第一発見者

カメコとカメオの住む家は防音対策がしっかりしていたため、窓を開けなければ大声でも会話が殆ど外まで漏れないはずだった。

にも関わらず、近所に住む噂好きのウミコが「カメコさん今度旦那さんと旅行に行くんですって？」「休みの日に掃除や洗濯をしてくれる旦那さんがいてカメコさんが羨ましいわ」などとカメコかカメオが話さない限り、家の外では知りようのないことを言ってくる。
ウミコに何故知っているのか尋ねても「家の前を通ったときに嬉しそうな声が聞こえたのよ」「たまに聞こえるのよ、掃除機に紛れて旦那さんが歌っているの」と家の防音がされているとは思えないほどウミコに会話が筒抜けになっている。

ウミコを不審に思ったカメコがカメオに相談し、カメオがもしかしてと家の中を捜索すると見覚えのないコンセントタップ……否、盗聴器が出てきた。

ウミコへの恐怖ですぐに警察を呼ぼうとしたカメコに対し、カメオは「本当にウミコさんが仕掛けたかわからないからカマを掛けてみよう」とカメコに提案し、ある作戦を考えた。
盗聴器に聞き取られないよう離れた場所に盗聴器を置き、小声で打ち合わせ簡易の台本を作る。
そして複数の小物と盗聴器を準備して作戦を決行した。

「ねえカメオさん……貴方が頻繁に連絡を取ってるラテコって誰？」
「は？お前勝手に俺の携帯見たのか？」

わざと盗聴器に聞こえるように示し合わせた夫婦喧嘩を演出するカメオとカメコ。
本を床にバサバサと落としてみたり壁を叩いてみたりと喧嘩が激しくなるような演出も入れてみる。

「やめろカメコ！その包丁を降ろせ！来るな！うわああああ！」

以降、黙り込んだカメオは必死に笑いを堪えている。
カメコも「救急車を呼ばなきゃ、でも……」と演技をしつつもその表情は今にも吹き出しそうになっていた。

数分後、カメオの家のインターホンが鳴った。
二人の演技を盗聴していたウミコが警察を呼び、共に駆け付けたようだ。

何食わぬ顔で玄関に出たカメコに対し、ウミコが「この女が旦那さんを刺したのよ！旦那さんの悲鳴が聞こえたの！間違いないわ！」と警察と共に家の中へと押し入って来る。
しかし家の中へ入ると怪我など一切していないカメオも玄関へ登場し、警察がウミコの早とちりとして処理しようとしたのをカメオが呼び止めた。

「丁度良かった、警察の方に相談したいことがあったんです」

そう言ってカメオが盗聴器を取り出すと、警察と一緒に家の中へ入ってきていたウミコの顔がみるみるうちに青ざめる。

「これのせいか、妻とドラマの真似をしていただけで警察を呼ぶような人がいるんですよ」
「ち、違うわ！私は偶然家の前を歩いていたらカメオさんの悲鳴が聞こえたから！」
「うちの家は防音の筈なんですが、近所の人に旅行の打ち合わせ内容とか休みに何をしているとか聞かれてておかしいと思ったらこれが……」

こうしてウミコが盗聴器を設置していた可能性が非常に高いという状況を理解した警察は事情聴取の為、ウミコを警察署へと連行したのだった。