出張問題鑑定団inらて鯖 鑑定結果一覧

作成者:オリオン
部屋名:出張問題鑑定団inらて鯖 鑑定結果一覧
ルームキー:オープンザプライス
出張問題鑑定団inらて鯖の鑑定結果一覧です。
鑑定結果はこちらの他に、もっとき(http://bbs.mottoki.com/index?bbs=lateralthinking_chatroom_index&thread=44)でも同じものが見られますので、どうぞ見やすい方でご覧ください。
(見やすさの関係で、作成者以外の方の書き込みはご遠慮下さい。何か質問等あれば、問題ページの雑談欄に書いていただくかミニメにて私オリオンにお知らせ下さい)


問題ページURL:https://late-late.jp/mondai/show/1093

【総発言数:8】
[10539]
名無し◆i5/jCNmuRg

[編集済] 大変お待たせいたしました。
すべての鑑定結果が出そろいました!
[18年10月10日 00:42]
[4136]
オリオン[☆シンディ]

[編集済] 投票受付は、

10月12日21時まで

になっております。
皆様からのご投票お待ちしております。
[18年08月14日 08:30]
[4135]
オリオン[☆シンディ]

[編集済] 質問番号1〜5の鑑定一覧



《依頼人:OUTISさん》
私の人形がどこからか拾ってきた代物だヨ
食人形
https://late-late.jp/mondai/show/826
問題への寸評を依頼するヨ
可能ならGoTo_Labelさんに依頼したいネ


《鑑定士:GoTo_Labelさん》
OUTISさんはじめまして。お名前はいつも拝見しております。

さて、鑑定ですが、ふむふむふむ~なるほど~(虫眼鏡で眺めまわす)

うーん(腕を組む)残念ながら、大きな問題点があるようです。

------------------------
1.
問題文に「人形」とありますが、これは本当は人形ではなく、カメオ本人、つまり人間です。
つまり、問題文に嘘が書いてあります。

ウミガメは、主として、情報が足りない状態から正解を探し当てるゲームです。
そのための手掛かりは「問題文」「質問への回答」しかありません。

問題文、正確に言えば問題文の地の文に嘘を書くことは、回答で嘘を書くこととほぼ同義であり、「質問者への不当な妨害行為」になります。
それゆえ、問題文の嘘はアンフェアと呼ばれます。

おそらく、本物の人形ではなく、「人形のような存在」、つまり暗喩であるという意図なのだと思います。それはわかります。

とはいえ、暗喩の範囲は非常に広く、問題文や回答のすべてを「もしかしたらこれは暗喩ではないか」と疑い始めたら、すべてを疑わなければなりません。
「母親」と書いてあっても、母親のような存在の他人の暗喩かもしれません。
「人間です」と回答されても、人間の心を持った人間そっくりのロボットの暗喩かもしれません。

それをすべて疑い、すべて確認していくというのは、不合理で無駄な手間です。
特殊なケースでは暗喩が許されることもあるかもしれませんが、本問にはあてはまりません。安易に取り扱うべき技法ではありません。

問題文と回答では(嘘有りの特殊ルールでない限り)嘘はつかない。
それがウミガメをゲームとして成立させるための最低限のルールです。

------------------------
2.
両親の性格設定、造形が特殊すぎます。単純に「虐待をしている」とはかけ離れています。完全に頭のおかしい人であり、その行動はどこからどう見ても支離滅裂です。

「この登場人物の頭がおかしいからです。だから何をやっても不思議ではないのです」ということが許されたら、なんでもアリになります。

「ウミガメのスープを飲んだ男は自殺した。なぜ?」→
「男は特殊な病気で、レストランのメニューでウミガメのスープを見ると注文せずにいられなかった。そして、ウミガメのスープを飲むと自殺をせずにはいられなかった」

これを正解にされては、質問者がそれにたどりつくのはほとんど不可能です。

つまりウミガメにおいては、質問者が正解にたどりつくために、登場人物の行動は論理的でなければならないのです。
これもまた、ゲームを成り立たせるための最低限のルールです。

本問の場合は、問題文で「カメオ君の両親はカメオ君を大事にしており」と書いており、これがさらに上記1の「嘘はアンフェア」に抵触するということになっています。頭のおかしい両親視点では大事にしているのでしょうが、明らかに質問者への妨害になっています。
支離滅裂な論理に基づく作題の弊害がお分かりになるかと思います。

補足します。
サイコパス診断というものがあります。これには、ウミガメのネタになりそうなものがあります。
たとえば「葬儀の際にイケメンに出会った女は、翌日妹を殺した。なぜ?」→「妹の葬儀でまた会えると思ったから」といったものです。
しかしこれにしても、まったく論理がないわけではないのです。
通常の人とは優先順位の判断が違ったり、ある種の価値をまったく無視しているという違いがあるだけです。
通常とはルールの違う論理に基づいているか、完全に支離滅裂な行動をしているかは大きな違いです。後者は正解を出す道筋がないからです。
なお、仮にサイコパス的な「ルールの違う論理」を問う問題であっても、問題文にそれを示唆する記述がなければ、やはりアンフェアとみなさざるをえないでしょう。

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以上2つとも、1つだけでも問題を破綻させるのに十分な問題点です。
「ウミガメは、質問者に正解を当ててもらうゲーム」。もう一度、その原点に戻ってほしいと思います。

とはいえ、OUTISさんの過去問を20問ほど読ませていただきましたが、これほど悪い問題は他には見あたりませんでした。
だからOUTISさんが悪い出題者であるということはありません。どういう経緯でこの問題を作られたのかは逆に興味があります。よかったら教えてください。
また、質問などがあったらどこかに書いておいてください。可能な範囲でお答えさせていただきます。

私の鑑定は以上とさせていだきます。ありがとうございました。


◆◆◆




《依頼人:ZEROさん》
家に帰ったらついてきていたものなんですけど…
ついていた男
https://late-late.jp/mondai/show/460
問題寸評を依頼します。
牛削りさんにお願いしたいです。

《鑑定士:牛削りさん》
ご指名いただきありがとうございました。
心を込めて鑑定させていただきます。

※ZEROさん ⇒ 辛口批評注意
※問題未読の方 ⇒ ネタバレ注意

さて問題を「男はついていた」という表現について人物誤認トリックについてアイディアの問題への昇華についての3点から見ていきたいと思います。

「男はついていた」という表現について
「男はついていた」という表現がダブルミーニングになっているというのは面白い気付きだったと思います。
ここではこの表現がフェアかどうかについて考えていきます。どうやって判断するかというと、”もしもトリックを使っていなかったとしてもこの表現を採用するかどうか”という観点からです。

まず、「ついていた」がひらがな表記されていることについて。
「ラッキー」という意味では、普通は漢字を使いません。「ツイていた」などと書く人もいますが、これは好みの問題でしょう。
「憑依」の意味だと、「憑く」という漢字が存在します。しかしこれは常用漢字ではあるものの、日常生活では使わないし、読めない人もある程度いることが想像される難読漢字の一種ではあると思うので、ルビのふれないらてらて鯖においてひらがなで表記するというのも、まあ不自然な理屈ではありません。
というわけで、ひらがな表記についてはフェアと言ってしまっていいでしょう。

参考「理由は長ければいいというわけでもないから」http://sui-hei.net/mondai/show/35029 でも、意味の取り違えのトリックが使われています。どちらの意味も漢字表記はできますが、問題文のようにひらがな表記するのが一番自然です。

続いて文型について。
①「ツイていた」と②「憑いていた」とでは微妙に文型が異なる(諸説あり)ということにはお気づきでしょうか。
①は文句なく自動詞ですが、②は目的語を必要とする動詞です(「~に」という形なので、他動詞であるという断言は避けます)。
「男はついていた」という文には目的語が存在しないので、①の意味であれば完結しますが、②の意味であれば不完全な文となってしまいます。「誰に」憑いていたのか、説明が必要ということですね。読む人はここに引っ掛かりを感じるはずです。
とはいえ他動詞で目的語が存在しないパターンも多々あります。文脈から目的語が明らかな場合とか、倒置法を用いている場合とか。今回は二行目の「人」を一行目の省略された目的語とみなし、少し歯切れの悪い倒置法を使ったのだと考えて、眉を顰めながらも納得して次に進むことにしましょう。

参考禁断の果実http://sui-hei.net/mondai/show/11904 では、表の意味と裏の意味とで助詞「に」の用法が変わっていますが、どちらでも自然に通る文章になっています。

人物誤認トリックについて
問題文には「男(一行目)」「人」「彼」「男(四行目)」と、人物を指す言葉がいくつか出てきます。
解説を読むと、一行目と四行目とでは「男」の指す対象が異なっており、参加者に登場人物を混同させる意図があったことがわかります。
しかしこのトリックはスマートではありません。
問題文を読んだとき、「『彼』とか『男』とかいっぱい出てきてわかりにくいな。どれが誰を表すのかよくわからん」と思いました。解説を読んでやっと、問題文の意味が理解できました。
この手のトリックは、読者がAだと思っていた人物が実はBであった、という驚きを提供するものですが、この問題に関しては失敗しています。
文中の「男」についても「彼」についても、AだかBだかCだかDだかよくわからないまま参加者は読み進めています。そこに「一行目と四行目の『男』は同一人物だ」という思い込みは生じていないと思います。せいぜい、「わかりにくいけど、普通はこの短い文章の中で『男』が二回出てきたらどちらも同じ対象を指すよなあ」くらいでしょう。
さてそういう心理状態で、「実はこっちがAでこっちがBでしたー」などと明かされても、それはタネ明かしというより不明瞭な文意に関する単なる注釈で、「はじめからそう言えよ」という感想を持ってしまいます。

登場人物の性別を揃えて「男」「彼」という曖昧な表現で混同を起こすというトリックは、下手に手を出すと大けがします。トリックというより稚拙な作文のようになってしまいます。
ちなみに僕は、登場人物の混同をできる限り防ぎたいので、問題文に登場するキャラクターについてはできる限りわかりやすい名前を付けるようにしていました。

曖昧表現による人物誤認トリックは、”そういう表現を使うことに関して、物語上・設定上の説得力ある理由がある”場合に限って使うのがいいと思います。

参考乾くるみのあの恋愛小説では、女性主人公が保身のために使ったトリック(物語内部の事情)が、地の文で紛らわしい表現をすること(メタな事情)の説得力ある理由になっています。

アイディアの問題への昇華について
全体的に、ダブルミーニングのある一行目以外は無意味だと感じました。
二~四行目に面白い展開があるわけではなく、一行目を解明するヒントになっているわけでもありません。
「『ついていた』=『憑いていた』」を言い当ててしまえば、そのあとのストーリーはただ「男=悪霊」と代入して問題文をなぞればいいだけです。実際に正解となったNo.25はそのような形の質問になっています。
これは「問題:『男はついていた』これはどういう意味か?」という問題と変わるところがありません。おそらく、ダブルミーニングの思いつきを「何故?」で終わる問題文にするために無理やりくっつけたのが二~四行目なのでしょう。

正直なところ、「ついていた」のダブルミーニングだけでは、問題にして出題するには早すぎます。こういうネタはストックしておいて、問題として成立させるための閃きが来るのを待つようにしてください。

問題の分析は以上になります。
過去の名作をよく読んで、自分の生み出したアイディアを大切にし、より良い問題を作っていってください。


◆◆◆




《依頼人:藤井さん》
今朝ベーコンエッグを焼こうと思って卵を割ったら出てきたものなんですけど…
やれやれ、と僕は思った。
https://late-late.jp/mondai/show/499
問題への寸評をお願いしたいです!


《鑑定士:ディダムズさん》
優れた眼で見れば、卵の中にも謎は潜んでいる。そんな日常の謎を扱った問題ですね。
まずは構成から見ていきましょう。

料理を終えた直後に電話が鳴るというありふれた状況から、「電話に出たために、トーストを食いっぱぐれたのは何故」という謎を展開しています。
電話に出た方が時間をロスしそうなのに、電話を無視したからこそトーストを食べられなかったという、ある種の非常識がこの問いに魅力を与えていると言えるでしょう。
解説は「動線が変わればハトの糞が回避できていた」という比較的シンプルな内容になっていますが、庭に出ていたという舞台設定や、ハトの登場といった隠された要素を明らかにし、物語を広げていかないと真相にたどり着けないようになっています。
強引な状況やトリックに頼らず、日常にありそうな一場面を素朴にウミガメ問題に組み上げたところが、実にいい仕事してますねぇ。
電話の相手や内容など重要でないところは切り捨てつつ、「さぁ食べようかという時」とはどのような時なのか、「トーストを食べられなかった」とはどういう状態を指すのか、など問題文の要点を丁寧に掘り下げていくことで解説に至る、シチュエーションパズルらしい問題であると言えるのではないでしょうか。

一方で、電話を無視したらトーストを落としたとか、トーストに何かをぶちまけてしまったとか「電話に出る/出ない時の行動の差」を利用したものなら何でも別解になり得てしまうので、もう少し状況を絞るようにすると、問題の後半でもモノ当てを避けられるかと思います。

日常にあるちょっとした出来事を巧みにウミガメ問題へと仕立て上げた作品です。これからも大切になさってください。


◆◆◆



《依頼人:吊られる男さん》
家の庭を掘ったら出てきた古い書物です。
空回りのメリーゴーランド
https://late-late.jp/mondai/show/645
問題寸評の依頼です。どうか宜しくお願いします!


《鑑定士:ゴトーレーベル》
吊られる男さんはじめまして。

それでは鑑定させていただきます。おお、これはよいものですね~ ふむふむ~

これが初出題で多くのブクマも入っており、上々の滑り出しですね。
「解説の物語」に特長のある問題です。10問目の『届かない紙飛行機』もそうですが、これが吊られる男さんのひとつの方向性なのでしょうね。

一般論として、「解説の物語」が訴求ポイントである問題を出題するにあたっては、注意すべき点があります。

それは、「問題を漠然とさせないこと」。

ウミガメすべてで重要なことですが、解説に物語がある問題では、特にこれがおざなりにされがちなのです。
作者は、自分が作った物語に愛着がありますので、それがウミガメに合っていなくても出したくなるのが一つの原因でしょう。

しかし、物語を書くだけ書いて、問題文を適当に作って「はい物語を当てて」だけではウミガメとは呼べません。

仮に解説が「桃太郎」で、問題文を
「老婆が川で桃を拾ったおかげで人々が喜んだのはなぜ?」
として、犬猿キジも含めて物語を全部探り当てろ!では問題にならないのです。

ではどのような問題が望ましいのでしょうか。

本サイトの前身と言っていいのでしょうか、「ラテシン」から類例を挙げます。

とかげさん作『11人いた』
http://sui-hei.net/mondai/show/19645

とかげさんは今回鑑定士もされていますが、その紹介文にもあります。傑作多数のとかげさんにして、代表作の一つです。

お手数ですが、問題、解説、そして質疑応答をじっくり追っていただきたいと思います。

見ていただきたいのは2点です。
1.この解説に対してどのような問題文を提示しているか。
2.FAポイント(これを当てれば正解を出す要素)を何に設定しているか。

※※※以下ネタバレがありますのでご注意ください。※※※

問題文は「誰が死ぬかを決めるくじに当たった女を、愛していたのに男が殺したのはなぜ」となっています。
FAポイントは
・宇宙船は遭難しており、11人は全員死ぬ運命であること。
・くじは、すぐに楽に死ぬ者を選ぶものであること。
の二つのみです。

問題文からわかることは、「問う謎を明確にしている」ことです。
※「食料節約を目的とした口減らしのために殺す」ように見せかける技を使い、さらに「愛していたから殺した」という逆説も組み入れている点も見逃せませんが、今は謎が明確であることだけに着目してください。

FAポイントからわかることは、「物語の最重要要素のみを当てればFAにしている」ことです。

この二つに注意することが、「桃太郎当て」を防ぐことににつながるのです。

※同じく、物語要素が高く評価されている問題に、
 彩蓮燈さん作『最後に残った道しるべ』
 http://sui-hei.net/mondai/show/12675
 があります。
 ここでは詳細を挙げませんが、問題文で「問う謎を明確にしている」、
 FAポイントで「物語の最重要要素のみを当てればFAにしている」ことは同様です。
 ぜひこちらも問題を追って行ってほしいと思います。

問題文、FAポイントを決めるには、物語を考えた後、その物語のエッセンスはなにかを考える作業が必要です。それによって「何を当ててもらうべきか」が明確になります。

重要なのは、FAポイントをすべて当てても、物語すべてが分かったことになる必要はないことです。
・問題としては、FAポイントを当ててもらう。
・物語すべての鑑賞は、解説を読んでもらうことによって達成する。
ウミガメとして出題するときは、そこを区別することが大切なのです。

さて、一般論が長くなりましたが、以上を踏まえて、『空回りのメリーゴーランド』を見ていきましょう。

カメオとウミ田の関係と、アルツハイマーの老人が最後に思い出の場所を巡るというモチーフはすばらしいです。

問題文も、カメオとウミ田が若く、かつ二人が仲たがいしたように見えます。このミスディレクションもお見事です。最初からここに気が使えているのは非凡だと思います。

次にFAポイントを見てみます。私が見たところ、次の五つです。
a.カメ夫とウミ田は親友である。
b.ウミ田はアルツハイマー型痴呆症である。
c.ウミ田は最後に思い出の場所をカメ夫と巡りたいと申し出た。
d.ウミ田は、もし集合場所に来なければ殺してほしいと依頼した。
e.集合場所である遊園地にウミ田が来なかったので、約束通り殺した。

『11人いた』『最後に残った道しるべ』より明らかに多いのがお分かりでしょうか。

ここで、「物語のエッセンスはなにかを考える作業」を行います。本問の場合、
・カメ夫とウミ田は親友である。
・ウミ田はアルツハイマー型痴呆症である。
・カメ夫はウミ田の病状の進行を知って、ウミ田のために殺した。
となると考えます。

思い出の場所を巡る、集合場所に行かなかったら殺してくれと依頼する、などは3番目の要素を物語的に具体化し、ふくらませたものです。

作者の思い入れは、まさにその物語的なディテールにこそあるのでしょうが、ウミガメとして出題するときは、いったんその思い入れから自由になる必要があります。(ここが難しいのですが)

解説をそのままにしてFAポイントの整理を試みると、
a.カメオとウミ田は親友である。
 →そのままとする。
b.ウミ田はアルツハイマー型痴呆症である。
 →そのままとする。
c.ウミ田は最後に思い出の場所をカメ夫と巡りたいと申し出た。
 →「その日は遊園地に行く予定だった」程度にする。
d.ウミ田は、もし集合場所に来なければ殺してほしいと依頼した。
 →FAポイントから削除する。
  (質問No.39も正しいことになる)
e.集合場所である遊園地にウミ田が来なかったので、約束通り殺した。
 →遊園地に関わるなにかを忘れたため(来なかったことに限定しない)、
  病状の進行を悟り、ウミ田のために殺した、とする。
  (質問No.34なども正しいことになる)

ばっさり切りすぎだ、と思われるかもしれませんが、一つの例としてご覧ください。

No.34、No.39などについて、Yesとすると厳密には解説と違うことになります。しかし、「その差異は物語のエッセンスにとって重要ではない」という視点から、そこは割り切るわけです。
解説と回答の整合性が気になる場合は、Yesとしておいて、回答で補足するという方法(ある意味重要な小技)もあります。

c, d, eのFA条件をそのまま残す方法もありますが、その場合はヒントを出すことも覚悟しておく必要があります。
今回No.1の鑑定でも書きましたが、登場人物の行動が論理的でないと、質問者にとっては当てることが難しくなります。c, d, eの要素は不合理でも非論理的でもありませんが、極めて特殊な状況ではあります。
これを正確に当ててもらおうとすると、渋滞が予想されるわけです。

FA条件が整理できるよう、解説を変える方法ももちろんあります。
今回は、かなり出来上がった物語であり、それをすると相当な変更が必要となるためそれには言及しませんでしたが、よろしければご自身でもお考えください。

※解説変更について、そしてその他全般についても、
 No.8の鑑定を合わせてご参考になさってください。
 両問はまるで違うように見えて、実はその本質は同じです。
 最初の物語を自分で考えたか、人が考えたかが違うだけなのです。

問題、解説、FA条件は密接に関連しています。
その視点を持つと、メリハリの効いた問題になりますので、心がけてほしいと思います。

『空回りのメリーゴーランド』についての鑑定は以上とさせていただきます。

なお、いろいろ検討しても、うまくFA条件を絞り込めない物語もあるでしょう。
その場合は、ウミガメとしてそもそも適切でない可能性も考慮してください。

最後に。
これだけの解説が書けて、問題文のミスディレクションにも気を使える方は間違いなくウミガメの才能があります。
今後の活躍も期待しております。


◆◆◆



《依頼人:ZEROさん》
知らない人にいきなり渡されたものなんですけど…
なすりつけること◯の如し
https://late-late.jp/mondai/show/416
問題寸評を依頼します。


《鑑定士:とかげさん》
こんにちは、ミステリ、SFが大好物の爬虫類です。ではこちらのお品、鑑定させていただきますね。(-)∀(-)ムシャムシャ
ふーむ、この材料、そして見た目は……!

材料(題材)
ほほう、ミステリ×近未来SFとはお目が高い! この材料に興味をひかれる人は多いでしょう。非現実要素の方は隠し味にしてしまう点も良いセンスですね。
ただ、ミステリを材料にするときは、隙をつくらないことが重要です。ミステリ設定に惹かれる人は、推理小説も読み慣れています。「ここの論理おかしくない?」、「こう考えれば証拠が残るはずだけど」などと突っ込まれる隙をつくると、一気にスープの納得度も下がってしまいますし、下手をすると問題そのものが成り立たなくなってしまいます。
このスープの場合、「頭や手を固定した痕跡が残る」、「カメ吉の体内から睡眠薬が検出される」、「不自然に動かない二人の様子が目撃されたり監視カメラにうつったりする」、「爆薬の入手経路から犯人が割り出される」、などパッと思い付くだけでも真犯人がバレそうな点がいくつも出てきます。これらの問題点は解説で説明されていないので、カメオが捕まらなかった理由にリアリティーが欠けてしまうのです。
また、こういった隙ができる要因のひとつは、もう一方の設定、近未来SFが真相に関わっているから。「自動運転が可能なくらい技術力があるなら科学捜査も進歩しているはず」と考えられてしまうのです。
ご都合主義にもなりかねないSF要素を、「車の自動運転」というリアルなものにしたことは堅実な判断でしたが、そのリアルさがかえって殺人事件捜査のリアリティーの無さ(そのくらい捜査でわかるでしょ、という点が抜け落ちていること)を浮き彫りにしてしまっています。
殺人や完全犯罪は非常に興味をひきやすい、強力な材料です。だからこそ、期待も大きくなってしまう。論理の穴を自力でチェックするのはなかなか難しいので、ミステリを材料にしたいときは、事前にテストプレイなどスープ・パートナーを誰かに頼むのと良いかもしれませんね。

見た目(問題文)
第一印象は、「問題文からわかる情報が少なすぎる」……ミステリにありがちな状況ですから、これだけの情報では当てはまりそうな真相が色々考えられます。その中から出題者の脳内当てをしなくてはいけないので、あれもこれも質問する必要がある、物当てをしなくてはいけない、という印象を持ってしまいます。それが必ずしも悪いわけではないのですが、隠された情報が多すぎるように見えてしまうと、参加者からは「手間がかかって面倒だ」と思われてしまいかねません。スープは食べる人がいてこそ輝くもの。参加したいと思わせる見た目は重要です。具体的な要素を盛り込んだ問題文にする方が、興味をひきやすいですし、質問のとっかかりにもなります。すべて詳細に書く必要はなく、たとえば「カメ吉が犯人として事件は処理された。」の部分は、カメ吉がもう死んでいることを隠しつつもそれを匂わせるうまい表現をされていますよね。こんな表現で、直接書いてはいないけれどそこから推理・予想できるというような書き方をすれば、真相をぼかしつつも具体的な文章になっていくのではないでしょうか。
……まあ、それでも瞬殺されるときはされます。瞬殺を怖れず、たとえ瞬殺されても良い問題と思われるようなスープを目指せばよいのです!

その他
・登場人物が全員「カメ○」だと参加者が間違えやすく、混乱を招きます。事実、解説でも「カメオの手を固定している~」という部分、出題者も名前を間違えてしまっています。名前自体にトリックがないのであれば、複数人登場する場合、名前は区別しやすいものがオススメ。
・タイトルはスープの顔。せっかくだからこだわってつけると、より愛着もわきますよ!

アレンジレシピ
その車の運転席には爆死したラテ吉の死体、そして助手席には爆発に巻き込まれてはいるが、死因は刺殺と判明したウミコの死体があった。ラテ吉の手元には爆破装置の操作パネルの残骸が見つかっている。
二人が直前まで一緒に車に乗っていたことも、多くの監視カメラの映像によって裏付けされていた。
さて、実はこの二人を殺したのはカメオなのだが、カメオには完璧なアリバイがある。一体どうしてこんな芸当ができたのだろうか?

ミステリの謎解きと思わせて、実は非現実要素を当てる問題にアレンジしてみました。カメオがつかまったかどうかは書いていないので、完全犯罪である必要はありません。
ただ、アレンジしてみたものの、やはり「自動運転」だけではちょっとトリックとしては物足りないと感じます。殺人事件にこだわらず、他のアイディアと組み合わせてより良いスープになるまでじっくりことこと煮込むのも良いものですよ。
いいな、と思ったアイディアの種を大事に、これからも色んなスープに挑戦してください!




[18年08月14日 08:30]
[4134]
オリオン[☆シンディ]

[編集済] 質問番号6~10鑑定結果一覧



《依頼人:ホルスさん》
Cindyで出題した問題ですけど大丈夫ですかね?問題寸評をお願いしたいです。
ポップコーンを貪るユニコーン
https://www.cindythink.com/puzzle/show/1720
どなたでも構いません。鑑定お願い致しますm(__)m


《鑑定士:とかげさん》
こんにちは、Cindyもよく覗いている爬虫類です。鑑定士変更となりましたが、霊長類さんの代わりに鑑定させていただきますね。(-)∀(-)パックン
ほほう、これはなかなかユニークな見た目と材料ですね!

見た目(問題文)
四択クイズとインコの好物に何の関係が? と意味不明に思えるのが、このスープの魅力ですね。
このような、一見繋がりがなさそうな物事の隠れた関係を探るタイプのスープは、本当にただただ意味不明にしてしまうと、逆に魅力が落ちる危険があります。意味不明過ぎて、「はたして本当に納得のいく真相が用意されているのだろうか」と心配になるからです。
その点、このスープはうまく魅力を保っています。このことについて、具体的であること、ヒントになる言い回し、そしてちょっとおまけになりますがメタ情報、という3つをお話しします。

まず、具体的であること。このスープでは、短い文章の中に四択クイズ、インコ、トウモロコシと具体的な言葉が3つも出てきています。たとえば「インコがトカゲでも成り立ちますか?」と別のものに置き換える質問、「四択クイズの内容は重要ですか?」とそれぞれを掘り下げる質問などは、すぐに思い付くでしょう。具体的なものが登場しているため、ヒラメキがない状態でも質問しやすい構成になっていると思います。たとえば、もし「四択クイズで正解できなかったのは、インコを飼っているから」としてしまっていたら、難易度が上がるだけでなく、納得感も格段に下がっていたはずです。できる限り具体的な情報を出してしまうことで、質問のきっかけを与えることになっていますし、どんな関係があるのだろうかと更に謎が深まり、魅力が増しています。

次に、ヒントになる言い回しについて。
問題文は短いながらも、「正解できなかった」という表現が非常に誠実であり、ヒントにもなっていますね。「間違えた」ではなく「正解できなかった」とあえて書いている意味を考えれば、「正解はわかっていたのにそれを選べなかった」という可能性に思い至るでしょう。こういうちょっとした言い回しの工夫は、ヒントにもなりますし、もし気づけなかったとしても真相が判明したあとで「だからそういう表現だったのか」と納得度を高める効果もあります。一字一句大切にされている印象です。

そして最後にメタ情報について。
スープの質が信用できるかどうかを簡単に判別できる材料は、出題者のこれまでの実績でしょう。もし初出題のスープだったり、あるいは普段からあまり納得感のないスープばかり提供している出題者だったりしたら、こじつけでスッキリしない真相になっている可能性を感じて、参加をためらう人も出てくるかもしれません。料理人がホルスさんだからこそ、一見繋がりがなさそうに見えても、きっと何か面白い真相が用意されていると期待できるのです。
これは問題の質そのものに関係する話ではありませんから、まあ本当におまけですね。
ただ、今までつくってきたスープが自分への信頼をつくるのだ、ということは、自分も常に肝に命じておかねばと思っています。

さて、ここまで基本的に誉めてきました。特に大きな問題も見当たりません。
ただ、しいて言えば、ちょっと見た目が地味なので、まだもうひとひねりできなくはないかなという気持ちはします。
たとえば、問いかけの形を工夫する、視点人物をつくる、いっそジャンルを変えるなど、方法は考えられると思います。
素朴なままのこのスープも十分魅力的ですので、アレンジするかどうかは個人の好みの問題となるかと思います。派手だったり、目新しかったりすればいいってもんでもないですからね。

材料(題材)
リモコンの四色ボタンとは、また面白いところに目をつけましたね。普段使わない人には要知識になってしまうのかもしれませんが、ボタンそのものの存在を知らないという人の方が少ないでしょうし、馴染みがないだけで言われればわかる範囲だと思います。リモコンのボタンが壊れるというあるあるも組み込んでおり、身近な材料をうまく料理されていますね。

ところで、犬などは色がわからず白黒に見えているという話はよく聞くと思いますが、一方鳥は人間よりも色の識別ができると言われています。つまり、このスープの中で重要な「黄色」という情報は、きちんとインコのピーちゃんも判別できていたと考えられます。実際に解説などで説明しなくても、きっとホルスさんはもともと知っていたか、事前に下調べしていたことと思います。
ちょっとした勘違いでも、間違った知識でスープをつくり、提供してしまうと、せっかくのスープが台無しになりかねません。たとえば、トウモロコシ好きの猫という設定にしてしまっていたら、動物の色の識別について知っている人には、トウモロコシが黄色いことは関係ないという誤った判断をさせてしまうのです。色がわからないはずの猫が黄色ボタンだけ狙うという真相では、納得感も下がります。
細かいことですが、自分はスープに使う材料について、できる限り正確な情報を仕入れることを心がけています。下手をすると、スープそのものが成り立たなくなる危険もありますから。

アレンジレシピ
カメコは四択クイズに正解できなかったのだが、そんな彼女が飼っているインコのピーちゃんが好きな食べ物としてふさわしいものを推理し、次の中から選び理由も含めて答えよ。

1 ひまわりの種
2 トウモロコシ
3 にんじん
4 チンゲン菜

アレンジする必要もなさそうなのですが、一応挑戦しました。意味不明な雰囲気は残しつつ、少し珍しい形にして人目を引くために、扉形式にしてみました。シンプルなスープにしてもよし、変わり種にしてもよし、のセンスのある材料だからこそできるアレンジですね。

ホルスさんのための鑑定だけでなく、このスープを通じてついでに言いたいことを言ったような形になってしまいましたが、まあJKのかわいさに免じて許してください。これからも質の高いスープ、期待しております。



◆◆◆




《依頼人:詩穂さん》
古いアメリカンジョークよりの出題です
二隻の軍艦
https://late-late.jp/mondai/show/1056
問題寸評をお願いします。初心者です。


《鑑定士:オリオン》
じゃかじゃん!
詩穂さんこんにちは〜。拙い寸評ではありますが、なるべく初心者さんにも伝わりやすい内容になるよう頑張ります。

ふむふむ。詩穂さんがもう一問持ち込んでくださった問題と同じく、こちらも元ネタありの問題ですね。初めて知ったお話でしたがとても面白かったです。当初の思惑と結果とがすれ違ってしまう、まさに外国のジョークの定番ってシチュエーションで良いですね。イギリスは常温で飲み物を飲みアメリカは氷で冷やす文化だった、というのは初めて知りました。国の名前のA国B国はただアルファベットを順番に割り当てただけと見せかけて、実はアメリカとブリテンの頭文字だったりするのでしょうか? だとしたら芸が細かいです。
実話問題なので現実的にあり得る展開=参加者さんが想像できる範囲のストーリーであることも強みですね。もう片方の寸評でゴトーレーベルさんもおっしゃってましたが、詩穂さんはこういう魅力的な元ネタを見つけるセンスはとても鋭いと感じました。

ただ、ゴトーレーベルさんと同じく、私も問題を『元ネタそのまま』にウミガメのスープとして出すことは難しいと考えている人間です。良い物語であることと良い謎解きであることとは、別だからです。推理小説とかのサスペンス作品でイメージすると分かりやすいかもしれません。
「ふむふむ、息子を殺した犯人を探し当てるて復讐するためにそんな苦労を……いい話や!(ストーリー)」
「でも凶器が天才博士からもらった未知の毒薬だなんて納得いかねーっ! そんなの、読んでて推理できるわけないじゃん!(謎解き)」
上記はあくまでも、分かりやすく説明するための極端な例ですけれど、こういう風にストーリーとか雰囲気は好きなんだけど肝心の謎解き部分に引っ掛かりを感じるサスペンス作品に遭遇すること、私は結構あります。
謎解きでは推理の材料として『本文に伏線がきちんと張ってあること。本文中に、読者に対して推理の材料がちゃんと示されていること』がとても重視されるため、何かを元ネタにして問題に作る際には、そういった伏線を意識して手を加える必要が出て来るわけです。
水平思考問題ではこういった伏線のことを、『クルー』と言います。


脱線・プチ用語解説
(今のらて鯖ってチャーム、クルー、ベール、トリックの説明多分ない、かな?)それぞれの意味はざっくりとこんな感じ。
チャーム……問題の魅力のこと。
クルー……上に書いたような、問題を解く上でのヒントとか質問のきっかけになるようなワードのこと。
ベール……答えがすぐに分かってしまわないように問題文から情報を削ったりする作業。
トリック……問題文の中にある仕掛けのこと。◯◯と見せかけて実は××だったとか、問題文のこの部分はこういう意味だったのか、とかそういう部分。


脱線終了
それでは本題に戻ります。
私の想像での話になりますが、おそらく詩穂さんは最初にこのエピソードをスープににしようと考えた際『アメリカ側は飲み物に使って欲しくて氷を送ったのにイギリス側はそれを水風呂に使ってしまった』という結末部分を隠して、そこを参加者さんに当ててもらう問題にしたかったんじゃないのかな、と思っています。元ネタのお話の肝の部分ですからね。しかしそれですと『贈った物は氷である』っていうクルーが、ちょっとヒントになりすぎてしまうんですね。氷の使い方は限られていますし、その中でも飲み物に入れるという使い方はメジャーですから。ですから『氷』という情報も隠して、その結果あの問題文の形にまとまったのかな? と感じました。
けれどそのせいで、

1:贈り物が氷であることを当てて下さい
2:A国が氷を贈った理由が冷たい飲み物だって推理して下さい
3:B国の氷の使い道が水風呂であると推理して下さい

という風に問いかけ部分が3つに分かれてしまっています。これは、このスープ最大の問題点だと思います。参加者さんにどこを解いたらいいのか分かりやすくする意味でも、進行のやりやすさ的な意味でも、問いかけ部分はなるべくシンプル且つ的確にまとまっていた方がいいです。
実際、進行の中で「体を冷やすために氷を使ったのか?」という問いに対して「(今は2番目の項目を当ててもらっている段階だから)ノーですが」という返答をしている箇所がありますが、質問者さんは特に「2番目の項目、3番目の項目」と指定して質問していないのでどちらとでも捉えられますし、氷を当てた後は自動的に2番目の項目を当ててもらうための段階になるという説明はこの段階では参加者さん達に伝えられていなかった情報なので、この質問を「2番目への質問」として突っぱねる要素はないように思えるのです。こういった事態を避けるためにもやはり問いかけ部分はシンプルに越したことがないですし、もしも問題文のような複雑な問いかけにするなら「贈り物、A国の思惑、B国の使い方の順番で当てて下さい」みたいなルール説明を一言加えておくとか、「2項目はノーですが3項目はイェス!」みたいな返答をするとか、何かしらの工夫をするのがベターでしょう。

(ちょっと私では力不足で具体的な上手い修正案が思い浮かばないのですが、例えば「Aさんは冷たい水が飲みたくてBさんへ氷を贈ったのに、今、氷水を目の前にしてとても困惑している。一体なぜ?」みたいな形にすれば問いかけは一箇所だけで済みます)
別に元ネタに忠実な出題をする必要は全くないので軍艦とかアメリカイギリスとかはいっそ削っちゃっても問題ないですし、『暑い』『氷の使い道が想定とは違った』『片方には氷を飲み物に入れるという発想がなかった』辺りの重要な要素だけ大切にすればパターンは無限大です。お金持ちのカメオくんが貧乏なウミオくんの家に遊びに行くことになったときのエピソードでもいいですし、いっそ逆に、氷風呂文化が一般的な文化圏で育った人が生まれて初めて氷入りの飲み物を見てびっくり、とかでもいいです。

詩穂さんは、鋭いな、と感じる質問をしているところをよく見かけますし、氷という情報を入れるとヒントになり過ぎてしまうという判断もできているので『どこがクルーなのかを判断する力』は高いと思うのです。でも詩穂さんがこの問題を作る上で行なっているのは「ベール」だけなのですね。クルーを抜く作業しかしてないのでややこしくなるし、問題文がちょっと扉みたいに物当て地味てしまったり、後からたくさんヒントを出す事態になったりするのだと思います。
某漫画のセリフにあった例え話の引用になりますが、ジャンケンでチョキだけしか使えないと苦戦を強いられること間違いなしですけど、パーとかグーを使えるようになったとしたら確実に強くなれるし、ジャンケンするのが一気に楽しくなりそうじゃないですか?
是非過去問などを参考にして、『トリック、問題のアレンジ』と『大きなヒントになり過ぎない範囲のクルーをしっかり入れる』、このふたつを意識した作問をしてみて欲しいです。


◆◆◆




《依頼人:詩穂さん》
民話よりの出題です。
仲直り
https://late-late.jp/mondai/show/870
問題寸評をお願いします。


《鑑定士:Go To_Labelさん》
詩穂さんはじめまして。よろしくお願いします。

おおおおー、うーん、この色つや、いいですね~。

この民話、私もどこかで読んだことがあります。たしか挿絵があって、「眠らせた王様を詰めた袋をかついで夜陰に城から出ていくお妃」でした。知恵があり愛情深いうえに力持ちとは、すごい人だなあと感心した記憶がうっすらとあります。

元ネタの民話を改変せずにそのまま使っていると思われますが、これは一般論としては避けた方がいいやり方です。
なぜなら、よく出来た元ネタであればあるほど、
マンガならマンガの形式に、
小説なら小説の形式に、
民話なら民話の形式に、
それぞれ最適化されているはずだからです。
ウミガメはこれらとは別形式ですので、ウミガメとして最適化するなら、多少の加工が必要になるのが道理なのです。

このことについては後で詳しく述べます。

まずその元ネタの民話ですが、これは大変面白いです。
大切なものだけ持っていくと言い、それにケンカの相手自身を選ぶというのはまさに水平思考。
機知に加えて、深い愛情が余韻を残します。

ネタの選び方にもウミガメのセンスが問われるのですが、これをウミガメにしようと発想されたのはすばらしいの一言です。

さて、そのすばらしいネタを問題にするにあたって、2点頭をひねるべきところを挙げます。

1.
「私の一番大切なものをどうか、お城から持ち出させてください」という願いを問題文に入れるか。
入れたら簡単になってしまう懸念があるが、入れないと難度が跳ね上がってしまう。

2.
民話だから「王様を連れて実家に帰ってきた」でよいのだが、実はこれは不自然。王様の意思に反していることは明らかなので、これは王様の拉致です。実行に移すのは困難を極めるはず(実のところ、上で書いた挿絵のようにしなければならないでしょう)。
つまりは絵空事特有のできごとであり、現実の問題として謎を解こうとした場合、難易度が上がる結果になる。

2について補足しますと、ここで先の、「民話なら民話の形式に最適化されている」ということが出てきます。
民話ならこれでいいのです。ちょっと変だな、と思ってもすぐにそこは通り過ぎて、見事な結末に驚いて満足してくれます。
しかしウミガメとして出すと、参加者は道理にあった無理のない解釈を優先的に考えますので、答えを出すにも手間取りますし、答えが出た後でも割り切れない思いが残ります。
民話や小説とウミガメとの違いは、ウミガメでは参加者が能動的に関わる点にあることは注意が必要です。
※実際は、どんな形式でも、変なものは変です。民話だからいくら変でもかまわない、ということにはなりません。形式によって、アラが出にくい/出やすいの別がある、とご解釈ください。

1の願いの記述を削り、2を元ネタそのままにすると、相乗作用でかなり難度の高いものになります。

対策の取り方の例を挙げます。

・1について、記述を加える。ただ、表現を変えることを検討。「身の回りの必要なものだけ持って、さっさと出ていけ」と王様に叫ばせる、など。
・2について、そもそも元ネタのエッセンスだけを抽出して全体の物語を変える。エッセンスは、「立場の強い者が理不尽な理由で弱い者に出ていけと言う。弱い者はそれでも強い者を見捨てず、大事なものとして一緒に行動することを選ぶ」であると思われる。よって、「金持ちの孤独な老人と、養子に取られた貧乏な青年」などに配役を変える。

例としては大したものではありませんが、このような検討が「元ネタをウミガメとして最適化するための加工」となります。
ご参考になれば幸いです。

ただし、とはいうものの。
詩穂さんが実際に採用した問題文、つまり1にも2にも対策はしないという行き方も、なくはない判断だと思います。
元ネタの良さと味を最大限生かすことを主眼に置くならそうなるでしょう。

ただしその場合、難度についてもきちんと判断しておき、「いざとなればヒントを出す」という想定はしておく必要があります。
実際問題として、この問題では合計5回ヒントが出されています。
どれもタイミング・内容ともすばらしく(他の方もぜひここに注目してほしい)、おそらく難度は高いことは想定されていたのでしょう。

なるべくなら、ヒントは出さずに問題文だけで調整するのが望ましいことは間違いありません(それは憶えておいてください)。

ただ、本問はヒントの質が高いことも込みで、ちゃんとした出来栄えだと鑑定いたします。
良い問題です。大事になさってください。

なお、No.4の鑑定もご参考になさってください。
両問はまるで違うように見えて、実はその本質は同じなのです。

詩穂さんの今後のご活躍も期待しております。


◆◆◆




《依頼人:カーマイン先生さん》
耳掃除したら出てきました…。鑑定のほど、よろしくお願いいたします…。
初恋
https://late-late.jp/mondai/show/890

出題させていただいたスープの寸評をお願いしたく存じます…。
誰に鑑定していただいても幸せですが、オリオンさんならば狂喜乱舞します。

鑑定結果をお待ち下さい。


《鑑定士:オリオン》

じゃかじゃん!
ご指名ありがとうございます。他のベテラン鑑定士さん達には及びませんが精一杯頑張ります。

解説との整合性
まずは問題文と解説の整合性から見ていきますね。
カメオは恋に落ちた直後に死んでおり、死人なのだから告白なんてできるわけがないのは当然です。納得の理由だと言えるでしょう。
一ヶ所気になるのは「恋に落ちた」という表現でしょうか。解説では「故意に落ちた」と「恋に落ちた」の二種類のコイニオチタが出てくるので、ダブルミーニングを追求するなら問題文表記は「こい」等にして、問題文を読んだ人が「恋」と「故意」のどちらにも取れるように表記するのが一番良い手だと思います。
ただ、こちらの問題でカーマイン先生さんが実際に誘導でやっているように、あくまでも正解のラインは「飛び降り自殺をしてもうすぐ死ぬカメオが落下中に恋をしたから」という部分に設定しており、恋に落ちたと故意に落ちたがかけてあったのだという部分に関しては解説で明らかにしたり、もしも指摘してくれた人がいた場合は裏正解(もしも当ててくれた人がいた場合には正解進呈)にしようという扱いならば、このままの表記でも問題ないと思います。良い正解ラインですね。

問題文
続いて問題文について。
この問題で一番もったいないポイントだと思います。
カメオは恋に落ちたが告白することはなかったという情報だけですと、参加者さん達が最初の方で質問しているように「相手の方から告白されたから」とか、あるいは単純に「告白するだけの勇気がなかったから」ですとか。『日常的にあり得る理由』が色々と想像できてしまうのでいまひとつ不思議に見えないというか、問題文の魅力・インパクトとしてちょっと弱いです。問題文は参加者さんに「魅力的!参加したい!」と思ってもらえるかどうかが決まる大切なポイントなのでなるべく趣向を凝らして、是非、読んだ人の興味をそそる内容になるよう重視していきたいですね。
例えばですが少しだけアレンジして、

カメオは恋に落ちた。
一目惚れだ。
しかし、カメオが『行動力がある性格』だったせいで、告白はできなかった。

としてみるとどうでしょう。自殺をしようと思い立ってすぐにそれを実行に移せるだけの行動力があったせいで告白ができなかったというオチの文ですが、こうすると、
えっ、普通は行動力がある性格だったらすぐ告白するでしょ?
それなのにその性格のせいで告白しなかったってどういうこと、逆じゃない?
って具合に『明確な矛盾』が生じる分問題文の不思議さが増してる感じがしませんか? 「勇気や行動力がなくて告白しなかったわけではない」という別解潰しにもなります。
あくまでも一例で、いっそ問題文の視点・焦点を変えたり(例:今はカメオに焦点が当たってるけど女性の方に焦点が当てられないか考えて見たり)、時間軸をずらしてみたり、問題文自体をもっとガラリと変えてしまうのも手ですし、お気に召すラインを模索してみて下さい。
これからも是非らて鯖で良い問題をドシドシ出して楽しい出題ライフをエンジョイして下さいね!


◆◆◆





≪依頼人:ひらめさん≫
実家の蔵にあった曰く付きの箱の中に入っていたものなのですけれど…
ウミヘビのスープ
https://late-late.jp/mondai/show/560

問題寸評をお願い致します。
鑑定士の方はどなたでも嬉しく思います。


≪鑑定士:とかげさん≫
こんにちは、名前の通り爬虫類なので、爬虫類仲間のこちらのお品、鑑定させていただきますね。ペロッ……コ,コレハ 毒!?(-)Д(-);
おっとこの皿、有名なアレですね。お、この味付けも興味をひかれますよ!

皿(条件)
これはかの有名な本家ウミガメのスープの皿ですね! ウミガメのスープを始めたからには、やはり本家のオマージュ問題をつくりたくなるってもんです。
さて、味付けについては後述するとして、先に「オマージュ、お題など何らかの条件があるスープ」で気を付けて欲しいことを話したいと思います。
他の人の問題文で別の解説を考えたり、与えられたお題から問題をつくったり、ということは、問題づくりのきっかけとしてはもちろん利用できることです。
しかし、オマージュすること、お題を全部使うこと、条件を満たすことが第一目的になってしまうのは、非常にもったいない。「ちょっと違和感や無駄な表現がある問題文になったけれど、完璧にオマージュできた、お題を消化できた」というのと、「元の問題文とは変わってしまったり、使わないお題があったりするが、自然で無理無駄のない問題文ができた」というのでは、どちらが理想でしょうか?
スープをつくっていく過程で、もし「この文章、少し変えた方が自然かも」、「このお題から考えてみたけど、この言葉はなくても問題文が成り立つな」と感じたら、ぜひその感覚を大事に、条件を満たすことを諦める勇気を持ちましょう。もっと美味しくなるはずのチャンスを逃さないで欲しいのです。
たとえばこのスープの場合、 解説の状況におかれた男は、「これは本当にウミヘビのスープですか?」と聞くでしょうか。本当はウミヘビではない肉を使っていても、メニュー名を確認されたのかと考えたシェフが「ウミヘビのスープに間違いございません。」と答えることもありえます。もともと男自身が単なるメニュー名だと考えて注文したのですから。「この肉は本物のウミヘビですか?」とか、「比喩ではなく本当にウミヘビのスープなのですか?」などと聞くのが自然です。また、シェフを呼んで質問できる格式の高そうなレストランで、毒を盛られるなどと勘違いするでしょうか? そんな早とちりをする男が、毒を盛られた店にご丁寧に食事代を払い、自殺するのにきちんと家まで帰る心の余裕があるのでしょうか? なぜ病院に行かないのですか? そもそも、このような小心者の男が、ウミヘビの毒の話を知っているのに、あえて何が入っているかわからないウミヘビのスープを注文するとは考えにくいです。どうにも、この真相に対してこの問題文では、ところどころ違和感を覚えてしまいます。
一から自分で考えた問題文であれば、このような違和感はあまり出てこなかったでしょう。
スープができた! と思ったらすぐに出題するのではなく、一度解説と問題文を見比べてみて、本当に整合性がとれているか、解説の状況から考えると不自然な記述はないか、チェックすると良いでしょう。問題文が先にある場合は特に、解説ができてから見直すと粗が見つかったり、もっと良い表現が思い付いたりすることが多いと思いますよ。

味付け(トリック)
ふむ、これはなかなか面白い味ですね! オマージュしつくされてきた「ウミガメのスープ」ですが、ウミヘビにしたことでこんな新たな解釈ができるのですね。ただ、このアイディアは非常に興味深いのですが、少々リアリティーがないようにも感じます。本当にこんなことで勘違いするだろうか、もし勘違いしたとしても病院に行かずに自殺を選ぶだろうか、と。
これを解決するためにまず必要なのは、先述の通り、違和感のない問題文につくりかえること。そしてもう一つ、解説をつくりこんで納得感をあげるという方法があります。
解説は端的に真相を説明するだけでなく、リアリティーを持たせて納得感をあげるためにも使えます。解説が物語になっているタイプのスープはよくありますが、質の高い物語スープは、解決後のお楽しみというだけでなく、読んだ人がより深く謎の真相を理解し、納得する手助けにもなるものです。
たとえば「シェフは男がスープをすするのを見ながら、ニヤニヤして言った。『ウミヘビって魚類と爬虫類がいるんですよ……魚類の方は毒がなくて、爬虫類の方は猛毒を持っているんです。ああ、このスープですか? もちろん爬虫類の方ですよ、ふふふ……』」とか(怪しげなセリフと雰囲気で勘違いしても仕方ない状況と思わせる)。
「突如寒気を覚えて、男は身震いした。しかし一方で額には汗が浮かび、手のひらもじっとりと湿っぽい。シェフを見ると、特に暑そうでも寒そうでもないので、空調がおかしいわけではないらしい。」とか(男の体調の変化を思わせる文章を書いておき、体調不良が毒のせいだと勘違いしてもう手遅れだと考え自殺してしまう、という行動に納得感を与える)。
リアリティーを追及すれば、この味付けの美味しさが更に引き出されるでしょう!

アレンジレシピ
そのレストランのシェフは、ウミヘビのスープを注文した客にウミヘビのうんちくを語ることで、何人もの客を死に追いやっている。
どういうことだろう?

客がスープを飲んだあとで毒入りと思わせるような話を語り、毒のせいでひどく苦しんで死ぬと勘違いさせて自殺させる、狂人シェフに仕立ててみました。シェフの悪意があるわけですから、偶然勘違いして自殺しまうパターンよりは現実的です。ただしそれをより納得させられるような解説を書き上げる必要があるでしょう。

解説を見るに、文章を書くことはお得意な様子。それならばぜひ、条件にとらわれすぎず、スープ一滴一滴(一字一句)に妥協しない問題づくりを目指してみてはいかがでしょうか。
もっともっと美味しい「ひらめのスープ」を期待しています!
[18年08月14日 08:29]
[4133]
オリオン[☆シンディ]

[編集済] 質問番号11〜15鑑定結果一覧



《依頼人:霜ばしらさん》
押入れの闇の中にしまっていた記念品なんですが…

1000突破記念ウミガメ霜ばしら、お前もか
https://late-late.jp/mondai/show/1035

少し亀夫君ちっくな部分があるので、できればとかげさんに問題の鑑定を依頼させていただきたいです。
よろしくお願いします。


《鑑定士:とかげさん》
こんにちは、亀夫君が大好きな爬虫類です、名前的にも。早速こちらのお品、鑑定させていただきますね。(-)∀(-)モグモグ
この味にこの見た目ですが、なるほどなるほど……ほう、この香りはユニークですねぇ。

見た目(問題文)
飲んでみたら見た目で想像していた味とは違う! というスープって楽しいですよね。ただ、真相がわかってから問題文を読み返したとき、「なるほど、騙された!」と感じるか、「いやそれはアンフェアだろう」と感じるか……もちろん感じ方は人それぞれではありますが、問題の地の文に明らかに嘘の情報や真相と矛盾することが書かれていたり(会話文なら嘘もOKだと思います)、少々強引な解釈が必要だったりすると、納得感が得られないものになってしまいます。
このスープの場合、1日1問ずつウミガメのスープをつくった結果、半年でなぜか1000問達成……と思わせて、実は1000人の正解者を出せばよかったのだという真相ですね。
仙人が課題を出し、「1日1問ずつウミガメを作るのじゃ。そうすれば1000日で課題をクリアできる」と言った……これはセリフで、仙人がそう考えただけですから、実は1000問つくることが課題そのものではないことをうまく隠しています。これをアンフェアに感じる人もいなくはないでしょうけれども、よく読めば課題の内容が書かれていないことに気づけますし、許容範囲でしょう。
一方、「自分に1000問ものウミガメが作れるだろうか…/不安を抱えつつ課題に取りかかった霜ばしら(後略)」という記述はアンフェアです。1000問つくることを強調しており、それに不安を覚えているにも関わらず、霜ばしらさんは最初から闇スープを利用していて、1000問つくらなくても大丈夫だということを知っている状況です。1000問つくれるかどうかを不安に思うはずがないので、真相と矛盾してしまうのです。
例えば、途中から闇スープにすればよいことに気づいて方針を変えた、と矛盾しないような解説にすることもできます。ただそれでもやはり不安に思っていたことは単なるミスリード要素にしかならなくなってしまうため、そう気づいたきっかけや方針を変えたことなどのヒントが問題文に欲しいところです。

香り(雰囲気・演出)
この香り、独特ですねー! 5名正解で終了の闇スープ、という形式自体にきちんと理由が用意されており、ルールを利用したメタな面白さが光りますね。
「瞬殺されそうだから難易度調整のためだけに闇スープにする」というような理由で使われがちな闇スープ形式ですが、もともとある機能をこういった演出のために活用しようという姿勢、大好きです。もちろん、用意されている機能ですから個人個人が好きに使えばいいのですが、瞬殺防止のためとしておきながら瞬殺できそうもない情報の少なすぎる問題文であったり、単に問題の作り込みが甘いものを出題したいからと安易に闇スープにしたり、というのは、あまりいただけません。その点、このスープは確かに闇スープである必要がある問題ですね。
ヒントでは仙人と霜ばしらさんの会話があり、ただの雰囲気づくりかと思いきや、やりとり自体が実は問題のヒントになっている、という構成もお見事です。二人のキャラクターも魅力的ですし、参加者も楽しめたのではないでしょうか。
気になる点をあげるとすれば、非現実設定に見せかける必要性がないことです。仙人とはどういう立場なのか、非現実要素が真相に関係するのか、と掘り下げなくて良いところに質問がとんでくる可能性が出てきてしまいます。雰囲気づくりのためだったのかもしれませんが、これだけ魅力的な演出ができる方なのですから、非現実な雰囲気を利用せずとも十分楽しい演出ができるはずです。

その他
・「ウミガメ仙人さうざんど!」、「霜ばしら」という名前だと、質問するときにちょっと長くて手間がかかる。そういった名前は解説で出すことにして、問題文では単に「仙人」、「弟子」とするなど、参加者にあまり負担をかけない配慮をしてみても良いかと。
・「ウミガメのスープ」を「ウミガメ」と略してしまっているが、略称を使うとそこに何らかのトリックがあるのかと考えられてしまい、「ウミガメとはウミガメのスープのことですか?」という核心には関係ない確認の質問が出やすくなってしまう。表現は正確に、誤字脱字はもちろんダメだが、略称も控えた方が良い。
・イラストが素敵。

アレンジレシピ
ウミガメのスープ愛好会会長は、このたび次の会長を選ぶべく、次期会長候補のウミコ、カメヨ、ラテミに課題を出した。
「1日1問ずつウミガメのスープをつくるのです。そうすれば1000日で課題をクリアできます」
会長がそう告げると、ウミコはすぐに答えた。
「はい、必ず1000日かけて達成してみせます!」
するとカメヨが対抗する。
「では私は毎日2問ずつつくり、500日で課題をクリアします!」
しかしラテミは、笑って言った。
「私は毎日1問ずつつくり、二人よりももっと早く達成しますよ」
そしてラテミは本当に半年ほどで課題を達成してしまった。
一体なぜ?

もとの問題のトリックは生かしつつ、本人が1000問つくることを強調してしまうと嘘の情報になってしまうため、他の登場人物にその役目を担ってもらいました。

問題文にアンフェアに感じる部分が少しでもあると、トリックが良くても全体としてはあまり納得できなかったスープと判断されてしまいかねません。
素敵な演出も盛り込んだ面白いアイディアのスープだっただけに、そこが本当にもったいない!
アイディアのユニークさや演出の巧みさを既に持ち合わせていらっしゃいますから、ぜひ問題文の細部にまでこだわってみて欲しいです!



◆◆◆




《依頼人:霜ばしらさん》
在庫整理してたら出てきたんですが…

在庫の減らない人気グッズ
https://late-late.jp/mondai/show/860

問題の鑑定をお願いしたいです。
実話問題で問題の魅せ方が気になるので、できればディダムズさんかなささん、どちらかに依頼させていただきたいなと思います。
よろしくお願いします。


《鑑定士:ディダムズさん》
在庫整理していたら出てきたというのは、鑑定団の定番ですね。
早速鑑定させていただきます。

問題文は実質一文、「在庫が減らなくなったのに人気を実感したのは何故?」というもの。
シンプルな問題文と明確な謎が実にいい仕事をしています。
解説は「対象商品が無くなったため、そのオマケが配布できなくなった (対象商品の売れ行きが凄かった)」となっています。
現実でたびたび起こる事柄であり (実話だそうですが)、納得感は文句無しでしょう。
考え方としては、「出すことのできた20個がすぐに無くなった」という逆の考え方や、「組になるものが尽きてしまった」という他の物との組合せなどが要求される、シンプルながらも奥深い問題です。
さらに、これらの考えを実際の状況に具体化する連想力も必要となるでしょう。

一方で、直截的な問題の答え (店長が人気に驚いた理由) としては「20個の減りがとても早かったから」や「グッズが出せなくなってもそれを求める人が多くいたから」等となるため、何らかの理由でそれ以上の販売 or 配布が出来ない状況 (例えば、あまりの人気に店が大混乱、販売を中止せざるを得ないなど) なら成立してしまうとも言えます。
このため、あえて言うならば、「解説の状況のみで成立するような謎」を意識するといいかもしれません。

実話問題の魅せ方が気になられるとのことですが、実話問題こそ、余計に飾らず (謎を薄めず)、この作品のようにシンプルに仕立てるのが最良と思います。
あくまで個人的な見解ですが、「その話のどこが不思議に思えたか」「その話のどこに面白い考え方を見出したか」を中心に据えて、素材の味を活かすのが良いのではないでしょうか。
ただし、面白い事例だったらどんな形でも良問になるかというとそうではないため、「何を手掛かりとして」「何を当ててもらうか」という問題の形を意識するのは必要と思います。
すなわち、ウミガメ問題としては、「どこまでの情報を問題文に記載し」「どの部分を謎として問うか」ということになるでしょう。
例えば、「なぜ、欲しがる人が多数いるにもかかわらず、在庫が減らなくなってしまったのだろうか?」など、謎の切り口 (何を問いとするか?) を変えたり、「店長はこの事態を喜ばしく思っている」 (上述のトラブル・アクシデントに対する別解潰し) など、情報を追加することも出来るかもしれません。

まさに、現実に即した考え方を求める問題。私こういった問題大好きです。
くれぐれも大切になさってください。


◆◆◆




《依頼人:アメミヤさん》
コタツを片付けようとしたら、中から出てきました…。

み〜んなコタツでまるくなる♪
https://late-late.jp/mondai/show/1105


《鑑定士:牛削りさん》
季節外れの問題ですが、猛暑の夏から極寒の冬へと思いを馳せて、鑑定させていただきます。

※アメミヤさん ⇒ 辛口批評注意
※問題未読の方 ⇒ ネタバレ注意

チャームについて
先入観について
ストーリーの複雑さについて
「ドアを開けておく」ことの一般性について
以上の観点から見ていき、最後に改善案を考えてみましょう。

チャームについて
冒頭で寒い冬であることが示され、続いてカメコがコタツに入りたがっていることが語られます。
最後に彼女に、それまでの流れと矛盾するような、ドアを開けて部屋の暖気を逃してしまうという行動をとらせています。
全体を通して気温の話で一貫しており、着目すべき点がわかりやすくてとてもいいと思います。
途中まで整合性のあった記述が最後で突如ひっくり返るという構成は、参加者の好奇心をくすぐってやみません。
チャームは抜群だと評価します。

参考
「「雑誌の付録」」http://sui-hei.net/mondai/show/5378や「パンを食べたい」http://sui-hei.net/mondai/show/18239も、一見した主人公の意図と行動とが食い違っていることがチャームとなっています。

先入観について
「コタツでまるくなっているカメオ」という記述が、参加者を誤った想像へと誘います。カメオは暖を取るためにコタツに入っているのだという、目的の取り違えです。
この誤解の根底にあるのが、「文中にコタツと出てきたら、そのコタツは電源が入っているものである」という先入観ではないでしょうか。日本人にとっては咄嗟には拭いがたい思い込みで、ここに着目したのはなかなかの嗅覚だと思います。
「コタツでまるくなる」という言い回しに、そのコタツが点いているかどうかの言及はない。しかし某童謡などでこの言い回しに慣れ親しんでいる我々は、誤解せずにはいられない。
嘘はついていない。事実を言っているだけ。誤解したのはそっちの勝手。先入観を利用したトリックのあるべき姿ですね。

参考
誠実と天の邪鬼は紙一重http://sui-hei.net/mondai/show/17367も、慣れ親しんだ言い回しに惑わされ、”参加者が勝手に”勘違いしてしまうような問題です。

ストーリーの複雑さについて
問題文にはカメオとカメコの二人が登場します。しかしこの二人が重要な関わり合いを見せるわけではないし、問題の核は、「一連の行動は地震への対策だった」という、カメコ一人でも十分成立させられる内容です。
これは僕の好みの問題かもしれませんが、シンプルにできるのであればできる限りシンプルにした方が問題の完成度が上がると思っています。カメコ一人でどうにかならなかったのか、もう一度作問過程を振り返ってみてください。

参考
ここまでシンプルにしろとは言いませんが……。⇒「大仏男」http://sui-hei.net/mondai/show/27227

「ドアを開けておく」という行動の一般性について
これは非常に微妙な問題です。
当問題では、地震への対策として、
(1)机の下などにもぐって頭を守る。
(2)ドアを開けておき逃げ道を確保する。
の2つが扱われています。
このうち(1)は防災知識として老若男女に遍く知られています。
(2)はどうでしょう。言われてみれば確かに大切なことだけれど、地震と聞いてすぐに思い浮かべられるほど有名ではない気もします。
単に僕が勉強不足なだけかもしれませんが。
とはいえこれは正しい防災知識なので、この問題を通して参加者に啓蒙できたのであれば素晴らしいことだと思います。
もしかしたらアメミヤさんは何人かの尊い命を救うことになるかもしれません。

改善案
さてこれまでの分析を踏まえ、改善案を出したいと思います。
チャーム良し、先入観良し、問題文はもう少しシンプルに、防災知識はもう少しポピュラーなものを。
……こんな問題文ができました。

──────────────────────────────────────
問題
寒い冬のこと。
コタツの中でまるくなっているカメコは、コタツに入る直前にストーブを消していた。
彼女のこの行動の目的はなんだろう?
──────────────────────────────────────

ちなみに機種にもよるとは思いますが、ある石油ストーブは、震度4以上で自動停止するそうです。
初期微動が震度3以下であったとすれば、この状況は無理なく生じるでしょう。

様々な観点から見てきましたが、僕が少しだけケチをつけたところは、ほとんど僕の好みや知識量の問題でした。
そんなわけで、誰もが満点を付けるわけではないけれど、かなり出来の良い問題と言っていいと思います。

これからもがんばってください。


◆◆◆




《依頼人:紺亭 唐靴蛙さん》
浜辺で子供たちにいじめられている田中を助けたらお礼にくれました。

「 田中さんったら田中さん 」
https://late-late.jp/mondai/show/848

なささんの寸評をお伺いできますと嬉しいです。よろしくお願いいたします。


《鑑定士:ディダムズさん》
ふむ、助けた田中に貰った問題ですか。
蓋を開ける前に発煙しないか確認した方が良さそうですね。
・・・・・
大丈夫みたいなので、問題を見ていきましょう。

 謎は「田中ではないと何度も言われているのに、相手を「田中さん」と呼ぶことをやめないのはなぜか?」
「田中さん」と呼び続ける理由を当てるという、非常に明確な謎となっています。
そもそも、問題文が実質一文でほぼ謎のみから成っているため、問題そのものが非常にシンプルな構成となっています。
分類すると、俗に奇行系と呼ばれる、一見妙な行動に理由付けをするタイプと言えるでしょう。
このような状況は中々あるものではないので、しっかりと行動の不思議さ (奇行) を演出できていると思います。

 対応する解説は、「わざと知り合いと間違えた風を装ってナンパするため」となっております。
そこから、問題文中の「相手」は特定の同一人物ではなく、不特定多数であったということが分かります。
「何度も言われている」「呼ぶことをやめない」などから、相手は同一の人物のように見せかけておきながら、実際は複数の人物であるという先入観トリックが実にいい仕事してますねぇ。
フェアな表現で上手く状況イメージを誘導できていると思います。

 気になる点としては、「このような手法のナンパが実際に効果的なのか?」というところ点でしょう。
やはり奇行系問題のキモは、奇行に思える行動にいかに合理的な (または一般的な) 理由を付けられるかだと思います。
部分的には奇行に思える行動が、全貌が明らかになれば合理的な or 一般的な行動であったというのが、良い奇行系問題だと言えるでしょう。
またこれは、現実的なアイデア系問題としても共通した要点だと言えるでしょう。
このナンパ手法の利点や、他のナンパ手法 (例えば芸能人と間違えた風を装う) と比べた時の優位点などを解説に明記しておくと、この行動の合理性を分かりやすくすることが出来るのではないでしょうか。
また、同様のアイデアは詐欺 (海外の空港で「歓迎!田中様」と書かれたプラカードを掲げるなど) などにも使えるので、水平展開を狙うのも良いかもしれません。(既に考えていらっしゃったかもしれませんが)
他に、友達のニックネームやネタとして言っている (例: 角野卓造じゃねぇよ!) というような別解も作れるので、もう少し問題文を伸ばしてクルーや制限を入れても良いかもしれません。

 インパクトのある謎から成るシンプルな問題文に、さりげなくトリックを仕込みつつ、核としてはアイデア要素の強いスープだと言えるでしょう。
チャーム、トリック、アイデアをバランスよく練り込んだ、素晴らしい逸品だと思います。
これからも大切になさってください。



◆◆◆





《依頼人:やつぎさん》
小さな古本屋で見かけて、何だかどうしても気になってつい買ってしまいました。

「ナーサリー・ライムス」
https://late-late.jp/mondai/show/206

問題寸評をいただければと思います。鑑定士の方々はご指名するのもおこがましいような方ばかりですので、お任せ致します。
どうぞよろしくお願いいたします。


《鑑定士:とかげさん》
こんにちは、鳥類だとメンフクロウが好きな爬虫類です。早速こちらのお品、鑑定させていただきますね。(-)∀(-)ゴックゴク
ふーむ、これは見た目と味が気になりますねー。

見た目(問題文)
なるほど、マザーグースの雰囲気を取り入れた独特な見た目ですね。リズムの良い文章で、思わず口ずさみたくなる問題文です。
さて、ではこのスープ、すんなり皆さんに味わってもらうことができたでしょうか? 思ったより進まない、当てて欲しいところをなかなか当ててもらえない……と手間取ったのではないかと感じます。なぜなら、この見た目では「合言葉」と「私がツグミを殺した」の間の情報が全くないからです。
もちろん、真相を当ててもらうゲームですから、情報を隠すこと自体が悪いのではありません。隠し方の問題です。重要なところは隠しつつも、推理や質問の手がかりとなるヒントを残します。そしてそれが、ヒントになるだけでなく、謎を感じる魅力にもなるのです。
このあたりが、ウミガメのスープと物語とで大きく違うところです。たとえ驚くべき真相があったとしても、問題文に手がかりとなるヒントが何もなければ、ウミガメのスープとしての面白さはかなり減ってしまいます。「男は自殺した。なぜ?」の真相が「以前遭難した際にウミガメのスープだと言われて飲まされたものと、今日レストランで食べたものとで味が違ったので、人肉を食べさせられたのだと気付いて自殺した」だったら、これは面白いスープだ! と感じるでしょうか? もしかしたらスープを始めたばかりの頃なら、それでもこの劇的な真相を面白いと思ったかもしれません。でもやつぎさんはきっと、すでにこれでは面白く感じなくなってきているはずです。
このスープの場合、「入れ替わり」に関する情報がゼロであるために、「合言葉」と「私がツグミを殺した」という要素を当ててしまうと、もはや謎が残りません。手がかりがないので質問も滞りますし、謎がないのですから不思議に感じる魅力もなくなってしまうのです。なんなら「入れ替わり」の要素抜きで、「協力者に合言葉を言って侵入成功した私がツグミを殺した」だけで正解で良いでしょう。入れ替わりを匂わす文章はありませんし、問いかけにある「何がおこったの?」に対する答えとしては十分。参加者はそれで終わりだと感じてしまいます。間に起こった出来事については、謎が残っていないのですから。
マザーグースの雰囲気を演出するというアイディアは素敵です。だからこそ、雰囲気だけに終わってしまうのはもったいないです! ぜひ、不思議と感じる、質問したくなる、解きたくなる問題文を目指してみてください。

味(トリック)
比喩のように見せかけて実は比喩ではない、というつくりはセンスが良いですね。合言葉というのもなかなか面白い着眼点です。
ただ、コマドリ、ヒバリ、ツグミという鳥の名前が、人間なのかどうか、という確認は必ず出ます。明らかに何か隠されていると感じますし、他に手がかりが少なく、質問する場所があまりないからです。騙そうとしているというほどの隠し方ではありませんし、このままでは参加者の手間を増やすだけになってしまいかねません。参加者に人間のことだと勘違いさせる、あるいは詩の一文に過ぎないことがわかるようにして聞かなくてもわかるようにする、などの工夫が必要でしょう。そう考えると、被害者をツグミと呼ぶのは少々欲張りに感じます。ツグミが人間であることを確認する手間をつくってしまうよりは、ツグミと呼んでいることは解説で明かすことにして、問題文では触れない方が親切かと思います。
また、リアリティーを考えると、マザーグースそのままのセリフでは合言葉として不適切です。無関係の人であっても、クックロビンの一節を知っていれば答えられてしまうセリフですから。むしろ、合言葉にするなら元ネタとは違うセリフにするべきでしょうね。
一方で、マザーグースは有名とはいえ、その詩の内容までは周知の事実とは言いづらいです。知識の有無に限らず納得できるように、知らなくても解けるトリックが理想です。たとえば、「誰がコマドリ殺したの?」を地の文ではなく会話文にすることで、その文を知らなくてもただのセリフである可能性を感じられるようにする、などができるかと思います。
入れ替わりについては、そこまで当てなくとも真相は大体把握できますし、解説でのお楽しみにしてしまってもよいかと感じます。もし入れたいのであれば、先述の通り、問題文に何らかの情報を出す必要がありますね。

アレンジレシピ
「誰がコマドリ殺したの?」
見知らぬ女が聞きました。
「ハト」と私が言いました。
それをこっそり見ていた少女、「違うわ、ヒバリよ」と笑います。
だから私、少女も殺すことにしましたとさ。
いったいなぜ?

問題文のリズムの良さを残しつつ、また合言葉というアイディアを生かしたかったので、「合言葉を言い合うところを見られてしまい、少女を口封じのために殺した」という真相に変えてみました。難易度は下がりますが、ダークな雰囲気と無理のない真相になっているかと思います。
入れ替わり要素を含めるとしても中途半端な複雑さになってしまうと思うので、入れるならもっともっと物語をつくりこんで、そこまで当てさせる必要性を感じるものにした方が自分好みです。

解説もこだわってお書きになっているようですし、リズミカルな文章と独特な雰囲気が感じられます。ぜひそのこだわりは大切にしながら、謎を感じ、参加者が手間と思わずに質問したくなる問題文に挑戦してみて欲しいと思います。


[18年08月14日 08:29]
[4132]
オリオン[☆シンディ]

[編集済] 質問番号16~20鑑定結果一覧



《依頼人:やつぎさん》
せっかくなので、質問寸評もお願いいたします。
とある司会者さんが一撃スナイプしたらしく、名誉の銃弾が食い込んだままになっているのですが……

「スカボロー・フェアへ行くのですか?」
https://late-late.jp/mondai/show/500

質問寸評、どんな形になるのか楽しみです。よろしくお願いいたします。


《鑑定士:オリオン》
質問寸評のご依頼ありがとうございます。
とりあえずかぐや姫の質問をしたのは『男性相手に無理難題を並べる女性』といえばかぐや姫だ、とピンと来たからです。無理難題を『並べた』と書いてあるので、一つだけではなく複数の要求を突きつけたのだと分かりますし、『悲しみの涙に濡れた』という表現が普通の出来事について述べる表現としては妙に堅く、文章的であることもヒントになりました。
ただこの回答だけでは鑑定としてちょっと味気ないので『質問力の向上に繋がるように質問に関するアドバイス・分析をする』というコンセプトを生かすべく「もしもかぐや姫が元ネタであるということに気づかなかったら」というていで、
「この問題文の場合は文章のどこが重要そうに見えるか(どこを突いたら良い情報が出てきそうか・正解に繋がりそうに見えるか)」
「どこを解き明かす必要があるように見えるか」
を、いくつかの質問例と一緒にお話ししていきますね。少しでも質問仕方、あるいは出題者さん側の誘導等の参考になれば幸いです。

問題文全体から受ける印象
(かぐや姫が元ネタだと見抜けなかった場合)解くのが大変そうだという印象を受ける問題文です。
というのも、この問題は、解説・元ネタを踏まえて書き直すと下記のようになります。

『かぐや姫に求婚しに来た男達』が『姫に結婚して欲しいという無理』を言ったため、『かぐや姫』も『蓬莱の玉の枝を取ってこいなどなど様々な無理難題』を並べた。
結局、(かぐや姫が月に帰ってしまったので)皆が悲しみの涙に濡れたという。

ですが実際に出題された問題文ですと、元ネタを隠すために『』の部分が全部隠されて『男』『無理』『女』『無理難題』というシンプルなワードに置き換えられているため、『中身がよく分からないあやふやなワード=質問によってはっきりさせる必要がありそうなクルー』がたくさんあるように見えるのです。
しかも、それぞれのワードを掘り下げるための“ヒント・きっかけになりそうなワード”もそんなにありません(例えばただ『男』としか書いてないと可能性は無限だが、“白い服を着た男”と書くと→白い服であることは重要?→他の色だと成立しにくい?→新郎?医者? といったように推理の材料になる)。
この問題は、元ネタがかぐや姫だと分からなければ解けない問題です。かぐや姫のお話は日本人ならばほとんどの人が知っているので知識的な問題はほぼないと言えますが、かぐや姫が元ネタであると気付けるかどうかはあくまでも参加者さんの閃き次第になってくるため注意が必要でしょう。女の正体がかぐや姫であるといかにスムーズに見破ることができるかどうかでガラリと難易度が変わるため、進行が長引いたり、参加者さんが閃かずに苦戦しているようなら、積極的にヒントを出したり、回答時に手助けになるように補足を書き足すなど、気遣いのある誘導が必要になってくるでしょう。

した方が良い質問
《①男と女に関する質問(男と女の関係は重要ですか? 恋愛関係ですか? 職業が重要なキャラはいますか? もっと具体的に、女は●●ですか?とかも有り)》
《②男と女の他に重要キャラはいますか?》
《③男の無理に関する質問》
《④女の無理難題に関する質問》
《⑤死人は出ますか?》

上の方の質問から、質問の優先順位が高いと思われる順になっています。
①③④は問題文に沿った質問です。この問題は(何故皆が悲しんで涙を流したのかという謎は一文目の謎が解ければ自然に解ける作りに見えるため)問題文の二文目よりも一文目の方が断然重要度は上です。ですので一文目に特に狙いを定めて、まずは中心人物らしい男と女についての掘り下げ、無理・無理難題がどんなものだったのかの解き明かしを目指すのがいいでしょう。ただし、無理・無茶の具体的な内容を当てるのはかなり難しそうなので、何故無理を言ったのか、何故無理難題を言ったのか、などの背景に視野を広げてみるのも良いですね。
②⑤はいわゆる基礎質問ですね。②の登場キャラ・重要キャラの確認質問はほとんどの問題で腐ることがないので、個人的には「質問に困ったらとりあえずこれ聞いておくといいよ!」っていう超オススメ質問です。「登場人物・重要人物」という言い方で質問してしまうと、動物とか妖怪とか人外のキャラがいた場合欲しい情報が得られなかったりするので個人的には「キャラ」という聞き方がオススメではありますが、この言い方も万能ではないので、「重要人物」「重要キャラ」「他に登場する生物はいますか?」「非生物のキャラはいますか?」辺りを適宜使い分けるように心がけられると理想的ですね。
⑤の方は実際の問題ページでも質問してる質問者さんもいましたが、皆が泣くような出来事として「誰かが死んだのだろうか」という連想からのチョイスになっております。死人が出る問題も結構出題率は高いので、こちらも比較的オススメの基礎質問です。


◆◆◆



《依頼人:コウCHAさん》
真夜中なのにちょっと寝苦しいなーと思って起きたら、
ベッドの横にこんな巻物があったんです。

「ゆうれいのこうげき!(o゚Д゚)=◯)´3`)∵」
https://late-late.jp/mondai/show/588

少し厳しめの批評もOKです。
よろろしくおお願いしまますす(gkbr


《鑑定士:甘木さん》
ほうほう、なんとも曰くつきっぽい代物……!
霊現象かと思わせて医学的な理由……と思わせてさらにどんでん返しとして……!という二重のベールをかけられた面白い問題ですね!さりげない問題文の「チェックして」という部分がフェアな感じでナイスです!
気になる点は、二つの事象を問題進行で成立させるためにやや要点がぶれてしまっているところでしょうか。
問題文を読む限りでは医学的理由のみの解説で十分に完成度の高い問題として完成しているため、EXTRA STAGEの伏線を意識しての進行で回答のノイズが生まれてしまっている印象です。(質問1の内容変更など)また、問題文の「寝室の中で軋む音が聴こえる気がした」という部分の詳細は実のところ(医学的理由をFAとした場合は)本当に気のせいだったのか、はたまた実際に幽霊の存在を示しているのかという部分が少しわかりづらくなっているかもしれませんね。
全体的には最初の医学的要素で文句なしに成立している問題ですので、案外解説のみでちらっと幽霊の存在をにおわす感じでも良かったかも……!?



◆◆◆




《依頼人:ホルスさん(オリオン)》
某司会者がいきなり握手をしながら渡してきたんです。
手を繋ぐ
https://late-late.jp/mondai/show/131
「厳しめの意見が欲しいので、是非牛削りさんにお願いしたい」とのことです。


《鑑定士:牛削りさん》
ご指名いただきありがとうございます。
期待に沿えるよう、全力で辛口批評をさせていただきますね。

※オリオンさん ⇒ 辛口批評注意
※問題未読の方 ⇒ ネタバレ注意

叙述トリックについて
叙述トリック抜きの構成について
致命的な別解について
共感できるかどうかについて

以上の観点で分析し、最後に改善案を示したいと思います。

叙述トリックについて
「手を握る」という表現に登場する「手」が、実は切り落とされた身体の一部であった、という叙述トリックですね。
普通「手を握る」といえば、その手はその持ち主の胴体につながっている状況以外を想像しません。
ところが「手を握る」という表現には、その手がどういう状態であるかという含意がないので、切り落とされていないことを前提とするのは読み手の勝手な誤解、というわけです。
これは非常に強引でありながら、誰も文句を言うことのできない強力なトリックですね。
タイトルで、「手を繋ぐ」という、切り落とされた手では成立しえない表現を使って思考を縛ってしまっているのも効果的だと思います。

ただラテシン界隈では、「身体の一部を表すワードが出てきたら、その身体部位は胴体から分離しているものと思え」という定石があるため、他のコミュニティで出題するよりは解かれやすかったかもしれません。
実際僕も初見で、「ああこの手は地面に落ちてるやつだな」と疑ってかかってしまいました。
まあこれはこのいかれたコミュニティならではの特殊事情なので、気にする必要はありません。

トリックはとても良いと思います。

参考
「パラノイアパーム」http://sui-hei.net/mondai/show/7174 などにもあるように、このような惨事はラテシン界隈では珍しい話ではありませんね。

叙述トリック抜きの構成について
この問題は、叙述トリック抜きの構成にも優れていると思います。

どういうことか説明します。
僕が叙述トリックについて前々から主張していることのひとつに、「叙述トリックを抜いたとしても問題として成立する構成であるべきである」というのがあります。
これはつまりこういうことです。
叙述トリックというのは、書き手はしれっと書いているのです。書いてあることの中に嘘はなく、書き手はただ真実をそのまま述べただけなのです。少なくとも表向きは。誤解したのは読者の勝手。
今回の場合、「え、切り落とされているって言ってなかったっけ? ごめんごめん。でも勝手に誤解したそっちも悪いでしょ」的な態度を、オリオンさんは取らなければなりません。それが出題者としての理想の態度です。
逆にそういう態度を取ることができないような、あからさまに騙そうとしている表現は、叙述トリックとして成熟していないと言っていいと思います。あくまで叙述トリックは、”しれっと”なんです。この感じ、伝わるでしょうか?

さてこの感じを理解していただいたなら、以下のことも了解いただけるはずです。
つまり、叙述トリックだけしか使われていない問題は、出題動機が(表向きには)欠如している、ということです。
ウミガメのスープを自分で作って出題する際には、巧拙の差はあれ、必ず、「あ、いいこと思いついた/面白い体験した」というような動機があるはずです。
ウミガメのスープはその動機となった思い付きや体験に基づいて作られるわけです。
ところで叙述トリックを使う場合、前述したように、出題者は「そんなトリック使ってませんよ。私はただ事実をありのままに書いただけです」という態度を取らねばなりません。
本当は、叙述トリックを使いたいという気持ちそれ自体が出題動機になっているはずですが、出題者としての表向きの態度を貫く限り、叙述トリックを使うことは出題動機にはなりえません。
つまり叙述トリックのみの問題は、表向きには、「ただ事実を述べただけ」の文章でしかなく、「何故ただの事実を出題したのかよくわからない」構成となってしまうわけです。

今回のオリオンさんの問題の場合、「手を握る」の叙述トリックを取り払ってしまっても、問題として成立します。

 血まみれの山小屋の床に落ちていた恋人カメタの切り落とされた手に、カメミが触れてみたのは何故だろう?
 逃げ出したカメタがまだ近くにいるかどうか、体温の残り具合で確かめるため。

ほらね。
こういうことができない場合、その問題は再考の余地ありと思ってください。
当問題は、当然ながら問題なくクリアです。

参考
「僕は誰?」http://sui-hei.net/mondai/show/20695 は、叙述トリックを抜いたら問う事柄がなくなってしまったので、苦し紛れに和文英訳問題のていにした問題です。
この問題の場合、表向きの出題動機は、「みんなが英語をちゃんと知っているかテストしてみよう」程度です。弱いですね。

致命的な別解について
実はこの問題、致命的な別解があるということに気付いていましたか?
カメミがカメタの手を握ったのは、その手の体温の下がり方から、惨劇からの経過時間を推測するためです。
上記が見抜ければ、カメタの手が本体から切り落とされているというのは特定する必要のない些事となってしまいます。
叙述トリックに引っかかったままでも、正解に至れてしまうのです。

叙述トリックに引っかかったまま正解に至るというのは、つまり、下記のような状況を想定してスナイプした場合ですね。

 ○カメミの目の前にカメタの他殺体(欠損無し)がある。カメミは犯人がまだ近くにいるかどうか推理するため、死んでいるカメタの手を握って体温を調べる。

もしその他の状況が特定されない内にこの内容で質問されたら、不正解だと退ける理由がないですね。

共感できるかどうかについて
この問題は、トリックはよくできているのですが納得感に欠ける部分があると思います。
解説を読めば、カメタは一般人のようです。つまり一般人である読者が自分をそのまま重ねてしまっていいわけです。
ところが、カメタは狂気の恋人から逃げるために自らの手首を切り落とすなんてことをしてしまっています。
この行為にはとうてい共感できません。僕はどんな窮地に追い込まれても、自ら身体の一部を切り落とすなんて真似はできません。自殺の方がまだ理解できます。
多くの人は僕の見解の方に共感してくれるのではないでしょうか?

ではどうしたら共感できるようになるのか。カメタの属性を変えてしまえばいいのです。
一般人ではなく、例えばスパイとか。
映画などでスパイは、使命感が人並み外れて強く、過酷な訓練を受けており、使命を全うするためにはどんな常識外れの自己犠牲も厭わない人物として描かれます。
カメタがスパイであり、このままでは自国に多大な損害を与えてしまう、という状況であれば、脱出するために自らの手首を切り落とすという行動にも納得できます。

ただその場合、問題文で「手を握る」という表現と親和性の高かった「恋人」という関係性が使いづらくなるというデメリットがあります。
オリオンさんは作問過程で、もしかしたらこのあたりまで悩みに悩んで、最終的に納得感よりチャームの方を選んだのかもしれません。難しいところです。

ここまでをまとめると、
叙述トリック良し
しかし叙述トリックの良さが発揮されない危険性あり
登場人物の行為に共感できない
となりますね。

これらを踏まえて改善案を示すと、下記のような形になります。

──────────────────────────────────────────
問題
カメタの手を握ってその温かさを感じたカメミは、彼が数分前に窓ガラスに触ったことを言い当てた。
彼女はいったいどのような推理をしたのだろう?

答え
敵国のスパイであるカメタを捕まえたという部下の報告を受けたカメミ。
さっそく問題の山小屋へ行ってみると、辺りは血まみれでカメタの姿はなく、見張りの部下は殴り倒されていた。窓ガラスは無残に割られている。
血だまりの中に落ちていたのはカメタの左手。手錠の拘束を解くために、自らの手首を切り落としたのだろう。
カメミはその手を拾い上げた。握ってみると柔らかく、体温はまだ残っている。切り落とされてから10分以内というところだろう。
カメタが窓を割って逃げてから10分と経っていないはずである。カメミはそう判断し、部下に捜索を指示した。
──────────────────────────────────────────

お、なんかいいかも。
「窓ガラスに触ると体温に変化があるのか?」と思わせておいて、実はその手は窓ガラスと関係がなく、窓ガラスに触れたのは逆の手だった、というのが面白いです。

ともあれ少しの難点はあるものの、よく考えられた問題だと思いました。
これからも妥協せず良い問題を作っていってください。


◆◆◆



《依頼人:御種さん》
駅前でおばあさんからもらったものなんですが...
食レポの流儀
https://late-late.jp/mondai/show/138
問題寸評をいただけますでしょうか。
よろしくお願いいたします!


《鑑定士:ディダムズさん》
駅前でいただいたものとのことですが、作品との出会いはそのような偶発的なものなのかもしれませんね。
そんな出会いを大切に、依頼品、鑑定させていただきます。

やはり問題の印象として大事なのは問題文、その中でも謎ですが、本作の謎は「『美味しかった』とはっきりと言わなかったのはなぜか?」とされています。
付加された状況としては「ラーメンに満足」「スープまで飲みほした」となっており、「十分満足したのに、何故『美味しかった』とはっきり言わないのか?」との不思議さを生み出していると言えるでしょう。
それを受ける本作の解答は「ニンニクによる口臭が広がるのを避けるため」となっています。
口臭が気になるほどニンニクを利かせたラーメンはたびたび見られるものであり、現実的に見ても解説の状況は自然なものだと思います。
また、この解説を踏まえて改めて問題文を見ると、「スープまで飲みほした」との記述は、満足感を演出するためだけではなく、多量のニンニクを摂取したことを含ませるものとなっていることが分かります。
1つの記述が、問題文の描写をより具体的にする、謎を際立たせる、解説の状況がより自然となるように補足するなど、複数の役割を担っており、実にいい仕事しています。
解答に至る考え方としては、「何かはっきりと言えない理由がある」ということから、「はっきりと言った場合の不都合」に注目することになるかと思います。
そこから、ラーメンを食べたという状況を踏まえて「口臭」に至るものと思いますが、「臭い」を重要な観点とした問題は、見えないものへの想像力を求められるようで面白いですね。
総合的に見て、身近に感じられる納得の話を軸にした、状況補完とアイデア勝負のシンプルな作品と言えるのではないでしょうか。

改善点を挙げるとすれば、別解潰し、本解説の優位性確保でしょうか。
進行で出ているような「食べ過ぎで苦しくなった、気分が悪くなった」や、自分も料理人だった、友達と美味しい店の紹介勝負をしていたなどで「美味しいと認めたくなかった」、また、周囲が否定的だったので「美味しいと公言するのに気が引けた」など、色々な別解が作れてしまいます。
上述の「スープまで飲みほした」というクルーはあれど、これらでも別解として自然に成り立ってしまうため、本解説に十分な優位性 (= 状況の一般性だったり、考え方のシンプルさだったり、問題文との対応だったりなど) があるとは言い難いものかと思います。
別解の存在の是非は意見が分かれるところではありますが、「この解説こそが最もこの問題文の解説として相応しい」というような『謎(問題文)-解説』のセットが作れると、より良い問題になることでしょう。

日常的なシーンをシンプルに問題へと仕立てた作品です。
これからも大切になさってください。


◆◆◆



《依頼人:アルバートさん》
買った本の中に紛れました。

『名前はもうある』https://late-late.jp/mondai/show/973

鑑定士は知らない方ばかりなのでどなたでも構いません。よろしくお願いします。


《鑑定士:オリオン》
こんにちは〜。大変お待たせいたしました。
こちら、私自身参加させていただいた問題ですね。解いていた時の感触も踏まえつつ、鑑定を進めて行きたいと思います。

かなりシンプルな問題文ですね。こういったシンプルな問題文は、『別解の多さ』、『クルー不足等で進行が行き詰まる恐れ』の二点と切り離せないと考えておりますので、その二点について触れさせていただきます。
『別解の多さ』については人によって好みが分かれる部分かとは思うのですが、例えば(今はもう文面が変わってしまっていますが)ラテシンのルール説明のページの出題前チェック項目という欄には『別解答が容易に想像できないか』という一文があったはずです。あまりにたくさんの解答が思い浮かぶ問題文は本当の答えがどれなのか参加者に混乱をもたらす恐れがあるので注意が必要だとか、別の解答がたくさん思い浮かんでしまうと問題文の不思議さ=魅力が損なわれる恐れがあるとか、そういった部分に対する懸念ゆえの注意書きであると思われますが、逆に答えらしき物・方向性がまったく想像つかない問題ですと敷居が高く感じてしまうことなんかもありますし、
私個人としては、
『致命的な別解(問題文が普通に起こり得る自体について述べているように見えるので不思議な状況に見えず、何を解くべきなのか分からないとか)を潰してさえいれば、別解がある事にこだわりすぎる事はない』
という意見でいます。完璧に別解がない問題ってほぼありえないとも思いますし。

さて、そこを踏まえて鑑定品を見てみますと、「俺はジョンだ!」という台詞はなんの変哲も無さそうな自己紹介に見えるのにトニーが怒っているというのは(初対面じゃない相手が自己紹介をして来たので忘れられていると思ったとか、思い浮かぶ別解はありますが)不思議な状況に見えるというラインはクリアできていますし、何より、シンプルな問題文でシンプルなトリックを当ててもらう勝負をしたいというのが出題者さんの意図としてあると感じたので、ここは出題者さんのお好み優先で問題文を決めてしまっていい箇所だと思います。『普通に解く分には』このままの問題文で大丈夫だと思います。
また、「ジョンとトニーの関係」がこの問題を解く上での鍵ですが、二人に関する質問には「ミスリード注意」を付けて出題者さんが慎重な誘導をしているように見受けられましたし、問題文には二人分の名前が既に明記されており(隠された登場キャラがいない。せいぜい出版社の人間くらい?)それに加えて問題文がシンプルなので、ジョンとトニーに関する質問をする流れに、自然と質問者の目が向きやすそうな構成になっているのは強みです。二人の関係が明らかになると『何故トニーはジョンの台詞を読んで怒ったのか?』という真の問いかけがようやく現れるわけですが、これに関しても、

「俺はジョンだ!」というのは作品の台詞であると判明→重要なのは「俺」部分→俺ではなく私と言っていたなら怒らなかったかもしれない

という流れで連想して求められる範囲の答えになっており、とてもよくまとまっています。
しかし気になる点もあります。慎重な誘導もあって『ジョンは何かの作品のキャラでトニーはそのファン』という部分に辿り着くのはそこまで難しくないと思うのですが、そこから、
『元々は英語版だった作品が、キャラのイメージとは合わない一人称で翻訳されてしまった』
という答えに至れるかどうかは、個人差が出そうな部分であると感じました。ジョンの台詞は短いので、台詞の中で重要なのは『俺』という部分なのだと気がつくことは容易いと思うのですが、そこから『英語版の翻訳』という発想に飛べるかどうかという問題です。キャラのネーミングがヒントになっているのは分かるのですがそこに気づかない人もいるかもしれませんし、ましてや闇スープ、自分の発想だけが頼りの個人戦です。先程『普通に解く分には』このままの文で大丈夫という言い方をしたのは、この辺りが理由です。(進行上の受け答えによるフォローももちろんあるかとは思うのですが、それでも)闇にするのでしたらもう少しはっきりとしたクルーがあるですとか、問題文を少し変えてみたりですとか、一人でも解ける工夫がもう一歩あると尚良かったと思います。

余談というか一例で。
もしも私が同じ問題を闇で出すとしたら、問題文は、

「この国の次期国王は俺だ!」
とジョンが言ったので、トニーは「絶対僕が選ばれると思ってたのに!」と怒った。
トニーは別に王族でも何でもない普通の少年なのだが、一体どういう状況?

みたいにして、
ジョンとトニーの関係が作中作であると判明→『トニーの台詞の意味は、ジョンの一人称が僕だと思っていたという意味では?』
という風に、最初のカラクリが判明すると自ずと解くべき部分が明るみに出るような仕掛けにしてみたいです。
[18年08月14日 08:29]
[4131]
オリオン[☆シンディ]

[編集済] 質問番号21〜25鑑定結果一覧


《依頼人:OUTISさん》
うちの人形がもう一つ持ってきてネ・・・
・・・これは嘘では無いヨ?
嘘つきカメオ
https://late-late.jp/mondai/show/764
同じく問題寸評をGoto_Labelさんに依頼したいネ


《鑑定士:GoTo_labelさん》
OUTISさん、引き続いてのご指名ありがとうございます。

それでは鑑定させていただきます。ほうほう、なるほど、これはよい(手袋をはめた手でいじくりまわしながら)

さて、本問はきちんと考えられている問題ですね。

生まれてからしゃべることがなかったので、発音に難がある。そのため一部の子音が脱落してしまい、「たかい」→「あかい」になった、という核がまずあります。
これを問題にするにあたり、「嘘」の要素を取り入れ、「これまでは嘘がつけなかったけど、(嘘に見える)あかいと言ったのはなぜ」という問いかけにしています。
「しゃべれない」ことを「嘘をつけない」と言い換えているわけですね。

ちゃんと工夫が入っている問題といえます。

一読して気になったのは「今まで嘘をついたことがない」は、筆談でも嘘を言ったことがないのか?という点。
しかし調べたところ、「つく(吐く)」は「口から出す」という意味があります。汚い話で恐縮ですが、「ヘドをつく」と同じ語意なわけですね。だから筆談で嘘を言っても「嘘をついた」ことにはならない、と言って言えなくはない。
欲を言えば「嘘を口にしたことがない」など、別の明確な表現を探りたいところですが、それでもここはOKであるとしていいでしょう。

逆に良い点は、「高いビル」を「あかいビル」ではなく、「あかい家」としているところ。発音が「たかい」と言えないほど不明瞭なら、「ビル」では不自然。ちゃんと「いえ」と発音しやすい言葉に言い換えています。このように細かく神経を使うのが、まさに料理人の腕の見せ所です。

また、「赤い」と表記するか、「あかい」と表記するか。これは迷うところです。
「赤い」と書くのは、若干の違和感があります。「赤い」と書くと、発音以上の意味があるように、つまりカメオがREDを意図したようにも見えるのです(これは異なる意見もあるでしょうが)。
私見では「赤い」でもアンフェアとまでは行かない気がしますが、でも間違いなく「あかい」のほうがフェアです。
そうは言っても、「あかい」表記は隠したいところに光を当てているので、採用するには躊躇します。最終的に「あかい」を採用された決断は賞賛したいと思います。

全体的に、ちゃんと考えるべきところを考えたであろうことがうかがえて好感が持てます。
今後もいろいろ工夫して、自分の問題を可愛がってあげてください。

さて、では、もっとよくならないかと考えることにします。

二つほど方向性を出してみましょう。

一つ目。
ウミガメ問題のメジャーな方向性の一つとして、問題文が意外で不可解なほどよい、ということが挙げられます。

この問題の場合、「嘘をつかなかった人があかいと言ったのはなぜ」を、「嘘をつけなかった人が、嘘をついてはいけない状況なのにあかいと言ったのはなぜ」としてみます。
すると謎が強調される効果があります。
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生まれてから一度も嘘をつくことがなかったカメオ。
ある日全面青く塗られたビルから怪しげな男が出てくるのを見た。
その周辺で事件が起きたらしく、後日そのことを警察から聞かれたとき、怪しげな男が入っていったのは「あかい家」だとカメオは証言した。
いったい、なぜだろうか?
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解説は変更する必要がありますが、一例としてご覧ください。

二つ目。
謎の意外性ではなく、別のもので味付けをします。
一応私が物語派出題者ということで、物語的に味付けをすることを検討してみましょう。
そこで、せっかくなので、解説に出てきた女の子に登場してもらいましょう。解説にしか出てこないのはもったいないですからね。
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生まれてから一度も嘘をつくことがなかったカメオ。
友人たちと一緒にいたとき、その中の一人の女の子に「カメオ君はどこに住んでるの?」と聞かれた。
青く塗装された高層マンションに住んでいるカメオは、汗をかきながら「あかい家」と答えた。
いったい、なぜだろうか?
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物語的な味付けの一つの表れは、全体像が見えたとき、そのシーンに新たな意味づけが与えられることです。普通のウミガメでもそれは同じですが、その意味づけが論理的なものではなく、心情的なものであること特徴です。
上の例ではあまりうまくいっているとは言えませんが、これまた一例としてご覧ください。

改修案としてはこんなところです。

あとはほぼ雑談ですが、改修案があまりうまくないことに関して、ちょっと言い訳。
不明瞭な発音による子音の脱落は、もちろん「たかい」「あかい」に限定されません。
私も結構ほかの文例を考えたのですが(実はこれを1週間考えていた)、いいのが思いつきませんでした。
というのは、なにか重要な意味のあることを言わせようとすると、たとえば「好き」と言おうとして「浮き」などだと、元々何を言おうとしているかが容易に類推できてしまうのです。
「たかい」「あかい」の意味はニュートラルですが、そのことが類推を難しくする点で優れていることに気づかされました。

もう少しマシな改修案は、今後の宿題とさせてください。

それでは、鑑定を終わります。ありがとうございました。

今後もがんばってください!


◆◆◆



《依頼人:ぎんがけいさん》
私のとびっきりの自信作です。

「得点が認められず」
https://late-late.jp/mondai/show/355

問題への寸評をお願いします。
最近どうしても、自分の納得するスープを作れていません。
この鑑定を機に自分の調理技術が向上したらと思います。


《鑑定士:とかげさん》
こんにちは、根拠のない自信に自信がある爬虫類です。ではこちらのお品、鑑定させていただきますね(-)∀(-)バリボリ
ふむふむ、この材料と見た目は要チェックですねー。

材料(題材)
サッカーの試合での審判結果から起きた不思議な出来事という、実話が材料になっているのですね。

これについては、実話をもとにしているという点と、要知識である点についてお話しします。

まず、実話をもとにしているという点について。
実話は、実話だからこそ成り立つのです。実話にリアリティーを考える必要はありません。どんなに現実味がなかろうと、そもそもリアルなのですから。むしろあり得ないような話の方が好まれるくらいです。また、題材を吟味する必要もありません。サッカーの試合で実際に起こったことなのですから、サッカーを野球に変えた方がよいだろうかなどと悩むことはないのです。
しかし、創作の場合はそうはいきません。「身体を動かせないはずなのに、いきなりブーイングのジェスチャーができるなんてリアリティーがない」とか「オフサイドである必要性がない、もっとわかりやすいシチュエーションでいいだろう」とか言われてしまうわけです。必要に応じて、リアリティーのある内容に変えたり、みんなが興味を持ちやすい題材にしたりしなくてはいけない。
実話を材料にしてスープをつくるのは構わないのです。しかし、実話をそのままスープにできるとは考えない方が良いでしょう。より納得感を得られるように、内容を吟味し、必要に応じてアレンジするという手間を惜しんでは、せっかく面白い材料であっても、スープの美味しさが引き出せません。
それを、「実話なので変更しない、実際に起こったことを当ててください」と言うのであれば、それはウミガメのスープではなく、テレビでやっているようなただのクイズです。複雑なだけの単なる物当てになり、参加者の手間が無駄に増えることになってしまいかねません。
もちろん、「サッカーが好きだからサッカーを材料にしたいんだ」というのもアリです。「そのくらいびっくりすることが起こったということを重視するから、ジェスチャーを変更したくない」というのでもOK。ただそこに、「実話をそのまま使うことに甘えず、ちゃんと吟味したか?」という自問自答が欲しいのです。

続いて、要知識である点について。
このスープは、「ゴールを決めたのにオフサイドをとられてしまって、得点を取り消されるという、日本代表を応援する側からすれば『はあーっ!? ふざけんな!』と怒りの声があがるに違いない状況」を取り上げています。
……が、これを理解するためには「オフサイド」が何なのかを知らないといけません。詳しくない人なら、なぜ得点を取り消されたのかわからないかもしれませんし、そもそも日本代表側のサポーターなら怒るだろうという発想も浮かばない可能性があります。だって、なんのことだかわからないんだから。(ちなみに、自分もよく知らなかったのでGoogle先生に教えて頂きました)
サッカーが題材になっているだけでなく、更にオフサイドというサッカー用語が出てきてしまっているので、知識がない人からしてみれば、この問題の状況が把握できないのです。そして、この真相にもきっとサッカーの知識が必要なのだろうと感じてしまうでしょう。これは見た目(問題文)の問題でもあるため、後程改めて触れますが、要知識なものを材料にしてしまうと知らない参加者に避けられてしまう原因になります。

同じ味付け(トリック)でも、材料が違えば全く別のスープにもなるのです。
ぜひ、材料からこだわるスープ職人を目指して欲しいと思います。

見た目(問題文)
見た目に関しては、まず要知識である点について先に話してしまいましょう。
要知識だと何がまずいか。
まず、問題文によく知らない言葉が使われていたらどう感じるでしょうか。わざわざ調べてでもこのスープの真相が知りたい、と思えればいいのですが、このスープの場合、オフサイドの意味がわかっていないと何が不思議なのかもわからないということになりかねず、そういう人が調べてでも解きたいと思う可能性は低そうです。また、前述の通り、問題文に要知識な言葉があると、真相もそのような知識が必要な問題なのだろうと考えられてしまう可能性があります。
つまり、第一印象で参加したくなくなる人が出てきてしまうのです。
どんなに真相が面白くても、スープを味わう人がいなければ悲しいですよね。スープは食べてくれる参加者あってこそのもの、参加しやすくするためにも、できる限り要知識な言葉は問題文からなくす方が良いでしょう。別の言葉で言い換えてわかりやすくする、同じトリックが使える別の材料に変えてしまうなど、アレンジもそう難しくはありません。もしかしてこの言葉は要知識かも、と思ったら、誰かにテストプレイを頼んだり、チャットなどで相談したりするのも良いかと思います。

さて、では次からが本題です。
この問題文、実はあまり謎を感じない見た目になってしまっていることにはお気づきでしょうか?
このスープの真相の核となるのは、「日本代表が不利になる誤審に感謝するのはなぜ?」という疑問ですよね。
しかしアケミの設定は、テレビでサッカーの試合を見ていたということだけなので、日本代表ではなく相手チームを応援していたから、という当たり前の別解がすぐに浮かんでしまうのです。
あるいは、審判がそもそも正しい審判をしただけなのではないか、というのもあります。この場合、感謝の意味は考えなければいけませんが、「怒るはずなのに感謝」ではなく、ただ「残念だけど当然のことに対して感謝」という捉え方になってしまうので、ぎんがけいさんが想定しているようなギャップは生まれません。
このような、パッと見て思い付く別解の可能性がきちんと潰されていない問題文だと、そもそも謎を感じてもらえない可能性があるのです。
「男はウミガメのスープを飲んだから死んだ。なぜ?」だと、「スープに毒が入ってたんでしょ」という当然の別解がすぐ思い浮かびますよね。そう思った人にとって、この問題文は不思議でもなんでもないのです。しかし、「男はウミガメのスープを飲んだから自殺した。なぜ?」と死因が明かされると、毒で死んだ可能性が否定されます。なぜスープを飲むことが自殺に繋がるのか、という謎が生まれます。
情報を隠さず、さらしてしまう方が、かえって謎が深まる……ウミガメのスープの面白いところだと思いませんか?
つまり、このスープは情報を隠したことで、逆に謎を感じない見た目になってしまっているのです。アケミが日本チームを応援していることや、オフサイドが誤審であったことなどを書いてしまった方が、別解の可能性を潰し、その上謎も深まるのではないでしょうか。
真相を知っている作り手が、謎を感じるかどうかを判断するのは難しくもあります。スープができたとき、すぐに出題するのではなく、ちょっと深呼吸して見直しができると、それだけでも随分変わると思います。せっかくのスープ、見た目にもこだわらないと、もったいないですよ!

アレンジレシピ
テレビでサッカー日本代表戦を見ていたアケミと息子のマコト。
日本は見事ゴールを決めたのに、審判が反則をとって得点を取り消してしまった。しかし、どう考えても誤審だとしか思えない。
アケミとマコトが、テレビに向かってブーイングしてから喜んで抱き合ったのは、なぜ?
→要知識の印象を与えないように言葉を選んだので、サッカーをよく知らない人でも状況が把握できるはずです。また、元の問題文では隠されていた、息子の存在、誤審であること、ブーイングのジェスチャーもすべて明かしました。だからこそ、なぜブーイングしているのに喜ぶのか、謎が深まる構成になっていると思います。

磨けば光るスープを、磨かずに出してしまうのはとてももったいないです。
一つ一つのスープを、もったいない精神でぜひ大切になさってくださいね。



◆◆◆




《依頼人:ぎんがけいさん》
もう一つ最近作ったスープから1つ持ってきました。

「消えた157」
https://late-late.jp/mondai/show/1067
問題への寸評をお願いします。

ラテシンを初めて2か月になりました。
最初の自信作から上達してるのでしょうか。
ぜひ、観ていただきたいです。

《鑑定士:牛削りさん》
はじめまして。激辛鑑定士の牛削りです。
すみません、最初に投稿した鑑定文の出来がよくなかったので再投稿させてください。

※ぎんがけいさん ⇒ 辛口批評注意
※問題未読の方 ⇒ ネタバレ注意

謎がないことについて
正解条件がおかしいことについて
答えの正当性の根拠とは
問題を作るというのはどういうことか

以上の観点で分析しつつ、ウミガメのスープの根本をおさらいしましょう。

謎がないことについて
この問題には謎がありません。
問題文を要約すると、「第156回の大会からちょうど1年後の同じ大会が第158回だったのは何故?」となります。
間の157回はどこへ行ったのか、ということですね。
問いかけを見た瞬間に、誰でも次の①や②の可能性を思い浮かべるでしょう。

①年に2回開催される大会だった。
②157回は何らかの理由で欠番とされた。

これらの可能性で十分説明できるので、問題文の状況が全然不思議に見えません。
①②のどちらなのか、問題文の時点ではわかりませんが、それがどちらであろうと、参加者の予想の範囲内です。どちらが正解なのかということへの興味は、正直なところ沸かないという人が大多数でしょう。

もしも問題文の中で①②の可能性が潰されていたら、一気に参加意欲が増すかもしれません。

問題
第156回大会の1年後に開かれたのは第158回大会だった。
この大会は1年に1回のみ開催されており、第158回まで中止も延期も欠番も無かった。
では第157回はどこへ消えたのだろうか?

これならすごく不思議です。まあ、解説までは考えていませんが。

正解条件がおかしいことについて
上で見たように、この問題文は「第156回の1年後が第158回だったのは何故か?」と要約できます。
解説を見ると、大会は年間2回行われていて、種目は違うものの同じ大会名となっており、回数も合算でカウントされているということがわかります。
この情報を用いて「第156回の1年後が第158回だったのは何故か?」に回答するなら、「1年後までの間にもう1回大会があったから」で十分です。
「奇数回と偶数回では種目が違う」などということに言及する必要は全くありません。
例えるなら「私は今朝何を食べたでしょう?」という問いかけに対して、「牛丼」ではなく、「伊万里焼で牛丼を食べた」という答えを求めるようなものです。

No.1「1年に2回行われる大会だったのかナ? 」
これは「正解」とすべきであって、ぎんがけいさんの回答のような「注意付きのNO」というのはコミュニケーションとしてちぐはぐです。

こういうことが起きてしまわないよう、問題を作る際には以下のことをチェックするようにしてください。

 ・問題文が結局は何を問っているのか自分でちゃんと把握する。
 ・正解条件が問題文の問いかけに過不足なく答える形になっているか確認する。

答えの正当性の根拠とは
ところでウミガメのスープには問いかけがあって答えがあります。
問いかけられた人が色々な質問をして、答えと一致する内容の質問が出た場合、それが正解とされます。
ではこの、「その答えが正解とされる根拠」とはいったいなんでしょうか?
もちろん形式的には、≪出題者が用意したものだから≫です。
どんな内容であれ、出題者が解説欄に書き込んで出題したその内容が正解となるのがこのゲームのシステムです。

問題レストランで注文したウミガメのスープを一口食べて「これはウミガメのスープですか」と質問し「間違いありません」という答えを得た男が、大嫌いだった椎茸を克服できたのは何故?
答えほびゃっぷへけろぺてろくるーむ

こんなことになっていたとしても、形式的には「ほびゃっぷへけろぺてろくるーむ」が正解で、その根拠は「解説にそう書かれているから」です。
でも、ウミガメのスープをちゃんと楽しみたい、楽しませたいという人には、こんなところで思考を止めてほしくありません。

「その答えが正解とされる『実質的な』根拠」を考えてみましょう。
答えらしきものがいくつもあったとして、その中で解説に書き込まれているものが唯一正解とされるのは何故なのか。
実質的と言ったのだから、ざっくり≪他の答えよりも良い答えだから≫と言えるでしょう。
だとすれば、
「解説には『ほびゃっびゃへけろぺてろくるーむ』と書かれているけど、『男の母親は男にウミガメのスープと偽って椎茸スープを飲ませていた。レストランで飲んだウミガメのスープの味が違うことでそのことに気付いた男は、(なんだ、椎茸ってうまかったんだ)と思い椎茸嫌いを克服した』っていう答えの方が正解にふさわしくない?」
というクレームが意味を持ってきます。

さてでは、二つの答えAとBがあって、Aの方がBより良いとはどういうことでしょうか。
理想的な問題の場合、Bなんか見なくても、Aを見た瞬間に「あ、これが間違いなく正解だ」と思ってしまいます。
何故そう思うのか。納得感、というとまたややこしい定義をしなくてはならなくなります。もっと感情的な話にします。
他のどの答えよりも良い答えというのは、そこに出てくる要素の一つ一つが、問題文がなぜそういう表現になったのかを説明してくれるように思えるものです。「この答えだから問題文のここはこうなのか」というのがどの要素にもピタリとはまるんですね。そういう解説が来ると、形式論を超えてそれが正解であることに納得させられます。
というわけで、ある答えが正解とされる実質的な根拠は、≪それが他のどの答えよりも良い答えだと感じさせる答えだから≫と結論したいと思います。すっきりした結論ではないですが、良い問題にたくさん触れていくと、このまどろっこしい言い回しの真意がつかめると思います。

先人が作り守ってきたウミガメのスープという文化に入り込んで、それを壊さず、発展に寄与していきたいという気持ちが少しでもあるのなら、形式論ではなく実質論を採ってください。
僕はすべての出題者にそれを望みます。

さてでは、ぎんがけいさんの問題の答えに形式を超える実質的な根拠があるか見てみましょうか。
先ほど述べた通り、問題文から推測される答えは①②の2パターンあります。正解は①でした(余計な正解条件がついていましたが)。②ではなく①であることに、実質的な根拠はあるでしょうか。①の方が②よりも良い答えだと、誰もが思うでしょうか。辛うじて、①の方が②よりも現実に起こっている例が多いという根拠はありそうですが、それだけです。①が間違いなく正解だと感じさせるものはありません。②が解説に書かれていても、終わったあとの感想はそう変わらないでしょう。

ウミガメのスープのハウツーによく、「別解が無いかチェックしよう」というのがあります。でも僕は、問題文の状況を成り立たせる正解以外の説明があったっていいと思います。数多くあるそういう説明の中で、解説に書いたそれが、一番良いものだと思わせる力があればいいのです。
ダメなのは、解説に書いた答えが、他の答え候補に比べて特に良いという訳ではないという場合です。そういう問題が何故できてしまうのか、それは次項で説明するように、問題を作る動機が弱いからだと考えます。

参考
「落第シューター」http://sui-hei.net/mvs/show/35118 に寄せられた、SoMRさんの批評文を読んでみてください。
これが良い問題だと言いたいわけではないのですが、SoMRさんはきっとこの解説に、上に書いたような実質的な根拠を感じられたのだと思います。

問題を作るというのはどういうことか
またそもそも論みたいになって恐縮ですが、問題を作るというのはどういうことかについて語りたいと思います。
問題はどういうときにできるのか。リラックスしている時、集中して考えている時、など、人によって様々ですが、問題が出てくる前の最後の瞬間は同じだと思います。
「あ、いいこと思いついた」「あ、いい経験した」「あ、いいこと聞いた」……。
この「あ、」が大事です。「あ、」無しでは問題なんか作れません。もちろん形式的には、出題されてさえいればどんなものであっても問題は問題ですが……。

「あ、」を問題に仕上げるにはまたもうひとつステップがあります。
そのままでは問題にならない思い付きが大半です。アイディアのどこをいじくって問いかけの形に持っていくか。そこで技術が試されます。
でもやっぱり技術とは関係ない最初の「あ、」がウミガメのスープの問題には一番大事です。不可欠です。

あなたの“問題”には「あ、」がありますか?
「あるよ、競馬を見たとき、これって面白いかもなと思ったんだよ」と主張されるなら、僕の見立てが間違えていたことになります。
その場合には二段階目の技術が明らかに足りていません。
何も頭を悩ませずただ事実を並べて“出題”しているだけ。僕にはそう見えます。
例えば何故コウヘイが第156回大会に参加できなかったという設定にしたのか、説明できますか?
彼が第156回大会に参加した後、来年の同じ大会にも参加したいと思ったという流れにしなかったのは何故ですか?
そこにあなたの思索は少しでも入っていますか?

問題を作るというのは、まずひらめいて、それについて考えて、表現を吟味していくこと。
僕はそう思います。あなたの問題はその過程を辿っていますか?

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さてぎんがけいさんの問題には、謎がない、正解条件がおかしい、などの欠点がありました。これらが何故生じたのかというと、出題動機が弱かったからだと思います。勝手にぎんがけいさんの心中を決めつけるようで僭越とは思いますが、「競馬の大会は秋と春とで競技内容が違う」という事実は、ウミガメのスープを作ろうという動機を形成するにはあまりにも心許ないと考えます。
これは発想でも発見でもなくて、まだ発想の種の状態です。この種に思考という名の水をやって、丁寧に育てていくのです。あるとき「あ、」が芽を出します。するともう、出題せずにはいられなくなります。これが出題動機がちゃんとある状態。そのとき問題は生まれるのです。

感覚的な話ばかりでわかりにくかったとしたらすみません。

いつかぎんがけいさんの素敵な問題を読める日を楽しみにしています。頑張ってください。


◆◆◆



《依頼犬:耳たぶ犬さん》
「うちで飼ってる犬がどこかから咥えて持って来た代物なんですけど……」
と言う面目で謎のスライムが持ってきたものです。
耳たぶのスープ
https://late-late.jp/mondai/show/1
最初の問題を取りたいという一心で急いで作った問題なので、いいねの数に釣り合う問題だとは思えません。
問題への寸評をお願いします。


《鑑定士:Go To Labelさん》
代理鑑定人のゴトーです。耳たぶ犬さん、鑑定お待たせいたしました。

さて、さっそく鑑定させていただきます。ほほうこの輝き!手触り!そしてこの馥郁たる香り!(何を見てるんだ)

本歌取りは、サイト第一問にふさわしいものを、との趣向ですね。
それに加えて、誰が見ても不思議に思う謎。「急いで作った」とおっしゃいますが、さすがポイントを押さえた作題です。

トリックは、「実は問題文中で長い時間が経っている」というもの。
これはかのラテシンファーストPV http://www.nicovideo.jp/watch/sm18221992 内でも質問例として挙げられています。
トリックとしてはメジャーなので、欲を言えば「時間経過があることがわかっても、まだその先に謎が残っている」としたいところ。
とはいえそのような作例はすぐには思いつきません。おそらく、このトリックとの組合せで効果を上げるアイディアの創出は簡単ではないのでしょう。(どなたか、お心当たりのある方はご教示ください)。

しかし、時間経過がわかれば謎が全てわかっても、それが直ちに他愛ない問題だということにはなりません。
それ以外の要素に優れたものがあればよいのです。(類問としてこれを挙げておきます。 http://sui-hei.net/mondai/show/28333

本問においては、「時間経過を分からせないためのディテール」に工夫が入っています。

具体的には、時間経過がある部分を文で分けていません。
一口食べて「まずい」といったが、二口目には「うますぎる」と大絶賛した。
と、一文の中に読点のみで区切って描写しています。
このことにより、時間経過を非常に見えにくくしており、しっかりと作者の技が入っていると言えます。

この工夫は大掛かりではないですが、この場合は大掛かりではないから良いとも言えます。
本問は素材に対してシンプルな味付けをして、さっぱりした一品料理に仕上げています。
ごてごて文字数を使ったミスディレクションを付け加えては、カツオのタタキに凝ったソースをかけるようなもの。

凝った料理には凝った料理なりの表現。
さっぱりした料理にはさっぱりした料理なりの表現があります。
仕上がりをどんな料理にしたいのか、自分の中でイメージを持っておくことは大事です。そのことで、表現や技法を適切に取捨選択することができます。

※細かく言えば、作中の料理を「耳たぶのスープ」というよくわからないものにしていることも面白いですね。これは普通は「ウミガメのスープ」にするところでしょうが、妙な料理を持ってくることによってそちらに意識を振る効果があります。この工夫もさらりとされています。

以上のとおり、シェフの技量がちゃんと出ている料理です。
光輝く「全てはここから始まった」タグとともに、大事になさってください。



◆◆◆




《依頼人:るょさん》
お尻から出てきました(。>﹏<。)
批評お願いします!

マイホーム
https://late-late.jp/mondai/show/1188


依頼は牛とモグラで殺し合いをさせて勝ったほうにお願いします。
基本的に厳しくてたまに優しくて、ほうっておけなくて、気がついたらあなたに依存しちゃってるアタシ・・・って感じでお願いします。


《鑑定士:ディダムズさん》
鑑定団が良問を産むなら、みんな死ぬしかないじゃない! あなたも、私も…。
さて、正気を取り戻して鑑定に参りましょう。
1ヶ月コースだと尻から出るようですね。

まずは問題の顔たる謎から見ていきましょう。
謎は「ホーム画面を見ただけでスマホの持主が分かったのはなぜか?」となっています。
日常に近い状況であり、参加者が不思議な点を理解・イメージしやすい、非常に魅力的な謎に仕上がっていると言えるでしょう。
さらに、「そのスマホのホーム画面を見るのは初めて」という情報を追加して、アプリや背景などの情報からわかったという可能性 (別解) を潰しており、問題文における細かい状況の丁寧な作り込みが感じられます。
注目の解説は「顔認証が完了したため、自分と顔が似ている人だとわかったから」となっています。
もちろん、製品の認証システムの精度に依るのでしょうが、親子の区別ができなかったという事例は実際にあるということであり、現実ベースで考えた時の状況の自然さ (実際に起こりうるか) という観点からの納得感はある程度確保できているように思います。
(ただし、後述のように、現代日本として考えると顔認証の精度が低すぎる様な気はします。 ググると親子での誤認識はあるようですが、それが記事になるくらいなので、「現実で起こりうるが非常に稀」というレベルでしょう。)
謎と解説を合わせてみた時のポイントとしては、問題文の「ホーム画面を見た瞬間すぐ」という記述があります。
これは、「ホーム画面の状態から(確信した)」ということではなく、「ホーム画面が表示されたという状況から」という意味で使われていることが分かります。
さり気ない描写で「どこに注目するべきか?」という物事の見方や考え方を試してくるあたり、実にいい仕事してますねぇ!

かなり完成度の高い問題だとは思いますが、あえて言うならば、「顔認証」である必要性があるかという点に関して再考の余地があるかと思います。
実際の進行時にもあったように、英数字ロックでそれを知っていた、または、自分の娘であると確信できるような設定であったという解説 (別解) が普通に通用するように感じました。
「英数字ロックが一致したくらいで確信は出来ない」という見方もありますが、確信するかどうかは主観的なものであるため、状況全体で考えると、「英数字ロックが一致したことで確信するキャラ」と「親子を誤認識してしまうスマホの顔認証」を比較して、前者が後者より明らかに不自然だとは言い切れないように思います。
このため、もし、「ロックが解除できてしまったから」ではなく、「顔認証によるロック解除が出来てしまったから」というのを話の中心に据えるのであれば、もう少し問題文で状況を絞り込んでおくのも良いかと思いました。

分かりやすく魅力的な謎、登場人物の関係性等の適度なベール、問題文の状況 (描写) をどう見るかという見方の要求、そして、自然な状況でかつ問題文に良く合った解説と、ウミガメとして重要な点をしっかりと抑えた問題だと思います。
これほど高いレベルで均整の取れた作品は中々お目にかかれないでしょう。
末永く大切になさってください。


[18年08月14日 08:28]
[4130]
オリオン[☆シンディ]

[編集済] 質問番号26~31鑑定結果一覧


《依頼人:コウCHAさん》
折角だから、俺も質問寸評を依頼するぜ。(cv.コンバット〇前)

スナイプ対策でDVDを十数枚重ねてガードしたつもりなんですがね、
DVDを一切傷付けず、真ん中の穴を通して射抜かれたんです。
しかもたった1発で、無駄弾なし。

1週間後だったorz
https://late-late.jp/mondai/show/957

よろしくお願い致します。


《鑑定士:オリオン》
うわーっ上から来るぞぉ。気をつけろ〜!
( O□O)▄︻┻┳═一
私がこの問題をスナイプ出来た理由、
撃ったら有効そうに見える質問、
の二項目に分けて寸評を進めて行きますね。

何故私がこの問題をスナイプ出来たのか
一言で言うと『運』と『相性』のおかげです。Twitterでシンカリオンがエヴァとコラボをするらしいという映像付きツイートを直前に見かけていたし、私自身がアニメ好きで普段から結構アニメを録画して見るタイプなのでイメージしやすかったわけです。
さてさて、ここから私なりの質問テクニックとかのお話になります。
今お話した『相性』……つまり『問題や解説の内容が、自分の今までの経験や知識からイメージしやすい内容・シチュエーションであるか否か』は、実は問題を解く上で(納得感にも関わってくるので問題を作る上でも)かな〜り重要な要素です。例えばこんな風にアニメがネタになっている問題なら、普段からアニメを見ている人には解きやすく逆にアニメに疎い人なら閃きにくかったりしますし、学校あるあるネタなんかだと学生さんは割とスムーズに思いつくのに社会人さんだとなかなか思い出せなかったりします。有り体に言ってしまえば、苦手分野得意分野とか、そんな感じでしょうか。この問題はオタク趣味な私にとって得意分野でした。
それならもしも自分の土俵から外れている問題に遭遇してしまったらどうするかと言いますと、ひとまず、
『××でも成立しますか?』
系の質問を撃ってみるのが超オススメです。よく分からない●●を自分がよく知っている××に置き換えることでイメージしやすくする作戦です。
例えば『アニメは詳しくないけどバラエティ番組ならそれなりに見る人』でしたら、
「アニメじゃなくてバラエティ番組でも成立しますか?」
「アニメじゃなくて、好きな芸能人が番宣でバラエティ番組に出演することになったから録画しようとしたら一つ前の週を録画してしまって……ってシチュエーションでも成立しますか?」
等質問してみると良いと思います。
もしも「イェス成立します」という返事なら、無理にアニメで想像する必要から解放されて、自分がよく知っている番組に置き換えて脳内で想像していけば良くなるのでとても思考が楽になりますし、仮に「ノーアニメじゃないと成立しにくいです」系の返答だったら、それじゃあアニメに詳しくない自分だと太刀打ちできそうにないなぁ残念だ……と諦めてその問題から離脱するきっかけにもなります。
それに加えて、もし返答が「ノー」だった場合には、『アニメならではの何かが問題を解く上で鍵になってくる可能性がある』というヒントを得ることができます。アニメとバラエティとの違いは何かという部分に標準を合わせて、実写であることと声優さんが声を当てていることの違いなのかとか、オープニングとエンディングがある違いなのかとか、アニメの内容が重要になってくるのか、それとも録り下ろしの次回予告があるかどうかの違いなのか……といった風に、どんどん絞り込んでいきましょう。
ただし、この「××でも成立しますか?」系の質問は利点もたくさんあって大変便利なんですけど、欠点もなかなかにありまして。その最たるものが『出題者さんに××が伝わらない場合がある』ことです。
「えー……ごめん、××のことよく知らないから答えられないや。ど、どうしよう。イェスノーよく分かりません、かな?」
ってことになって目ぼしい情報が得られなかったどころか出題者さんの誘導のご迷惑に……ってパターンも充分ありますので、その辺りは考えながら使ってみて下さい。

蛇足。
私とコウCHAさんはTwitterでも交流のある相互フォロワーであり、私が見たシンカリオンとエヴァがコラボするらしいというツイートをコウCHAさんも見ている可能性は高いはず……というメタ読みもスナイプの理由として少し関わってきます。メタ読みも一応、上で触れた『問題や解説の内容が、自分の今までの経験や知識からイメージしやすい内容・シチュエーションであるか否か』の経験知識部分に含まれると思うのですが、盤外戦術というか、ちょっとばかり狡い手なので万人にオススメはしません。
例として他にも、
問題文には場所は明記されてないけど、この出題者さんは野球が好きだから「野球場ですか?」って聞いてみようとか、
この問題文昨日深夜に放送してた●●って映画に似てる、きっと出題者さんはあの映画を見て影響されたんだなとか、
これ進研ゼミでやった問題だ! ……じゃなくて、前に解いたことがある問題と似てる! 同じ質問撃ってみよう! とか、
そういうのです。良い子は真似しないで下さいね。

撃ったら有効そうに見える質問
《①××でも成立しますか?》
《②何故ダビングをしたのかについて掘り下げる質問》
《③何をダビングしたかったのか絞り込む質問》

上述の通り、アニメに苦手意識がある方や、(アニメの放送時間、曜日、内容など)そのアニメならではの要素が関係するのか気になる人は『重要ポイントの確認』のために①の質問から入るのがオススメです。「●●は重要ですか?」系の質問でも同じような効果が得られますので、そちらでもいいと思います。
②は、いきなり答えを当てようとしろいう意味ではなく、

ダビングしたのは保存目的ですか?( 間違えてダビングしたとか、ダビングしてすぐ消すわけじゃないのですね?)
後で自分で見るためにダビングしたのですか?(他のキャラに見せるためなのではないんですね? ダビングしたものは後で自分で見るのですね?)

という、基本的な『事実確認』をするという意味です。水平思考問題は、問題文にせよ回答にせよ「こういう風に思い込んでたでしょ?残念、実はこうでした〜!」という罠が仕掛けてあることが日常茶飯事なので、当たり前に見える内容でもこの認識で間違いないか、この意味で合っているか、とこまめなチェックをなるべく怠らないようにして先入観の落し穴に気を付けたいところです。
ただ「自分は落とし穴になんか落ちない」という自信がある人は、他の参加者さんたちを出し抜くべく②の行程をすっ飛ばして一気に③へ突撃するのも有りです。
その場合、
ダビングによって保存したかった箇所は、
映像なのか?
音声なのか?
アニメ本編なのか?
いっそCMなのか?
アニメを前半後半で区切るなら、後半か?
という風に地道に『絞り込み』をしていくのが良いでしょう。

今使った三点。
『重要ポイントの確認:××でも成立しますか? ××は重要ですか?』
『事実確認:〜〜したのは▲▲のためですか? 問題文の◯◯というのは◯◯のことで間違い無いですか?』
『絞り込み:ウミガメのスープの味は……→美味かったですか? 不味かったですか? 辛かったですか? 甘かったですか?前に食べたことのある味でしたか?』
この三点はウミガメのスープの解く上での私なりの定石みたいなもので、ウミガメのスープに関しては大半の問題がこのやり方(とあとは基礎質問とか)で解けると思っています。

最後になりますが、このコウCHAさんの問題はそういった正攻法で正解にたどり着くことができるという意味でスタンダードタイプな良問であり、上で三つの質問例に一応優先順位の番号は振ったものの、この問題に関しては質問する順番は質問者さんの自信次第で順番はどれから入っても良いと思います。


◆◆◆



《依頼人:コウCHAさん》
押し入れの中から、この古びたネタ帳が出てきたんです。
持ち主は不明です。

爆発オチなんてサイテー
https://late-late.jp/mondai/show/514

ガッツリなネタ問題ですが、寸評よろしくお願い致します。


《鑑定士:GoTo_labelさん》
さて、私のラスト鑑定は、大先輩コウCHAさんですね。よろしくお願いします。

ネタはさすがに面白いです。爆発で髪増えてるってなんやねんと。
軽いとはいえ練れたネタで、安定感を感じさせます。

この問題に一つだけ問題があるとすると、「ありえない事が起きており」という部分です。
これは漠然としすぎていて、謎の設定としてはもう一つです。
一般論でも漠然としているのですが、本問の場合はさらにドタバタコントが舞台です。トムとジェリーで(古いかな?)トムがバラバラになったり紙のようにペチャンコになったりしても、次のシーンでは何事もなかったかのようにジェリーを追っかけているように、ドタバタギャクでは「ありえないこと」が起こることがあたりまえです。ありえないことが起こってナンボとさえ言えるので、余計にもう一つ感が強くなります。

もうちょっとキレのある問い掛けにしたいですね。

さてではどうしましょうか。
本問は他に特に問題も見受けられませんので、今回の鑑定はここに絞って行います。

解説はすでに完成しているのでそのままとして、いくつか考えてみます。

------------------
とあるコント番組で、最後に誰かが何かをやらかして大爆発が起きてしまった。
髪は焼け焦げ、顔は真っ黒、服はボロボロな登場人物たち。
その中の一人が、別の一人の顔に指を突きつけて「どういうことやねん!」と怒りの声を上げる。

指を突きつけられた一人は、別にこの爆発の原因に関わってはいないのだが、さていったいなぜ怒られた?
------------------

「ありえないこと」の表現では、「窓ガラスが割れていない」「さっきはいなかったおじさんがそこで平然と新聞読んでる」「宇宙人が出てきて話しかけてくる」など、なんでも当てはまるところでした。
この例では「怒られた理由」に限定しています。

もうひとひねりしてみます。

------------------
とある科学研究所で、研究者のミスで爆発が起きた。
爆発に巻き込まれた研究者たちは、髪と言わず顔と言わず服と言わず、焼け焦げて傷だらけのひどい有様だった。
よろめきながらやっとのことで立ち上がる研究者たち。と、中の一人が別の一人の顔に指を突きつけ、これはいったいどういうことだと怒鳴り声を上げた。

指を突きつけられた一人は、別にこの爆発の原因に関わってはいないのだが、さていったいなぜ怒鳴られた?
------------------

コントであることを隠しました。コントのみならず、虚構であることを隠すのは常套手段ですが、問題の緊張感と解説のギャグで落差が生じますので、このネタを生かすには効果的な方法でしょう。
落差を強調するため、あまりくどくならない範囲内で問題文をシリアスにしてみました。

あとは、ちょっと変わったアレンジを思いついたので、最後にそれを挙げておきます。

------------------
爆発事故に巻き込まれた男は、その直後、なぜか周囲の人々に難詰された。
理由は男がハゲだったからということなのだが、いったいどういうことだろう。
------------------

やっぱり、「ハゲ」を問題文に出せるのならそうしたいところですね。

軽いお笑いネタですが、もうひと味付けるともっと生きると思います。ご参考になればと思います。

あと、質疑応答で細かいですが一点。
これはNo.22で正解にすべきでしょう。ウミガメ的に面白いのは、なかったはずの髪が出現したことですので、その後カツラを叩き落とすアクションまで当てさせるのは意味がないと考えます。

それでは、これからもご活躍を期待しております。


◆◆◆



《依頼人:ひらめさん》
ギリギリになってしまって申し訳ないのですが、通り雨の後にベランダのプランターのそばに落ちていたので鑑定を依頼したいです。
たとえ迅雷に打たれても
https://late-late.jp/mondai/show/1136

やさしく問題寸評をしていただける方であればなおのこと嬉しいです。


《鑑定士:ディダムズさん》
どこか雨上がりって、その辺にささやかな宝物が転がっていそうな感じしますよね。
天から舞い降りた作品、拝見させていただきます。

基本に忠実に、まずは謎から見ていきましょう。
謎は、「雷鳴の後、主人公が、玄関へと行き、悩んだ後、そのまま家に出るという一連の行動をしたのはなぜか?」という点でしょう。
主人公の行動に理由を付けるタイプの問題ですね。
部分的に開示された状況から物語の全体像を明らかにしていく、シチュエーションパズルらしい状況補完型の問い掛けと言えるでしょう。
しかし一方で、この謎はやや断片的で、不思議さに欠ける様な印象を受けるようにも思えます。
これは、問題文の記述を満たす「慌てて玄関へ行く → そこで悩む → 家を出ていく」という状況が容易に作れてしまうため、不思議な状況や説明が付かない (うまく繋がらない) 状況、すなわち謎として感じにくいためでしょう。
例えば、実際の進行の質問1を使うと「子供が雷に打たれた → 救急セットを持って行った方が良い? → いや、とにかく様子を見に行くのが先だ!」と、問題文に概ね沿った形で物語が作れてしまいます。
同様に、質問3を使っても「子供が公園で遊んでいるな → 傘や雨具を持って行く? → いや、車で行けばいいや」といった物語が作れます。
このように、状況が容易に作れるものだと、繋げた状況の断片を具体化するだけとなってしまうため、問題を解くというより、どの話が正解なのかをチェックするという作業に近くなってしまいます。
また、良いトリックや優れた考え方を取り入れた問題を作ったとしても、それを使わなくても解説 (問題文に合った物語) が作れてしまうことになり、問題としてそのトリックを使う必要性が乏しくなってしまいます。
部分的・断片的な記述は、使い方や解釈に幅を持たせることができ、必ずしも悪い事ではありませんが、不思議さはある程度持たせた方が魅力ある問題になる傾向にあります。
問題文の情報を増やしたり、状況の切り口 (どのように不思議を感じさせるか) を変えたりなどして、一目で謎を感じる様な問題にするとより良くなると思います。

続いて解説を見てみましょう。
解説は、「洗濯物を取り込もうとした → 雷が遠いと気づき、いま取り込むべきか悩んだ → 余裕をもって取り込んでしまうことにした」という感じでしょう。
日常のワンシーンとしてありうる状況であり、現実として見た時の解説の自然さは充分に高いものであると言えるでしょう。
また、問題文の記述と解説の状況の対応も、特に矛盾は無いものと思います。
しかしながら、問題文の「その後」(確かにその後ではあるが、雷鳴からの時間経過はそれほど重要ではない) や、「何の準備もせずに」(確かに何の準備もしていないが、それに関して特に解説で触れられていない) という記述が、解説の場面を導くのにあまり役に立ってないような気がしました。
もちろん、問題文の文章を整えたり、状況のイメージを作ったりするために、問題としては重要ではない記述を入れることは良い事だと思いますが、このような別解が多く作れてしまう問題においては、これらの記述を上手く取り入れた解説の納得感 (問題文と解説の適合の良さ) が向上し、本解説の納得感が相対的に低下してしまうため、その点には注意した方が良いと思います。

日常的なワンシーンをシチュエーションパズルとした、情報補完や状況探索の楽しさが味わえる問題だと思います。
これからも大切になさってください。


◆◆◆




≪依頼人:アルバート≫
レストランのメニューに挟まってました。

『ウミガメのスープ』https://late-late.jp/mondai/show/18

既にとかげ鑑定士からありがたい鑑定書をいただいていますが、せっかくの機会なので他の方の評価も聞いてみたく、出品しました(というわけですので、できればとかげさん以外の方に鑑定をお願いしたいです)。


≪鑑定士:牛削りさん≫
最後は本家オマージュですね。他の方の評価と異なり少し厳しめになりますがご容赦ください。

※アルバートさん ⇒ 辛口批評注意
※問題未読の方 ⇒ ネタバレ注意

オマージュという要素について
問題文の状況の不思議さについて
「怒り出した」に関して
問題文と解説の整合性について

以上の観点で分析していきましょう。

オマージュという要素について
当問題は、本家ウミガメのスープのオマージュになっています。レストランで運ばれてきたスープについて男が尋ねるというシチュエーションを引っ張ってきて、そこにアレンジを加えて別の真相に繋げているわけですね。
ところでオマージュというのは、作者が先行する作品に敬意を表するという、作品の内容そのものとは関係ない外部の要素です。その問題がどんな先行作品から影響を受けているかということは、その作品自体の評価とは関係ありません。
だから"オマージュだからこそうまくいっている部分"があったとしても、それをもって作品の評価を上げることはしない、というのが僕の方針です。
本家がいくら有名な問題とはいえ、言ってみればこの遊びに携わっている一部の人しか知らない内輪ネタでしかないわけですからね。

問題文の状況の不思議さについて
男が三日続けてレストランを訪れ、注文したスープについて質問しいずれもウミガメのスープだという答えを得、最後には怒り出す、というのが当問題の要約です。
ウミガメのスープの問題文に必須な不思議さ、不可解さに当たるんじゃないかという部分を抜き出してみると、下記のようになるでしょう。

①自分で注文したメニューに関してその内容をわざわざ尋ねていること。
②三日続けて同じ問答をしていること。
③怒り出すこと。

このうちの①について、オマージュ元の本家では、男はウミガメのスープを注文しておきながら、それがウミガメのスープかどうかを質問しています。ここに、「なんで自分でウミガメのスープを注文しておいてそれがウミガメのスープかどうか訊くなんてまどろっこしいことをしてるんだ?」という疑問が生まれます。これがチャームを構成する一要素となっているのは間違いないでしょう。
一方当問題では、男が注文したメニュー名は明かされず、質問内容も「これは何のスープだ?」というものでした。本来ならここに不思議さは発生しません。メニュー名は必ずしもその料理の内容を事細かに説明しているわけではなく、中身を把握しないまま注文することは多々あるからです。自分で注文して出てきたものが実のところ何であるか尋ねるというのは、わりと普通の出来事です。ところがこれがオマージュであるために、本家のイメージを引きずって、「男はウミガメのスープとわかっていて注文したのだろう」という先入観、もしくはお約束のようなものが発生し、それが本家と同じような不思議さを装ってしまっています。これはオマージュだからこそ本家に助けられて成立しているチャームであって、当問題そのものの実力ではないと考えます。
また②に関して、三日続けて同じ問答をすることは確かに不思議ですが、「日替わりスープなのに毎日同じだったから怒った」という真相に対して、「何故三日連続でレストランに来て日替わりスープを注文したのか?」という疑問は特に意味を持ちません。これは「男はそういう人だった」と納得するしかないことで、作者が疑問に思ってほしかった部分とは違うでしょう。
こうして見てみると、問題文で純粋に不思議と言えるのは③の怒り出すことだけになります。

〈参考〉
世界田中奇行田中紀行』http://sui-hei.net/mvs/show/16022
MVSコメントの中に「「田中奇行」シリーズだからこそ囚われる第一の先入観」という評があります。これは確かにその通りで、このトリックはラテシンにおいてそれまで積み重ねられてきた「世界田中奇行シリーズ」の存在に助けられていることは間違いありません。とはいえ、それはやはりこの問題そのものの実力ではありません。ひとたびラテシンを出てしまえば、「世界田中奇行シリーズ」など誰も知らないのです。この問題そのものとして見るなら、先ほどの評にある「第一の先入観」はひとえにタイトルのみに担わされています。

「怒り出した」に関して
さて「怒り出した」についてですが、これは参加者に不思議だなと思わせるには少し弱いと思います。非常識な行動をした人に対して怒るのは当たり前の話で、逆に言えば、主人公が誰かに対して怒ったのなら、その誰かは何かしらの非常識な行為をしたのだろうという推測も自然に出てきます。だから怒られた人物の非常識な行いが解説されても、方向性としては想像通りで、驚きはそんなにありません。
そういうことが予想されるので、「怒った。何故?」とか「泣いた。何故?」という締めの問題文はチャームがなくなってしまうことが多いです。

〈参考〉
『そっか。』http://sui-hei.net/mondai/show/22201
「涙を流した。何故?」という締めかたなのでチャームは低いですが、解説では「涙を流したとあれば悲しみや嬉しさで感情が高まったのだろう」という大方の予想を裏切っています。感情の理由を問うならこういう形にしたいものです。

問題文と解説の整合性について
さて問題文から解説までを通して読んでみると、不整合な部分はありません。矛盾なくすべて筋が通っています。だから納得感という観点では満点でしょう。
ただ、だからこそ、簡単すぎると言わざるを得ません。
問題文の状況の不思議さについての項で説明した通り、男がメニューについて質問する理由については、本家のお約束に目を濁らされた参加者でなければ、初見で解決できます。残る謎は怒った理由だけですが、これも素直に考えればシェフが何らかの非常識な振る舞いをしたのだろうと容易に推理できます。
そこで三回繰り返された問答を見てみると、男は三日間同じメニューを提供されたことがわかります。カレーが二日間続いて親に文句を言う、という状況はおなじみなので、「同じメニューが連続」ということからそれを類推するのは自然な発想でしょう。
ここまで、質問も発想の転換もなしでたどり着けます。あとはシェフが男のお抱えで気が利かないと怒ったのか、あるいは「気まぐれスープ」と書いてあるのだからちゃんと気まぐれしろよなのか、はたまた「日替わりスープ」なのに毎日同じかよなのか、そういう細部を詰めていくだけです。その細部詰めの過程に驚きや発見は特にないでしょう。
簡単すぎることがいけないと言っているわけではありません。スナイプされた問題にも名作はたくさんあります。ただそういう作品は、参加者が答えを"閃く"という瞬間があるのです。ベールや先入観で抑圧されていた真相が、まるで指先でつまんだホースから水が吹き出すように、一気に現れ出てくる感触。そこには心地よい驚きがあるのです。
同じアナロジーを用いれば、当問題は指先でつまんでいないホースのよう。書いてあることから当たり前に想像される事柄を繋いでいくと当たり前にたどり着く真相は、ホースからチョロチョロと垂れ流される水と同じで、閃きと呼べるような勢いはありません。

さてここまで色々と見てきましたが、実を言うと当問題に欠点と言えるほどの悪いところはありません。すべての項目で及第点を取れていると思います。ただ、突出したものがない。どの項目をとっても何かが足りないという感じ。
名作を生み出すためには、ウミガメのスープとして整える器用さだけでなく(アルバートさんはこの点、群を抜いていると思います)、何かしら飛び抜けたワイルドさを身につけるべきでしょう。どうすれば身に付くかというのはなかなかアドバイスしづらいですが、例えばラテシンのMVSの部門別ランキング上位を見て参考にするとか……。
向上心を持ち続ければ大丈夫だと思います。と適当に締めておきます。



◆◆◆





≪依頼人:藤井さん≫
うちに届いた宛名のないはがきなんですけど…
宛先不明の官製はがき
https://late-late.jp/mondai/show/688

こちら、ぜひオリオンさんに質問寸評を頂きたく存じます!
滑り込みで申し訳ないのですが、宜しくお願いします。


≪鑑定士オリオン≫
じゃかじゃん!
セーフ! 滑り込みでも全然セ〜〜フ! 謹んで鑑定承りまっす!

流石物語系スープの人を自負している藤井さん。問題全文が状況の説明になっているのだけれど要所要所に明らかにされていない情報があり、最終的にはそこを補足しつつ全体のストーリーをまとめる必要がある、状況補完系の問題ですね。
最初に書いたようにこの手の問題は「問題全文が状況の説明になっている」ためある意味文章全部がクルーみたいなものなので、問題文のどこか「一点のみ」に注目するよりも「点と点との繋がり・流れ」みたいなものを意識したり、問題文にはっきり書いてない部分を想像してストーリーを組み立てる「裏読み作業」みたいな物が必要になってきます。

国語の授業みたいになってしまって申し訳ないのですけれど、まずは裏読みも含めて『問題文から読み取れる情報』を整理しまして、それを踏まえた上で『撃ったら有効そうに見える質問』についてまとめて行こうと思います。


問題文から読み取れる情報
彼から届いた心のこもったはがきを、私は大事に持っていた。
しかし彼にそのはがきを見せると、「君だったんだ」と彼は驚いて感謝した。
(以上、本文より引用)

「彼から届いた心のこもったはがき」
まず『彼』という登場キャラがいることが分かります。
心のこもったはがきという部分は、
①文面そのまま彼が誠意を込めてくれたはがきなのだとも取れるし、
②心を込めたと言ってもそれが良い心だとは微塵も書いてないので復讐心などのマイナス方面の心が込められているのかもしれないし、
③ハート形のカードとかシールとか、物理的に「心」と称することができそうな物がはがきと一緒に送られてきたという可能性も一応考えられます。
しかし仮に物理的な心を送る場合「心のこもった」という表現を使うのはちょっとアンフェアなので③はほぼ否定できます。
残るは①か②ですが、ここで、先程お話しした「他の部分との繋がり」を考えてみます。すると、もしも②だとすると大事に持っていた理由に関しては『例えば脅迫状とかストーカーからのメッセージが届いたので将来的に証拠品になるかもしれないから大事にとっておく』という風に想像できるのですが、その後「君だったのか」と驚いてお礼を言われるシチュエーションに至る流れがあまり想像できないように思うのですよね。
なのでとりあえず①のように文面そのままの意味である可能性が一番高そうだと判断します。だとするとどうでも良い相手へ心を込めたはがきを送ることはないでしょうから彼は私のことを大切に扱ってくれていることが分かります。
はがきの内容は現段階では文字なのか絵なのか写真はがきなのか全く不明ですが、『心を込めた』という表現から、一番可能性が高いのは彼の手書きであるように思います。

「(はがきを)私は大事に持っていた。」
『彼』の他に『私』も登場するようです。私という一人称からおそらく女性だと予想されますが、男性の場合もあり得ますし、彼と同じくプロフィールは詳細不明。
また、ただ持っていたのではなくわざわざ“大事に”持っていたと付け加えて書いているからには意味があるはずです。何故大事に持っていたのかという部分は考えるべきポイントと見ていいでしょう(藤井さんはちゃんと意味を考えて言葉を選んでくれるタイプの出題者なので安心して深読みして大丈夫)。
1:彼が大事な相手だったので、彼の手紙も大事だと感じたからなのか、
2:はがきの中身・内容が大事だったからなのか、
3:はたまたそれ以外の理由だったのか、
色々理由は考えられますがこの辺りはYesNoの質問である程度絞り込みやすいでしょう。

「しかし彼にそのはがきを見せると、「君だったんだ」と彼は驚いて感謝した。」
どういう状況で彼が驚き感謝したのかは不明です。直接会話していると見せかけて実はテレビ電話だったとか、私ではない人が彼にはがきを見せて感謝されているとか、何かしらのトリックが仕掛けられている可能性もなきにしもあらずですが、ひとまず素直に『私は彼に直接会ってはがきを見せ、驚かれ、感謝されている』状況なのであると仮定してみます。
「君だったんだ」の台詞は、
「僕がはがきを送った相手は君だったんだ」ということに気がついたようにも、
「僕に手紙を送ってくれた相手は君だったんだ(返事のはがき受け取ってくれたんだね)」とも受け取れますが、
どちらにせよ彼は『はがきと私の関係にこのとき初めて気がついた』らしく、そこから『彼が私と初対面である可能性』が浮かび上がります。君、という二人称は知り合いに使うには少々他人行儀だもいうこともその印象を強めています。
ところがここまで書いてきた通り、彼と私はお互いのことを大切に感じている関係であることが推察されます。彼は私に対して感謝してるわけですしね。にも関わらず初対面。これは少々特殊な関係だと言えます。この二人の関係を推理するための最大のヒントになる部分です。
蛇足として、ごんぎつねの「ごん、お前だったのか……」と同じで、君と彼は元から知り合いだったパターンもあり得なくはありませんが、その場合私は正体を隠して彼とはがきのやり取りをしていたということになり、それはそれで特徴的な関係だと言えるのでこの二人の関係を読み解くヒントとして大きく役立ちそうです。

長々とすみません。

整理します。
読み取れた中で確定している情報と、ひとまず可能性が高そうだと判断した要素を◎、それに対する補足等を◉でまとめてみます。

◎登場するのは『私』と『彼』
◎どちらもプロフィールの詳細は不明
◉彼にはがきを見せて感謝されたのは私で間違いない、等、他の予想外の可能性を早めに潰しておく意味でも、他に重要キャラがいるか確認する価値はあります。困ったときにはとりあえず重要キャラの確認!
◉プロフィールは、職業や社会的地位などの基礎質問に関しては大体どんな問題でも腐りにくいです。

◎私の性別は不確定
◉私という一人称と、彼が「お前」等ではなく「君」と呼びかけていることから恐らくですが女性。進行の途中で恋愛要素が重要そうに感じたら率先して確定させたい部分ですが、初対面の可能性すらある二人なので一先ず優先順位的には低めだと感じます。

◎彼と私がどういった状況・経緯で会っているのかも不明
◉気になるポイントではあるのですが、想像できる範囲が広すぎてちょっと掘りにくい箇所。それでも『二人は初対面なのか』、『偶然会ったのかそれともどちらかが会おうとして会いに行ったのか』等、質問ではっきりさせやすい箇所はあるので、自分が思い浮かぶ範囲で色々と質問は飛ばせそうです。

◎はがきの中身・内容は不明
◉心がこもっているという記述から、彼が手ずから書いたり描いたりしたはがきである可能性が高く、無難に考えるなら文字が書いてあると思われます。
書いてある内容は重要なのか。
重要なのだとしたら、一体何が書いてあるのか。
この辺りが分かると私がはがきを大事に持っていた理由だけでなく、彼が驚いて感謝した理由、二人の関係等、複数の要素のヒントになり得る部分なので優先的に質問ではっきりさせたい箇所です。

◎彼は私に感謝していて、私のことを大切に思ってくれている
◎私もわざわざはがきを取っておいたり、彼のことを大事に思っていそうな様子
◎不思議なことにこの二人は、お互いに好意的な感情を持っているにも関わらず問題文のときが初対面である可能性がある
◉これら全ての条件を満たす関係というのはそう多くないと思います。実際の答えであるファンと有名人の関係以外だと、ボトルメールとかネットとか、顔が見えないきっかけで知り合ってずっとやりとりをしていた相手とかでしょうか?
こちらも、解き明かすことで他の複数箇所に目星をつけることができそうなポイントなので、個人的には最優先で掘りたいと感じます。

◎彼は私に感謝している
◉何に対する感謝なのかは不明。私が彼に手紙・はがきを送ったことに対する感謝、はがきを持ってきて見せてくれたことに対する感謝、会いにきてくれたことへの感謝等、問題文だけでは様々な可能性が考えられます。


撃ったら有効そうに見える質問
①彼と私は初対面ですか?(『初めて』なのか『直接会って話しているのか』等に探りを入れたい。「私と彼は知り合いですか?」も、お互いがお互いを知っている関係なのかを確かめられるのでおススメ)
②はがきに何が書いてあるのかは重要ですか?(単純に内容が重要なのか確認したい他に、はがきの内容は文字なのかはっきりさせたいという裏の意図があるので『書いてあるのか』という表現を使用)
③他に重要キャラはいますか?
④職業が重要なキャラはいますか?

基本的には、問題文の時点で『何かしらの想像が頭に浮かんだ人』はその想像が正しいのか確認するための質問をするのが良いと思います。外堀から埋めても良いですが、他の人に先を越されて悔しい思いをすることも多いため想像したそのものズバリを尋ねるのも良いでしょう。
『想像が膨らまなかった人』や『あまりにもたくさんの想像が思い浮かんでしまって絞りきれない人』は、問題文の中ではっきりしていない部分を質問ではっきりさせる作業から進めてみて欲しいです。あやふやな部分を具体的にしていく→具体的になった部分と問題文を組み合わせて想像の方向性をまとめる→想像が上手く膨らまなかったらまたあやふやな部分を掘り進める、と繰り返していくと良いでしょう。



◆◆◆





《依頼蜥蜴:とかげさん》
ずっと床の間に飾っていたお宝なんですが、最近、実は上下逆さまだったことがわかりました。

ムリナンダイカメハメハ!
https://late-late.jp/mondai/show/234

参加してくださっていたオリオンさんに質問寸評をお願いしたいです!
12の時点で、具体的な答えまではわかっていなかったにしても、なんとなく真相が読めていたようにしか思えなくて怖いです!!


《鑑定士:オリオン》
とかげさんこんにちは〜。真相は全く読めていませんでしたが、亀夫君問題ですし、問題文を読んで「多分この子が言ってるカメハメハは本当はカメハメハではないんだろうなぁ」とはピンと来ました。
初心者さんにも読みやすい質問講座的なものを目指しおりますので、とかげさんが既にご存知の情報も含まれてしまうかとは思いますが、

傾向と対策
撃ったら有効そうな質問
余談

の3本でお送りいたしますね。
(じゃんけんぽんっ✌︎うふふ)


傾向と対策
ジャンルがウミガメ・20の扉であるときには回答で●回だけ嘘をつきますみたいな特殊ルールがあるときを除いて『地の文と回答で嘘をついてはいけない』という絶対のルールがあるわけですが、一人称の文体で書かれている問題文や亀夫君になるとそれが緩和され、フェア・アンフェアのライン引きが大きく変わります。この文章は事実をそのまま語ったわけではなく「あくまでも登場キャラの主観を通した文章である」という大義名分ができるので、必ずしも真実のみを伝える必要がなくなるからですね。
それゆえ亀夫君は

『語り手が何かを勘違いしていたり、重要な情報を隠している』

というパターンが非常〜に多いです。特に、作問慣れしている人がわざわざウミガメではなく亀夫君で出題しているときには、怪しむべきポイントだと思っています。
問題文を読んだ限りクロコちゃんからは悪意は感じず本当に悩んでいる様子だったので、嘘をついていると言うよりは、きっと何か違うものをカメハメハと勘違いしているパターンなのだと思い、それならばまずは正確な状況の把握から始めようと文字がどんな風に書いてあるのかの質問から始めた次第でした。

《具体例:参考URL》
とかげさん出題「名探偵「へび」不審な家族」
http://sui-hei.net/mondai/show/12680
紺亭 唐靴蛙さん出題「エースのスランプどうした亀谷」
https://late-late.jp/mondai/show/1046


文字がどんな風に書かれているかの質問から始めたのには、もう一つ理由があります。
恐らく謎解きに慣れている人にとっては今更言うべき程のことではないかと思うのですが、この手の暗号問題は『一見Aだと思っていた物が実はBだった』というパターンが非常に多く、その中でもこの問題はどのパターンに当てはまるのか、という確認をしたかったからです。
(以下、名探偵コナンのとあるエピソードとtrick劇場版に出てきたトリックを例として引き合いにだきてますのでネタバレ注意です)

例えば以下のようなパターンが考えられます。

①男刈谷刈谷、みたいに字の一部が何らかの理由でなくなりカメハメハと見えてしまっているパターン。
(例:名探偵コナン『隠して急いで省略』。国吉文太という犯人の名前のダイイングメッセージが部分部分途切れてしまったせいで、◻︎◯×△という謎のマークに見えてしまっていたというトリック)

②例えば、油性ペンで書いた文字を裏面から見てるとか、文字が反転処理されてしまっているパターン。
(例:trick劇場版第1作目。トイレで殺された被害者が板に血文字でイトフシムラと書き残し、糸節村の関係者が犯人であることを伝えようとしたのだが、血が乾く前に板が血文字側を下にする形で倒れて、判子みたいにイトフシムラが反転された文字(トイレツマルに見える)だけが残されてしまったというトリック)

③実際に答えであったように、文字を見る向きが違っているパターン。

④空という漢字を「ウルエ」と読んだり、力×八×八のことをカメハメハと読んだり。クロコちゃんには書いてあるものがちゃんと見えている状態ではあるのだが、読み方・認識の仕方が間違っているせいでおかしなことになっているパターン。

もちろん、
カ メハメ ハ みたいに文章が区切られておりそれが実はモールス信号になっていたとか、カメハメハの他に実は「(私の好きな食べ物を当てて)カ=す、メ=M、ハ=O」と書いてある紙を預かっていて、カメハメハを他の何かしらに変換して考えなくてはいけないパターンや、
カメハメハ大王の像が左手に持ってる物はなーんだ? 答え、槍。みたいに、本来ならカメハメハの前や後にまだ何かしらの文章が繋がっていたパターン
みたいに、カメハメハは本当にカメハメハと書いてあるというパターンもありますが、体感的には「実はカメハメハじゃなかった」というパターンの方が多いような気がします。
上記①〜④辺りのよく出てくるパターンはできれば暗記しておいて、この手のタイプの問題にお目にかかったときに真っ先に疑ってかかれるようにしておくといいかもしれません。(ただし、場合によってはそのせいでいらぬ先入観にハマってしまったりもするので一長一短です。覚えなくても自力で閃くことができる、ってタイプの人は無理に覚えなくても大丈夫です。私は閃けない人間なので、今まで見たことのないタイプの解き方に遭遇したら覚えるようにしています)


撃ったら有効そうな質問
亀夫君はキャラの言うことを鵜呑みにしてはいけない
暗号問題も書いてあることをそのまま鵜呑みにしてはいけない

という二点が私の基本理念ですので、基本的にはまずその辺を疑って質問を進めていくのが良いと思うのですが…………ただ亀夫君問題の質問って難しいんですよね。イェスノー以外の質問も有りなので質問の幅が無限大ですし、範囲の広い質問だと向こうもふわっとした質問しか返してくれなかったり、間違った情報が返ってきたりするので。
ですのでまずはこの問題に限らず、亀夫君問題だった場合に狙い目だと感じるポイントについてまとめます。

『質問ではっきりさせることが簡単そうな箇所。5W1H(例:君は誰?Who→どんな人なの?→他に人はいないの?)』
『回答者がはっきり答えてくれそうな質問』
『自分が、しっかりと詳しい聞き方で質問できる箇所』
『明らかに怪しいと感じた箇所』

この辺りです。5W1Hなんかは特に質問で膨らませやすいし、ヒントになる情報が隠れていることも多いので狙っていきたいポイントです。問題文で実際にあった『どんな風に問題を出されたのか、口で言われたのか文字なのか』なんかも、是非とも確認しておきたいポイントですしほぼ二択なので情報の間違いが起こることもなさそうですごくいい質問だと思います。
私ならそのまま文字の書き方の確認作業に入るわけなのですが……それはあくまでも一例で、実はこの問題文って掘ったらヒントになりそうな情報がすごくたくさんあるんですよね。とかげさんが、色んなルートからゴールに到達することができるように親切設計してくれてます。

カメハメハって、文字なの?→さては逆さ向きに見るんだな?
と一気に核心に迫ってもOK

いつ、どういう状況で問題を出されたの? →へぇ、授業中に黒板のところまで行って戻ってきたら書いてあったの。君とアリちゃんの席は近くなの? どういう風に書いてある?→さては!
って流れのゴールでもいいし

実際の回答の中ではノータッチでしたが、
いつもはどんな問題を出されるの? 難易度は? →そんなに難しい問題じゃないんだね。ふむふむ、授業で習った漢字の読み書きの問題とか、いつもなら普通解けるような問題を出されるんだね。小学5年生が普通に解ける問題ってことはそんなに難しい問題じゃないはずだなぁ
って部分もヒントになりそうです。

先程言ったように亀夫君問題は質問がすごく難しいので、ルートが一本道だったり、掘れそうな場所を感じない問題文だと、どこかしらで詰まって嫌になってしまうことがたまにあるのですけれど、そういう意味でこの問題文はすごく質問甲斐がある問題文になってます。ビバ。
なので(あくまでも私は文字の書き方から攻めるというだけで)私が変に口出しして理屈で推し進めるよりも、こういうベテランの方がちゃんと作ってくれている亀夫君問題に関しては質問者さんが気になったところから自由に聞くのが解きやすいし、その方が楽しく解けるんじゃないかなと感じました。仮にも質問講座みたいなものをうたっているのになんじゃそりゃって感じですが。でも「自己紹介してくれる? ふむふむ。問題を出してくれた友達はどんな子なの? ……へぇ、そうなんだ! 仲良しなんだね。じゃあ、問題出されたのっていつのことなのかな?」みたいに、相手から詳しい状況を聞き出しておしゃべりをしている感覚を、是非とも楽しんでみて欲しいです。


余談
散々おしゃべりを楽しめばいいと思うよ、ってオススメした後でひとつだけ台無しなことを言わせていただきますと。この手の問題は、とりあえず実際に紙に字を書いてみて、ひっくり返したり色々な見方を試してみるのも裏技として非常に有効です。

[18年08月14日 08:28]