君の名は。

「なぁハルー、宿題見せて」
「ええ？また？やだよ自力でやりなよ〜」
「何だよいーじゃんべつに、ケチ」
「うるっさいなぁ！ケチで結構コケコッコ！」

高校生のハルとアキ。二人は幼馴染で、顔を合わせればいつも言い合いが絶えない。けれど周りからは春秋コンビなんて名付けられ、「仲いいよね〜」と言われれば「「どこが！！」」と声を揃えて否定する仲の良さだった。


ある日曜日の夕暮れ時。
写真が趣味のアキは、カメラを持って散歩がてら公園の並木道を歩いていた。
すると何処からともなく聞き慣れた声がする。
『アキ！』
…これは、ハルの声？俺を呼んでる？
しかしこちらからハルの姿は確認できない。
声のする方角を頼りに公園の中へと歩いていくと、奥の広場にハルの姿があった。
『アキ〜、やだ、くすぐったいよもう』
芝生に寝転がっているハル。そして、アキ、と呼ばれる白いふわふわな犬。二人（正確には一人と一匹）は楽しげにじゃれ合っている。

そういえば二週間ほど前にハルが犬を飼い始めたと言っていた。何でよりによってそんな名前付けてんだ。

遠くで幼馴染に呼ばれ続けている自分の名前。西陽が頬を染める。
アキはくしゃくしゃと頭を掻いて、広場の方へ歩いていきカメラを構えた。パシャリ、心地よいシャッター音が響き、犬と戯れるハルがこちらを振り返った。

「っ…！？あ、アキ！？」
わん、と犬が吠える。
「…ややこしいんだよ。どっち呼んでるかわかんねーだろ」
「なっ……」

なぁアキ？と呼んでやる。わん、とまた犬が吠える。

「…………」
「名前使用料、1000円」
「…………」
「ハル」
「はい」
「1000円」
「すみません」
「あやまるとこじゃねぇし」


その日の夕焼けは、いつになく赤かった。



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要約
好きな女の子が飼い犬に自分の名前をつけて呼んでいたことを知り、両想いなのかと嬉しくなった。