(今、2人いるよ)
いらっしゃいませ。ゲスト様 ログイン 新規登録
捨てる神あれば」のGoodトリック・物語・納得で良かったら1票分。全体評価で特に良かったら3票分Goodができます。
カメオは生きる意欲をなくしていた。

祖国から遠く離れた国でぼんやりと日々を過ごしていたある日、何の気なしに訪れた写真展で、カメオは金髪碧眼の美しい女性の写真に目が釘付けになった。

「信じられない…。こんなことがあるなんて。」

モデルの女やカメラマンは、現地では有名らしいがカメオの知り合いではなかった。
興味深そうに足を止める客もいたが、カメオの感じた衝撃を図り知れたものは誰もいなかった。

カメオは涙を流し、祖国でもう一度人生をやり直そうと思った。

何故でしょう?
[ラム]

【ウミガメ】19年01月07日 20:30

心暖まるスープを目指して!

解説を見る
カメオは染物職人でした。

若き日、初めて自分の手でデザインし染め上げた生地。
今見れば、輪郭の線はガタついているし、染色のズレもある。
当時は鼻高々に染め上げたが、これは売り物にならないと言われ、親方の染物のオマケとして二束三文で買い叩かれた。

悔しかった。
今頃、鼻緒とか手鞠とか…いや、ハギレにでもなってるかもしれない。
だが、くよくよせずに技術を磨かなければ。

それからも沢山の布を染め、いつしか弟子を持ち、店を経営するようになった。だが洋服文化の勢いは凄まじく、染物屋としての経営は困難を極め、ついに生計を立てることができなくなった。

今の時代、着物なんか売れやしねえんだ。

自棄になったカメオは、祖国に嫌気が差し、なけなしの金で海を渡った。異国の地で無為な日々を過ごし、そしてふらりと立ち寄った写真展。
そこでカメオは雷に打たれたような衝撃を受けた。

金髪碧眼の美女が着物を着ている。
ちぐはぐなように見えて、美しくよく似合っている。
危うさや若さが感じられるのは、彼女の表情やカメラマンの技術だろうか。

しかしカメオが凝視しているのは、その着物の柄である。

この、輪郭の線から少しはみ出した花の色。
ああ、この線なんてガタガタとブレてるじゃないか。

もう少し丁寧にやれば良かったと何度も反省したなあ。
修正できないかと必死になって、でもダメで。
親方には怒られたなあ。
でも仲間たちには、イチから全部作り上げて凄いなって褒められて。

染色家を目指し、憧れ、布をデザインし染め上げる喜びに溢れた日々の記憶が波のように押し寄せ、自然と涙がこぼれた。

買い叩かれたあの生地が、海を渡り時を渡り、こんなところでこんな美しい作品になっているなんて。

***
カメオは自分が染め上げた布に出会い、若かりし頃の熱情を思い出して涙し、また染物の新しい可能性についてインスピレーションを感じて、祖国に帰りもう一度染色家としての人生を歩むことを決意したのでした。
良質:3票
全体評価で良質部門
上葵>>元祖ウミガメのスープを彷彿とさせるスープ。過不足のない問題文の記述からは鮮明にシーンを想像することが出来、参加者に安心感を抱かせる。ネタバレになってしまうのを恐れて詳しくは書けないが、クルーの置き方も絶妙。また、序文から問いかけへの主人公の心持ちの落差からは強烈なチャームを感じられる。もっとこんなスープが増えて欲しいと感じさせる完成度。お見事です。
トリック部門
物語部門
納得部門