魔法の国と現実

カメコは貧しい母子家庭で生まれ育った。

カメコ「おかあさん！ディズニーランドいきたい！」
カメコ母「ごめんねカメコ、お金がないの。」
カメコ「やだやだやだ！ディズニーランドいきたい！！」
カメコ母「ごめんね、今度アイス買ってあげるからね。」


カメコ「お母さん！友達にディズニーランド行こうって誘われてたんだけど行ってもいい？」
カメコ母「......ごめんね...最近お給料が減っちゃったの。」
カメコ「そっか...わかった...断ってくるね！」
カメコ母「ごめんねカメコ。」


(小さなテレビでディズニーランドの特集がやっている)
カメコ母「カメコは昔よくディズニーランドに行きたい行きたいって言ってたのよ。」
カメコ「懐かしいなあ」
カメコ「...今でも行きたいと思ってる？」
カメコ「ううん！全然！それよりお母さんも少しは贅沢しなよ！」

2人は貧しいながらも仲良く暮らしていた。
そんなある日、母が突然病気で倒れてしまった。

カメコ母「私は大丈夫なんでしょうか...？」
医師ラテオ「..................大変申し上げにくいのですが......すでに手遅れの状態にあります。余命はもって4ヶ月ほどでしょう。」
カメコ母「！！！...............そうですか...分かりました...」


カメコ「あ、お母さん！検査どうだった？」
カメコ母「大丈夫だったよ。そのうち治るってお医者さんに言われたわ。」
カメコ「よかった〜」

母はカメコに真実を告げることができなかった。
しかし、母の病状は悪くなる一方で、その様子を誰よりも近くで見ていたカメコは、なんとも言いがたい嫌な予感がしていた。

カメコ母「今日はカメコにプレゼントがあるの。じゃじゃーん！」
カメコ「...！............」
母が差し出してきたのはディズニーランドのチケットだった。
カメコ母「カメコはずっとディズニーランドに行きたがってたからね。お母さんと一緒に行こう！」

カメコは頭のどこかで母がもう長くないことを分かっていた。
しかしそれを口に出してしまうと、決定的な証拠を突きつけられてしまいそうで怖かったのだ。
その瞬間、母の死が確定してしまうような気がして恐ろしかったのだ。
母から手渡されたディズニーランドのチケット。
こんなものを買う余裕がないことくらい、カメコも知っていた。
母は娘との最期の思い出づくりのために、無理をしてディズニーランドのチケットを買ったのだと悟ってしまった。

カメコ「.........うっ......」
カメコ母「カメコ？どうして泣いてるの？...あなたがずっと行きたがっていたディズニーランドよ？...............」

狭い部屋には2人がすすり泣く声だけが響いていた。