「怖いもの知らずの運転手」のGoodトリック・物語・納得で良かったら1票分。全体評価で特に良かったら3票分Goodができます。
タクシー会社の「水平タクシー社」に勤める運転手たちの間では、最近「幽霊が出るらしい」と専らの噂である。
その幽霊は若い女性の霊で、大雨が降っている夜にのみ出没し、「水平タクシー社」のタクシーを停車させる。女性はどことなく暗い雰囲気を纏っており、目的地に関する会話以外は何も話そうとせず、話し掛けても全く反応しない。そして目的地に到着して女性の方を確認すると、まだ料金を支払っていないのに、いつの間にか女性は座席から忽然と姿を消している。もちろん、タクシーのドアや窓が開けられた形跡はない。そして女性が座っていたはずの座席をよく見てみると、まるでそこだけ雨が降っていたかのようにずぶ濡れになっているのであった…。
上記の現象により人が亡くなったりといった深刻な被害こそないようだが、単純に売上が減るので「水平タクシー社」の運転手たちはこの幽霊を迷惑に感じていた。
カメオは「水平タクシー社」に勤めるタクシー運転手であり、今日も業務を行っている。今日の天気は大雨で時刻も22時を回ったところであり、カメオはタクシーを走らせながら「件の幽霊が出るかもしれないな」と身構えていた。するとカメオは、前方で若い女性が手を挙げていることに気付いたため、タクシーを停めて乗車させた。女性はどことなく暗い雰囲気を纏っており、簡潔に目的地をカメオに伝えると俯いて口を閉ざしてしまった。
この時カメオは、目的地に向かってタクシーを走らせながら心の中で「これでよし」と喜んでいるのだが、それは一体なぜだろうか。
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タクシー運転手の幽霊より先に利用客を確保することが出来たから
「水平タクシー社」に勤める運転手たちの間では、最近「かつて「水平タクシー社」に勤めていた女性の幽霊が、タクシーに客を乗せて送迎を行っている」と専らの噂である。
その女性は昔からタクシーの運転手になるのが夢だったらしく、約3年前に「水平タクシー社」に就職してから、毎日楽しそうにタクシーを運転していたのだそうだ。ところが半年前に大雨の降った日の夜のこと、女性は利用客をタクシーで家まで送迎した後、そこからタクシーの停留所に戻るまでの間にスリップにより電柱に激突するという自損事故を起こし、そのまま亡くなってしまった。事故によりフロントガラスは割れ、そこから雨が入り込んできており、女性の身体や運転席はずぶ濡れになっていたのだという。
しかし女性はまるで自分が死んだことに気付いていないかのように、事故の時のような大雨の日の夜に今でもタクシーを運転しているらしい。生前のように「水平タクシー社」のタクシーを運転し、タクシーを待つ利用客の前に停車させる(特に問題文と比較していただきたい部分なので赤字)。幽霊だからかどことなく暗い雰囲気を纏った女性は、利用客に「…どちらまで?」と問い掛ける以外には押し黙ったままであり、利用客が話し掛けても全く反応しない。利用客は多少不審に思うものの、大雨の中でタクシーを捕まえたことへの安心感が勝り、静かに目的地に到着するのを待つ。しかし目的地に到着して利用客が料金を支払おうとしたところで、なんと運転手の女性がいつの間にか運転席から忽然と姿を消していることに気付くのである。一体どうやって運転していたというのだろうか?さらに車内をよく見てみると、さっきまでは普通のタクシーのように見えていたのだが、今はまるで事故にでも遭ったかのように前方のフロントガラスは割れ、ボンネットは凹み、そして女性がいたはずの運転席には、そこだけ雨が降っていたかのようにやけにずぶ濡れになっているのである。怖くなった利用客は料金を支払うことも忘れてタクシーを逃げるように降りて自宅に引きこもり、その間にいつの間にかタクシーも何処かへ消えてしまうのだという…。
「水平タクシー社」は、数名の利用客から苦情?のような電話があったことでこの幽霊の存在を知った。一応この女性はあくまでタクシー運転手の幽霊であり客の送迎はきっちりと行っているようで、客が死亡するなどの深刻な被害の報告は今のところない。しかし「水平タクシー社」の運転手からしてみればこの「幽霊タクシー」に客を奪われている訳なので、その分の売上が落ちいい迷惑である。そこで「水平タクシー社」の運転手たちは、大雨の降る夜は「幽霊タクシーにお客さんを奪われてなるものか」と躍起になって客を乗せるのだという。そのためカメオも、幽霊タクシーより先に女性を自分のタクシーに乗せることが出来て「これでよし、売上を確保したぞ」と心の中で喜んでいたのだった。
…なんか雰囲気も暗いし口数も少ないお客さんだけど、まま、えやろ。
カメオ「お客さん、言われたところ着きましたよ。…あれ?ここ、確か墓地の近くですよね?お客さん、まさか今からお墓参りなんて…お客さん?え、そんな…何処へ、行ったんだ…?…あ、座席が、濡れてる…?……う、うわああああああああ!!」
トリック:16票物語:4票良質:18票
全体評価で良質部門
「マクガフィン」[☆☆編集長]>>
『木の葉を隠すなら森の中』を地で行くトリック長文スープはいくつもあれど、このスープは森そのものが幻であったかのような衝撃を与えます。物語・納得感と相まって、多くの人に味わってほしい絶品に仕上がっているのではないでしょうか。
キャノー[『★良質』]>>
よくある「タクシーと幽霊」物を、ウミガメのスープはどう調理するというのでしょうか?徹底的に練られた問題文が、貴方を恐怖…ではなく水平思考の世界へ誘います。
異邦人>>
あやしい女性を乗車させて喜ぶカメオの真意とは。 問題文を一言一句丁寧に考えて作られたことが窺えます。
トリック部門
ぺてー>>
これはすごいトリック!
たしかに売り上げが減っています
ぎんがけい>>
言われてみればごくごく当たり前の状況なのに、トリックで容易にイメージできないよううまくミスリードさせられてしまいます。ナイストリック。
靴下[バッジメイカー]>>
100を超える問題を産み出せる名出題者だからこそ、こんなトリックを問題文に忍ばせることができるのでしょう。この鮮やかかつ丁寧な表現に拍手を贈らざるを得ません。
だだだだ3号機>>
情報に過不足はありません。嘘ももちろん無し。それでも初見ではなかなか見破れないでしょう。