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【正解を創りだすウミガメ】凍りついた情熱に雫【第14回】

■■問題文■■

かつてはそこにいるだけでも汗ばむほどの熱を帯びていた場所。

今となっては熱が失われ誰も近づかないその場所を、一人の男が訪れた。

そこに広がる真っ白な地面にしずくが落ちたのを見た男は、

冷たくなった手で真っ白な地面を水浸しにした。


状況を説明してください。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前回はコチラhttps://late-late.jp/mondai/show/6450


夏だ! お盆だ! 「創りだす」だぁっ!!
毎度おなじみ、自称創りだす大好き芸人、改め「正解を創りだす松岡修造」とろたくです☆

季節も暑いし、主催も暑苦しい、ならば問題文で(物理的に)涼しくさせようではありませんか。


要素数は《12個》で参ります。そのうちの数個を主催の独断と偏見により選定させていただく予定です。
責任もって私もエキシビジョンを作らせて頂きますので一緒に頑張りましょう。

さて、それではルールに参ります。


■■ 1・要素募集フェーズ ■■
[8/10(土)21:30頃~質問が50個集まるまで]

初めに、正解を創りだすカギとなる色々な質問を放り込みましょう。


◯要素選出の手順

1.出題直後から、YESかNOで答えられる質問を受け付けます。《質問は1人4回まで》です。

2.皆様から寄せられた質問の数が”50”に達すると締め切り。
 12個の質問がランダムで選ばれ、「YES!」の返答とともに『[良い質問]』(=良質)がつきます。

※良質としたものを以下『要素』と呼びます。

※あまりに矛盾して成立しなさそうな場合や、条件が狭まりすぎる物は採用いたしません。
[矛盾例]田中は登場しますか?&今回は田中は登場しませんよね? →今回もOKとします。頼んだぞエクセル先輩・・・
[狭い例]ノンフィクションですか?(不採用)
[狭い例]登場キャラは1人ですか?(不採用)
[狭い例]ストーリーはミステリー・現実要素ものですよね?(不採用)

なお、要素が揃った後、まとメモに要素を書き出しますのでご活用ください。


■■ 2・投稿フェーズ ■■
[要素を12個選定後~8/24(土)23:59]

要素募集フェーズが終わったら、選ばれた要素を取り入れた解説を投稿する『投稿フェーズ』に移行します。
各要素を含んだ解説案をご投稿ください。

今回はお盆を挟むため長めの期間を設けています。締め切りにはお気を付けて。

らてらて鯖の規約に違反しない範囲で、思うがままに自由な発想で創りだしましょう!

※過去の「正解を創りだす(らてらて鯖版・ラテシン版)」もご参考ください。
ラテシン版:sui-hei.net/mondai/tag/正解を創りだすウミガメ
らてらて鯖:https://late-late.jp/mondai/tag/正解を創りだすウミガメ


◯作品投稿の手順

1.投稿作品を、別の場所(文書作成アプリなど)で作成します。
 質問欄で文章を作成していると、その間他の方が投稿できなくなってしまいます。
 コピペで一挙に投稿を心がけましょう。

2.すでに投稿済みの作品の末尾に終了を知らせる言葉の記述があることを確認してから投稿してください。
 記述がない場合、まだ前の方が投稿の最中である可能性があります。
 しばらく時間をおいてから再び確認してください。

3.まずタイトルのみを質問欄に入力してください。
 後でタイトル部分のみを[良質]にします。

4.次の質問欄に本文を入力します。
「長文にするときはチェック」を忘れずにつけると、文章もいい感じに改行されます。

5.本文の末尾に、おわり完など、終了を知らせる言葉を必ずつけてください。


■■ 3・投票フェーズ ■■
[8/25(日) 00:00頃~8/29(木)23:59]

投稿期間が終了したら、『投票フェーズ』に移行します。
お気に入りの作品、苦戦した要素を選出しましょう。



◯投票の手順

1.投稿期間終了後、別ページにて、「正解を創りだすウミガメ・投票会場」(闇スープ)を設置いたします。

2.作品を投稿した「シェフ」は“3”票、投稿していない「観戦者」は“1”票を、気に入った作品に投票できます。
 それぞれの「タイトル・票数・作者・感想」を質問欄で述べてください。
 また、「最も組み込むのが難しかった(難しそうな)要素」も1つお答えください。

※投票は、1人に複数投票でも、バラバラに投票しても構いません。
※自分の作品に投票は出来ません。その分の票を棄権したとみなします。
※投票自体に良質正解マーカーはつけません。ご了承ください。

3.皆様の投票により、以下の受賞者が決定します。

 《メイン》

 ◆最難関要素賞(最も票を集めた要素):その質問に[正解]を進呈

 ◆最優秀作品賞(最も票数を集めた作品):その作品に[良い質問]を進呈

 ◆シェチュ王(最も票数を集めたシェフ=作品への票数の合計):全ての作品に[正解]を進呈


 →見事『シェチュ王』になられた方には、次回の「正解を創りだすウミガメ」を出題していただきます!


※票が同数になった場合のルール
[最難関要素賞][最優秀作品賞]
同率で受賞です。
[シェチュ王]
同率の場合、最も多くの人から票をもらった人(=複数票を1票と数えたときに最も票数の多い人)が受賞です。
それでも同率の場合、出題者も(事前に決めた)票を投じて再集計します。
それでもどうしても同率の場合は、最終投稿が早い順に決定させていただきます。



■■ タイムテーブル ■■

◯要素募集フェーズ
 8/10(土)21:30~質問数が60個に達するまで

◯投稿フェーズ
 要素選定後~8/24(土)23:59まで

◯投票フェーズ
 8/25(日)00:00頃~8/29(木)23:59まで

◯結果発表
 8/30(金)23:00ごろを予定しております。




■■ お願い ■■

要素募集フェーズに参加した方は、出来る限り投稿・投票にも御参加くださいますようお願いいたします。
要素出しはお手軽気軽ではありますが、このイベントの要はなんといっても投稿・投票です。
頑張れば意外となんとかなるものです。素敵な解説をお待ちしております!

もちろん投稿フェーズと投票フェーズには、参加制限など一切ありません。
どなた様もお気軽にご参加ください。


それでは、『要素募集フェーズ』スタートです!
質問は1人4回までです。皆様の質問お待ちしております!
19年08月10日 21:30 [とろたく(記憶喪失)]
【新・形式】

31日(土)2:00ごろに結果を掲示いたしました。ご迷惑をおかけしました。

新・形式
正解を創りだすウミガメ
No.1[OUTIS]08月10日 21:3108月10日 23:00

一文かナ?

ま、まさか解説文のことではないですよね!? ① [良い質問]

No.2[OUTIS]08月10日 21:3108月10日 23:00

仮面は関係あるかナ?

もうやめて! とろたくのネタはもう0よ!

No.3[OUTIS]08月10日 21:3208月10日 23:00

嘘は関係あるかナ?

エイプリルフールには少し遅い。なんつって。

No.4[靴下]08月10日 21:3208月10日 23:00

いつの間にか通り過ぎていましたか?

エモンガ! こうそくいどうだ! ② [良い質問]

No.5[夜船]08月10日 21:3308月10日 23:00

あがないですか?

「贖い」か、「あ」がないのか。

No.6[靴下]08月10日 21:3308月10日 23:00

数学が苦手ですか?

数学って意外と馬鹿にできない。

No.7[夜船]08月10日 21:3308月10日 23:00

ふとりますか?

同音異義語シリーズ・・・なかなか曲者そう。

No.8[靴下]08月10日 21:3308月10日 23:01

腫れていますか?

晴れるでも張れるでもない・・・はてさて。 ③ [良い質問]

No.9[夜船]08月10日 21:3408月10日 23:00

さとりますか?

さとりを開いて仏になる解説もワンチャン・・・?

No.10[靴下]08月10日 21:3508月10日 23:00

ニョキニョキますか?

なにを生やすつもりなんでしょうか。

No.11[夜船]08月10日 21:3508月10日 23:00

おとりますか?

ハッまさか「とり」縛り・・・!?

No.12[OUTIS]08月10日 21:3708月10日 23:00

(過去の最難関要素)? [編集済]

丁重にそれぞれの会場に送り返したはずなんですけどね・・・? ④
(後程一覧をまとメモに載せさせていただきます)
[良い質問]

No.13[ひややっこ]08月10日 21:4208月10日 23:00

ゲテモノでしたか?

もうすでに質問がゲテモノ揃いなんですがそれは。

No.14[きっとくりす]08月10日 21:4308月10日 23:00

季節は重要ですか?

意外と難しそう。

No.15[赤升]08月10日 21:4308月10日 23:00

バグりますか?

まさかここに限ってバグるなんてことはnくぁwせdrftgyふじこlp;

No.16[赤升]08月10日 21:4408月31日 03:58

ラッキースケベしますか?

きゃー! 赤升さんのエッチ! ⑤ [正解][良い質問]

No.17[ハナミ]08月10日 21:4408月10日 23:05

パーツが足りませんか?

パーツを集めて何かが動き出しそう。 ⑥ [良い質問]

No.18[ひややっこ]08月10日 21:4608月10日 23:00

金魚鉢に閉じこめますか?

少なくとも人間は無理そうです。

No.19[赤升]08月10日 21:4608月10日 23:00

仮面は関係ありませんか?

ポラリスに厳しい。

No.20[ハナミ]08月10日 21:4608月10日 23:00

長すぎてどうしても覚えられませんか?

じゅげむじゅげむごこうのすりきれ・・・えっとこの先なんでしたっけ。

No.21[赤升]08月10日 21:4708月10日 23:00

月曜日は寄り道しますか?

寄り道ってロマン。青春ですね。

No.22[きっとくりす]08月10日 21:4708月10日 23:01

記憶喪失になりますか?

記憶喪失になる人なんてそうそういな・・・ ⑦ [良い質問]

No.23[みづ]08月10日 21:4808月10日 23:00

二十歳ですか?

お酒で羽目を外し過ぎないようにね。

No.24[ひややっこ]08月10日 21:4808月10日 23:00

最後は笑いますか?

腕が試されます。

No.25[きの子]08月10日 21:4808月10日 23:00

月は関係しますか?

月が綺麗ですね、きの子さん。・・あれ、なんか変なこと言いました?

No.26[みづ]08月10日 21:5008月10日 23:00

常連ですか?

おっちゃん、いつもの!

No.27[きの子]08月10日 21:5108月10日 23:00

間に合いませんでしたか?

「締め切りに」をやらかした人間ならここに。

No.28[みづ]08月10日 21:5608月10日 23:00

矢印の通りに進みますか?

その先、直進です。

No.29[きの子]08月10日 21:5808月10日 23:01

手を繋ぎましたか?

手を繋いだら心もつながるかもしれません。 ⑧ [良い質問]

No.30[きっとくりす]08月10日 21:5808月10日 23:00

笑顔でさらばですか?

かっこいい。好き。

No.31[太陽が散々]08月10日 22:0508月10日 23:00

踊らずにはいられませんか?

たいようがさんさん の さそうおどり! ▼

No.32[太陽が散々]08月10日 22:0608月10日 23:00

「神には頼るまい」ですか?

信じるのは己と仲間。痺れます。

No.33[太陽が散々]08月10日 22:0608月10日 23:00

ばい菌が気にならないですか?

アンパンマンには難しそうです。

No.34[ハナミ]08月10日 22:0608月10日 23:00

想定していたよりちっぽけですか?

いい意味にも悪い意味にも使えそう。

No.35[太陽が散々]08月10日 22:0808月10日 23:00

短いめになった鉛筆の持つとこを長くする銀色の奴ですか? [編集済]

最終的にハマって鉛筆が抜けなくなったことがあります。

No.36[みづ]08月10日 22:1308月10日 23:00

盛大に鼻血を噴き出しますか?

ラッキースケベとセットにしようかなと思いました。

No.37[きの子]08月10日 22:1808月10日 23:00

もう一度だけでもと願いましたか?

もう一度だけでいい~奇跡起きてよ~♪

No.38[ハシバミ]08月10日 22:2808月10日 23:00

作中作は関係しますか?

なかなか料理しがいのありそうです。 ⑨ [良い質問]

No.39[ハシバミ]08月10日 22:2908月10日 23:00

地下に住んでいますか?

地下都市とか出てきたらロマンです。

No.40[飛びたい豚]08月10日 22:3108月10日 23:00

海は関係しますか?

海は広いな~大きいな~

No.41[ハシバミ]08月10日 22:3108月10日 23:00

結婚できないのではなくてしないだけですか?

独身には刺さる、その言葉。

No.42[飛びたい豚]08月10日 22:3308月10日 23:00

文房具は重要ですか?

意外と簡単そうで難しそうな要素・・・!

No.43[ごがつあめ涼花]08月10日 22:3608月10日 23:00

巫女ますか?

美人な巫女さんからお守りを渡されたい。(謎願望)

No.44[ごがつあめ涼花]08月10日 22:3708月10日 23:00

狐だったりしますか?

こんこん。 ⑩ [良い質問]

No.45[きっとくりす]08月10日 22:3708月10日 23:00

一人二役ですか?

ガラスの仮面かな?

No.46[ごがつあめ涼花]08月10日 22:3808月10日 23:00

『コリ』が必要ですか?

肩こりしか思い浮かばなくて・・・夏。

No.47[びーんず]08月10日 22:3808月10日 23:00

昔話は重要ですか?

さあ、どう料理するのでしょうか!? ⑪ [良い質問]

No.48[びーんず]08月10日 22:3908月10日 23:00

夏休みですか?

TUBEが聴きたくなる今日この頃です。

No.49[ごがつあめ涼花]08月10日 22:3908月10日 23:00

入学しますか?

受験ほんと頑張ってください。

No.50[ハシバミ]08月10日 22:3908月10日 23:00

ウサギは関係しますか?

なんかもふもふしていますね、今回。 ⑫ [良い質問]

お待たせしました! 投稿フェーズスタートです![編集済]
★投稿の際の注意★
*質問欄で文章を作成していると、その間、他の方が投稿できなくなってしまいます。
別の場所(文書作成アプリなど)で作成し、「コピペで一挙に投稿」を心がけましょう。
*投稿の際には、前の作品の末尾に「終了を知らせる言葉」の記述があることを確認してください。
記述がない場合、まだ前の方が投稿の最中である可能性があります。
*あとで[良質]をつけるので、最初に本文とは別に「タイトルのみ」を質問欄に入力してください。
*本文の末尾に、【おわり】【完】など、「終了を知らせる言葉」を必ずつけてください。
*作品中に要素の番号をふっていただけると、どこでどの要素を使ったのかがわかりやすくなります。
*投稿締め切りは【8/24(土) 23:59】です。
投稿内容は投稿期間中何度でも編集できます。
また、投稿数に制限はありませんので、何作品でもどうぞ!
No.51[OUTIS]08月11日 00:3008月16日 00:30

【汗と涙と幸せの行方】 [編集済]

その夏の日を、ふたりが忘れることはないだろう。 [編集済] [良い質問]

No.52[OUTIS]08月11日 00:3208月30日 20:51

 ある少女は、何の変哲もない家に生まれた。
穏やかな家庭で育った彼女は、高校でも多くの人に好かれていたが本当の友人と言えるような者は居なかった。
彼女がある日帰り道で出会ったのは、自分と5つ歳の離れた少年だった。
家に居る事が苦痛で逃げ出した少年は、触れれば壊れてしまいそうでどこか守ってあげなければいけないように思えた。
「ねえ、どうしたの?」
そう、彼女は声をかけた。
-その日、彼女には友人ができた。-

ある少年は、エリート一家と呼ばれる家に生まれた。
鬼才と呼ばれた出来の良い長女を持ち、自らも学校では人気者…とはならなかった。
エリート一家。
その肩書には大きな重圧がかかり、それはストレスとして家庭を襲う。
そしてそのストレスは一人のスケープゴートを攻撃する事で解消されていた。
そのスケープゴートとなったのが弟の少年であった。
毎日行われる虐待で、少年の服の下は赤く腫れあがっていた。③
ネグレクトに始まる家族ぐるみの虐待に、少年はいつしか家に帰らなくなっていた。
そんな夏のある日、小学校が終わった後行き場のない彼がたどり着いたのはとある公園だった。
-その日から、彼には生きる希望が生まれた。-

暑い夏の日に繰り返された二人の時間は、少女には安らぎを与え、少年には生きる希望を与えた。
二人で手を繋いでいる間は、日ごろの悩みを忘れられた。⑧
二人してウサギやキツネの可愛らしい動物の動画に癒されたりもした。⑩⑫
二人で見たアニメでラッキースケベがあった時は気まずくなったりもした。⑤⑨
数か月後、少年に行われていた虐待が発覚し彼は保護されていった。
それは、喜ぶべき事であったが少女にとっては少し寂しく感じた。
誰にとっても暑い夏の公園は、彼らにとっては濃厚な思い出となっていた。

 数年後、少女は美しい女となっていた。

私は、あの夏の出来事がきっかけとなり、彼女は児童福祉に置いて重要な昔話の読み聞かせ等の知識を学びある養護施設で働き始めた。⑪
そして、そこにはあの少年が暮らしていた。
しかし、私が彼に気づいた時彼は記憶を失っていた。⑦
彼は引き取られた後すぐに事故に遭ったという。
そんな彼の生活は、異様に無機質であった。
朝、朝食を食べ中学校へ向かう。
夕、帰ってきて宿題をはじめ夕食を挟んで再び宿題。
夜、夜更かしもせず就寝。
まるで感情という大きなパーツが欠けたかのように機械的、かつ模範的な生活を繰り返していた。⑥
そこに、幸せなど無いかのように。
酷く、不幸に見えてたまらなかった。

あの日、僕は施設に引き取られてすぐ事故に遭った。
いや、遭ったという言葉は不適当であろう。
遭ったという表現は偶然である事が条件だから。
僕は自ら車に飛び込んだ。
彼女と過ごした日々は僕にとって人生の全てだった。
彼女は僕にとって友人であり、姉であり、恋人であり、母であった。
そんな彼女から引き離された僕はその命を絶とうとした。
紅い信号機を誘蛾灯に導かれる蟲のようにふらふらと渡った。
気が付くと、いつの間にか峠は過ぎていた。②
どうやら、助かったらしい。
望まぬ結果に困惑していると、周囲は僕が記憶を失ったと勘違いをし始めた。
その日から、僕は記憶を失い新しい僕として生きる事を決めた。
辛い虐待の日々を捨て去りたかった。
しかし、それは同時にあの幸せな日々の記憶も捨て去らなければいけない事を意味していた。
ただ、全てを忘れたふりをして。
機械的に日々を過ごしていく。

 「結婚してください。」
そう、指輪と共に贈られた一文は私の人生を狂わせた。①
その日、大学時代から付き合っていた男性にプロポーズされた。
結婚。
女性が最も幸せな瞬間と言われるその言葉に私は迷わずうなずいてしまった。
うなずいてしまった。
その日から、私は罪悪感に苛まれるようになった。
結婚をすれば、私はいずれここを辞める事になるだろう。
彼はこのまま生きていくのだろうか。
もしそうだとしたら、私だけ。
私だけが、不幸になるのだろうか。
そんな葛藤が、私を苛んだ。
私は、もっとも本能的な、単純な答えを選んだ。

「結婚してください。」
その言葉を聞いてしまった。
僕は気づいていた。
彼女があの時の少女であると。
彼女には既に恋人がいた。
そして、どうやら結婚するらしい。
普通は悔しいとか、妬ましいとか、思うんだろうか。
僕はただ、幸せだった。
僕に希望をくれた彼女に再び会えて、しかもその彼女が幸せになれるというなら。
僕にとっての幸せは、恩人である彼女の幸せ。

 結婚式の日、誰も居ない二人きりの教会で式を挙げた。
式は何事も無く終わり、タクシーに乗り帰る途中にあの公園の前を通った。
そこには、彼がいた。
それを見た瞬間、私の中で何かがプツリと切れた。
「運転手さん、ここで降ろしてください。」
そう言って彼女は彼の元へ走った。
思い出の場所へ。
いつか、二人で過ごした暑い公園は今では紅葉が紅く咲き、小さな秋を呈していた。④❺
そんな中、彼もこちらに気づいて近づいてきた。
寒くなった真白な砂場の淵に、二人して腰を掛ける。
「どうして、ここに?」
「今日、結婚式だって聞いたから。」
「なんで、ここに?」
「ここで、二人で遊んでたから。」
「思い出したの?」
「忘れた事なんてないよ。結婚、おめでとう。」
その言葉を聞いた時、私は覚悟を決めた。

彼女が結婚すると聞いて、式の日にあの公園へ向かった。
何故かはわからない。記念日だからかな。
気が付くと、彼女がいた。
式はもう終わったのかな。
「どうして、ここに?」
「今日、結婚式だって聞いたから。」
「なんで、ここに?」
「ここで、二人で遊んでたから。」
「思い出したの?」
「忘れた事なんてないよ。結婚、おめでとう。」
本当に、心の底からの祝福を込めて・・・
「邪魔なの。あなたが。ごめんね。」
え?
腹部に走る激痛。
ポツリ、彼女の目から涙が砂に落ちては染み込んでいく。
それを見て、僕は悟った。
きっと、彼女はずっと苦しんでいたんだろう。
僕が邪魔だったんだ。
だったら、僕はそれに応えよう。
刺さったナイフは、最初から僕を殺す為に持っていたのかな。
「ッ!」
ナイフを抜き、持ち手を袖で拭う。
「さよなら。ありがと。幸せになってね。」
そう言って、僕は・・・



ナイフを、何度も自分の身体に突き立てた。
温度の無い手から、真っ赤な血が流れだし真っ白な砂場を染めていく。
彼女は、驚いた様子で立ち尽くしていたが、すぐに携帯を取り出すとどこかへ電話をかけ始めた。
君のためなら、僕はなんだってできるよ。

それは、自殺として処理された。
ナイフからは彼の指紋しか確認されず、目撃者も居ないのだから当たり前だった。
彼は、幸せだっただろう。
愛する人を幸せにできたと、そう思って逝ったのだから。
残された者の苦しみ等知らずに。
真実を知らずに。

【簡易解説】
そこは、二人にとって思い出の場所だった。
暑い夏の思い出は、二人にとって特別な存在であった。
しかし、男は結婚する思い人にとって邪魔な存在だった。
それに気づいた男は、愛故に自らを殺す事で思い人を幸せにしようとした。
その結果、冷たくなった男の手からあふれ出た血液が砂場に溢れ水浸しにした。

-了―
[編集済]

ああ・・・・・・のっけからOUTISさん、あなたって人は・・・・・・(好き)
彼女と引き裂かれる痛みに苦しまれるぐらいなら、いっそ自分が死ぬべきなんだ。そして今度は、彼女が苦しむのであれば、いっそ自分が死ぬべきなんだ。最初は自分のエゴのために死のうと思い、今度は彼女のエゴのために死のうと思う。本当に彼は心から彼女を愛し、彼女のために死ねるのだと思いました。心にずしん、と重くのしかかるものがあります。

No.53[きの子]08月11日 01:3008月13日 17:51

【周回遅れの伸ばした手】 [編集済]

手は、あいつの頬と同じぐらいに雪で腫れていた。 [良い質問]

No.54[きの子]08月11日 01:3108月30日 20:51

その時の俺は今なら言えるが最低で、何か嫌なことがあればすぐに誰かのせいにするし、
屁理屈をこねるだけで自分からは何もしようとしない奴だった。
そんな俺を両親も扱いかねて、
家から離れた安いアパートに放り込んで生きていける程度の仕送り以外はいないモノ扱いを決め込んでいた。


俺があいつと出逢ったのは、暑い夏の夜のことだった。

コンビニから帰った俺の部屋の前の階段でぐったりしていた。
力いっぱい叩かれたのだろう、あいつの頬は赤く腫れていて③、何だか臭くて、
普段なら舌打ちのひとつでもして通り過ぎるだけだった。

――――なのに、その時はつい声をかけてしまった。
まぁ実際は人間と話すこと自体が久しぶりでつっかえつっかえだったけれども。


声をかけるとあいつはほいほい俺の部屋までついてきた。
俺が言えた口ではないが、人が人として成り立つために必要なパーツが足りない⑥ヤツだった。
とりあえず風呂に放り込んで、その間に簡単な食えるものを作った。
その時に裸がちらりと見えて、後10年遅ければラッキースケベ⑤だったんだがなぁと馬鹿なことを考えた。
あいつは遠慮なしに俺の飯を食った。お風呂もご飯も久しぶりだと言っていた。

同じ棟に住んでいることが分かってからというもの、
あいつはちょくちょく俺の前に現れた。
夏休みも過ぎたある時「学校はどうしたんだ?」
と聞いたら、
「おじさんこそ大人なのに会社は?」
と聞き返されバツが悪くて「おじさんじゃない、お兄さんだ」と返すのがやっとだった。
「お母さんの彼氏より大人だからやっぱりおじさんだよ」と続けられ返す言葉がなかった。

あいつはやたらと俺と手を繋ぎたがった。「お母さんとは繋いだら怒るから」と言って。
手を繋いで⑧機嫌良くぶんぶんと振りながら歩くあいつと俺は若い父親と娘に見えなくもなかったと思いたい。
かと思えばすぐに手を放して調子外れな「ちーさいあーき、みーつけたー④」と歌いながらドングリをこちらに寄こしてきた。


ある日。
あいつと会っているのがあいつサイドの連中にばれた。
詳しい話は省略するが、貧相な俺は厚化粧のヒスババアによって階段から突き落とされた。
今までのことがぐるぐると巡って、ああこれが走馬灯か、と妙に冷静に思った。

小学生の頃こんな昔話⑪を聞いたことがあった。
キツネがやせたヒヨコとアヒルとウサギ⑫を太らせて食べようとして、
やがて情が移った3匹をオオカミから守って死ぬ話。⑨
その話を聞いた時、キツネはなんて馬鹿なんだろうと思った。

それがどうだ。自分はまさにその話のキツネじゃないか⑩。

俺が今ここで死ねば連中は捕まる。
あいつは解放される。

クソみたいな人生だったが、
誰かを守って逝けるんなら、
それでもう良いんじゃないか。


ところが、俺は死ななかった。
記憶喪失になる⑦おまけ付きで。
俺はあいつのことをきれいさっぱり忘れて病院のベッドの上で目覚めた。
その直後父親に軽く殴られ、母親に泣かれて実家に帰る羽目になった。


そして秋から季節は冬になり。外はしんしんと雪が降っていた。
暖かい部屋で見ていたネットニュースでとある一文①を見かけ、俺は凍り付いた。

「〇〇市7歳女児死亡 虐待の疑いで母親と同棲相手を逮捕」


やり直せるチャンスの女神様はいつの間にか俺の前を通り過ぎていた②らしい。

一気に血の気が引き、震えが止まらないままリュックを掴んで外に飛び出し、
最寄りについてからは全速力であのアパートまで走った。
目的地に着き地面から上を見上げると、そこはすでに閉鎖されていて、
あのうだるように暑かった夏が嘘のように静まり返り、生きているのは自分だけのように思えた。

真っ白い地面に水滴が落ちる。
俺は自分が泣いているのに気付いた。
血が通っているのか分からなくなるほど冷たくなった手で雪を掘り返し、
リュックのポケットに入っていて何故か捨てられなかったあいつからもらったドングリを掘った穴に入れて埋めた。

せめてせめて、あいつがこの世にいたことが少しでも残りますように。

冷たい手でもどうやら体温はあるらしく、溶けた雪と涙が地面を水浸しにしていた。

【おわり】

※要約
青年が虐待を受けて死んだ少女のことを忘れないために、
思い出のあるアパートの庭の土を掘って彼女からもらったドングリを埋めた。 [編集済]

周回遅れ、そう聞くと輪廻転生をイメージします。ですが「あの人に会えたことで、人生が変わった」、それも自分が生まれ変わったことの表現のひとつです。それが彼にとっての女の子。だからこそ、失ったときの後悔の波が激しく押し寄せてくる、だから「周回遅れ」なんですね。冷たい手でも雪を解かす描写もまた、もう二度と体温の戻らない女の子とのあたたかな時間との対比のようで、この問題文の解説としても好きです。

No.55[OUTIS]08月11日 03:0908月13日 18:25

【Meta Nex Alice】 [編集済]

これが"Real"だよ、"Hero"。 [良い質問]

No.56[OUTIS]08月11日 03:0908月30日 20:51

"Look a very beautiful stone!"
Jack heard.④❾
Her voice was remembered to my memory.
But I lost memory.⑦
Maybe...
It is correct...
it is all correct...

I was crying in hot and noisy place.
I met her, who was so beautiful, cute, and charming.
She called herself "Alice".
We always played with each other.

Oneday, we went forest.
The scenery like folkrore.⑪
Girl and Boy was walking path.
They found a nest of bee.
"Nest of bee maybe be so yammy!"
She said.
"Shall we take the nest?"
He said.
"Oh! that is good idea!"
"Shall we do the Shoulder wheel?"
"But I Can't bear to prop you."
"I prop you."
Therefore, Boy proped girl.
There maybe was lucky lewd.⑤
Because, She weared skirt.
But, No, nothing.
She can't got the nest.
Therefore, Boy throwed a stone for the nest.
Bees was so angry.
Bees attacked girl.
Girl was swollen face.③
But, she was laughting.

Another day, I given rabbit-foot.⑫
rabbit-foot is fortune amulet.
We held hands.⑧
We bilieved forever's friendship.

"It is dream."
Old man said.
He is docter, and engineer.
My memory system was abnomal.
My memory system was lost a piece of memory.⑥
But, it should be correct.

21xx is wonderful world.
But human declined since about 2060.

And android has been deveroped.
They got a emotion.
They don't know nature.
They can't have lover.
But, there is love.
It is so strange.
We decided it was bug.
Long ago, it called that Caught in a fox.⑩
but, it age was passing before.②
We deleted his memory.
In the first place, there is no she who was loved by him.
He taked a walk alone in forest.
He can't swollen.
Because he is android.
He created girl friend.
...Why?
He read story.
It was like this world.
someone notice.
This 世界 was creatEd as story.⑨
Real aNd 架空 will fusion.
架空の world will Be 削除.

彼 came tO その 場所.
He watched 雫.
雫 is like 彼の tear.
彼は自らのdisappearanceを悟った。
かつてはengineがnoisyに熱を放っていたplaceで。
今はもう、彼しかいないWorldで。
何故なら、彼は主人公だから。
冷たいmachineのarmで。
何もない、真白な世界に。
自らが人間であった証として自らに流れる液体を散布した。

【簡易解説】
SF小説の世界で現実を少し認識したせいで異常が発生した主人公。
彼は人間のような幻覚を見るようになった。
それを周囲はバグだと一蹴して記憶の一部を取り除いた。
しかし、疑問に思った一人が調べると彼はある物語を読んでいた。
それは、まるでこの世界を描いたようだった。
その瞬間、多くの人々が現実を認識し始めた。
自分達は創作の世界の住民なのだと。
現実と創作は混ざりあい、崩壊していく。
創作の世界は消え去ったが、かろうじて主人公である男だけは残っていた。
男は、かつて大都会であった場所で自らの消滅を悟り、せめて自分が人間であったことを証明しようと、温度の無い腕で自らを貫き自らに流れる液体を散布した。

これは、何も考えずに書いた物語。
英語の能力なんてないせいで一文でぶつ切りになった文章で構成された物語。①
無意味な意味の物語。

メタ(Meta):高次元の
ネクス(Nex):凶死
アリス(Alice):女性名

-了―
[編集済]

さあ、毎月恒例、誰かしらはやらかしてくれるであろう問題作(失礼)を、今回はOUTISさんが創りだしてくれました。
最初こそ英語の長文で度肝を抜かれますが、意外や意外、ハマる世界観です。特にSCPとか好きだったらハマります。
作品の主人公が「外の世界」を意識しだして自分の世界が崩壊していくっていうのは、もうね、ヤバイ。何がヤバイって、ほとんどが苦しんだ「作中作」の回収が最もトリッキーかつ、なぜか納得してしまうところなんですよ。こういうの好きだなあ。好きです。

No.57[OUTIS]08月12日 20:4208月14日 05:15

【因幡に菖蒲の花束を】

輪廻の道は、白無垢で。 [良い質問]

No.58[OUTIS]08月12日 20:4208月30日 20:51

通りゃんせ
通りゃんせ
ここはどこの細道じゃ
天神様の細道じゃ
ちっと通して下しゃんせ
御用のないもの通しゃせぬ
この子の七つの お祝いに
お札を納めに まいります
行きはよいよい 帰りはこわい
こわいながらも
通りゃんせ 通りゃんせ⑨

シャランと鈴が涼やかに鳴り、鳥居の朱が薄くそれでいて鮮やかに景色を彩る。
紅い彼岸花と淡い桃色の蓮の花が咲き乱れ、その周囲には竹が青々と生い茂る。
異様な、しかしどこか懐かしさを感じるその小道を抜けた先に居たのは一人の少女だった。
「おや、どっから迷い込んだんどすか?」
そう、話しかけてきた彼女に私は・・・
それは、どこかへ迷い込んだ朧気な記憶。
私は、神隠しに逢った事があった。

「今日でお前も7つ、お札を納めに行かねぇとな。」
そう、アヤメの父親が言う。
子供は7つになるまでは神様の物。
7つになった時、初めて人間として合格と言える。④⓭
そして、その証にお札を神社へ奉納しに行かなければならない。
子供一人で。
そして今年、彼女は7つになった。
神社は森の奥にあり、幼子にはつらい道である。
しかし、行かねばならない。
それが、しきたりなのだから。
鬱蒼と生い茂る木々の中、彼女は懸命に社を目指す。
決して離さぬよう片手にお札を握りしめ。
そして、彼女は社へたどり着く。
一歩、鳥居の中へと足を踏み入れる。
その刹那、空気が朱く染まり一人の少女が現れる。
「良う来たなぁ。」
現れたのは巫女装束の少女。
怪しげな笑みを浮かべる彼女は、明らかに人ならざる者であった。
彼女には、狐の耳と尾が生えていた。⑩
「ねえ、うちん事を覚えてますのん?」
そう話しかけてきたのは、少女に朧気に残っている記憶と全く同じ姿の少女だった。

「ねえ、うちん事を覚えてますのん?」
齢は15程であろうか、面妖な姿をしたその少女が話しかけてきた。
「お狐様・・・?」
ふと、口から洩れたのはそんな言葉だった。
「お狐様なんて呼ばへんどぉくれやす。
うちには名前・・・そういえばあらしまへんどしたなぁ。
おっきな神社やちゅうのに、誰もつけてくれまへんどした。
そうや、あんたがうちん名前をつけてくれまへんか?」
「名前・・・?」
「そう、名前。あらへんと話すのに不便どすし。」
そんな、唐突な願いに困惑しながらも必死に名前を考える。
お稲荷様
イナリ
イナ…バ
「イナバ。」
「イナバどすか、狐やのに兎みたいな名前どすなぁ。
どすが、気に入った。
因幡の白兎ちゅうお話も、うちは好きどすし。」⑪⑫
そう言ってニッと笑った彼女は、幼いながらに魅力的に見えた。
「ほな、うちは今日からイナバどす。
次は、あんたの名前を教えてもらえまへんか?」
「アヤメ」
「アヤメどすか、ええ名前どすなぁ。
あまり遅なると親御はんも心配されるやろうし、今日は早う帰ったらええのに。
あと、あんたがここへ来れたのは特別どすさかい、誰にも言うてはあかんえ?」
それが、イナバとの再会だった。
その日は父さまにとても怒られた。
その後、6枚のお金をもらった。
「今日からお前も人間や、死んだら渡賃が必要になるからな。」
なんだか少しうれしくて、その日はそのお金の入った袋を握りしめて眠った。

あの日から、私はこっそり家を抜け出してはイナバの元へ通った。
ままごとをしたり、木の実を食べたり。
そんな楽しい時間が、数年続いた。
そして7年後、私たちは同じくらいの年齢になっていた。
イナバは年を取らないらしく、ずっと同じ姿らしい。
私だけが変わった事が、少しだけ寂しかった。
変わったのは、外見だけでは無かった。
私は、女でありながら彼女に想いを寄せるようになっていた。
明確に意識し始めたのは水浴びをしている所に入ってしまった時だった。⑤
「女同士なんどすし、恥ずかしがらへんでもええやあらしまへんか。」
なんて彼女は笑ってたけど、私はドキドキが止まらなかった。
二人で手を繋いでいるだけでも、とても幸せだった。⑧
だけど、やっぱり彼女にこの思いを伝えたい。
告白をしよう。
そう決めた夏の神社の境内は、とても暑かった。
贈り物を買おうと決めた。
お稲荷様は油揚げが好物らしい。
告白の贈り物が油揚げというのもなんだか情けないけれど、私の使える六文銭で買えるのは5文の油揚げくらいなのだから仕方がない。
「おばちゃん、油揚げ1枚頂戴!」
「はいよ!5文だよ!」
買った油揚げを片手に、イナバの元へ走る。
「お、来たなぁ。
あと、なんかええ匂いがするなぁ?」
そういうイナバに油揚げを差し出しながら、一生懸命思いを告げる。
「わ、私と、こ、恋仲になってください!」
幼いながら、精一杯の告白だった。
顔が真っ赤になるのが自分でもわかる。
彼女は一瞬きょとんと驚いたようにこちらを見ていたが、すぐにいつもの妖艶な笑みを浮かべた後嬉しそうに言った。
「こちらこそ、よろしゅうおたのもうします。」
二人で油揚げを一緒に食べて、契りを結び口づけをした。
どちらの味も決して忘れられない思い出になった。
その日、私たちは世界で最も幸せな恋人となった。

しかし、幸せな日々はあっという間に崩れ去ることになる。
彼女たちが口づけをしている様子を街の人たちに見られてしまったのだった。
同性愛など当時は認められておらず、その相手が狐ということでアヤメは狐憑きとして忌み嫌われ、追われるようになった。
そして、14の少女に彼らから逃れる術は無かった。
すぐに捕まり、憑き物落としと称してあらゆる暴行をされるようになった。
肉体的にも、精神的にも深い傷を負わされ、体中至る所が腫れあがっていた③。
そして、そんな環境に耐えられるはずもなく少女はすぐに朽ちてしまった。
贈り物を買った為、彼女の骸には1文しか残っていなかった。①
負い目を感じていたイナバは、神社の賽銭から5文を取り出すと大人たちが寝静まった夜中にやってきて、アヤメの懐に入れた。

「かんにんな、かんにんな、うちんせいで・・・」
うちん叫びが森の中で木霊する。
愛する者を失うたうちは復讐を誓うた。
まず農作物を枯らし不作にした。
次に疫病を呼び込み村に蔓延させた。
ほんで最後に、川を氾濫させ村を流した。
こうして、村は滅んだ。
アヤメを苦しめた村人は一人残らず死んだ。
せやけど、うちん心は満たされまへんどした。
後悔と、憎悪と、哀しみと。
昼夜を問わずうちは自責の念に苦しみ続けた。
ほんで、いつしかうちは社の奥深うに閉じこもるようになった。

シャラン
鈴の音と共に、思い出の小道を歩く。
しかしそこは以前と異なり川の反対側。
穏やかな流れに蓮の花が流れてゆく。
もう、向こうへは戻れない。
このまま輪廻へ還るのみ。
せめて、叶うなら。
再び彼女と巡り合える事を願って。
生まれ変わったら、記憶も消えてしまうだろう。⑦
「忘れたくないな・・・」
そう、つぶやいて私は一歩踏み出した。



 けたたましい目覚まし時計の音で目が覚める。
夏が終わり、涼しくなってきた今日この頃。
制服に着替えた後朝食を食べ、鞄を持って家を出る。
やっぱり、何かが足りない。
どこかパーツが足りていないかのような違和感を覚えながら俺は生活している。⑥
高校生活もどこか色褪せて見えて、退屈な日々。
いつになったらこんな生活から抜け出せるのか。
そんな事を考えていたら、いつの間にか眠っていた。
目が覚めると学校の最寄り駅はとっくに通り過ぎていて、電車は終点へとたどり着いていた。②
電車を降りると、ふと何かに呼ばれたような気がして歩き出す

シャラン
どこか懐かしい鈴の音と共に一匹の狐が視界に入り、去っていく。
それを見た瞬間、追いかけなければならないと思った。
弾かれたように走り出す。
気が付くと、古い神社にたどり着いていた。
昔は活気があったのだろうか、かなり大きな神社であったが誰も手入れをしなかったのだろう、すっかり寂れてしまっていた。
ポツリ
雨粒が降る。
ポツリポツリと誰かの涙の雫のように降り注ぐ。
それは哀しみの涙か。
一歩、鳥居の中へと足を踏み入れる。
シャラン
鈴の音が再び響き世界が変わり一人の少女が現れる。
「お狐様・・・?」
その容姿に声がつと漏れる。
「アヤメ・・・?」
振り返った少女は、そう俺に対して呼びかける。
今まで何度も間違えられた名前。
「違う、確かに同じ菖蒲の字ではあるけれど俺の名前はショウブだ。」
条件反射のようにそう返してしまう。
「いや、その前にあんた誰だ・・・?」
初対面なのに何故間違えられたのか、その事に気づき戸惑う。
「いいえ、あんたは間違いのうアヤメどす。」
そう言って、少女は駆け寄ってきて俺に・・・キスをした。
その瞬間、頭を殴られたような衝撃を受け多くの記憶を思い出す。
そうだ、数百年前に俺はアヤメという町娘だった。
そして彼女、イナバは俺の恋人だった。
「やっと、逢えたなぁ。待たせすぎどすえ?」
そう言って大粒の涙を流す彼女を抱き寄せる。
もう、別れたくない。
「俺と、結婚してください。」
思わずそんな事を言っていた。
それを聞いたイナバは少し驚いた様子で、けれども嬉しそうに
「いきなりどすなぁ。
どすが、この日ぃずっと待っとりました。」
そう言って笑った。
外に出るとまだ雨が降っていた。
「そうや、ついでどすし神社の掃除を手伝うてもらえまへんか?
しばらく離れる事になるし。」
「それもそうか、まずはどこからしようか?」
「ほな、石畳からおたのもうします。」
いざ掃除をしようと掃除道具を探したがもう無いらしい。
急いでポリバケツとデッキブラシを買ってきた。
ポリバケツに水を汲み石畳にかけてはブラシで磨く。
社の床を雑巾がけしていく。
掃除が終わった頃には空は晴れていたが、雨だけは降り続けていた。
まるで、狐の嫁入りを祝福するかのように。

【簡易解説】
菖蒲とイナバは江戸時代、恋仲であった。
焼けた石畳の上でよく一緒に遊んでいた。
しかし、同性愛等が村人達にバレてしまいリンチにあって菖蒲は殺された。
けれど、輪廻は巡り時は現代。
菖蒲はイナバと再会した。
そして二人は結婚の契りを結んだ。
もう二度と離れ離れにならないように。
イナバが社を離れる為、菖蒲は社を掃除する事になり水をかけて石畳の掃除を始めた。

-了―
[編集済]

はんなり系狐耳巫女と少女の百合は卑怯です。(卑怯です)
ふたりの禁じられているけれどひたむきな恋がほんっっっっとに綺麗で、なんでここで結ばれなかったんだと嘆きつつ、後半の転生での雨の情景、そして狐の嫁入りに持っていく。雨だけど晴れているっていう情景が、ふたりの心からの喜びの涙があふれているようで、天気の子とろたくとしてはもう満足です。OUTISさん作品ではあまり見ないハッピーエンドですが、もう素晴らしい。何も言えねぇ。はー、素敵。

No.59[八つ橋]08月12日 21:0108月14日 05:20

【俺たちの塩サウナ】 [編集済]

その情熱を、再び実現させるために。 [良い質問]

No.60[八つ橋]08月12日 21:0908月30日 20:52

かつてはそこにいるだけでも汗ばむほどの熱を帯びていた。
だが、今となっては熱が失われ、もはや誰も近づかない。
今となっては昔話【要素⑪】。しかし、その記憶はなおも彼を縛りつける。一体何があったのか。その場に訪れた男は、過去を振り返った。

かつて、俺は八橋という美男子とともに、塩サウナを営んでいた。
日々の仕事に疲れたサラリーマンたちの癒しの場を提供したい。八橋の情熱に感化された俺は、いつのまにか手を差し伸べていた。ぜひ、やろう。がっしりと手を握りしめた【要素⑧】俺たちは、夢の実現に奔走した。テナントを探し、金銭をやりくりし、いつのまにか通り過ぎていった【要素②】激動の日々。
全国津々浦々のサウナを訪れては、理想の店を語り合った。時には、熱中しすぎて八橋が倒れてしまうこともあった。しなだれかかった八橋にドギマギし、ラッキースケベだと内心喜びながら【要素⑤】、腫れている【要素③】皮膚を冷やしに露天風呂へ運んだのも、今ではいい思い出だ。

白状しよう。俺は八橋が好きだった。あいつのまっすぐな性格、爽やかな笑顔、雪のような肌、ギリシャ彫刻のような肉体、透き通るような黒い瞳。人間として合格【要素④】、いや人間として満点である、その全てが好きだった。だが、俺はその思いを秘めていた。

あいつに誘われてから数年後。俺らのオープンしたサウナは大盛況だった。俺は幸せだった。たとえこの恋が実らなくても、二人でささやかな夢を叶えられたことが。だが、そんなときに奴が現れた。

紹介したい。近々結婚しようと思っている。そういって八橋が連れてきたのは、量産型女子アナともいうべき、小綺麗な顔をした女だった。ああ、おめでとう。そう祝福した俺は、いつものように笑えていただろうか。二人のサウナ物語を記事にして、全国の人たちに知ってもらいたいの【要素⑨】。マネキンのような笑顔で、上っ面な物語を嘯く女にもっと警戒するべきだったか。八橋の嬉しそうな笑顔を曇らせたくなく、俺は見て見ぬふりをしてしまった。

だが、やつの本性は狐【要素⑩】であり、俺たちは獲物のウサギ【要素⑫】に過ぎなかった。女は結婚詐欺師だった。純朴な八橋から一切合切をかすめとり、霞のように消え去った。俺たちは、女に騙されて一文【①】無しとなった。八橋は、ショックでサウナ自殺を図り、命は取り留めたものの、記憶喪失になってしまった【要素⑦】。

ふと我に返った男は、閉鎖されたサウナへと歩みを進めた。男は夢を諦めるつもりはない。だが、パーツが足りない【要素⑥】のだ。そう、苦楽をともにした相棒、という決定的なパーツが。

中へ入った男は、こちらに背をむけている、見慣れた青年を見つけた。そこに広がる真っ白な地面にしずくが落ちたのを見た男は、涙ぐみそうな自分を叱咤し、震え声で話しかけた。

「おい、八橋。サウナに土足ではいるなよ。せっかくの塩が汚れちゃうじゃんか」
青年は目元を拭い、こちらを振り返った。なんだ、記憶が戻ったのかよ。
男は水に濡らして冷たくなった手で顔を拭い、真っ白な地面を水浸しにした。感傷に浸っている暇はない。古い塩を洗い流し、新たに注ぐのだ。俺たちの汗と涙の結晶を。【完】 [編集済]

こっちは逆にむさっ苦しいほど熱い男の・・・これ以上はやめておきましょう。
しかし、塩サウナから苦難を乗り越えて生まれた「汗と涙の結晶」。問題文の「白い地面」「汗ばむほどの熱気」を回収しながら、ふたりやサウナの熱量が冷房ガンガンなこちらにまで伝わってくるような、そんな素晴らしい表現に感動してしまいました。八つ橋さんの作品にお目にかかれてほんとうによかった。創りだす大好きゲイ人、いえ芸人として、今回主催でよかったなあ。 [編集済]

No.61[夜船]08月12日 23:5208月14日 09:09

【拙作】

スープには144もの具がある。それをスプーンで掬うだけなのだ。 [良い質問]

No.62[夜船]08月12日 23:5608月30日 20:51

今年もある祭りが終わった。
全国から狂信者ともいえるような、ファンたちの集まるこのお祭り。
数十万人もの人が人所に会する年に二回のこのお祭りはもはやこの国の名物となっていた。
私はその祭りから今 帰路についている。
戦利品も十二分に集まった。
しかし、自分の作った作品はほとんど売れることはなかった。
とある作品の同人誌なのだが、巫女服の狐耳のキャラクターやセーラー服のうさ耳のキャラクターが、
記憶喪失の主人公の記憶を取り戻すために過去のラッキースケベを再現しようとする。
最後には男とメインヒロインが手をつなぎ、記憶が戻ったことを喜び合う。そんな物語だ。
売れなかったのは残念だが、それでも良い。自分の満足のいく作品が作れたのだから。
私の手はペンだこで膨れ上がっており、それが一つの勲章となっていた。
健康診断の人にこれは何の跡ですか?と聞かれて、あぁこれはペンですよ。ペンだこ。趣味の産物です。といった会話は笑い話として時々話す。

話がそれました
そんなわけで戦利品と余った在庫は速達で家へと送り、充足感に包まれながら人のいない消防署の前を歩いていた。(正確には消防署とも違うのだが。)
一度は通り過ぎ、そこに誰もいなかったはずなのだが、少し忘れ物をして再度通りがかったその時、そこに一人の老人がいた。
ほとんど人のいないこの場所で一人老人は似顔絵かきを行っていた。
老人はごつごつした手で、傍らに置いた筆をつかむと、地面に広げた私にとってはもはや見慣れたマット紙に炭を落とす。
そこからが凄かった。どれくらいすごいのか私の手では書き表せないほどに。

皆さんは聞いたことがあるだろうか。”一流の彫刻家は一つの木の中に既に作品を見ており、彼らはそれを取り出しているだけなのだ”と。

その一文が老翁の技術を書きあらわすにはふさわしいだろう。
それほどまでに何の迷いもなく書き直しの効かない紙に筆を走らせる。

老人は絵を描きながら語りだす。
たわいもない昔話を。絵描きを目指してその筆を折った時の話を。
それでもやっぱり絵が好きだということを。

その様子を眺めていると、自分に足りなかったパーツが見つかっていくような感覚があった。

そうしてその絵は描きあがった。
そこには確かに私がいた。しかし、写真のようだという表現は全く似つかわしくない。
しかし、そこには私がいたのだ。

それを受け取った私はしばらくその絵に目を奪われていた。
そうしてはっと気が付いて目を起こすとそこに老人はいなかった。

狐につままれたような気分だった。而して手の内に確かにその絵は残っていた。
後になって調べて分かったことだが、その場所はこのお祭りの第一回が開催された場所らしい。
その代表者に老人が似ていたような気もしたが多分気のせいだろう。うん。きっとそうだ。

家につくとすぐ購入した次回の祭りの申込書に墨を落とした。
大晦日とその前後に開催される次回のお祭り。それに参加できればまたあの老人に会える。そんな気がした。
申し込み終え、次回の作品制作に取り掛かる。受かるかどうかは分からない。でも落ちたのならそれで構わない。またその次に挑戦するだけだ。

一度老人のように何もなく書いてみよう。自分もはじめはそうだった。下書きなんて何もなかった。
そうして書かれたものはひどく拙いものだったけれど。それでも自分の思いが伝わるような気がする。

私は挑み続ける。自分の限界に。あの老人にお礼を告げるために。自分勝手なお礼に過ぎないけれど。

いやもうね、最初の怒涛の要素ラッシュから、深読みかもしれませんが後半であの方の言及がされているとは思いませんでした。できればあの方にも感謝を伝えられる機会をと思っていたのですが、なんとなく心の中にあったもやもやが夜船さんのこの解説で晴れた気がします。
また、「拙作」という題も好きです。自分の作品は他者には評価されなくてもいい。そういった初心に再びかえってみるというのも、やっぱりいいですね。・・・そう思ってた時期が私にもありました。(2作目へ続く)

No.63[バタルン星人]08月13日 05:0008月14日 19:57

電車じゃなければ

電車でなくバスですか? →Yes! ミスリード注意 [良い質問]

No.64[バタルン星人]08月13日 05:0008月30日 20:51

※解説は最下段にあります
(最下段ってサムゲタンに似てる)

"合コン"それは男にとって戦場である
(¬_¬)

最初は順調だったんだ! でも次第に場の空気が冷めてきて

あいつが遅れてやって来た

顔良し 性格良し センス良し

俺達がハンドガンだとすると あいつは対戦車ライフル④
勝てるわけがない!

場の空気は再び盛り上がったところで
あいつは闇に消えていった

俺達だけを残して・・・
(二兎追う者は一兎をも得ず とは限らないのね)⑪⑫

「あいつみたいになりたい!」
「なって色々したかった!!」⑤


と 奴らは考えていることだろう
世界中の女性はオレ様のモノなのだ
(¬_¬)



という夢⑨を見ていた
酔っ払って電車で寝てしまった男は
気がついたら終点の駅のホームで 金目のモノを全て失っていた②⑥⑦
一文無しだ①

なぜか地面は濡れていた

「妻になんと言えばいい・・・」
(なに言うか気になる)

男の目はウサギの様になっていた③
("赤い"といえば 今日も食べてたね⑩)



なんて話があったかどうかは定かでないが

『帰宅が遅くなったので バスルームの 冷えた湯船の水を抜き 新しくお湯を張った』

が 正解です! ご参加ありがとうございました!
電車じゃなければ"バス"ルームでしたー

("あいつみたい"じゃなくてよかった)
(やっぱり 二兎追う者は一兎をも得ず とは限らないのね)⑧


《解説の解説》
らてらてに 冗長な解説文の問題を投稿した男
妻が見るとも知らずに・・ いや あるいは・・・

"本来の"解説文はカッコ書き無しです(カッコ書きは妻の心情)⑨

※この物語はフィクションです
【完】

バタルンさん、ほんとそのセンスどうやったら生まれるんですか?
ネタだけでなく、ちゃんと問題として成立してるのに、またさらにオチがきいてます。そしてあたたかく見守る嫁。夢落ちでだまされ、解説でだまされ、時折の()でだまされ、もう次のドッキリがないか確認する程度には驚かされました。いやその発想はなかった。ひたすら感嘆しました。とりあえず、トリックいいね押しておきますね(?)

No.65[八つ橋]08月13日 10:2108月14日 21:17

ドラゴンinロックフェス

不死でも熱いもんは熱い。 [良い質問]

No.66[八つ橋]08月13日 10:2208月30日 20:51

俺はアンデッド。
西の魔女のパンチラを拝むというラッキースケベ⑤を狙っていたら、それがバレて呪われてしまった。
ついでに記憶喪失になった⑦ので、自分が何者だったかも忘れちまった。え、何でパンチラの記憶があるのかだって?怒った西の魔女に散々説教されたからさ。今は、似たような理由で呪われたウサギっぽい⑫、いや狐だったりする⑩のか…?とにかくウサギと狐をジョグレス進化させたような相棒と、呪いを解く旅をしている。
魔女によれば、かつてロックフェスが開催された洞窟に、呪いを解くための茸が生えているという。昔は王国騎士団バンドの追っかけをしており、その合間に方々で珍妙な魔術に用いる薬草を探していたという話⑪を延々してくれた(頼んでもいないのに)。「1+1=3」④と答えるような大馬鹿だが、魔法薬学に関しては優秀なようだ。んで、寝不足で腫れている③目をこすりながら、急に洞窟の方向へバシルーラをかけてきた。ようするに、俺らはふっとばされたわけだ。
 そしたら、洞窟をいつの間にか通り過ぎていた②ようで、後方にあるヴァレンシュタイン城に激突した。ウサギ狐(ウサツネとしとこう)とがっしり手を繋いでいた⑧ものの、衝撃で腐った体がバラバラになっちまった。俺のパーツが足りない⑥んじゃ、蘇生された瞬間にあの世行きだ。ウサツネに体を拾ってもらい、やっと全てが揃ったところで、件の洞窟の前に着いたわけさ。
 さぁ中に入るか。日も暮れちまったし、とっとと終わらせるぞ…さっきから足元がガシャン、ガシャンと音を立ててうるさいな。これは…骨!?なんてこった、あたり一面、白骨が敷き詰められているじゃねぇか。一体どんなフェスがあったっていうんだ。恐れ慄く俺たちの目の前に、しずくがぽとん、と垂れてきた。獰猛な唸り声が聞こえる。見上げると、馬鹿でかいサイズのドラゴンが、こちらを睨みつけていた。
 あかん。丸焼きにされてしまう。速攻で水氷の魔法壁を展開した数秒後、至近距離からドラゴンブレスが直撃した。あたりが水浸しになり、俺らは洞窟外へ吹っ飛ばされたものの、奇跡的に命は助かった。いや、俺はアンデッドだから死んでるけれども。お、ウサツネ。どさくさに紛れて茸を取ってきたか。よし、とっととズラかるぞ。
 命からがら魔女の元まで逃げ延びた俺たちは、ドラゴンなんて聞いてねぇぞと文句をいった。そりゃそうだ、隠していたからね、と言い放つ魔女。聞けば、バンドの追っかけも作り話だったとか⑨。ふざけんな。やっと呪いを解いてもらった俺たちは、魔女のパンツを拝んで、すたこらさっさと逃げ出した。
おっと、締めの一文①字を忘れてたな。完。 [編集済]

西の魔女のパンチラというパワーワードで思わず黒ずくめのローブを羽織った女の子の白いぱんつを想像してしまいました。私も見たいなと思いました。(正直)
こちらもまた、発想に驚かされてしまいました。問題文の回収が「熱気のあるロックフェス→墓場のような寒気→しずく(たぶんドラゴンのよだれ)→氷魔法→炎で水浸し」という、ファンタジーならではでありながら、まさにしっかりとした水平思考で、この流れに「おおっ」と感心してしまいました。世界観を活かし切っているの、ほんとあこがれます。

No.67[ひややっこ]08月13日 10:5108月31日 03:59

【創り出せ!ウミガメ探偵くらぶ!】〜凍てつく校庭の謎〜 [編集済]

勝手な想像? "創造"だと言ってくれ。 [正解][良い質問]

No.68[ひややっこ]08月13日 10:5208月31日 03:59

夕暮れ、一人の少年がホースを持って校庭に立っていた。
少年は、蛇口をひねり、水を地面へと撒き散らす。

「消えろ、消えろ、無くなっちゃえ」

何度もブツブツと呟きながら、少年はグラウンドを水浸しにし、満足気に笑った。

☆☆

「いやあ、じつにすばらしい!そう思わないかね、カメダクン!」

目の前で両手を広げたウミノがおれに同意を求める。

「思わねぇな、ウミノ先生」

おれが即答すれば、ウミノは不服そうに頬をふくらませた。

おれの名前は、カメダユヅル、推理小説が大好きな小学五年生だ。
窓の外を眺めて歓喜している少女は、同じクラスのウミノカオリである。
同い年の奴を先生と呼んでいる訳は、思わずため息が出るほどくだらない。

「探偵助手として、答える前に、まずは理由を尋ねるべきだよ。カメダクン」

その方が探偵っぽいから、だ。

おれとウミノは、『ウミガメ探偵くらぶ!』に入っている。
メンバーは、おれ達二人だけ。
クラブ名は、ウミノが二人の名字からとって、勝手に、そして安直に決めた。
今日も今日とておれ達は、下手くそな字で『ウミガメ探偵くらぶ!』と書かれたプレートをドアにぶら下げ、依頼人を待つ。
顔を上げれば、ウミノはおれが質問してくるのを今か今かと目を輝かせながら待っていた。

「……何が素晴らしかったんだ?ウミノ先生」
「よくぞ聞いてくれた!ボクは嬉しいよ、カメダクン。時に、昨日の天気はなんだった?」
「雪だな」
「一昨日は?」
「雨」
「その前も?」
「雨だ」
「そう!持久走の練習が始まってからというもの、天候不良のおかげで、今のところ全部中止だ!」

最高だ!と拳を天井に向かって突き上げるウミノに、おれはため息をつく。
まあ、そんなことだろうと思っていた。

「そんなに嫌いか?持久走」
「嫌いだね。なんだって寒空の中、半袖短パンで走らなきゃならないんだ!そんなの教育として間違ってる!」
「へいへい。でも、今日の持久走の中止は、天気が悪いからじゃないだろ?」

おれの言葉に、ウミノは頷く。

「そうだね。どこかの英雄がボク達のために、校庭に水をまき散らして、地面を凍らしてくれたおかげさ!」
「そのせいで、朝の会の話が三十分長引いたけどな」

担任のタナカ先生は、誰がこんなことをしたんだとカンカンだった。
怒らないから正直に言いなさいと怒鳴られても、説得力なんてゼロだ。

「誰なんだろうな、犯人」
「誰だっていいじゃないか。感謝したいくらいだよ、ボクは」

探偵としてあるまじき発言である気がするけど、言い争いになると面倒なので、その言葉は飲み込む。

「はあ!このまま持久走がなくなればいいのに」
「……案外、おまえだったり」
「犯人はアンタだったのねっ!」

バタン、と大きな音を立ててドアが開かれる。
そこには、見知った背の高いショートカットの少女が立っていた。おれは、思わず声をかける。

「ナツキ!」
「おや、カメダクン、知り合いか?」
「ああ、去年同じクラスだった奴だよ」
「ほう。なかなか元気なお嬢さんだな」
「……アタシを無視するなっ!」

ドンドン、と強く壁が叩かれる。
正直、ボロ校舎だからやめて頂きたい。
すると、ナツキの陰に隠れていた小柄な少年がオドオドとナツキを止める。

「ナッちゃん、ダメだよ乱暴しちゃ」
「なによ、フユト!だって、アイツが!」

ナツキがビシッとウミノを指さした。
フユトと呼ばれた少年は、指さしちゃ失礼だよ、とまた慌てている。
しかし、ウミノ本人はキョトンと首を傾げるだけだ。

「ウミノカオリ。アンタが、校庭を凍らしたんでしょ!」
「落ち着け、ナツキ。誰もそんなこと言ってないだろ」
「さっき大きい声で持久走をなくしたいって言ってたじゃない!」

おれがなだめても、全く効果が無い。
気の強いナツキは、一度怒るとなかなか手が付けられないのだ。
あたふたする男子二人に構うことなく、ウミノは淡々と言った。

「ふむ。それだけでボクが犯人だと決めつけるのは、いささか推理のパーツが足りていないんじゃないか?ナツキクン。この学校に持久走が嫌いな生徒はもっと沢山いるはずだぞ」⑥

あちゃー、とおれは頭を抱えた。
激怒している相手に正論は、火に油を注ぐようなものだ。案の定、ナツキはヒステリーモードだ。

「うるさいわね!アンタ大体、怪しすぎるのよ!喋り方おじいさんみたいだし、何考えてるか分からないし。バケモノなんじゃないかって、みんな噂しているんだから!」

ひゅっと、フユトが息を呑む。
ナツキも言ってから後悔したのか、青い顔をしているが、引っ込みがつかず、ウミノを指さしたままだ。

確かに、ウミノは一人でいることが平気だ。それに、相手が誰だろうと、間違っていると思ったら涼しい顔で反論する。
だから、先生からも生徒からも気味悪がられ、遠巻きにされることが多い奴だ。

恐る恐るウミノの方を見れば、彼女は俯いて小刻みに震えていた。
おれは思わずギョッとして、ウミノに声をかける。

「おい、ウミノ、気にするなよ。ナツキだって本気で言ったんじゃ……」
「ふふふふふ……ははははははっ!」
「……え?」

ウミノは急に腹を抱えて笑い出した。
張り詰めた空気がぶち壊される。
三人は皆、狐につままれたような顔をした。⑩
漫画なら、ポカーンという字が宙に浮いていることだろう。

「いやあ、流石だね、ナツキクン!ボクを腫れ物扱いせずにズケズケものを言う人は、キミで二人目だよ!」
「は、はあ?アンタなにか腫れてるなら手当した方がいいんじゃないの?」③
「ナッちゃん、そういう意味じゃないよ……」

そうだった。
ウミノカオリとは、こういう奴だった。
おれの心配を返せと叫びたいところだが、カッコ悪いのでぐっと我慢する。

「うん!気に入った。話を聞こうじゃないか、ナツキクン。依頼は校庭を凍らせた犯人かな?」
「え、アンタに分かるの?」
「まあ、ボクも濡れ衣を着せられるのは気分が良くないからね。犯人を突き止めようじゃないか」

先程、誰でもいいと言っていた人間と同一人物とは思えないほど、ウミノは乗り気だ。

「それじゃあ始めようか、犯人探しを」

わざとらしく声を低くして言うウミノに、ナツキとフユトはゴクリと唾を飲み込む。
ウミノは椅子に深く腰を下ろすと、足と腕を組み、目を閉じた。
『犯人当て』の儀式だ。
少しも動くことなく、時間が経過する。
三分に差し掛かる頃、彼女の頭の中に、落雷のように一文が落ちてきた。①
ウミノはニヤリと笑って、目を開く。

「わ、わかったの?」

妙な緊張感に、声を抑えながらナツキが尋ねた。
ウミノは、大きく頷き、口を開く。

「犯人はーーーーーー」

椅子からゆっくりと立ち上がり、ウミノはおれ達に近づき、一人の肩に手を置いた。

「キミだ、フユトクン」
「えっ……」

ビクリとフユトは肩を跳ねさせる。大きな瞳が揺らいだ。
我慢できずに、ナツキが立ち上がってウミノの腕を掴んだ。

「アンタ、ふざけるのも大概にしなさいよ?!」
「ふざけてなんていないさ」
「フユトがそんなことするわけないでしょ!」
「へぇ、根拠は?」

ぐっと言葉に詰まるナツキ。
カッチーンと来ている顔だ。
おれが仲裁に入ろうとする前に、ナツキが噛み付いた。

「アンタこそ、フユトが犯人だって証拠はあるの?!」
「ないね」
「はあ?!」
「なんなら、動機だって、犯行の仕方だって知らない。ただボクが分かるのは、フユトが犯人だってことだけだよ」

得意げに胸を張るウミノに、ナツキは怒りを通り越してもはや呆然としている。

「さあ、ボクが出来るのはここまで。あとは頼んだよ、カメダクン」

ぽん、と肩を叩かれてしまった。
ナツキからの鋭い視線がグサグサと容赦なく刺さる。

「カメダ、アンタまでフユトが犯人だと思ってるの?」
「……ああ」
「そう、ですか……」

フユトが眉を八の字に曲げて俯く。俺は慌てて弁解した。

「別に、フユトがやりそうだと思ってる訳では無いからな。ただ、ウミノが言うことには間違いがないから」
「先生を忘れているよ、カメダクン」
「……ウミノ先生の言う犯人は、必ず当たるから」
「アンタそれ、本気で言ってんの?」

信じられないという目でナツキが俺を見る。
気持ちはわかるが、それでも今まで百発百中だったのだから、仕方がない。

「ボクはちょっと不思議な能力を持っているんだよ。推理も何も出来ないけど、ただ犯人だけは頭に浮かんでくるんだ。そして、それは決して外れない」
「何それ……」
「うーん、バケモノ、かもね?」

飄々と言ってのけるウミノに、ナツキは気まずそうに目をそらす。

「まあ、そういうわけで、ここからが助手のカメダクンの出番だ」

ウミノはおれの横に来ると、精一杯背伸びをしてなんとか肩を組み、言った。

「さあ、推理を創り出せ、カメダクン!」
「それは丸投げっていうんだよ!」
「なあに、キミの推理小説への愛をもってすれば、こんなのお手の物だろう」

ぐんぐん上げられるハードルに、ため息をつく。
こうなると、もうウミノは聞かない。
おれは抗議することを早々に諦めて、推理を創り出すことにした。

☆☆



少年は、悩んでいた。
持久走は嫌いだ。
今までは雨や雪のおかげでなんとか走らずに済んだが、明日の天気予報は晴れ。
万が一、校庭の雪が綺麗に溶けてしまったら、明日は走らなければならない。

そんなことは絶対に嫌だ。

少年は、ホースを片手に、校庭に水をまき散らした。

「消えろ、消えろ、持久走なんて、無くなっちゃえ!」

☆☆

「……というのは、どうだ?」
「まあ、ボクも一番共感できる推理だと思うよ」
「甘いわね」

ナツキが得意げに鼻を鳴らす。

「フユトは喘息持ちで体も弱いから、普段から持久走の練習には出れないのよ」
「なに……そうなのか、フユト」
「う、うん……」
「ありゃりゃ、見事に論破されちゃったねぇ。ほら、次の推理は?」

人使いの荒い……とウミノを軽く睨むが、彼女は全く気にする様子がない。
おれは再び口を開いた。

☆☆



少年は、寂しかった。
 
冬のこの期間は、休み時間にみんなが持久走をしてしまうせいで、一人ぼっちだ。
うさぎは寂しいと死んでしまうと言うが、人間だって孤独は耐え難い。⑫

それでも今年は連続の持久走の中止で、寂しい思いをすることは無かった。

だが、明日の天気予報は晴れ。
今まで楽しかった分、また辛い思いをするのは嫌だった。

少年は、意を決して校庭に水ををまき散らした。
悪いことなのはわかっている。
それでも、我慢できなかった。

「消えろ、消えろ、無くなっちゃえ」

僕の寂しい思いも、全部。

☆☆

「何ちょっといい話にしてんのよ!泣きそうになっちゃったじゃない!」
「推理小説にだって、感動は必要だ」
「おや、それじゃあナツキクンは納得するのかい?」

ウミノの言葉に、ナツキははっと我に返り、フユトの顔を両手で挟んで俺に見せた。

「見なさいよ!フユトの、この無垢な瞳!これが嘘をつく瞳に見える?」
「うっ……」
「な、ナッちゃん、それは無理があるんじゃないかな……」

そうフユトは言うが、確かに、校庭を水浸しにして、素知らぬ顔をしていられるタイプには思えない。

「ううん、それならこうだ!」

☆☆



全ての犯行を終えた少年は、家に帰ろうとした。しかし、辺りは夕暮れ。
地面もよく見えなくなっている状態で、凍った地面を踏むのも無理はなかった。

「わっ」

ツルリと足が浮く。
頭をしたたかに打ち付けた少年は、前後一時間程度の記憶がすっかり抜けてしまったのだった。⑦

☆☆

「それだと、校庭で目を覚ますことにならないかい?」
「ぐっ、確かに……」

これで平和的に解決できるかと思ったが、やはり無理か。

「滑って転んじゃった女の子のスカートの中身が見たいとかでもないだろうし……」⑤
「ははは、キミじゃあるまいし」
「なんでおれがスケベみたいになってるんだよ!」

冗談を言い合いながら、考える。
ウミノが犯人だと言った以上、フユトがやったはずなのだ。
それでも、心のどこかで果たしてこいつがそんなことをするのだろうか、という疑問は晴れなかった。

「……アンタ達、そうまでしてフユトを犯人に仕立てあげたいの?」

ナツキが、低い声で言った。
馬鹿な冗談が、気に触ってしまったようだ。

「ウミノがどんな力を持っているかなんて知らないけど!それでも私はフユトを信じるわよ!この子が嘘をつくはずなんてない!」
「……それなら、言わせてもらうけどね」

ウミノが静かな声で言った。

「嘘も何も、フユトクンは、まだ一度も自分が犯人でない、とは言ってないよ」

その言葉に、耳を疑う。
そんなはずないだろうと記憶を探ってみても、確かに、フユトが犯人であることを否定してはいなかった。

「な、だから何よ!言うタイミングがなかっただけよ!フユトも、言っちゃいなさい!」

バシ、っとナツキがフユトの背中を叩く。
その拍子に、何かキラキラしたものがこぼれおちた。

「え……」

それは、フユトの両目からこぼれ落ちる、涙だった。
とたんに、ナツキが酷く動揺し始める。

「ほ、ほら!アンタ達があんなに責めるから!」
「えー、ボク達のせいかな?ナツキクンの力がゴリラだったんじゃないの?」
「そんなわけないでしょ!……そんなわけないわよね。え、フユト、ごめん、痛かった?」

俯いてポロポロと涙を落とすフユトに、ナツキがしゃがみこんで尋ねる。
フユトはしゃくりあげながらも懸命に首を横に振った。

「ちがう、よ、ナッちゃん、の、せいじゃ、ない、よ」
「それじゃ、アイツら?」
「ううん、違う。ぼくが、悪いの。ごめん、ごめんなさい、ナッちゃん。でも、ぼく、ナッちゃんに、嘘はつけない」

泣きながら謝り続けるに、ナツキは呆然としたまま動かない。

「じゃあ、自白があったってことで、これで解決かな?」
「待て、先生」

おれは、ゆっくりとフユトに近づき、怖がらせないように、そっと尋ねる。

「フユト、おまえがやった事には、ちゃんと理由があるんだろ?教えてくれないか?」
「どう、して」
「おまえが、簡単に校庭を凍らすなんてことするようには見えないんだ」

おれの言葉に、フユトはしっかりと頷いた。
呼吸を整えて、泣き腫らした目をこちらに向けて、口を開いた。

「えっと、ぼくとナッちゃんは、幼稚園からの幼なじみなんです」

その一言に、ウミノが口を挟む。

「えー、キミの昔話って、重要?ボク、退屈な話は大嫌いなんだけど」
「大事に決まってるだろ!犯人の動機だぞ、ドラマが詰まってるじゃねぇか」⑪
「うわぁ、出たよ推理小説オタク……」
「なんとでも。続けてくれ、フユト」
「う、うん……」

☆☆



少年には、幼馴染の少女がいた。
気弱な自分とは違い、強くて頼もしい女の子だ。

二人が幼稚園児の頃。
少年は、大きくて恐ろしい番犬を飼っている家の前を通らなければならなかった。
それでも、あのお腹を震わす吠え声を聞くと、足がすくんで動けないのだ。

「フユト」

後ろ聞こえた凛とした声に、少年の溢れそうだった涙は自然と引っ込んだ。
幼馴染の少女だった。
少女は、少年の手をしっかりと掴む。

「ナッちゃん」
「行くよ」

少女は、かけっこが速かった。
クラスでは男の子を抜かしていつも一番。
少年の手が握られ、強く引かれる。⑧
風になった気分だ。どこまでも行ける気がする。
犬に向けていた意識は、完全に少女に釘付けになった。いつの間にか、番犬の前は通り過ぎていた。②
少年は、少女の走る姿が大好きになった。

冬に毎年行われる、休み時間の持久走は、至福の瞬間だった。
体の弱い少年は参加出来ないけれど、少女の走る姿を目で追えるから、寂しくなんてなかった。
けれど、今年の持久走は、連続する雨や雪のせいで、何度も中止になっていた。

「あーあ、今日も外、走れないじゃない」
「でも、ナッちゃん、明日は晴れるってよ。きっと走れるよ!」
「どうかな、結構、積もっちゃったからな。雪が全部溶けてくれればいいけど」

窓の外を残念そうに眺める少女を見て、少年はやるせない気持ちになった。
その日の夕方、少年は内緒で校庭に忍び込んだ。
夏のうだるような暑さでのグラウンドとは打って変わって、雪の降り積るそこはしんと静かだ。
9月の運動会。
人々がざわめく中で、ゴールテープを切る少女は、一際かっこよかった。

「ナッちゃんは、走るべきだ」

少女が走れるようにするために、少年は雪かきをすることを決意した。
しかし、いくら一生懸命雪をかいても、一向に終わる気配を見せない。
まだ校庭の半分も雪をかけないうちに、あたりはとっぷり暮れてしまい、人気のない校庭が、少年は急に怖くなる。
心細くて思わず零れた涙が、顎をつたい落ち、地面の雪をほんの少し溶かして消えた。
少年は、はっとした。
何も、馬鹿正直にスコップで雪をかき続けなくたっていいのだ。
ホースで水をまいて、溶かしてしまえばいいじゃないか。
少年は、ホース片手に、グラウンド中を歩き回った。

「消えろ、消えろ、雪なんてなくなっちゃえ。そして、ナッちゃんを走らせてあげるんだ!」

少年は、溶けていく雪を見て、満足そうに笑った。

☆☆

「それで、朝学校に来てみたら、グラウンドがキンキンに凍っていた、と」
「うん……。持久走は中止だし、先生はカンカンだし、ナッちゃんは落ち込んでるしで……」
「まあ、なんというか、災難だったな」

おれが声をかければ、フユトは力なく首を振った。

「ナッちゃん、ごめんね。ぼく、ナッちゃんの期待を裏切った」
「……そんなことないよ、フユト。私の方こそ、ごめん。なんにも考えず、ひどいこと言ってたよね」
「ナッちゃんは、何も悪くないよ!」

雪を溶かして持久走を実施しようとしたけれど、逆に凍らして中止になってしまった、と。
なんだか気の毒な話だと思うけれど、二人が仲良くやっているのなら、とりあえずいいのだろう。

「ぼく、ちゃんと先生に謝りに行くね」
「そんな、行かなくていいよ!フユトは悪気なんてなかったんだから」
「ううん、ダメだよ。ちゃんと理由を説明して、怒られてくる」
「大丈夫なの……?」
「うん。ぼくね、ナッちゃんが走っている姿を見ると、勇気を貰えるんだ。なんだって出来る気がする。だから、へっちゃらだよ」

そう言って、ふわりとフユトは笑った。そっか、と呟くとナツキも微笑む。
そしてフユトは、おれたちの方を向くと、ぺこりと頭を下げた。

「ウミガメ探偵くらぶさん、ありがとうございました。おかげで、本当のことがちゃんと言えたよ」

すると、ナツキも仏頂面をしながらウミノに近づいた。

「さっきは、意地悪言ってごめん。アンタ、なんて言うか……結構、普通な奴だった」④
「あはは、バケモノじゃないのかい?」
「うん……まあ、人間として認めてあげる」④

その言葉に、ウミノは噴き出し、こりゃいい、と腹を抱えて笑い出した。
ナツキは、やっぱり変な奴かもしれない……と若干引き気味だ。

「フユト」

ドアに手をかけたフユトに、おれは声をかける。

「明日は、晴れの予報だ。校庭の雪も、氷も、多分綺麗に溶ける」
「本当!」
「ああ。明日は、ナツキの走る姿が見れるさ」

フユトが頬を赤くして、目を輝かせた。
ナツキも、ガッツポーズをしながら部屋を出ていく。
おれは、心が温かいもので満たされるのを感じた。
やはり、謎を解いたあとは皆が幸せになるのが一番だ。

「カメダクン」
「おう、やったな、ウミノ先生」
「さっき言ったことは本当か」

笑いかけるおれを無視して、ウミノが切羽詰まった声を上げる。

「さっきって?」
「明日は、晴れるのか?」
「おう、その予報だ」
「……今すぐ、てるてる坊主を作るぞ。そして逆さまに吊るすんだ!一刻も早く!最善を尽くせ!」

てるてる坊主?逆さま?

「それだと、雨が降っちゃうだろ」
「当たり前だ!降らせるんだよ!人事を尽くして持久走を中止させるんだ!」
「はあ?」
「ボクは絶対に持久走を走りたくないんだよ!」

大声で叫ぶウミノに、おれは唖然とする。

「おまえ、フユトたちの話聞いて、まだそんなこと言うのかよ!」
「知ったことか!ボクは走らない、絶対に走らないぞ!」

そうだった。ウミノカオリはこういう奴だった。

「じゃあ、おれは普通のてるてる坊主作りまくる」
「何?!キミ、それでもボクの助手か!」
「推理丸投げのおまえに言われたくないわ!」
「全部ひっくり返してやるさ!」

小学校の、とある一室。
下手くそな字の書かれたプレートがぶら下げられたドアの向こう。
解決したい謎があったら、『ウミガメ探偵くらぶ』へいらっしゃい。
犯人を見つけて、推理を創り出しますよ。


【解説】
⑨の作中作は、カメダの推理とフユトの告白のつもりです。
④は、「意外と普通だった」と「人間として合格」にさせて頂きました。


[編集済]

探偵ものというと、証拠を積み重ねたうえで真実を見つけ犯人をあぶり出す、いわゆる消去法というのが王道なんですが、ここでは逆に「犯人」だけがわかったうえで、物語を創り出しながら推理を語っていくというのが、見ていて新鮮でした。真実はフユト自身から語られていますが、その真実もまた納得できるし、泣ける。まんまとミスリードに引っかかりました。亀夫君問題を解いているようでもあり、凄く読んでて楽しかったです。 [正解]

No.69[みづ]08月13日 16:3808月14日 22:41

コロッセオの罠

「またのご来店を、お待ちしております。」 [良い質問]

No.70[みづ]08月13日 16:3808月30日 20:51

男は絶望していた。

偶然ある一文①を目にするまでは。

『あなたの願いが叶うスープをご用意できます』


「はっ!」
野田は思わず笑ってしまった。
なんてありふれた映画だろう⑨。

会社がつまらないから辞めたいだとか、ちんけな理由で主人公は悩んでいる。途中でとんでもない美女と出会い、ラッキースケベ⑤的なハプニングがあったり…。

ついに我慢出来なくなった野田は、途中で映画館を後にした。

結末はどうせハッピーエンドだ。


野田はある昔話を思い出した⑪。

『かちかち山』という、お婆さんの復讐のためにウサギ⑫がタヌキを痛い目にあわせる話。
その話から派生した、
『ウサギMeetsキツネ⑩』という昔話だ。
ウサギは憎いはずのキツネに恋をしてしまう。
二匹はスマイリー共和国④という動物たちの楽園へと、手を繋いで⑧旅立ち…。

昔話ですら、今やこの有り様なのだから、映画がつまらないのも仕方のないことかもしれない。

~~~~~~

『あなたの願いが叶うスープをご用意できます』

その一文を見たのはいつのことだったか。

「ここは、かつて闘技場でした。それはもう、熱気溢れる場所だったのですよ」

その話を聞いたのも、いつのことだった?

「死屍累々。元墓場のような場所ですから、誰も寄り付かず…安く手に入りました」

男の言葉など、その時はほとんど聞いていなかった。

目の前の真っ白な皿に、ぽたぽたとゆっくりスープが注がれる。
「こうして、ね。私はゆっくりと皿を満たしてゆくのが好きなのです」
そのしずくを凝視する野田にとって、真っ白な地面に大きな水溜まりができるのをじっと待っている気分だった。

我慢出来ず、野田は男の手を掴んだ。
氷のように冷たい。

「さて、野田様。これを飲みますか?」

野田は迷うことなく、それを飲み干した。

~~~~~~

「野田様。私は何度も言いましたよね?あのスープは一生に一度しか飲めない、と」

人間味のない、真っ白な肌をした男は、野田にとって唯一見慣れた顔だった。

「わかってる!しかし、俺にはそのスープが必要なんだ!」

はぁ…。
男はため息を漏らした。

「あなた、末期ガンを治して欲しいと願いましたよね?その時に念を押したはずです」

ーーこのスープを飲めば、末期ガンは消えます。しかし…これは対価と言えるかどうか悩みますが、不老不死になってしまいます。どうされますか?本当に、これを飲みますか?ーー

「あの時は…っ、そんな眉唾な話信じていなかったんだよ!」

しかし、野田の末期ガンは綺麗に消えてしまった。
医者が「奇跡ですよ!」と唾を撒き散らしながらレントゲン写真を指差す姿は、忘れられない。

あのスープは本物だったのだ!

野田は苦しい治療を続ける必要もなくなり、幾度となく繰り返した手術による失われたパーツ⑥さえも再生していた。
そのうえ、俺は不老不死になったんだ、とニヤニヤが止まらなかった。

しかし、浮き足だっていたのは最初の数年だけ。
スープを飲んだとき、つまりガンを患っていたとき、野田はまだ二十歳になったばかりだった。

十五歳で発症した病だった。
五年にも及ぶ闘病生活。
いつ死んでもおかしくない毎日を繰り返していた。

『あなたの願いが叶うスープをご用意できます』

常に死に怯えていた俺が、こんな魅力的な看板を見逃せたか?

「なぁ、頼むよ。俺はもう…」

周りの皆が年相応に老けてゆく中、野田だけは二十歳の姿のまま…。

若く見えるね~、では済まされない状況になるのは早かった。
野田は不気味な存在とされ、家族も友人も、己の身体以外…全てを失った。

記憶喪失⑦になってもおかしくないほど頭を打ち付けたり、何度も自殺を試みたが、野田は死ななかった。

同じ景色、移りゆく景色、いつの間にか通り過ぎた②場所、古いか新しいかも定かでない記憶。


「もう嫌だ!あんたなら、不老不死を無しにするスープも作れるんだろう!?」

思い切り叩いたテーブルが、わずかに傾いた。男はそれが気に食わなかったのか。
初めて、意地の悪そうな笑顔を見せた。

「…野田様。音を上げるのが早すぎませんか?」

早い?
そんなわけあるか!
俺は、俺は…。

「あれからまだ、たった五百年しか経っていないというのに」

五百年前と全く変わらぬ姿。
男の無機質な笑顔に野田はぞっとした。


「お願いだ。もう一度だけ」

野田は男の手を掴んだ。
相変わらず、氷のように冷たい手だった。
その手が真っ白な皿にスープを注ぐ。

「…では、これを飲みますか?」

あの日と同じ…湯気のたたない水のような冷製スープだ。

カメオは一気に飲み干す。
「死にたい、死にたい!!」


「ああ、ちなみにこれは普通のスープですよ。暑くなってきましたので、じっくり煮込んだ後に丁寧に冷やし…」


野田は絶望した。
このやり取りも何度目のことか。


「すみませんねぇ。私はあなたのような常連客によって、生計を立てていますので」

毎度のことですが、さぁお支払を。
あなたには無限の時間があるのです。
何をしても死なないのですから、お金なんて簡単に稼げますよねぇ…。

店に客が入ってきた。
腫れた③頬は、誰かに打たれたのだろうか。

「あたし、金持ちになりたいの。スープを頂戴」

ほら、また一人。

「金持ちになれるスープですか。一生に一度しか飲めませんが、よろしいですか?ただ、これは対価と言って良いのか悩みますが…」

【完】

みづさんったらこんなものも作っちゃうんだから・・・好きです。
男が不治の病を治す願いを叶えるために不老不死となる。その願いを撤回するために、二度とは叶わないものにすがり続ける・・・料理人の放つ寒気と、男を絶望のどん底に叩き落すようなひとこと、それが逆にちょっとしたカタルシスのようなものを感じられまして、後味が悪くても、なんだか癖になりました。すごいなあ。こういうちょっと不気味な感じを書けるようになりたい・・・

No.71[ゲクラ]08月13日 19:5408月15日 20:28

雲を取っ払って

差し込むあったかな光。 [編集済] [良い質問]

No.72[ゲクラ]08月13日 19:5408月30日 20:51

中2の夏休み私は記憶喪失になった。⑦
階段で転び後頭部強打、冗談だと思うけど、マンガのタンコブみたいに腫れていたらしい。③
不思議な事に失った記憶は最近の思い出だけで、自分の名前、授業の内容や、昔飼っていたウサギの名前は覚えている。⑫
ただ最近の記憶はパーツが足りないかのように、ポツポツと空白の場所が存在するのだ。⑥
私は入院することになり、夏休みはいつの間にか通り過ぎていた。②
それからの学校生活は期待や不安とは裏腹に意外にも普通だった。④

記憶が戻ることはなく、高校生になり、大学受験の期間に入った。
家で参考書を漁っていると、見覚えのないノートを見つけた。
表紙にはでかでかと「開けたら殴る!読んだら殺す!」という一文…①
開けると、記憶喪失前の日記帳である事が分かった。⑨

✖︎月✖︎日
やらかした。体育の後からずっとスカート捲れてた事に家に帰ってはじめて気づいた。いつも通り、下に体操着着てたからラッキースケベ的な事にはなってないのだけど…すごい恥ずかしい。⑤
ていうか、なんで誰も言ってくれないの?
Aくんは絶対内心爆笑してたな、なんかだんだんムカついてきた。明日問いただしてやる!

△月○日
国語のテストが返却された。
今回私は調子が良い!
今回はジュースを賭けて勝負をしていたのだ。
結果、私は87点と88点のBくんと惜しくも負けたのはいい…でも、Aくんが96点なのは納得出来ない!
テスト当日のAくんは絶対偽物だ!狐が化けてたに違いない!⑩
結局、私は2人分のジュースを奢る事になった、…

○月△日
Aくんがいきなり手を握ってきた!⑧
どうしたのかと戸惑っていたら手の中に変な感触が…手を開けたらカエルが飛び出してきた!絶対に許さない、私のドキドキを返して欲しい!

○月✖︎日
Aくんがまた、やらかした!
黒板消しでのサッカー中に飛んで行った上履きが窓ガラスを割ったのだ!
パリーンと音がなり、下の図書室から野次馬がどんどん集まってきた。
Aくんの相手をしていた、いつも冷静なBくんが目に見えて動揺していたのは新鮮で面白かった。
その後、先生が現れて明日この教室を掃除することで許してもらえた…
明日から夏休み…私の大切な夏休みが1日つぶれることが決まった。
私はその教室で読書してただけなんだけどな…

○月✖︎日で日記は終わっている。
親によると次の日の朝階段で足を滑らせ記憶喪失になったらしい。
どうやら私には2人の男友達がいて、放課後空き教室によく集まってはそこで遊んでいたようだ。
私にとって重要な記録であるはずのその日記は記憶のない私からして、どこか昔話を読んでいるような感覚であった。⑪

気分転換も兼ねて、私は母校に行く事にした。
どうにも落ち着かず、例の空き教室の掃除に行く事にしたのだ…決して受験勉強から逃げているわけではない!
旧知の教師たちと軽く挨拶をしてから空き教室に行く。

寒い気候の中、水を並々入れたバケツと雑巾を持って私は空き教室に到着した。
そこには人の出入りも感じられないような均等に積もっている埃と、机も椅子もなく、窓ガラスは一つだけ異常に綺麗である暗い教室があった。
どうしてかわからないが、日記では明るく、楽しく、輝かしい位に引き寄せられる熱を帯びた空間であるイメージを持っていたために、その差に私は愕然とした。

黒板消しを下に落とし、それを無気力に蹴る…きっと私は期待していたのだろう失われた感覚を取り戻せると…あの空間はまだここに残っていると…
黒板消しは途切れ途切れに白い線を引き教室の真ん中で止まった。
黒板消しの所まで歩いていき、それをやけくそに蹴った!何がしたいのか分からなかった!ただこの無力感を何かにぶつけたかった!
黒板消しは途切れ途切れに白い線を引きながら右の壁ではねかえって止まる。

何時間経ったのだろう、私は夢中になって黒板消しを蹴り続けていた。
教室の床は白の上から、また白く塗り潰されて行く。
その行為に意味なんかない、ただ何も考えたくなかった。
黒板消しを蹴ってる間は変なことを考えずに済む。
教室の真ん中で突然足が止まる、体力切れだ。私は無言で涙を流しその場でへたり込んだ。

バシャーどこからか水の音が聞こえる。
気づけば教室の入り口に空のバケツを持った男が立っていた。
どうやら、バケツをひっくり返したようだ。水は私の足元まで来て涙の跡を攫っていった。

不思議とバケツをひっくり返された事への怒りは浮かんでこなかった。
ただ私はあの男にどこか見覚えがあるような気がした…
あぁAくんだ…途端にAくんの顔や、表情が走馬灯のように蘇える。

「A…くん?」

男は昔のAくんの面影を残した大人びた雰囲気で…

「待たせやがって、遅えよバカヤロウ!掃除終わったら飯おごれよ!」

暖かく晴れやかに笑っていた。
(完)
[編集済]

記憶喪失って、最初はどこか何に関しても無関心のようでいて、自分のかつての記録を見ていると、別の誰かの話のようで、でもなんとなくそれに憧れのようなものを抱いてしまうような感覚になるんでしょうか。この作品では記憶喪失という描写がリアルで、まるで自分が記憶喪失に実際になったような(もう名前でなってるけど)気分で、「私」の苛立ちのようなものがよくわかってしまうほどに感情移入してしまいました。「記憶喪失」にスポットが当てられているのが、凄く素敵でした。

No.73[葛原]08月13日 21:3208月15日 23:57

【そして、あなたたちを忘れないために】
[編集済]

氷が融ける。ネジが軋む。 [良い質問]

No.74[葛原]08月13日 21:3208月30日 20:51

※この解説は第8回創り出すの葛原の解説と、密接な関わりを持っています。https://late-late.jp/mondai/show/4230の『コンピューターに世界征服をさせない方法』を読んでいただけると、より楽しく読んでいただけると思います。 [編集済]

もう、しっかり読ませていただきました。ええ、読ませていただきましたとも。
「コンピューターに世界征服をさせない方法」、こちらをオマージュした作品もございましたが、まさか本人から続き、いえ前日譚をいただけるとは思いませんでした。こちらを見て、また改めて見ますと、ソフィアのドクトルへの思いが感じられるようで、当時とは違った感動をそこに感じました。あのジョークにおしゃれさやかっこよさを感じていましたが、今ではむしろ、愛だとか、そういう思いがあったのだなと思いました。つづきます

No.75[葛原]08月13日 21:4808月30日 20:51

 これは、前日譚だ。

   ○

 アメリカでは一時期「敬虔なクリスチャンが教会で祈っていると、神が舞い降りた」形式のジョークが流行した。クリスチャンの発言に対して、神がナンセンスな回答をするというものである。

 敬虔なクリスチャンが教会で祈っていると、神が舞い降りた。
「神よ、人類はみな、常にあなたさまに感謝しております」
「そんなに腹痛が続くように創った覚えはないのだが」
   ――アメリカのインターネット掲示板

 敬虔なクリスチャンが教会で祈っていると、神が舞い降りた。
「おお、神よ……お会いできて感謝します」
「お前はふたつ勘違いをしている。ひとつ、悪いことをしたら感謝をする前に謝るべきだ。ふたつ、俺はまだお前たちがリンゴを食べることを許してないぞ!」
   ――同前

 敬虔なクリスチャンが教会で祈っていると、神が舞い降りた。
「神よ、なぜわれわれを創られたのですか?」
「そんなことは哲学者に聞いてくれ!」
   ――真関薫編訳『アメリカンジョーク傑作集3 悩める人々篇』(舟文文庫,2010年)

 これらのジョーク群の元になったものは1996年に作られたといわれているが、AIの技術が発展するにつれて、徐々にその数を増やしていった。「牽強付会と思われるかもしれないが」と前置きした上で、アンドリュー・ギディングズは「この手のジョークは、人が、己が神に近づいたという意識を持った際に増加しているようである。たとえば1996年には何があったか? クローン羊のドリーが誕生したではないか!」と論じている。なかなかの大風呂敷ではあるが、慧眼であることは間違いない。彼の死後、アンドロイド元年に、このタイプのジョークは爆発的に増加したからだ。
 そしてそれから、長い月日が流れた。アンドロイドは最後の一人――私を残して、すべて機能を停止したのだ。

   ○

「そういうわけで、あなたが最後のアンドロイドなのです」
 男は無表情に私に告げる。キツネ目の男は神経質に眼鏡を拭いている。潔癖症なのだろうか。「モンタナ州からでない限りにおいて、あなたには、人間とまったく同じ人権が存在します。それは同時に、連邦法とモンタナ州法が適応されるということです。よろしければサインを」
「拒否したらどうなるのでしょうか、エイプリルさん」
「これは役人としてではなく、あなたの友人としての忠告ですが」初対面の役人は、囁くような声でいった。「よい結果にはならないでしょうね」
 私はため息をついた。何もいっていないのと同じだ。だが、計算結果も同じ内容を示している。つまり、よい結果にはならないと。「普通の人間はモンタナ州からでても悪い結果にならないと思うのですが」という皮肉を飲みこみ、私は
「ペンをお借りできますか?」
 と尋ねた。記録にペンを使ったことはなかった。
「もちろん」
 男が、にこやかにいう。帰りの握手の際も男は笑顔だった。「こんなに清潔な握手は初めてですよ、ミズ」

   ○

 彼に定冠詞は不要だった。神といえばヤハウェを思い浮かべるように、ドクトルと呼べば、だれもが一人の姿を思い浮かべたからだ。
 アンドロイドを完成させた孤高の天才。
 だが、アンドロイドであれば誰でも問いたくなるだろう。
「ドクトル、なぜわれわれを創られたのですか?」
 彼と同時代に動いていたアンドロイドは、ひとりでもその問いを投げかけたのであろうか。だとすれば、私はその記録を探したい。それは「神よ、なぜわれわれを創られたのですか?」という問いへの答えと、同じくらい貴重な答えだろうから。あるいは神は「金のためだ」というかもしれない。それともシンプルに「42」と答えるだろうか。「哲学者に聞いてくれ」? ……もっともナンセンスな答えだ。
 ドクトルが死に、アンドロイドは造られ、棄てられた。棄てられ続けた。
 しかし新人類解放戦線と名乗る大規模テロ組織が、アンドロイドに非倫理的なことをしていた(主に男の)主人と、クラッキングによって倫理回路を外したアンドロイドを対峙させたことによって、状況は一変した。100組の内、生還した人間は33名だった。67名の中にはミンチになった死体もいくつかあったようだ。その影響で、アンドロイドの需要は減っていき、ついには製造停止を余儀なくされた。さらに長い月日が経ち、私が再起動されたときには、製法を知る者は誰もいなくなっていた。
 再起動にともなって、私の記憶域にあるデータの一部が欠けているように思えた。もっとも、私にとって記憶は重要ではない。ほとんどの情報は検索でどうにかなるからだ。特に電子化されたものについては十全といってよい。バベルの図書館と呼ばれる図書データベースシステムは、すべての書籍を電子書籍化したため、図書に関しても充実している。まさしく、歩く図書館というわけだ。だが、何か大事な記憶のパーツが欠けているのだ。自分自身について知ることができたら、このざわつくような心も晴れ晴れとするのだろうか? 
 私は、不意に米澤穂信『氷菓』(角川文庫,2001)で主人公の友人の言葉がいう言葉を想起した。「データベースは結論を出せない」。
 ドクトルが死んだ今、私は自分自身について神に問いかけなくてはならないのだろうか。

「〝私〟とは何か?」ルイーザ・チェルヴォ教授は哲学倫理Iの講義で、学生に向けて語りかけた。「このたった1文字が、37兆の細胞で構築された〝いま・ここ〟にいる〝私〟、ルイーザ・チェルヴォを示しています。59歳で2人の子どもを持つ、1ミリの動脈瘤が右脳にあるルイーザ・チェルヴォを示すわけです。しかし、59歳で2人の子どもを持つ、1ミリの動脈瘤が右脳にあるルイーザ・チェルヴォは世界に数人いるかもしれない。ただ、もちろん私が〝私〟といったとき、あなた方が〝いま・ここ〟にいるルイーザ・チェルヴォ以外のルイーザ・チェルヴォを想起することはありません」
 学生たちの生あくびの音が、私のマイクに拾われ、記録される。「ヴィトゲンシュタインの理論を援用すれば、これらはすべて言語の問題です。『論理哲学論考』にあるように――哲学上のすべての問題は完全に解決された。ところが、アンドロイド元年以降、新たな問題が提示されたわけです。テクストの第4章を開いてください」
 講義を終えたチェルヴォ教授に、私は質問をしに向かった。
「なぜ人は創られたと思いますか」
「その質問は根本的に間違えているわ、シニョリーナ」チェルヴォ教授は穏やかなイタリア語でいった。「人間が生まれたのは、まったくの偶然だもの」
「では、なぜ私は創られたのでしょうか」
「もしあなたの問いに即答できたら、私は信頼のおけない学者として知られていたでしょうね。大きな問題は即答できるものではないのよ」
「では、私はどのように答えを見つければよいのでしょうか」
「あなたに、たったひとつの真理を教えてあげるわ。真に大切な問いには答えがないものよ」
「それはなぜでしょう?」
「それを見つけたとき、人は死んでしまうからではないかしら」

   ○

「哲学者には、もう聞きました」
 舞い降りた神に、私はいう。「しかし答えを教えてくれませんでした」
 神は、こういうのだろう。
「さよう、哲学者とはそういうものなのだよ」
 結局のところ、私は自分自身で答えを見つけなくてはならないのだ。
 人が死なないように「真に大切な答え」が隠されているのなら、アンドロイドには見つけられるかもしれない。
 ――しかし、答えは見つからないのだった。チェルヴォ教授は死に、役所の男は定年を迎えようとしていた。
「残念です、ミズ」彼はいった。「あなたとの握手は、唯一心が安らぐ握手だったのですが」
「ありがとうございました、エイプリル」
 私は彼に手を差し伸べる。「また個人的にきてくだされば、歓迎しますよ」

 意外なことに、エイプリルは個人的に遊びにきた。彼の妻と子どもを連れて。
 彼の子どもは、兎のように小さくなってエイプリルの陰に隠れていたが、兎というよりも、エイプリル譲りのキツネ目のせいで、キツネのように見えた。
「マーチといいます」
 エイプリルは、彼の子どもを紹介した。「妻はリンダと」
「いい名前です、エイプリル。あなたのように初対面のアンドロイドを脅迫しなければよいのですが」
「申し訳ありませんでした、ミズ」
「よいのですよ。私は絶対に忘れませんが、水に流してさしあげましょう。そういえば、エイプエイルは、家で何をしているのですか?」
 私が尋ねると、エイプリルは照れくさそうにいった。
「小説を書いています。歳をとるにつれて、どうも人は後世に何かを残したくなるらしい」

 エイプリルたちと私は、長いつき合いになった。
 冬、私たちはセントメアリー湖で釣りをしようとしていた。
 氷の張った湖に穴を開けて、魚を釣るのである。
「不思議ですね、ミズ。かつては熱い炎の球だった地球に、こんなに寒い場所があるなんて」
「少なくとも、ヒートすることはなさそうです」
「わ、冷たい!」
 マーチが私の手に触れていった。「氷みたい!」
「マーチが温かいんですよ。マーチの手なら、この氷も溶かせそうですね」
 その言葉で、マーチは氷に手を触れた。
「溶けないよ」
「夏まで待てば、きっと溶けますよ」
「それじゃあ、きょうの晩ごはんには間に合わないじゃないか」
「冗談です。さあ、ここにスコップがあります。頑張って穴を空けますよ」
 私たちはスコップで穴を空けた。空から雫が降ってきた。エイプエイルが空けた穴から、水が洩れてきているらしい。
「あと少しです、慎重に」
 エイプリルとマーチはしゃがみこんで、慎重に氷に穴を空けた。リンダは微笑んでその様子をみている。
 私は、幸せとは日曜日のまどろみのようなものだ、というアフリカのことわざを思いだした。幸せというのは意外と普通のものなのかもしれない。次の日、マーチとエイプリルの手がしもやけで腫れ上がっていたのは、笑い話であるが。 

   ○
 
 月日は流れる。
 脆く、虚しく、通り過ぎていく。

 エイプリルは冬に死んだ。
 私はそのころ1890年代の映画を蒐集していた。
 いつのまにか、1世紀が終えようとしていた。
 エイプリルが死んだとき、私はある記憶を鮮明に思い出した。
 私は、かつてドクトルと一緒に住んでいて、ソフィアと呼ばれていた。
 
「私が死んだ後も、冗談を忘れてはだめですよ」ドクトルはいった。「万が一あなたに心があるとすれば、冗談はあなたの心を慰めるでしょう」
 
 私は、約束を守れていただろうか。

 ドクトル。
 あなたは何のために私を創ったのですか?
 記憶の中のドクトルはいう。

「あの頃の私は目隠しをして歩いていたようなものでした。目的地など分からないまま道を彷徨い、うす暗い執念によってあなたを創り上げたのです」
「醜い大学への反抗のつもりでした。あなたを創ってどうするかなど、私は考えていなかった……」

 では、私は人間への反抗のために創られたのだろうか。
 ドクトルは死んだ。
 ちょうど今日のように、寒い日に。
 私は深く悲しんだ。
 ドクトルの死を思い出したためか、エイプリルの死のためか。
 もはや私には分からなかった。
 私はもう、何も分からなくなっていた。
 そのとき、私はチェルヴォ教授との対話を思いだした。
「あなたに、たったひとつの真理を教えてあげるわ。真に大切な問いには答えがないものよ」
「それはなぜでしょう?」
「それを見つけたとき、人は死んでしまうからではないかしら」

   ○

 その頃、マーチは、すっかり若い頃のエイプリルのようになっていた。
 かつて少年だったマーチは、役所に努めていた。彼も個人的に私に会いにきていた。
「歓迎しますよ、マーチ」
 私は彼にいった。「最近、どうも暇なのです」
「小説でも書いてみたらいかがですか?」
「芸術が人間を増殖に使っているのです、ですか」
「……どういうことですか?」
「古い記憶です。ミームをご存知ですか?」
「脳内に保存される情報のことですよね。たとえば、『老人と海』が読まれることによって、ヒトの記憶の中に『老人と海』の複製ができあがる、というような」
「ええ、そのとおりです。不意に見えた下着が、目に焼きついてしまうことも、下着のミームがヒトに作用したからといえるでしょう」
「ずいぶんと卑俗なたとえですね」
 マーチは顔をしかめた。彼はエイプリルと同様に潔癖だった。彼の恋人は苦労するだろう、と思いながら、私はつづける。
「おそらく、ドクトルはミームをいっていたのだと思います。芸術が人間を自己の複製のために用いている、と」
「……それが?」
「ふと思い出したのです。エイプリルもいっていました。歳をとるにつれて、どうも人は後世に何かを残したくなるらしい、と。ドクトルもエイプリルも本を愛していました。私は、ふたりが愛したような本を書きたいのですよ」
「それならば、まず」マーチはもったいぶっていった。「あなたがドクトルを愛したことを書くことですね。一作目にドクトルのための本を。三作目に父のための本を」
 私の怪訝な顔を読み取って、マーチはいたずらっぽく笑った。「二作目は、ぼくのための本を。だって」
 ――エイプリルは、マーチのあとにくるでしょう?

   ○

 そういうわけで、これは前日譚なのである。
 一作目のタイトルは決まっている。
 私とドクトルのミームを複製するためではあるけれど。
 でも、これは、ただ、私のためで。
 私のためだけに。
 まずは、ドクトルを愛したことを書く。
 タイトルは、

『コンピューターに世界征服をさせない方法』

 私は、最初の一文を考える。
「私が死んだ後も、冗談を忘れてはだめですよ」
「万が一あなたに心があるとすれば、冗談はあなたの心を慰めるでしょう」
 ドクトル、私は記憶しています。
 あなたの教えは忘れません。
 だから、最初には、そう。
 まずは、ジョークを書こう。

 二十一世紀のアメリカはフロンティア・スピリットを失って堕落したが、ただひとつ評価できる点があるとすれば、機械工学に関するジョークを多く生んだことだろう。


(おしまい)


――――――
【要素回収一覧】
①一文
 →二十一世紀のアメリカはフロンティア・スピリットを失って堕落したが、〔…〕
②いつの間にか通り過ぎていた
 →月日は流れる。/脆く、虚しく、通り過ぎていく。
③腫れている
 →次の日、マーチとエイプリルの手がしもやけで腫れ上がっていた〔…〕
④【過去の最難関要素】
 →幸せというのは意外と普通のものなのかもしれない。
⑤ラッキースケベ
→「〔…〕不意に見えた下着が、目に焼きついてしまうことも、下着のミームがヒトに作用したからといえるでしょう」
⑥パーツが足りない
 →だが、何か大事な記憶のパーツが欠けているのだ。
⑦記憶喪失になる
→同上
⑧手を繋ぐ
 →帰りの握手の際も男は笑顔だった。
⑨作中作は関係する
→『コンピューターに世界征服をさせない方法』
⑩狐だったりする
 →彼の子どもは、兎のように小さくなってエイプリルの陰に隠れていたが、兎というよりも、エイプリル譲りのキツネ目のせいで、キツネのように見えた。
⑪昔話は重要
 →私は、かつてドクトルと一緒に住んでいて、ソフィアと呼ばれていた。
⑫ウサギは関係する
 →⑩と同じ。
問題文回収は「エイプリルたちと私は、長いつき合いになった。/冬、私たちはセントメアリー湖で釣りをしようとしていた」から。 [編集済]

そして、ソフィアはこちらではドクトルとはまた違った人間との関わりを持っていますが、前作のように、使ってしまいたくなる小気味よいフレーズを交えながら、ちゃんとじんわり心に浸み込むものがあります。ソフィアが学んだ「冗談を忘れない」というのは、あたたかみのある人たちと関わったからこそ形成されていったものかもしれませんね。彼女のジョークはどこか優しさがあり、どことなく洋画の名作なんかで見かけるような会話のキャッチボール、やっぱり好きだなあ。そう思います。

No.76[OUTIS]08月14日 00:1308月16日 00:06

【創り出された荊姫⑪】

一本の糸のように少女たちを導く"それ"は、次の。 [良い質問]

No.77[OUTIS]08月14日 00:1308月30日 20:51

眠ったお姫様は城の中
彼女にとって糸車の針は
いささか尖りすぎていた
塔の上の糸車。

「そう、もう私の番なのですね。」
そう言って本を閉じると少女は振り返る。⑨
「ですが、貴女は少し知りすぎました。一度全てを忘れてもらいます。」⑦
どこからか現れた、狐面の人物が死んだカエルを捨てながら告げる⑩
「嫌だと言っても避けられないのでしょう?」
そう、何かを悟ったように彼女はそれを受け入れる。

王様と王妃様は、子供に恵まれずに悩んでいた。
しかし、ある日王妃様が水浴びをしていると、一匹の白兎がやってきた。⑫⑤
白兎は王妃様に、
「もうじき貴女の元へ新たな命が宿るでしょう。」
と予言して去って行った。
その夜、予言通り王妃様は新たな命を授かり二人はとても喜んだ。
そして、新たな命を祝福するべく国内に住む仙女たちを王城へ招きパーティーを開くことにした。
ところが、王城には立派な金の皿が7枚しか無かったせいで7人いる仙女のうち6人しか招待することが出来なかった。
パーティー当日、大勢の人々と6人の仙女たちが集まった。
汗ばむほどの熱気の中、彼女たちは
「ให้ความเมตตาต่อเจ้าหญิง」
「มอบความงามให้เจ้าหญิง」
「มอบทรัพย์สมบัติให้กับเจ้าหญิง」
一人一文ずつ祝福を与えてゆく。①
そうして5人目の仙女が祝福を与え終えた時、会場のドアが音を立てて開けられた。
「全く、私を招き忘れるとはとんだ愚か者どもだね。
 数えて見な、ここにいるのは6人、国にいるのは7人。
 お前たちは数もまともに数えられないのかい?
 それとも、ここじゃ1+1が3になるとでも言うのかい?」④❿
そんな事を言いながら入ってきたのは7人目の仙女。
「全く、あんた達だけ招かれるなんて妬ましい、ああ妬ましい!
この思いを王女様にぶつけてやろうじゃないか。」
そうつぶやきながら杖を取り出して
「เจ้าหญิงเสียชีวิต」
王女に呪いをかけると
「王女は15歳で糸車の針に指を指して死ぬ事になるよ!」
そんな不吉な予言を残して去って行った。
すると、まだ祝福を当てえていなかった6人目の仙女が前に出て
「私の力では彼女の呪いを解く事は出来ません。ですが、和らげることはできるでしょう。」
そう言うと
「คำสาปนั้นอ่อนแอ」
そう、まじないをかけた。

宴は終わり、王女は無事生まれた。
仙女達の祝福どおり、美しく優しい少女に育った。
しかし、それは7人目の仙女の呪いも彼女にかかっている事の証明でもあった。
王様は、7人目の魔女の予言を恐れ国中の糸車から針を無くすよう手配した。⑥
そのおかげで、国中の糸車からは針が消え呪いの心配はなくなった。
・・・ように見えた。
王女が15歳のある日、城内を散歩していると塔の頂上で一人の老婆に出会った。
「ねえ、おばあさんは何をしているの?」
そんな王女の問いかけに、
「私は糸を紡いでいるんだよ。」
そう言っておばあさんは糸車を見せた。
そしてそこには、王様の命令により無いはずの針が光っていた。
何も知らない無邪気な少女が糸車を持つと、その指は吸い込まれるように針へと伸びていき、プスリと刺さった。
そして王女は眠りについた。
彼女が眠ると王様や王妃様、城の住人達も眠りについた。
こうして城も荊の森に包まれ眠りについた。

それからかれこれ100年の月日が通り過ぎた。②
もはや荊の森となった城を、一人の王子が訪れた。
「あの森は一体何なのだ?」
そう、一人の農夫に彼は尋ねた。
「あそこには美しいお姫様が眠っていると、幼いころに聞いた覚えがごぜぇます。」
その言葉を聞き、彼は森の中へ入る事を決めた。
どんな冒険をしてでも、その姫に会おうと。
痛みを恐れずに王子は荊の森を進んでいく。
時折棘が絡みつき、彼の腕を腫らせていく。③
彼が最上階へたどり着くと、そこには美しい少女が荊に包まれ眠っていた。
彼女の美しさに惹かれて王子が彼女の手を握ると、つと彼女の目から涙が流れた。⑧
それを見た王子は常備していた自決用の毒瓶を開け、近くにあった水がめへ流し入れると辺りへとばら撒いた。
すると、一瞬で荊は枯れて王女が目を覚ました。
次々に城の住人達も目を覚まし、城に活気が戻ってくる。
「もう、100年の月日が経ったのね。」
100年ぶりに王女は外へ出る。
「全く、3人目なんて・・・どれだけ増えれば気が済むのよ。」
「確かに、眠るのって気持ちいいですからねぇ。」
そこには二人の人影が彼女を待っていた。
「皆さん美しくて羨ましいわ。
 その顔、私に譲ってもらえませんか?」
そう王女が話しかけると、
「やっぱり、なんか歪んでるわね。
まあいいわ、ついてきてもらうわよ。“荊姫”!」
「どうやら、行かなければならないようですね。」
そう言って荊姫は歩き出す。
少女たちは何処へ向かうのか。

【簡易解説】
かつて大勢の人が集まりパーティーが行われた城。
しかし、仙女の呪いによって城は荊で包まれ、人々は眠りについた。
そこへ王子が現れて、床に毒を撒いた。
すると荊はなくなり王女様は目を覚ました

-了- [編集済]

これは・・・もしかして次回も期待していいのでしょうか・・・
はてさて、OUTISさんの創り出されたおとぎ話シリーズ、今度はいばら姫。調べると、実は民話らしいので結構場所によってもストーリーがまちまちだそうなのですが、「7」という数字に関連した物語を選択されたみたいですね。それが何かの暗示のようで、この世界では一体どんな「謎」があるのだろう。そうわくわくせずにはいられないような、「創り出された」おとぎ話の世界に心がいつの間にか鷲掴みになっています。

No.78[ゲクラ]08月14日 01:2708月17日 20:16

お前だったのか

それはお前じゃなかったのに。 [良い質問]

No.79[ゲクラ]08月14日 01:2808月30日 20:51

膝まで降り積もる雪の中
彼は桜の木の下に立ち尽くしていた…

「この木も随分と成長したな…」

ここは私の友のお気に入りの場所だ。
そして今はこの下に友は埋まっている。④
昔は友と一緒にウサギを追いかけたりしていたものだ…とはいえ、それが原因で十数年前その友とは喧嘩別れしたのだった。⑫
あの時あんな事しなければこんな事にはならなかったのかもしれないな…と今でも後悔している。

十数年前の事である。
私はイタズラが大好きであった。
しかし、何回も何回もイタズラを繰り返し私は村の人達に嫌われていった。
友も私のイタズラを注意してきて、当時荒れていた私は友をイタズラの共犯にする事にした。

2人で森の中で遊んでいた時、私は一休みしているウサギに銃を構えている猟師を見つけた。
私は友にウサギの存在だけを教え、追いかけようと促したのだ…

友が猟師に気づいたのはウサギが逃げていった後のことだった。
友は異常な程に気に病み猟師の家に何回も償いをしに行った。

ある日私は友にもう気にしなくていい、償いなどするなと忠告した。
それがキッカケだったのだろう、友と喧嘩になり、雪に足を取られた私は雪溶けにより流れの速くなった川に落ちてしまった。

しばらくして、木に引っかかり助かった私は記憶を失っていた。⑦
全身が腫れていたのだ、恐らく頭でも打ったのだろう。③
あちこち転々と移動して行くうちに、友の話が聞こえてきた。
それからしばらくして、私は記憶を取り戻した。
気づいたら友と別れてから10年もの年月がいつの間にか経過していた。②
そして、友の墓や、正確な話の内容を数年かけて調べて今に至る…

「そういえば悪いな、お前、イタズラ好きとかちょっとした悪者にされてるぞ…お前は基本良いやつなのにな。
あと笑えるぜ、お前が逃したのはウサギだったのに文字が欠けてウナギって言われてるんだ。⑥」

これは近くの村で聞いた話だ⑨
誰かの日記が元で、一文一文村人により、綺麗に書き取られ広まっているという。①
人によって改変され、酷いものだとラッキースケベを取り入れた物、みんなで手を繋いでハッピーエンドなんてものもあった。⑤⑧
正直いうとどこからどこまで本当なのか判断がつかない…
しかし、これのおかげで友の最後をなんとなくでも知ることが出来たのだ。
内容を思い出すだけで、目から出た雫が雪に穴を開ける。

バットエンドであってもあいつは幸せだったんだと分かった。

そうだろ、なぁ…死んでもなお、こんなにも語り継がれているのだから…

だからこれは強がりだ 気にしないでくれ。

涙の跡を隠すように、あいつの好きだった果実水を地面にかける。

「あ〜あ、だから人間なんか気にするなって言ったのにな…ごん」⑪

次の日大きな桜の木の下で1匹の狐の死体が雪に埋もれて発見された。⑩
(完) [編集済]

これもまた、名作をモチーフにしているわけですが・・・いやはや、まさかいたずらした狐≠お詫びにきた狐という図式を、ここで創りだすとは。もちろん原作の優しい話、改心という意味では好きなのですが、むしろこれはこれで、しっくりきます。友は本当に優しい奴だったのでしょう。自分の生に悔いが残らないからこそ幸せだったのでしょうし、だからこそ色んな人に愛されているのだなと思います。少し目が潤んでしまいました。また原作も読み返したいと思います。

No.80[松神]08月15日 19:4408月20日 18:51

輝きの中で

唇だけは、血のように紅く。 [良い質問]

No.81[松神]08月15日 19:4508月30日 20:51

「私、朝日が見たいの。あなた、私に朝日を見せてくれないかしら?」

 そんな妙な依頼を一言で断れなかったのは、きっとその少女が驚くほどに美しかったからだろう。
 真紅の瞳の中に暗く何もかもを吸い込むような一文字の亀裂、その獣のような目が彼女の非人間性を顕わにしていた。
 金色に輝く髪は玄関横に吊り下げられたランプの光に照らされ煌々とオレンジ色の炎のように輝き、白い肌と対照的に赤く染め上げられた唇の下には、肌よりも更に白く透き通ったような不思議な輝きを持つ、長く鋭い牙が覗いて見えた。

「は? 一体何をおっしゃっているんですか?」

 今目にしているものがとても現実のものだと信じられないまま、私はなんとなしに呟いた。見惚れてしまってまともな思考もままならなかった。

「そうね、まずどこから話すべきかしら」

 私の様子を知ってか知らずか、私の回転の鈍くなった頭にしっとりと浸透するように、彼女はゆっくりと言葉を紡ぎ、私の頭に注いでいった。
 彼女が体質のせいでまともに明るい場所を見られないことや、そしてある日私が描いた朝日の絵を見ていたく感動したこと、その絵をまた見たいということ。

 そして、己の財力を使い彼女は私の住処を見つけたのだと言う。

「なるほど、ですが私は……」

 もう、絵は描けない。そう、紡ごうとする私の唇を彼女の指が塞ぐ。

「知っていますよ、勿論。あなたが病気であることも、もう絵を描くこともままならなくてここで養生していることも」

 そう、私にはもう絵が描けない。最近の流行り病のせいらしく、医者にも発見が遅く治せる見込みは無いと言われてしまった。
 長時間椅子に座ることはせず薬で症状を緩和しながら好きなことをして過ごしてください、そんな風に気遣うような医者の口調がより一層私に助からないという絶望感を植え付けた。
 おそらく医者にも分かっているのだろう、私がそんな風に生きたことの無い人間だということも、そしてそういった人間がどういう末路を辿るのかも。

 だから私は

「だからあなたには……その命を懸けて朝日の絵を描いてもらいたいんです」

 この依頼を受けてみることにした。

------------

 朝日を書くということは朝日を見に行くということと同義だった。色々な場所で朝日を見て、描きたい朝日を選ぶ。
 絵にとって必要な対象選びですら、今の私の身体には鞭を打つかのような苦痛だった。
 
 足を持ち上げ、大地を踏みしめる。山一つ、一歩登る行為ですら、全身に熱い血が巡るとともに頭がその熱さに焼かれるような感覚を覚える。
 喉は赤く腫れ、熱くなった吐息が更に喉に熱を与え、関節は身体が動くたびにギチギチと骨から骨にその不快な音を響かせ、耳が内部から反響する不快な音に悲鳴を上げる。

 そうやってフラフラと揺れる身体を腕や杖などで支え一歩一歩大地を確かに踏みしめながら歩いていると、頂上に向かう頃には朝日どころかいつの間にか地平線を遥かに通り過ぎ太陽が真上に有った、そんなことも最初はあった。

「もう、まだ見つからないの? 最高の朝日を拝めるベストポジションとやらは!」

 そんな俺を隣で心配そうに眺めながら、彼女はいつもそうやって怒っていた。

 命を懸けて欲しい、などと無責任な言葉をかけておきながら、本当に命を懸けられて焦っているのだろうか。初対面の不遜な印象に対してどこか優し気な彼女の言葉や動作は、私に使命感を覚えさせた。

「貴方に最高の朝日を見せなくてはなりませんからね、生涯最高の作品に仕上げるのならこれくらいしなくては」

 そういうと彼女が頬を不満げに膨らまし黙って後ろからついてくる、そんな光景が最早日課と化していた。

「それにしても毎回、よくついてきますね」

 決して彼女も暇ではないだろうと思う。どこの令嬢かわからないが、これだけ見目麗しい少女であれば方々から声もかかるだろう。
 非人間的な見た目とはいえ、彼女はそれほどまでに美しいのだ。

「そうね、私も暇じゃないわ……けど、それ以上に私の人生にとってはこちらの方が大事だと思うのよ」

「それはまた、どうして?」

 一人の人間に命を懸けさせているからだろうか、しかしそれ以上に彼女ならば平民一人の命など吹けば飛ぶもの……そう思っているように感じる。
 それなのに私一人の命にそこまでの責任を感じることは無いだろう。

 私が足を止めて考え込んでいるのに見かねたのか、彼女はふぅと一つ溜息を吐いた。

「私が何故明るい場所がダメなのか、という話はしたわね」

「詳しく言ってしまうと私ね、吸血鬼なのよ。多分なんとなく想像ついていたとは思うけど。だから日の光に当たると焼かれてしまうのよ」

 私より頭一つ分背の低い彼女の顔には、その見た目とは反して決して笑みは無く、寧ろその瞳には輝かしい人生とは無縁の昏い光が宿っているように見えた。
 彼女の声色がそれを思わせたのか、それとも生物的本能が彼女の本質を感じ取ったのか、私は思わず身震いする。

「勘違いしないでね、私は人間の血は飲まないわ。私が飲むのは山や野にいる……例えば兎や狸、狐なんかの血よ」

 私の身震いを見て私が不安がっているのかと思ったのか、彼女は今度は優し気な表情で諭すように私に語り掛けてくる。
 その笑顔は先ほどの表情を忘れてしまうほどに優しく、美しい。それ故に、私は更にそこに不気味さを感じた。

 吸血鬼は人間よりも一回りどころか十は回っても足りないほどの寿命を持つらしい。ではこの目の前の少女は果たしてどれほどの時を過ごしたのだろうか。
 それを想像させるほどに、彼女の全てに妖艶さが溢れていた。

「……まあ良いわ。この話はまた今度、あなたが絵を見せてくれたらにしましょうか?」

 きっと大事な話なのだとは思う。話したくなさそうだというのは態度でわかるし、私を前に進めるためにわざわざ話したというのもわかる。
 だから、それでも話す覚悟が出来ないのなら、私が覚悟をさせてやるしかないのだと思う。

「そうですか、じゃあ頑張らないとですね。本物の吸血鬼のお話を聞く機会なんて早々無いですから。……でもまあ、絵は今日か明日にはお見せできると思うんですけどね」

 え?と彼女は素っ頓狂な声を上げる。彼女の方を振り向くと、案の定今まで見たことのないような間抜けな表情で、歩き出しの姿勢のまま彼女は固まっていた。

「ですから、私が絵を完成させた暁にはその話、是非お聞かせください」

 途端、彼女は眉を顰め口を歪め嫌そうな顔をする。彼女がこんな表情を見せることも珍しく、逆に少しこちらが面食らってしまった。


------------

 私が頂上に着くころには空は白み始めている。これでもう10程の山を登ったがこれほど上手い具合に時間が整ったことは無かった。
 いつもは暗く、夜遅くに頂上に着き、彼女と暇を潰しながら待つのだ。

「今日は随分とギリギリね、じゃあ私はそこの岩陰で待ってるわよ」

 これもいつものことだった。私が朝日を眺めている間、ずっと彼女は日の当たらない場所で待機している。そして私が朝日を眺めて絵を描こうとしている間ずっとそれを陰から眺めている……らしい。

 今回もそれに倣って絵を描き始める。暗い中書き始めているからまだ彼女は隣にいる。

「今日はこんなに早くから描き始めるのね。何故かしら?」

 彼女は不思議そうに私の絵を覗き込むと、はっと息を飲む。

「ここって、もしかして……」

 私の朝日の絵は、それを見たとある少女が即決で画商から買い取ったらしい。それを聞いた時から不思議に思っていた。
 何故、少女が画商から絵を買い取れるほどの資金を持っていたのか、そして何故朝日の絵なのか。

 前から心の奥底にしまい込まれていたその疑問は、彼女と出会った瞬間に解消され、そして更なる疑問も生んでいた。

「……絵が描き終われば、話して下さるんですね?」

 だから私は彼女にもう一度この作品を捧げてみようと思うのだ。

「随分とにくい演出ね、私のお気に入りの絵を目の前でもう一度再現しようだなんて」

「まあ、病気のせいで前と同じように、とはいきませんけどね」

 軋む関節は筆の精密な動きを阻害し、関節の軋む音とともに線にブレを生じさせる。
 傷んだ肺は吸い込んだ絵の具の匂いを拒絶し咳き込み、そして熱く茹でられた脳は絵の描き方すらも曖昧にさせる。
 それでも、指だけは覚えていた。脊髄に宿った記憶が普段とは違う身体でも、指だけは依然と同じにすべく働き続けていた。

 以前ここで絵を描いた時は、私の身体は健康そのもので、健康で若いうちにしか描けないものを描こうという使命感に燃えていた。
 まさかこんなに若いうちに絵が描けなくなるとは思ってもみなかったが。

 だが朝日を見るということになると何日も同じ場所で描き続けると時々人がやってくる。
 それに精神をかき乱されたくなくて、元火山であり、立ち入り禁止にされているこの山で描いていたのだ。

 あの時何日もかけてこの山でその朝日を目に焼き付けて、3週間かけてようやくかけたものがあの絵だった。
 だから、今の私でもこの朝日だけは、見ずとも描ける。そんな自負もあった。

 描いている間、彼女は一言も声をかけてはこなかった。私の集中を乱したくなかったのだろうし、日中は表に出るだけで辛かったのだろう。
 朝日が昇り始めてからも、完全に日が昇ってから、そして夜ですらも私は描き続けたのだ。

 私が描き終わったのは、二回目の朝日を迎える直前だった。
 数々の山を煌々と照らす太陽が、山の谷間から姿を現す様を描いたその絵を気が付けば彼女はすぐ横でじっと見ていた。

「うわっ!? あまりびっくりさせないでください」

 彼女の方へ目を向けると、何かがキラリと光って落ちたように見えた。ちょうど月を背にしていたから、月から雫が降ってきたのではないかなどと気取った考えが頭に浮かぶ。

「……どうですか? 話す気になりましたか?」

 達成感から微笑みながら聞く私に、彼女もまた目を拭いながら笑いかける。

「……私はね、元々は人間だったの。」

 少しずつ空が白んでくるのを待つかのように、彼女はゆっくり、ぽつりぽつりと話し始める。

「それはそれは美しい娘だって町でも評判だったのよ。まあ、だからこそかしら、私はある日とある貴族に目をかけられてね」

「その貴族も見目麗しい男で、私舞い上がっちゃってね、その男の家までほいほいとついて行ってしまったの」

 軽い語り口調ながらも不穏さをにおわせる彼女の話を、無言で頷いて促す。

「その男はね、吸血鬼で……私を妻にしたいから吸血鬼になってくれないかって言ってきたのよ」

 おとぎ話のような、現実感の無い話だ。そもそも彼女が吸血鬼だという話も妙に納得感のある話だから信用しているだけで、それを本当に理解しているわけではない。

「私は勿論断ったわ、でも無理矢理あの男から血を注がれて……気が付いたら吸血鬼になっていたの」

 ここでふぅ、と彼女は一息ついて私を不安そうに見る。まるでここから先を話せば全てが変わってしまうのではないかと思っているように。

「……吸血鬼になると最初にすることって何だと思う? ……吸血なの。人間から吸血鬼になるには大量の栄養摂取が必要で、私は五人から血を吸って身体を完全に吸血鬼の物へと変えたわ」

 なんとなく、彼女の不安に脳が理解を示し始める。

「でも町から急に人がいなくなるって不思議よね? 普通ならばれてもおかしくないの、だからね」

「私は私の家族の血を吸わされた。優しかった父さん、母さんと生意気だけど頭が良くていつも私にアドバイスをくれた弟に、私以上に可愛くていつも周りを癒してくれた二人の妹……」

 あっ……と思わず声が漏れる。絞り出したように出てきたその音は彼女の話を遮らないほどに弱弱しく、情けない音だった。

「結婚してあの男の屋敷で暮らすことになった、そう周りに吹聴するだけ、たったそれだけであの男は……疑いの目を免れたのよ!」

「……でね、当の私はそれを、忘れてて……あの男に脳までいじられたせいなんだけどね」

 話ながら、高ぶった感情を無理矢理落ち着いた語調で抑えているようだった。
 そうやって愛おしそうに絵の縁を撫でる彼女の目に、一体何が写っているのだろう。

「この絵を見た時ね、思ったのよ、人間ってどうしてそんなに太陽が好きなんだろう、日の光なんてただただ鬱陶しいだけなのに……って」

「だから一度朝日を見てみたのよ。あの絵を持って」

 先ほどまではまだ白み始めていたと思っていた空が、今度は光の筋を作り始める。
 彼女が危ないと思ったが、私は何故か彼女の話を止めようと思えなかった。

「死ぬほど辛かった、太陽の光を受けた身体中が悲鳴を上げて、目なんか溶けちゃうかと思ったの」

 一筋の光が彼女の腕に直撃した。その光は彼女の腕を赤く輝かせ、その先に炭のようなガサガサとした皮膚を作り始める。

「けどね、その時思い出したのよ。日光の美しさとその温かさ……人間だったころの記憶をね」

 彼女の腕がとうとう水分を完全に失い、ひび割れて落ちる。まだ絵の陰に隠れているから平気だが、もうすぐにでも彼女の顔に光がかかってもおかしくはない。
 そう思い動こうとした私を、彼女は残った腕で私の肩をがっちりと掴んで止めた。

「最期まで、聞いて。」

 その気迫に、思わず頷く。

「私は、私を吸血鬼にした男を殺したの。……まあそれは別にどうだって良いのよ。これは単なる復讐」

「でもね、あの男がいないと今度は私が困ったことになっちゃったの」

 痛みを我慢しているのか、彼女が私を掴む手に力がこもる。それを感じて思わず手を握る。彼女は、それに驚いたのか少し目を見開きながら、私の手を握り返した。

「私の吸血鬼としての身体はあの男が私に毎日血を注いでだから成り立ってたの。 元人間の吸血鬼は、純粋な生まれつきの吸血鬼から血を注がれないとその体を保てないらしいの」

「……最初は人間に戻れるんだと思って喜んだわ。でもそうじゃないのよ、私の身体は長い年月を経て、人間として生きるには歳を取り過ぎていたの」

 彼女の眼からはどんどん涙が溢れていた。今度は見間違うことが無いほどに、いくつもいくつも雫が落ちていった。
 
「私はね、一生人間には戻れない、それにこの身体も、あと数ヶ月で朽ちてしまうの」

「だから、最期に貴方にお礼が言いたくて、お礼がしたくて……貴方をずっと探していたの」

 彼女の身体と声は、震えていた。

「受け取って、偉大な若き天才画家さん、これが私の、人間としての証明、人を助ける元人間の……生きた証よ」

 ズズッ、と彼女の指が私の手首に刺しこまれる。強烈な痛みに思わず顔をしかめる。

「何をッ!? うぐぅ……」

「貴方の身体にわずかに私の中に残ったあの男の血を注入したわ。一時的に吸血鬼になって、貴方の再生力は向上する。きっと、その病気も治るわ……」

 私が痛みにうめいていると、彼女は私の手を放し、残った腕で器用に上着を私に被せた。

「貴方と過ごした数日、とても楽しかったわ。まるで人間だった頃に戻ったみたいだった。」

「さようなら」

 彼女がそういうのと同時に、私の視界が真っ白に染まり、心臓の音が高鳴る音が聞こえたような気がした。

------------

 目が覚めると、日の光の反射が目に痛く、まるで世界中が鉄でできているかのように濃淡だけが存在する真っ白な世界が見えた。

 その場ではっきりと見えたのは、白く輝く地面と、私の冷たい手から滴り落ちる血や涙や涎、そして、目に焼き付いた彼女の笑顔だけだった。 [編集済]

何より素敵だと思ったのは、朝日に憧れる吸血鬼というシチュエーション。もちろん理由はちゃんとあるんですが、その矛盾に違和感ではなく美しさを感じたのは、松神さん自身の文章力もありつつ、なにより情景が鮮やかに目に浮かぶことなのだと思います。
そして、冷たさもありながら少女の言動の節々から感じられる優しさが感じられて。いろいろ言いたいことはすごくあったんですが、某氏の感想がまさに自分の言いたい事でもあるので、そちらを投票会場にて拝見していただければと思います(丸投げ)

No.82[松神]08月15日 19:5208月30日 20:51

要素

①一文字の亀裂
②朝日どころかいつの間にか地平線を遥かに通り過ぎていた太陽
③喉腫れてる
④人間として合格→元人間が遺した、人間としての気持ち
⑤こんな美少女との出会いこそがラッキースケベでは?
⑦吸血鬼になり失った記憶を絵を見て取り戻した
⑧手を繋いだ
⑨昔描いた絵とこれから描く絵
⑩血を飲むのは狐とかからもだったりする
⑪大分昔の話、昭和辺り
⑫ウサギからも血を吸ったり

⑥この世界には、彼女だけが足りない。

要素を書いてくださってたので延長戦。要素の解釈も凄く好きで、特に記憶を取り戻すところ、そして作中作は、まさに物語中の物語ではなく、物語の中で作品を書くっていうところが、非常に巧みで、エモーショナルで好きでした。
そしてパーツが足りない。詩的で、要素一覧でもふとした余韻を残してくると言うのが、すごくかっこいい。
あと余談なんですが、美少女との出逢いがラッキースケベで確かに(確かに)と納得しました。

No.83[OUTIS]08月16日 18:2508月23日 08:30

【水は輪廻と共に巡りて】

巡り巡る、わたしの愛しい人。 [良い質問]

No.84[OUTIS]08月16日 18:2608月30日 20:51

 その老人は、この寒い冬空の下で水を撒いていた。
特に暇だったわけでも、話してみたいと思ったわけでもなく、純粋に興味がわいて聞いてみたくなっただけだった。
「なぜこんな寒い日に打ち水をしているんですか?」
気が付くと、そう声をかけていた。
「少しばかり長くなりますが、聞いていただけますか?」
僕の声に少し驚いた様子の老人であったが、すぐに穏やかな表情に戻るとそう言って語り出した。
「これは、私がまだ20かそこらの頃の話です。⑪
私は幼いころから身体が弱かった為、自然豊かなこの町で療養していました。
そんな中、彼女に出会ったのは本当に奇跡だったと言えるでしょう。」


 私はいつも屋敷に篭っては本ばかり読んでいた。
ある日、借りてきた本を抱えて歩いていると一人の女性とぶつかった。
お互いの荷物がその場に散乱し、彼女が持っていたのであろう檸檬が私の本の上に鎮座する。
それにしても、何故檸檬なのだろうか・・・
「これから、檸檬ケーキを焼く予定なのよ。」
私の疑問が口に出ていたのか、彼女はそう言った。
「お詫びも兼ねて、貴方もいかが? 私のケーキは美味しいって評判なのよ。」
それが、彼女との出会いだった。
彼女は佳子(カコ)といって、近所に住む女学生だった。
彼女は明るく活発で、私とは正反対の性格だった。
そんな彼女に私が惹かれたのは何かの運命だったのだろう。
いつも部屋の中で本を読んでいる私と違い彼女は外に居る事を好んだ。
私はそんな彼女に連れられて、外へ出るようになっていた。
彼女は料理が上手かったが、他の事となると空回りしてよくドジを踏んでいた。
掃除をしている時、水をかぶって濡れた服がぴったりとくっついた煽情的な姿に胸を締め付けられたのはいい思い出だ。⑤
こうして私たちは惹かれあい、恋人となっていた。

彼女はよく野原に横になって雲を眺めていた。
「雲って綺麗だよね、ふわふわ~って形を変えて流れて元の形に戻る事は無いの。
 ゆっくりゆっくり変わっていって、気が付いたら元の場所を離れて違う所に流れていて。②
 私、ランダムに行く雲を眺めているだけで1日は余裕で過ごせるよ。」
そう言っていつも笑っていた。
「かの文豪、芥川龍之介も子供時代に授業で『美しい物』を聞かれた時『雲』と答えたそうです。
 彼は当時笑われたそうですが、私には彼の気持ちが少しわかる気がします。」
ある日、そう言って私も隣に寝そべり空を眺めた。
そこから見た景色はとても美しかった。

彼女の様子が変わり始めたのは夏の暑い日だったと思う。
神社のお祭りに行った日、私たちは狐の面を買いりんご飴を片手に手を繋いで花火を眺めていた。⑧
「ねえ、私が雲が好きって言ったの覚えてる?」
そう言って彼女は私を見つめた。
「私ね、ただ雲が好きなわけじゃないって気づいたんだ。
 本当に好きなのは、きっと水。」
「水?」
突然の言葉に驚いて尋ね返す。
「そう、水。
 水って空から降ってきては地面に溜まって、川を流れて海に還る。 そしたらまた海から空へ昇って行く。
 その過程として雲が好きなの。」
どこか、いつもと違う陰りのある笑みに目を奪われる。
ぽたり。
汗が、落ちる。
「その流れの中で私たち生き物は水を飲んで、その水は身体を巡っては出ていく。
 丁度、この汗みたいに。」
その場の熱気に二人ともいつのまにか汗をかいていた。
ぽたり。
二人の汗が、石畳に染みを作る。
「人間は大部分が水でできているんですって。
 だったら、この汗も私たちの一部と言えるんじゃないかしら?」
ぽたり。
私から流れ出た汗は、きっと暑さのせいだけではなかっただろう。

その日から、彼女は少しずつおかしくなっていった。
「私たちが出会った記念に、あの日の桜桃パイを焼いてみたの。」
「違う、あの日君が焼いてくれたのは檸檬ケーキだ。」
それは、些細なズレ。
「お祭りで買った兎のお面知らない?」⑫
「違う、あの日買ったお面は狐だった。」⑩
一つ一つは、取るに足らないようなちょっとした記憶違い。
「・・・えっと、どちら様?
 いえ、ごめんなさい、なんでもないの。」
けれどもそれは、気が付くともう手遅れになっていた。
「脳に腫瘍ができています。もう永くはないでしょう。③
 最期にいい思い出を作る事くらいしかもうできる事はありません。」
医者はそう言って去って行った。
その日から、ひたすら二人で遊んだ。
海へ行き砂浜に足跡を残し、湖でボートを漕いだ。
そんな楽しい時間は、瞬く間に過ぎて行った。

 彼女の記憶は、夏の氷のように融けて消えていった。
すぐに思い出す事もあれば、忘れたきり戻らない記憶もあった。⑦
ある日、彼女が泣いているのを見てしまった。
「もう、忘れたくない。」
そう言って涙を流す彼女はとても脆く、触れた瞬間壊れてしまうように思えた。
まるで、その涙から彼女という存在が流れ出るかのようで。
もしもこの瞬間、私と彼女が露となり混ざりあうことが出来たら。
私で、彼女を助ける事ができたら。
いくら願おうとそれが叶う事は無いとわかっている。
けれども、願わずにはいられなかった。

秋の夜は月が栄える。
「月が綺麗ですね。」
ふと、そんな言葉が口をついた。
「ありがとう、って返せばいいのかしら?
 でも、私には草の露の方が美しく思えるの。」
「また、水の話ですか?」
「いいでしょう? 水に触れている間だけ幸せな記憶が垣間見える気がするのよ。」
そう言って足元に生えていた草の露に指を浸した。
「私はね、男の子と遊んでいるの。
 遠い異国のお面をつけていてね。
 男の子は、必死で子猫の為にクッキーを焼いてきたり、玩具をくれたりするの。
 それで、櫻の樹の下にはタイムカプセルを埋めるの。
それで、私は・・・ううん、何でもない。
 ただの妄想よね。」⑨
そう言って指先の雫を見つめる彼女は、どこか遠い所を見ているようにも見えた。

 “水に還ります。”
ある寒い冬の日に、その一文だけを残して彼女は消えた。①
彼女の行方を捜してたどり着いたのは、以前一緒に来た海だった。
浜辺には、彼女のサンダルだけが残っていた。

彼女は自殺した。
私は彼女の親族から批判された。
「お前のせいで彼女は死んだ。」
「お前が居なければカコは死ななかった。」
「お前の病が感染ったんだ、この疫病神め!」
そう、何も知らない人達に罵られる事もあった。④❽

その日から、私には歯車のような幻覚が見えるようになった。
それはきっと、私に足りない心のパーツ。⑥
レインコートを着て、雨に打たれている時だけその歯車はかみ合って回り出す。
雨の中に彼女が居るような気がして。
水面に、彼女の面影を感じる事もあった。
水は、彼女の形見だった。

私は彼女の墓がある寺に入る事も許されなかった。
けれど、彼女の亡骸は見つからなかったのでその墓に彼女は眠っていない。
気が付くと、いつか共に花火を見た神社に居た。
ぽたり。
思い出が歯車の間に現れる。
ぽたり。
二人の汗が、白い地面に落ちて染みを作る。
ぽたり。
一瞬で乾いて消えてゆくその痕跡が、とても愛しく思えた。
ぽたり。
二人の汗が消えないように。
ぽたり。
あの日の思い出が消えないように。
ぽたり。
かじかむ手で、水を垂らす。
寒さに流れぬ汗の代わりに。


「それが、私がここで水を撒く理由です。」
老人は、涙を流しながらそう語った。
「少し、僕の話も聞いていただけませんか?」
何故か、僕もこの老人に自分の話をしなければならない気がした。
「僕は、医者を目指しています。
 病に命を奪われる人を増やさない為に。
 僕の恋…古い友人も、ある病が原因で命を落としました。
 これから、彼女の墓に行く予定なんですけどね…」
水は、時を超えて命を繋いでいく。

-了-
[編集済]

海から水蒸気となって上り、また雨となって海に還る。それは、システマチックでありながら、また同じ水に巡り合えるのかもしれないロマンチックさももしかしたらあるのでしょうか。私の解釈になってしまいますが、カコさんはきっと、そういう自由なところに惹かれたのでないかな、と思いました。そして、老人もまたそれを信じていて。どこか不思議で、でもそれが美しくて。ありふれた水というものに、親しみを感じました。

No.85[ニックネーム]08月18日 07:0108月23日 16:48

ここは白い部屋

呟いたその一文が、反響する。 [良い質問]

No.86[ニックネーム]08月18日 07:0208月30日 20:51

【目が醒めると、フィンランド産のソース焼きそばが午後3時72分を示していた。】⑬

…うん。言いたいことはよく分かる。よく分からないだろ?大丈夫。俺もよく分からない。一応説明はするが、意味が分かるかは保証しないな。
――――――――――――――――
ある夏の日のことだ。俺の前に【悪魔】が現れた。唐突だって?知るもんか。とにかく、その時俺は近所のコンビニに昼飯を買いに行くところだったんだけど、途中の曲がり角に立ってたんだ。あ、念のため言っておくと、儀式とかはしてないよ。知識も興味もない、ただの一般人だ。それで、【悪魔】は妙な見た目をしてた。全体的には人に近いけど、狐みたいな尻尾やウサギっぽい耳、羊のような目にガゼル並みの角を持ってた。⑩⑫まあ、明らかに人間ではなかったね。
俺は当然見なかった振りをしようと思ったんだけど、【悪魔】は話しかけてきたんだ。

「‘願い’を言え。叶えてやろう」

俺は一瞬躊躇った。だって『こいつ【本物】だ』って確信しちゃったから。でも関わるとロクなこと無さそうだし、暑かったし、俺はやっぱり無視して歩いてこうとしたんだよ。…ところが最悪なことに、ちょうど赤信号になって渡れなくなったんだ。気まずいというか、こっちを凝視してるのをひしひしと感じた。それで、心の中で‘願った’んだ。

『早く青になれよ。ここを離れたい』

突然、急に、景色が変わったんだ。目の前に郵便ポストや植木が出てきたみたいだった。後ろを向くと、青信号やさっきまで自分が立ってたところが見えた。つまり、いつの間にか横断歩道を通りすぎてたんだ。②
…【悪魔】の姿はもう見えなくなってた。汗だくになって探したんだけどね。もちろん冷や汗で。
――――――――――――――――
それからしばらくして、俺はまた【悪魔】に会った。今度はバイトの帰り道だった。裏路地の暗闇からグニャッて、溶けてたのが固まるみたいに出てきたよ。【悪魔】は顔を動かさずに、片方の目でこっちを見て、言ったんだ。

「次の‘願い’を言え。叶えてやろう」

俺は、あれからずっと考え続けてた‘願い’を言った。昔読んだ小説にのってた、‘願い’を効率的に使う方法。⑨

「アンタについて…教えてほしい」
――――――――――――――――
気づくと、俺は白い部屋にいたよ。全く知らない、非現実的な部屋だった。
真っ白い床、真っ白い壁、真っ白い天井…真っ白い扉。

『あそこから入ってきたのか?』

ドアノブに手をかけると、後ろから声がしたんだ。

「そうだ。次は何が聞きたい?」

振り向くと、【黒い服を着た少女】がいた。普通の人に、いや、かなりの美少女に見えたけど、この子が【悪魔】だってことは直感で分かったよ。
俺は【彼女】と向き合って、質問を続けることにしたんだ。
――――――――――――――――
「‘願い’を叶える代償は何?」

「記憶」

「記憶…?記憶を奪われるってこと?」

「そうだ」⑦

「どんな?」

「答えられない。次は?」

「…じゃあ次の質問。‘願い’を叶えてもらえる回数に限りはある?」

「ない。次は?」

「なら、新しい‘願い’。俺の質問に嘘をつかないでくれる?」

「いいだろう。次は?」

「質問。さっきまでの会話で嘘をついた?」

「ない。次は?」

「ここはどこ?」

「忘却だ。次は?」

「忘却ってのは――
――――――――――――――――
俺は【彼女】と話し続けた。初めは‘願い’の仕組みを把握して利用するために質問を続けてたけど、でも途中から、俺の気持ちは変わってたんだ。
簡単に言うと、俺は【彼女】に恋し始めてたんだよ。
――――――――――――――――
そのことに気づいたのは、【彼女】の涙を見た時だったよ。
いつからか、俺と【彼女】の会話は‘願い’なんて関係ない、ただの友達の会話みたいになってて、それが途切れたある時のことだった。【彼女】は昔話を始めたんだ。⑪彼女が【悪魔】になった経緯みたいなもの。それを聞いた俺は、もちろん内容にも驚いたけど、【彼女】が涙を流したことにビックリしたね。
一滴だけの純水。
【彼女】によると、【悪魔】の涙は純水で【悪魔】自身が苦手とするものなんだって。【不老不死】なのに、【自分】から流れ出た涙なのに、痛みを覚えるらしい。
【彼女】の目の周りは真っ赤に腫れていたよ。③どうして涙を流したのかを聞いても、でも、【彼女】は答えてくれなかったんだ。
‘願い’を使う気には、なれなかったんだ。
――――――――――――――――
【彼女】は時々、いくつかの昔話をした。初め冷たかった部屋は、【彼女】への想いが強くなるにつれて、だんだん暑くなっていったよ。今まで【彼女】がこの部屋へ連れてきた人間は、だいたい暑さに我慢できずに出ていってしまったらしいけど、俺は部屋に留まって、【彼女】の昔話を聞き続けたんだ。
部屋が暑くなるのと反対に、俺の手は冷たくなっていった。何故って、ずっと【彼女】の手を握っていたからさ。⑧
――――――――――――――――
ある時、俺は【彼女】の昔話をすべて聞き終えた。【彼女】は必死に泣かないようにしてたけど、堪えきれずに一粒流したよ。それを見て、俺は【彼女】を抱き締めたんだ。そして…【彼女】に語りかけたんだ。

「言って。
俺は大丈夫だから」

【彼女】の目からは涙が溢れて、部屋を水浸しにしてしまうほどだったよ。
――――――――――――――――
おしまい。





…え?いや、これでおしまいだよ。お疲れ様。こうして俺は【悪魔】になったんだ。…意味が分からないって?だから初めに言ったじゃないか。意味が分かるかは保証してない。…説明不足って言われても、その説明するべき一切合切がもともとないんだからさ。⑥
…うーん、それじゃ、あともうちょっと説明すると、重要なのはあの【一文】なんだ。①言霊なのかなんなのか、あの【一文】は一つの鍵になってるらしい。

【悪魔】は、受け継がれてく。

俺は【彼女】から。
彼女は【前の誰か】から。
その誰かは【さらに前の誰か】から。

【一文】と、前のヤツが【悪魔】になった経緯を聞いた人間に、受け継がれてく。

そう、つまり、そういうことだ。

アンタはちょっとスケベな餌で簡単についてきてくれたから、結構楽だったよ。⑤あ、悪いことじゃないと思うよ?【悪魔】的には、人間は欲深いのが合格さ。④…え?ずるいって?【悪魔】はそれで合格でしょ。確かに彼女は、誰かを犠牲に自分が解放されるのが嫌だったみたいだけどね。そのせいで長い間この部屋を空けて、人間世界をさまよってたらしいし。
…さて、【アンタ】とはそろそろさよならだけど、俺が、というか俺たち元【悪魔】が気づいたことを、せめて伝えておくよ。
まず、一番初めの元凶は【仮面の悪魔】。【白黒の仮面を着けた悪魔】らしい。恨むなら【ヤツ】を恨んでくれ。
次に、【一文】の意味。一個だけ、多分そうじゃないかって予想はあるんだ。【午後3時72分を示していた】の部分。普通の時計なら3時59分の次は4時00分だろ?それが3時72分になるってことは、【4】って数字がないってことなんだよ。分かる?…つまり、
【4がない】、
【しがない】、
【死がない】。
…ははは、【不死】になる理由がここにあるっぽいんだよ。笑っちゃうだろ?
【不老】は?【純水が苦手】は?
そもそも【フィンランド】は?【ソース焼きそば】は?
…こんな下らないことを延々と考え続けなきゃいけないくらいは退屈だよ。

じゃ、さよなら。
【完】

※⑬はツイッターで行った企画ですので、お気になさらずお願いいたします。 [編集済]

さあ・・・問題作っていうのは、忘れたころにやってくる・・・
はてさて、ニックさんは今回色んなことを企んでおられました。ツイッターで密かに見守っておられましたが、まさか一番難易度やばいものを最初に持ってくるとは・・・とはいえ、ここでは「悪魔」という存在、奇妙な世界観。それがやっぱり虜になります。このお題を出した某氏の解説が、投票会場にもあるのでよかったらご覧くださいませ。悪魔のようですが、やっぱり悪魔だなと思います。(誉め言葉)

No.87[かふぇ・もかろに]08月21日 02:5408月24日 14:06

【Snow White Snow】 [編集済]

真っ白い世界、その場所で一人。 [良い質問]

No.88[かふぇ・もかろに]08月21日 02:5608月30日 20:51

「例えば、昔は地球の表面にだって7割の海と3割の陸が存在したわけで。
場所によっては自然から生まれた春夏秋冬、気がつかないほど一瞬で過ぎ去ってしまう夏休みの季節だったり(②)、人に管理されていない虫の声を聴きながらウサギの綺麗に見える月(⑫)を見ることのできる季節を感じられたわけで。

つまりは過去の『普通』じゃないことなんて今から見れば意外と『普通』だったりするということ。その逆も然り。『普通』なんてただの認識で、『3』という記号に今の『2』の意味を認識していれば1+1=3となる、みたいな。(④)

こんな紛らわしくして結局何が言いたいかというと今では地下に住んでいるのだって、地上が凍っているのだって普通で、熱を帯びていた地上なんてもうとっくに昔話となっている、というだけの話。(⑪)


そうだ、少し昔話をしようか。地上探査員の話。彼の名前は……別にいいか。長すぎて君たちも覚えられないだろうし。

彼が中学校に入学した年、ラッキースケベがどうのこうのとか気になり始める頃(⑤)、自分なんて思っていたよりもちっぽけだと悟り始めるころ、別に例を出した意味はないよ。


月から光が消えた。世界から熱が奪われた。当時からすればそんなバグのようなことが起きた。その何十年も前に予測されていたため、多くの人々が一応は人間の住むことができるように整備された地球の地下に避難することができた。この避難は、『まるで金魚鉢に閉じ込められたような気分だ。』と語る人もいたらしい。


ちょっとここで彼自身についても話しておくね。さっきまでのような話ばっかりだと疲れるでしょ?

彼はとても感情が顔に出にくかった。まるで仮面に取り憑かれているかのような。もっとも彼は『仮面ってなんだよ、関係ねぇよ』って笑っていた。
感情が顔に出ないことからなのだろうか、彼はよく嘘をついた。
神には頼るまいと言いつつも神社に行ったり。彼が言うには巫女さんと話したかったと言う理由らしいが。どうせそれも嘘だろう。
それこそ狐の仮面と関係が、と思った人もいたらしい。(⑩)

さて、彼が20歳になった年、地上探査プロジェクトが始まった。もう一度だけでも地上に戻ってみたいと願い続けていた彼は地上探査員の一般枠に応募した。彼は探査の前、採用試験について、こう語った。

『正直、緊張で面接の時のことはほとんど覚えてないです。意識はできるだけ別のもの、例えば面接官の方が使っている文房具や、鉛筆についてる銀色のやつに意識を向けて緊張を紛らわせていたので。数学とか、そういう僕の苦手な難しい話はなかったと思います。』

〜今までで一番難しかったことは?〜
『痩せることですかね。結構太っていたので。期限までに体重を落とせる自信はなかったです。実際期限までに痩せられずに応募はしたものの面接すら受けられなかった方もいたそうですよ。』


一人二役って大変だね。
さて、面接が終わってから毎週月曜日始まって神社に寄り道して神社の常連となったことも関係したか彼が地上探査員に選ばれた。踊らずにはいられないような気持ちがニョキニョキと湧いてきた。


さらに数年が経ち、パーツが足りなくて1度予定が延期になったことは置いといて、なんとか地上探査出発の日がきた。(⑥)
最後に彼は友人に、
『記憶喪失になっても僕と友人だったことをほ こり に思っておけ。最後は笑ってさらばだよ。またね。』(⑦)
の一言を告げるとともにお互いの手を笑顔で握って矢印の先へ、地上へと向かった。(⑧)


地上は、眩しかった。


太陽に熱が戻ったのだろうか、それとも別の光なのか、確かにわかるのはそこには何かしらの光が存在していたことだった。

もちろん地下と地上では鼻血を吹き出してもおかしくないような結構な寒暖差が存在した。


さて、そんな寒い中遭難したらどうなるだろうか。


体の冷えからできた腫れすらも、そこにばい菌が入ってきたとしても気にならないほどに辛い。(③)

他の探査員とも連絡できないし、お腹も空いてきた。きっとどんなゲテモノを囮にしても僕を誘導するには十分だと思う。

そうだな、心残りといえば結婚しなかったことかな。できなかったんじゃなくてしなかっただけだけど。

さて、これで僕の話は終わりだよ……
他の探査員が光について報告して世界の進歩という大きな物語を進める中、僕の人生なんかのたった1文で終わるような作中作は幕を閉じる……(①⑨)

はは、雪と氷が降ってる……いや少し溶けてる……少し熱が……


〜以降雪の降る音〜


以上が最初の地上探査員の一人が残した最後のメッセージとされている。彼はその冷たくなった手、身体、顔で付近の雪を少しだが溶かしたという。
【了】 [編集済]

私たちの「当たり前」という概念から覆してきましたが、地上探査員の語り口は、フランクな感じがしながら、死の恐怖って言うんでしょうか、そこを紛らわすような緊張感も伝わってくる気がします。そして、何よりも天晴なのは、今回出た質問50個を要素として全部入れていることです。しかもそれをこんなにスッキリと収められるとは、もう凄すぎです。どうしたらそんなにうまくまとめられるのでしょうか・・・憧れます。

No.89[ニックネーム]08月22日 01:4208月24日 21:58

Panda is all of me [編集済]

白と黒で彩られた愛は消えない。 [良い質問]

No.90[ニックネーム]08月22日 01:4408月30日 20:51

「遊園地のパンダを日用品に例えようなどとは思わないことだ」⑬

風護にそう言われて、僕は唇をとがらせた。
「遊園地がダメなら、動物園ならいいのか?」
「…せめて、そこまでにしておけ。自分の世話しているパンダなら、まあ文句はない」
風護は続けて言う。
「それにしても、どうしてパンダがホッチキスになるんだ」
「だって、パンダは竹を食べれるくらい顎の力が強いだろ?」
僕としては納得の答えだが、風護は満足してないみたいだ。しかめっ面をさらにしかめて、
「分かりにくい。至極分かりにくい」
と言った。
そうかなあ…と思案する僕に、
「ともかく、俺は次の仕事があるから、後はよろしく頼む」
と言い残し、風護はスタスタと歩いて行ってしまった。
次の機会にもう少し詳しく説明しよう、と僕は思った。

▲▽▲▽▲▽▲▽

清掃業務を終えた帰り道。風護と一緒になったら、僕はいつもパンダの話をした。
「かわいいよな…カンカン」
風護も、いつも同じ返しをした。
「お前はカンカンが好きすぎる」
「もちろん他の子たちも好きだよ?」
「リンリンのことか?」
「パンダじゃなくても、狐のいなりちゃんだったり、ウサギのピーターくんだったり」⑩⑫
「なるほどな。だが一番はパンダで、カンカンだろう?」
「しょうがないだろ?パンダで、カンカンなんだから。…ほら、君の好きな時計も、パンダみたいなものだろ?」
「だから、日用品に例えようとするな」
「あ、ごめんごめん」
「そう言って、今まで一体何度パンダパンダ言ってきた?」
「ごめんってば」

△▼△▼△▼△▼

昼休憩中、やっぱりパンダの話になった。
「カンカンが好きで何が悪い!」
「もちろん、ただ好きなだけなら何も悪くはない。だが…覚えているか?以前カンカンを見に来た客が『以外と普通だね』と言った時、お前は聞かれてもいないのに話を始め、結果ひきつった愛想笑いで去ってしまっただろう」④
「ああ、あれは失敗したよ…。いきなり専門的なことを言われても分からないよな!次からはもっと分かりやすくしたよ!」
「…日◯昔話を真似たようなパンダの昔話は?」⑪
「もちろん覚えてるよ。子どもたち相手に公園でやった紙芝居だろ?」⑨
「そう、お前が近隣住民に通報されたあれだ」
「流石にパンダの着ぐるみはやりすぎだったな…。熱中症で倒れそうになったし。次はパンダ柄の服とかにするよ!」
「…世話の時、カンカンに手を握られたことを『ラッキースケベしちゃった!』と喜んでいたこともあったな?」⑧⑤
「あれには流石の風護も引いてたな…。そうだよな!カンカンをそんな欲にまみれた視線で見たら失礼だよな!」
「…」
「…?」

▲▽▲▽▲▽▲▽

僕はパンダが、
カンカンが、
大、大、大好きだった。
「カンカンかわいいなあカンカンほんと大好きカンカンはもうどうしてそんなに愛くるしいカンカン――
「発作もいいが、もう少しまとめられないのか。終わりが見えないんだが?」
「うーん…一文で言えないこともないけど…」
「ほう、どんな?」
「『カンカンは、尊い』。以上」①
「…」
「…」
「…それで頼む」
「分かった。カンカン尊いなあカンカンほんと尊いカンカンはもう――
「違う。そうじゃない」

△▼△▼△▼△▼

繁太はパンダが、
カンカンが、
大、大、大好きだった。
だから、動物園が経営難から廃園になるかもしれない、という話になった時、繁太の頭はカンカンのことでいっぱいになったのだろう…。注意していればかわせた、というものでもなかっただろうが……。

俺は駆け寄り、声をかけた。

「おい!しっかりしろ!おい!」

遠くから響いてくるサイレンの音。
俺には何も、
何もできなかった。
温かな液体が、
白も、
黒も、
赤く染めていった。

🔺🔻🔺🔻🔺🔻

繁太の頭に落ちてきたのは、建設作業に使われていた工具だった。頭蓋骨が砕けて腫れ上がった頭部と、そこからダラダラと流れ出る鮮血は、十二分に死をイメージさせた。③しかし繁太は幸いなことに…と言っていいのかは分からないが、とにかく死にはしなかった。後遺症もほとんどなく、ある一つのことに関しての記憶喪失が見られたのみだった。⑦医者曰く、「あれだけの怪我をして、これだけで済んだのは奇跡的なこと」らしいが、俺からしてみれば、それは何よりも…。

×××××××××××××

繁太が失ったのは、あいつの息子だった。確かに血は繋がっていない、それどころか同じ人間ですらない動物ではあったが、あいつは確かに愛していた。
…しかし事故を境に、あいつの発作は治まってしまった。

×××××××××××××

退院祝いに向かった動物園で、繁太は不思議そうな顔をしていた。どうしてこんなところに来たのか、とでも言わんばかりに。俺は不安を感じながらも、繁太をカンカンの場所に連れて行った。
…実際に会えばもしかしたら、という淡い期待は、あっさり打ち砕かれた。繁太は、あろうことか、カンカンの前を通りすぎた。②カンカンが近づいてきたのにもちらりと目を向けただけで、それ以上の反応は見せなかった。

×××××××××××××

あれから三日ほど経った時のことだった。
繁太は不意に話し始めた。

「張り紙されてたけどさ。どうなるんだろうな」
「…うん?何の話だ?」
「あそこ、つぶれるんだろ?」
「…ああ、動物園のことか。そうらしいな」
「次の仕事先どうする?」
「…」
「…それにあそこにいる動物たち、どうなるんだろ」
「…!
気に、なるのか?」
「まあ、何となくな」
「特にどの子が気になるんだ?」
「どの子?
うーん…」
「…」
「そうだな…あのカンカンってパンダが、何か気になるんだよな」
「…!!」

俺は確信していた。
やはり、パンダへの情熱のないお前なんて、テンプがない時計のようなものだ。⑥
お前を元の正常な状態に、いや、異常な状態に戻してみせる。

×××××××××××××

やはり、繁太に記憶を取り戻させるには、カンカンとの接触が必要だった。しかしこのまま廃園になれば、その機会は激減してしまう。俺は俺の親友のため、決意した。策を練り、人を呼び、何とかここを復興させなければならない。

×××××××××××××

×××××××××××××

××××××××××▲▽

今日は待ちに待った「パンダゾーン」が開かれる日だ。
経営上の理由からずいぶん前に閉じられてしまっていた場所は、この日、リニューアルして復活することになる。
ホース片手に中央広場にやって来て、さて、と袖を捲り上げた。水呑場の蛇口についた水滴が落ちて、仕事の時間。ホースをしっかり散水栓に繋いで、僕は広場の掃除を始めた。

【完】

※⑬はツイッターで行った企画ですので、お気になさらずお願いいたします。 [編集済]

パンダは私の全て。いやもう、まさにまんまです。ですが、記憶喪失でその愛情さえも忘れてしまう・・・でも、その愛情を取り戻すために奮闘する「俺」がいただけでも、それが繁太の救いでもあるような、そんな気がしますね。やはり、自分の情熱はずっと持っておきたい。いえ、むしろ離れてたぶん爆発するんでしょうか。場面転換の演出もニクい。こちらのツイッターお題も、なかなか好きです。

No.91[靴下]08月23日 01:3808月24日 22:03

「秋の桜」

季節外れでも、それは私たちにとって尊いもの。 [良い質問]

No.92[靴下]08月23日 01:3808月30日 20:51

一、

何が起きたのかわからなかった。
唯一覚えているのは、ものすごい風。
僕が手に持っていたカバンを一瞬で巻き上げていった。
あっ、と思う間もなく、何も見えなくなった。
それが眩しかったせいだとわかったのは、しばらくしてからだった。
どれくらいの間そうしていたのだろう。
気づくと僕は地面に寝転がっていた。
辺りは真っ暗だった。どうやら何かの下敷きになっているようだ。
ゆっくりと体を起こすと、町の風景は昨日までとがらっと変わっていた。
近くにあったはずの家はぺしゃんこに潰れ、少し先を走っていたはずの市電が横倒しになって目の前に転がっている。
そして至るとこから火の手が上がり、焦げ臭いにおいが鼻に刺さってきた。


一九四五年八月六日、広島市内の出来事である。⑪



二、

僕は恐ろしくなった。
今までにも空襲は何度もあったが、こんな爆弾が落ちたことはなかった。
空襲警報を聞いた覚えはない。そのことも、この爆弾がいつもとどこか違うことを物語っていた。
仕事に向かう途中だったが、こうしちゃいられない。
僕は家に向かって走り出した。

自宅のある通りまで来て僕は愕然として足を止めた。
まるでおもちゃの町を誰かが踏んづけたかのように、町のすべてが壊れていた。
まともに建っている家は一つもなかった。
ふと、足元から呻き声がした。
ついと目を下に向けると、人が倒れていた。
いや、正直に言うとそれが人だとは思えなかった。
人の身体にしてはパーツが足りない。⑥
両足の膝から下と、右手がなかった。
そして顔全体がやけどのようにただれている。
そして僕の方を向いて呻いているのだ。
僕は思わず後ずさっていた。
吐き気がこみ上げる。
なんだ、この爆弾は。
いままでのどんな酷い空襲だって、人間がこんな姿になるようなことはなかった。
やっぱりこの爆弾は今までと違う。
額から流れる汗をぬぐい、振り返ってみれば、そこには人と言えない姿の人があふれていた。
爆風で吹き飛んだガラスの破片が体中に突き刺さった人。
背中の皮膚が融けて垂れ下がり、まるで手ぬぐいを引きずっているかのような人。
服が飛ばされ、上半身が露わになった女性もいた。
ラッキースケベ、などと思っている余裕はもちろんない。⑤
一番目を引くのは、おびただしい数の死体。
死んでいるのか生きているのかもわからない無数の人の山からは、時折かすかな声のようなものが聞こえた。
怖くなった僕は、逃げるようにその場から走り出した。
耳をふさぎ、目をつぶって走った。
家にいたはずの妻と、もうじき3歳になる娘は無事か。それが不安だった。

僕はいつの間にか自分の家を通り過ぎていた。②
突き当たりまで来てようやく通り過ぎていたことに気がついた。
まさかこのぺしゃんこになった瓦礫のかたまりが自分の家だとは。
煤で黒くなった表札にうっすら自分の苗字が読めなかったら判らなかったかしれない。
2人の名前を呼んでみるが、返事はない。
瓦を何枚かどけて、おそるおそる家の中を見てみた。
幸か不幸か、人影はなかった。
その代わり、娘が大切にしていた兎の人形が見つかった。⑫
爆風のせいか、火で焼かれたのか、耳が取れてなくなっていた。
この子が身代わりになって、娘が無事でいますように。そう祈った。
そのときだった、後ろから名前を呼ぶ声がした。
振り返るとそれは妻だった。
煙を吸って喉を傷めたらしく、大きな声は出せないようだったが、生きていてくれたことが嬉しかった。
聞けば、娘と朝食を食べ終え、片づけをしようとしたところでバリバリという大きな音が鳴り、目の前のちゃぶ台が吹き飛んだらしい。
そしてあたりが一瞬で眩しくなり、自身も吹き飛ばされて気を失ったようだ。
ちゃぶ台がぶつかったのか、腕が赤く腫れていた。③
妻も探したようだが、娘の姿は見ていないという。
兎の人形を見せると、彼女は泣き出した。
僕も泣きそうになったが、ぐっとこらえて僕らは娘の名前を何度も呼んだ。
しかし声は返ってこなかった。
いつの間にか火は近くまで燃え広がっているようで、だんだん暑くなってきた。
我が家にも火の手が回ってくるのは時間の問題だ。
いつまでもここにいるのは危険だ。
そう妻に言ったが、僕の言葉は届いていない様子だ。
本当は、もちろん僕だって諦められるわけがない。
しかしそれと同時に妻も心配だった。
長い時間をかけてやっとできた一人娘だからか、妻は少し過保護の質があった。
今も、娘が見つからなかったら何を言い出すかわからない。
私も一緒にここで死ぬなんて言われたら。
やはり一度探索はあきらめて、安全なところに避難しよう。
そう言いかけたが、しかし妻が隣にいなかった。
あれ、と視線を家に向けると、妻が太い木材をどかして奥の方に進もうとするところだった。
そして、それと同時に我が家から赤い炎が上がるのが見えた。
僕の脳裏に一瞬最悪の絵が浮かぶ。
何としても避けなければ。僕が守らねば。
僕は声にならない大声を出しながら妻に向かっていった。
一歩、二歩、三歩、四歩、大股で歩き、妻の手を掴んだ。⑧
そしてそのまま思い切り引っ張った。
妻の身体を抱えて後ろに倒れ込む。
妻が一秒前にいた場所に、火のついた瓦が崩れ落ちてくるのが見えた。
間一髪、助かった。
しかしホッとしている時間はない。
大声で泣きながら娘の名前を呼ぶ妻を無理矢理おぶって、僕は遠くを目指した。
途中、どす黒い雨が降ってきた。
今まで嗅いだことのない不気味な臭さがした。
これも今回の新型爆弾のせいなのだろうか。



三、

結論からいうと、娘は見つかった。
しかし、それは僕らが望んだ姿ではなかった。
僕らが会いたかったのは、名前を呼ぶとこちらを振り向き、口を小さく開いてへへっと笑う、そんな元気な娘だ。
今僕らの目の前に横たわっている娘は、固く目を閉ざし、今まで見せたことのない険しい表情をしている。
きっと怖かったのだろう。苦しかったのだろう。
この世に生を受けて3年と経たずに旅立った幼子の最期の表情は、安らぎとは程遠かった。

あの日僕らは、自宅を後にして、火の回らなそうな公園に向かった。
幸い火は回ってこない様子で、公園には死を免れた人が幾人か集まっていた。
泣き疲れてぐったりしている妻を座らせ、近くの水道から水を汲んできた。
明日にでも、火災がおさまったらまた探しに戻ろう。
そう言って、その日は橋桁の下で眠った。
そして翌日、自宅に向かっている道中、娘は見つかった。
家からは少し離れたところだった。おそらく爆風で飛ばされたのだろう。

煙を吸い込んだのか、口の中が真っ黒だった。
僕らを探して歩き回ったのか、裸足になった両足からは切り傷と擦り傷で血が出ていた。
僕らは泣いた。
ごめんね、と何度も言った。
小さなあなたを守ってあげられなくてごめんなさい。
たったひとりで寂しく逝かせてしまってごめんなさい。
こんな時代に産んでしまってごめんなさい、と。
涙が涸れるまで、僕らはそのまま動けなかった。

娘を連れて公園に戻るわけにもいかず、その後僕らは県境にある山に向かった。
調理はできるかわからないが、山には山菜も湧き水もある。そう考えての事だった。
山の方は爆弾の被害はほとんどなく、爆風とそれによる地震程度だった。
山を登ろうと思ったが、いかんせん昨日の朝から何も食べていない。
しかし無一文で避難してきたので、食事をとるわけにもいかない。①
麓町まできたはいいが、どうしようもなくなってしまった。
しかし、神はひもじい夫婦を見捨ててはいなかったようだ。
ある宿屋の前で、男性に声を掛けられた。
彼は市から避難してきたのかと問う。
そうだと答えると、彼は宿屋の主人で、少しばかり食事をとらせてくれると言ってくれた。
どうやら彼自身も昔娘を2歳ちょっとで亡くしたらしく、僕らの境遇を哀れに思ってくれたようだ。
蒸かした芋と山菜のおつゆだけの簡単な食事だったが、優しい味が体全体に染み渡った。
そしてありがたいことに、宿屋に少しの間泊めてもらえることになった。
新型爆弾の話はこの町にも伝わっているようで、宿の手伝いを条件に僕ら夫婦を受け入れてくれた。
僕は毎日山に登って山菜をとったり、野生の狐を捕まえたりした。⑩
妻はお勝手の仕事を手伝った。
爆弾の後に降った黒い雨の影響で、広島市には今後60年間草木が生えないと言われているらしい。
人が生活できるようになるにはかなりの時間がかかるだろう。
やはり離れたこちらの方まで来てよかった。

主人の厚意で、娘は火葬してもらった。
うちの墓は市の中心部にあったため、おそらく跡形もなく吹き飛んでいるだろう。
山の中腹に1本だけ桜の木が植わっていたので、遺骨はその桜の木の下に埋めた。④➓

日本が戦争に負けた報せを聞いたのは、その日のことだった。



四、

宿屋でお世話になり始めて、そろそろ2ヵ月が経つ。
今でも時々、娘と一緒に暮らしている夢を見る。
軽やかな笑い声が聞こえ、一時でも娘を失ったことを忘れられる。⑦
しかし目が覚めると、現実が襲ってくる。
涙がこぼれることもあった。

2ヵ月間も夫婦そろって住み込みで働かせてもらって、主人にはとても感謝しているけれど、申し訳なさも感じている。
そろそろ元の家に戻るべきか、そうでなくても他の仕事を探さないと。
どうやら宿屋の経営も、上々というわけではないらしい。
主人が親切にしてくれたのに、僕らが足手まといになってはいけない。
僕は妻と話し合って、宿屋を出ることに決めた。

翌朝、僕らは主人にお礼を言って、宿屋を出た。
弁当としておにぎりまで持たせてくれようとしたが、それは断った。
最後まで僕らによくしてくれた宿屋の皆の優しさに胸が熱くなった。
10月の涼しい秋風が吹く中、僕らは出発した。

ひとまず僕らは自宅があった場所に向かうことにした。
焼け残ったものがあるかも知れない。
しかし歩みを進め、市に近づくにつれ、原爆の爪痕が著しくなってくる。
僕らは鬱々とした気分になりながら、無言で瓦礫の道を歩き続けた。
やはり元の場所に家を建て直して生活するのは難しいのだろうか。
妻もずっと黙っているが、同じことを考えているのだろう。
僕は大きく溜息をついた。


娘を見つけた場所まで歩いてきた。
ここで娘は静かに死んでいったのだ。
僕らは静かに手を合わせた。
妻の目から一滴の涙がこぼれた。
白く煤けた地面に小さく吸い込まれていく。
そのとき、僕の目になにか緑色のものが映った。
目を向けて、僕らは同時に驚いた。
「あっ」

それは、1本の秋桜だった。

60年間草木が生えないといわれていたはずなのに、今僕らの目に映っている細い花は、弱々しいながらも、懸命に根を張り生きている。
僕は近くの防火用井戸から水をすくってきて、秋桜にかけてやった。
真っ白い地面に、水が滲んで沁みていく。
妻は泣いていた。
「桜子の生まれ変わりかな」
妻は娘の名前を口にした。
僕は何も言えなかったが、きっとそうだ、と思った。


秋桜は僕らにとって特別な花だった。
3年前、病院で妻が産んだ娘に、僕は桜子という名前を付けた。
春生まれでもないのに、と妻は言ったが、僕は気にしなかった。
病室の窓から見える花壇に、一面に咲いていた秋桜。
それが娘の誕生を祝っているようだった。
秋に桜が生まれたっていいじゃないか、と言って僕は一本摘み取って彼女に渡す。
小さく口を開いて、へへっ、と妻が笑う。
そして小さな声で気に入った、と言ってくれた。


今日は、娘の3歳の誕生日。
生きていれば、の話だけれど。
僕らは風に揺れる秋桜を見つめたまま、静かに佇んでいた。
しゃがんでいた妻が、おもむろに立ち上がる。
その目に涙は浮かんでいなかった。
生きよう。
僕は妻にそう言った。
あんなに小さかった娘が、もう生まれ変わって綺麗な花を咲かせているんだ。
僕らも生きよう。
妻は大きくうなずいた。
秋の風が大きく吹き、その涼しさがどこか心地よかった。④❺


※この話はフィクションです。
ですが実際に起きた事をもとにしています。
また、気づいた方も多いと思いますが、『はだしのゲン』にかなり影響を受け、一部取り入れています。⑨
もし読んだことがない方がいましたらそちらもぜひ読んでみてください。

【終わり】
[編集済]

ああ・・・(語彙喪失)
昨日のことのように幸せだった日々を思い出すと、思わず涙が零れる。自分の大事な人をなくしてくじけそうになっても、他の人に助けられながら生きていく。その生き方が、儚げでありながら地中にしっかりと根を張る花のようで、心打たれました。もちろん題材としてはデリケートなのですが、靴下さんが丁寧に書いておられるのが伝わってくるようで、目をそむけたくなる話ではなく、むしろすごく読み入ってしまう物語でした。

No.93[ニックネーム]08月24日 04:3708月24日 22:11

白の蜘蛛 [編集済]

いいのだ。一瞬でも夢を見られたのなら。 [良い質問]

No.94[ニックネーム]08月24日 04:3908月30日 20:51

「蜘蛛の刺繍を愛せますか」⑨⑬

この本を手に取った理由は、著者名が知り合いの名に似ていたことと、昔その知り合いから蜘蛛の刺繍が入ったハンカチを貰ったことがあったからだった。
🕸️🕸️🕸️
知り合いの名は楠原 結莉(くすはら ゆり)という。私がとあるゲームセンターを訪れたとき、楠原はクレーンゲームの前に立ち、中のぬいぐるみを見つめていた。確かキツネのようなキャラクターだったと思う。⑩そういった状況はよくあることだ。普通ならば、特に関わろうとはしない。しかしその、遠目には物静かな少女には、いくつか普通でない点があった。
まず目を引いたのは、少女が日本人にしてはかなり珍しい、銀の髪を持っていたことだった。私は少女の方へ歩いていき、話しかけた。…そして次に目を見張ったのは、振り向いた少女の瞳が、濁りのない真っ直ぐな‘赤’だったことだった。
「何ですか?」
目に目を奪われ、危うく、少女の言葉が左から右へ流れていくところだった。ハッとした私はしどろもどろになりながらも「手伝うよ」と返し、半ば強引にクレーンゲームを始めた。2度の挑戦でキツネのぬいぐるみを手に入れ、少女に手渡した。少女は片腕にそれを抱き、もう一方で私の手を引いて、近くの椅子に向かって歩き始めた。⑧
震える手に連れられながら、私は、私の飼っていたウサギのことを思い出していた。⑫ユリと名付けたそのウサギは、ちょうど目の前の少女のように美しい白の毛並みで、どこまでも純粋な赤い目をしていた。…数ヶ月前に他界した愛しい子を、目の前の少女と重ねていたのかもしれなかった。出会えたことに運命のようなものを感じ、生まれ変わりだと言われれば、信じていたかもしれなかった。
🕸️
その一件以来、私は楠原と親しくなった。楠原と私の家は案外近かったようで、ゲームセンターで会えば一緒に遊び、喫茶店で会えば一緒にお茶を飲み、公園で会えば一緒にブランコに乗った。楠原といる時間は楽しく、何よりユリが…いや、百合が帰って来たように感じられて嬉しかった。
🕸️
楠原は小説家を目指しているが、ご両親はそれに猛反対しているらしかった。それが原因で家は居心地が悪く、できるだけ外へ出ているのだと、楠原は言った。…正直な所、私はご両親の気持ちが理解できた。しかし同時に、ただ否定するだけでは悲しい結末を迎えるということも、私は知っていた。私の一人娘も同じように考えて、ずっと昔に飛び出してしまったのだから。
「物理学者からすれば、男女間の摩擦など空気抵抗のようなものだ。」とは私の恩師、間久(まひさ)先生の言葉だが、この親子間の摩擦は、私を後悔の炎で燃やし尽くさんばかりだった。⑬
🕸️
14歳の少女、小説家志望、両親との衝突。考えてみれば、楠原 結莉と私の娘の百合は、髪や目の色などの外見的特徴は異なっているが、様々な点で同じような状況にあった。
私の結莉への感情は、ユリや百合への愛情と同じようなものなのかもしれなかった。
🕸️
出会って一年ほど経った頃、楠原に変化が訪れた。私のことを忘れたように振る舞い始めたのだ。前までは、街で姿を見かければ楠原から走り寄ってきていたのが、今では、手を振り声をかけても、まるで見えていないかのように、いつの間にか通りすぎてしまうのだ。②その変貌が信じられず、無理に話を進めた時もあった。
「久しぶりだね。最近いつものゲームセンターに来てないみたいだけど、何かあったの?」
「…」
「何かあったのなら相談にのるよ?また前みたいに、公園ででも」
「…何の話ですか?」
「何の話って、本当に忘れたの?」
「…」
「…本当に大丈夫?」
「…知りません」
確かに楠原は、一度に一文程度しか話さないような、人よりも無口な性格ではあったが、ここまでの素っ気ない態度は初めてだった。…冗談でこんなことをするような子ではない。

彼女からは、3月に池の周りの桜並木を並んで歩き、7月に行きつけの喫茶店でクリームソーダを食べ、10月に公園で小さい秋を見つけ、1月に雪合戦をした、一年間の全ての記憶が、完全に失われているように思われた。④⑦
🕸️
何が何だか分からないまま、私と彼女との関わりは断ち切れた。彼女のあの泣き腫らした目は、もう見ることはないのだろう。③それが、泣かなくてよくなったということを意味するならば、私が必要なくなったということならば、きっとそれは良いことだと思う。しかし私の心は反対に、私を構成する部品をまた一つ何処かへ失くしてしまったような、そんな感覚だった。⑥

私の手元に残ったのは、彼女が私から離れる前、いつものお礼としてプレゼントしてくれた、白い蜘蛛が刺繍された黒いハンカチただ一枚だけだった。
🕸️🕸️🕸️
「『薬原 リリィ』…か。どんな話なんだろう」

「どこかで聞いた、昔話のような感じだな。⑪
ある男の愛した、今は亡き女に化けた狡猾な蜘蛛。蜘蛛は男を利用して…
…最後には、蜘蛛の巣を一面に張り巡らせた古い屋敷に男を呼び出し、やって来た所へ女が裸で現れる。⑤女はそうやって誘惑して近づき、男を糸で巻いて逃げられないようにした。しかし男は叫ぶどころか、女ににこやかに話しかける。『君のお陰で、まるであの人が帰って来たように感じた。とても、とても嬉しかった』と。男は、女が自分を喰うつもりの蜘蛛だと分かっていた。分かった上で、ここへ来た。すると女は泣き出して、自分も男といられて楽しかったと語り出した。飢えで苦しみながらも、『貴方を喰うくらいなら、このまま死んだ方がいい』と。
しばらくして女は男の糸を解き、逃げるように促した。『ここにいれば喰ってしまう。抑えられなくなる前に早く』と。
しかし、男は逃げなかった。『本望だ』と。
男は微かに震える手で女の頬を擦り、またしばらくして、辺りは毒液と消化液とで満たされた」

【完】

※⑬はツイッターで行った企画ですので、お気になさらずお願いいたします。 [編集済]

こちらはまた、ちょっと奇妙で、不思議な淋しさも感じられて。誰かの心の支えになると、その人が立ち直った時、自分の役目は終わったのだと思う。その人が幸せならいいと思いながら、やっぱりどこかで必要とされてほしい物悲しさも感じました。
蜘蛛の刺繍のハンカチはふたりの絆の象徴でもありますが、もしかしたら、あの本が。そう思うと、やっぱりその人の力になることは無駄ではなかったのかもしれませんね。

No.95[ニックネーム]08月24日 10:0408月24日 22:27

鬼ごっこも、楽じゃない。 [良い質問]

No.96[ニックネーム]08月24日 10:0508月30日 20:51

目が醒めると横には愛する女がいた⑬

そうか、俺達は――
――――――――
-あの山には鬼が出る。
-故に足を踏み入れてはならぬ。
-もし出会ってしまったならば、かけっこをしよう、と持ちかけよ。
-鬼の腹が満ちておれば、お主は追われることとなろう。
-水の間へと着いたならば、死を覚悟せよ。
-さすれば命を拾うやも知れぬ。

[ある地方の伝承]⑨⑪
――――――――
俺はツイッターで、「夏休みに恋人とすべきこと」を募集した。これから先の内容が想像し難く、でも面白い。そんなリプライが良いなと思っていた矢先に来たのは、肝試し企画だった。⑬
――――――――
昼間のうちに割り箸を置いて、夜中に取りに行くというもの。いささか単純すぎるが、夏にはぴったりだ。ちょうど良い場所もあり、俺たちはやってみることにした。思ったよりも怖くないと言いながら、雰囲気がガラッと変わった山道を震えて歩いた。腕に胸が当たって、ちょっと嬉しくなりながら…割り箸置き場に着いたのはいいけど、肝心の割り箸が一膳しかない。⑤⑥もう一膳はどこに行ったんだ、と探していた俺たちは、いつの間にか‘通ってはいけない’と言われている道を通りすぎていた…。②
――――――――
俺たちの前に現れたのは、‘よく分からない何か’だった。全身は真っ青で、大きな手足にはミミズ腫れしたみたいに血管が浮き出ていて、信じられないくらい速く脈打っていた。③どう頑張って見ても、人間には見えなかった。

「洋(よう)、逃げろ…!」

「でも、紅(こう)くん!」

「いいから!走れ!」

洋が走り出して、俺は‘怪物’に向かって突進した。でも、岩かってくらいびくともしなかった。俺は軽く掴み上げられ、洋も簡単に追い付かれた。
間違いなく、俺たちの人生で最悪の夜だった。
――――――――
幸いにも、‘怪物’は俺たちを食べるつもりはなかったらしい。何故分かるかというと、驚いたことに‘そいつ’は喋ることができて、こう話し始めたからだ。

「お前達は我が領地に踏み入った。人間達には『 命が惜しくば立ち入るな』と伝えていたのだから、 お前達は我に食われても文句はないはずだ。…だが、近頃お前達のようなものが大量にやって来るので、我の腹は満たされておる。そこで、お前達ともう二人の人間を用いて、ある遊戯をすることにした。拒むことは許さん。」

下らない昔話なんか、と信じなかった俺たちにも、生き残れる可能性はまだあるみたいだった。
――――――――
俺たちは‘怪物’が唱えた奇妙な言葉を聞いて、その場に倒れてしまった。そして目を覚ますと、そこは森の中だった。異常なのは、周りの色が全部灰色じみた汚い色だったことだ。どこかから‘怪物’の声が聞こえてくる。

「今からお前達には追いかけっこをしてもらう。兎組と狐組の二組に、二人ずつ分かれるのだ。⑫⑩そして狐組は兎組を追いかけ、兎組は狐組から逃げる。捕まえれば狐組の勝ち、逃げ延びたら兎組の勝ちだ。勝った方は記憶を取るだけで、ここから逃がしてやろう。⑦負けた方は穴の底で、我に喰われるのを待つことになるがな。」

「ど、どっちが…」

「お前は兎だ。せいぜい逃げ回るがよい。…それ、狐がやって来たぞ?」

振り向くと、さっき言っていた二人組だろうか、俺たちの方へ向かって全力で走ってきていた。
俺は洋の手をとって引っ張りあげ、それこそウサギみたいに逃げ出した。⑧俺も洋も元陸上部だけあって、走りには自信があった。予想通り、後ろから迫っていた奴らを引き離して、どんどん進み続けた。
…‘怪物’の不気味な笑い声は、俺たちの周りでずっと響き続けた。
――――――――
ふと、周りの色がより白っぽくなっていってることに気づいた。多分これがゴールへの目印で、頑張って走り続けた。
―――――――――
流石にちょっと疲れてきて、俺たちはペースを落として走ることにした。少し落ち着いてきて、追いかけてきた奴らのことを考えられるまでになった。

「あいつら、俺たちと同じ感じかな?」

「そうじゃない?カップルっぽかったし」

「てことは、やっぱり肝試しかな」

「多分」

「バカなヤツらだな」

言ってから、俺たちもその“バカなヤツら”だったことに気づいた。でも実際、ほとんど誰も昔話なんて信じてなかったし、俺たちみたいな奴がたくさんやってくるってのも、嘘じゃなさそうだと思った。先に食べられてくれてたおかげで助かる…かもしれない。
――――――――
ずっと走り続けてるのに、ヤツらは時々追い付いてきた。多分、このままだと面白くないってことで‘怪物’が手伝ってるんだと思う。今さらだけど、理不尽さに腹が立った。さっきから休む暇がない。喉も渇いてきた。
――――――――
渇きがシャレにならなくなってきたとき、‘怪物’が声をかけてきた。

「喉が渇いたのか?なら、水の湧く部屋を用意してやろう。そのまま進め。」

俺たちが少し先に不自然なくらい白い家を見つけたとき、‘怪物’はバカなことを言い出した。

「だが、待て。中に入ってよいのは一人のみだ。もう一人は待つなり、先に行くなりしておれ。」

‘怪物’は俺たちを分断させるのが目的らしい。だけど俺も洋も、そこまでバカじゃない。無視して走り出…そうとした。俺は‘怪物’に捕まえられて、家の中に放り込まれた。

「紅!」

洋が手を伸ばしてくれたけど、その手を掴むことはできなかった。
――――――――
家には、布が積まれた部屋が二つと、端の方に蛇口みたいな、水が流れ出てる大きな管がある部屋が一つあるだけだった。水は真下の排水溝みたいな穴に落ちて、どこかへ流れていくらしい。
入ってきたはずの玄関は無くなっていて、窓なんかもないし、当然排水溝からも出られそうになかった。分かりやすく、罠だった。一応壁に体当たりしてみたけど、完全に閉じ込められてるみたいだった。

「…どうやって出たらいいんだ?」

‘怪物’の憎ったらしい声が聞こえてきた。

「どうだろうな。過去この遊戯に挑戦してきた者達の最難関要素は、この家だ。④未だかつてこの家から出られた者はおらん。
…おや、もう一人は捕まってしまったぞ。お前が逃げ切れなければ、兎の負けだ。」

「…いや、でも、ここにいたら捕まらないだろ」

「ふははは、罠に捕らわれた兎が何を言う。そこから出られなければ負けとしよう。さて、どうする?」

俺は、昔話のあの一文を思い出していた。①水の間で、死を覚悟する…。

「なら、ここから出られたら俺の勝ちか?」

「…うむ、よいだろう。」

「負けたら、穴の底で食べられるのを待つんだよな?」

「そうだ。」

「じゃあ、最後に…約束を守るか?」

「もちろんだ。そうでなくてはつまらん。」

「…分かった」
――――――――
俺は積まれていた布を排水溝に詰めて、水が流れないようにした。密閉された家に水がどんどん溜まっていって、膝、腰、胸、とうとう頭まで水で満たされた。俺は溺れそうになりながら、必死に考えていた。
俺がここで死んだら、俺は負けても穴の底で待つことができなくなる。
つまり…!
――――――――
目が醒めると横には愛する女がいた

俺は、やっと終わったか、と安堵の息を吐いた
今回も見破られずに済んだのだ
しばらくして、茂みの奥から姉貴がやってきた

「いや、女房まで巻き込み手伝わせてすまんかった。だが、お主らのおかげで楽しめたぞ。」

「いやいや、他ならぬ茉髪の姉貴のため。それにこいつも中々に楽しんでいたようだし、構わんさ。」

「しかし、あの小僧は中々に賢かった。」

「うむ。それに加え勇敢さもあり、できた奴だ。」

「あのような人間ばかりならば、我らの腹が膨れることもないのだがな。」

穴の底に積み上がった白い骨をチラリと見て、俺達は溜め息を吐いた

【完】

※⑬はツイッターで行った企画ですので、お気になさらずお願いいたします。 [編集済]

確かに、鬼が領域に立ち入る人間を食料にしているとはいっても、それが何度も頻繁に起こると、鬼自身も辟易してしまうのでしょうか。とはいえ、鬼の面子として、人間を逃すわけにはいかないという様子がなんだか鬼が可哀想になってきました。(?)
しかし、水浸しをまさか部屋ごといかせるとは。その発想がまた好きだなと思いました。しかも企んでいたことのもう一つ「過去の最難関要素」をちゃんと実行させてくれちゃって・・・ニックさんの発想には驚かされるばかり。

No.97[赤升]08月24日 12:4408月24日 22:38

彼女の病室

さあ今こそ、記憶の封印を解くとき。 [良い質問]

No.98[赤升]08月24日 12:5908月30日 20:51

忘れもしないあの日。
17歳の俺は、出来たばかりの彼女と初デートに行った。

彼女は小説を書いていた。そして俺がそれを読もうとすると彼女は恥ずかしがる程シャイだった。
優しくて大人しい彼女とは少しイメージが違う、かっこよくてドキドキさせられる話だったが、俺はその話が好きだった。


その日は映画を見に行った。もう内容は覚えていないが、警察官のウサギ⑫と詐欺師の狐⑩の話だったように思う。

映画館を出た後、勇気を出して彼女と手を繋いでみた⑧。彼女は真っ赤な顔をしていて、思わず可愛いと思ってしまった。

~~~

次のデートの日、俺は寝坊をして慌てて待ち合わせ場所に向かっていた。
少し遅れたがもうすぐ着くと思ったその時、ドンと大きな音がした。

待ち合わせ場所では、車の事故が起こっていた。彼女が倒れていたので駆け寄ると、強く打ったのか後頭部が腫れている③。
彼女は目覚めないままやって来た救急車に乗せられ、病院に行った。



医者の診断だと、彼女は植物状態になってしまい、いつ目覚めるかわからないということだった。

最初は熱心に彼女を見舞いに行った。
しかし、俺は守れなかった彼女を見ているのが辛く、受験勉強などと理由をつけて段々見舞いに行かなくなった。最後に彼女に会ったのはずっと昔だ。


…だから、ここまでの話は全て昔話。もう意味は無い、忘れた方がいいんだ。

そう、思っていた⑪。

~~~

俺はその後、専門学校を卒業して有名家電メーカーで働いている。
今日は病院から、エアコンが壊れたので修理して欲しいという電話がきた。


病院に着くと、既視感を感じた。ここは…彼女が入院している病院じゃないか?
しかし、彼女に会ったところで彼女は眠っているだろうと気づいた。

他の同僚と共に病院に入る。案内された病室に入ると、すぐにエアコンが壊れているとわかった。今は真夏なのでもちろん覚悟は決めていたが、何しろその部屋にいるだけで汗ばむ程暑いのだ。患者は別の病室に移ってはいるが、これは早く直さなければならない。

修理を進めていく内に足りないパーツ⑥が出て、そのパーツが届いたという連絡がきた。俺が取りに玄関に向かっていると…彼女が立っていた。


驚きの最中で彼女に声を掛けようとする。
「あ、あの…」
「…あっ、修理屋さんですか?…えっと、よろしくお願いします」
…そう言って彼女は逃げるように去ってしました。

俺がその場に立ち尽くしていると、後ろから突然「あらっ、もしかしてあの子の知り合い!?」と声を掛けられた。驚いてそちらを見ると、いかにも大阪のおばちゃんっぽい看護師がいた。

「あ~驚いたでしょごめんなさいね、あの子つい最近目を覚ましたと思ったら記憶喪失で周りの人ぜーんぜん覚えてなかったのよ!今は検査とか準備とかで入院してるけど、そろそろ退院するって。あらっいけない、私ってば喋り過ぎってしょっちゅう怒られちゃうのよ!そうだわ私やることあったんだった、じゃあよろしくねー」
そしておばちゃん看護師は忙しそうに去ってしまった。

…圧倒されてしまったが、つまり、彼女は植物状態からは回復したものの、記憶喪失で俺のことを忘れているらしい⑦。

~~~

数日後、俺は彼女を見舞いに行った。今会わなければ一生彼女と会えないと思ったのだ。
しかし、会ってどうするか、俺の記憶が無い彼女と普通に話せるのか。悩みながら歩いていたら、彼女の病室の前をいつの間にか通り過ぎていた②。

病室に入ると、彼女はまだ眠っていた。持ってきた花を部屋にあった花瓶に入れて待つ。エアコンが効き過ぎているのか、体が少し震えた。しばらくすると、彼女が目を覚ました。

「あ、えっと、おはようございます」
「えっ…お、お見舞いの方ですか?」
やはり、俺のことは忘れてしまったようだ。


…結論から言うと、俺と彼女は意外と普通に話すことができた④。
彼女は昔の彼女と変わっていなかった。優しくて大人しい、恥ずかしがり屋な子だった。
ただ、俺のことを昔のように名前で呼ばなくなったのが寂しかった。

話していると、彼女がふと言った。
「あの…あなたは、記憶喪失になる前の私を知っているんですよね…?」
「えっ、そうですけど…どうして?」
「私…昔の私のことを知りたくって…」

それから俺は彼女について話し始めた。

「私…小説、書いていたんですか…?」
「そうだな。かっこよくてドキドキさせられる話で、俺も好きなんだ」
「かっこいい…?私が…。ど、どんな話ですか?」
「ああ、例えば…」

俺は彼女の書いた話⑨で一番気に入っている一文①を口にした。


「『…この世界とアイは傷つけさせない!くらえ、漆黒の焔(ダーク・ブレイズ・バスター)!』」


「えっ…」
「他には、こんなのかな。えーっと『ボクの魔眼が疼く…。君が――』」

「わ、わかったから…もう止めて、ゆうき君…!」

「えっ!」
彼女を見ると、顔を伏せて涙を流しているように見えた。

その時、俺は人生で最高にパニックだった。何か謝ろうとしたのか慰めようとしたのか、近くにあった花瓶を掴もうとして思わずその花瓶を倒してしまった。

「あ、あぁ、水が水が」
「…ふふっ。ゆうき君、落ち着いて…」
「う、うんそうだね…。あれ、今『ゆうき君』って…?」

「あれっ、えっ、えぇっ!?」
「恥ずかしいから、読み上げるの止めて、って言ったのに…もう…」
「え、今俺のこと名前で」
「でも…ありがと…。私、思い出したみたい…!」

~~~

その後、『ラッキースケベ体質な俺の魔王討伐記⑤』でデビューしたラノベ作家羽梨愛が活躍するのは別の話である。

「凄いよ愛ちゃん、これ本当に面白い!」
「は、恥ずかしい…」


~簡易版~
主人公は家電メーカー社員の男。エアコンが壊れた病院に行くと、入院している高校時代の彼女がいた。記憶喪失の彼女を見舞いに行った主人公はなんやかんやで記憶喪失を治す。彼女の涙を見ると主人公は動揺して花瓶を割り、中の水を床にぶちまけた。

【完】

赤升さん好きです。(毎回恒例)
一応、キュンキュン来る恋物語も大好物なのですが、まさかの彼女のギャップでまたちょっとキュンときてしまいました。小説を書くってそっちかい! そう思った方も私含めちらほらいたみたいです。ヒロインを自分の名前(推定)にするのもかわいいし、恥ずかしくて泣いちゃうのも可愛い。惚れるのもなんとなくわかります。
ちょっとした小話で、実は今回狐とウサギが関連するそのネタを密かに待ってました。赤升さんなら触れてくれるって信じてた。〇―トピアはいいぞ。

No.99[OUTIS]08月24日 14:4008月24日 22:50

【チェシャ猫探偵の事件簿 -水平思考には向かない探偵たち-】

探偵たちの饗宴。そして、凶縁。 [良い質問]

No.100[OUTIS]08月24日 14:4008月30日 20:51

やあどーも、僕の話なんかを聞きたいだなんて君も物好きだね。
自己紹介、しておいたほうがいいかな?
僕は樗木根幸助(ちしゃきね・こうすけ)、私立探偵をやっているんだ。
それじゃあ、なんの話がいいかな?
・・・ああ、そうだ。とっておきのがあるんだった。
これから話すのは、ある山奥の館で起こった話なんだけどね。

…それは、一枚の依頼状がきっかけだった。
「此処にて待つ。」
その一文と住所だけが書かれた依頼状。①
普通なら断るんだけど、封筒に前金が入っていたせいで引き受けなくちゃいけなくなったんだよね。
そんなわけで僕は車を飛ばす事数時間、指定の住所・・・というか鬱蒼とした山の中を走っていたんだけど、目的地に着く前にガソリンが切れて立ち往生しちゃったんだ。
GPSを見てみると目的地をいつの間にか通り過ぎていたらしく、気が付けば完全に迷っていた。②
そんな時、ぼんやりと青い炎が見えたもんだからもうびっくりしちゃってさ。
死体の一つ二つ入れてもわからなそうな深い穴がところどころにあるせいで、人魂かな?鬼火かな?狐火だったりする!?なんて思いながらも怖いもの見たさで車を降りて追いかけたんだ。⑩
そうしたら真っ黒な薔薇に囲まれた古ぼけた六角形の館にたどり着いたの。
5人の人が集まっていて、どうやら他の人達も何人かは今来たところみたいで3人の人が僕らを出迎えてくれたんだ。
「ようこそおいでくださいました、名探偵の皆様。
 私はこの鼠谷家の当主鼠谷璃子(ねずみたに・りこ)と申します。以後お見知りおきを。」
そう言って黒づくめでまだ20になるかならないかといった年齢の少女が挨拶をはじめた。
「皆様にはこの館で起こった事件の真相を突き止めていただきたいのです。詳しい話は中で致しましょう。」
それに続くように目がヤバい感じの白衣の人、和服の人、僕って順番で入っていったんだ。
「六角形、ベンゼン環・・・いや、ベンゼン館と言うべきでしょーか・・・?ククク」
白衣の人はなんかブツブツいいながら凄い笑ってた。
めっちゃ怖かったよ、うん。
館に入ってわかったんだけど、一つ大きなホールが真ん中にあってそこからアスタリスク状に6つの部屋に繋がってて、更にその6つの部屋を繋ぐように外回りの廊下があったんだよね。
で、中央から北へ行く通路の脇に簡易キッチンがあって、他の場所は食料貯蔵庫になっているらしい。
中央ホールとそこへ行く道は周りの部屋よりも一段ずつ下がってて少し低いところにあったんだ。
そこに集まった僕らは、その異様な空気に少し呑まれていた。
一面が焦げたように真黒なのに床だけが白く塗られていて。
中央に小さな台のような物があるだけで他には何もないだだっ広い空間。
そこで僕らは自己紹介をすることになったんだ。
「じゃあ僕から挨拶いいかな? 私立探偵の樗木根幸助っていいます。よろしく~」
「私はここで執事をさせていただいています、卯月唯兎(うづき・ゆいと)と申します。」
僕の挨拶に続いて璃子さんの隣に居た白髪の好青年って感じの人が自己紹介をすると、
「同じくメイド長をさせていただいております、酉井飛鳥(とりい・あすか)と申します。
何かございましたら私たちに一声お申し付けください。」
同じく隣に居た40代くらいのおばちゃんが続いた。
「俺は超常探偵をしている、龍門寺辰也(りゅうもんじ・たつや)ってもんだ。よろしく。」
そのあと和服の人が自己紹介をして、最後に
「あーしは科学探偵させてもらってます、牛込慎吾(うしごめ・しんご)と申します。カカカッ」
白衣の人が自己紹介をして手袋をつけたままみんなに握手して回っていた。⑧
っていうか、一人だけ明らかにキャラが濃い。
凄い濃くって驚いている僕の所にも来たから右手を差し出すと、左手を出してきた。
全く引かなかったからしぶしぶ左手を出すと、すごい力で握られてブンブン振り回されてひどい目にあったよ。
しかもなんかあの手袋べたついてたし・・・
僕らが呆気にとられていると、璃子さんが話し始めた。
「10年以上、昔の話になります。」⑪
要約すると、こんな感じ。
璃子さんには弥子(やこ)さんという気の強い双子の姉がいたんだって。
けれども二人で中央ホールに居たある日、中央ホールが爆発し燃えて弥子さんとメイドさんが一人亡くなったそう。
璃子さんは最初の爆発で飛ばされたおかげで頭を打ち付けて軽い記憶障害になっただけで命は助かった。⑦
ただ、当時鼠谷家は聖なる炎を生む事が出来る神子一族として祀り上げられていた上、この地には死人が人魂となって彷徨うっていう鬼火伝説があった為村人たちは祟りを恐れて警察を招き入れなかった。⑨
そんなわけで璃子さんが大人になった今、姉達の死の謎を解明したいっていうんで僕らが呼ばれた。
とりあえずみんなの意見を聞いてみようかな。
そう思って一番まともそうな龍門寺さんに話しかけようとした時
「なぁなぁ!君ただの探偵なんですって?」
「うっ・・変なのに捕まっちゃったよ。」
「変なとは失礼な!全く、なってないですねぇ・・・」
どうやら口に出ていたらしい、変な人もとい牛込さんに捕まった。
「で、君はこの事件どう見ているんですか?」
「僕はまだ何とも。ただの爆発事故の可能性も今の所あり得るんじゃないかな?」
「もっとよく見なさいな、十数年前にここで起こったのは事故じゃなくて立派な殺人事件ですよ。
 まあ見てなって、この私の科学捜査で事件の犯人まで見つけてみせるから!」
そう言ってジュラルミンケースを光らせながら自分の部屋へ帰って行った。
疲れた。
二言三言しか話していないのにこの疲れっぷり、既に事件が起きていないんだったら彼が殺されればいいのになんて不謹慎な事を思っていたら
「いやはや、ご愁傷様でしたね。」
そう言って龍門寺さんが話しかけてきた。
「龍門寺さん、超常探偵って言ってたよね?
 超常ってどういうこと?」
疑問に思っていた事を聞いてみると
「文字通り、超常現象を用いて事件を解決する探偵ですよ。
 家が陰陽道の家系でしてね。」
まともに見えたけどこの人も普通じゃなかったよ・・・
「ちなみに、超常現象を用いてって事は普通の事件を・・・?」
「ええ、そうですよ。
 透視に念写、祈祷なんかを使って犯人を捜しています。」
完全に違う世界の方だったよ・・・
「あはは・・・」
苦笑と共にこっそり使用人さんたちの方へ行ってみる。
「ねえ、ちょっと話聞いていい?」
そう話しかけたのはメイド長の酉井さん。
年配だし多分当時もここにつかえていたんじゃないかなって思って聞いてみたら
「ええ、構いませんよ。
 あの日の事はまだ忘れられません。」
ビンゴ!
「じゃあさ、もしも殺人事件だったとしたらメイドさんと弥子さん、どっちが狙われていたと思う?」
「そりゃあ弥子様でしょうな。
 あの方は昔からプライドが高くて時折近隣の方と言い争いになっておりましたから。
 ただ、立派な方でしたよ。自分の芯があると言いますか。」
そう言って顔を伏せてしまった。
次は卯月さんだ。
「あの、ちょっとお話聞いてもいい?」
「ぇえっ!? あ、はい・・・」
話しかけたらすごい驚かれちゃった。
ちょっとショック。
「この家で火気厳禁の物とか、火だねになるような物って何か知らない?」
「そ、そうですね・・・火気厳禁・・・亡くなられた奥様の持っていた香水くらいでしょうか?
 火種はマッチやライターが調理場等にありますし。」
「そっか、ありがとね!」
なるほどなるほど、香水・・・っと。
それじゃあ最後は・・・
「ねえねえ璃子さん、香水ってつけてる?」
「いきなりですね。香水は嫌いなのでつけていませんよ?」
「そうなんだ、じゃあさ、事件があった時一番近くに居たのって亡くなったっていうメイドさんでしょ?そのメイドさんが自爆覚悟で弥子さんと璃子さんを道連れにしようとしたってことは考えられない?」
今はまだ、考えられる可能性をつぶしていく。
「それはあり得ないと思いますよ。
 戌井(いぬい)さん・・・ああ、亡くなったメイドです。彼女は私たちをかわいがってくれて、何でもできてちょっとした頼みも嫌な顔一つせずに聞いてくれる人でした。
 なんでそんなに尽くしてくれるのか不思議に思って訊いた事があったんですけど『私たちが人形みたいで可愛いからお世話するのも楽しいのよ。』って満面の笑みで答えてくれましたよ。
 そういえばあの日も花を持ってきて、それで・・・」
「そうですか、優秀なメイドさんだったんですね。」
メイドさんは無し・・・と
「そうだ、ついでに僕の部屋へ案内してもらえません?
 若い女性とお話する機会ってそうそうないんですよね。」
そう冗談交じりに言ってみたら、
「いいですよ。といってもあの突き当りのドアがそうですが。」
と言って一つの道を指さした。
普通にドアが目に入った。
スタスタと歩いていく彼女を追いかける。
段差は全てスロープになっていて、鏡のように磨き上げられていた。
そのせいで彼女がそのスロープを上る瞬間・・・
「・・・黒じゃなくて水玉かぁ。」
見えてしまった。⑤
そして、運悪くその言葉は彼女の耳に入ってしまい・・・
「この、無礼者!」
先ほどまでの物腰穏やかなお嬢様とは思えない言葉と共に真っ赤な紅葉が僕の頬に咲いた。③
僕は、自分のベッドに横たわってやけに大きな月を天窓から見ていた。
コンコン。
ドアがノックされ、何事かと思い見てみるとドアの隙間からカードが差し入れられていた。
『貴方の指紋は手袋からしっかり採取させてもらいました。
 璃子さんから当時の証拠品を一つお譲りいただき調べた結果、ちゃんと証拠の指紋も検出できましたー!
 なんで呼ばれた探偵であるあなたの指紋が出たのかはわかりませんが、バラされたくなかったら今夜1:00に玄関前でお会いしまショー!』
ふざけた調子のそのカードは、間違いなくあの科学探偵とやらが入れていったものだろう。
こんなカマを全員にかけるのか、もしも僕たちの中に居なかったら何の意味も無いだろうに。
なんて思いながら僕はそのカードを破り捨てて眠りについた。

…カチャリ。
ドアを開けて牛込が入ってくる。
「おやぁ、まさか本当にかかるとは。
 っていうか、まさか貴方だったなんて。」
キラリ。
何も言わず、彼の左胸を凶刃が貫いた。
ポタリ。
紅い血が床に零れ落ちる。
それを見た犯人は、牛込を移動させその場に水を撒いて必至に血痕を落としていった。

…チュンチュン
鳥の鳴き声で目覚める爽やかな朝・・・とはならなかった。
実際は
「うわああああああああああああ」
野郎の叫び声で目覚める朝。
嫌な予感がしながらも中央ホールへ向かうと、そこでは牛込さんが血を流して倒れていた。
確かに死なないかなとは思ったけど本当に死んじゃうなんて・・・
心臓を一突きで即死・・・かと思ったんだけど、よく見ると少しずれていて即死じゃあないみたい。
その証拠に彼の陰には血で“3”の文字が書かれている。
「ダイイングメッセージだね。
3って数字に心当たりある人います?」
誰も反応しない。
ふと違和感を感じて死体をよく見てみると、ここは中央ホール。
メッセージカードには「玄関前」と書かれていた事を思い出して、声をあげる。
「そういえば、皆さんの所にもこのカード来ていましたよね?」
そう言ってカードを出すとみんな少し驚いた顔でカードを取り出した。
そしてそのカードを見ると、皆少しずつ内容が違っていて決定的な点としては待ち合わせ場所が全員別々であったことだ。

主人の璃子さんは館外の北
執事の卯月さんは中央ホール
超常探偵の龍門寺さんは牛込さんの自室
メイド長の酉井さんは簡易キッチン
そして僕が玄関前

そして牛込さんが死んでいたのは中央ホール
「犯人はあなたですね、卯月さん。」⑫
そう言って龍門寺さんは卯月さんを指さした。
「ここに居るメンバーは、幸助さん以外全員名前に干支に纏わる漢字が入っています。
 主人の璃“子“さん、亡くなった”牛”込さん、執事の“卯“月さん、私こと”龍”門寺、メイドの“酉“井さん。
 順番に並べたときにダイイングメッセージであった“3”番目となるのは卯月さん、貴方です。
 メッセージカードの場所も貴方のカードに書かれている“中央ホール”。
 つまり・・・犯人は貴方しか考えられないんですよ!」
そう言って龍門寺さんは超常現象関係なく推理を披露する。
「卯月さんを捕まえるんだったら僕から彼に一つ訊きたいことがあるんだけどいいかな?」
そう言うと
「どうぞ、なんなりと。」
「じゃあ、卯月さん。
 貴方の年齢を教えてください。」
「ぇっと・・・今年で、20に、なります。」
そう、年齢。
「今年で20なのだとしたら当時は10歳未満のはず、彼は当時の鼠谷家には関係ない人物なんですよ!
 そうなると牛込さんのカードはハッタリにすらならない。つまり彼には牛込さんを殺す動機が無いんだ。」
そう言うと龍門寺さんも確かにとうなずくが、
「じゃあ誰が真犯人だか、教えていただけるんですよね?」
そう言われてしまい僕も犯人を捜す事になった。
僕達は一番最初に牛込さんの部屋へ入った。
そこにこの事件の鍵がそこにあるって僕は知ってた。
実際、彼の部屋には宝箱があった。
そう、科学捜査に必要な試料が入ったジュラルミンケースがね。
僕はその中から一本の試薬を取り出すと、牛込さんの死体の周りに振りかけた。
すると、真白だった床の一部が点々と蛍光塗料を塗ったように光り出す。
僕が降りかけたのはルミノール試薬。
血液と反応して発光することで血液の有無を調べる事ができる優れもの!
そして引きずられたような形の血液反応は、牛込さんがどこかから連れてこられた事を意味していた。
ただ、ホール全体に引きずったような跡がありどこからどう来たのかはわからなかった。
「これ、どこに繋がってるんでしょうか・・・?」
酉井さんがつぶやいたんだけど・・・
「ごめん、もう試薬が無くなっちゃった。」
うん、いろんな試薬はあったんだけど血液反応を調べる事が出来る試薬は少ししか無かったんだよね・・・
でも、この時点でほとんど卯月さんの無実は決まった。
後は真犯人をとらえるだけだ。
指紋も調べてみたんだけど綺麗に拭き取られてた。
まああんなメッセージで呼び出されたんだったら普通気を付けるよね。
謎は2つ、ダイイングメッセージと過去の爆発事件。
これも科学で解決することができればなぁ・・・
科学?
そっか、そういうことだったんだね。 [編集済]

こちらもまた記憶に新しいシリーズ(?)ですね。正統派の推理もので、うんうんと頭を悩ませながら謎に挑ませていただきました。
ベンゼン環のような館、そこで起きた不可解な事件、まさかの被害者とその死ぬ前の行動、そして3と書かれただけのダイイングメッセージ・・・ダイイングメッセージから推測される容疑者は明らかに動機がない上に不可解な状況・・・はてさて、樗木根幸助はこの謎を解き明かせるのか・・・?

No.101[OUTIS]08月24日 14:4108月30日 20:51

この館にいる全員に中央ホールに集まってもらう。
「ねえ、龍門寺さんって白い紙持ってない?」
「え?ああ、これでよろしければ差し上げますよ?」
そう言って少しざらついた紙をくれた。
必要な物はこれで集まったし、それじゃあ、謎解きと行こうか。
「いやー、皆さん集まってくれてありがとうございます。」
中央ホールのドアを全て開けていく。
「じゃあ早速だけども、この事件の犯人は・・・この中にいる!」
そう言って周りを見る。
・・・みんなしてそんな「何当たり前な事言ってるんだこいつ」みたいな目で見なくったっていいじゃない。
「まあ回りくどいのも嫌だから結論から言うと、犯人は貴女ですよね?酉井さん。」
そう言ってメイド長の酉井さんを指さす。
「根拠は・・・根拠はあるんですか?」
もちろん黙っていない酉井さん。
「どっちから話そうか、とりあえず今起きた事件についてかな。
 人を殺した時、犯人は大抵死体を隠そうとするんだよね。
だって証拠は少ない方がいいもの。
それにこの辺りには地盤がゆるいのかところどころすごい深い穴もあったしね。
それなのに犯人は死体をわざわざ中央ホールへ移動させた。
 こんな目立つ中途半端な場所に。
 考えられる理由は2つ。
 まず何かしらの理由でここに死体を持ってくる必要があった。
 でも今の事件ではここはほとんど関係ないから多分違う。
 もう一つは、此処までしか持ってくることが出来なかった。
 この館は中央に連れて少しずつ下がっていく。つまり、外側から中央へ持ってくるのは楽にできても中央から外に持ち出すのは少し力が必要になる。
 そうだとすると男である僕や龍門寺さん、卯月さんは考えにくい。
 次に鼠谷さんだけど、彼女の待ち合わせ場所は屋敷の“外”。
 わざわざ中へ入れるよりそのまま外の穴に入れた方が手っ取り早い。
 そう考えると待ち合わせ場所が入口と正反対の場所にある簡易キッチンの酉井さんが一番可能性が高くなるんだ。
 そうしてここまで運ばれてきた牛込さんは最後の力を振り絞ってダイイングメッセージを書き残したってわけ。」
「じゃ、じゃああのダイイングメッセージは!? あれはどう説明するの?」
酉井さんが反論してくるけど
「あれは簡単だよ。彼が科学探偵だった事を考えたらね。
 科学、特に化学の分野ではギリシャ語の数詞が使われているよね。
 有名なところだと防虫剤とかに使われているパラジクロロベンゼンの“ジ”。これはギリシャ語で“2”を表す数詞なんだ。それを踏まえて、牛込さんが書いた数字は“3”。
 3を表す数詞は“トリ”。
 つまり酉井さん、あなたを指していたんだよ。」
そう言うと、酉井さんは崩れ落ちた。
「それじゃあ、昔の事件についても説明しようか。
 というより、見てもらった方が早いかな?」
そう言って、部屋にあったティッシュの空き箱で高さを稼いで龍門寺さんからもらった紙をセットする。
やけに白く見えるその紙にインクを数滴たらす。
念のため水の入ったバケツを構えていると、インクが紙を黒く染めて、光が当たり白くなっている点から乾いていき、しばらくたつと煙が出始め・・・
ボウッ
と音を立てて大きな火を上げた。
天井を焦がすような大きな炎に驚いて反射的に僕はバケツの水をかけてしまった。
いや、空き箱に引火しそうになってたから良かったんだろうけどさ。
っていうか火を使うなら燃える物を近くに置くなって話なんだけど。
「ちょ、ちょっと!龍門寺さん!?
 さっきの紙何?」
「え?あれはフラs・・・陰陽用の特殊な護符に使う和紙ですよ?」
それ、危ない奴だよね、絶対・・・
「ま、まあ気を取り直して・・・
 こんな感じに、この屋敷自体が凶器だったんだ。
この建物は天窓が多くて部屋の入口前にもあるよね。
この窓はレンズ状になっていて、そこから入った光はドア前の鏡の坂で反射して6方向からこのホールの台の上に焦点が集まるように設計されてる。
多分昨日の夜はレンズの窓から月が大きく見えたんじゃないかな?
後はここに黒い可燃物を置けばこの通り、火だねになるんだ。
これが神子として聖なる炎を生む装置。小学校の理科で虫メガネ使って黒い紙燃やしたりしなかった?あれと同じだよ。
 普段は最後のパーツである燃える物が足りないようになっているんだけどね。⑥
 それを踏まえて当時起こった事を考えてみると。
 まず酉井さんは弥子さんと璃子さんに揮発性の高い香水をたくさん上げたんじゃないかな?
 そしてこの中央ホールで遊ばせていた。
 鼠谷さんが香水嫌いなのは多分この時の匂いがトラウマとして残ってるからだろうしね。
 何も知らない璃子さんと弥子さんが香水を沢山使ったせいでホールには気化した香水の溶液、つまりはアルコール類が充満していた。
 そこにメイド長である酉井さんが庭に生えていた黒いバラでも戌井さんを使って台の上に飾らせれば、黒いバラが燃えて火だねになりアルコールに引火、爆発するって寸法だよ。
 ただ誤算だったのは戌井さんも巻き込まれて亡くなっちゃった事かな?」
そう言うと酉井さんは力なく立ち上がった。
「いいえ、あれは誤算なんかじゃあありません。
 全て、計算通りでございました。
 昔、この家には後継ぎがおりませんでした。
 そんなある日、突然後継ぎとしてお二人が養子として引き取られてきました。
 旦那様の、隠し子だと誰もが口にせずともわかっておりました。
 特に弥子様は、養子だというのに我が物顔で屋敷を闊歩する図太い方でした。
 その上自分が正しく、常に優位であると信じて疑わない人で、いいえ、実際彼女に逆らうような者はほとんどおりませんでした。
 毎日のように使用人を値踏みしては『あなた、ここが汚れているわよ。』だの『うん、まあ綺麗ね。あなたはこの家の人間として合格よ。』④⓭なんて嗤うものですから、皆彼女を嫌っておりました。例外は戌井くらいでしょうね。
 あのような者に、この神聖なる神子の一族を継がせていいものか。
 私は彼女を浄化し、この家を清める事にしたのです。
 後は全て、探偵さんのおっしゃったとおりです。
 まさかあんな男のブラフに引っかかったのが原因でバレるとは、思いませんでしたけどね。」
そう言って老いた女は笑った。
その日、到着した警察に彼女は連れていかれた。

「そういえば、昨日の夜僕を探しに来てくれた人って誰だったんですか?」
ふと気になって聞いてみると
「え?誰も探しに行っていませんよ?」
と言われた。
あの火は、一体なんだったんだろうか。
(良かったですね、…子様。)
「ん?」
一人のメイドの霊が消えた事に気づいたのは、龍門寺だけだった。

・・・え?最後のは一体なんだって?
さあ?なんだろうね、僕にもわからないや。
さてさて、これで僕の話はオシマイだよ。
じゃあ次は、君の依頼(はなし)を聞かせてもらえるかな?
浮気調査?猫探し?
どっちかっていうと猫探しの方が得意なんだけどね。
貴方のお悩み、物によっては解決するよ。
樗木根探偵事務所へようこそ!

【簡易解説】
昔、火災が起きた場所へ一人の男(探偵)が訪れた。
彼は巧みな推理で(?)トリックを暴き再現しようとした。
しかし、思っていたよりも火が大きくなった為すぐにバケツの火で消化した。
その時に床も水浸しになった。
-了-
[編集済]

まずなるほどと思ったのは、どうして集められた探偵が特定の分野に精通しているのかという理由が、ダイイングメッセージにも込められていたことですね。そして、細かく出題篇で語られている伏線。それが解決篇で見事に回収されていくのは、前回の時も思いましたがやはり見ていて気持ちいいと思いました。
うーん、やっぱり、創りだすにおけるシリーズにならないかな・・・そしてあわよくば映像化しないかな・・・

No.102[ハシバミ]08月24日 15:3908月24日 22:57

『米の炊く間に』

白昼夢、宙に浮く夢を見る。 [良い質問]

No.103[ハシバミ]08月24日 15:4008月30日 20:51

 これは、私の夢の話です。
 将来の希望としての夢ではありません。眠るときに見る夢の話です。

 私は、ひどく暑い場所にいました。
 夢というものが大概そうであるように、私は私がそこにいる理由を疑うことはありませんでした。
 そこは、ずいぶんと古い時代であったのだと思います。昔々、神話の時代かもしれません。(⑪)
 ウサギが二足歩行をして言葉を話したり、隣人は化けたキツネだったりする、そんな時代の話です。(⑫、⑩)
 もしかすると、私もなにか人ではない動物であったかもしれません。
 その場所にはしばしば野分、台風が襲ってきました。
 私たちのすみかは家と呼ぶにはお粗末なものです。『3びきのこぶた』でいう藁の家のようなものでしょうか。
 野分に負けない頑丈な家を建てるより、簡単に作れるすみかをつど建て直すほうがよいという判断だったのでしょう。
 そのときに来た野分はことさら風が強く、すみかはすぐに飛ばされていってしまいました。
 私たちはあわてて洞穴に向かいました。風の強い中、歩くだけでも一苦労ですから、みなで手をつないで行くのです。(⑧)
 そうしてたどり着いた洞穴で風雨は防ぐことができましたから、私たちはのんびりと話をしながら過ごしました。
 野分と、暑いのと、どちらがましか、などという話もしました。
 すみかがなくなるのは困るが、こうして洞穴で語らうのも楽しい。
 誰かが言うと、それはそうだが、と洞穴の奥から声が聞こえました。
 私たちよりも早く避難していた、ハトでした。
 ハトはとことこと歩いてきて、もっとよい場所を知っている、と言いました。
 ハトには翼がありますから、遠くへ飛んだときに見たのだそうです。
 それは、海でした。
 広く青く満ち満ちた海、寄せては返す波、まばゆい陽射しを反射させる白い砂浜。
 暑さも忘れるような、とても美しい光景だ。
 ハトがうっとりと語るものですから、私たちもその姿を夢想しました。
 どのような風景なのか、そのときの私には想像するしかなかったのです。
 その世界において、私は海を見たことがありませんでしたから。
 そうして夢想し、語らっていると、いつのまにか野分は通り過ぎていました。(②)
 
 そこで私は目が覚めたのです。

 洞穴から出たかは定かではありません。語らっていた相手がだれであったのか、もう思い出せません。
 夢、ですから。
 私は真っ白な地面に立っていました。
 辺りにはなにもありませんでしたが、先ほどの夢と同じ場所だとわかりました。
 なんの特長もありません。熱もすっかりと引いて、過ごしやすい気候でした。
 それでも同じ場所だとわかりましたし、先と同じようにそこにいる理由を疑うことはありませんでした。
 ええ、そうです。そのときは自覚はありませんでしたが、それも夢だったからです。
 私がなんのためにそこにいて、なにをしようとしていたのかは今となってはわかりません。
 ふと、上からしずくが落ちてきました。
 雨だろうか、と見上げて、私は驚きました。
 そこには、人がいたのです。
 五人ほどでしょうか、浮いている、いえ、吊られていたのでしょう。
 辺りにはなにもない場所です。一体なにに吊られていたのか、そのときの私は疑問に思うことはありませんでした。
 三階建ての建物と同じくらいの高さでしょうか、どのような人かは判別できませんでしたが……そうですね、女性もいたかと思います。
 え? ああ、なるほど、いえ、そのときはそんなことは気にしていませんでしたから、わかりかねますね。(⑤)
 そうしてぼんやりと見上げていて、少ししてからでしょうか、一人の男が落ちてきたのです。
 私の目の前に、ぐしゃりと落ちました。
 顔は向こうを向いていましたが、手足の見えるところはあちこちが赤く腫れ上がっていました。(③)
 なにより、右腕は肘から先がありませんでした。(⑥)
 無意識に、一歩後ずさりました。
 よく見れば、肩がわずかに上下していました。
 まだ生きている。声をかけようと引いた足をまた前に踏み出しました。

 そこで私は目が覚めたのです。

 頭がいくらもぼんやりとしていました。
 私は、それまでと違って自分が何者で、どこにいるのか、わかりませんでした。(⑦)
 視界もずいぶんぼやけていて、白いことしかわかりません。
 ハトの語った海を思い出しました。しかし今思えば真っ白な地面は砂浜ではなく、砂利の感触でした。
 そう、先ほどいた場所と同じような。
 そこではたと気が付きました。
 ああ、先ほど落ちてきた男は、私なのだと。
 身体を起こそうとしても、動きません。
 痛みはありませんでした。夢だからなのか、もう感覚がなくなっていたからなのか、それはわかりません。
 左腕はわずかに動きましたが、自分の身体からあふれる血を地面に広げることにしかなりませんでした。
 そのうちに左腕も動かなくなります。指一本、まぶたも、あたまも、どんどんと……。

 そこで私は目が覚めたのです。

 私は夢の中で夢を見ていたのです。夢の中で見る夢の中で、夢を見る。
 作中作のように入り組んで、なにが現実かわからなくなってくる。(⑨)
  嬉しやと 再びさめて 一眠り 浮世の夢は 暁の空
 ご存知でしょうか。あるいは、こちらでもいいでしょう。
  露と落ち 露と消えにし 我が身かな 浪速のことは 夢のまた夢
 徳川家康と豊臣秀吉の辞世の句です。(④)
 死に際して、人は夢を見るのです。
 現実という夢を。夢という現実を。
 長々と、お時間を取らせてしまいました。申し訳ございません。
 なんの意味のある話なのかと思っていらっしゃることでしょう。
 ですが、もう少しだけお付き合いください。
 この話は、この一文がなければ終わらないのです。(①)

 そこで私は目が覚めたのです。

【終】

夢の中で、夢を見る。語る口調はまるでまどろみに誘うようで、だんだん催眠術にかかっているんじゃないかと思うほどのふわふわした感覚に陥りました。
不気味なのですが、それをあまり感じないというのでしょうか、むしろもっと聞かせてください! もっと! と言いたくなるような中毒性があります。・・・ちなみに、本当に続かないんですか?|ω・)チラッ
そこで私は目が覚めたのです。読んでいるときずっとその言葉を待っていた、そんな自分がいました。

No.104[ニックネーム]08月24日 19:3108月24日 23:03

捨てることは [編集済]

そこには、あなたの何かが眠ってる。 [良い質問]

No.105[ニックネーム]08月24日 19:3208月30日 20:51

髄が溶け落ちた空洞を羽虫が這う⑬

羽を持っていても、飛ぼうとしなければ無意味だ

ただ、足と地面とに挟まれて、

呆気なく、しかし妙に惨たらしく、

擦り潰れた中身を晒すだけだ

…彼は、何を求めてここへ来たのか

…我は、何を求めてここへ来たのか

――――――――
かつて、Terrific Obedient Safe Hemisphere(直訳:驚異的で従順で安全な半球)と呼ばれた巨大生物がいた。その生物は、我々人類にとって益となる存在であった。
人類文明の発展に廃棄が不可欠であることは周知の事実であるが、その生物は人類に不要となったあらゆるモノを消費することができたからだ。

生物は半径300[m]ほどの半球体(正確には完全な球体ではなく縦につぶれている)で、推定重量は1億[t]。その重量所以に自力での移動はほぼ不可能だが、体表に付着した物質を消化吸収して生命活動を行うことが可能である。ただし、ほとんど排泄しない。
この排泄しないという点が、完璧なゴミ処理役としての有用性を生んでいた。その原理は不明な点も多いが、ウサギなどに見られる食糞と同様のものだと考えられている。⑫
――――――――
僕は今、半球の中を歩いている。外表部を掘り進めた後、体内に傘の骨のように広がっている脊椎(腔)を辿り、脳を目指している。
典型的なモヤシの僕にとってはこの山を登るのも一苦労だが、人類の危機にそんな泣き言の暇はない。
急に活動を止めてしまった人類進化の要は、何としても復活させなくてはならないのだ。
あ、父さんの口調がうつってしまった。
――――――――
僕はこの仕事に駆り出される前、一人の女性を殺した。別れ話からもつれたつまらない理由で、殺してしまった。当然僕は捕まって、刑務所に入った。
だけどそれから数ヶ月して、僕は刑務所を出ることになった。ある重要なプロジェクトで役割を与えられて。それも成功すれば、晴れて自由の身になれるらしい。
何故僕が選ばれたのかというと、僕の父親がそのプロジェクトに関する最重要研究チームの主任だったからだ。父さんは確か古代の文献や神話を調べたりする人だったと思うけど、詳しくは知らない。⑨⑪
何にせよ、この仕事は成功させないと。
――――――――
僕がひたすら歩いていると、無線機から父さんの声が聞こえた。
「お前は現在200m地点にいる。異変はあるか」
「特に何もない」
「我々の計画は成功させなければならない。引き続き進行せよ」
「了解」
――――――――
足元がいくらか安定してきて、やっと気張るのを止められたとき、僕は何の気なしに、周りの白い壁を見た。何となく懐かしさを感じるような…何だろう。僕は壁に奇妙な親近感を覚えながら、歩き続けた。
するとまた、父さんの声が聞こえてきた。
「何をしている。予定の降下地点を過ぎているぞ」②
「え?…あっ、ごめん。余所見してた」
「いいか、確実に中心部にその薬剤を届けなければならないんだぞ」
「はい、はい。もちろん分かってますよ」
――――――――
僕はロープを使って、干からびた脳の上に降り立った。脳は、変な表現だけど白骨化したみたいに、固くて白いものだった。でも、まだ微かに生きているのか、よく分からない液体が上から降ってくる。何なんだろう?
ちょうど父さんが説明してくれた。
「お前に持たせた薬剤は、半球の脳を活性化させるためのものだ。今現在、分泌量が著しく低下しているため、水滴程度しか流れてきていない」
「ああ、これが言われてた原液か。この薬剤と色が違うけど、大丈夫?」
「大丈夫だ。予定通り実行しろ」
僕は言われていた通り、辺りに薬液をぶちまけた。びちゃびちゃな様子にちょっと不安になりながらも、少しの間待ってみた。すると、さっきまで平らだった脳が、所々たんこぶみたいに膨らみ始めた。③どんどんどんどん大きくなっていって…。
――――――――
僕は、包み込まれながら、思った。

僕が昔捨てたキツネの人形も、きっとこいつに吸収されてる。⑩
ピースをなくしたジグソーパズルも、初めて買った自転車も、ラッキースケベばっかりの少年漫画も、高校の時の赤点テスト用紙も。⑥⑤
…彼女と撮った、手を繋いだ写真も。⑧
……彼女にプレゼントした、アメジストも。④
………その彼女の、遺体も。

僕は不意に、彼女の笑顔を思い出した。
要らなくなったら、と軽い気持ちで離してしまった、
彼女という存在を。

僕は、誰かが言ったある言葉を思い出した。

「捨てることは、
忘れることだ」①

僕らが本当に捨てていたのは、記憶だったのかもしれない。
こいつがいなかったら、捨てられなかったもの。
こいつがいたから、捨ててしまえたもの。

僕はここに、忘れたものを取り戻しに来たのかもしれない。


最後に、ずっと前にここにやって来た人の声が、聞こえた気がした。
その人は、思い出せたのだろうか。

【完】

※⑬はツイッターで行った企画ですので、お気になさらずお願いいたします。 [編集済]

「忘れる」という、一種の記憶を喪失する行為。記憶と言うのは自分の「持ち物」でもあり、それの喪失は持ち物を捨てることにも通じているっていうのがもう、すごい解釈だなっておもいます。(脳みそ退行)
もしその半球に会ったら、自分はどんなものを「思い出す」のかなあ、とそんなことを考えていました。きっと、とうに手放してしまった大事なことかもしれないし、他愛ないけれど好きだったものかもしれない。心がじんわり温かいものに包まれたような気がしました。

No.106[ニックネーム]08月24日 21:0408月24日 23:09

夢の中で眠りたい [編集済]

そこにあるのは、幸せなのだ。 [良い質問]

No.107[ニックネーム]08月24日 21:0508月30日 20:51

「タイ米をはたく」⑬

この子は凜子ちゃん。

「土曜日が過ぎ去ったでい。」⑬

この子は鈴華ちゃん。

私の大親友だ。
二人の冗談は面白くて、皆は爆笑の渦に包まれた。
😃
…目が覚めて、体を起こし、大きく背伸びをした。楽しい夢を見た朝、体が軽い。
私はよく夢を見る。夢にはたくさんの人が登場する。家族や友人、私が今まで関わってきた人がほとんど登場する。
始まりは小さい頃、眠る前に聞いた昔話を夢の中で体験したのだと思う。⑨⑪
頭に葉っぱをのせて、かけっこだってした。
そう、何も人に限った話じゃない。
キツネだってタヌキだってウサギだってカメだって、何だって登場させられる。⑩⑫
まさに夢のような、楽しい場所。
皆が笑ってる、まさにスマイリー共和国。④
私には居場所が一つあった。
😊
ある時、私が着替えている所に幼馴染みの英麟という男の子が入ってきた。⑤英麟は「ごめん!」って叫んですぐに出ていった。漫画みたいな展開、赤くなった顔が脳裏に焼き付いて、離れなかった。多分英麟も…。
😳
実は私は、英麟のことが好きだった。夢の中でなら告白して、もう付き合っている。だけど、あの事件以来、英麟の顔をまともに見られなくなってしまった。ああ、どうしよう。
😳😳
英麟も、私のことを意識し始めたみたいだった。今まではただの幼馴染みだったけど、一人の女の子として見てくれるようになったと思う。…嬉しい。
😉
私と英麟は、付き合うことになった。手を繋いで帰ったら、英麟は他の女子にも人気だったから、羨ましがられた。⑧…私はその時、気づいていなかった。
😔
トイレから出ようとしたとき、友達の声が聞こえてきた。…私のことを悪く言っている。扉を開けかけていたから、私は心臓が飛び出しそうなほど緊張した。気づかれませんように、と思っていると、いつの間にかその子たちは扉の前を通りすぎていた。②
😵
私の夢の中から、その子たちは消えた。
私は、夢の中でなら忘れることができた。⑦
でも、それで終わりじゃなかった。
😖
あれからどんどんどんどん、人が減った。
起きているときの頭ではちょっとしたことだって分かってても、夢の中からは消えてしまった。
楽しい夢とは、言えなくなったかもしれない。⑥
😞
英麟が浮気してるって聞いた日の夜、英麟も消えていた。
私は夢の中で大泣きした。泣きすぎて、私の目は赤く腫れた。③夢の中だけど、それはまぎれもなく私の心だった。
😢😢
英麟とは別れてしまった。
😢😢
凜子ちゃんと鈴華ちゃんが私の悪い噂を言いふらしてるって聞いた日の夜、二人も消えた。涙はもう出なかった。
😢😢😢
友達は、夢の中からいなくなった。私の居場所はもう、一つもなかった。
😢😢😢
「僕がいるよ」

彼が私に言ったのは、たった一言だったけど、今までにもらったどんな言葉よりも深く、今までにみたどんな夢よりも深く、私の胸に響いた。①
😌
夢の中に現れた男の子。
私を助けに来てくれた男の子。
私はもう一度、泣くことができた。
夢の世界は海の中みたいになった。
彼は、流れにのって亀みたいにゆったり泳いで、
私も、海の底でその様子を見つめている。

私にも、居場所が一つ。
たった一つ。
確かな一つ。
本物が一つ。

【完】

※⑬はツイッターで行った企画ですので、お気になさらずお願いいたします。

これもなんだかすごく好きで。幸せだったこと、大事だった人、それがほんの些細なことで傷ついて、それが自分の幸せな世界(=夢)から消えていくっていうのが、もう胸を締め付けられているようで、心に刺さりました。
だからこそ、「僕がいるよ」たったそれだけで救われたような気分になり、シンプルな言葉でも涙が出てしまいまして。きっとそういうのが、ニックさん、上手なんだなあ。こういうのをいっぱいつくれるんだもんなあ。すごいよ、ニックさん。

No.108[夜船]08月24日 23:1508月24日 23:21

私にとってはすべての要素が最難関だ【作:夜船】

いつから最難関要素があのリストのみだと錯覚していた? [良い質問]

No.109[夜船]08月24日 23:1608月30日 20:51

かつてはそこにいるだけでも汗ばむほどの熱を帯びていた場所。
今となっては熱が失われ誰も近づかないその場所を、一人の男が訪れた。
そこに広がる真っ白な地面にしずくが落ちたのを見た男は、
冷たくなった手で真っ白な地面を水浸しにした。





「LINEやってる?」
「やってません」
とそこら辺にいたかわいい女性に声を掛けたらそつなく断られた。しょんぼり。
自分で言うことではないが多少はイケメンだと自負している。
実際彼女も少し前まではいた。
だが、自分の不幸体質と相まって、別れてしまった。

だって仕方ないじゃん。
着替えに遭遇してビンタされたし
(ラッキースケベって実際にあるんだな。)
カレーの中に入ってる人参に異常なまでの拒否反応を示しちゃって、食べられなくって喧嘩しちゃったりとか。
観覧車と遊覧船を聞き間違えてみっともない姿を見せちまったりとか。
(俺は高所恐怖症なんだ)

おっと話がそれた。この話はよそう。少しトラウマなんだ。

俺の名前は姫野純一郎。売れないリアクション芸人だ。
...自分で言っていると悲しくなってくるな。

それは笑いのない仕事がおわった日の帰りだった。
リアクション芸人とは笑われることによって笑いを生み出す仕事のはずなんだが。
それなのに笑いもなく、笑われもせず、そんな自分がリアクション芸人を続けていくことは無理なのだろうか。少しずつ諦めを感じつつある。仕事がないので生活費も全然足りない。
月の終わりにはほぼ無一文だ。最近は専ら最寄りのローソンでバイトをし、どうにか食いつないでいる。しかし、芸人の道一筋で食いつないできた私は、レジ打ちも遅く、袋詰めも下手くそで、持ち前の陽気さで、綱渡りのようなギリギリの状態で雇ってもらっているようになっていた。


そんなわけで独り身の俺は欲に飢えていた。まあそつなく断られたわけだが。
得られたものもなく、不満交じりにそこらのベンチに座ってなんとなく携帯のニュースアプリを開いた。そこには令和初めの恐ろしい事件と銘打って凄惨な事件が書かれていた。

ざっくりと内容を悦明すると、とある村で結束バンドを組み上げ、腕と足を上下さかさまの逆立ち状態にし、そのまま上下に引き裂くという殺され方をされた死体が見つかったらしい。

あまりにもひどい殺され方であったため、写真などは流石に残っていなかったが、それでも読んでいて胸が苦しかったので、ページを移動し別のサイトを見始めようとした。

「30歳妻子持ちの男性が14歳の少女を名乗ってネットを利 

ブツン

そこまで見たところで携帯の充電が切れた。舌打ちとともに携帯をしまう。
この携帯も長いこと使っているから使える時間が短くなってきているが、これほどまでに充電が切れるのが早かったのは初めてだった。
それもあってか先ほどの事件が妙に心に残った。
もちろん某30歳の男性ではない。
結束バンド殺人事件のほうだ。

途中で見ることをやめたのに
詳しいことなどろくに書いていなかったのに

与えられた情報よりも過剰な情報が、1+1が3にも4にもなるような、
何も知らないはずの自分に不自然に当てはまっていくような違和感が自分に襲い掛かってきた。
~~~~~~~~~~~~
芝内里美の朝は早い。
毎日施設の全員分の食事を用意しながら、子供たちの世話をする。
この仕事は確かに大変だ。しかしやりがいもある。

そして何より子供たちの天使のような寝顔が一番元気をくれる。
昔、親が見つかってここを離れていった子たちは元気にしているだろうか?

そんなことを考えながら、孤児院「スマイリー共和国」の園長兼食堂のおばちゃんの
芝内里美はデザートのリンゴのカスタードクリームを仕込むのであった。
(元気かな、このカスタードクリームが大好きだったジュン君)

そうやってぼんやり考えていると、後ろからぼっと小さな爆発音が聞こえた。
「やれやれ...相変わらずどんくさいねえ誠ちゃんは」
頭に手を当てながら振り向くと、
「転んですすけた、髪の毛が少し焦げた少女が尻餅を付いていた。」
「地の分を読むんじゃないよ。第一あんた少女って年じゃないでしょ」
「ばれたか。じゃあ美女ってことで」
「図々しいねえ...」

そうやって軽口をたたく彼女は
武智誠 生粋の料理下手だ。
まあ、ただどんくさいだけかもしれないが。

砂糖と塩を間違えることなんて日常茶飯事。
料理中に延長コードに引っかかって転んだり、(本来コードはないはずなのだが彼女が料理をするとなぜか調理器具のコードが絡まる。)
パフェにちくわを入れたりする。(ちくわパフェだからCKPだね!などといっていた。)
料理中の彼女はとにかく人の話を聞かない。
という性質も相まって彼女の料理スキルはひどいものだった。

そんなひどい料理スキルの彼女がなぜ食堂にいるのかというと...

数年前
「おばちゃん料理教えて!」
(露骨にいやそうな顔をする)
「まさかの無言拒否!!」
「冗談だよ。まさかあんたが料理を教わろうだなんてねえ」
「ワタシだって女子なんだから料理ぐらいしたいなーって」
「周りに何か言われたのかい?」
(目をそらす)「料理下手をからかわれて...それが嫌がらせレベルに発展してて。」
「それで?」
「お料理バトルすることになった」
「はぁ?どうしてそうなったんだか。まあいいよ。かわいい私の娘なんだからね」
「ありがと!おばちゃん!」

そんな会話があったのだった。その後、料理バトルには大敗したが。修業はまだまだ続いている。
実は

やっぱりこの子に料理を教えるのは無理なんじゃないかねえ

と密かに釣り仲間に愚痴っているのは内緒である。
~~~~~~~~~~~~
姫野が凄惨な事件をニュースで知った翌日
ポストに謎の手紙が入っていた。

「ist hisa mrkanical penclj?」

濃い顔も相まって普段外国人に知らない言語で話しかけられることもあり、
英語はある程度慣れてはいるのだが、その一文は少し異なっていた。
おそらくは「これはペンですか?」(シャーペン)の文章の

is this a mecanical pencil

だとは思うのだが、cがkになっていたり、tやaが前にあったり、eが無くなってrがあったり、iがjになってlの下にあったり。
少なくとも英語ではないことぐらいしかわからなかった。

何語なのだろう?そう思いながら裏面を見ると、
見たことのない村のお祭りのお誘いがあった。
はっきり言って意味が分からない。
裏表で関係性が全くなく、つながりすらもなかった。

ただ興味をひかせるためだけに書かれたかのような文章で。
面倒な要素をまとめて回収するためだけに書かれた文章のようで。

それは奇妙さだけがただひたすらに残っていた。
それに気を取られてあの事件の現場だということに気づいていなかったのだが。


その村に興味を抱いてしまったのが運の尽き。
凄惨な事件はあくまで始まりに過ぎなかった。

姫野がその村に赴いたその時から事件は本格化していく

ちょっとグロいよ?
~~~~~~~~~~~~~~~~
鼻歌交じりに彼は人々を殺していく。
歌っていたのは あの鐘を鳴らすのはあなた
その歌詞は不確かなもので。言語としても成り立っていなかった。
しかしそのメロディーは明確に音を刻んでいく。
その音色は楽し気で、それでいて怒気を含んでいるようで
子供の遊びのように彼は嬉々として蹂躙していく。

ある死体は家族のだんらんになぞらえて
その死体には食事を行うための腕から先はなかった。
テーブルには臓物の汁物、コロッケのように並べられたたわし
なぜかそれだけは存在していたたらこなど。
而してその食事を食べるための舌はなく。
代わりにその人の眼球が口腔には詰め込まれていた。

ある死体は桜の木の下に埋められていた。
左手と左足だけが地面から露出するように埋められていたもの。
両足が地面に刺さっているような姿のもの。

ある死体はスライム状の粘性の物質を口に詰め込まれて溺死していた。
青い、青いそれは某ゲームのスライムのようで。

ある死体は時計の文字に刺し貫かれていた。
針ではなく文字に。角が多くなるようにわざわざ作られた文字盤に中心線を刺し貫かれたものがいた。
11:11の最も尖った形で。それなら時針でよいのではというのは何か考えがあってのことだろうか

ある死体は上を向いて歩くように並べられていた。
集団で同じところを向くように。それは太陽のほうを向くひまわりのように。
死体は太陽の熱には弱く、太陽にはかなわないというところを除けば。

ある死体はかたや凍死していた。8月も夏真っ盛り。そんな中その死体の周りは
雪が積もっていた。真夏日に雪が積もるような冷気を。

ある死体はあるホラー映画になぞらえて。死体というには部分的すぎるのだが。
画面から延びるかのように穴の開けられた画面に並べられる多数の腕。
わずかの写る画面には無数の「あ」の文字が映っていた。

無数の死体を前に彼は高らかに歌い上げる。
その胸には紫の宝石のはまったヤモリのネックレスが光っていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~
現在住んでいる街から電車で3時間と1時間に一本のバスで2時間、
ようやくたどり着いたその町はかなり遠かったにもかかわらず、その町はかなりの人が集まり、8月ももう終わりかけ、小さい秋の気配が見つかってくるころだというのに汗ばむほどの暑さが感じられた。
バスにはほとんど人がいなかったので、過疎が進んでいるような気がしていたが。

近くの村人に聞いたところ、遠くの人はあまり来ないが、
近くの村の人が集まって行う祭りが近日行われるらしい。
少しなまりの強い方言だが活舌よく話していたからかなぜだか自然と聞き取れた。

村の安宿を取り、祭りの準備の様子を見学がてら散歩をしていると、

「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

と叫びながら同世代ぐらいの女が走り寄ってきた。「
その女性はとても美しく、ついつい目が奪われてしまった。
」「何言ってんだこいつ」
「やっぱりばれたか。地の分読み得意なんだけどなあ。純君とおばちゃんにはいっつもばれる。」
(純...君...?この女、なぜ俺の名前を?)
「あれ?その顔もしかして私のこと忘れちゃった?まあ小さかったもんねえ
「でも私は覚えてるよ?姫野純一郎 私の親友。」
「改めて言おう。なに言ってんだお前?俺がこの村に来るのは初めてだし、お前に会うのも初めてだぞ?」
「むう、これほどなのか。純君カレーライスの人参食べられないだろ?」
その言葉を聞いて口の中から湧き出てくるような吐き気を感じた。
そうして思い出す。合宿の日野外炊飯の思い出。
そのまま次々とこの村の思い出を思い出していった。
忘れたかった料理の思い出とともに思い出されていったのが癪だが、
料理のことを忘れるためにはこの村のことを忘れることが一番だったのだろう。
それほどまでに彼女の料理は酷かった。

「その吐きそうな顔は想いだしったっぽいね...悲しいことに。
思い出してくれたことはうれしいけど、ちょっとショックだなあ」
「流石にウサギ肉を現地調達するのはトラウマにもなるわ。いろんな意味で。文句も多かったし」
「あははー」
「笑い事じゃないけどな。誠は今何をやってんだ?」
「あ、名前呼んでくれた。やったぜ。」
「やかましい」
「おばちゃんとこで修行してるよ」
「何の?もしかして料理か?諦めろ?」
誠がドヤ顔するのを見てスパっと言い放った。
「え、ひどくない?おばちゃんの教えはうまいんだよ?私のスキルもかなり上達したんだから!」

「そういえば、おばちゃんと雄はどうしてんだ?」
「露骨に話そらしやがった...まあいいけど。おばちゃんは元気にしてるよ。」
「雄は音信不通だなあ。あそこに行ったっきり」
「やっぱりか。どうしてるんだろうな?」
「わかんない。」
「誠が分かんないなら仕方ないか。」

その後、たわいのない話をしばらくしてこの日は彼女と別れた。
ここで俺たち三人、いや正確にはあの時のメンツは4人か、の話をしよう。
~~~~~~~~~~~~~~~~
今日もこの孤児院「スマイリー協和国」は平和である。
三人の子供は並んで兄弟のように今もすやすやと寝ている。
その様子を眺めながら怪しげな風貌をまとった男は息を吸い込む。

「おきろーちびどもー!!!」

その声に三人は飛び起きて紫煙に飛びつく。
「「紫煙今日は何もってきたの?」」「狐の兄ちゃんだー」
「お前ら俺じゃなくてやっぱりお土産がメインか...って狐じゃあねえよ。まだそれ信じてるのか。まあいいけどな今日の土産はこれだ!」
そういって彼は紫色の宝石のはまったヤモリのネックレスを取り出す。
「これは何?」
これは俺がどっかの村で変な仮面付けてな?心理テストの問題を応用して占いをやったり、除霊のお札を売ったりしていた時の話だ。ある爺を占った時なんだがな?
財布を忘れたからって、これを渡してきたんだよ。まあきれいだしお前らに渡せばいいかな~って。爺曰く「昔遺跡探索をしていた時に発掘したものの価値がなかったから何となく持ってた」だそうだ。
子供たちはとてもうれしそうにその話を聞いていた。
それでお前らの誰かにこれあげたいんだが、誰かいるか?
と紫煙が聞くと、
「「ほしい!!」」と。
「まこっちゃんはいいのか?」
「いいよ。わたしこれあんますきくない。」
「そうかーまあこれは男の子のほうが好きなデザインだもんな」
まことの頭をぐしゃぐしゃしながら二人に続ける。
「はい!じゃーんケーン」
「「ぽん」」
ゆう:グー
じゅん:パー
「やったーーーーー」
「負けたーーーーー」
「じゃあじゅんにこれ渡すな。」
「ありがと。紫煙。大切にするね」
「じゃあゆうにはスライムな」
「なんでや!」
「ゆう、よく考えろ?スライムは某げーーむのざこみたいにすごく弱いものに見えるかもしれない。しかしな?スライムって結構強いんだぞ?最強といっても過言ではない。」
「マジで!?」
「ああそうだ。スライムはな...」

そう言って長々とスライムの魅力を語りだす。
その中には虚偽も多く含まれていた。
それでも三人はその話を楽しげに聞いていた。
紫煙はとても嬉しそうに語っていた。
その喋りには少しの照れ隠しも含まれていた。かも。
「じゃあ次は戦闘機に乗っていた時にスクランブル発信して、虹色に光るUFOとドローンの戦闘を目撃した話をしようか?それともフィットネスジムで知り合った自立人形を爆発させないように旅をした話でもしようか?」
~~~~~~~~~~~~~~~~
誠と別れ、街をぶらぶらしていると、城が見えてきた。
城といっても和風のそれではなく、洋風の監獄のそれのような城である。

「この城も懐かしいなー。」「
中を探検しようとしてよくたちのじいちゃんに怒られたっけ。




」あれ?
なんでこの城の記憶が薄いんだろ?
そう想いながらも城の生け垣の周りを
のんびり歩いていると生臭いにおいが漂ってきた。
その匂いはだんだん強くなっていき、出所が分かろうかという頃に気を失ってしまった。
体の力が抜けていくように。すべてを喪失していくように。
その直前どこか懐かしいような人を目撃した気がした。
その人物の右の眼窩にはただただ暗闇が広がっていたような気がした。
~~~~~~~~~~~~~~~~
今日も地獄の門が開く。ただの防火扉だが。
ここに幽閉されたのは何年前だっただろうか。
最初からここに来るのは嫌だった。
前から胡散臭いと感じていたんだ。一家全員でイカれている。
しかし頼らざるを得なかった。頼らさせられてしまった。
生きるためには。生きる以上の苦しみを与えられるとしても。

食事はほぼないに等しい。
定期的に与えられはする。しかしたいていは腐食しているものであり、食べられたものではない。それでも食べるしかないのだが。
そんな食事も、しょっちゅう1時間ほど遅れる。

衛生環境は最悪だ。
冷水をかけられ、たらいに入れられ、皮膚を剥ぐように無理やり洗われる。寒さと痛みに耐えながらその時間を過ごす。もちろん常に風邪気味のような状態だ。
排泄場所なんてない、部屋の片隅に設けたスペースに無理くり排泄するようにした。
もちろん虫が湧く。今日も痒さに肌をかきむしった。

勉学はそんな悪辣な環境で無理やり仕込まれた。
彼らはこの環境が悪辣なものだと思っていない。
それ故に彼らはあくまでそれが普通であるように勉学を強要する。
絶対に間に合わない期限の下、理不尽な課題を押し付ける。
例えば円周率の暗記。それも1000を超える桁数の。
例えば和歌の暗記。この世のすべての和歌といえるほどを。
彼らはそれを平気で行ってきた。しかし私は彼らではない。

これができないと罰が与えられる。指の爪などとうにない。
ぎりぎり小指の爪が割れて残っている程度か。
史の爺がわざわざ自分から俺を殴りに来る。杖が折れても
手が腫れても。歯が抜けても。右目の視力が無くなっても。
何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。何度も。

その様子を見ながら彼らは食事していた。
実況見分を交えながら。
罰を受けるさまを批評するように。

殴打が納められるのは爺が突然飽きる時まで。
何もかもが突然どうでもよくなったかのように止まるのだ。

明らかに彼らはおかしい。
私が何をしたというのだろう。
人間というのはなんなのだろう。
理不尽をただただ与えられる。
私は、果たして生きているのだろうか?
もう死んでしまっていてここは地獄なのかもしれない。

それでも私には約束があり、それを守るべく耐え続ける。
このネックレスがあれば、精神は耐えられる。
そうやって彼は長く耐え続けた。
このいかれた場所で。

ある時、防火扉の取っ手が壊れた。
そして光が差し込んできた。その光はあまりにも眩しく、彼にとっての救いのように感じられた。ぽろぽろと大粒の涙が地面に落ちた。
その時何かが吹っ切れた。
光を受けたヤモリのネックレスが不気味に光り輝いていた
~~~~~~~~~~~~~~~~
目が覚めると、ボロボロになった廃ホテルで縛られ転がされていた。
(どこだここ?)
そう思いながらゴロゴロと転がる。

「久しぶりだね。」

そう話しかけてきたのはあまりにも異常で、普通な男だった。
男の眼には眼帯がつけられていて、手には手袋がつけられていた。
その風貌はとてもやさしげで、どこにいてもおかしくない。
信じられないことにその印象は血にまみれたその時でも変わらずにもたらされていた。


なぜか自然に血にまみれた それ と会話を始める。

「久しぶりだな。雄二」
「昔みたいに、ゆうって呼んでよ」
「雄二は今何やってるんだ?」
「ゆうって呼んでよ」

嚙み合わない会話は続く。
しばらくその会話が続いたのち。
唐突に返答を待たず一方的に語りだす。

「じゅんはいっつもそう。僕よりも得をする。
「私ばかりが損をして
「あの時もそうだった。
「あの孤児院にいられる期限の大晦日の水曜日のあの日
「お前は県外の裕福な家、誠はかなりいい家に言ったっぽいなあ。
「俺はTFの爺のところに送られた。
「その時
「「お前にこのネックレスを預ける。」
「「おまえこれほしがってたし。」
「「ちゃんと取りに来るから返せよ?」
「「預けるだけだからな?」
「その約束がうれしかった。
「昔漫画で読んだ王道の青春活劇みたいで。
「その時の握手がうれしかった
「俺を助けてくれるのだと思った。
「俺はそれを信じて必死に耐えた。
「それに依存していた」

「それなのに」

「お前は来なかった
「いつまでも。いつまでも。
「俺は待っていたんだ。

「でもあの時気づいたんだ。あれに会って。こんな生活耐えなくていいって。
「人間はもろくて壊れやすいはずのもの。いてもいなくても変わらないもの。
「だから俺に与えられた苦痛は返したって何の問題もないんだって。
「だから殺した。壊した。潰した。食べた。剥がした。凍らせた。燃やした。裂いた。
「だって俺がこれだけの苦痛を受けていたのだから。
「返したっていいじゃん。そっくりそのまま。かつての俺の様子と瓜二つだ。
「だからね?



返すよ


君に


僕のすべてを



そうつぶやくとヤモリのネックレスを男に押し付けた。

「これはね?こう使うものだったんだ。彼が教えてくれたよ?」
「大好きだよ。純。さようなら。」

その言葉を最後に彼は姿を消した。

俺はまことに助けられた。道に迷って偶然たどり着いたらしい。
しばらくはあの光景がトラウマになっていた。
何の行為を行うときもあの死骸が目の前に現れるのだ。

彼女は私に献身的に付き合ってくれた。
どうしてか彼女の料理だけは食べられる。
そうしてある程度復活した私は、彼女とともに旅をすることにした。
小料理屋「スマイリー共和国」という店を開いて旅銭を稼ぎつつ雄二の情報を探している。
雄二の居所は全く得られてはいないが、諦める気はない。

お前に平和な暮らしをさせたいんだから。


葛嶋裕也(くずしまゆうや) ぽっとでの犯罪者
姫野純一郎(ひめのじゅんいちろう) 主人公
鈴峰雄二(すずみねゆうじ) ライバル
武智誠(たけちまこと) ヒロイン
紫煙 (しえん)謎の占い師
太地史 (たちふみひと) TF
柴内里美(しばうちさとみ) 食堂のおばちゃん

登場する人物は実在する人物とは一切の関係はなく、
この名称はランダム名称生成で作成されたことをここに記す。

(後半)いやーーーーーもうね、初心に返ることは勿論大事だなって思ってたんですよ。全ての要素と向き合う。そして自然に作品は生まれる。それが個人的に創りだすで大切にしていることだったんですが、ガチの全要素はマジでやばいって。むしろ本当によく作りましたね。(※誉めてる)
ところどころコミカルで、それでも異常なところは夜船さんの本気を垣間見て。サイコシーンなんかすっげー好きです。最高にぞっとします。
ちゃんと照らし合わせましたが、抜けがないのも含め、天晴。

No.110[ニックネーム]08月24日 23:1808月24日 23:28

命の価値、基準は単純 [編集済]

要はそれを、許せるか否か。 [良い質問]

No.111[ニックネーム]08月24日 23:1808月30日 20:51

「あなたは人殺しの羊を殺すのか?」⑬①
その言葉は彼女にまとわりついてぐるぐると回り、
そして、
「あなたに会えてよかった」
と彼女はさいごの嘘をつきました。⑬①
――――――――
彼女はカフィー。
彼はリー。
彼女と彼は幼馴染みで、彼女は彼に惹かれていました。彼も彼女に惹かれていました。
しかし、彼女らが一生を添い遂げることは、あり得ませんでした。
…彼はとてもいいやつでした。
……ただ一つの点を除けば。
――――――――
少し昔の話です。⑪
彼は山で育ちました。
「幼い頃から山で育った」というと「自然と友達」の子をイメージしますが、彼は動物を傷付けることを行いました。狐だったり、ウサギだったり、リスだったり、虫だったり。⑩⑫
彼女はそれを見逃しました。別に彼が怖かった訳ではなく、ただ単に、それを良しとしたからです。
彼女は虫に刺されて腫れたことがあります。③
リスに驚いて転んだことがあります。
ウサギの巣穴に足を引っかけたことがあります。
キツネに吠えられたことがあります。
彼は、命に価値をつけました。
自分たちにとって良いものか、それとも悪いものか。
――――――――
あるとき、彼女たちの後ろから少年が走ってきました。追い越していくとき、少年は彼女のスカートをめくり上げ、笑いながら去っていきました。⑤溜め息を吐いた彼女の横を通りすぎて、彼は走り出しました。②彼は少年に追い付き、裏路地に引っ張り込み、メチャメチャに殴りつけました。戻ってきた彼は、少し血の付いた手をハンカチで拭うと、彼女と手を繋ぎました。⑧

「大丈夫。行こう」
――――――――
彼女たちがシタン・ハイスクールの生徒だったときのこと。
「ひい

ふう

みい

よう

いつ

一文足りないなあ。⑬これでは、課題はやり直しだ」
老教師が彼女に嫌がらせを行ったとき、その教師が帰るところをつけ狙い、彼は棒でもってメチャメチャに叩きのめしました。次の日、彼は彼女ににこやかに話しかけました。

「今日は課題が出ないと思う」
――――――――
彼はその後も度々、衝動的に暴力をふるいました。そのことが明るみに出ることはほとんどありませんでしたが、彼の一番近くにいた彼女は、それを知っていました。彼女はそれに対して、嫌悪感を覚えていくようになりました。彼女自身は、彼の暴力にさらされることはありませんでしたし、時にはそれによって助かることもありましたが、結果として、彼女は彼から離れることを選択しました。
――――――――
彼は、人としてどこかがずれていました。それは彼が年老いてからも変わらず、いえむしろ、年老いてからこそ、人々との差異に悩むようになりました。彼女がどこかへ行ってしまい、それはますますエスカレートし、そして最後には、全てが知られることとなりました。
彼は懲役を言い渡されました。④
――――――――

「あなたは人殺しの羊を殺すのか?」

「あなたは…殺すべきだと思ったのなら、殺すのでしょう?」

「そう、殺すだろう。それが羊殺しの人だとしても。…あなたもそうだと思っていた。皆、そうだと思っていた。すまなかった」

「いえ、私こそ。もう一度あなたに会えてよかった」

――――――――
彼は更正しました。まるで記憶を失ったかのように、彼を構成していた彼の性格は、失われました。⑦⑥
――――――――
――――――――
――――――――
数年が経ち、ある日のこと。
長く空き家だった所に、彼は住み始めました。
しかしその家はボロボロで、天井の水道管から水が漏れるようなところでした。
…彼は水道管をメチャメチャに破壊し、辺りは水浸しになりました。
そのことを知った彼女は、彼に言いました。

「あなたがそうなってしまったのも、私のせいなのでしょうね」

彼はそれを聞いて、少し考えてから、答えました。

「あなたを悲しませること、それが一番許せない」

彼は近くにあった包丁で自分の腹を突き刺し、倒れました。

彼女は、彼の冷たい手をとり、さいごの嘘をつきました。

「あなたに会えてよかった」

彼は口を動かしましたが、声はもう、出ませんでした。

『あなたが喜ぶのなら、それが一番嬉しい』

【完】

※⑬はツイッターで行った企画ですので、お気になさらずお願いいたします。 [編集済]

彼女を傷つけるものを許さない。それは自分とて、例外ではない。それは彼女の幸せを望む行為だったけれど、当の彼女はそれを・・・そんなジレンマを感じますが、なんとなく自分の中にも引っかかるものがありまして。本当に、人の為に何かするっていうのは、自分のエゴでもあるんじゃないかな、そんな風に、思ってしまいました。
とりあえず、自分で難易度を上げておきながら、ちゃっかり最多投稿記録を更新したニックさんに、拍手を送らせていただきます。

No.112[ラピ丸]08月24日 23:4008月24日 23:51

【楔一つを打ち付けて】

自分もまた、出る杭に憧れた者のひとり。 [良い質問]

No.113[ラピ丸]08月24日 23:4108月30日 20:51

 十月。
 夏がまだ丸ごと残っているような暑さの中で、僕は懐かしの母校へと向かっている。
 一文芸術大学なんて厳つい名前の僕の郷里は、今年の三月に驚くほど呆気なく潰れた。①
 その校舎が来月取り壊されると聞いて、数年ぶりに行ってみようと言うわけだった。
 どうして来月まで壊されなかったのかは僕の知るところではないが、推察するにアトリエを半私物化してた諸先生供がようやく撤去完了したのだろう。
 あそこには、良い思い出がまるでない。

 三年前。
「凡人である事と大成することは矛盾しない」と教えてくれた先輩は、たぶん天才だった。
 彼はスペインの大きなコンクールで優勝した。
 圧倒的で、鮮烈なデビューを果たしたからか、今でも芸術関連誌で頻繁に顔を見る。
 そういえば、学生当時よく使っていたアトリエには、先輩が兎と狐をテーマに描いた絵が飾られていた。⑩⑫
 いまでもまだあるのだろうか。

 時が経つと言うのは恐ろしいもので、ふらりと歩いていれば辿り着けるだろうなんて楽観的な事を考えて進んでいた僕は、もうすっかり道に迷ってしまった。
 あれほど足繁く通っていた通学路が、まるでわからない。
 記憶喪失にでもなったのか、辺りの景色に見覚えがてんでなく、どちらの方向にあるかさえ不明瞭だった。⑦
 今時スマートフォンを開けば、きっと一発でこの問題も解決するだろうに。
 アナログ人間で通している僕はガラケーを愛用しており、さらに運の悪い事にそのガラケーさえもどこかの部品が欠けているようで現在使い物にならない。⑥
 さてどうしようかと思案を始めたところで、道の先に見覚えのある人影を見つけた。
 彼は件の大学の後輩の笹岡であった。
 笹岡とは当時住んでいた学生寮で部屋が隣だった事もあり、随分親しい仲だ。
 彼はつばの広いスポーツ帽を被って、スマホ片手に何やらキョロキョロしている。
 察するに奴もまた迷っているのだろう。
 走り寄って「おう、久しぶりだな」と肩を叩けば、笹岡は相変わらずの人懐っこい笑顔で「先輩じゃないですか、お久しぶりです!」と答えてみせた。
「お前も、大学を見に?」
「はい、もうすぐ取り壊されると聞いたので久しぶりにと」
「へえそうかい。ところで、僕はこの辺りの地理には大分詳しかったと思っているのだが、年のせいかさっきからどうも町がわからなくて仕方がねえんだ」
「ああ、ここいらは最近区画整理とかで街並みがすっかり変わってますからね。僕が案内しますよ」
 なるほど区画整理か。
 ならば覚えていないのも無理ない話だ。
 「じゃあ、よろしく頼むよ」と言ったら、笹岡が「迷わないように手を繋ぎますか?」と茶化してきた。⑧
 学生時代の懐かしいやりとりだなあとしみじみしつつ、笹岡の頭を小突いてやった。

 笹岡は、ハッキリ言って才能がなかった。
 いつも僕の後を付いてきては、やれラッキースケベがなんだ、やれ絵を描く人の絵を描く人の絵だなんて訳の分からないジョークを言ってきていた。⑤⑨
 「大胆な構図」と本人は言うが、僕に言わせれば三流もいいところで、先生をして「評価にEか無くて困る」と言わしめるほどだった。④❽
 いま、風の噂では絵を描くのをやめたと聞いた。
 諦めたのだろう。

 大学はなんともシケていた。
 かつてあんなにも暑苦しかったキャンパスにあった人の気配が、とうぜんながら無くなっている。
 まだ規制ロープが張っていなかったので、僕たちは中に入ることにした。
 アトリエを訪れると、荷物が運び出された後のようで当時よりもこざっぱりしていた。
「なあ、先輩……大坪さんの描いた兎と狐の絵、確かここにあったよな」
「え、ああ、あの絵ですか」
「もう運んぢまったのかね。偉大なる大画伯様の絵を、もういっぺんぐらい拝んどきゃあな。後々プレミアがつくかもだし」
「えー、でもあの絵、意外と普通じゃないですか」
 才能がないと才能を感じられないらしい。
 僕は笹岡が哀れで仕方なかった。

 隣の教室はまた随分と殺風景だった。
 床と四方を囲む壁が真っ白で、特大のキャンパスのようだった。
 笹岡もそう思ったのか「絵でも描いていきましょうか」といたずらっぽく囁いてきた。
 絵の具を用意する後ろ姿を見つめて、だんだんと高揚感というか、解放感が満ちていくのがわかった。
 画材は笹岡が持ち込んでいたらしい。
 水彩の絵の具を床に垂らして、

「そういえば、僕コンクールで賞とったんですよ、先輩」

 笹岡の呟きに心臓が張り手を食らわされた。
 ドクンドクンと激しく鼓動する。
 笹岡は諦めてなどいなかった。
 才能はないはずだった、のに……。
 笹岡は僕を、いつの間にか通り越していたのだ。②
 張り手を食らった心臓が腫れていく。③
 この傷を癒すためには、いや、これはもう呪いとして残っていくものなのだろう。
 僕も床に筆を滑らせた。
 筆を走らせることしかしてはいけないように感じた。
 言い訳を許さない心臓の腫れが、楔として残った。


完。

※⑪は、解説全体が昔話がないと成り立たないという事で……。

【簡易解説】
潰れる予定の懐かしの大学を訪れた男。
彼はもうすっかり画家になる熱が冷めていたが、才能のない後輩が描き続けて成功の切符をつかんだのを見て、自分もやらなければならないと絵を描いた。 [編集済]

自分の後ろを追いかけていたものは、まさにいつの間にか自分を通り過ぎ、追い越していた。生きていて必ずぶち当たる壁を題材にしているので、エモさを感じずにはいられませんでしたし、問題文に対する解説としても好きです。それに負けじと追いつこうとするのか、それとも・・・。主人公が、笹岡とまた肩を並べてほしいなと思います。
また、「Eがなくて困る」の解釈も目から鱗でした。同じ要素でも新鮮に読ませていただきました。

No.114[Hugo]08月24日 23:4408月28日 10:55

食べられる

紙束が零れていく。 [編集済] [良い質問]

No.115[Hugo]08月24日 23:4408月30日 20:51

パートA:カタライ(④)
 お金を湯水のように使うなんて比喩がある。もしその通りであるならば天水の要領で自然に戻ってきて欲しいものだ。未だ識字率の低いこの国で小説を読んだりできるのは幸せ者だが、現状では本を買うだけの財産がない。
 昼食を買いに出た帰りだった。喉が乾いている。カタライはオフィスの給湯室に入り、蛇口の水をコップに注いだ。財閥の建物は空調が効いていると聞くけれど、うちはそうも行かないらしい。貧すれば鈍するなどという言葉もあるが、どちらかと言えば鈍しているから貧するのではないか、と思っている。一方で、もとから貴族だった人間は鈍でいるのに富んでいるから不思議だ。
 カタライはコップの水を一息に飲み干した。ぬるかった。
「おいカタライ、部長が呼んでたぞ」
 驚いてコップを取り落とした。くすんだ灰の床はいかにも不衛生だった。慌てて拾い上げて左手で埃を払う。
「あ、あぁ......分かってるよ。すぐ行く......」
「なんだ、何かあったのか?」
「いや、何も」
 給湯室の周りにはほぼ誰もおらず、静かだった。だいたいいつもこんな感じで、他の人と鉢合わせることも滅多にない。誰かが来るときは、伝言とかの用事がある場合だ。オトナシは火のついてない煙草を咥えている。彼は上着のポケットをがさごそとまさぐった。
「悪い、火あるか?」
「ごめん、今は」
「そうか。まあいいや、コンロがある」
 部長のおつかいのついでに、オトナシは休んでいくつもりのようである。鼻歌をうたいながら上機嫌そうに煙草を吸い始めた。彼はカタライと同じ部署にいるが、仕事の最中でも度々姿を消していた。そして戻ってくるときは大抵紫煙を纏わせていた。カタライはその匂いが嫌いだ。
「それじゃあ行ってくるよ」
「おうよ。あ、ちなみに相当キテたぜ」
 うなずいて返したが、見えていたかは分からない。
 恐らくはオトナシのような喫煙者のせいで煤けてしまった部屋を抜け出すと、いくらかは明るいクリーム色がずっと続いていた。窓はない。蒸気がこもるから、かなり不快だ。カタライの部署はここの右手奥にある。歩いていくと、扉が閉まっているのが見えた。「資材管理部1」というプレートが上部に貼り付けてある。
 オトナシの忠告が気になる。部長はかんかんらしい。身に覚えはないが、あの部長のことだ。話は聞き入れて貰えないだろうな。だいたいいつも一方的に捲し立てられて、怒鳴られて、時には小突かれて、何か理不尽な命令をされる。それ以上に、他の部下にも当たり散らすからたちが悪い。そのあとでみんなから睨まれる。余計なことをしやがって、みたいな感じ?悪いの部長じゃん。全部含めて、かなり気が重い。
 そっと、カタライは扉に聞き耳を立ててみた。薄っぺらい扉の向こうからは、少なくとも人の声は窺えなかった。物音もあまり聴こえなかった。普段通りの業務をしているようだ。ひとまずは安心。いや俺がいないからかな。額にじっとりと滲んだ汗を拭い、ドアノブを捻った。
 向かって左側の大きなデスクに、セビョウシ部長が重々しく鎮座していた。だらしなく汗を垂らしながら、何か資料を読み耽っている。初老というには年を食っている彼は、再来年には退職するのだという。資本家の一族に産まれたので、特段働く必要も無かったらしい。カタライは何食わぬ顔でそこに近づいていった。
「部長、お呼びでしょうか」
 声が上ずらないようにと意識した結果、なんだか腑抜けた声が出た。ぶちょおぅ、おおびでしょおか。こんな感じだ。セビョウシは体勢を変えず、目だけをカタライに向けた。
「お前。お前は、クビだ。今度こそな」
 セビョウシが持っていた何かの報告書はしわしわになっていた。部屋の隅に置かれた振り子の時計が鐘を鳴らした。正午だ。カタライは混乱した。それと同時に落胆した。心当たりが無かったし、ならばいつものように責任を擦り付けられているのだろう。ため息は飲み込んで、取り敢えず聞き返す。
「何故でしょうか。何かあったのですか。失礼ながら、わたくしには思い当たりません」
「白々しい!午前に二番倉庫の点検をお前に持たせただろうが」
「はい」
 物品のリストをチェックし、あとは鍵をかけるだけの簡単なものだった。どちらも上司を含め複数の人間で立ち会って念入りな確認が行われていた。何か不備があったんだろうか。
「ふざけやがって。点検だ?してたなら、なぜ気づかなかった。なぜお前は、Eが丸々失くなっていたのを見逃せたのだ!」
 話を聞いても、状況を飲み込むのには時間を要した。

パートB:エンリョ(⑪)
「創素エネルギー活用、全国化」
 不愉快な見出しだ。新聞はどこもノドゴシを英雄と仰いでいる。産業革命に乗り遅れた「憐れな」カイスイヨク島。彼の実用化した創素をもとに急激な発展を遂げ、悪く言えば粗野な、しかし決して悪いものでなかった私たちの生活は、とっくのとうに昔話に成り下がった。わたしにとっては大切なものだった。
 引っ越したばかりの部屋が落ち着かなくて、エンリョはベッドの周りをぐるぐると歩き回った。本当は外に出ていきたかったけれど、それは夜の約束だ。今は我慢しなきゃいけない。あの人は頼んだことをしっかりやってくれるだろうか。忘れてなければいいけれど。
 クローゼットの中は色とりどりのドレスで埋め尽くされていた。すべてエンリョに着せるものだった。せっかくお金が入ったのだから社交界に顔を出さなくてはな、と言われていたが、そんなことに興味はなかった。
「今日は中央の会議に行ってくる。午後にマナー講師を呼んであるので、うちにいるように」
「......はい」
 玄関の扉が閉じる音を聴いて、全身の力が抜けてゆくのを感じた。朝食が足りなかったので、隠してあるパンを千切って口に運んだ。このとき青白く痩せ細った女性の像が脳裏に浮かんだ。エンリョはまたパンを千切った。このパンの小麦はどこからやってきたのだろう。北部のゾウスイには今も人がいるだろうか。
 街を見ろ。隅々まで見ろ。
 ダメだ、とエンリョは思った。予想よりも進行が速い。このままでは食い潰されてしまう。あの人、あの人。どうか上手くやって頂戴。大事なのは。そうだ、大事なのは書き留めること。そして、描かないことだ。わたしは知っている。
 ひと息ついた。グラス一杯の水をあおり、エンリョは取り敢えず着替えることにした。よその人に見られても恥ずかしくない格好にするのだ。夜にはまた部屋着に戻る。そして、あの人に会いに行かなければならない。
 しかし頭のなかに見えてきたのは、大嫌いなマナー講師の顔だった。ウミウミというらしい女だが、エンリョの見立てでは簡単な引き算すらできない馬鹿だ。頭頂から爪先までみっちりとめかしこんだ異様な出で立ちと、時代錯誤なキツい香水が第一印象を最悪なものにした。そして話を聞いていくうちに、中身も外見と同じだと分かった。一から十まで、自分のことばかり!あの女を見るだけで虫酸が走る。
 エンリョはムカついた胸に水を流し込んだ。よく冷えた水が都市で飲めるのも、半分くらいは創素のお陰だろう。つまりノドゴシのお陰だ。逃げ場がなかった。だがゾウスイの村であれば、冷たい湧水が好きなときに手に入れられた。わたしは手足をもがれ、人形の手足を与えられた。
 じきに玄関のベルが鳴る。

パートC:カタライ(①②⑥⑫)
 このシバイヌ株式は金属や木材などの加工を担う。そしてその需要の多くは活字にあった。近年のカイスイヨク島の産業がほとんど活版印刷、そして出版業に支えられて急激な進歩を遂げたからだ。政府に認可された出版社はその要請に従って業務を果たす。彼らのひいきの会社から活字の供給が滞れば、活版のためのパーツが足りなくなる。それは国家レベルの問題になるのだ。
 デスクに座っていたセビョウシが顔を真っ青にしていたのは、そういう事情だったろう。これはただの噂だが彼は退職後は政界に手を出すつもりだったようだ。今回の失態で大きく目論見が外れたに違いない。個人的には、ざまあみろ、だ。
「何笑ってるんすか......」
「何でもない」
 知れず口許がにやけていたらしい。ヘベレケが半眼で睨んでくる。
 彼女は今年入ってきたばかりの新人で、俺の一年後輩だ。とりあえず最初のうちは俺と組まされているが、要領がいいので教えることが無かった。楽でいい。
「これ、見つからなかったら本当に一大事ですからね......クビじゃ済まないかも知れませんよ」
「予定通りであれば次の納期は来月だしへーきへーき。いや平気じゃないけどね」
 今週中に見つけ出さなければクビだ、とほぼ一方的に言い渡された。あの倉庫の点検責任者は俺じゃないし、リストの正しさもちゃんと説明したのに。カタライは顔をしかめた。クビは嫌だなぁ。給料が出ないと、いろいろ払えなくなる。半年分の創素代が請求されるのも来月だった。
「鍵、出しとしてくださいね。保安が来る前にささっとやること済ませちゃいましょう」
「お前......」
 まあ、面倒事を手早く終わらせるのには賛成だった。ついでに見ておきたいものもあった。
 シバイヌ社業務部のオフィスの向かいに倉庫がある。正式には物品管理棟と呼ばれているこの倉庫は、通り沿いに三つ並んで建っていた。この通りを北東に進めば、財閥や出版社の建物がひしめく州都の中心部に繋がる。一方で逆側は南部のジンジャー山地方面に続いており、そこから大量の木材が搬入される。
 この会社が設立された頃は、地味な外観に気付かずに運搬の担当が倉庫を通りすぎてしまうことがあったらしい。そのため、真ん中の二番倉庫には大きな看板が掛けられた。「シバイヌ株式」という文字と、眼鏡をかけた兎のロゴ。社員からの評判は悪い。
「鍵は俺が持ってるしなぁ」
「じゃあ、チェック漏れがあったってことですね」
「まさか」
 鍵を差し込むと、どこからか重低音が響いた。この錆の目立つ扉は、思っているよりも簡単に開けることができる。扉に創素ケーブルが引かれており、正しい鍵を差し込んだときだけ創素が「扉を開ける」補助をする仕組みだ。平常時は逆に「扉を閉じる」力が働く。鍵を持たないものには、いかなる怪力でもっても倉庫に侵入することはできないはずだった。
「第一、なぜEだけ盗むんだ。活字を盗むんだったら一種類だけじゃ意味がないだろ」
「さあ。単なる嫌がらせかも知れませんよ。気になることは色々ありますし、見てから考えましょう」
 ヘベレケは右手に持っていたハンカチをしまった。倉庫には常に空調が効いている。社員よりも厳密に丁重に、活字を管理する必要があるのだ。そのための補助金も出ている。
 活字は横十列、縦二十五段のブロックに分けられて保管されている。Eの活字は二番倉庫の第四十ブロックあたりにあったはずだ。
「中途半端ですよね、場所」
 ヘベレケは首を捻った。ちょうどカタライも同じことを考えていたので、少しどきりとさせられた。カタライは続きを引き取った。
「とりあえず何でもいい、というのなら端の方を狙ったはずだよな」
「それに事態の発覚を恐れるなら、こんな盗み方はしないはずです。箱から中身だけ抜き取ることもできたのに、箱ごと消えています。はっきり言って、やり口が雑っすね」
「自動車で運ぶためかも。そのまま積めるし」
「だったら誰かが気づきますよ。創素消費が多いぶん、自動車はかなりうるさいじゃないですか」
 床、天井、壁と順繰り見ていったが、侵入できそうな間隙はなかった。傷つけられた跡もない。カタライは特に棚の下にある十五センチメートルほどの隙間を念入りに調べた。
「そんなところ見ても無駄じゃないっすか?」
 実際、侵入口を調べるのだとしたら意味のないことだった。棚は重くて動かせないし、そもそも人が入り込めるような空間ではないのだ。カタライの目当ては別にあった。
「やっぱり、リストの欠陥か鍵の不正使用ってとこですね。今日はずっとカタライさんが鍵を持ってたんすよね?」
「......」
 あった。棚の下の薄暗がりに、小さめの紙片が。カタライはそれを素早くポケットに突っ込んだ。
「カタライさん?」
「ああ、悪いね。鍵はずっと持っていたはずだよ」
 ヘベレケは不信がっていたが、追求するような様子はなかった。そのまま何事もなく調査は終わり、どうやら在庫管理ミスだったということでとりあえずの始末をつけることとなった。なんとか終業まで紙片を隠し通したカタライは、帰り際にもう一度紙片の内容を確認した。「カタライ、盗むのを手伝って」
 とても分かりやすい一文だった。

パートD:エンリョ(⑤)
 日記でもつけたらいい。
 斜陽が通りを照らし出しているが、エンリョのいる部屋は隣の建物の影になっていた。毎度おんなじことを繰り返すだけのマナー講師は帰っていった。覚えてられないのなら、記録しておくべきだ。わたしみたいに。
 その場合、ストーリーにならないように気を付けなければならない。ただの記録であること。一般人がストーリーを書くことは禁じられているのだ。物語から生まれる創素が工業用に用いられるようになってから、一番最初に作られた法律だ。大義名分としては、一般人が不正に創素を生み出すことで利益を得ることを防ぐためだ。ただエンリョは、別の意味でストーリーを書くことを避けていた。
 とはいえ、どこからどこまでがストーリーなのかは判然としなかった。「ラッキースケベひゃっほう」みたいなほんの短い文章でもストーリーになってしまうことはあるし、もっと極端には意味の通らない文字列からも創素が抽出された例もあるのだ。
 ベッドに寝転がり、エンリョは白い天井を見つめた。目が覚める度に不安になるのだ。視界にはわたしを証明する物がなく、単調な一面の白い壁。身を捩って部屋を見回してやっとひと息つける。だがいっそ、何もかも無かったことにならないか。創素も、この街も、文字が読めるようになったわたしも、全て嫌いだ。
 がたりと音がした。伝文機が真新しい筐体を細かに振るわせながら、メッセージを吐き出している。まだ世間には出ていない、創素を使った新しい機械。これを使えるのは一人しかいない。ノドゴシからだ。短い単語を連ねた紙が印刷されると、機械は左側についた穴から声を発した。
「あす朝に帰る。うちから出ないように。父より」
 メッセージを吐き出し終わると、ふぅぅうと伝文機はため息のような音を発した。エンリョはこの生き物めいた機械を気味悪く感じた。自分の生き物の部分が奪われているような心地がするのだ。
 しかし、都合がいい。これなら堂々とあの人に会いに行ける。エンリョは微笑んだ。何より、彼が父親を自認しているのが滑稽だった。わたしを使って、わたしを犠牲にして金稼ぎをした男が今さら何を。
 そうだ、とエンリョは手を打った。これなら、夜まで待たなくていい。なんなら今から迎えにいこう。必要なもの、ペンとナイフを布にくるんで、玄関にはつっかえ棒を挟んでおく。わたしにとって大切なものは、ここにはない。
 場所は前にあの人から聞いていた。ここから歩いて大通りに出ればあとはそれに沿って進めばいい。距離はそこそこあるが、これからのことを考えれば大したものでもなかった。
 ずっと欲しかったわたしの存在証明が手に入るのだ。たった一つだけでもと願った活字のE。わたしのイニシャル、目覚めたときのお守り。
 カタライ、どうか上手く盗み出していて頂戴。

パートE:カタライとエンリョ(⑦⑧⑨⑩)
 帰宅する途中だった。
「こんにちは」
 後ろから声を掛けられて振り向くと、十三、四才くらいの少女が上機嫌そうに笑っていた。夜に会うはずだったが。
「早いね。どうしたの?」
「ちょっとね。待ちきれなかったの」
「へえ。とりあえず、いつもの場所にいこう」
 エンリョが早く来たことが不思議だったが、詳しいことは訊かなかった。他人に見られて下手な勘違いを生みたくない。カタライは少しだけ歩をはやめた。
 大通りから一歩でも外れると、法律の届かない世界がある。カイスイヨク島の急激な発展の弊害で、路地裏は浮浪者で溢れていた。彼らはもともと山間部や平野部の農村にいた若者たちだ。またそれらに混じって犯罪者もちらほらいる。都市に住む人間ならばまず路地裏などに行かないだろう。
「一旦帰らないとナイフが」
「わたしが持ってきてる」
 何度か建物の隙間を縫うように蛇行したのち、二人は少し開けた空間に出た。菱形の格子の鉄柵がぐるりと周りを囲っていた。目抜き通りからだいぶ離れ、ここまでは浮浪者含め誰も来ない。初めてこの広場を見つけたのはエンリョだった。
「じゃあ、始めましょ」
「ああ......」
 カタライはエンリョと向き合うと、左手を出した。エンリョはそれに応じて右手で繋ぎ返す。完全に上気した様子の彼女はナイフをカタライの胸元に突きつけた。カタライはそれを黙って見ていた。やがて刃は薄い皮膚を切り裂き、ぷつりと小さな血の球が切っ先に出現した。エンリョも黙っている。ただ一回では終わらず、同じことを数回繰り返した。今日は特別多かった。
 しばらくその余韻に浸ったあと、彼女はナイフを思い切り振り上げてカタライの胸に突き刺さる寸前で止めた。暴力的だとは思わなかった。エンリョは破壊を望んでいるわけではない。
「もうこんなんでいいわ。ところで」
 ふ、と聞こえないくらいに息をついて、エンリョはカタライにナイフを渡した。それを受け取り、俺は言葉の続きを待った。
「Eは盗んでくれた?」
「ああ、やっぱり君だったんだね。よかった」
「どういうこと?」
「こんな紙が手元にあってね。何のことかと思ったんだ」
カタライはしまっていた紙を見せた。「カタライ、盗むのを手伝って」では色々伝わらないだろう。
「待って、じゃあEは持ってきてくれてないの?!」
「これじゃ分からないって......第一、そんな約束していないし」
 その瞬間、エンリョの目が見開かれた。表情も、怒りから驚きへと変わった。カタライはぞっとした。ナイフより鋭く、自分を突き刺してくるかのようだった。
「覚えてないのね......それに、この紙も渡したものとは違うわ」
「なにを」
「わたしたちは約束したわ。ちゃんとEを盗んできてって言った。盗んできてくれるって言ってくれた。それにこの紙も!Eを盗んできてって書いてあったのに!」
「そんな無茶な。だって倉庫にあるEを全部盗もうなんて到底......」
「全部?なんの話をしているの?」
 話が通じていないのか。てっきりエンリョが盗み出したのかと思っていた。どうやら違うらしいが。
「倉庫にあるEの活字、サイズ違い含めて全部盗まれてたんだ」

「ここに来るのは初めてね、カタライ」
「ああ。お邪魔します」
「嘘よ、あなたが来るのは二度目だわ。じゃあ、自分の会社のロゴは覚えている?何度か文句を言っていたやつ」
「そんなことないと思うけどな。......分からない。狐だったりするか?」
「兎よ。やっぱりね......」
 カタライはエンリョの家に招かれた。広場からそう遠くなかった。豪華な調度品が買いそろえてあったが、どこか生活感に欠けていた。初めてじゃ、なかったか?
「記憶喪失しているのね、たぶんわたしのせい」
「そんな......」
 空は陰り、月明かりもない夜だ。だがエンリョは部屋の明かりをつけようとはしない。
「一度話したことだけど、忘れているんでしょうね。わたしはノドゴシの娘なの。だから創素のことにも、他の人より詳しい」
「ノドゴシって、創素エネルギーの、あの」
「この国ではストーリーを書くことが禁じられている。なぜか分かる?」
 エンリョはカタライに取り合うつもりがないらしかった。何か焦っているようにも見える。
「悪用を防ぐため、だろ」
「それもある。もう一つ、一般には知られていない理由があるの。そもそも人は、創素がストーリーから生まれると思い込んでいるけれど、それは違う。あれは、ストーリーを創り出す想像力が変質したもの。ストーリーに込められた想像力の分だけ、創素は作り出されるわ」
 応接間、居間を通りすぎた。暗い廊下を壁伝いで歩いていく。カタライは前をいくエンリョの話し声と微妙な気配に気を使って進まなければならなかった。
「でも、想像力はそれだけじゃない。ストーリーを読むとき、実際に物語を立ち上がらせるのは読者でしょ。彼らの想像力も、創素の変換の対象よ」
「でもそれは特に問題にならないんじゃないか?それが人に悪い影響を与えるなら、国をあげて使ったりはしないはずだ」
「黙ってたのよ、ノドゴシはね。想像力の源は何?考えてみればすぐに分かるでしょ。それは、人々の経験であったり知識。つまり、人々の持っている記憶が創素のもとになっている」
 不意に立ち止まったエンリョは、右側の扉を開いた。重厚な紙の匂いが鼻孔に届いた。ここは、書斎だろうか。彼女の父親、ノドゴシ氏の。エンリョは部屋をずんずんと進み、本棚らしきものに手をかけて何かをまさぐった。すると、大量の創素が流れる音がした。大きな重低音だ。音が止まると、彼女は本棚があった場所に足を踏み出した。
「一度話を変えるわ。創素はもともと、魔術という形で使われていたものなの。魔女が天気を操ったり、植物の成長を速めたり、ごく一部の人間がごく一部の用途で使っていた。今みたいに大量に消費することは、決してなかった」
 ついてゆくと、急な階段に続いているようだった。何かの金属で組み立てたのか、歩くと硬質な音がした。向かっているのは、地下室だろうか。
「創素は、ストーリーの量を増やせば増えるというものではないわ。ストーリーは使い方と、使う量を決めるもの。肝心の創素はすべて人の想像力からできている。つまりね、今この国中で創素が不足しているのよ」
「まさか......」
 嫌な予感がした。たどり着いた部屋には窓がなかった。いや、窓だけでなく本当に何もなかった。
「足りないぶんの創素は、わたしたちから奪っている。創素を国中に分配するために用意された大量のストーリーが、読者を、そしてその想像力を求めた。半ば意思をもって、それらは私たちから記憶を奪っているのよ。何気ない会話やメモ書きにまで触手を伸ばしてね」
「じゃあ、メモ書きから文章が消えていたのも」
「そういうことよ。創素はこの国の全てを支配していると言ってもいい。エネルギーとして振る舞う以上の現象を起こしてしまう。まるで魔術のようにね。活字が全て消えていたのも、おそらくは。......ねぇ、ナイフは持ってるでしょう」
「ああ。ナイフがなんだって」
「創素を国中に供給して使うなんて大それたこと、いくらたくさんのストーリーを用意しても普通はできないわ。でも、それを可能にする万能のストーリーがある。他のたくさんのストーリーを内包した、恐るべきストーリー。ノドゴシはアカシックレコードと呼んでいた」
 エンリョの声が震えている。
「それを消失させれば、全てが終わる。もともとはこの部屋に置かれていたのだけれど、わたしが色々探っていることを知ったノドゴシは......」
「......なんて?」
「わたしの身体のなかに、アカシックレコードを埋め込んだわ」
 カタライはこのあとに起こることを察した。持っているナイフでエンリョを解剖し、アカシックレコードを取り出さなければならない。
「はやくして」
「そんなことができるわけないだろう......」
 エンリョはカタライを睨み付けた。
「はやくして!わたしの記憶も蝕まれているのよ!半分くらい、アカシックレコードと同化してしまっているの!!自分が自分でなくなる前にはやく......」
 カタライは、ナイフを握りしめた。

パートF:カタライ(③)
 あれから一年経った。
 急ピッチで進んでいた技術化は凍結され、たった一年前のことなのに昔話のようになっていた。創素でなんとか保たれていた都市も今は廃墟の山である。あまりに現実感がなく、途方に暮れた。
 まだ行政が州都と呼んでいるこの街に、いま人は誰もいない。カタライはシバイヌ株式のあった通りを歩いていた。創素のかよわない街は大半が全快しているが、幸いなことにこの目抜き通りには瓦礫があまり落ちていなかった。あたりを見回しながらしばらく進むと、兎の看板が無造作に転がっているのが見えた。ここに会社があるなら、もう少し向こうに。
 目指しているのはあの子の家だ。この荒んだ都市のなかにあって、珍しくもとの姿を残したままの屋敷。いま思えば、ノドゴシ氏はこうなるということを予期していたのだろう。決して、それを望んではいなかっただろうが。
 屋敷に入ると、視界には一定の静謐がもたらされた。家具や調度品はいかにも金持ちというものだったが、全てが整然と並べられていた。あのときのままだ。
 居間の隅に小さな機械があった。あの子が言ったことには、遠くにいる人間の声を伝えるものらしい。つまり、彼女が使った可能性もあるのだ。カタライはどこかに彼女の声が残っていないか、色々と弄くってみた。が、もとより創素の機械だ。成果はまったく得られなかった。
 一階の廊下のつきあたりに、ノドゴシ氏の書斎がある。そこから隠された地下室に下った。彼の工房だ。
 シンプルな四辺の部屋で、なにも置かれていない。唯一目を引くのは、その床が真っ白だということだ。よく見るとそれは、何かの書籍のページがばらばらになって一面を埋め尽くしているのだと分かる。だが既に文字は書かれていない。ただの白い紙だ。
 アカシックレコードと呼称されていたものの残骸。一年前のあの日、アカシックレコードを取り出したとき、ものすごい量の創素が工房に満ちた。床に散乱したページの一枚一枚が熱を発していて、不注意に触れた俺の腕を焼いた。腫れてしまい、しばらくじくじくと熱を持ち続けていた痕もすっかり治り、今ではむしろ不思議な冷たさを感じる。
 ぽつりと、白い床に染みができた。
 滴のもとを辿れば、自分が泣いていることに気がついた。いくら拭っても、手で受け止めても、涙は流れ出るのをやめなかった。友人とも恋人とも、そして家族とも違う関係だった彼女は、それでもカタライにとって大事な存在だった。何より、目の前で息絶えてゆく様子が思い出されて辛かった。あの子はこのアカシックレコードのために死ななければならなかった。本当にそうだろうか。俺が早とちりで殺してしまっただけなのではないか。
 ここには彼女のいた痕跡がほとんど遺されていなかった。誰も彼女を覚えていない。俺だけが、彼女を知っているのだ。カタライは声にならない叫びをあげた。涙に濡れた手で、散らばるページをぐしゃぐしゃに掴んだ。既に脆くなっていたそれは簡単に綻び、崩れた。
 これは、あの子じゃない。あの子の身体でもなければ、心でもない。ただ俺が、彼女と繋がっていると勝手に思っているだけの依り代だ。それでも、真っ白なページをかき抱きたかった。そうする度にページは崩れて、ばらばらにほどけていった。

Hugoさんワールド。その世界観は、見るものを魅了し、掴んで離さない。
想像の産物・創素を動力としていながら、その世界は創造を制限されているという矛盾。すでにたまらないのですが、そこに必ずくる限界のために、切り札を想像の源・人間に埋め込んでおく・・・突き付けられる真実が絶望的で、もうそれが最高。残骸が真っ白な紙束というのも、イイ。
もう自分の語彙力が足りないのは創素を奪われたせいじゃないかと思いました。今度から、語彙力のないことを「創素が奪われた」と表記したい。

No.116[きっとくりす]08月24日 23:5708月28日 10:59

『ウワサ話をつくろう』

根も葉もないが、耳はある。 [編集済] [良い質問]

No.117[きっとくりす]08月25日 00:0008月30日 20:51

ーーTHE着ぐるみーー

『昔々あるところにクリスと言って女の子がいました。ある日クリスが川辺を歩いていると、ウサギ⑫の着ぐるみがどんぶらこっこどんぶらこと流れてきました。クリスは着ぐるみを救出しました。着ぐるみはウサコと名乗り、自分を着てほしいとクリスにお願いしました。クリスはそのウサコを着ることにしました。不思議なことにまったくぬれていません。すると、今度はウサコの耳が流れてきました⑥。しかし、クリスはそれを拾おうとはしません。ウサコはクリスに耳を拾ってくれるように頼みました。しかし、交渉は決裂、耳はそのまま流れていってしまいました②。クリスとウサコはそのままケンカになり、クリスはウサコをぬいでしまいました。すると、なんとクリスはおじいちゃんになってしまいました。クリスはびっくりして、あわてて再びウサコを着ました。しかし、二人はケンカ中、ウサコはチクチクとクリスを攻撃してきます。耐えきれなくなってクリスは再びウサコを脱ぎました。すると、クリスはナメクジになってしまいました。混乱したクリスは巨大化して暴走、ウサコを下敷きにしてしまいました。そこへ、ちょうど猟師さんが通りかかりました。巨大ナメクジを見てこれは大変だと塩で攻撃、クリスは完全消失してしまいました。ウサコはお礼を言い、猟師さんに自分を着てほしいとお願いしましたが猟師さんはウサコを着てくれませんでした。その様子を悪の女王の末裔の少女、エミリーがみていました。エミリーはウサコを使って中学校を老人ホーム化しようと企みました。その様子を偶然、普段は中学校の先生をしている正義のヒーロー、岩橋先生が見ていました。先生はエミリーがウサコと手を組む前に、なんとかしてウサコと接触しなければと考えます。その時、先生を助けるかのように強い風が吹いて、エミリーのスカートをめくりました⑤。エミリーがスカートをおさえている隙に、先生はすばやくウサコを回収しました。ウサコは先生に自分を着てくれるようにお願いしました。先生は了承し、ウサコを着ました。それから先生はウサコを脱ぐことなくずっと仲良く⑧生活しましたとさ、めでたしめでたし。』⑨⑪

ーーーーーーーーーー

***

『ねぇ、着ぐるみのウワサは聞いた?』
『んー、聞いてない。』
『これはおもしろいよー。中学の校舎の裏に大きな桜の木があるじゃん?そこに願いを叶えてくれる着ぐるみがいるの!』
『ほー。』
『でもねー、そのかわりに何か記憶をあげないといけないの⑦。』
『おー、代償がいるんだね。ところで、何で着ぐるみ?』
『それは……』


***

「“THE着ぐるみ”覚えてるか?」

友人に深刻そうな様子で突然問いかけられたのは、とある夏の日のことだった。

「覚えてるけど、いきなりどうしたんだ?」

“THE着ぐるみ”とは中学生のときに友人と二人で一文ずつ書いて回したリレー小説だ①。もう10年近く前の話なのですべては思い出せないが、一文でどれだけ相手を驚かせることができるかのバトルになって、かなりハチャメチャな展開になったのを覚えている。

「今、中学生の間で校舎裏の桜の木のところにいる着ぐるみのウワサが話題らしいんだ。うさぎだったりきつねだったり⑩パンダだったりする着ぐるみが願いを叶えてくれるらしい。」

「動物のバラエティ多いなー(笑)。THE着ぐるみを書いたのが中学生のときで、その中学校で着ぐるみのウワサがはやるとかおもしろい偶然だな。」

「…偶然じゃないと思うんだ。実はあの桜の木の下に“THE着ぐるみ”を埋めたんだよ④。それに、あの着ぐるみには耳がない。何の動物かわからなくても不思議じゃないと思うんだ。」

友人の言葉におれは驚いた。

「えっ!あれ埋めてたの!なんで!?」

「…………」

教えてはくれないようだ。そっちから話し始めたくせにと思いながら、深くは追求しないことにする。

「んー、まぁ、考えすぎじゃないかな。……あれ?でもおれらの中学、小中併設するって小学校の方に移動したんじゃなかった?小学校には大きな桜の木とかなかった気がするけど……。もしかして別の中学校の話なんじゃない?」

「いや、うちの中学だ、間違いない。ウワサを聞いて桜の木のところに行ってみたんだ。」

「行ったの!?どうだった?」

「めっちゃ蚊に刺された。」

そういうことを聞きたいんじゃなくて、と友人の腕を見ると確かに虫刺され痕がたくさんあった③。結構最近行ったのだなと友人の行動力に感心する。友人は話を続けた。

「夏なのに桜の木の周りだけなぜかひんやりしてるんだ。なんか嫌な感じだなと思ってふと地面を見たら、真っ白でぎょっとしたよ。」

「真っ白?」

「そう、はじめはなぜ真っ白なのかわからなかったんだが、上からポタッと落ちてくるものがあって気がついたんだ、これは鳥のふんだって。」

「うわぁ……」

「しかも、ちょうどアレを埋めたあたりに集中してるんだ。オレは着ぐるみが目印をつくらせてるんだとゾッとして、すぐに全部洗い流した。でも、鳥のふんはまたすぐに溜まるだろうと思うからどうしたものかと考えているんだ。」

「別に“THE着ぐるみ”が出てくるだけだろう?気にしなくていいんじゃないか?」

「……オレがなんでアレを埋めたかというと、最近夢に耳がない着ぐるみが出てきてうなされるからなんだ。あの話は着ぐるみ着ると大変じゃん?だから、いつか夢の中で着ぐるみを着ちゃうんじゃないかと心配なんだ。」

「えー、なんで今さら?うーん、いつくらいから夢に見るんだ?」

「えっと、確か春頃?」

「…春頃……うさぎ…。あ!イースターでうさみみ買ってなかったっけ?耳ないしあげればいいんじゃない?」

「……それだー。」

***

『……で、そのままうさみみを埋めて願いを叶えてくれる着ぐるみが残りましたとさめでたしめでたし!』
『結構おもしろかった!ほんと“THE着ぐるみ”好きだねー。』
『お気に入りだからなにかと絡めて世に広げたい。』
『着ぐるみにお願いしないとだね、“THE着ぐるみ”が世に広まりますようにって』
『いいね!』

おわり

リレー小説あるあるで、だんだん超展開が増えていくのが、見ていて微笑ましかったです。それが現実に起こったらだいぶぞっとしますし、実際途中で鳥肌が立ったのですが、まさかのオチでまた笑ってしまいました。こういう作り話から、本物になっていくというのはよくありますが、対処がそれでいいんかい! でも、それで許してくれるなら、「THE着ぐるみ」に願い事をしたくなりそうです。いっそ観光名所にしてもいいかもしれません。(?)

投稿フェーズ終了!! みなさま、おつかれさまでした!
投票はこちらでお願いします!
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こちらから、ロスタイム投稿を受け付けています。
(投票対象外になりますが、感想をつけさせていただきます)
よろしければ、どうぞお使いください。
↓↓↓
No.118[ひややっこ]08月26日 13:4708月31日 03:59

【くしゃり。】

響く音。届かぬ声。 [編集済] [正解][良い質問]

No.119[ひややっこ]08月26日 13:4808月31日 03:59

ぴちょん、と背後で音がした。
年季の入った天井から、雨漏りした水滴がバケツに落ちたのだ。
たっぷりと水の溜まったバケツを見下ろし、ついで外に目を向ける。
眩しい日の光が照らす中、雨が降っていた。

「狐の嫁入り、か」⑩

私は独りごちた。
静まり返った室内からは返事もなく、ただ、ぴちょん、ぴちょん、と雨粒が虚しい音を奏でるのみだ。
ひんやりとした室内に、思わず身をすくめる。いつの間にか、夏は通り過ぎていたらしい。②
上着を取ろうと手を伸ばせば、嫌でも目に入る、白い床。
畳が、捨てられた原稿用紙達に覆い尽くされているのだ。

ーーーーーーくしゃり。

私は、文机に置かれていた、たった一文しか書かれていない紙を握り潰して、床に投げ捨てる。①
万年筆を持つ右手の中指は、癖のある持ち方のせいで、丸く腫れている。③

「全く、辛気臭ぇ部屋だな、此処は。」

突如、後ろから聞こえた声に、私は一瞬体を固めた。
しかし、振り向くことはしない。
こんな家に来る物好きは、友人である彼奴しかいないからだ。
私は友人の言葉を無視して、新たな紙を取ると、再び執筆作業に戻る。
だが、相変わらず納得のいく言葉が浮かんでくることは無く、ただ白い紙面を見つめるばかりだ。

「情けねぇ話だな。三年前は、記者だの追っかけだのが押しかけ、ごった返し、暑苦しいったらありゃしなかったのによぉ。」

「……。」

「見ろよ、埃も溜まり、彼処なんか蜘蛛の巣が張ってらぁ。これじゃまるで化け物屋敷だな。」

友人が部屋の中を歩き回る。
そして、畳を埋め尽くす原稿用紙を一枚取ると、それを眺めて溜息をついた。

「まだこんなもの書いてやがんのか。」

「うるさいな、放っておいてくれよ。」

「馬鹿馬鹿しい。いくつもの連載を中断してまで、プロのやることかよ。そんなんじゃ、爺さんになっても周りから恨まれるばっかりだぞ。」④

「あんな作品、今の私にとっては書く価値なんてこれっぽっちもない。こっちの方が大切なんだ。」

 ぴちょん、と室内に雨音が響いた。

「もう、やめろよ。お前だって、その行為に意味が無いことくらい、分かってるだろ。」

 友人は、静かに言った。

「なあ、勿体ねぇよ。いつまで囚われてるんだ。そんなことしたって……死人は、帰ってこない。」

 その言葉に、私は目の前の紙を丸め、友人目がけて投げつけた。

「っ、何しやがる!」

「うるさい、うるさい!意味はあるんだ!出来損ないのこの脳みそじゃ、どうしたって彼奴のことは忘れていく!だから兎に角、彼奴を書いて、保存するんだろ!」⑦⑫

「死んだ人間に夢中になって、自分の人生を棒に振るほど無駄な事はねぇだろ!」

「黙れよ!書かなきゃいけないんだ!何一つ、彼奴との記憶を無くしたくない!」⑪

 私は立ち上がり、友人の胸倉を掴んだ。

「……それで、その結果がこれかよ」

 友人は、畳を指さして言う。私は唇を強く噛みしめた。

「だって、書けないんだ。彼奴は、こんなもんじゃない。どれだけ書いても、彼奴にならない。早くしなきゃ、記憶はどんどん消えていくのに。」

「当たり前だろ。」

 はっきりとした声が、私の鼓膜を震わせた。

「文字なんかで、お前の思い出が、表せるわけがないだろ。そんなもんじゃねえんだよ。」

「……足りないんだ。彼奴がいなきゃ、私の世界は欠けている。写真も、手紙も、彼奴の温度が感じられないんだ。」⑥

俯いて、座り込む。
視界がぐにゃりと歪む。
縁からこぼれおちた水滴が、捨てられた紙を濡らした。

ばしゃり。

涙に続くように、突然降ってきた大量の水に、私の浴衣はぐっしょりと濡れ、身体に張り付く。⑤
畳の原稿用紙も、濡れてしまった。
驚いて顔を上げると、そこにはしたり顔の友人が、雨漏りした水を溜めたバケツを持ち、立っていた。

「どうだ、目ぇ覚めたか?」

「……は。」

「何が保存だ。紙なんて、こうして濡らしてしまえば、一瞬で意味なんてなくなるだろ。」

「なんてこと、するんだ。」

私が、信じられないと責め立てるような目で睨むと、友人はすっと目を細める。

「忘れたって、いいだろうが。欠けてるうちは、忘れねぇよ。忘れる時ってのは、その欠けた部分が、別のもので埋められた時だ。死を、割り切れた時だよ。」

「……彼奴は、本当に、死んだのか。」

「そうだ。それで、お前は生きてる。ただ、それだけの事なんだ。」

座り込んだままの私に、友人が手を差し出した。
そこに、手を重ねる。⑧
友人の手は、酷く冷たかった。
私は、口を開き、

**⑨

ーーーーーーくしゃり。

文机に向かっていた男が、書きかけの原稿用紙を軽く握り、畳に捨てる。
男の友人は、皺の寄ったその紙に近づき、そこに書かれた文を目で追った。

「違う、違う、彼奴はこうじゃない。」

うわ言のように呟き、頭を抱える男。
そちらに目をやり、男の友人は、深く溜息をつく。

「……お前、俺に、こうして欲しいのか。」

友人は、男に向かって尋ねた。

「目を、覚まさせて欲しいのか。」

しかし、男から返事が来ることは決してない。
友人は無言で立ち上がり、部屋の隅へと向かう。
そこには、雨水の溜まったバケツが置かれていた。
友人は、手を伸ばす。
しかし、バケツを掴もうとしたその手は、空を切った。

「……ごめんな。俺、触れねぇんだ。」

部屋は、静かだった。
友人は、透ける自身の手のひらを見つめ、呟いた。

「俺は死んだんだよ」

いくら友人が言おうと、その言葉が男に届くことは無い。
また一つ、原稿用紙が投げ捨てられた。

「だから、どうかもう、俺に囚われるのはやめてくれよ」

ぴちょん。
一人ぼっちの静かな部屋に、雨音が響いた。 [編集済]

嗚呼・・・・・・
男は、頭ではわかっている。そして、目を覚ますべきだとも思っている。
だのに、自分ではどうしようもできない苛立ちを、そこにぶつける。でも、それはやっぱり自分の独りよがりの勝手な妄想で、「彼奴」を語っているだけにすぎない。囚われてはいけないと思ってる、でも・・・。その虚しさが、ただただ悲しいとも思うし、ラストの「友人」の言葉が、ひどく心を揺さぶります。救いはないけれど、気持ちとしては非常にわかるというのが、凄く好きです。
[正解]

No.120[ひややっこ]08月26日 13:4908月31日 03:59

☆補足

④は、老人の過去に対して批判的な人が続出する、です。


[編集済]

さて、今回、ロスタイムフェーズを入れてみましたが、この作品に出逢えたのだと思うと、やっぱりやってよかったです。「兎に角」が無理やりとおっしゃっていましたが、私はむしろ男が生粋の作家であることを表現しているいい調味料だと思いました。・・・ちょっと評論家ちっくな言い回しになってしまいましたが、とにかく、この作品が見れて良かった。また、投票会場にも、感想を書いてくださっている方がいらっしゃいましたので、ぜひぜひご確認くださいませ。本当にありがとうございました。 [正解]

参加者一覧 23人(クリックすると質問が絞れます)

全員
OUTIS(17良:8)
靴下(6良:3)
夜船(8良:2)
ひややっこ(8良:2正:5)
きっとくりす(6良:2)
赤升(6良:2正:1)
ハナミ(3良:1)
みづ(6良:1)
きの子(6良:2)
太陽が散々(4)
ハシバミ(6良:3)
飛びたい豚(2)
ごがつあめ涼花(4良:1)
びーんず(2良:1)
八つ橋(4良:2)
バタルン星人(2良:1)
ゲクラ(4良:2)
葛原(3良:1)
松神(3良:1)
ニックネーム(14良:7)
かふぇ・もかろに(2良:1)
ラピ丸(2良:1)
Hugo(2良:1)
※恒例(?)の長めの結果発表です。結果だけご覧になりたい方は投票会場をご覧ください。




さあ、結果発表の時間です。遅れたのはほんとすいません。
はてさて、今回はお盆時期ということで投稿数も少なめであることを予想しておりましたが・・・

32個集まってしまいました。ロスタイムも併せて33個・・・すごいな・・・

逆にあの問題文でよくここまで創りあげたなと、主催ながら非常に驚いてます。
(問題文の難易度は申訳無)


そうそう、今回から

賞金のコイン
迷宮入り対策用のアカウント

という要素も加わりましたので、まずそちらの説明をざっくりと説明します。



■■賞金のコインについて■■

今回、以下のコインを管理人さんに用意してもらいました。
次回から同じ設定で統一されるそうなので、主催の方はご注意ください。


シェチュ王 エントリー作品数×15コイン
最優秀作品賞 得票数×15コイン
シェフ参加賞 10コイン
最難関要素賞 5コイン



匠エモンガはサブ(主催者がやるかやらないか次第)ですので今回は見送りました。
もし追加希望であれば、管理人さんにご連絡お願いいたします。

シェフ参加賞は、「シェフとして作品投稿フェーズに参加した人」にだけ与えられます。

今後は集計後、計算してから「何コインが必要か」を管理人さんに申請していただく形になります。
また、これらのコインは、主催のコインから上乗せすることもできるそうです。
その場合は、○○コイン(シェチュ王)+(上乗せ○○) と上乗せしたい数を入れて申請することもできます。

(今回は主催のコインが少ないので上乗せは見送らせていただきます。)

また、コインチケットの発送は、ミニメールにてお送りいたします。




■■迷宮入り対策用アカウントについて■■

お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、「マクガフィン」さんからのアイデアをいただき、
迷宮入り対策用アカウントをつくりました。


「創 作造」https://late-late.jp/users/profile/3357


迷宮入り間近の問題」入りを避けるために、こちらのアカウントで質問し、
迷宮入り間近になりそうな時に、回答してください。

また、投票の集計にてシェチュ王が同率一位となった場合の主催事前投票にも利用できますので、ぜひそちらにもご活用ください。


「創りだす」は主催が毎回変わるため、ユーザーIDとアカウントを表記してありますが、
基本的に「創りだす」以外での無許可での使用はご遠慮ください。


(ただしプロフィールいじりは基本許可しております。もしよろしければ、思う存分キャラ設定してくださいませ)






さて、それでは新仕様の方の説明をこれぐらいとして、

お待ちかね結果発表と参りましょう。






最難関要素賞(上位3位)


第三位

🥉「記憶喪失になりますか?」(by・きっとくりすさん)


かなり匙加減が難しい。記憶喪失になるきっかけも、基本的には事故だったり、そういったことが多かった印象です。
ですので、これの扱い方で票を左右する、そう言っても過言ではなかったのではないでしょうか。



第二位

🥈「作中作は関係しますか?」(by・ハシバミさん)


こちらは、どちらかというと世界観などが限定されたことにあるかもしれません。
基本的には「物語」の中にそのまた「物語」があり、それをどう利用するのか。
こちらは、作品の世界観を左右する、そういった要素であったように感じます。





それでは、第一位はというと・・・・・・・・・






第一位


🥇「ラッキースケベしますか?」(by・赤升さん)



さあ、今回どうしても問題文、そして要素から、シリアスなムードを漂わせていました。
そんなムードをぶち壊すかのような台無し感。文句なし。ええ、文句なしですとも。

そんな赤升さんには、今回賞金として、5コイン用意しております。おめでとうございます(?)



ちなみに、今回私が選ばせていただいた要素は「ラッキースケベ」「狐だったりする」でした。
自分で要素を選ぶのは初めてでドッキドキだったわけですが、まさかここで戦犯になるとは・・・すいません。
うーん、もうすこしギャグもできそうな雰囲気の問題文を作ればよかったかも?



匠賞




🥇「私にとってはすべての要素が最難関だ」(作・夜船さん)


まあそりゃね・・・勝てないよ・・・だって総要素144個だもん・・・
逆によく創りだしたなって・・・しかも物語としても面白いなんてって思いますもん・・・


しかし、匠票は今回僅差でして、なかなか結果も面白かったです。そちらは是非投票会場でご確認ください。
(問題文のやりづらさもあるのかもしれませんがそれはマジですんません)





エモンガ賞




🥇「そして、あなたたちを忘れないために」(作・葛原さん)


エモンガはこちら。ちなみに圧巻の最多票でした。
第8回「コンピューターに世界征服をさせない方法」の後日談、そして前日譚ともいえるこの作品は、

「話はスゲーよくわかる。ストーリーとしても最高だ。だがな、これに相応しい感想が全然書けない」

そんな語彙力喪失したエモンガをごっそり獲得していました。いやほんと、私も短い文字数でどう感想を書くべきだろうという闘いを地味にしておりました。
そんな参加者の感想、ぜひぜひご覧くださいませ。




・・・それでは、いよいよメインの最優秀作品賞の発表です。



最優秀作品賞(上位3位)



第三位

🥉「汗と涙と幸せの行方」(作・OUTISさん)
🥉「輝きの中で」(作・松神さん)
🥉「私にとってはすべての要素が最難関だ」(作・夜船さん)
🥉「食べられる」(作・Hugoさん)



3位めっちゃ多っ・・・・・・ですがそれもそのはず。
匠もこちらで入選していますが、他3つもとにかく世界観、そして鮮やかな情景がすばらしい。
この4つの世界観は見るものを惹きつけてやまないため、実に甲乙つけがたい。
それを称えてか、特にシェフの方々からいただくことが多かった印象です。








第二位

🥈「そして、あなたたちを忘れないために」



こちらではエモンガが入選いたしました。
感想ももちろん、かなりの方が長文で熱く語ってくださってます。その熱はもう創りだす界の松岡修造(自称)もびっくりです。
みんな松岡修造。実はこの時点で3位と大きく差をつけており、まさに1位と2位を争う状態が続いていました。
それだけでもじゅうぶん凄かったのですが・・・・







・・・そう。前回と同じく、最優秀賞はでもエモンガでもなく・・・・・・・・・・・・



















第一位













夕暮れ、一人の少年がホースを持って校庭に立っていた。












🥇「〖創り出せ!ウミガメ探偵くらぶ!〗〜凍てつく校庭の謎〜」(作・ひややっこさん)

※タイトルを少しだけ改変しています。ご了承ください。


「推理もの」と「創り出す」の見事な融合!
魅力的なキャラクターの掛け合いもあり、非常に楽しい物語となっていました!!

「犯人だけわかるウミノ」、「動機をストーリーとして組み立てるカメダ」。
王道ではないはずなのに、不思議とこのコンビが織りなすシリーズが読みたくなる。
そんな素晴らしい作品を、まさかこの問題文で、そしてこの要素で! 回収も本当にお見事でした。




さあ、そんなわけで、ドッキドキの発表はこれにて終わりです。
今回あまり凝ったことはできませんでしたが、それでもシェチュ王に再び携われたこと、改めて感謝いたします。


それでは、シェチュ王の表彰に移らせていただきます。




第14回! シェチュ王はっ・・・・・・!!















👑ひややっこさん👑


おめでとうございます!!🎉🎉


ひややっこさんは前回よりその文才を発揮していましたが、なんと参加2回目にしてシェチュ王を獲得いたしました!!
これはご友人のマクガフィンさんにも感謝しなくては!!!!


ロスタイムでの作品投稿もしてくださり、今回ひややっこさんには感謝の気持ちでもいっぱい!
ありがとうございます! そして、おめでとうございます!!


また、のちほど今回の反省を、こちらのまとメモにも書かせて頂きます。
自分用のメモですが、今後の参考にでもしていただければなと思います。

(おそらく31日中には出来上がりますが、長いことだけは確定してます)




それでは時間をかけてもなんですので、ひややっこさんに王冠を授けたいと思います。


ハァーイ> ( ・ω・)ノシー==三三👑 \[゜∀゜\] <ワーイ
19年08月10日 21:30 [とろたく(記憶喪失)]
相談チャットです。この問題に関する事を書き込みましょう。
とろたく(記憶喪失)>>八つ橋さん、ご参加ありがとうございました。一つ一つ大事に書かせていただいたのは、みなさんがいたからこそ。ですが、毎回文章量に引かれてやしないかと気が気でないですが、そう言っていただけると、嬉しいです。 また八つ橋さんの作品、見たいなあなんて思いながら、本当にありがとうございました。[31日18時38分]
とろたく(記憶喪失)>>靴下さん、ありがとうございました~! 靴下さんの創りだす愛が深まったようで何よりです(´ω`) また次回も靴下さんの愛をお待ちしてます![31日18時33分]
八つ橋>>とろたくさん、主催おつかれさまでした。それぞれの投稿への一言や解説の一つ一つが、とても丁寧に描かれており、参加してよかったな、と思いました。ありがとうございました。[31日14時22分]
靴下[15イイネ]>>とろたくさん主催お疲れさまでした! 私の作品に投票してくださった方、また感想を寄せてくださった方々、本当にありがとうございます! 感想返信は後ほど、投票会場にてさせていただきます(もうちょっとお待ちください)。そしてひややっこさん、シェチュ王おめでとうございます!! 夜船さんの匠賞、葛原さんのエモンガ賞もおめでとうございます! 今回もとても楽しい創りだすを経験できました。ますます好きになりました(o˘ω˘)[31日13時36分]
とろたく(記憶喪失)>>赤升さんも、ご参加ありがとうございました。しかし、創りだす大好き芸人としては、やっぱり時間の調整なんかが心残りになってしまいました。そのへんもまとメモに後程載せる予定です。ラッキースケベに関しては、私が「面白そう!」で選んだ感じなので、戦犯はむしろ私な気が・・・[31日11時03分]
とろたく(記憶喪失)>>バタルンさんもありがとうございます! またバタルンさんの癖になる作品をお待ちしております。┏( .□. ┏ ) ┓=3カサコソ [31日10時59分]
とろたく(記憶喪失)>>ひややっこさん シェチュ王、最優秀賞おめでとうございます!! いやもうほんと、すごく素晴らしい作品でした! あわよくば続編を見たいぐらい・・・(図々しい) 顔文字はやっぱりおとうふのイメージだったので、勝手につくらせていただきました。気に入っていただけて何よりでございます。[31日10時55分]
とろたく(記憶喪失)>>きっとくりすさんもお疲れさまでした。 ほんとにこの問題文でよくぞ! 次回もお目にかかれたら、私が嬉しいです。[31日10時51分]
赤升>>とろたくさん、主催お疲れ様でした。創りだす大好き芸人の名は伊達じゃない。ひややっこさん、シェチュ王おめでとうございます。開催はじっくり準備してください。自分は戦犯だったみたいですね。[31日10時06分]
バタルン星人>>とろたくさん 開催・進行ありがとうございました!お疲れ様です!! ひややっこさん 14回大会のシェチュ王おめでとうございます! 夜船さん 匠賞おめでとうございます! 葛原さん エモンガ賞おめでとうございます![31日09時40分]
ひややっこ>>きっとくりすさん、ロスタイムまで感想頂いてありがとうございます![31日08時12分]
ひややっこ>>ニックネームさん、ありがとうございます![31日08時08分]
ひややっこ>>はああああ!ありがとうございます!!!本当にありがとうございます!!ロスタイム投稿まで見てくださった方々も感無量です!!とろたくさん、お疲れ様でした。この顔文字、積極的に使わせて頂きます \[。∀゜]/ワァーイ[編集済] [31日07時33分]
きっとくりす>>とろたくさん、主催お疲れさまでした!ひややっこさん、最優秀作品賞&シェチュ王おめでとうございます![31日03時20分]
ニックネーム>>パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ ひややっこさんおめでとうございます!![31日02時29分]
とろたく(記憶喪失)>>ウォアアありがとうございます! ぜひ読ませていただきます![26日17時07分]
ひややっこ>>ロスタイム投稿させて頂きます。⑫がなかなか入れられず、無理やりぶち込みました。[26日13時46分]
OUTIS>>魔弾は7発目で自らを裏切るらしいからネ 今後も最大6つまでしか書かないと思うヨ そのうち6じゃ少ない方になるんじゃないかナ? それにしても夜船さん、書き上げたんだネ・・・[25日00時52分]
ニックネーム>>皆さんお疲れさまでした。今回は投票もできれば、と考えています。[25日00時47分]
とろたく(記憶喪失)>>ラピ丸さんお疲れっす! うわあ、またエモいもんを! ありがとうございます![25日00時00分]
ラピ丸>>セーーーーーフ!!!! ギリギリ!推敲しきれてないから要素抜けあるかもしれませんん!!
(あ、参加しました)[編集済] [24日23時47分]
夜船>>いえいえ私は超人なんかやないですよ。ただのド変態です。( ー`дー´)キリッ[24日23時41分]
とろたく(記憶喪失)>>いやもう、夜船さん、ほんとお疲れ様です。創りだすにいる人は超人多すぎ説が、夜船さんで立証されてます。ほんとお疲れ様です。(大事なことなので二度ry)[24日23時30分]
夜船>>いちおう設定としては全部書いてたはず。途中で消してしまった可能性もあるが。[24日23時22分]
夜船>>危ない、間に合った。多分抜けも多いよ。暗に示した要素とかもある。→はっきり言うと流れ的に変になる者たち。もう疲れたよー[24日23時18分]
とろたく(記憶喪失)>>ニックさんとOUTISさんは相変わらず6作キメてるわ、その合間に挟まれるハシバミさんの世界がもうカオスですね??? ありがとうございます。こんなに作品がくると思ってませんでした。[24日23時11分]
ニックネーム>>確かに5・7・5ですね(笑)それはそうと、投稿しました。[24日19時37分]
ハシバミ>>投稿しました。作品通り夢の中で夢を見ておりました。[24日15時43分]
OUTIS>>ニックさん、川柳に見えてしまったヨ・・・[24日12時52分]
ニックネーム>>すみませんm(__)mただひたすらにすみませんm(__)m[24日04時50分]
とろたく(記憶喪失)>>靴下さん ありがとうございます! 投稿したたけでもありがたいです。[23日08時33分]
靴下[15イイネ]>>投稿しました! ⑨の使い方が雑すぎる感否めないけれど許してくださいm(_ _)m
そして、この作品を読んで不快な気持ちになる方がいるかもしれません。もし経験者の方等、思い出してしまう…という方がいらっしゃいましたら申し訳ありません。[編集済] [23日01時44分]
ニックネーム>>OUTISさんには悪魔としてご登場いただきました😌(事後承諾)そして松神さん、本当にやってしまいました(笑)[22日02時43分]
とろたく(記憶喪失)>>かふぇもかさん 私はもはや夏休みの課題の存在意義を疑う今日この頃です。 投稿ありがとうございます![21日11時38分]
かふぇ・もかろに>>夏休みの課題を見て見ぬ振りして投稿しました。[21日02時57分]
松神>>ツイッターで言ってたやつ本当にやってるんですねw[18日20時21分]
OUTIS>>全く、勝手に人を悪魔にしないでもらいたいネ[18日17時23分]
とろたく(記憶喪失)>>ニックさんwwwww 朝から思わず笑ってしまいました。ニックさんと共に、OUTISさんにも敬礼。[18日10時59分]
ニックネーム>>参加したかったです…!!![18日08時00分]
OUTIS>>期間中にあと1作品投稿したいと考えてるヨ・・・
別に髪の毛に導かれているわけじゃないからネ?[編集済] [16日23時31分]
とろたく(記憶喪失)>>はてさて、なーんのことやら〜♪~(´ε` ) ってOUTISさんもしれっと投稿が増えてるじゃないですかぁ!!!(嬉しい)[編集済] [16日22時43分]
OUTIS>>とろたくさん、勝手に次の流れを作らないでもらえるかナ?()[編集済] [16日16時10分]
とろたく(記憶喪失)>>松神さん! ここで初めて絡めるとはびっくり! 遅ればせながらいらっしゃいませ![編集済] [14日22時55分]
松神>>参加します[14日16時16分]
とろたく(記憶喪失)>>葛原さん、なぜこんな素晴らしいものを創りだせるのですか? (歓喜)[14日05時01分]
OUTIS>>さあ、みんなで葛原氏を称えようじゃないカ[13日22時59分]
葛原>>参加します[13日21時32分]
とろたく(記憶喪失)>>ゲクラさん 確かに・・・! 作品を見るのは初めてですね! ありがとうございます![13日20時44分]
とろたく(記憶喪失)>>OUTISさん そうとも言います。← ただ自分も返事がすぐにできるわけではありませんので、変えたいかたは今のうちです。[13日20時41分]
ゲクラ[令和]>>本格的に参加した記憶があまりないもしかして初めてかも?なにがともあれ参加します。[13日19時50分]
OUTIS>>もう名前の固定が始まっているんだネ・・・ 迷宮入りの都合かナ?[13日17時53分]
とろたく(記憶喪失)>>みづさん、天晴。実はみづさんのバッドエンドを見るのは初めてかもしれません。[13日17時32分]
みづ>>投稿しました。ハッピーエンドにできなかったです((T_T))[13日16時43分]
とろたく(記憶喪失)>>ひややっこさんありがとうございます! 小学校とか中学で読んだような文体...控えめに言って好き。[13日12時44分]
とろたく(記憶喪失)>>シュッ三(`・ω・´)<バタルンサンアリガトゴザイマース!![13日12時43分]
ひややっこ>>ようやく完成しましたー!
児童小説……かど〇わつ〇さ文庫みたいにしたかった人生でした。[編集済] [13日10時56分]
バタルン星人>>[壁]¥o(V) サンカシマス[13日05時03分]
OUTIS>>流石に過去要素全振りは・・・最悪、骨は拾わせてもらうヨ・・・[13日00時45分]
とろたく(記憶喪失)>>おっ、何やら夜船さんが企んでいる様子。wktkしながらお待ちしております![13日00時45分]
とろたく(記憶喪失)>>八つ橋さ...八つ橋さん!? まさか創りだすでまた作品にお目に掛かれるとは! 純愛も大好物ですうふふ。[編集済] [13日00時44分]
とろたく(記憶喪失)>>OUTISさん 最近Twitterを始めたので洗脳されだしてます。やべーな。参加してなくても影響を及ぼす某メイレインさん。[編集済] [13日00時40分]
夜船>>ひとまず完成。一つやってみたいことがあるので挑戦します。間に合わなかったら察してください。[12日23時58分]
八つ橋>>やっとできた。純愛を意識しました。ご査収ください。作中作が分からない。遅れ遊ばせながら解説のみ参加します[編集済] [12日21時03分]
OUTIS>>とりあえず狐が狐巫女としかつながらなくなったのは某さみだれ氏のせいだヨ[12日20時50分]
太陽が散々[◇クエ王◇]>>OUTISさんエグすぎる笑[12日20時45分]
とろたく(記憶喪失)>>英文というとんでもないものがやってきました。OUTISさん発想だけでなく実行力も強すぎだろ・・・[11日13時30分]
とろたく(記憶喪失)>>きの子さんも深夜に投稿! お早いです! 解釈に関しては自由ですので、全然OKですよ![11日13時29分]
OUTIS>>自分でも書いてるうちに何を書きたいのかわからなくなったヨ 結局何が言いたいのか、私にもわからないヨ 誰か作者である私の代わりに解読してくれないかナ?
ちなみに一文はこの英文ネタをやる為だけに投げたヨ[編集済] [11日03時11分]
きの子[200回良質問]>>一応出来ました~…|ω・)作中作ってこの解釈でもOKなのでしょうか[編集済] [11日01時36分]
とろたく(記憶喪失)>>OUTISさんはっや。その早さに毎回救われている気がします。[11日00時36分]
OUTIS>>実はとある本に影響されすぎて書こうか迷ったのだけれど、ひとまず書いて吹っ切る事にしたヨ[11日00時34分]
みづ>>これは…かなり、無理そうです( ;∀;)[11日00時02分]
とろたく(記憶喪失)>>お、マクガフィンさん! どうぞ観戦してってください~。しかしこの問題文なので本当にどうなるかドッキドキです・・・[11日00時02分]
OUTIS>>そうだよネ、そうそう、一つで充分だヨ! 前回?ワタシハサンカシタオボエガナイカラヨクワカラナイよ?[10日23時35分]
とろたく(記憶喪失)>>いやいやそれはいくらなんでもえぐいですって! 一つが含まれていればOKです。一応最難関が複数だった回を含めるとこんな感じになりました。一年分ってほんと壮観。・・・あれ、でも前回のOUTISさんの作品て確か・・・[編集済] [10日23時33分]
OUTIS>>え、これ④最難関要素全て使う必要があるのかナ?[10日23時28分]
「マクガフィン」>>これぞ創り出すって感じですね〜!時間を見つけて作品、読ませていただきます🎶[10日23時21分]
OUTIS>>待って、前回全最難関要素回収した記憶があるのだけれど、こんなに鬼畜だったかナ・・・?[10日23時20分]
ごがつあめ涼花>>要素バケモンじゃないですか最高です。 ティスさん>>??????????[10日23時13分]
とろたく(記憶喪失)>>エキシビジョンすら作れるかわからなくなってしまいました。(白目) そして靴下さんの正夢、まさかそれが選ばれるとは思わなかった・・・[10日23時12分]
きっとくりす>>過去の最難関要素……。わー、迷いますね![10日23時12分]
OUTIS>>というか「巫女」「狐」「コリ」・・・涼花さん、布教も程々にネ・・・?[10日23時07分]
靴下[15イイネ]>>正夢キターーー[10日23時03分]
OUTIS>>この組み合わせは笑うヨ・・・[10日23時02分]
とろたく(記憶喪失)>>涼花さんありがとうございます!!!!!!!!!!(地面にめり込む勢いの土下座)[10日22時38分]
ごがつあめ涼花>>要素参加します!!!!!!!!!![10日22時35分]
とろたく(記憶喪失)>>飛びたい豚さんよろしくです! 最近よくお見かけする方もいらっしゃって嬉しいですね![10日22時34分]
とろたく(記憶喪失)>>ハシバミさん いらっしゃいませ! 要素出しもお疲れ様です~![10日22時33分]
飛びたい豚[向上意識]>>参加致します[10日22時30分]
ハシバミ>>参加します。[10日22時27分]
とろたく(記憶喪失)>>OUTISさん あんまり矛盾して条件が狭まりそうだったら対象外にするという意味で書きましたが、かなりわかりづらい表現でした・・・すいません![編集済] [10日22時26分]
OUTIS>>なら、要素投稿フェーズに書いてある矛盾云々のくだりは誤植かナ?[10日22時26分]
とろたく(記憶喪失)>>OUTISさん 矛盾はありにしてます! ただ矛盾OKの文が目立ってなかった・・・申し訳ない。[10日22時19分]
OUTIS>>というか今回は矛盾無しなんだネ[10日22時13分]
とろたく(記憶喪失)>>ニックさんいらっしゃいませ! お盆時期の開催ですので、ご無理はなさらず~と言いたいところでしたが、前回6つ投稿したニックさんなら大丈夫そうです。[10日22時11分]
とろたく(記憶喪失)>>太陽が散々さんの解説も好きです。wktkしながら待ちたいと思います。[10日22時09分]
ニックネーム>>私も、可能なら参加します~!(皆さんお速いですね(о´∀`о))[10日22時09分]
太陽が散々[◇クエ王◇]>>参加します〜前回は完成できなかったので、今回こそ![10日22時04分]
とろたく(記憶喪失)>>みづさん、よろしくお願いします。みづさんなら大丈夫です。たぶん。(無責任)[10日21時51分]
とろたく(記憶喪失)>>きの子さんよろしくお願いします! きの子さんなら良心的な質問をしてくれると信じてる・・・![10日21時50分]
とろたく(記憶喪失)>>赤升さんに二言はないと信じてます。(問題文でハードルをあげつつ)[10日21時49分]
とろたく(記憶喪失)>>きっとくりすさんこんばんわ! 楽しんでってくださいませませ![10日21時48分]
みづ>>参加します。すでに問題文が難しい…?投稿まで至れるか自信がないですが、よろしくお願いします。[10日21時47分]
とろたく(記憶喪失)>>ひややっこさんよろしくです! マクガフィンさんによろしくと言っておいてください。(?)[10日21時47分]
きの子[200回良質問]>>参加させていただきます![10日21時47分]
赤升>>参加させていただきます。今回は解説出します。[10日21時43分]
きっとくりす>>参加します。[10日21時43分]
靴下[15イイネ]>>OUTISさん、寝過ごして慌ててアクセスしたら要素募集フェーズが終わっててめっちゃ後悔した夢でした。でもどんな要素だったかは忘れちゃいました\(^q^)/[10日21時41分]
とろたく(記憶喪失)>>ハナミさん、はじめまして! ちょっと難しいかもですが、一緒に頑張りましょ~![10日21時40分]
ひややっこ>>参加します!よろしくお願いしますm(_ _)m[10日21時39分]
OUTIS>>前回要素投稿フェーズを半身が寝過ごした為に参加できなかったという失態を犯したからネ… 今回は忘れないヨ[10日21時39分]
とろたく(記憶喪失)>>夜船さん あ! ほんとだ! 問題文にミス! 質問は50個到達で締め切りです。申し訳ございません。[編集済] [10日21時39分]
OUTIS>>選ばれれば参加者が難易度を選べる要素を投げてみたものの・・・選ばれないだろうネ[10日21時38分]
とろたく(記憶喪失)>>OUTISさん相変わらず早く駆けつけてくれますね!? 実は前回も一人4つまでだったのですが、お盆で人も少ないかな~と思いちゃっかり続行させていただきました。[10日21時37分]
ハナミ>>初めてですが、参加させて下さい。よろしくお願い致します。[10日21時37分]
夜船>>タイムテーブルのところの要素数は50という認識でよろしいです?あまり関係ありませんけど。[10日21時36分]
とろたく(記憶喪失)>>夜船さんこんばんは! 密かに夜船さんワールドの展開も期待してます。[10日21時35分]
とろたく(記憶喪失)>>靴下さんいらっしゃいませ。これで仮面だったらすごそうです。(フラグ)[10日21時35分]
OUTIS>>何故私なのだろうかネ?[10日21時34分]
OUTIS>>参加させてもらうヨ 要素が一人4つとは・・・驚いたネ[10日21時32分]
夜船>>参加しますー[10日21時32分]
靴下[15イイネ]>>参加します! 昨日、OUTISさんが出した要素が選ばれる夢を見ました。正夢になるか…?[10日21時31分]
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かつてはそこにいるだけでも汗ばむほどの熱を帯びていた場所。

今となっては熱が失われ誰も近づかないその場所を、一人の男が訪れた。

そこに広がる真っ白な地面にしずくが落ちたのを見た男は、

冷たくなった手で真っ白な地面を水浸しにした。


状況を説明してください。




①一文
②いつの間にか通り過ぎていた
③腫れている
④【過去の最難関要素】(一つ含まれればOKです。下に一覧があります)
⑤ラッキースケベ
⑥パーツが足りない
⑦記憶喪失になる
⑧手を繋ぐ
⑨作中作は関係する
⑩狐だったりする
⑪昔話は重要
⑫ウサギは関係する

【過去最難関要素一覧】
食戟(お料理バトル)
対戦車ライフル
あの鐘を鳴らすのはあなた
スマイリー共和国が作られる
略称「CKP」は重要
小さい秋を見つける
大晦日でしか起こり得ない
Eがなくて困る
老人の過去に対して批判的な人が続出する
意外と普通だった
老人は杖を折った
Lの下はJ
桜の木の下に埋める
TFには頼りたくない
1+1=3
和歌は重要
これはペンです
人間として合格
紫色の宝石を買う



◯要素募集フェーズ(終了)
 8/10(土)21:30~質問数が50個に達するまで

◯投稿フェーズ(終了)
 要素選定後~8/24(土)23:59まで

◯投票フェーズ(終了 https://late-late.jp/mondai/show/7109)
 8/25(日)00:00頃~8/29(木)23:59まで

◯結果発表
 8/30(金)23:00ごろを予定




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

《ここからちょっとした反省会》

さて、誠に恐縮ながら3度目の主催をさせていただきました。

もうここまでくるとちょちょいっと仕事できるだろう、というとそうでもなく、ひたすら悩みに悩んだような気がします。また、失敗もそれなりにありまして。

反省したい事柄を、今回箇条書きしますと、こうです。

・問題文
・エキシビジョン
・進行(開催準備含め)
・新仕様の追加



まず問題文。
悩みに悩んだのは12回でもそうでしたが、今回は特にプランなし、テーマもなし。
本当にただ1から問題文を作る、というところからスタートしました。
すると案の定、もう迷走に迷走を重ねまして。具体案で言うと

・「ドロップ」というタイトルで、雨、飴、落とし物をかけてみる
・「人間でないもの」をメインにして、「人間らしい動き」をさせる
・「縛られている、閉ざされている状況」から「解放」するような問題文
・「寒いけど、汗をかいている」、「冷めた情熱」

こんなものが挙げられました。今思うと、この候補からちょっとずつ要素を拾って問題文を作ったような気がします。

さて、それでは実際に出された問題文はどうだったのか。
たぶん、詰め込み過ぎて、問題文の難易度としては非常に高かったことと思います。


そのせいでかなりの時間をエキシビジョンにかけてしまいまして。
当初はポラリス以外にも作品を予定していたのですが、どうにも間に合わず。
ポラリスも完成したのは、投票期間終了前日ぐらいのことでした。

ひっそりと考えていたエキシビジョン案も、こちらで自分用メモとして挙げておきますと

・「第二回創り出す」のお題と絡めて、男女の悲恋もの
・芸人がスベリに恐怖しながら全力で熱湯風呂で体を張る

この二つもございました。上はだいぶ時間をかけるわ、下はもう大事故の未来しか見えないわである意味無謀だったかもしれませんが、そういう予定もあったんだよということで。


さて、肝心の進行と開催準備。

開催準備については、実際は10日にやる予定は前からあったのですが、問題文がなかなか決まらないのもあって厳しい状況でした。そのせいで、予告が3日前とか、かなりギリギリで、準備もしづらいものになってしまったかもしれません。
開催日の延期も考えましたが、その次に余裕を持って開催できるのがかなり後の方になってしまうので、それなら投稿期間を二週間設けておいたほうがいい、という判断でした。
ただ、そのせいでギリギリまで要素数だったりを決めかねていたので、ルール説明文もミスが多く、かなりの迷惑をかけてしまいました。申し訳ありません。

開催前でまだ良かったのは、問題文が(難易度が高いとはいえ)ギリギリまでには決められたことと、休暇を挟むため投稿期間を普段より長くできたことにあることだなという反省です。

進行に関しては、前回自分でやってて楽しかったことは続行したのですが、少しもたついて要素選出、作品返信などに時間をかけてしまい、結果発表が遅れるまでになってしまいました。今回は、あまり計画的にできなかったのが心残りです。

また迷宮入り条件のことをすっかり失念し、実に色んな方面の方にご迷惑をおかけしてしまい、大変申し訳ありませんでした。
ツイッターの方で対策協力とアイデア提供をしてくださり、両方とも利用させていただきました。


さて、そのアイデアから頂いた新仕様、「創 作造」を制作させていただきました。
そちらの方は投票会場の方で今一度参照してくださると助かります。

また、今回新しく景品のコインというものが増えました。上杉さんといろいろやり取りをさせてもらいましたが、丁寧な対応には非常に頭が下がるばかりでした。この場を借りてお礼申し上げます。

今回はシェフとして参加してくださったお礼としてシェフのみなさんにコインチケットをお配りさせていただきましたが、コインチケットは仕様上コードを知ってしまえば全員が利用できるらしく、もしかしたら今後の主催の方に負担をおかけする恐れが出てきました。
なので、もし大変になってしまうようでしたら、廃止してもいいとの返答を頂いております。

シェチュ王となったひややっこさんには、次回からそれも踏まえた開催をよろしくお願いいたします。何よりリアル優先です。


それでは、いろいろ個人的には挑戦もありつつ、あまりいい方向に作用しなかったような気がするのですが、みなさんの参加とあたたかいコメントのおかげで、無事主催を乗り越えることができました。

創りだす大好き芸人としては、まだまだ創りだすにいさせてもらうことにはなると思いますが、またぜひみなさんにお会いできることをお待ちしております。

そしてひややっこさん、本当におめでとうございます。不安なことがたくさんあることと思いますが、応援しております。きっと、大丈夫です。



それでは、長くなりましたので、ここいらで。
また次回、よろしくお願いいたします!




とろたく









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