幸せを運ぶ紅い金魚

問題監修よろしくお願いします！
[みんなにお願いする][6人：∞人][公開＆部屋解放] 不由仔ちくたく天童 魔子tsuna白蜜あいりーんあいりん 「金魚って、元々幸福と富の象徴って呼ばれててね、この金魚は本当に幸運を運んでくれるの」
「貴方に幸福が訪れますように」

その話を聞いた夫は、おそるおそる妻から金魚を水槽ごと受け取り、ペットボトルの中に金魚を移した。
そのペットボトルを持ち歩くようになった日から夫の調子は良くなり、何もかもが順調に進むようになった。
ある日、夫が金魚の様子を確認すると、ペットボトルの中にいたはずの金魚がいなくなっていた。
それを見た夫は、これで妻も元気になると安心した。
一体何故？


《解説》
妻は紅福金魚病（こうふくきんぎょびょう）と言う奇病を罹っていた。
この病は、対象を心配する故に良い方向に向かってほしいと願った時に発症する病で、発症者は体内で原因不明の上部消化管出血を引き起こし、その出血が金魚に変化して口から排出されるというもの。
その際、発症者の運も金魚と共に離れてしまうため、発症者は総じて不幸に陥ってしまう恐ろしい病なのである。
妻は、重要な仕事を任され毎度夜遅くまで帰ってくる夫のことを心配していた。
それで、夫の仕事が上手くいきますようにと願った結果、この病を患ったのだった。

医師によると、この病は心配事が解消されると金魚も元（血液）に戻り運も自分の元に戻ってくると話していたので、自分の体から出て来た金魚は夫に渡そうと決めて、その日の夜に夫に金魚のことと病のことを全て話した。

夫は最初、金魚のことを気味悪がって受け取りを拒否していた。
しかし、妻が聞いた医師の話にて、こんなちっぽけな金魚が本当に幸運という不確かなものを運んでくれるのか？と半信半疑に思いながらも結局は受け取った。
元は私の血だから餌は必要無いと言う妻の話により、ペットボトルの中に金魚を入れて、カバーを付けて仕事の鞄の中に持ち運ぶことにした。

それからというもの、停滞していた仕事が順調になり始めた。
途中で妻の体調が悪くなったり、何も無いところで躓き転んだりしつつ、それでも尚笑顔で夫を見送ってくれる妻を安心させるため、夫は妻の身を案じながらも仕事に励んだ。
そして遂に、夫に任されていた仕事の利益が上がり大成功を収めることが出来た。
夫は妻に仕事が上手くいったことをメッセージで伝えると、

良かったね！おめでとう！今日はケーキも用意しておくわ！

誕生日でもないのに大袈裟だなぁ〜、と感じながらも心から喜んでくれた妻に『ありがとう』とメッセージと返信した。

「あ、そういえば……」

夫は妻から貰った金魚のことを思い出した。
あれはどうなったのか？と、ペットボトルカバーを外して中を確認する。
しかし、そこに紅いヒレを揺らしながら泳ぐ金魚の姿は無く、代わりに中の水が淡い赤色に染まっていた。

「……ありがとな」

夫は、役目を果たした金魚へ感謝し、ペットボトルを鞄の中へ仕舞う。
そして、一刻も早く仕事を終わらせて家に帰る決意をした。
嬉しそうにケーキを用意しながら夫の帰りを待つ、憂いと病が消えた我が妻の元へ。