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提供時間がリクガメのスープ」のGoodトリック・物語・納得で良かったら1票分。全体評価で特に良かったら3票分Goodができます。
とある海の見えるレストランを訪れた初老の男は、「ウミガメのスープを1つくれないか。」と頼んだ。


30分後………
「おい、ウミガメのスープはまだかね?」
「すみません、ただ今準備中でございます。」
男は不機嫌そうに鼻を鳴らした。

1時間後………
「おい、ウミガメのスープはまだかね?」
「申し訳ありません、もう少々お待ちくださいませ。」
男は苛立ちをあらわにした。

2時間後………
「お待たせいたしました、ウミガメのスープでございます。」
「おお、ありがとう。本当に提供が速くて驚いたよ。」
男は満足気な笑みを浮かべた。


男の言葉は本心からのものなのだが、ではそれまで男はどんなことに対して苛立っていたのだろう?
[「マクガフィン」] [☆☆編集長]

【ウミガメ】20年07月24日 22:01

藤井さんとの思い出スープ

解説を見る
A. 時刻を確認する手段がないこと
 (レストランに時計がないこと、自分が時計を持っていなかったこと等だけでも大意が合えば可)



その日、男がウミガメのスープが評判のレストランを訪れたのは、昼食を終えた後の午後3時頃だった。
席へと案内してくれた店員にそのまま「ウミガメのスープを1つくれないか。」と注文した男に、店員は、申し訳ありません、と頭を下げた。

「すみません、ウミガメのスープはディナータイム限定のメニューとなっておりまして、17時からしかご提供することができません。」

「おお、そうだったのか。特に用事もないし、時間になるまで待つとしよう。」


鞄から取り出した文庫本を読んで時間を潰していた男だったが、ふとあとどのくらい待てばよいかが気になった。
しかしその時、男はそのレストランの中を見渡しても、どこにも時計がかかっていないことに気づく。
普段から携帯電話など持ち歩かず、腕時計もしていない初老の男は、時刻を確認する手段がないではないかと思い当たった。

「おい、ウミガメのスープはまだかね?」
通りかかった先程の店員に尋ねると、彼は笑顔で答えた。
「すみません、ただ今準備中でございます。現在15時30分ほどですので、ウミガメのスープのご提供開始まではもう1時間半ほどお待ちいただけますか?」
待つのは構わないが、時計さえあれば楽だったのにと、男は不機嫌そうに鼻を鳴らした。


来店から1時間が経ち、そわそわしている男は再び尋ねる。
「おい、ウミガメのスープはまだかね?」
店員も少し気の毒そうな表情を浮かべた。
「申し訳ありません、もう少々お待ちください。まだ16時前後でございます。」
やはり時刻がわからないと、待ち時間は長く感じるものだなと、男は苛立ちをあらわにした。


そしてようやく17時になった。客のいない席のメニューがディナータイムのものと差し替えられていくのを見て、男もそれに気づく。

すると…
「お待たせいたしました、ウミガメのスープでございます。」
何度も言葉を交わした店員が、湯気が立ちのぼるスープ皿を手に立っていた。

まだメニューも入れ替え終わっていないというのに、なんという速さだろう。店の決まりを守りながらも、あらかじめ用意を進めてくれたのに違いない。

「おお、ありがとう。本当に提供が速くて驚いたよ。」
それが、店員の配慮に感心した男の嘘偽りない本音だった。




その日味わったスープの味は、どれだけ時間が過ぎても忘れられそうにない。

物語:1票良質:3票
全体評価で良質部門
甘木[☆スタンプ絵師]>>不可思議な問題文の状況、しかし真相を知れば驚くほど納得!
トリック部門
物語部門
藤井>>問題文に仕掛けられたトリックにも翻弄されつつ、FAとして提示された『男の苛立ち』は解説を読むことによってがらりと印象が変わりました。後味に強く惹かれるスープ。自分がこの物語の登場人物(男とやりとりをしている側の人間)だったとしても、多分同じことをする。
納得部門