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【正解を創りだすウミガメ】冬に風鈴【第19回】

◆◆ 問題文 ◆◆


2月。
まったく風の通らないその場所に、女が風鈴を吊るしたのは

いったいなんのため?



--------------------------------------
こんばんは、約1年ぶりに創りだすMCをさせていただくことになりました藤井です。よろしくどうぞ!

 ** 前回はこちら **
https://late-late.jp/mondai/show/8936

      。
      。
      。

今回は『よりウミガメに寄せた正解を創りだす』を目指したいと考え、新たなルールを設けています。


★新ルールその1★
『簡易解説をつける!』
作品の冒頭もしくは末尾に、問題文の問いかけに対する簡易解説(要約)をつけてください。文字数や行数の指定はありません。
※作品自体が簡易解説のような形である場合は、新たに要約をつける必要はありません。

★新ルールその2★
『作品投稿は1人1作のみ!』
あなたの本気を1作に詰めこんでください。
※尚、投票対象外としてサブ作品を1作品まで投稿可能とします。
その場合タイトルに必ず『投票対象外』と明記してください。


☆要素→6個(すべて使用)
☆文字数制限→なし


新たなルールが加わり自由度が下がってしまうかもしれませんが、ぎゅっと凝縮された中でみなさんが思う存分遊んでくださることを楽しみにしています。

それでは第19回創りだす、はーじまーるよー(=◜o◝=)✨

      。
      。
      。


--------------------------------------

★★ 1・要素募集フェーズ ★★
[1/12(日)21:00頃~質問が40個集まるまで]

まず、正解を創り出すカギとなる質問(要素選出)をして頂きます。


☆要素選出の手順

①出題直後から、YESかNOで答えられる質問を受け付けます。質問は1人3回まででお願いします。

②皆様から寄せられた質問の数が40個に達すると締め切りです。
全ての質問のうち"4個"を出題者の独断、さらに"2個"をランダムで選びます。合計6個の質問(=要素)が選ばれ、「YES!」の返答とともに良質がつきます。

良質以外の物は「YesNo どちらでも構いません」と回答いたします。こちらは解説に使わなくても構いません。

※矛盾が発生する場合や、あまりに条件が狭まる物は採用いたしません。
▼矛盾例
 田中は登場しますか?&今回は田中は登場しませんよね?(先に決まった方優先)
▼狭い例①
 ノンフィクションですか?(不採用)
▼狭い例②
 登場キャラは1人ですか?(不採用)
▼狭い例③
 ストーリーはミステリー・現実要素ものですよね?(不採用)

要素が揃った後、まとメモに要素を書き出しますのでご活用ください。



★★ 2・投稿フェーズ ★★
[要素選定後~1/22(水)23:59]

要素募集フェーズが終わったら、選ばれた要素を取り入れた解説を投稿する『投稿フェーズ』に移行します。
各要素を含んだ解説案をご投稿ください。

らてらて鯖の規約に違反しない範囲で、思うがままに自由な発想で創りだしましょう!

※過去の「正解を創りだす(らてらて鯖版・ラテシン版)」もご参考ください。
 ** ラテシン版 **
http://sui-hei.net/tag/tag/%E6%AD%A3%E8%A7%A3%E3%82%92%E5%89%B5%E3%82%8A%E3%81%A0%E3%81%99%E3%82%A6%E3%83%9F%E3%82%AC%E3%83%A1
 ** らてらて鯖 **
https://late-late.jp/tag/tag/%E6%AD%A3%E8%A7%A3%E3%82%92%E5%89%B5%E3%82%8A%E3%81%A0%E3%81%99%E3%82%A6%E3%83%9F%E3%82%AC%E3%83%A1


☆作品投稿の手順

①投稿作品を、別の場所(文書作成アプリなど)で作成します。
質問欄で文章を作成していると、その間他の方が投稿できなくなってしまいます。
コピペで一挙に投稿を心がけましょう。

②すでに投稿済みの作品の末尾に終了を知らせる言葉の記述があることを確認してから投稿してください。
記述がない場合、まだ前の方が投稿の最中である可能性があります。
しばらく時間をおいてから再び確認してください。

③まずタイトルのみを質問欄に入力してください。
後でタイトル部分のみを[良質]にします。

④次の質問欄に本文を入力します。
「長文にするならチェック」がなくなりましたので、主催が長文許可を忘れてなければそのまま質問欄にて改行込みでのコピペが可能です。

⑤本文の末尾に、おわり、完など、終了を知らせる言葉を必ずつけてください。



★★ 3・投票フェーズ ★★
[投票会場設置後~1/28(火)23:59]

投稿期間が終了したら、『投票フェーズ』に移行します。
お気に入りの作品、苦戦した要素を選出しましょう。


☆投票の手順

①投稿期間終了後、別ページにて、「正解を創りだすウミガメ・投票会場」(闇スープ)を設置いたします。

②作品を投稿した「シェフ」3票、投稿していない「観戦者」1票を、気に入った作品に投票できます。
その他詳細については投票会場に記します。

※投票は、1人に複数投票でも、バラバラに投票しても構いません。
※自分の作品に投票は出来ません。その分の票を棄権したとみなします。
※投票自体に良質正解マーカーはつけません。ご了承ください。

③皆様の投票により、以下の受賞者が決定します。

 ◆最難関要素賞(最も票を集めた要素)
 →その質問に[正解]を進呈

 ◆最優秀作品賞(最も票数を集めた作品)
 →その作品に[良い質問]を進呈

 ◆シェチュ王(最も票数を集めたシェフ=作品への票数の合計)
 →全ての作品に[正解]を進呈
 (※今回は最優秀作品賞=シェチュ王となります)

(◉◉)<見事『シェチュ王』になられた方には、次回の「正解を創りだすウミガメ」を出題していただきます!

※票が同数になった場合のルール
 ◆最難関要素賞
 ◆最優秀作品賞
 →同率で受賞です。

 ◆シェチュ王
 →同率の場合、最も多くの人から票をもらった人(=複数票を1票と数えたときに最も票数の多い人)が受賞です。
 それでも同率の場合、投稿・投票に参加されなかった方に協力を仰ぎ、追加票にて再集計します。(※今回限りの特別措置です)




■■ タイムテーブル ■■

☆要素募集フェーズ
 1/12(日)21:00~質問数が40個に達するまで

☆投稿フェーズ
 要素選定後~1/22(水)23:59まで

☆投票フェーズ
 投票会場設置後~1/28(火)23:59まで ※予定

☆結果発表
 1/29(水)21:00 ※予定



◇◇ コインバッジについて ◇◇
誠に申し訳ありませんが、藤井のオフの事情により、今回はコインバッジ贈呈は無しとさせていただきます。
また、エモンガ・匠賞についても今回は無しの方向で考えております。
自分が責任を持って管理できる範囲を考えての決断でした。ご理解いただけると幸いです。




それでは、これより『要素募集フェーズ』を始めます。質問は一人3回までです。


みんな さんか してね(=◜o◝=)
やきにく(=◜o◝=)
やきにく(=◜o◝=)
20年01月12日 21:01 [藤井] [はらこめし]
【新・形式】

今回、新ルールが2つあります。ご確認ください!

新・形式
正解を創りだすウミガメ
やきにく
No.1[靴下]01月12日 21:0301月12日 23:17

100円ショップで買いましたか?

YesNo どちらでも構いません

No.2[靴下]01月12日 21:0301月12日 23:17

田舎が恋しくなりましたか?

YesNo どちらでも構いません

No.3[靴下]01月12日 21:0301月12日 23:17

用心深い性格ですか?

YesNo どちらでも構いません

No.4[とろたく(記憶喪失)]01月12日 21:0401月12日 23:17

冷麺は重要ですか?

YesNo どちらでも構いません

No.5[きの子]01月12日 21:0401月12日 23:17

吊るすのは軒先にですか?

YesNo どちらでも構いません

No.6[とろたく(記憶喪失)]01月12日 21:0501月12日 23:17

肩を揉んだら筋肉痛ですか?

YesNo どちらでも構いません

No.7[とろたく(記憶喪失)]01月12日 21:0601月12日 23:17

言葉遊びますか?

YesNo どちらでも構いません

No.8[シチテンバットー]01月12日 21:0601月12日 23:17

どこからともなくゴングが鳴り響きますか?

YesNo どちらでも構いません

No.9[ごがつあめ涼花]01月12日 21:0601月12日 23:17

また、ですか?

YesNo どちらでも構いません

No.10[きの子]01月12日 21:0601月12日 23:17

ちょっと泣きそうですか?

YesNo どちらでも構いません

No.11[シチテンバットー]01月12日 21:0701月12日 23:17

消火器が登場しますか?

YesNo どちらでも構いません

No.12[ごがつあめ涼花]01月12日 21:0701月12日 23:17

真っ白の葉書は関係ありますか?

YesNo どちらでも構いません

No.13[きの子]01月12日 21:0701月12日 23:17

できることならまた会いたいですか?

YesNo どちらでも構いません

No.14[シチテンバットー]01月12日 21:0901月12日 23:17

メッッッッッッチャ甘いですか?

YesNo どちらでも構いません

No.15[耳たぶ犬]01月12日 21:0901月12日 23:17

南半球は重要ですか?

YesNo どちらでも構いません

No.16[耳たぶ犬]01月12日 21:1101月12日 23:17

通常より一オクターブ高いですか?

YES!! 通常より一オクターブ高いです!(乱数要素) [良い質問]

No.17[ごがつあめ涼花]01月12日 21:1201月12日 23:17

幸せがどこにあるのかは重要ですか?

YesNo どちらでも構いません

No.18[「マクガフィン」]01月12日 21:1901月12日 23:17

少しだけうらやましかったですか?

YesNo どちらでも構いません

No.19[「マクガフィン」]01月12日 21:1901月12日 23:17

もう一度だけなら許せますか?

NO!! 「もう一度だけ許す」ということは出来なかったのです!(★NO良質要素) [良い質問]

No.20[「マクガフィン」]01月12日 21:2001月12日 23:17

うまく言葉にできませんか?

YesNo どちらでも構いません

No.21[きっとくりす]01月12日 21:2201月12日 23:17

嵐を呼ぶおまじないをしますか?

YesNo どちらでも構いません

No.22[きっとくりす]01月12日 21:2201月12日 23:17

アイドルグループが解散しますか?

YesNo どちらでも構いません

No.23[きっとくりす]01月12日 21:2401月12日 23:17

20年前に戻りますか?

YES!! 20年前に戻ります!(乱数要素) [良い質問]

No.24[きっとくりす]01月12日 21:2601月13日 00:43

ごめんなさい質問しすぎました。 [編集済]

イイヨ!(=◜o◝=)

5

No.25[葛原]01月12日 21:2901月12日 23:17

観覧車が遠くに見えますか?

YesNo どちらでも構いません

No.26[リンギ]01月12日 21:3101月12日 23:17

ほんのり香りますか?

YES!! ほんのり香ります! [良い質問]

No.27[リンギ]01月12日 21:3401月13日 00:43

前日は焼き肉パーティでしたか?

YesNo どちらでも構いません。やきにくはいいぞ。

1

No.28[弥七]01月12日 21:3701月12日 23:17

青い色鉛筆ばかり買いますか?

YesNo どちらでも構いません

No.29[弥七]01月12日 21:3701月12日 23:17

熱帯魚に名前をつけますか?

YesNo どちらでも構いません

No.30[葛原]01月12日 21:3901月12日 23:17

傘が開きませんか?

YES!! 傘が開かないのです! [良い質問]

No.31[弥七]01月12日 21:4101月12日 23:17

髪型は7/3分けですか?

YesNo どちらでも構いません

No.32[HIRO・θ・PEN]01月12日 21:4701月13日 00:43

ほぽぽぽぽぽぽ ですか?

2

YesNo どちらでもぽぽぽぽぽぽぽ

2

No.33[えいみん]01月12日 21:4901月12日 23:17

宙に浮きますか?

YesNo どちらでも構いません

No.34[えいみん]01月12日 21:4901月12日 23:17

耳が遠いですか?

YES!! 耳が遠いです! [良い質問]

No.35[HIRO・θ・PEN]01月12日 21:5001月12日 23:17

くっし ますか?

1

YesNo どちらでも構いません

No.36[まりむう]01月12日 21:5101月12日 23:17

チョコが1個ももらえませんでしたか?

YesNo どちらでも構いません

No.37[まりむう]01月12日 21:5101月12日 23:17

わんこが可愛いですか?

YesNo どちらでも構いません

No.38[まりむう]01月12日 21:5201月12日 23:17

巨大マグロを釣り上げますか?

YesNo どちらでも構いません

No.39[HIRO・θ・PEN]01月12日 21:5301月13日 00:43

正直ボブとは思えないけど、ここは取り敢えずボブということにする ますか?

4

YesNo 正直どちらでも構わないんですけど、ここは取り敢えずどちらでも構わないということにします

3

No.40[特攻トマト]01月12日 22:0401月12日 23:17

左手は添えるだけですか?

YesNo どちらでも構いません

No.41[M]01月12日 22:0701月12日 23:17

高すぎますか?

YesNo どちらでも構いません

皆さまご参加ありがとうございます!
これより要素選定に入ります。しばしお待ちを~
お待たせしました。要素選定が完了しましたので、これより投稿フェーズに移ります!
要素一覧をまとメモに載せましたのでご活用ください。
★投稿の際の注意★

①投稿作品を、別の場所(文書作成アプリなど)で作成します。
質問欄で文章を作成していると、その間他の方が投稿できなくなってしまいます。
コピペで一挙に投稿を心がけましょう。

②すでに投稿済みの作品の末尾に終了を知らせる言葉の記述があることを確認してから投稿してください。
記述がない場合、まだ前の方が投稿の最中である可能性があります。
しばらく時間をおいてから再び確認してください。
[編集済]
③まずタイトルのみを質問欄に入力してください。
後でタイトル部分のみを[良質]にします。

④次の質問欄に本文を入力します。
「長文にするならチェック」がなくなりましたので、主催が長文許可を忘れてなければそのまま質問欄にて改行込みでのコピペが可能です。

⑤本文の末尾に、おわり、完など、終了を知らせる言葉を必ずつけてください。
No.42[きの子]01月13日 15:1801月14日 14:11

風鈴の人/全てはここから始まった

作・きの子 [良い質問]

No.43[きの子]01月13日 15:18未回答

【要約:風鈴を演奏する動画を配信するため】

箱を開けるとだいぶ薄くなった新聞のインクがほんのりと香った④。
まるで20年前に戻った③かのようなあの秋の終わりの田舎町で、
突然の雨に折り畳み傘が開かなくて⑤
途方に暮れていた自分に雨宿りするように言ってくれ、
窯の名物を見た途端に「演奏するのに使うので買います、送ってください」
なんて店中の風鈴の音を厳選しだし、
大量の風鈴を買う珍妙な依頼まで受けてくれた陶芸窯の人には頭が上がらない。

今回は通常使う1オクターブよりさらに高い①ものも用意し、
風が吹いて余計な音が鳴らないようにと
20個を超える大量の風鈴が室内物干し竿に並んだ。

以前別の物を使った動画を掲載後に見つかった演奏ミス。
それはごく些細なものだったけれど気づく人はいた。
動画を消そうと思ったけれど、多くの人の
「消さないで」という声で思いとどまった。
あんなミスをもう一度だけ許すなんて事はできない②。
そのために数ヶ月練習してきたのだから。

ここは最上階の角部屋で隣に住んでるお婆ちゃんも耳が遠い⑥し、
そんなに迷惑にはならなかったはずだ。

さぁ、リベンジ開始だ。
私は風鈴を鳴らすための棒をかざした。

【終わり】

回答はまだです。

No.44[リンギ]01月13日 22:3801月14日 14:11

難聴マダムとピアニスト

作・リンギ [良い質問]

No.45[リンギ]01月13日 22:38未回答

簡易解説:20年前知り合った難聴のマダムへ向けて、ピアノのコンクールが決まった時の目印として風鈴を吊るすことを決めた。それがいつしか女のルーティンとなり、ピアニストとしての仕事が決まるたび願掛けとして吊るしているから。

2月某日。
温暖化の影響をじわじわ受けるこの土地が、今日少し肌寒いのは、この雨のせいだろう。
風もなく垂直に降りしきる雨とともに、濡れたアスファルトが【④ほんのりと香る】。
女はそんな天気の中、室内になにかを吊るした。
てるてる坊主?…いや、違う。

「…よし。」

それは風鈴だった。ひどく鮮やかな色合いで、遠くからでも一際目立つだろう。
閉め切った室内で揺れることのない風鈴を、女は指でわざと鳴らしてみる。

ちりん。

【①通常より一オクターブ高い】音色に、耳を澄ませる。
その音を聞くたびに、女の思考は【③20年前まで遡る】。
女がまだ、『少女』だった時代だ。



確か、夏日。夏休み直前くらいだったか。
少女はその日、最高に機嫌が悪かった。
とにかく嫌なことが続いたのだ。

朝寝坊し、小学校に遅刻した。
給食は嫌いなものばかりだった。
体育の時間のとき、みんなの前で無様に転んだ。
やんちゃな男子たちに指をさされ、笑われた。

そしてついさっき、幼いころから習っているピアノのレッスンで、先生と大ゲンカした。

何度も何度も同じところでつまずいてしまう音色は、先生にとって【②『もう一度だけ許す』ことが出来ない】というところまで来てしまったのだろう。
売り言葉に買い言葉。
「やる気がないなら出ていきなさい!」という言葉に「じゃあもういい!!」と飛び出してきてしまったのだ。

そして極めつけが、

「~~~っなんで開かないのぉ!?」

小生意気にも愛用している【⑤日傘が開かない】。
真夏の夕方は昼間とさして変わりない。じりじりと突き刺すような暑さが、少女の苛立ちを増長させてゆく。

渾身の力を振り絞って無理やり日傘をひらこうとした、その時。

「もし?そんなことしたら、日傘がやぶれてしまうわ。お嬢さん。」

おっとりとした声にすら苛立ち、睨みつけるようにして振り向くと、そこにはお婆さんが立っていた。
なにぶん20年前なので顔立ちはすでにおぼろげだが、第一印象が「きれいな人だ」だったことは覚えている。
彼女も日傘を持ち、帽子も被ったまさに鉄壁。

その上品なマダムは、少女の形相に驚くことなく、言葉をつづけた。

「ここ、巻き込まれちゃってるの。それさえ直せば、ちゃんと開くようになるわ。」

彼女の笑顔に毒気を抜かれ、言われるがまま直すと、日傘はいとも簡単に開いた。
巻き込まれていることにも気づけないくらいに、少女の視野は狭くなってたようだ。

「あ、ありがとう…」

怒りが少しだけ落ち着き、ばつが悪そうに少女が礼を言うと、彼女はいいのよ、と笑った。




「…そう、災難続きだったのね…」

日陰ができる公園のベンチにて、少女はマダムにため込んでいた鬱憤を吐き出していた。マダムは嫌な顔ひとつせず、真剣に話を聞いてくれた。
マダムもピアノが好きで、家でよくピアノのクラシック曲を聴いているらしい。

「けれどお嬢さん、その怒りの感情は、ピアノを弾くうえでは案外貴重だわ。」

思いがけない言葉に、驚いた顔でじっとマダムの顔を見つめる。
ピアノに怒りの感情?まったく結びつかない。

「そうねぇ。例えばリストの死の舞踏やブルグミュラーの大雷雨なんかは怒りの曲として有名だけれど…」

貴方にはまだ早いかしら、と言われムッとする。確かに知らないが。

「私は昔から耳が悪くてね…歳を取ってからさらに【⑥耳が遠く】なってしまったわ。」

マダムの耳をよく見ると、穴になにか小さな機械がはめ込まれていた。
補聴器だろうか。

「でもね、本当にすごい演奏というのは、耳より先に心に届くものよ。」
「気持ちを乗せるなんて眉唾だと思うかしら。でもやっぱり、あるのとないのとじゃあ歴然とした差があるわ。」
「愛の曲、怒りの曲、葬送の曲…。作曲家も何かの思いを込めて曲を作るもの。それを表現できれば、きっと素晴らしい演奏になるでしょう。」

マダムの言葉に少女は居ても立ってもいられなくなっていた。
ピアノは技術だと思っていた。指運び、タイミング、強弱。それさえ完璧なら演奏も完璧に違いないと。けれどピアノはそれだけではないのだという。

初めての試みだが、今なら気持ちを演奏に乗せることができる気がするのだ。
身体が熱いのは、気温のせいか、それとも。

ピアノに触りたい。演奏したい。彼女の言うとおり、今の気持ちを音色に乗せて表現したい!

「おばあさん!」

気づけば大声でたちあがっていた。

「私の演奏、今度聞きに来て!」

コンクールが近々あるわけではない。全く未定のまま少女はそんなことを言い出していた。
マダムの名前も知らない、どこに住んでいるのかも、なんなら少女も名乗っていない。
それでも少女は言わずにはいられない。

「えっと、まだなんにも決まってないけど!もし日にちが決まったら、おうちに風鈴飾るから!1番目立つ奴!吊るすから!もし見つけたらきっと見に来て!私ぜったい、おばあさんの心に届けてみせるから!」

マダムは初めて驚いた表情をして、一言。

「…えぇ、きっと、風鈴を探して、聞きに行くわ。お嬢さん。」




その言葉がひどくうれしくて、頭を下げ、全速力で家に帰り、ピアノにかじりついた。
気持ちを乗せることを意識すると、面白いほど評価が上がった。
コンクールが決まるたび、少女は家の1番目立つ場所に風鈴を吊るした。
季節も風通しも無視した行動によく首を傾げられるが、そんなものはどうでもいい。

あのマダムにどうか届いてほしい。

けれど何回コンクールに出て、何回受賞しても、あのマダムが姿を現すことはなかった。





そして20年たった今、プロのピアニストとなった女は、コンクールやリサイタルが決まるたび、こうして風鈴を吊るしている。
いまやこの行動は、女の願掛けであり、初心に帰る象徴でもある。

あのマダムに出会わなければ、きっと今の自分はないだろう。
…マダムはもう、もしかしたら、もしかしてしまってるのかもしれない。

それでも、女はマダムに風鈴を捧げ続けるのだ。

もう一度、指でちりん、と鳴らした。
季節外れの美しい音色は、あの夏の日を呼び起こす。


女はいまだ、かのマダムに演奏を聴いてもらえる日を待っている。
【終】
[編集済]

回答はまだです。

No.46[耳たぶ犬]01月14日 22:2501月15日 02:10

深海から遠い夏まで

作・耳たぶ犬 [良い質問]

No.47[耳たぶ犬]01月14日 22:27未回答


【要約:海底の調査をするチームが、閉鎖空間の中で発狂しないようにするため】

ここは海底二万マイルにあるラッテラーテ国所属の潜水艦、【イヤ・ローブ】。
海底に眠るといわれる財宝や鉱物資源、歴史的価値のある遺物などの捜索を国家規模で行っている艦である。

ラッテラーテ国は周辺諸国との国境問題もあり、傘が開けない⑤ほどの狭い領海を有効活用したいと考えていた。

諸外国にバレないようにするため水や食料は数週間に一度の補給のみとなる。そのため、乗組員は週に一度しか体を洗わず…その…ほんのり香る④

そんなイヤ・ローブ艦だが、一風変わった四つの部屋が存在する。
そのうちの一部屋に風鈴は吊るされている。

事の発端は20年前、深海の調査が始まったころまでさかのぼる。③

深海の密閉空間、通信傍受の心配もあり外界との通信は必要最低限のみ。新しい発見など早々起こるはずもなく、非日常的な空間に置かれた乗組員の精神は徐々に摩耗していった。
そしてついに限界に達した彼らは発狂した。
一日中ニタニタと笑うもの、急にハッチを開けようとするもの、果てには自らの鼓膜を破くものまで現れた。
こうして第一回深海調査はさんざんな結果で中止となった。
彼らは今でも後遺症に苦しんでおり、特に鼓膜を破ったものは今でも耳が遠い。⑥

この事態を重くとらえた国の上層部は『このような事態の発生をもう一度だけ許すということはできない。』②として、潜水艦内にストレスを解消させるための空間を設けた。

そして出来たのがこの「季節の部屋」である。
春夏秋冬と四部屋存在し、その部屋の中では季節の風物詩を味わうことができる。
こうして彼らに季節を満喫することで閉鎖空間のストレスを解消してもらう…というのが狙いだ。

春ならば桜(押し花だが…)秋ならば紅葉(絵だが…)冬ならばかまくら風の狭い空間…といった感じの部屋の構成となっている。

夏には蝉の鳴き声.mp3が選ばれていたのだが、乗組員から「通常のセミより一オクターブ高くて耳障りだ」①という苦情が入り、2月からは風鈴を吊るすことになったのだ。
(ちなみにこの風鈴もリラックス効果を促すため、通常より一オクターブ高く設計されている。)


潜水艦の揺れに合わせて風鈴が鳴る。
乗組員たちは水圧の重さから解放され、遠い夏の風を感じていた。

【終わり】

回答はまだです。

1

No.48[こたこた2号]01月15日 23:0801月16日 14:00

時は風なり

作・こたこた2号 [良い質問]

No.49[こたこた2号]01月15日 23:09未回答

【要約】タイムスリップできる風鈴を使って復讐したいと考えたため


私は小学生の時、物置の奥に風鈴があるのを見つけた。キレイな見た目を気に入り、こっそり持ち出して部屋に飾った。

ある日、その風鈴は風もないのに音が鳴っているようだった。微かな音なので近付いて聞いてみると…風鈴なのに、それはそれは低い音を鳴らしていた。

私はあまりの低さにゾッとして、思わず目をギュッと閉じた。音が鳴り止んだようなので目を開けたら、そこは自分の部屋ではなくなっていた。
まったく知らない誰かの部屋になっており、私は混乱した。とにかくここがどこなのかを探るためあちこち情報を嗅ぎまわったところ、どうやら【③20年前の世界に来ている】ことが分かった。
どうすればいいか分からず、ひとまず風鈴のある部屋に戻った。
風鈴のキレイな柄が目について、何気なく風鈴に近寄ると…【④ほんのりと甘い香りがした】。
何の香りかなぁと目を閉じて考えていたら、気付いたら元の時代、自分の部屋に帰って来ていた。

私がこの風鈴に関する出来事を思い出したのは、現在高校で嫌いな奴に再会したからだ。

これまた小学生の時、私はそいつにある嫌がらせをされた。
その日の天気は雨で、私はお気に入りの傘を持ってきていた。しかし、そいつが【⑤傘が開かなくなる】ように細工をしたのだ。
頑張って無理矢理に開いた所、その傘は壊れてしまった。
あわや大喧嘩になるところを担任の先生がなだめて、予備の可愛い傘を貸してくれたことで、その場は収まった。

そして例のそいつは、高校生にもなって全く同じ嫌がらせをしてきたのだ。
いくらなんでも【②また許してやろうとは思えなかった】。
私は物置にもう一度隠しておいた風鈴を取り出し、季節に見合わないのは重々承知で部屋に飾った。

「過去のあの時に行けたら…あいつがトラウマになるくらいに、二度と私に嫌がらせなんてしたくなくなるくらいに怒ってやる…」

しばらくすると、風鈴は微かに音を鳴らし始めた。しめた!とその音をよく聞いてみると…あの時に聞いた低い音とはまるで違う。【①むしろ風がある時の通常の音より、一オクターブ高い】ような………

気がつくと、そこは自分の部屋のままだった。しかし、何かが違うような気がした。嫌な予感がして、かつてのように情報を嗅ぎまわる。
ここは、元の時代の10年後…つまりは未来だった。
どんなに不思議な風鈴だからって、都合よくいくわけがなかった、ということだ。なんだか呆れてしまった私は風鈴の甘い香りを嗅ぎ、元の時代に戻った。

後から私は冷静にこう考えた。私は過去にも未来にも行けるという危険な代物を、たかだか嫌いな人に仕返しするという目的だけで使おうとしたのだ。
風鈴はまた物置に隠しておくことにした。風鈴にとっては三度目の物置である。

あれから何年も何年も経った今、私はあの風鈴をまた部屋に飾っている。【⑥耳が遠くなった】私には、風がない時に奏でられる微かな音はもう届かないのだ。やっとただの風鈴として楽しめる。


【終わり】 [編集済]

回答はまだです。

No.50[シチテンバットー]01月17日 20:3701月19日 02:22

2月2日日曜日のLTW特別興行

作・シチテンバットー [良い質問]

No.51[シチテンバットー]01月17日 20:40未回答

【簡易解説】
プロレスで目隠しマッチ(両者共に視界を封じられた状態の試合)をしてる途中、どさくさに紛れて風鈴を対戦相手の衣装に付けた。
これで視界が封じられてても音を頼りに相手の場所を把握できる、という狙いがあった。
会場内には当然風が通らない。

【簡易じゃない解説】
「さあLTW主催特別興行『Fight 2 KIsaLLagi~鬼は外!勝つのはウチ!~』も残すところあと二試合となっております。引き続き実況は海見戸蘭、解説は元丸々井レスリングの元世界王者である78バテオさんにお越しいただいております。バテオさん引き続きよろしくお願いします」
『こんばんは。よろしくお願いします』
「しかしバテオさん、分かるでしょうか。この会場の熱気!会場となった出募野市民体育館が爆発してしまいそうです」
『ええそうですね。今年一月の中旬からタッグ戦線を蹂躙し続けてるデーモンコア・ブラザーズ。彼らは常に観客や対戦相手を恐怖に突き落とすようなキャラクターと思われていましたが、今日は少し違いましたね』
「ええ、タートルネックスを相手とした今回の試合、何と鬼の格好をしナマハゲコア・ブラザーズとして登場しました。さらに反則無しなのを良いことに豆を相手に投げつける始末。来日して半月ほどですが、早くも日本文化への適応を見せております」
『普通鬼は豆ぶつけられる側ですし、そもそもナマハゲは鬼ではないんですけどね』
「しかしそこは横暴ファイトで知られる彼ら、最後の最後でなんと金棒を取り出しフルスイング!勝利を決定付けました。試合後には仕切りに『悪い子はいねーかー!!』と叫んでましたね」
『『悪い子はお前らだろ!』と観客に突っ込まれてましたね』
「観客からの野次は耳が遠い振りをしてやり過ごした二人でした⑥。さてセミメイン戦には昨年の12月、念願のWTL女子王座を獲得したビッグインシデント香織選手が登場します」
『ええ、王座を戴冠してからはエキサイトなファイトスタイルにさらに磨きがかかりましたね。特に1月19日に行われた前回の特別興行『スケートリンクより冷たく暑いプロレスリング~大寒に耐寒して戴冠を体感せよ~』でのカピバラフェイス京子との一戦は国内外から称賛の声が上がるほどの名試合となりました。今日は王座がかかってない試合なんですけど、彼女にとっては防衛戦と同じくらい重要な試合と思ってるでしょう』
「ええ、以前から悪即断をモットーに掲げている香織選手、王座獲得後もこれを一貫し続けていましたが、そんな彼女に大事件が発生しました。彼女の親友であるキイナ選手。彼女が突如ディーバ・メランコリー率いるウォレット・クラブが襲撃。右脚を負傷し一時的に戦線離脱となってしまいました」
『ウォレット・クラブといえばアメリカで活動している3名の悪女軍団。現地では横暴極まりない集団として知られておりますが、まさかの電撃来日となりました』
「香織選手は当然激怒。ウォレット・クラブリーダーのメランコリー選手と対戦することになりました。その際に試合形式を一般の皆様から募集し抽選となりましたが、選ばれたのはまさかの『武器持ち込み目隠しマッチ』という訳の分からんシロモノでした」
『変則的にもほどがありますよね』
「それではルール説明です。武器持ち込み可能、試合中は黒いピッチピチのアイマスクの着用が義務付けられています。基本的にはNoDQ、つまり反則無しですが、試合中に故意に自らの目隠しを取ることは禁止されています」
『『故意に自らの』と言ってるのは、以前相手の目隠しを取ることで反則勝ちを狙おうとした事例が影響してるのでしょうか?』
「おそらくその通りでしょう。そしてそれに加えて第三者の試合への直接的な介入も禁止されています。具体的に言いますと試合中の選手への攻撃はアウトということです」
『ウォレット・クラブへの対策ということでしょうか?』
「そのようですね。・・・さあ流れて参りましたビッグインシデント香織の入場曲!そして現れましたWTL女子王者!肩にかかっているのは輝かしいチャンピオンベルト!あの聖夜の決戦から一ヶ月と少しが経過しました。今や伝説となったブレイカー七海との王座戦、その後も強敵相手に何度も防衛を重ねてきました。今回は王座は賭けられていません。しかし彼女は言いました。王座が賭けられてなくてもプライドは賭けられている。親友のために、自分のために、ウォレット・クラブは誰一人として許すわけにはいかない、そう語っていました香織選手!さあコーナーポストからベルトを高々と掲げた!観客席から大歓声が飛んでおります!」
『完全にこの団体の顔となりましたね香織選手』
「そうですね、誠に頼もしい限りです。・・・そしてウォレット・クラブの入場曲が流れ始めました。途端に会場は大ブーイングに包まれます!」
『まあこれは仕方ないでしょうね』
「そして現れましたウォレット・クラブ!向かって左側にキャサリン・メイ、右側にジェシー・カーター、そして真ん中にはリーダー、ディーバ・メランコリー!黒い衣装に身を包んだ悪女軍団が悠々と花道を進んでおります!そして今リングイン!」
『香織選手、ずっとメランコリー選手を睨み付けてますねえ』
「さあ先程も言いましたように今回は武器持ち込み可能ですので両者ともに武器を持ち込んでおります。香織選手はウォレット・クラブの入場中に袋をコーナーポスト付近のリング下に置きましたね。何でも持ち込める割にはそこまで大きくないように思えますが」
『そうですね。対するメランコリー選手の袋は非常に大きいのですがねえ』
「そしてメランコリー選手は早くも袋から竹刀を取り出しました。そしてレフェリーによってアイマスクが装着されました。さあゴングが鳴りました試合開始です!」

「試合開始直後ですが、やはりお互いに探りあってる感じですね」
『ええ、プロレスに限らず格闘技において視覚は極めて重要ですから、それが制限されてるとなると大きく動くことは出来ないですよね』
「そしてメランコリー選手、竹刀を杖の要領で使っております。これで香織選手と接触した際に相手がどこにいるか察知しやすくなります」
『これは考えましたね。しかしレフェリーは巻き添えを恐れて二人からだいぶ離れていますね』
「普段はレフェリーへの攻撃はそれほど起こらないのですが、今回は頻発する可能性がありますからね。さあ二人が肉薄してきた。おっと竹刀が触れた瞬間香織選手の蹴りが炸裂した!そしてすかさず相手に掴みかかる!」
『これは相手の狙いを読んでいたみたいですね。しかし視覚が制限されているからかかなり荒々しいファイトとなっております』
「いつもの香織選手はほんと華麗という言葉が似合うファイトスタイルなんですがねえ。さあメランコリー選手が香織選手を突き飛ばした。通常なら両者共にそこから追撃が狙えますが、今回ばかりはそうはいきません。メランコリー選手、手探りでロープを掴みヨタヨタとリングを降ります」
『おっとメイ選手とカーター選手がメランコリー選手の所へ集まりましたね』
「二人が呼び掛けておりますメランコリー選手も気付いた様子・・・メランコリー選手何かを言っておりますが、おっとメイ選手、カーター選手を残して一目散にホールを出ます。猛ダッシュです」
『これはメランコリー選手が何かしらの指示を受け取ったということでしょうね』
「さあメランコリー選手、またヨタヨタとリングへと戻ります。竹刀は一連の攻防で落としてしまいました。再び拾うすべもありません。ここからまた両者探り合いです」

「さあ試合開始から10分経過しました。少々香織選手が劣勢と言えるでしょうか」
『ええ、メランコリー選手はグラウンドの攻防が得意ですから、一度掴みかかることが出来ればそこから得意技を繰り出すことが出来ます。対して香織選手はアクロバティックな技が多いのですが、視界が制限されている状態ではそういったものは繰り出せません』
「先程もメランコリー選手に腕十字を決められていました。さあまたメランコリー選手が掴みかかるが、おっと香織選手がヘッドバット!ガッチリと組み付いて離さない!ヘッドバットを連続!!会場が大いに盛り上がります!!」
『香織選手がヘッドバットとは珍しいですね』
「さあようやく相手を解放しました。十発は放ったでしょうか。さすがにメランコリー選手もグッタリとしております」
『近くにあったロープを探って立ち上がりましたね』
「おっとここで香織選手がドロップキック!!すぐさま立ち上がりましたがさらにドロップキック!!倒れた相手にレッグドロップ!!!」
『急にスタイルが変化しましたね』
「ええ我々がよく知っている香織選手のファイトスタイルです。メランコリー選手、目は隠されていますが明らかに困惑しているのが伺えます。そしてフライングボディアタック!フォールしますがカウントは2!」
『いきなりアクロバティックになりましたねえ・・・あっ背中!背中を見てください!』
「おっとメランコリー選手の背中に!風鈴がぶら下げられている!先端につけた安全ピンでメランコリー選手の服に固定している!季節外れの風鈴がチリンチリンと鳴っております!香織選手がまたしてもランニングボディアタック!!メランコリー選手何とか起き上がりましたが、その度にチリンチリンと風鈴の音がする!風も通らない出募野市民体育館に風鈴がチリンチリンと鳴り響く!チリンチリンと鳴る度に香織選手の攻撃が炸裂する!【問題文】」
『音を頼りに相手の位置を探り当てるとは考えましたね。しかしこれほどの歓声の中で風鈴の音を聞き取れるとは流石の集中力』
「さあ一気に形勢は逆転しました!リングサイドのカーター選手、慌ててスマートフォンを操作しております!」
『たぶん何かしらの連絡をしてるのだと思いますね』
「しかしメランコリー選手時間の問題だ!これは力尽きるのも時間の問題か!さらに脚へ攻撃を仕掛けていく!」
『これは完全にペースを掴みましたね』
「おっとここでメイ選手が戻ってきた!戻ってきた!袋を持って・・・スーパーの袋?」
『海亀スーパーと書いてありますね』
「この会場から徒歩5分の海亀スーパーに急遽買い出ししたのでしょうか。さあ袋を受け取ったカーター選手、取り出したのは・・・風鈴!風鈴です!香織選手と同じく風鈴を使います!そしてリングに近付き、風鈴を揺らす!鳴り響く風鈴の音!これは香織選手、混乱している!作戦が仇となったか!」
『これはよく考えましたね』
「香織選手の真後ろにはよろよろと立ち上がるディーバ・メランコリー!チリンチリンと音がする!しかし目の前にはエプロンに立ち風鈴を揺らすジェシー・カーター!攻撃ではないため注意することしか出来ないレフェリー!これはマズイ・・・おっとこれは!」
『おっとこれは凄い!』
「香織選手!少し迷いながらも真後ろのメランコリー選手にラリアット!よく気付きました!」
『カーター選手もまさかと言いたげな表情ですね』
「メランコリー選手よろめき動く!そして真反対の方向でカーター選手が風鈴を鳴らす!しかしそれには耳も貸さず敵まっしぐら!カルカンもビックリ!」
『おっとよく見てください』
「どうしましたか?」
『よく見ると二つの風鈴が違います。カーター選手のはよく見る普通の風鈴ですが、香織選手が付けたものはそれより小さいですね』
「なるほど!大きさが違う故に音程が違ったために判別できたのですね!」
『はい、香織選手が所持してた方が大体一オクターブ位高いですね①』
「これは助かった香織選手!作戦を逆手に取ろうとする発想は見事でしたが、さすがに大きさや音色を揃えることは出来なかった!メイ選手の指摘でようやく気付いたカーター選手、しかし今から買い出しに戻ることは出来ない!その前に試合が終わってしまう!」
『メランコリー選手がかなり劣勢ですからね』
「おっとメイ選手、エプロンに上がってレフェリーにイチャモンをつけてますが・・・あっと何ということだ!!!」
『これはマズイ!!!』
「卑劣なりウォレット・クラブ!!!メイ選手がレフェリーの注意を惹き付けている間にカーター選手がビニール傘で香織選手を殴打!!!そして背中に風鈴を取り付けた!!!さらにメランコリー選手の風鈴も外していく!!!」
『レフェリー何やってんだよ!!』
「当然これは反則行為!!即座に香織選手の反則勝ちとなるところです!!しかし肝心のレフェリーは気付いていない!!!イチャモンを続けたメイ選手に対して退場命令を下したレフェリー、しかし本懐は遂げられてしまった!!!」
『もうこれはね、ホントにありえない』
「勝ち誇った顔でエプロンを降りたメイ選手とカーター選手!!これは大ピンチだ!!頼りの風鈴が無くなり、逆にこちらに取り付けられた!!」
『香織選手もね、何をされたか分かってると思いますよ』
「しかし分かってもどうすることも出来ない!上手い具合に手が届かない所に付けていきました!ゆらりゆらりと立ち上がる香織選手!リンリンと風鈴が鳴り響く!さあメランコリー選手が・・・おっとこれはどうした!?」
『おっとこれは?』
「メランコリー選手、明後日の方向へ歩き出した!ダメージでフラフラなことを考慮しても香織選手に向かって歩いてるとはとても思えない!!」
『カーター選手の顔が曇りましたね』
「異変に気付いたカーター選手、リングサイドから声を上げるが・・・メランコリー選手、リング内から耳を傾けるポーズ!!カーター選手声を大きくしメランコリー選手も近づいていくが、おそらく通じてない!!リングから身を乗り出してまで耳を傾けてるがおそらく聞き取れてない!!!何とメランコリー選手、絶望的に耳が遠い⑥!!!」
『これはちょっと・・・』
「最早身を乗り出すどころか完全にエプロンに立ってる状態なのに聞き取れてない!!このブーイングの嵐を考慮しても絶望的な聴力!!カーター選手、これには愕然!!ゆっくりとリングから降りたメランコリー選手にフェイストゥフェイスでカーター選手が指示を出しますが・・・ここでレフェリーから注意が入ります!!」
『本日のレフェリーは巻駒礼子さんです』
「カーター選手とレフェリーが言い争うが・・・香織選手のトペ・コンヒーロ!!!ウォレット・クラブの二人とレフェリーをなぎ倒していく!!!メランコリー選手に対して耳がよく利く香織選手、カーター選手の怒鳴り声を聞き逃さなかった!!!」
『これは凄い!!!』
「しかし自らも客席のフェンスに激突!これは両者大ダメージ!!リングサイドに横たわります!!レフェリーも起き上がれない!!・・・おっと、カーター選手が怪しいぞ?」
『何かしていますね』
「マスクをしながらミキサーを取り出して・・・水を入れて・・・何と納豆を取り出した!そしてミキサーに投入!次は何とくさや!!これもミキサーへ!!!最後に取り出したのは・・・ドリアン!!!袋から取り出した瞬間、会場から悲鳴が上がった!!!それもミキサーへ!!!そしてスイッチオン!!!その間両選手はまだ立ち上がれない!!!」
『いやいやこれはマズイ!』
「そして袋から・・・水鉄砲を取り出した!!そして出来上がった地獄の悪臭液を流し込んでいく!!!」
『ダメダメダメ!!!ヤバイって!!!』
「会場が騒然としている!!歓声でもブーイングでもない、異様な悲鳴や叫び声があちこちから漏れている!!!」
『止めて止めて!!』
「しかしレフェリーは未だに立てず!!止めることが誰も出来ない!!カーター選手が高笑いをしながらシャコシャコを始めたあ!!!」
『ダメダメ!!ダメだって!!』
「誰かこいつを止めてくれ!!しかしレフェリーは横たわったまま!!そして限界までシャコシャコしきった水鉄砲!!高笑いをしながら香織選手に標準をあわせる!!!」
『マズイよ!!』
「・・・しかしここで香織選手がランニングボディアタック!!水鉄砲を取りこぼした!!」
『あぶねー!!あぶねー!!』
「助かりました!!会場からは安堵の声が広がります!!カーター選手にとっては高笑いをしてたのが仇となりました!!・・・おっと待ってください!!」
『待って待って待って!!!』
「香織選手が水鉄砲を拾い上げた!!おそらくそれが水鉄砲であることには気付いたでしょう!!しかしその中身は知る由もない!!普通ならこの悪臭液を放とうとは思いません!!!しかし目隠しされていた香織選手!!!これがバイオハザードを引き起こす水鉄砲であることを知らない!!!」
『止めろー!!止めろー!!』
「会場からは再び悲鳴!!止めろとの野次も聞こえてきます!!・・・しかし香織選手!!無情にも水鉄砲を構えたあああ!!!」
『無理無理無理!!ダメダメ!!!』
<ノー!!ノー!!プリーズストップ!!!
「悪臭液を作った張本人、思わず命乞い!!しかし香織選手は聞く耳を持たない!!むしろカーター選手に照準を合わせた!!!カーター選手、傍らにあったビニール傘を拾い上げる!!・・・しかし開かない⑤!!!傘の防御で直撃を避けようとしたのでしょうが開きません!!!先ほど反則を犯してまで香織選手を殴ったツケがここで!!!まさしく自業自得!!!因果応報であります!!!」
《お下がりください!!!危険ですのでお下がりください!!!》
「場内アナウンスが響き渡る!!!観客から止めろと声が飛ぶ!!!しかし香織選手が耳にしてるのは、等しく無意味の怒号のみ!!!」
『そんなこと言ってないで止めて・・・止めろおおおおおおお!!!!!』
「香織選手がああああ!!!!!四方八方へ悪臭液を放射!!!!!何ということだ!!!!!阿鼻叫喚!!!!!阿鼻叫喚であります!!!!!無差別射撃!!!!!悪臭液を無差別に!!!!!最前列の観客が逃げ惑う!!!!!LTW創設以来、前代未聞の大惨事!!!!!悶絶であります!!!!!直撃を避けられなかったウォレット・クラブ両名悶絶!!!!!マスクなど無意味であります!!!!!」
『マズイってこれ!!!!!ダメだよ!!!!!』
「惨劇の現場はリングを跨いで実況席とは真反対のリングサイド、かなりの距離ですが、それでも我々もほのかに感じるこの刺激臭④!!!しかし香織選手も苦しんでいる!!!水鉄砲を落として倒れこんだ!!!地獄の悪臭からは開放した本人も呑み込んでいく!!!」
『試合続けられんの!?』
「ここでガスマスクをしたスタッフ登場!!!リセッシュを吹き散らかします!!!それでも完全に除去できないおぞましい臭い!!!」
『ガスマスクありませんかね?』

「えーお騒がせしました。先ほどの悪臭ですが、スタッフ10人動員し3分かけてリセッシュ78本消費してようやく収まりました。当然ですが、その間も試合は続いています」
『ですが一連の事件における彼女たちのダメージは根深いですよ』
「しかしよろめきながらも立ち上がる!!!香織選手!!!そしてエプロンづたいに歩いて、コーナーポスト付近のリング下を漁っている!!!」
『この辺に持ち込んだ武器置いてありましたからね』
「そして袋を掲げた!あまり大きくないが、何が入っている?」
『おっとメランコリー選手、たちあがりましたね』
「一連の出来事からリングサイドで半死半生となっておりましたメランコリー選手、ようやく立ち上がってヨロヨロとリングイン。ほぼ同時に香織選手も反対側からリングイン」
『メランコリー選手、声をあげていますね』
「気合い入れの雄叫びか、ダメージからの呻き声か、しかしいずれにせよ香織選手に対しては悪手!!」
『香織選手が近付いていった!!』
「そして香織選手が袋で殴打!!同時に倒れこみます!!最早お互いに虫の息!!」
『次大きい一撃決めた方が勝ちますね』
「おっとダメだダメだダメだ!!!カーター選手、パイプ椅子片手にリングイン!!!狙いは当然香織選手!!!」
『最悪だよほんと最悪だよ!!!』
「まだダメージが残ってるのかよろめいている!!しかしよろめきながらも憤怒の表情で香織選手を睨み付ける!!香織選手はまだ起き上がれない!!!」
『誰か止めろよマジで!!!』
「カーター選手、パイプ椅子を振り上げ、無情の一撃が・・・おっと止めた止めた止めた!!!復活のレフェリー、間に割って凶行を止めました!!!」
『よーしよしよしよくやった!!!』
「パイプ椅子を取り落とす!!!懇願するカーター選手!!!しかしレフェリーから正義の制裁いいいい!!!退場命令!!!退場です!!!一度反則を見逃がされてしまったが、もう一度許されることは出来なかった②!!!」
『やったやったやった!!!』
「さあその間に立ち上がる香織選手!!袋片手に、袋をひっくり返し・・・何ということだあああああ!!!???」
『嘘だろお前!!?嘘だろ!!!』
「香織選手が持ち込んだもう一つの武器!!!それは大量の画鋲!!!大量の画鋲であります!!!」
『ああマズイマズイマズイ!!!』
「しかし香織選手を探し当てたメランコリー選手!!!必殺のスリーパーホールド!!!ガッシリと脚を胴に回している!!!倒れたら一巻の終わり!!!まさにビッグインシデント!!!」
『耐えろ耐えろ耐えろ!!!』
「何とか耐えている何とか耐えている!!!しかしこのままでは力尽きるのも時間の問題!!!よろめきながらも、先ほど撒いた画鋲を踏みながらも、必死に耐えている!!!」
『危ない危ない!!!』
「香織選手、前屈みになってメランコリー選手を背負う形となった!!何とか倒したいメランコリー選手との攻防!!・・・ロープを掴んだ!!トップロープを掴んで自らの体を支える!!・・・そしてセカンドロープに足をかけた!!これはまさか!!?」
『え!?マジで!?』
「セカンドロープに両足をかけて・・・飛んだああああああ!!!!!画鋲の海へ!!!!!ビッグインシデント香織!!!組み付いて離れないディーバ・メランコリーを押し潰すように飛んだ!!!そして飛んだ場所には先ほど画鋲!!!」
『こーれはとんでもないダメージ!!!』
「悶絶!!!背中に画鋲を突き刺されたメランコリー選手、最早のたうち回る体力も残ってないながらも悶絶している!!!」
『ちょっと待って待って!!』
「さあ何と立ち上がった香織選手!!ロープづたいにコーナーへ登った!!」
『いやこれはマズイでしょ!!?』
「視界が封じてる中とんでもないリスクを背負おうとしている!!!しかし彼女のファイトスタイル、常にハイリスクハイリターン!!!悪を滅ぼすためならば、手段を選ばない、例え自分の身を滅ぼすことになっても!!!そういう人間です!!!」
『マズイって!!』
「さあ立ち上がった!!必殺、閃光のムーンサルトおおおおおおお!!!!!飛んだああああああ!!!!!決まったああああああ!!!!!カウントスリー!!!」
『すげえ、すげえよ』
「苦しみながら、傷付きながらも、王者としてのプライドを守り、友の仇を討ちました!!!」
『あ、おいおいおいおい!!!』
「あああ、何と!ウォレット・クラブが戻ってきて香織選手を襲撃!!試合が終わった直後でまだ目隠しも外してない香織選手をいたぶっていく!!」
『冗談じゃねえよまじで!!』
「目隠しを外したメランコリー選手、グロッキーながらも何とか立ち上がり、鬱憤を晴らすかのように香織選手にストンピング、香織選手立ち上がることが出来ない!さあそしてこの指の構えは!!メランコリー選手、親指を下に向けた!!これは"処刑"の合図!!メイ選手とカーター選手が構える!!キイナ選手を欠場に追い込んだダブルパワーボムの体制だ!!試合でメランコリー選手を葬った画鋲の海へ落とそうとしてる!!おっと誰か来た!!」
『誰か来ましたね?』
「あれは欠場中のキイナ選手!!松葉杖を突きながら懸命に花道を進んでいく!!キイナ選手に気付いた二人が構えを解いた!!」
『いや無茶だよこれは』
「何とかリングイン!!ウォレット・クラブと親友の間に割って入る!!」
『でもどうすんの?抵抗できないじゃん』
「しかし睨み付けるのがやっと!!ウォレット・クラブ、抵抗できないキイナ選手を嘲笑う!!あっとなんと!!キイナ選手に対して"処刑"の合図!!」
『おいおい怪我人だぞ!?』
「これはキイナ選手絶体絶命!!・・・おっと!?」
『どうした?何があった?』
「突然照明が暗転してしまいました・・・あ、照明が戻りましたね・・・おっとこれは!?」
『うわあマズイ!!』
「ブレイカー七海!!前LTW女子王者その人です!!聖夜の一戦から欠場していた極悪非道のブレイカー七海が再びリングに!!メランコリー選手、両腕を広げて歓迎のポーズ!!」
『・・・おっと?』
「しかし反応を示さない、メランコリー選手少し戸惑って・・・あっとスーパーキック!!!七海選手メランコリー選手にスーパーキック!!驚きを隠せない残ったウォレット・クラブの両名!!キイナ選手、香織選手も驚いている!!」
『こんなことがあるの!?』
「二人がかりで七海選手を襲撃・・・はね飛ばした!!あっという間にはね飛ばした!!数的不利を物ともしないパワー!!そしてメイ選手にスーパーキック!!カーター選手のラリアットを避けてスーパーキック!!!・・・何と!?仮面に手をかけて・・・仮面を外した!!!残虐の象徴である仮面を自ら外した!!!」
『凄いよ!?どうなってんの!?』
「会場が騒然としている!!信じられない光景を目にしている!!あの悪辣ブレイカー七海が人助け!!自らの心も未来も光も封じ込めていた仮面を捨て、極悪の名をも捨て、悪女軍団のウォレット・クラブを排除しようとしてる!!そしてカーター選手の喉を掴んだ!!これは必殺の、チョークスラムううう!!!画鋲の海へえええ!!!」
『うわあああ!!マジかよ!!』
「一体何が起こってるんだ!?何が起こってるんだ!?我々にもとても信じられません!!七海選手リングアウト!!花道から会場を去っていきます!!帰ってきたのか!!?希望や未来を疑わず前を向き猪突猛進する快活な七海選手が帰ってきたのか!!?」
『どうなってんだよこれ!?』

「いやーそれにしてもバテオさん、試合内容もさることながら、まさかの結末が待ち受けていましたね」
『ええ、まさかあの七海選手が帰ってくる・・・かもしれない、と思えるとは。もう二度と見ることが出来ないと思ってましたから』
「ええ、ブレイカー七海となって以降の暴虐さといったら、本当に豹変としか言いようがないほどでしたね」
『本当にそうですね』
「えー、ここでお知らせです。8日と15日の二回の通常興行を挟みまして、次回のLTW主催特別興行は23日に田取市民体育館にて行われます。興行名は『Snowman's Brawl~諦めの悪い子はいねえか~』です。皆様のご来場お待ちしております。またこの特別興行の実況解説も私とバテオさんが担当いたします」
『よろしくお願いします』
「さて、興奮冷めやらぬ出募野市民体育館ですが、まだメイン戦が残っています!時を遡ること20年③、かつてLTWの二大エースと呼ばれたレスラーがいました。その名前は"鉄人"こと垣田浩二、そして朝原修一。その二人がこの王座をかけて争ったのが2000年2月6日の特別興行。この一戦は知る人ぞ知る伝説の一戦となりました。今もなおこの試合が団体の歴史全ての試合の中でのベストバウトと呼ぶ人も数知れず。そして現在2020年、元号が平成から令和へと変わり、かつてのエースは父親に、かつての子供は屈強なレスラーに成長を遂げた!そして今、再び伝説の一戦の幕が上がる!激戦は必須!LTW世界王座戦、チャンピオン鋼拳骨vsチャレンジャー朝原義人!まもなく選手入場です!!」

【了】

回答はまだです。

No.52[夜船]01月18日 00:0801月19日 02:22

第:そして落ちゆく

作・夜船 [良い質問]

No.53[夜船]01月18日 00:09未回答

簡易解説

感覚の薄くなってしまっていても大切な人が返ってきたことに気付けるようにするため

本解説

あの日、いつもとは違う音が見慣れてしまったこの世界に鳴り響いた。
風を切るような音 
うねるような轟音
耳をつんざく炸裂音
そんな音はもはや日常だった。
いや、これに慣れてしまってはいけないと理解はしている。
理解しているからこそ慣れている自分が嫌だった。
そんな日々が繰り返されてきた。
しかしその日に響いた音は違った。
いつもよりも何段階も高い音
耳が切り裂かれるように感じる
慌てる間もなくその音は止まる
そうして視界は血の色に塗り替わった。



はっきりと自分の死を認識した。
そんな現実のような明白な夢。
その夢の記憶もおぼろげになってきたころ漸く自分が眠ってしまっていたことに気付く
「あらあら私ももう年かしらねぇ」
そんな風に嘯いて手元で開いたままになっている本をぱたんと閉じる。
閉じた本を自分の顔の近くに持ってくるとふわっと香の香りがする。
「おはようございます大奥様」
「おはよう。貴美さん。今日もあの人は帰ってこなかったわねぇ」
「仕方のないことですよ。旦那様も大変忙しいですから。」
「あの人が残してくれた風鈴が鳴るのはいつになるのかしら。」
「気長に待ちましょう。危険な仕事でもないのですから。」
そうやって家政婦さんとのんびり話して今日もまた一日を終える。



一度だけ冗談めかして真実を伝えようとしたことがあった。
それは私が彼女に風鈴を送った時のことだ。
ほんの少しの冗談で
「もう帰ってこないかもしれない...」と。
そういうと彼女は
「ん?なんだって?」
と聞き返してきた。年齢の影響もあるのかと思い繰り返そうとすると
少しも言わないうちにもう一度
「ん?なんだって?ごめんなさいね。年のせいか耳が悪くなってきていてねぇ」
と妙な気迫を込めて繰り返してきた。もう一度言っても同じ反応が返ってくるだけだろう。
私は思わず
「何でもないですよ...」と繰り返し、そう言えば!と話をそらすように
風鈴を取り出し彼女に渡した。
私からの手紙を受け取った彼女は大変うれしそうに
「これであの人がこっそり帰ってきてもちゃんと迎え入れることができるわね!」
と笑っていた。
私の心は罪悪感で満たされていた。



彼女が待つあの人はもう帰ってこない。
落下傘が開かず訓練のさなか死んでしまったと聞いた。
彼女自身もその連絡は聞いていたはずだったと思う。
しかし彼女はそれを受け入れなかった。
だから私はそれに従うことにした。
あくまで私は彼女の家政婦。彼女の生きる希望があるのならそれに越したことはない。
こんなことが続いて20年にもなる。
はたから見ればこんなのは狂気の様だろう。
しかしこれは私たちにとっては生命線なのだ。
20年前彼が死んでいなかったらどれほど幸せだっただろうか。
そんなことを考えながら私は今日も彼女に言うのだ

「明日は帰ってくるといいですね」

と。

回答はまだです。

No.54[Hugo]01月18日 03:0401月19日 02:22

■■■■という概念についての考察

作・Hugo [良い質問]

No.55[Hugo]01月18日 03:04未回答

■簡易解説
 楽しかった子供の頃を懐かしむため。
 夏になると日差す縁側に風鈴が吊るされる。まだ小さかったときは両手に重たい西瓜を抱えてそこまで歩いていき、包丁で西瓜を割ってもらって食べた。
 アパートの部屋に吊るした風鈴では鳴るわけがないが、どうしてもそのときの記憶が恋しくなったのだ。

■本文
 暖冬だという。二月だというのに降るのは雪ではなかった。
 開かなくなった傘はコンビニの傘立てに捨ててきた*。まあ、ひょっとしたら、誰かの役に立つかもしれない。雨は依然しとしとと降ってくるので、似合わない色のチェスターコートが水気をまとってしまう。
 歩みは重たい。日を増すごとに、自宅へ帰るのが怖くなっているのだ。古いアパートだというのに隣の部屋から音が聞こえたことはない。孤独が人を苛むのだろう。
「孤独ね」
 寒いが暖房をつけるとあちこちが結露して大変なのだ。大抵は毛布にくるまってやり過ごしている。身体を小刻みに振るわしながら、適当な冷凍食品をレンジに放り込んだ。
 テーブルの上はとっちらかったままだ。何があるのかろくに分かりゃしないが、とりあえず夕食をのせるだけの空間を確保したい。腕を使って適当に除けると、冷たい灰皿が肌に触れた。

 もとから寂しかった部屋、今では家具も私物も半分くらいになってしまった。緩やかな死を感じた。もうお金もないのだし、最後くらいパーッと散財しようかしら、と自棄になって街に飛び出すことにした。
 装いだけは綺麗に繕っていても、分かる人には分かるらしい。ネオンの光が私の本体を暴き出す。こっちに来ないか、と手招きをしてきた男がいた。
「あんた、いい気分になりたかないか?」
「ちょっとした金がありゃ、それで十分」
「これはな、■■■■って代物なのさ。ほんのり香る幸せな記憶って意味*。洒落てるだろ」
「あんたにも良い時代があったんじゃねえのか、あ?」
 憂鬱に酔い、もう殆んど何も聴こえていないくらいだったが*。躊躇う理性と裏腹に、手を伸ばしていた。悪魔との取引き、ジェットコースター落下直前の高まり。使いかけのライターならアパートにあったはずだ。

 水面の揺らぎが運ぶ光のように、それらはやってきた。チリンと涼しげな風鈴が、軒を支える柱からぶら下がっている。灰色がかった記憶はやがて色彩を帯びた。
『西瓜冷えとるで。持ってって食いな』
 穏やかな声が私を呼んでいる。とうの昔に死んだはずのばあが、ふくよかな笑顔で台所に立っていた。そうか、私は二十年前の、幸せなあの日にいるのだ*。
『ばあ、これ重たいよ』
『えらい実がつまってるのさ。きっと蜜も甘い』
 大きな西瓜を両腕に抱えて、よたよたと縁側へ向かう。花柄のワンピース越しに心地よい冷たさを感じた。遅れて、でかい包丁を持ったばあが隣に座る。
『ほら、いま割ったるからね』
 細い腕のどこにそんな力があるのか、西瓜はざくりと真っ二つになった。真っ赤に熟れた果肉の断面が涎を誘う。何等分かにして、ちょうど良いサイズになった西瓜を思い切り頬張った。
『おいひい!つめあい!!』
 口の周りを汚しながらむしゃぶりつく。子供の私の叫び声は、大人の私よりオクターブも高かった*。ばあは私を見て幸せそうに微笑んだ。美味しい西瓜を食べながら、私は夏休みの次の予定に思いを馳せる。夏祭り、浴衣、花火。近くの河原で水遊び。あの子とあの子も一緒に呼ぼう。
 夏の午後、爽やかな風が風鈴を小さく鳴らした。

「幸せを見つけた!」
「幸せを見つけた!」
「幸せを見つけた!」
 顔面を熱い涙が伝う。身体中の、命の全ての熱が目頭からこぼれ落ちる。どんなアルコールより私を酔わせる幸せの記憶。この香草の煙は、あの日々の太陽の匂いだ。
 突然、じりりりりり、と不快な音がした。幸福な光景は一切掻き消えて、現実に引き戻される。何事かと見回すと、しばらく使っていない携帯が鳴っていた。文句のひとつでも言ってやりたくなり、相手も確かめずに耳に当てた。
「なんですか、誰ですか」
「あ、久しぶり。元気?」
 元気?じゃないよ。相手は捲し立てるように続ける。
「最近さ、また寂しくなっちゃって。この前のことは謝るからさ、もう一回一緒に」
 私は壁に携帯を投げつけた。携帯は部屋のなかを跳ね回り、そして手の届かないところに落ちた。あの男、ふざけているのか。もう一度だけでも、許すはずがない*。
 誰もが願って当たり前の幸せを望んだだけ。私はそれに向かって歩いてきたはずだ。なのに、大切なものは手元に残らず、あの男は私の要らないものを押し付けて勝手にいなくなった。
 こんなはずじゃなかった。
 忘れてしまいたい。
 再び■■■■を燻そうと探したが、さっき使った分で全部のようだった。どうにかして帰らなければ、私の幸せな少女時代に。
 私はふと、棚にしまってある風鈴を思い出した。そうだ、あの頃の記憶が忘れられずに、窓のそばに毎年かざっていたっけ。震える四肢は寒さのせいだけじゃないだろう。それをなんとか抑えつつ慎重に風鈴を取り出した。
 薄いガラスに金魚の絵があしらわれた風鈴。電灯の金具に引っかけて吊るした。何かの期待を込めて風鈴を眺める。だが、何も起こらない。涙すらこぼれるあのときの記憶は、どこにも蘇ってこない。
 閉じた部屋のなか、冷やかな風鈴は決して鳴らない。現実にも、心のなかにも。
 そうだろう。
 幸せなど、端からないのだ。
 私は薄暗い台所に向かった。酒もタバコも我慢してきたが、こうなれば五十歩百歩だろう。あとは自分で決めるかどうかの違いだ。
 真冬。風鈴の吊るされた部屋で。
 私は、大きな、重たい西瓜を、真っ二つに割った。

ちゃんちゃん(終わり) [編集済]

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No.56[えいみん]01月18日 12:5401月19日 02:22

魔除けの風鈴(?)

作・えいみん [良い質問]

No.57[えいみん]01月18日 12:55未回答

《簡易解説》
娘の出産が無事に終わるよう、厄除けの風鈴を吊るした。なお、諸事情により効果は無さげ。



《本解説》
ウミコ「あ、またお腹蹴られた!」
カメコ「元気な子ねえ。顔を見るのが楽しみだわ。」
カメオ「孫か...なんだかあっという間に歳をとってしまったな。」
カメコ「予定だと3月半ばだったっけ?」
ウミコ「うん。」
カメコ「本当に楽しみね。」
カメオ「楽しみだし、なんだか緊張するな...」
ウミコ「お父さんは相変わらず気が小さいね笑」
カメコ「カメコの受験の合格発表でも1番ソワソワしてたわよねえ〜」
カメオ「な、なんだよ、別に心配してもいいだろ。」
ウミコ「心配しすぎて顔が真っ青だったよ笑」
カメコ「正直情けないわ。」
カメオ「.........」
カメコ「お父さんは昔からずっとこうなのよ。」
ウミコ「なんとなく想像できる〜」
カメオ「少しは俺の顔を立ててくれよ...」
ウミコ「私が産まれたときはどんな感じだったの?やっぱりお父さんは心配してた?」
カメコ「実は、お父さんも私も心配事が尽きなかったのよ。」
ウミコ「え?そうなの?」
カメコ「うん。まあ、初めての経験だからいろいろ心配してたの。」
カメオ「そうだな。それにウミコは逆子だったんだよ。」
ウミコ「へ〜」
カメコ「あの時は不安で仕方がなかったわ。散歩したり、美味しいもの食べたりして気を紛らわしてたんだけど、どうしても気になっちゃって。」
カメオ「俺も同じだったよ。なかなか仕事が手につかなかったな。」
カメコ「でも、最終的に逆子は直って無事に産まれてきたよ。」
ウミコ「そっかー、いろいろあったんだ。」
カメオ「俺は今でも、逆子が直ったのはあの風鈴のおかげだと思ってるよ。」
カメコ「そうかしら?私はたまたまだと思うけど。」
ウミコ「風鈴ってお母さんが飾ってたあれ?」
カメオ「それそれ。」
ウミコ「あれってお母さんのじゃないの?」
カメコ「違うわよ、お父さんが飾っとけって言うから飾ったのよ。あなたがお義父さんからもらったんだっけ?」
カメオ「そうだな。」
カメコ「確か、お義父さんの家にずっと吊るされてたわね。何でだったっけ?」
カメオ「忘れたのか?お前には一度話したじゃないか。」
ウミコ「何それ聞きたい!」
カメオ「よし、ウミコがそう言うなら聞かせてやろう。」
カメコ「ちょうどいいわ、私にも聞かせて。」
カメオ「この風鈴は俺の父さんからもらったものなんだけどな......

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

幼少期、カメオは病弱な子どもであった。
赤ん坊の頃から体が弱く、無理をするとすぐに体調を崩してしまう。
カメオの両親であるラテオとラテコはカメオにつきっきりで世話をしていた。
我が子の可愛さ半分、心配半分である。
苦労は絶えなかったが、3人は幸せに暮らしていた。

ラテオ「カメオはまた風邪を引いたのか?」
ラテコ「うん、そうみたい。今のところいつも通りの症状だから安心して。」
ラテオ「そうか...それでも毎度心配になるな。」
ラテコ「あなたは気が小さいもんね。」
ラテオ「そんなことはないぞ!」
ラテコ「嘘よ、カメオが産まれる前だってずっと緊張してたじゃない。」
ラテオ「そ、そうか?」
ラテコ「そうよ。私に変に気をつかっちゃって。」
ラテオ「そ、それはお前が心配だったからじゃないか。」
ラテコ「なぜか他人行儀で出会ったばかりの頃みたいだったわ。20年前に戻った気分になっちゃった。」③
ラテオ「そうか、もうお前と出会ってからそんなになるのか...時が経つのは早いもんだな。」
ラテコ「ええ、そうね。気がついたらカメオの方が大きくなってたりして。」
ラテオ「だといいなあ。俺は今でもあと5センチ身長が欲しいと思ってるんだ。」
ラテコ「そういえば、昔から身長気にしてたわね...」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ウミコ「お父さんとおじいちゃんってなんだか似てるね。」
カメオ「まあ親子だからな。正直似たくはなかったが...」
カメコ「あなたは結局、お義父さんより大きくなれなかったのね。身長、私と同じくらいなんじゃない?」
カメオ「............話、続けるぞ。」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

その日は大雨だった。
毎年傘開く名物の花火も、この雨で延期になってしまった。⑤
以前から花火大会を楽しみにしていたカメオだったが、数週間経っても体調が戻らなかった。

ラテオ「ひどい雨だな。花火大会は延期になったらしい。」
ラテコ「そう、でもよかったわ!延期ならカメオと一緒に行けるかもしれないし。」
ラテオ「......カメオはどうだ?」
ラテコ「あれからずっとしんどそうにしてる。お医者さんにも診てもらったんだけど、なかなかよくならないの。大丈夫かしら...」
ラテオ「しばらく様子見するしかないな。俺たちにできることはそれくらいだ。」
ラテコ「そうね...」

ラテオはカメオの元へと戻っていくラテコをぼんやりと見つめていた。
カメオは大丈夫だと自分に言い聞かせるが、どうしても安心できない。
カメオが元気になったら、新しいおもちゃでも用意してやろう、そんなことを考えていた時だった。

ラテコ「カメオ?!カメオ!!」

ラテコの甲高い声が聞こえてきた。
ラテオが慌てて駆けつけると、そこにはカメオを抱きかかえながら泣き叫ぶラテコの姿があった。
普段より1オクターブは高い声で絶叫していた。①
体から血がひいていき、ラテコの声がだんだん聞こえなくなっていくのを感じる。
ラテオは正気を保つので精一杯だった。

ラテオ「急いでください!お願いします!!」
ラテコ「ラテオ、救急車は?!」
ラテオ「今呼んだ!ラテコはカメオを頼む!」
ラテコ「う、うん!」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ウミコ「お父さんピンチじゃん!」
カメオ「俺は何にも覚えてないけど、父さんも母さんもめちゃくちゃ焦ったらしい。」
カメコ「そりゃそうよ。」
カメオ「人生で1番パニックになった瞬間らしい。視界が暗くなるわ、耳が遠くなるわで大変だったんだとさ。」⑥
カメコ「想像するだけで恐ろしいわ。」
ウミコ「それで、お父さんは大丈夫だったの?」
カメオ「...あのな、大丈夫じゃなかったらウミコは産まれてないだろ?」
ウミコ「あ、そうか。」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

カメオは病院に搬送され、入院することになった。
病院で治療を受けた後も、カメオの容体は安定しなかった。
ラテオとラテコは一日中、交代でカメオの看病をしていた。

ラテコ「ラテオ、もう丸一日つきっきりでしょ?替わるわ。」
ラテオ「そうか...ありがとう。」
ラテコ「今日は花火大会ね。」
ラテオ「そうだな...カメオと一緒に見に行けなくて残念だよ。」
ラテコ「来年は3人で行こうね。」
ラテオ「ああ。」
ラテコ「あなただけでも行ってきたら?昔から毎年通ってるんでしょ。」
ラテオ「うん...でもカメオのことを考えると、あんまり行く気になれないな。」
ラテコ「あなたがそんな顔してたらカメオが心配するわよ!気分転換にいってらっしゃい!カメオの看病は私に任せて。」
ラテオ「...ありがとう。ちょっと夜風にあたってくるよ。」

ラテオは自分の心を落ち着けるようにして、ひとり夜道を歩いた。
花火大会の会場には、様々な屋台が並んでいた。
カメオのことを忘れて、花火を楽しむ気には到底なれない。
ラテオはカメオのために、何かお土産を買って帰ることにした。

ラテオ「カメオが喜びそうなものは...食べ物は冷めちゃうし、食べられるかどうか分からないよな...お面でも買って帰るか...?」

ラテオはしばらくの間、火薬がほんのり香る会場を歩き回った。④
いろんな屋台を見て回り、ラテオが目をつけたのは風鈴だった。
かつて、強い風は流行病や悪い神を運んでくると考えられており、風鈴は邪気除けの意味で飾られていた。
風鈴の音が聞こえる範囲では、災いが起こらないという。
おもちゃとしても使えるし、今のカメオにぴったりのお土産だとラテオは思った。

ラテオ「すみません、この青い風鈴をください。」
店員「はいよ、1000円ね。」

ラテオは風鈴を手土産にして、カメオのいる病院へと戻った。

ラテオ「ただいま。」
ラテコ「おかえり、どうだった?」
ラテオ「正直花火は楽しめなかったよ。でも、カメオにお土産を買ってきたんだ、ほら。」
ラテコ「へえ、風鈴なんて売ってるんだ。」
ラテオ「風鈴には厄除けの効果があるらしいから、これできっとカメオも元気になるよ。」
ラテコ「ありがとう。じゃあさっそく飾りましょう。」

こうしてカメオの病室に青い風鈴が飾られた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ウミコ「風鈴って昔はそんな風に使われてたんだ〜」
カメオ「平安時代とかには、魔除けにも使われていたらしい。」
カメコ「平安時代ってなんだっけ?」
ウミコ「ええー!お母さんそんなことも知らないの?昔勉強したでしょ!」
カメコ「ウミコにとっては10年前のことだけど、私にとっては30年以上前のことなのよ。綺麗さっぱり忘れたわ。」
カメオ「そういうレベルの話かこれ......?」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

不思議なことに、その風鈴を飾ってからというもの、カメオの体調は快方へと向かっていった。

ラテオ「よかった...カメオはもう大丈夫そうだな。」
ラテコ「そうね、本当によかったわ!それにしても不思議ね...この風鈴のおかげなのかしら?」
ラテオ「そうかもな。お医者さんも驚いてたよ、奇跡的な回復ぶりだったらしい。」
ラテコ「退院も決まったし、ようやく3人で家に帰れるわね。」

ラテオは家に帰った後も、もう一度たりともカメオの病気は許さないとばかりに、家の軒下にその風鈴を飾り続けた。②
カメオも風鈴を気に入ったらしく、風の吹く日には、風鈴が揺れて鳴るのを眺めていた。
これまた不思議なことに、カメオは成長するにつれて、どんどん健康になっていった。

ラテオ「カメオは元気な子に育ってきたな!昔とは大違いだ。」
ラテコ「本当ね。やっぱりこの風鈴のおかげなのかしら?」
ラテオ「俺は絶対にそうだと思うぞ!カメオがもっと大きくなったら、この風鈴を譲ってやるんだ。『大変なことが起こったらこの風鈴を吊るせ』とな。」

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

カメコ「これでひとつ謎が解決したわ。」
カメオ「どうした?」
カメコ「お義父さん、たまにご近所さんから『風鈴おじさん』って呼ばれてたじゃない?その理由よ。」
カメオ「ああ、それね。夏だけならまだしも、年がら年中風鈴を吊るしてるんだから無理もない話だな。」
ウミコ「お父さんはこの風鈴に命を救われたのかもね。命の恩人だ!」
カメオ「人ではないけどな...で、この話には続きがあるんだけど、もうだいたい想像がつくな。」
ウミコ「この風鈴を吊るしたら私の逆子が直ったんでしょ?」
カメオ「そうなんだよ。だから俺はこの風鈴の効果は本物だって信じてるんだ。」
カメコ「その話を聞くと、確かに効果ありそうに見えてきたわ。」
ウミコ「お母さんは単純ね笑」
カメオ「頼むから変な石とか高値で買わされたりしないでくれよ...」
ウミコ「さすがにそれはないわよ!」
ウミコ「.........ところでさ、1つ気になることがあるんだけど。」
カメオ「どうした?」
ウミコ「どうして部屋の中に吊るしてあるの?」
カメオ「そりゃもちろん、ウミコの出産が無事に終わるようにと...」
ウミコ「そうじゃなくて、なんで風のある外に吊るさないのかってこと!」
カメオ「...ああ、そういうことか。...実はな、このマンションではないんだが、昔住んでいたマンションでも、この風鈴を吊るしてたんだ。ウミコはまだ小さかったから覚えてないだろうな。」
ウミコ「何か悪いことでもあったの?」
カメオ「いや、単に夏だったから吊るしてみただけなんだが...隣に住んでた人からクレームが来た。」
ウミコ「草」
カメコ「厄除けの風鈴で災厄を呼び寄せてどうするんだか...」
カメオ「まあそんなわけで、念のため外には吊るさないようにしてるんだよ。ご近所付き合いってやつだ。」
カメコ「風鈴1つでもクレームが来たりするのよね。」
カメオ「東京都環境局HPの生活騒音の対象には『風鈴』も含まれているらしいぞ。今検索した。」
カメコ「へえ...最近はいろいろ大変ね。」
ウミコ「理由は分かったんだけどさ、この風鈴意味あるの?だって全く揺れないし、音も鳴らないじゃん。」
カメオ「...え?ほ、ほら、カメコは出産が近づいてるけど元気だろ?この風鈴のおかげなんじゃないか?」
カメコ「ウミコは風鈴を飾る前からずっと元気よ。」
カメオ「まあ、それはそれでよかったじゃないか!元気で何よりだ!お父さんは嬉しいぞ!」
ウミコ「やっぱりこの風鈴意味なさそうだね。」
カメコ「いらないわね。」
カメオ「............」
カメコ「でも、綺麗だし飾っておきましょ。」
ウミコ「そうしよう〜」


3月末に、ウミコは元気な男の子を出産した。
ウミコがこの風鈴について息子に語ってあげるのは、また別のお話である。


【完】(約5000字) [編集済]

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No.58[M]01月18日 15:5001月19日 02:22

プロフェッショナル ~私の流儀~

作・M [良い質問]

No.59[M]01月18日 15:51未回答

簡易解説:自作した風鈴の音を確かめるため。

私が風鈴職人を志した理由────それは20年前に遡る③。
私が小学生だった夏、雨の降っていた下校中に傘が開かなくて⑤困っていると、心配したお婆ちゃんが迎えに来てくれた。
「この傘使って。お母さんね、仕事で遅くなるって。」
「うん。」
この頃お母さんは忙しく、いつも帰るとお婆ちゃんの家に行っていた。
畳の匂いがほんのり香る④お婆ちゃんの家に吊るしてあったのが私の風鈴との出会いだった。
「お婆ちゃん、これ何?」
「あぁ、これは風鈴って言ってねぇ、鳴らして涼しく感じるために吊るしてるんだよ。
もうすっかり耳が遠く⑥なっちゃったけど、この音を聞くと落ち着くんだよ。ほれ。」
そう言ってお婆ちゃんが鳴らした風鈴の音に魅せられ、風鈴が好きになった。

この間は音が通常より1オクターブも高い①風鈴を作ってしまった…もうそのようなミスは許されない②。より心地よい音を目指し、今日も風鈴を作ってはその音を確かめる。
  終
───────
製作・著作
  Ⓜ [編集済]

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No.60[みづ]01月19日 00:3801月19日 02:22

春夏秋冬~これは二月の物語~

作・みづ [良い質問]

No.61[みづ]01月19日 00:39未回答

【簡易解説】
今はマンションに囲まれ、まったく風の通らない場所となってしまった駄菓子屋。
それでも主人は、開店中の証である風鈴を日々吊るし続けている。



私は小さな駄菓子屋を営んでいる。
今日は生憎の雨模様だ。
二月ということもあり、下手をすれば雪になりそうなくらい寒い。
客足も大してあるまい、と思ったが。

「…傘が開かなくなったの⑤」

「あれま。そりゃ災難だったねぇ」

よっこらしょと腰を上げ、私は箪笥から出したタオルを手渡す。
目を潤ませていた少女が、にっこり笑った。

「お家の人に電話するかい?」

「うん」

黒電話を差し出そうとすると、少女はランドセルから携帯電話を取り出し、慣れた手付きで操作し始めた。

「傘が壊れちゃって…うん、今駄菓子屋さんにいる。うん、そう。風鈴の…わかる?」

通話を終えた少女の表情は明るかった。

「ママが迎えに来てくれるって」

「ほっほ、よかったねぇ。それまでゆっくりしておいき」

「ありがとう」

こんなふうに、雨宿りがてらでも立ち寄ってくれる子がいる。
色とりどりの菓子や玩具に目を輝かせている姿を見ることは、私の生きがいだ。

春には、ぴかぴかのランドセルを背負った子。

夏には、仲良しの皆と遊び回り日に焼けた子。

秋には、柿の木にこっそり登っては渋柿に顔をしかめて吐き出す子。

冬には、白い息を吐きながらせっせと大きな雪だるまを作る子。

ずーっと、私は子どもたちの姿を見るのが楽しくて楽しくて。


ほんのり甘い香りのする④ガムを紅葉のような手が包み込む。

ひいふうみ。
ぽたぽたぽた。

ガムの数を数えながら、雨の音を聴きながら…私は二十年前に思いを馳せた③。


ちりんちりん

二月だというのに、風鈴の音が鳴り響く。
今日は北風が強い。

―――あのね、万引きは犯罪なんだよ

―――ま、万引きなんてやってない!

ただでさえ高い子どもの声が、さらに一オクターブほど高くなる①。

私はふうとため息を吐き、言葉を続けた。

―――『もう一度だけ許す』ということは出来ないんだよ②

快活そうな男の子は、はっと目を見開き、俯く。

二度目であることを見抜かれていたと察した彼は、ぽたぽたぽたと大粒の涙を流した。

一度目だって、本当なら見逃してはいけなかった。
親や警察に連絡しなければならなかったのだろう。

二十年経った今でも鮮明に思い出せるのは、それをしなかったことを私が後悔しているからなのか。


「……の?」

「んん?」

そういえば会計の最中だった。

「もう!おばあちゃん耳が遠いんだから⑥」

「ほっほ、ごめんよ。んで、なんて言ったか?」

「こんな真冬に、どうして外に風鈴を吊るしてるの?って」

赤らんだほっぺを膨らませて、その子が尋ねる。

「あぁ、あれな。季節は関係ないんだよ」

「風鈴は夏に吊るすものじゃないの?」

「本来はそうだけどね。ウチでは、お店が開いてますよってしるしなんだよ。ずうっと昔から」

「ずーっと昔から…。じゃあ、風鈴はこの店のトレードマークなのね!」

「んん?とれーどまーく?」


悲しいことも楽しいことも。
まぁ色々あるでしょう。

春夏秋冬、日々私は色とりどりの風鈴を吊るす。

今はもう、背の高いマンションに囲まれ、風が通ることもなくなったけれど。

【おわり】

回答はまだです。

No.62[ハシバミ]01月20日 17:37未回答

「風吹かば」

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No.63[ハシバミ]01月20日 17:37未回答

【簡易解説】

願いが叶う風鈴に桶職人である元恋人の不幸を願った結果、風桶効果によって世界から風が消えてしまった。
風のない世界で、それでも願いを取り消すことに一縷の望みをかけて女は再び風鈴を吊るした。

ーーーーーー

 取り返しのつかないことをしてしまった。それに気が付いたのは、二月四日の昼であった。

 二月三日。近所の神社では節分会が行われる。芸能人が来るわけではないが、市長が来てそれなりの盛り上がりを見せる。とはいえ訪れる人々の目当ては、豆撒きよりも境内や参道の屋台である。
 久方ぶりに行ってみることにした。今年の節分は日曜日。急に予定がなくなって、暇を持て余していたのだ。
 神社に近づくにつれて賑やかな声が聞こえるようになる。最後に来たのは、小学生のころだったか。節分ではなく、夏祭りだったけれど。
 自宅の前の道を行くと、参道の途中に出る。右と左。どちらにも屋台が並んでいるが、さて。少し見回して、比較的人の少ない右を選んだ。
 焼きそば、たこ焼き、チョコバナナ。ヨーヨー、くじ、型抜き。通りに並ぶ屋台、張り上げて呼び込む声、楽しそうに歩く人。浴衣を着ている人がいないくらいで、記憶にある夏祭りとそう変わらない風景だ。
 まずは小腹を満たそうか。食べたいものを探して視線を左右に動かしていると、何かが目に止まった。何か、違和感。
 ――リィン
 音が聞こえる。声が聞こえない。高く澄んだ音が耳に届いた途端、雑踏が遠ざかる。あれだけ賑やかだった話し声も足音も焼く音も、すべてが遠くなる。
 ――リィン
 届くのは音。そして、匂い。ふわりと、かすかに香る――「仏壇の匂い」。(④)
 ああ、見えた。違和感の正体は、風鈴屋だ。
 私が最後に来た夏祭り。最後に訪れた屋台。最後に買ったもの。


 話は二十年前に遡る。(③)


 小学五年生だった私は、一人で夏祭りに向かっていた。母親が一緒に行こうというから友達の誘いも断っていたのに、急にパートが入ってしまったのだ。風邪で倒れてしまった人の代理という事情は理解できるが、感情が許せるかどうかは別問題だ。
 急なことで食事も用意できないからお祭りで食べてきなと渡された千円札を握りしめて、私は大きな足音を立てて歩いた。着せてもらうつもりだった浴衣もおじゃんになったのだ。
 友達と鉢合わせたら、恥ずかしい。お母さんと一緒に行くんだとあれだけ言っていたのだ。今更一緒に回らせてとも言えない。さっさと買って帰ろう。
 食事だけならコンビニにでも行けばいいのだが、やはり折角だから祭りに行きたかった。焼きそば、たこ焼き、チョコバナナ。食べ物だけだとお金も余る。ヨーヨー、くじ、型抜き。いない母親には使いみちを咎められることもない。
 苛立ちは消えないけれど近づくに連れて期待も増す。参道について、まずは比較的人の少ない右に進むことにした。
 同じ食べ物でも屋台によって味のバリエーションや値段が違う。右に左に、真剣に吟味しながら歩いた。
 ――リィン
 ふいに高く澄んだ音が耳に届いた。なんだろう。見渡せば、少し先に見慣れぬ屋台があった。
 ――リィン
 風に揺れるガラス――風鈴だ。混み合う通りでも、その周囲だけは不思議と空いていた。物珍しいと見ていく人が居てもいいものを、避けるでもなく、まるでそこには何もないかのように通り過ぎていく。
 屋台の前で立ち止まると、おじさんがニッと笑って話しかけてきた。
「お嬢ちゃん、風鈴に興味があるのかい?」
 特段興味があったわけではないけれど、そのとき心惹かれていたのは事実だ。あいまいにうなずいた私に、おじさんは少し声をひそませて続けた。
「この風鈴はね、普通の風鈴じゃあないんだよ」
 秘密事を語るような口調に、引き込まれないはずがなかった。
「これはね、願いが叶う風鈴なんだ」
「願いが叶う?」
「そう。この風鈴が鳴ったときにお願い事をするとね、そのお願いが叶うんだ。どんな突拍子もない願いでもね」
「どんな……テストの点数でも?」
「もちろん。テストの点数でも、恋愛でも、運動でも、何でもだよ」
 願いが叶う。それは突拍子もなくて、ひどく魅力的だった。それでなくとも、風鈴はきれいだった。
 屋台の後ろに並んだたくさんの風鈴。ガラスに描かれた柄は様々で、私が特に惹かれたのは桜とウサギの描かれた物だった。
 私の視線に気が付いたおじさんがその風鈴を取って私の前に示した。そのとき、ふわりと香った。
「……仏壇の匂い?」
 両親の寝室の片隅にある仏壇。私が立ち入るのは、私の生まれる前に亡くなった母方の祖父母の命日くらいだ。ただ、母親は毎日線香を上げているようで、部屋の前を通るとよくその匂いがした。
「仏壇? ああ、この匂いか。気になるなら、そうだね、短冊に付いた匂いだろうから、取り替えてしまえば気にならないと思うけど」
「ううん。この匂いがいい」
 私はこの匂いが好きだった。仏壇の前に座るとき、私は会ったことのない祖父母よりもこの匂いに夢中になる。嗅いでいると、なんだか落ち着くのだ。
「そうか。じゃあこの風鈴、いかがかな?」
「あ、でも、お金……」
 すっかり忘れていたけれど、私は千円しか持っていない。値段は書かれていないようだけれど、このお金で風鈴が買えるのか。ましてや願いの叶う、なんて代物だ。
「この風鈴は、そうだね、千円。千円でいいよ」
 私が裸で握りしめたままの千円札におじさんは気付いていたのだろう。でも、このお金は。
「でも、ご飯……」
「ん、ああ……そうだねぇ……うん、じゃあ五百円ならどうかな」
「え、いいの?」
「もちろん。この風鈴も、お嬢ちゃんの願いを叶えたがっているからね」
 それがおじさんの優しさだったのか、実際には五百円の価値もないものだったのかはわからない。ただそれは、そのときの私にはとても魅力的な話だった。そのまま千円札を差し出すくらいに。
 おじさんは風鈴を箱に仕舞いながら言った。
「風鈴に願うのはね、自然に鳴ったときじゃないといけないよ。自分で揺らすのはもちろん、扇風機の風でもいけない。必ず、自然の風で鳴ったときだ。でないと願いは叶わないからね」
「わかった、ありがとう」
 おじさんから風鈴を受け取った私は、なんだかとても胸躍る気持ちだった。そうまで叶えたい願いがあった、というより、秘密を持ったことが嬉しかった。
 内緒にしないといけない、とは言われなかった。けれど願いの叶う風鈴だ。無闇に人に話しては、人に知られてはいけない――そんなふうに思うのも道理だろう。

 焼きそばとチョコバナナを買って家に帰った私は、とにもかくにも風鈴を吊るしたかった。けれど焼きそばはまだしもチョコバナナが邪魔だ。急いでチョコバナナを食べて、焼きそばはリビングのテーブルに置いたまま部屋に入る。
 レースのカーテンと普通のカーテンの間。端っこなら、普通にカーテンを開けても隠れる。ここがいい。早速ベッドに乗って風鈴を吊し、窓を開ける。今だけカーテンも大きく開ければ、風鈴も充分揺れるはずだ。
 何を願おう。テスト、恋愛、運動。まずは。どのくらいそうしていたか、やっと願いを決めたころ。
 ――リィン
 やっと、風が吹いた。ベッドの上で正座をし、目を閉じて指を組む。
(明日の音楽のテストでうまく歌えますように)
 声には出さず、心の中で願う。
 音楽のテストは、みんなの前で一人ずつ歌わなければならない。歌はあまり得意ではないし、今回の曲は私には音が高くてうまく歌えないのだ。
 だから恥をかかないようにうまく歌いたい。それに明日には結果がわかるから、最初の願い事としてはぴったりだ。
 お願いを終えて、目を開ける。叶うかな。叶うといいな。
 玄関で鍵の開く音がする。母親が帰ってきたんだ。慌ててカーテンを閉める。パート先からまっすぐに帰ってきたなら、私の部屋の窓は見えていないはずだ。
「ちょっと、この焼きそばなぁに? 晩ごはん食べてないの?」
 リビングから母親の声がする。……忘れてた!
「今から食べるの!」
 慌ててベッドから飛び降りる。ああ、今回だけは音楽のテストが楽しみだ。

 果たして翌日、私は大いに喜んだ。願いが叶ったのだ。高音の部分も綺麗に歌えた。試してみれば、普段より一オクターブ高い声まで出すことができた。(①)
 やはりあの風鈴は本物だったんだ。本当に願いを叶えてくれるんだ。
 嬉しくなった私は、それから毎日のように家に帰ると窓を開けた部屋に篭るようになった。風鈴が鳴れば願い事をする。
 願い事は一日一回。
 これもおじさんに言われたことではないけれど、なんとなくの決まり事だ。その方がありがたみもある。
 お気に入りの傘が壊れれば、風鈴に願った。折れた骨が引っかかって開かなくなっていたのが、翌日には元通りに直っていた。(⑤)
 苦手な算数のテストの前の日にも、風鈴に願った。問題を見た途端に公式が頭に浮かんで、するすると解くことができた。
 友達と喧嘩をしたときももちろん、風鈴に願った。翌朝顔を合わせたときに素直に謝罪の言葉が出て、すぐに仲直りした。
 すごい、すごい。なんでも叶うんだ。
 そうして願い事を続けて、ひと月。いや、二週間くらいだったか。夏休みに入ってしばらくしてからも、私は部屋に篭る生活を続けていた。
 願い事、というのは動機の一つであったけれど、そのときばかりはゲームの方が大きな理由であった。その年のお年玉で買ったゲームを、ようやく心置きなくできるのだ。
 むろん実際はそんなことはなく、良いところで母親に怒られる日々だった。音が漏れてしまうから宿題をしている、なんて言い訳は効かない。
 ――リィン
 その日も部屋の外から母親に声をかけられ、仕方なしに宿題のドリルを開いたときだった。
 風鈴。そうだ、これを願えばいい。
 ベッドに飛び乗り目を閉じる。
(ゲームをしてもお母さんに怒られずにすみますように)
 これで明日から心穏やかな日々を送れる。
 そう、思った。

 確かにそのあと、部屋に篭ってゲームをしていることを咎められなくなった。理由は簡単で、母親がそれに気付かなくなったからだ。
 願い事をした翌朝。目覚めると、部屋までニュースの音が届いていた。リビングから部屋まで、普段ならこんなはっきりと聞こえることはない。
 リビングへ行けば、母親はいつも通りキッチンで朝食を作っていた。目玉焼きとサラダ。特に大きな音を出しているわけではない。
 テレビのボリュームを下げれば、普段よりも十は大きくなっていた。
「あら、音下げちゃうの」
「だってうるさいんだもん。いつも上げるなって怒るのお母さんでしょ」
「そんなに大きかった? なんか聞こえなくって」
「大きかった」
 初めはそんなやりとりだったけれど、違和感はその後も続いた。呼びかける声が届かない。私がゲームをしている部屋の前を通っても何も言われない。それは願い事の通りだけれど。
 数日後、母親は病院に行った。耳は遠くなっていて、だけど何の異常もない。(⑥)
 ただの老化だろう、それにしては急激だけれど。そんな結論だった。
 それを聞いて、私は確信した。風鈴だ。風鈴が願いを叶えてくれたんだ。
 部屋に戻り、カーテンを開ける。くぐもった音を鳴らしながら風鈴が姿を見せる。
 願いを叶えてくれた。けれど。
 これは私の望んだことだろうか。望みは叶った。怒られなくなった。でも、代償が重すぎる。
 途端に怖くなって、風鈴をしまうことにした。買ったときの箱に入れて、工作類の詰まった段ボールごと押し入れの奥に押し込む。
 もう一度願えば良かったのかもしれない。でも、代わりに何が起こるのか。それを考えたら、とてももう一度願おうなどとは思えなかった。


 思い出した。そうだ、風鈴だ。
 意識がぱっと二十年後に戻る。
 私は踵を返して、家へと急いだ。押入れの奥の段ボール。何度か見た記憶がある。けれど中身は整理していない。まだあるはずだ。
 玄関を開け、リビングを抜けて部屋へと入る。リビングのソファに座っている母親は、私の帰宅にも気付かない。
 押入れ、下段、奥。これだ。小学生のときの図工や自由研究の作品、賞状。そして、見付けた。
 掌に乗る薄緑の箱。こんなに小さかったか。開ければ、思い出したばかりの桜とウサギ。そしてなにより、仏壇の匂い。
 今は。これなら、風鈴に願ってもいいはずだ。全て、風鈴のせいなのだから。
 そう、そもそも今日神社に行ったのも、この風鈴の。あの願いのせいだ。
 あれから母親はパートもできなくなった。もともと仕事に明け暮れて家庭を顧みない父親は、ますます家に寄り付かなくなる。
 外出することが極端に減った母親の代わりに買い物をしたり、たまの外出に付き合ったり。
 母親の世話は、私がするしかなかった。
 不思議な話だ。たった今思い出した。風鈴も、願いも、今の今まで忘れていたのに。罪悪感だけは、ずっと忘れなかった。
 今日は本当は、デートをしているはずだったのだ。友人の友人。付き合って三年。結婚だって視野に入れて、同棲する部屋も探していた。私は実家からあまり離れることはできないけれど、それを受け入れてくれた。受け入れてくれていた。
 それが急に、彼が家業を継ぐと言い出したのだ。彼は次男だし、本人にもやる気はなかった。はずなのに。
 だから結婚相手は実家に来てくれないと困る。彼の実家は、京都だ。関東ならまだ考えられたのに。
 それだけなら、まだ良かった。悔しいけれど、悲しいけれど、まだ許せた。
 彼を紹介してくれた友人が、彼に恋人がいると言い出したのは別れを告げられた三日後だった。
 もう半同棲をしていて、彼の実家にも行くつもりだ。それどころか彼も新しい恋人も、もう仕事を辞めているらしい。付き合っているのは半年前くらいからで、だから友人はもう私たちは別れていると思っていた。なんて。
 それが、一週間前。
 母親のことがなければ彼についていくのは私だったはずだ。いや、そんな男についていかなくて正解だったかもしれない。
 だとしても、彼の不幸を願うくらい、許されるはずだ。一回、くらい。
 風鈴を吊して、窓を開ける。待つこと数分。
 ――リィン
 二十年ぶりの音に、私は願った。彼と、新しい恋人の不幸を。

 願い事を終えて、再び風鈴をしまう。一回だけ。この一回だけ、特別だから。
 どんな不幸が起こるのか。私はそれを知ることができるのだろうか。
 少しの不安と期待と、なにより清々した気持ちで、翌日は仕事を向かった。
 いつも通りに仕事をして、昼休み。隣の席の同僚がスマホを片手に話しかけてきた。
「ねぇ、なんかやばいっぽいよ」
「やばいって、なにが?」
「世界」
「なにそれ」
 いつも言葉の選び方が適当な同僚だ、またなにか下らないことだろう。そう思いながら受け取ったスマホの画面は、予想に反して真面目なニュースサイトであった。
「風が吹かない……?」
 それは、昨夜から世界中で風が吹かなくなったというニュースであった。いつも風がうるさいビル街でも、砂が流れる砂漠でも、白く波立つ海でも。
 パタリと、風が止んだ。
「ね、やばいでしょ?」
 世界中の学者が、どういうことかと首を傾げている。今後どのような影響が出るのか、考えるだに恐ろしい。そんな真面目なニュースが、けれどユーモアの混じった文章で締められていた。
「ねぇ、聞いてる?」
 同僚の言葉なんて耳に入らない。最後の一文に、私の意識は釘付けだった。
『だが一番困るのは、桶屋かもしれない。風が吹けば桶屋が儲かる――であれば、風が吹かなければ桶屋は商売上がったりであろう。』
 私の彼、元彼の家業は、桶職人だ。

 仕事に身が入らず、定時になると同時に会社を飛び出した。どうしよう、どうしよう。やはり願ってはいけなかったんだ。
 彼の不幸を願った。廃業になることくらいは願った。この先もずっと不幸であってほしいと、願った。
 でもそれが、ここまで大事になるなんて、思わない。
 どうしよう、どうしよう。こんな願い、取り消すことができるとすれば、やっぱりあの風鈴くらいしかない。
 でも。
 家に帰り、昨夜しまったばかりの風鈴を引っ張り出す。仏壇の匂い。くぐもった音。カーテンレールに吊るして、窓をあける。けれど。
 ――風鈴に願うのはね、自然に鳴ったときじゃないといけないよ。
 風鈴は鳴らない。
 もう一度願うことは、許されない。(②)

【終】 [編集済]

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参加者一覧 21人(クリックすると質問が絞れます)

全員
靴下(3)
とろたく(記憶喪失)(3)
きの子(5良:1)
シチテンバットー(5良:1)
ごがつあめ涼花(3)
耳たぶ犬(4良:2)
「マクガフィン」(3良:1)
きっとくりす(4良:1)
葛原(2良:1)
リンギ(4良:2)
弥七(3)
HIRO・θ・PEN(3)
えいみん(4良:2)
まりむう(3)
特攻トマト(1)
M(3良:1)
こたこた2号(2良:1)
夜船(2良:1)
Hugo(2良:1)
みづ(2良:1)
ハシバミ(2)
合言葉が聞きたかったらまたここに来なさい。タイミングが良ければ教えよう。
相談チャットです。この問題に関する事を書き込みましょう。
ハシバミ>>投稿しました![20日17時39分]
みづ>>参加します、からの投稿しました:( ;˙꒳˙;):[19日00時40分]
M[はらこめし]>>投稿しました。(個性0の報告)[18日15時52分]
えいみん>>なんとか投稿できました(`・∀・´)[18日12時56分]
Hugo>>投稿できて幸せですっ!ハアアアアアアアン(洗脳)[18日03時06分]
夜船>>あ、どうも。前回出てませんでしたし、相変わらず質問し逃してますけど投稿します。幸せって何でしょうね。[18日00時07分]
シチテンバットー[◇クエ王◇]>>投下しましたる[17日20時42分]
藤井[はらこめし]>>こたこた2号さん、ご投稿ありがとうございます!これまたおもしろい発想ですね。要素⑥の使い方が特に気に入りました。[16日13時59分]
こたこた2号>>飛び入り参加失礼しても大丈夫でしょうか…?[15日23時04分]
藤井[はらこめし]>>お、巷で噂のつくりだす犬だ。よしよし。いいこだ、えさをやらう。 Twitterで宣伝はしてたもののたぶちゃんの創りだす作品が見れるなんて思ってなくて、すげー嬉しいのでドッグフード食べます。[15日02時09分]
耳たぶ犬>>わん[14日22時27分]
3
藤井[はらこめし]>>きの子さん、リンギさん、早々のご投稿ありがとうございます!風鈴を吊るし楽器として演奏するお話と、楽器を演奏する際の目印として風鈴を吊るすお話。この並びがなんだか面白いですね。[14日14時12分]
リンギ>>投稿させていただきました。ご査収ください。[13日22時44分]
きの子[15イイネ]>>|ω・) 投稿させていただきました… |彡サッ![13日15時21分]
藤井[はらこめし]>>思いつきでNO良質取り入れてみました。今回、【投稿は1人1作のみ】です!みなさんよろしくどうぞ~(=◜o◝=)🍖[13日00時10分]
2
きっとくりす>>良質ノーおもしろそうです![12日23時25分]
4
M[はらこめし]>>参加します[12日22時06分]
マトリ>>観賞します![12日21時54分]
まりむう[200回良質問]>>参加します。[12日21時51分]
HIRO・θ・PEN>>・θ・[12日21時48分]
2
えいみん>>参加...するかもしれない...しないかもしれない(`・ω・´)[12日21時45分]
藤井[はらこめし]>>(※無効質問が1つあるので、質問数41で締め切ります!)[12日21時42分]
リンギ>>質問させていただきます。参加は様子見で・・・[12日21時30分]
葛原>>たぶん質問だけ〜。参加します。[12日21時29分]
1
弥七>>もう、おちゃめさんなんだから...><笑[12日21時28分]
2
きっとくりす>>ごめんなさい質問しすぎました><[12日21時28分]
2
「マクガフィン」>>要素だけ参加させてください![12日21時18分]
3
きっとくりす>>参加します。[12日21時13分]
耳たぶ犬>>参加できたらします。[12日21時07分]
ごがつあめ涼花>>質問、参加します[12日21時06分]
3
とろたく(記憶喪失)>>お邪魔します! はてさてどんな創りだすが見られるかな。[12日21時03分]
弥七>>参加します!^ ^質問は3回ですね!わかりました><[12日21時03分]
4
シチテンバットー[◇クエ王◇]>>参加しまする。[12日21時03分]
きの子[15イイネ]>>参加させていただきます![12日21時02分]
藤井[はらこめし]>>創りだすのじかんです。みなさんよろしくどうぞ~(=◜o◝=)✨[12日21時02分]
靴下[15イイネ]>>参加しますやきにく![12日21時01分]
ゲストの方は発言できません、ログインまたは登録してください。
■■問題文■■

2月。
まったく風の通らないその場所に、女が風鈴を吊るしたのは

いったいなんのため?


■■要素一覧 ■■

①通常より一オクターブ高い
②『もう一度だけ許す』ということは出来ない
③20年前に戻る
④ほんのり香る
⑤傘が開かない
⑥耳が遠い


■■ タイムテーブル ■■

☆要素募集フェーズ
 1/12(日)21:00~質問数が40個に達するまで

☆投稿フェーズ
 要素選定後~1/22(水)23:59まで

☆投票フェーズ
 投票会場設置後~1/28(火)23:59まで ※予定

☆結果発表
 1/29(水)21:00 ※予定