、おめでとう」
「サンキュー兄貴」
グラスワインで乾杯をする。年を重ねても仲の良い兄がいることをダイスケは幸せに思った。
「そういえばさ、俺が18になった年だけ兄貴からプレゼントもらわなかったんだよな」
「え?」
ユウキは意外だというような笑みを浮かべた。そうだっけ?という言葉が続くのだとダイスケは思った。しかし、その口から放たれたのは全く予想外の言葉だった。
「あげたじゃん」
すっと持ち上げられた細い指が、ダイスケのスマートフォンを指し示す。
そこには東京タワーのストラップがぶら下がっていた。
17歳の冬、彼女とお揃いで買ったものだ。
ユウキの財布から盗んだお金で東京に行って、買ったものだ。
兄は、気づいていたのだ。
「……っ、兄貴……気づいて……」
「俺だって大富豪じゃねぇんだからそりゃ気づくって。お前、あの時金無いって嘆いてたし」
「ご、ごめん兄貴!!俺……」
「俺からの18歳の誕生日プレゼントってことにしといてやるよ。まぁ、こんな形じゃなくてダイスケの口から聞きたかったってのが本音だけど」
兄はため息混じりに笑った。
見慣れたはずの顔が、ずっと大人びて見えた。
物語:9票納得:2票良質:21票
全体評価で良質部門
キャノー[『★良質』]>>
藤井さんはwaht型ウミガメの構成が本当にお上手い!前提として、whatで問うウミガメのスープ形式の問題は非常にハイレベルな実力を要求されます。その上で、この問題の凄さに感動致しました
物語部門
休み鶴>>
彼女と一緒に購入したストラップがどうして兄からのプレゼントになるのか?解説で明かされる真相がとっても優しくて好きです。
納得部門
とかげ>>
誕生日プレゼントを貰わなかったと言うと、彼女と買ったお揃いのストラップを指差しあげたと言う兄。ベールが厚いだけの複雑な問題になりそうなところを、適切なクルーと焦点をしぼった問いかけできちんと納得できる形に仕上げている。「何に気づいたか」という問いかけ自体もヒントという美しい構成だ。